説明

分割式ホイール

【課題】 ボルトやねじを用いずにサイドリングの回り止めを行うことができる分割式ホイールの提供。
【解決手段】 第2の切欠き28と第1の切欠き27からなるキー溝52はホイール外側に向かって開口しており、第2の切欠き28と第1の切欠き27がホイール軸方向に合っている状態で、キー51をホイール外側から第2の切欠きと第1の切欠きの両方によって形成されたキー溝52に差し込み、サイドリング12をホイール本体11に対して回転止めした分割式ホイール10。キー51はピンであってもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホイール本体と、ホイール本体から分割されホイール本体に着脱可能とされたサイドリングとを有する分割式ホイールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の分割式ホイールは、特開2004−17727号公報に開示されているように、あるいは公報開示のものではないが図6に示すように、ホイール本体11と、ホイール本体11とは別体に構成されてホイール本体11に着脱可能に装着されるサイドリング12と、ホイール本体11とサイドリング12の何れか一方に設けられたシールリング装着溝13と、シールリング装着溝13に装着されるシールリング14と、タイヤエア圧がかかった時のサイドリング12のホイール本体11からの軸方向抜け外れを防止するためにホイール本体11に周方向に断続的に形成された第1のロックリブ部21とサイドリング12に周方向に断続的に形成された第2のロックリブ部22と、を備えている。サイドリング12の装着時には、サイドリング12の第2のロックリブ部22をホイール本体11の第1のロックリブ部21間の切欠きを通して第1のロックリブ部21を通過させ、通過後サイドリング12を回転させてサイドリング12の第2のロックリブ部22をホイール本体11の第1のロックリブ部21に軸方向に係合させ、サイドリング12をホイール本体11から軸方向に抜けないようにする。
図6の分割式ホイールでは、サイドリング回り止めのために、サイドリング12の第2のロックリブ部22とホイール本体11の第1のロックリブ部21との係合面(該係合面はホイール軸芯に直交する方向に延びている)部位の近傍において、ボルト23をホイール本体内周側からホイール本体11に形成したねじ穴24にねじ込みホイール本体11を貫通させて半径方向外方に延ばし、サイドリング12に形成した(タップなし)穴25に係合させている。ねじ穴24のシールはボルト頭部とホイール本体内面との間にパッキン26を設けてそれによってシールする。
【特許文献1】特開2004−17727号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、従来の、または、図6の分割式ホイールには、つぎの課題があった。
(イ)ボルト23によりサイドリングの回転を止めた場合は、制動、駆動時にボルト23、ねじ穴24、サイドリングの穴25等の変形が生じることがある。これらの変形により、通常走行時のタイヤのエア漏れ、ランフラット走行時のサイドリング脱落等が懸念される。
(ロ)ねじ穴24の圧漏れ防止のために、パッキン26を設けてシールする必要がある。(ハ)ねじ部の板厚が薄いので、ねじの噛み込み長さが十分にはとれず、ねじのゆるみが発生するおそれがある。
【0004】
本発明の目的は、ボルトやねじを用いずにサイドリングの回り止めを行うことができ、それによって上記(イ)、(ロ)、(ハ)の課題を解決できる分割式ホイールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成する本発明は、つぎの通りである。
(1) ホイール本体と、ホイール本体とは別体に構成されてホイール本体に装着されるサイドリングと、ホイール本体とサイドリングのいずれか一方に形成されたシールリング溝およびシールリング溝に装着されたシールリングと、タイヤエア圧がかかった時にサイドリングのホイール本体からの軸方向抜け外れを防止するためにホイール本体に周方向に断続的に形成された第1のロックリブおよび第1のロックリブ間の第1の切欠きと、サイドリングに周方向に断続的に形成された第2ロックリブおよび第2のロックリブ間の第2の切欠きと、を備えており、サイドリングのホイール本体への装着時には、第2のロックリブを第1の切欠きを通してホイール軸方向に通過させ、通過後サイドリングを回転させて第2ロックリブを第1のロックリブにホイール軸方向に係合させるとともに第2の切欠きと第1の切欠きをホイール軸方向に合わせた分割式ホイールにおいて、第2の切欠きと第1の切欠きからなるキー溝はホイール外側に向かって開口しており、第2の切欠きと第1の切欠きがホイール軸方向に合っている状態で、キーをホイール外側から第2の切欠きと第1の切欠きの両方によって形成されたキー溝に差し込み、サイドリングをホイール本体に対して回転止めしたことを特徴とする分割式ホイール。(本発明の全実施例に共通に適用)
(2) シールリングは第1のロックリブおよび第2のロックリブよりホイール軸方向内側にある(1)記載の分割式ホイール。(本発明の実施例1、2、4に適用)
(3) キーはキー溝にホイール軸方向外側から挿入される(1)記載の分割式ホイール。(本発明の実施例1、2、3に適用)
(4) キー溝に差し込まれたキーはサイドリングにホイール軸方向外側に固定されたカバープレートによってホイール軸方向外側から押さえられる(1)記載の分割式ホイール。(本発明の実施例1、2に適用)
(5) 前記キーはL字型の第1のキーと第1のキーの隣に差し込まれる第2のキーとからなる(2)記載の分割式ホイール。(本発明の実施例1に適用)
(6) キー溝に差し込まれたキーはサイドリングにホイール軸方向外側に固定されたキーリングによってホイール軸方向外側から押さえられ、キーリングと第1のロックリブとの間にはホイール周方向に延びるゴムリングが配置されており、サイドリング軸方向内側端面とホイール本体のサイドリング軸方向内側端面に対向する対向面との間にもホイール周方向に延びるもう一つのゴムリングが配置されている(1)記載の分割式ホイール。(本発明の実施例2に適用)
(7) キー溝に差し込まれたキーはホイール本体の半径方向内側から半径方向外側に向かって延びてキーに係合するネジによって固定されており、サイドリング軸方向内側端面とホイール本体のサイドリング軸方向内側端面に対向する対向面との間にもホイール周方向に延びるゴムリングが配置されている(1)記載の分割式ホイール。(本発明の実施例3に適用)
(8) 第1のロックリブと第2のロックリブとの係合面はホイール本体軸芯に対して傾斜しており、該係合面部位にて、第1のロックリブと第2のロックリブとにわたって、ホイール軸芯に対して直交する方向に延びるピン穴にピンからなるキーをホイール半径方向内側から差し込むことによって、サイドリングとホイール本体とが回り止めされており、ピンはホイール本体にねじ込まれたプラグ状のカバーによって押さえられている(1)記載の分割式ホイール。(本発明の実施例4に適用)
【発明の効果】
【0006】
上記(1)の分割式ホイールによれば、サイドリングのホイール本体に対する回り止めがキーによって果たされているので、ボルトやねじを用いずにサイドリングの回り止めを行うことができ、それによって上記(イ)、(ロ)、(ハ)の課題を解決できる。また、キー溝はホイール外側に向かって開口してキーをホイール外側(軸方向外側、半径方向内側を含む)からキー溝に差し込むようにしたので、キーをホイール軸方向内側からキー溝に差し込む場合に比べて、キーの装着とそれによるサイドリングのホイール本体に対する回り止めの作業を容易に行うことができる。
【0007】
上記(2)の分割式ホイールによれば、シールリングは第1のロックリブおよび第2のロックリブよりホイール軸方向内側にあるので、シールリングを組み付けた後にサイドリングをホイール本体に組み付ける時に、サイドリングに形成された第2のロックリブがシールリングを乗り越えることがなく、第2のロックリブがシールリングを乗り越える場合には生じるであろうリブのシールリング乗り越え時のシールリングの傷付きが起こらない。
【0008】
上記(3)の分割式ホイールによれば、キーはキー溝にホイール軸方向外側から挿入されるので、キーをホイール軸方向内側からキー溝に差し込む場合に比べて、キーの装着とそれによるサイドリングのホイール本体に対する回り止めの作業を容易に行うことができる。
【0009】
上記(4)の分割式ホイールによれば、キー溝に差し込まれたキーはサイドリングにホイール軸方向外側に固定されたカバープレートによってホイール軸方向外側から押さえられるので、キーがキー溝から抜け外れることはない。
【0010】
上記(5)の分割式ホイールによれば、キーはL字型の第1のキーと第1のキーの隣に差し込まれる第2のキーとからなるので、L字型の第1のキーはリブと係合してキー溝から抜け外れることはなく、第2のキーだけをカバープレートなどによってキー溝から抜け外れないように押さえればよく、キー全体を押さえる場合に比べてキーの抜け外れ防止の押さえ力が小さくて済む。
【0011】
上記(6)の分割式ホイールによれば、キーリングと第1のロックリブとの間にはホイール周方向に延びるゴムリングが配置されているので、ゴムリングが簡易ダストシールを兼ねることができ、ロックリブ部とシールリング部にダスト、汚泥が進入することを防止または抑制することができる。
また、サイドリング軸方向内側端面とホイール本体のサイドリング軸方向内側端面に対向する対向面との間にもホイール周方向に延びるもう一つのゴムリングが配置されているので、タイヤに空気圧がかかる前の状態においても、ゴムの弾性によって、第1のリブと第2のリブとは互いに押し付けられるように付勢され、サイドリングのホイール本体への装着のガタつきが抑制され、サイドリングのホイール本体への装着の信頼性が向上する。
【0012】
上記(7)の分割式ホイールによれば、キー溝に差し込まれたキーはホイール本体の半径方向内側から半径方向外側に向かって延びてキーに係合するネジによって固定されているので、キーをホイール軸方向内側からキー溝に差し込む場合に比べて、キーの装着とそれによるサイドリングのホイール本体に対する回り止めの作業を容易に行うことができる。
【0013】
上記(8)の分割式ホイールによれば、第1のロックリブと第2のロックリブとにわたって、ホイール軸芯に対して直交する方向に延びるピン穴にピンからなるキーがホイール半径方向から内側から差し込まれる。ピンはホイール本体にねじ込まれたカバーによって押さえられるので、ピンがピン穴から抜け外れることはない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の分割式ホイールを図1〜図5を参照して説明する。
図1、図2は本発明の実施例1を示しており、
図3(イ)、(ロ)は本発明の実施例2を示しており、
図4は本発明の実施例3を示しており、
図5は本発明の実施例4を示している。
本発明の全実施例に共通する部分には本発明の全実施例にわたって同じ符号を付してある。
【0015】
まず、本発明の全実施例(実施例1〜4)に共通する部分の構成、作用、効果を、図1、図2を参照して説明する。
【0016】
本発明の、サイドリングとホイール本体とが互いに分割可能な、分割式ホイール10は、ホイール本体11と、ホイール本体11とは別体に構成されてホイール本体11のリム軸方向端部(少なくとも一端)に装着されるサイドリング12と、タイヤエア圧がかかった時にサイドリング12のホイール本体11からの軸方向抜け外れを防止するためにホイール本体11に周方向に断続的に形成された第1のロックリブ21および第1のロックリブ21間に形成された第1の切欠き27と、サイドリング12に周方向に断続的に形成された第2のロックリブ22および第2のロックリブ22間に形成された第2の切欠き28と、を備えている。ホイール本体11はアルミ合金製で、サイドリング12は、アルミ合金製または鉄鋼品または鉄鋼の鍛造品またはスチール製である。
【0017】
サイドリング12のホイール本体11への装着時には、第2のロックリブ22を第1の切欠き27を通してホイール軸方向に通過させ、通過後サイドリング12をホイール軸芯まわりに回転させて第2ロックリブ22を第1のロックリブ21にホイール軸方向に係合させるとともに、第2の切欠き28と第1の切欠き27をホイール軸方向に合わせてサイドリング12がホイール本体11から軸方向に抜け外れしないようにする。第2の切欠き28と第1の切欠き27からなるキー溝52はホイール外側に向かって開口しており、第2の切欠き28と第1の切欠き27がホイール軸方向に互いに合っている状態で、キー51を第2の切欠き28と第1の切欠き27の両方によって形成されたキー溝52にホイール外側(ホイール軸方向外側、ホイール半径方向内側を含む)から差し込み、サイドリング12をホイール本体11に対して回り止めする。
【0018】
ホイール本体11は、望ましくは、タイヤ50を横方向から装着するタイヤ横装填式のホイールで、ドロップ部をもたない、リム外周が軸方向にほぼストレートに延びる、フラット底式のホイール本体である。ただし、ホイール本体11は、タイヤ横装填式のホイール本体に限るものではない。
サイドリング12はタイヤ50のビード部を受け、タイヤ50から、車重(ホイール軸芯に垂直な荷重)とタイヤ内圧荷重(ホイール軸芯にほぼ平行な荷重)がかかる。
【0019】
分割式ホイール10は、また、ホイール本体11とサイドリング12の何れか少なくとも一方(図示例ではホイール本体11)に形成されたシールリング装着溝13に装着されてホイール本体11とサイドリング12との間をシールするシールリング14を有する。シールリング14は図示例ではOリングの場合を示してあるが、シールリング14はOリングに限るものではなく、断面X、U,Dリングであってもよいし、シール用リップをもつシールリングであってもよい。シールリング14は通常ゴム製であり、タイヤ内圧をシールする。
【0020】
サイドリング12の第2のロックリブ22とホイール本体11の第1のロックリブ21の係合面30、29(係合面29が第1のロックリブ21の係合面、係合面30が第2のロックリブ22の係合面)は、係合面30、29における滑りを抑制するために、ホイール本体軸芯に対して、90度以外の角度をもって傾斜させてもよい。傾斜させる場合は、係合面30、29のホイール本体軸芯に対してなす角度θは8度〜30度、より限定的には10度〜25度の範囲にある角度で、少なくとも0度より大の角度に設定することが望ましい。ここで、8度、10度の意味は、それらより小さい角度であるとリブの突出量が小さ過ぎてロックリブ21、22が軸方向にひっかかりにくくなるのでそれを防止するためであり、30度、25度の意味は、それらより大きいと、タイヤのエア圧による滑り防止作用、効果を考慮にいれても、係合面39、29で滑りが生じやすくなるのでそれを防止するためである。
係合面30、29の傾斜の方向は、ホイールの軸方向中央側から軸方向外側にいくにしたがって係合面30、29の半径が大きくなる方向である。係合面30の傾斜角度と、係合面29の傾斜角度とは、同じである。また、係合面30、29はテーパ面であり、互いに面接触する。
【0021】
係合面30、29の傾斜の角度θは、望ましくは、係合面30、29の摩擦係数をμとした場合に、arctan(μ)以下に設定される。
たとえば、係合面30、29の摩擦係数μが0.2の場合、係合面30、29の傾斜の角度θは11.3度以下である。アルミ合金ホイールでは、係合面30、29の摩擦係数μはほぼ0.2である。タイヤ・エア圧による横力(θを大にとってもよい方向に働く)も考慮すると、テーパ部角度の最大値を25度〜30度に設定できる。
【0022】
タイヤセットの手順は、
1)タイヤ50の組み付け
2)シールリング14の組み付け
3)サイドリング12の組み付け
4)キー51の組み付け
5)タイヤへエア注入
である。
【0023】
本発明の分割式ホイールの作用・効果については、サイドリング12のホイール本体11に対する回り止めがキー51によって果たされているので、ボルトやねじを用いずにサイドリング51の回り止めを行うことができる。
その結果、従来のようにボルト23によりサイドリングの回転を止めた場合に起こることがある、制動、駆動時のボルト23、ねじ穴24、サイドリングの穴25等の変形と、これらの変形による、通常走行時のタイヤのエア漏れ、ランフラット走行時のサイドリング脱落等を防止することができる。ねじ穴24の圧漏れ防止のために、パッキン26を設けてシールする必要がない。従来のようにねじを用いた場合の、ねじの噛み込み長さが十分にはとれず、ねじのゆるみが発生するおそれがあるという問題が生じない。
【0024】
また、キー溝52はホイール外側に向かって開口してキー51をホイール外側(軸方向外側、半径方向内側を含む)からキー溝52に差し込むようにしたので、キーをホイール軸方向内側からキー溝に差し込む場合に比べて、キー51の装着とそれによるサイドリング12のホイール本体11に対する回り止めの作業を容易に行うことができる。
【0025】
つぎに、本発明の、全実施例より少ない数の複数の実施例にわたって共通する構成、作用、効果を説明する。
〔実施例1、2、4〕−−−図1〜図3、図5
本発明の実施例1、2、4では、図1〜図3、図5に示すように、シールリング14は第1のロックリブ21および第2のロックリブ22よりホイール軸方向内側(軸方向中央側)にある。
【0026】
シールリング14が第1のロックリブ21および第2のロックリブ22よりホイール軸方向内側にあることによるその作用、効果として、シールリング14をホイール本体11に組み付けた後にサイドリング12をホイール本体11に組み付ける時に、サイドリング12に形成された第2のロックリブ22がシールリング14を乗り越えることがなく、第2のロックリブ22がシールリング14を乗り越える場合には生じるであろうリブ22のシールリング14乗り越え時のシールリング14の傷付きが起こらない。その結果、シールリング14によるシール性が向上する。
【0027】
〔実施例1、2、3〕−−−図1〜図4
本発明の実施例1、2、3、4では、図1〜図4に示すように、キー51はキー溝52にホイール軸方向外側から挿入される。
【0028】
キー51がキー溝52にホイール軸方向外側から挿入されることによる作用、効果として、キーをホイール軸方向内側からキー溝に差し込む場合に比べて、キー51のキー溝52への装着とキー51によるサイドリング12のホイール本体11に対する回り止めの作業を容易に行うことができる。
【0029】
〔実施例1、2〕−−−図1〜図3
本発明の実施例1、2、3では、図1〜図3に示すように、キー溝52に差し込まれたキー51は、サイドリング12のホイール軸方向外側に固定されたカバープレート54によってホイール軸方向外側から押さえられている。
【0030】
キー溝52に差し込まれたキー51がサイドリング12のホイール軸方向外側に固定されたカバープレート54によってホイール軸方向外側から押さえられる作用、効果として、キー51がキー溝52から抜け外れることはない。
【0031】
つぎに、本発明の各実施例に特有な構成、作用・効果を説明する。
〔実施例1〕−−−図1、図2
本発明の実施例1では、図1、図2に示すように、キー51は合成樹脂やゴムやウレタンやスチールやスチール以外の金属から構成される。キー溝52は鋳抜きで成形されてもよいし、あるいは機械加工で作製されてもよい。
キー51が差し込まれる第2の切欠き28と第1の切欠き27からなるキー溝52はホイール軸方向外側に向かって開口している。第2の切欠き28と第1の切欠き27がホイール軸方向に合った状態で、キー51はホイール軸方向外側から第2の切欠き28と第1の切欠き27からなるキー溝52に差し込まれる。キー溝52に差し込まれたキー51は、サイドリング12のホイール軸方向外側面にボルト53やねじ等により固定されたカバープレート54によってホイール軸方向外側から押さえられる。
【0032】
キー51は、L字型の第1のキー51aと、第1のキー51aとは別体で第1のキー51aの隣に差し込まれるI字型の第2のキー51bとから構成されてもよいし、あるいは、単一のキーから構成されてもよい。L字型の第1のキー51aはロックリブ21、22の長手方向と直交方向にキー溝52に奥まで挿入された後、ロックリブ21、22の長手方向に移動させてL字型の折れ曲がった部分がロックリブ21、22の一方とロックリブ21、22の長手方向と直交方向に係合するようにし、第1のキー51aのキー溝52からの抜けを防止する。その後、第2のキー51bをキー溝52の第1のキー51aの隣りに差し込み、第1のキー51aがロックリブ21、22の長手方向に移動することを防止する。カバープレート54は、第2のキー51bが、または第2のキー51bと第1のキー51aが、キー溝52からロックリブ21、22の長手方向と直交方向に抜けることを防止する。
【0033】
本発明の実施例1の作用、効果については、キー51が差し込まれる第2の切欠き28と第1の切欠き27からなるキー溝52はホイール軸方向外側に向かって開口しているので、タイヤ50、サイドリング12がホイール本体11に装着され、タイヤにエア圧をかけた後に、キー51をホイール軸方向外側からキー溝52に差し込むことができる。キー51をホイール軸方向外側からキー溝52に差し込んだ後、カバープレート54をサイドリング12のホイール軸方向外側面にボルト53やねじ等により固定する。また、キー溝52に差し込まれたキー51がサイドリング12のホイール軸方向外側に固定されたカバープレート54によってホイール軸方向外側から押さえられるので、キー51がキー溝52から抜け外れることはない。
【0034】
〔実施例2〕−−−図3(イ)、(ロ)
本発明の実施例2では、図3(イ)、(ロ)に示すように、キー溝52に差し込まれたキー51は、サイドリング12にホイール軸方向外側に固定されたキーリング61(他の実施例のカバープレート54に対応する部品であるため、カバープレート54と呼んでもよい)によってホイール軸方向外側から押さえられ、キーリング61と第1のロックリブ21との間にはホイール周方向に全周にわたって延びるゴムリング62が配置されている。キー51はキーリング62の周上に2〜4箇所取り付けられており、キー51の部位ではゴムリング62が半径方向に一部切りかかれている。キーリング61はボルト53によってサイドリング12に固定される。
【0035】
本発明の実施例2では、サイドリング軸方向内側端面63と、ホイール本体11のサイドリング軸方向内側端面63に対向する対向面64との間にも、ホイール周方向に延びるもう一つのゴムリング65が配置されている。
【0036】
本発明の実施例2の作用、効果については、キーリング61と第1のロックリブ21との間にはホイール周方向に延びるゴムリング62が配置されているので、ゴムリング62が簡易ダストシールを兼ねることができ、ロックリブ部とシールリング部にダスト、汚泥が進入することを防止または抑制することができる。
【0037】
また、サイドリング軸方向内側端面63と、ホイール本体11のサイドリング軸方向内側端面63に対向する対向面64との間にもホイール周方向に延びるもう一つのゴムリング65が配置されているので、タイヤに空気圧がかかる前の状態においても、ゴムの弾性によって、第1のロックリブ21と第2のロックリブ22とは互いに押し付けられるように付勢され、サイドリング12のホイール本体11への装着のガタつきが抑制され、サイドリング12のホイール本体11への装着の信頼性が向上する。
【0038】
〔実施例3〕−−−図4
本発明の実施例3では、図4に示すように、キー51はキー溝52にホイール軸方向外側から差し込まれる。キー溝52に差し込まれたキー51は、ホイール本体11の半径方向内側から半径方向外側に向かって延びてキー51に係合するネジ66によって固定されている。ネジ6はシールリング14よりホイール軸方向外側に位置する。ネジ66にはシールが必要でない。サイドリング軸方向内側端面63と、ホイール本体11のサイドリング軸方向内側端面63に対向する対向面64との間にもホイール周方向に延びるゴムリング65が配置されている。
【0039】
本発明の実施例3の作用、効果については、キー51はキー溝52にホイール軸方向外側から差し込まれ、キー溝52に差し込まれたキー51が、ホイール本体の半径方向内側から半径方向外側に向かって延びてキーに係合するネジ66によって固定されているので、キー51をホイール軸方向内側からキー溝に差し込む場合に比べて、キー51の装着とそれによるサイドリング12のホイール本体11に対する回り止めの作業を容易に行うことができる。
【0040】
〔実施例4〕−−−図5
本発明の実施例4では、図5に示すように、第1のロックリブ21と第2のロックリブ22との係合面29、30(29はホイール本体の係合面、30はサイドリングの係合面)はホイール本体軸芯に対して傾斜している。この係合面29、30部位にて、第1のロックリブ21と第2のロックリブ22とにわたって、ホイール軸芯に対して直交する方向に延びるキー溝52であるピン穴(キー溝と同じ符号52を付す)を、ホイール周方向に複数箇所(たとえば、ホイール中心を対称の中心として2箇所)、形成し、各ピン穴52にキー51であるピン(キーと同じ符号51を付す)を差し込み、これによって、サイドリング12とホイール本体11とが回り止めされている。ピン51とピン穴52は奥に行くにしたがって(ホイール半径方向外方に行くにしたがって)先細りとなるテーパが形成されている。
【0041】
また、ピン51が抜けないように、ピン51はホイール本体11にねじ込まれたカバー59によってホイール半径方向内側から押さえられている。カバー59は、カバー59の外周に切られてねじ60をホイール本体11のピン穴52の内周に切られたねじ穴に螺合することによって、ホイール本体11に固定されている。
係合面29、30部位とピン51、ピン穴52部位は、サイドリング12のホイール軸方向外側面にボルト53やねじ等により固定されたカバープレート54によってホイール軸方向外側から覆われている。
【0042】
本発明の実施例5の分割式ホイール10の作用・効果については、係合面29、30をホイール本体軸芯に対して傾斜させてサイドリング12にホイール軸芯に対して直交する方向の荷重(車重による垂直荷重)がかかった時に、係合面29、30において摩擦によるロックがかかるようにしたので、係合面29、30のフレッティング磨耗を防止することができる。
【0043】
係合面29、30部位にピン穴52を形成し、ピン穴52にピン51を差し込むことによって、サイドリング12とホイール本体11とを回り止めするようにしたので、タイヤをセットしタイヤにエアを注入した後にサイドリング12とホイール本体11とを回り止めすることができ、回り止め作業が単純で容易である。
また、係合面29、30部位とピン51、ピン穴52部位をカバープレート54によってホイール軸方向外側から覆ったので、塵埃の、係合面29、30部位とピン51、ピン穴52部位への侵入を阻止できる。
また、ピン51はホイール本体にねじ込まれたカバー59によって押さえられるので、ピン51がピン穴52から抜け外れることはない。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の実施例1の分割式ホイールの一部(サイドリングとホイール本体のサイドリング近傍部)の断面図である。
【図2】図1の分割式ホイールの第1、第2のロックリブとキー、キー溝部位の一部の平面視方向の断面図である。
【図3】(イ)は本発明の実施例2の分割式ホイールの一部(サイドリングとホイール本体のサイドリング近傍部)の断面図である。(ロ)は本発明の実施例2の分割式ホイールの一部のキーリング、キーとゴムリングの平面図である。
【図4】本発明の実施例3の分割式ホイールの一部(サイドリングとホイール本体のサイドリング近傍部)の断面図である。
【図5】本発明の実施例4の分割式ホイールの一部(サイドリングとホイール本体のサイドリング近傍部)の断面図である。
【図6】従来の分割式ホイールの一部(サイドリングとホイール本体のサイドリング近傍部)の、ボルト組み付け部の、ボルトが組み付けられた後での、断面図である。
【符号の説明】
【0045】
10 分割式ホイール
11 ホイール本体
12 サイドリング
13 シールリング装着溝
14 シールリング
21 ホイール本体のロックリブ(第1のロックリブ)
22 サイドリングのロックリブ(第2のロックリブ)
23 ボルト
24 ねじ穴
25 穴
26 パッキン
27 (ホイール本体の)切欠き
28 (サイドリングの)切欠き
29 (ホイール本体の)係合面
30 (サイドリングの)係合面
50 タイヤ
51 キー
52 キー溝
53 ボルト
54 カバープレート
59 カバー
60 ねじ
61 キーリング
62 ゴムリング
63 サイドリング軸方向内側端面
64 ホイール本体のサイドリング軸方向内側端面に対向する対向面
65 もう一つのゴムリング
66 ネジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホイール本体と、ホイール本体とは別体に構成されてホイール本体に装着されるサイドリングと、ホイール本体とサイドリングのいずれか一方に形成されたシールリング溝およびシールリング溝に装着されたシールリングと、タイヤエア圧がかかった時にサイドリングのホイール本体からの軸方向抜け外れを防止するためにホイール本体に周方向に断続的に形成された第1のロックリブおよび第1のロックリブ間の第1の切欠きと、サイドリングに周方向に断続的に形成された第2ロックリブおよび第2のロックリブ間の第2の切欠きと、を備えており、サイドリングのホイール本体への装着時には、第2のロックリブを第1の切欠きを通してホイール軸方向に通過させ、通過後サイドリングを回転させて第2ロックリブを第1のロックリブにホイール軸方向に係合させるとともに第2の切欠きと第1の切欠きをホイール軸方向に合わせた分割式ホイールにおいて、第2の切欠きと第1の切欠きからなるキー溝はホイール外側に向かって開口しており、第2の切欠きと第1の切欠きがホイール軸方向に合っている状態で、キーをホイール外側から第2の切欠きと第1の切欠きの両方によって形成されたキー溝に差し込み、サイドリングをホイール本体に対して回転止めしたことを特徴とする分割式ホイール。
【請求項2】
シールリングは第1のロックリブおよび第2のロックリブよりホイール軸方向内側にある請求項1記載の分割式ホイール。
【請求項3】
キーはキー溝にホイール軸方向外側から挿入される請求項1記載の分割式ホイール。
【請求項4】
キー溝に差し込まれたキーはサイドリングにホイール軸方向外側に固定されたカバープレートによってホイール軸方向外側から押さえられる請求項1記載の分割式ホイール。
【請求項5】
前記キーはL字型の第1のキーと第1のキーの隣に差し込まれる第2のキーとからなる請求項2記載の分割式ホイール。
【請求項6】
キー溝に差し込まれたキーはサイドリングにホイール軸方向外側に固定されたキーリングによってホイール軸方向外側から押さえられ、キーリングと第1のロックリブとの間にはホイール周方向に延びるゴムリングが配置されており、サイドリング軸方向内側端面とホイール本体のサイドリング軸方向内側端面に対向する対向面との間にもホイール周方向に延びるもう一つのゴムリングが配置されている請求項1記載の分割式ホイール。
【請求項7】
キー溝に差し込まれたキーはホイール本体の半径方向内側から半径方向外側に向かって延びてキーに係合するネジによって固定されており、サイドリング軸方向内側端面とホイール本体のサイドリング軸方向内側端面に対向する対向面との間にもホイール周方向に延びるゴムリングが配置されている請求項1記載の分割式ホイール。
【請求項8】
第1のロックリブと第2のロックリブとの係合面はホイール本体軸芯に対して傾斜しており、該係合面部位にて、第1のロックリブと第2のロックリブとにわたって、ホイール軸芯に対して直交する方向に延びるピン穴にピンからなるキーをホイール半径方向内側から差し込むことによって、サイドリングとホイール本体とが回り止めされており、ピンはホイール本体にねじ込まれたプラグ状のカバーによって押さえられている請求項1記載の分割式ホイール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−13029(P2008−13029A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−185576(P2006−185576)
【出願日】平成18年7月5日(2006.7.5)
【出願人】(000110251)トピー工業株式会社 (255)