説明

分割式レンズ鏡筒の防滴構造

【課題】分割式レンズ鏡筒を構成する互いに分離可能な鏡筒部とエクステンションチューブの間からレンズ鏡筒内部に水滴が進入するのを防止でき、かつ、カメラ使用後にエクステンションチューブから切り離した鏡筒部の後部を上方に向けた場合であっても水滴が鏡筒部内に進入するのを防止できる分割式レンズ鏡筒の防滴構造を提供する。
【解決手段】大径環状マウント部53、55、57と小径環状マウント部24、25、26、27を接続したときに、小径環状マウント部が圧接する水密パッキンPを鏡筒部50に設け、鏡筒部50の接続端部に、大径環状マウント部より内周側に位置し、かつエクステンションチューブ側に向かって突出する環状防滴壁61を形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は分割式レンズ鏡筒の防滴構造に関する。
【背景技術】
【0002】
カメラボディに着脱可能なレンズ鏡筒を、レンズを有する鏡筒部(レンズ鏡筒)と、レンズを内蔵しない複数のエクステンションチューブ(中間リング)とにより構成し、レンズ鏡筒と各中間リングを互いに着脱可能とした分割式レンズ鏡筒の先行技術としては、例えば特許文献1に開示されたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−230116号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記構造の分割式レンズ鏡筒を具備するカメラを雨天の環境下で使用すると、中間リングとレンズ鏡筒の接続部に水滴が進入し、水滴がレンズ鏡筒や中間リングに内蔵した電子機器(CPUなど)に接触し、これら電子機器の動作不良の原因となるおそれがある。
また、中間リングとレンズ鏡筒の接続部に水滴が進入すると、中間リングとレンズ鏡筒の接続部間に形成された空間空間に水滴が溜まる。そのため、カメラ使用後にレンズ鏡筒を中間リングから分離して、レンズ鏡筒の後端部(中間リングとの接続側端部)を上側に向けると、レンズ鏡筒の後端部(接続部)に溜まっていた水滴がレンズ鏡筒内に進入し、レンズ鏡筒に内蔵した上記電子機器に接触してしまう。
【0005】
本発明は、分割式レンズ鏡筒を構成する互いに分離可能な鏡筒部とエクステンションチューブの間からレンズ鏡筒内部に水滴が進入するのを防止でき、かつ、カメラ使用後にエクステンションチューブから切り離した鏡筒部の後部を上方に向けた場合であっても水滴が鏡筒部内に進入するのを防止できる分割式レンズ鏡筒の防滴構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の分割式レンズ鏡筒の防滴構造は、撮影レンズ群を内蔵する鏡筒部と、該鏡筒部に着脱可能に接続しかつ撮影レンズ群を内蔵しないエクステンションチューブと、を備える分割式レンズ鏡筒において、上記エクステンションチューブの鏡筒部に対する接続端部に上記撮影レンズ群の光軸を中心とする小径環状マウント部を突設し、上記鏡筒部のエクステンションチューブに対する接続端部に、上記光軸を中心とし、自身の内周部が上記小径環状マウント部の外周部と着脱する大径環状マウント部を突設し、上記鏡筒部とエクステンションチューブの少なくとも一方に、上記大径環状マウント部と小径環状マウント部を接続したときに、他方に形成した上記大径環状マウント部または小径環状マウント部が圧接する、弾性材料からなる環状体である水密パッキンを設け、上記鏡筒部の接続端部に、上記大径環状マウント部より内周側に位置し、かつ上記エクステンションチューブ側に向かって突出する環状防滴壁を形成したことを特徴としている。
【0007】
上記大径環状マウント部と小径環状マウント部のそれぞれに、該大径環状マウント部と小径環状マウント部を接続したときに、上記水密パッキンによって上記鏡筒部の内部空間との連通が遮断される空間を形成する空間形成部を形成し、上記環状防滴壁と上記大径環状マウント部の間に形成される空間の容積を、上記マウント部空間の容積より大きくするのが好ましい。
【0008】
上記環状防滴壁の外周面が、上記エクステンションチューブ側に向かうにつれて径が大きくなるテーパ面であるのが好ましい。
【0009】
上記鏡筒部が、少なくとも一部の上記撮影レンズ群を移動させるためのモータと、該モータに電力を供給するための配線と、を内蔵していてもよい。
【0010】
上記鏡筒部が、上記大径環状マウント部を有する固定環と、該固定環の内周部に固定した、上記撮影レンズ群を支持するレンズ支持環と、を具備し、上記水密パッキンを、上記固定環とレンズ支持環の間に跨るように設け、かつ、上記大径環状マウント部と小径環状マウント部を接続したときに上記小径環状マウント部が該水密パッキンに圧接してもよい。
【0011】
上記環状防滴壁が、上記シーリング部材の保持部材を兼ねていてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、エクステンションチューブの小径環状マウント部と鏡筒部の大径環状マウント部を接続すると、シーリング部材に大径環状マウント部または小径環状マウント部が圧接するので、小径環状マウント部と大径環状マウント部の間から分割式レンズ鏡筒の内部空間に水滴が進入するのを軽減できる。
さらに、カメラ使用後にエクステンションチューブから切り離した鏡筒部の接続端部(大径環状マウント部を設けた側の端部)を上方に向けると、鏡筒部と接続端部の接続端部間に溜まっていた水滴が鏡筒部の内周側に移動する。しかし、大径環状マウント部の内周側に環状防滴壁を設けてあるので、水滴が鏡筒部の内部に進入するのを効果的に防止できる。
【0013】
請求項2のように構成すれば、小径環状マウント部と大径環状マウント部の間に形成された空間一杯に水滴が溜まった後に、エクステンションチューブから鏡筒部を切り離して鏡筒部の接続端部を上方に向けても、当該水滴が環状防滴壁を乗り越えて鏡筒部の内部に進入するおそれがなくなる。
【0014】
請求項3のように構成すれば、エクステンションチューブから鏡筒部を切り離して鏡筒部の接続端部を上方に向けたときに、水滴が環状防滴壁を乗り越え難くなる。そのため、水滴が鏡筒部の内部に進入するのをより効果的に防止できる。
【0015】
請求項4のように構成すれば、鏡筒部がモータと配線を内蔵しているものの、これらの部材に水滴が付着するのを効果的に防止できるので、移動レンズ群の動作が不円滑になることはない。
【0016】
請求項5のように構成すれば、シーリング部材によって、水滴が固定環とレンズ支持環の間から鏡筒部の内部空間に進入するのを効果的に防止できる。
【0017】
請求項6のように構成すれば、部品点数を少なくできる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態の分割式レンズ鏡筒を断面視して示すデジタルカメラの側面図である。
【図2】分割式レンズ鏡筒の要部の拡大縦断側面図である。
【図3】上向きにした鏡筒部の上部の拡大縦断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照しながら本発明の一実施形態について説明する。なお、以下の説明中の方向は図中の矢印を基準としている。
本発明を適用したデジタルカメラ10は天体観測等に適した望遠撮影用カメラである。デジタルカメラ10は、撮像素子、回転ミラー、シャッター、画像処理装置、ファインダ、シャッターボタン、(撮像素子、回転ミラー、シャッター、画像処理装置などの動作を制御するための)制御装置、該制御装置と電気的に接続する接点ピン、(撮像素子、画像処理装置、制御装置などに電力を供給する)内部電源等を具備するカメラボディ11と、カメラボディ11の前面開口部に形成したマウント部に着脱可能な分割式レンズ鏡筒15と、を具備している。
【0020】
分割式レンズ鏡筒15は、互いに着脱可能なエクステンションチューブ20と鏡筒部50とを具備している。
エクステンションチューブ20は前後両端が開口する円筒形状の固定環21を具備しており、エクステンションチューブ20の後端部には、カメラボディ11の前面開口部に形成したマウント部に対して着脱自在なマウント22が設けてある。
固定環21の外周面の前端近傍部には、固定環21の軸線を中心とする環状体である外方フランジ24が一体的に突設してある。さらに、固定環21の前端部には、固定環21の軸線を中心とする筒状体であり外方フランジ24よりも前方に位置する小径筒状部25が一体的に突設してある。小径筒状部25の外周面には、外方フランジ24より小径であり、固定環21の軸線を中心とする円弧体である3つのバヨネット爪26が周方向に等角度間隔で一体的に突設してあり、さらに小径筒状部25の前端には固定環21の軸線を中心とする環状体である内方先端フランジ27が一体的に突設してある。外方フランジ24、小径筒状部25、バヨネット爪26、及び内方先端フランジ27が特許請求の範囲の「小径環状マウント部」に相当する。
固定環21の内周面の前端近傍部には、固定環21の軸線を中心とする環状体である内方支持フランジ29が内周側に向けて一体的に突設してある。内方支持フランジ29の前面の内周縁部には正面視環状をなすフィルタホルダ30が固定してあり、フィルタホルダ30の内周部には正面視円形の光学フィルタ31が支持してある。
内方支持フランジ29には、ピン支持孔32と、ピン支持孔32の外周側に位置し正面視円弧状をなす円弧孔33とが貫通孔として穿設してある。ピン支持孔32には導電性材料からなる接点ピン34が相対移動可能に嵌合しており、内方支持フランジ29の後面に固定したリテーナ36と接点ピン34の後端部に形成したストッパ35の間に縮設した圧縮コイルばね37の付勢力によって接点ピン34が前方に向けて付勢されている。接点ピン34のストッパ35はピン支持孔32より大径なので、接点ピン34はストッパ35が内方支持フランジ29の後面に当接するとそれ以上は前方にスライド不能となる。リテーナ36には圧縮コイルばね37と電気的に接続するフレキシブルプリント基板39の前端が固定してあり、フレキシブルプリント基板39の後端は固定環21の後端部に形成した端子(図示略)に接続している。
固定環21の内部には、固定環21の軸線を中心とする円弧上を該軸線を中心に回転可能な金属製の絞り用動力伝達レバー41が設けてある。絞り用動力伝達レバー41の後端はマウント22の内周側を通ってマウント22の後方に突出しており、絞り用動力伝達レバー41の前端は円弧孔33を通って内方支持フランジ29の前方に突出している。
さらに、固定環21の外周面には、前後両端が開口する筒状部材であるロック環43が、固定環21に対して相対回転可能かつ相対スライド可能として支持してある。ロック環43の内周面には雌ねじ44が形成してある。
【0021】
鏡筒部50は前後両端が開口する円筒形状の固定環51を具備している。
固定環51の内周面の後端近傍部には固定環51の軸線を中心とする環状体である内方フランジ53が内周側に向けて一体的に突設してある。内方フランジ53には、固定環51の軸線を中心とする環状体である大径筒状部55が後方に向けて一体的に突設してある。大径筒状部55の前部は後部に比べて厚肉である前部厚肉部56となっており、大径筒状部55の後端部には固定環51の軸線を中心とする円弧体である3つのバヨネット爪57が周方向に等角度間隔で一体的に突設してある。各バヨネット爪57の長さ(周方向長)は、エクステンションチューブ20の隣り合うバヨネット爪26同士の間隔(周方向間隔)より短い。バヨネット爪57はバヨネット爪26と係脱するものであり、カメラボディ11の前面開口部に形成したマウント部とは着脱不能である。さらに、大径筒状部55の外周面には雄ねじ58が形成してある。これらの構成のうち内方フランジ53、大径筒状部55及バヨネット爪57が特許請求の範囲の「大径環状マウント部」に相当する。
内方フランジ53の内周面には段差付きの筒状部材である3群支持環(レンズ支持環)59が嵌合固定してあり、3群支持環59の内周面には2枚のレンズからなる第3レンズ群(撮影レンズ群)L3が支持してある。図示するように、3群支持環59の後端部の外周部の前面は内方フランジ53の後面に接触しており、内方フランジ53と3群支持環59の後端部の外周部の間には、シリコン等の弾性材料からなり正面視環状をなす水密パッキン(シーリング部材)Pが接着により水密状態で固定してある。さらに、3群支持環59の後端部の外周縁部には、正面視で固定環51の軸線を中心とする環状体である環状防滴壁61が後方に向けて一体的に突設してある。環状防滴壁61の外周面の前端部には環状凹部63が形成してあり、環状凹部63と内方フランジ53の後端面の間で水密パッキンPを挟持(保持)している。図示するように環状防滴壁61の外周面は、後方に向かうにつれて外径が徐々に大きくなるテーパ面62となっている。
【0022】
内方フランジ53には、固定環51の内周側に位置する直進案内環64の後端部が固定してある。直進案内環64には光軸A方向に延びる3本の直進案内溝65(図1、図2に1本のみ図示)が周方向に120°間隔で貫通溝として形成してある。そして、直進案内環64の各直進案内溝65には、直進案内環64の内周側に位置し、かつ2枚のレンズからなる第2レンズ群L2(フォーカスレンズ)を支持する2群支持環66の外周面に120°間隔で突設した3本のカムフォロア66aがそれぞれ相対移動可能に嵌合している。さらに、固定環51の前端部と直進案内環64の前端部の間には、固定環51と略同径の環状部材であるフォーカスリング(調整リング)67が第2レンズ群L2及び第3レンズ群L3の光軸A回りに回転可能かつ光軸A方向にスライド不能として支持してある。フォーカスリング67の内周面にはフォーカスリング67より小径の環状部材であるカム環68が固定してあり、カム環68には直進案内溝65に対して傾斜するカム溝68aが周方向に120°間隔で3本形成してある(図1に1本のみ図示)。そして、各カム溝68aには対応する直進案内溝65を貫通したカムフォロア66aが相対移動可能に嵌合しているので、フォーカスリング67を光軸A回りに回転させると2群支持環66及び第2レンズ群L2が光軸Aに沿って進退する。
また、直進案内環65の前端部には前側固定環52(図1で後端部のみ図示)が固定してあり、前側固定環52の前端部(図示略)の前部の内周面には2枚のレンズからなる第1レンズ群(図示略)が固定してある。
【0023】
固定環51の内部には回路基板69が固定してあり、回路基板69の後面には回路基板69と電気的に導通するモータMが固定してある。このモータMは図示を省略した動力伝達機構を介してカム環68に接続している。回路基板69にはフレキシブルプリント基板(配線)70の前端部が接続しており、フレキシブルプリント基板70の後端部は、内方フランジ53及び3群支持環59に形成した貫通孔を後方に通り抜け、かつ3群支持環59の前面に固定したピン支持部材71に支持された導電性材料からなる接点ピン72に接続している。
さらに、固定環51の内部には第2レンズ群L2と第3レンズ群L3の間に位置する絞り機構74が設けてある。絞り機構74は、固定環51の軸線(第2レンズ群L2及び第3レンズ群L3の光軸A)を中心とする周方向に並びかつ自身の回転軸回りに回転可能な複数の絞り羽根(図示略)を具備している。さらに、これらの各絞り羽根は、図示を省略した付勢手段によって最小絞り方向に回転付勢されている。また、固定環51の内部には、固定環51の軸線を中心とする周方向に回転可能な絞り操作レバー76が設けてある。絞り操作レバー76の前端部は絞り機構74と連係しており、絞り操作レバー76の後端部は3群支持環59を回転可能に貫通しており、絞り操作レバー76の後端部は上方に向けて曲折された係脱部77となっている。
【0024】
エクステンションチューブ20は、そのマウント22を光軸A回りに回転させながらカメラボディ11の前面開口部に形成したマウント部に係合させることによりカメラボディ11に接続でき、エクステンションチューブ20(及びマウント22)を当該回転方向と逆方向に回転させることによりカメラボディ11のマウント部から取り外すことが可能である。
分離状態にあるエクステンションチューブ20と鏡筒部50を接続するには、エクステンションチューブ20の隣り合うバヨネット爪26の間に形成された3つの隙間の直前に鏡筒部50の3つのバヨネット爪57を位置させた後に鏡筒部50を後方に直線的に移動させる。そして、バヨネット爪57の後面が外方フランジ24の前面に接触した後に鏡筒部50を自身の軸線回りに回転させて、各バヨネット爪57を対応するバヨネット爪26の直後に位置させる。そして、ロック環43を回転させることにより、ロック環43の雌ねじ44を鏡筒部50の雄ねじ58に螺合させれば、エクステンションチューブ20の前端部に対する鏡筒部50の後端部の接続作業が完了する。なお、ロック環43を逆方向に回転させて雌ねじ44と雄ねじ58の螺合を解除し、かつ、鏡筒部50を自身の軸線回りに回転させて隣り合うバヨネット爪26の間に形成された3つの隙間の直後に3つのバヨネット爪57を位置させた後に鏡筒部50を前方に直線的に移動させれば、鏡筒部50をエクステンションチューブ20から分離できる。
【0025】
カメラボディ11にエクステンションチューブ20を接続しかつエクステンションチューブ20に鏡筒部50を接続すると、フレキシブルプリント基板39と接続するエクステンションチューブ20の上記端子がカメラボディ11に設けた端子(図示略)と接続するので、フレキシブルプリント基板39がカメラボディ11に内蔵した内部電源と電気的に接続し、さらにエクステンションチューブ20の接点ピン34が鏡筒部50の接点ピン72に接触する。そのため、カメラボディ11の内部電源の電力が、フレキシブルプリント基板39、圧縮コイルばね37、接点ピン34、接点ピン72、フレキシブルプリント基板70、及び回路基板69を介してモータMに供給される。従って、カメラボディ11に設けた操作手段によって撮影モードをAFモードに設定した上でカメラボディ11に設けたシャッターボタン(図示略)を半押しすると、モータMの動力によって2群支持環66及び第2レンズ群L2が光軸Aに沿って進退し、第2レンズ群L2によってフォーカシングが行われる。
さらに、カメラボディ11にエクステンションチューブ20を接続しかつエクステンションチューブ20に鏡筒部50を接続すると、カメラボディ11のマウント部の近傍に設けたレバー(図示略)にエクステンションチューブ20側の絞り用動力伝達レバー41の後端部が係合し、かつ、絞り用動力伝達レバー41の前端部が鏡筒部60側の絞り操作レバー76の係脱部77に係合し、各絞り羽根の内周面によって規定される絞り径が開放絞り値となる。
撮影者が分割式レンズ鏡筒15を被写体に向けながら上記シャッターボタンを全押しすると、カメラボディ11に設けた上記レバーが回転し、この回転に伴って絞り用動力伝達レバー41及び絞り操作レバー76が回転するので、各絞り羽根の絞り径がカメラボディ11側で設定された設定絞り値となる。そして、シャッターボタンの全押し動作に連動して、第1レンズ群、第2レンズ群L2、第3レンズ群L3及び光学フィルタ31を透過した観察像がカメラボディ11に内蔵した上記撮像素子によって撮像される。
なお、カメラボディ11に設けた操作手段によって撮影モードをMFモードに設定した上で鏡筒部50のフォーカスリング67を手動により回転させれば、マニュアルフォーカスにより撮影を行える。
【0026】
さらに、エクステンションチューブ20と鏡筒部50を接続すると、図2に示すようにエクステンションチューブ20の内方先端フランジ27の前面内周部が鏡筒部50に設けた水密パッキンPに圧接する。雨天の状況下においてデジタルカメラ10を使用すると、水滴(雨)がロック環43と大径筒状部55の隙間からエクステンションチューブ20の小径環状マウント部(外方フランジ24、小径筒状部25、バヨネット爪26、及び内方先端フランジ27)の空間形成部(外方フランジ24の表面、小径筒状部25の外周面、バヨネット爪26の表面、及び、内方先端フランジ27の前面)と鏡筒部50の大径環状マウント部(内方フランジ53、大径筒状部55及バヨネット爪57)の空間形成部(バヨネット爪57の表面、大径筒状部55の内周面、及び、内方フランジ53の後面)の間に形成された(バヨネット爪57が位置する部分を除いて環状をなす)空間に水滴が侵入することがある。しかし、水密パッキンPによって、当該空間と水密パッキンPより内周側の空間とを遮断し、かつ、水滴が内方フランジ53と3群支持環59(環状防滴壁61)の隙間から鏡筒部50の内部空間(内方フランジ53よりフード部52側の空間)に侵入するのを防止しているので、この水滴が鏡筒部50の内部空間内に設けた接点ピン72、フレキシブルプリント基板70、回路基板69、モータM、及び、エクステンションチューブ20内に設けた接点ピン34、フレキシブルプリント基板39等に接触することはない。そのため、第2レンズ群L2のフォーカシング動作が不円滑になることはない。
環状防滴壁61を後方に向かって延びる壁状部材とし、環状防滴壁61と小径筒状部25の隙間を小さくすることにより、水密パッキンPに撮影者の指や物等が接触し難くしているので、水密パッキンPは劣化し難い(防水効果が低減し難い)。
また、鏡筒部50をエクステンションチューブ20から切り離して図3に示すように鏡筒部50の後端部を上方に向けると、小径環状マウント部と大径環状マウント部の間に形成された上記空間に溜まった水滴が鏡筒部50の内周側に移動する。しかし、小径環状マウント部と大径環状マウント部の間の上記空間の容積よりも、3群支持環59の環状防滴壁61の外周面(テーパ面62)と内方フランジ53の後面と大径筒状部55の内周面と図3の二点鎖線とで囲まれた環状空間Sの容積を大きく設定しているので、小径環状マウント部と大径環状マウント部の間の上記空間一杯に水滴が溜まっていたとしても、この水滴が環状防滴壁61(テーパ面62)を乗り越えて環状防滴壁61の内周側に侵入することはない。従って、この水滴が鏡筒部50内に設けた接点ピン72、フレキシブルプリント基板70、回路基板69、及びモータMに接触することはない。
【0027】
しかも、3群支持環59の外周面をテーパ面62としているので、3群支持環59の外周面を前後位置が変わっても径寸法が変わらない通常の円筒面や、当該外周面の径を後方に向かうにつれて徐々に小さくした場合に比べて、鏡筒部50をエクステンションチューブ20から切り離して鏡筒部50の後端部を上方に向けたときに水滴が環状防滴壁61を内周側に乗り越え難くなっている。
さらに、分割式レンズ鏡筒15の全長は長いため、エクステンションチューブ20及び鏡筒部50を一体(分離不能)とした場合は光学フィルタ31を当該レンズ鏡筒内に設けるのは容易ではない。しかし、本実施形態では鏡筒部50と分離可能なエクステンションチューブ20の前端部に光学フィルタ31を設けているので、分割式レンズ鏡筒15の内部に光学フィルタ31を簡単に配置できる。
また、分割式レンズ鏡筒15の前端部を通る光束の径は大きいため、分割式レンズ鏡筒15の前端部に光学フィルタを設ける場合は光学フィルタの径を大きくする必要があり、光学フィルタが高価になる。しかし、本実施形態の光学フィルタ31は光束径が前端部に比べて小さくなる第3レンズ群L3の直後に配置しているので、径が小さい安価なものを利用可能である。
【0028】
以上、上記実施形態に基づいて本発明を説明したが、本発明は様々な変更を施しながら実施可能である。
例えば、環状防滴壁61の光軸A方向寸法を上記実施形態より短くしても(小径環状マウント部と大径環状マウント部の間の上記空間の容積よりも環状空間Sの容積を小さくしても)よい。この場合も、環状防滴壁61を形成しない場合と比べれば優れた防滴効果を発揮できる。
また、エクステンションチューブ20(レンズを具備しない筒状部材)や鏡筒部50(レンズを内蔵する筒状部材)を互いに着脱可能な複数の部材によって構成してもよい。
さらに、エクステンションチューブ20をカメラボディ11ではなく図示を省略した接眼レンズ付き鏡筒(アイピース)に接続すれば、エクステンションチューブ20、鏡筒部50及び当該接眼レンズ付き鏡筒によって望遠鏡を構成できる。
また、3群支持環59を固定環51と一体の部材としてもよい。
さらに、内方先端フランジ27の前面に水密パッキンPを固定し、エクステンションチューブ20と鏡筒部50を接続したときに当該水密パッキンPが内方フランジ53の後面に圧接するようにしてもよい。なお、この場合は鏡筒部50側に水密パッキンPを設けても良いし、設けなくてもよい。
【0029】
さらに、バヨネット爪26、57の枚数は3つでなくてもよく、またバヨネット爪26、57の配置態様は等角度間隔でなくてもよい。
また、内方先端フランジ27を省略し、小径筒状部25の前端部に水密パッキンPを圧接させたり、小径筒状部25の前端部に水密パッキンPを固定してもよい。
【符号の説明】
【0030】
10 デジタルカメラ
11 カメラボディ
15 分割式レンズ鏡筒
20 エクステンションチューブ
21 固定環
22 マウント
24 外方フランジ(小径環状マウント部)
25 小径筒状部(小径環状マウント部)
26 バヨネット爪(小径環状マウント部)
27 内方先端フランジ(小径環状マウント部)
29 内方支持フランジ
30 フィルタホルダ
31 光学フィルタ
32 ピン支持孔
33 円弧孔
34 接点ピン
35 ストッパ
36 リテーナ
37 圧縮コイルばね
39 フレキシブルプリント基板
41 絞り用動力伝達レバー
43 ロック環
44 雌ねじ
50 鏡筒部
51 固定環
52 前側固定環
53 内方フランジ(大径環状マウント部)
55 大径筒状部(大径環状マウント部)
56 前部厚肉部
57 バヨネット爪(大径環状マウント部)
58 雄ねじ
59 3群支持環(レンズ支持環)
61 環状防滴壁
62 テーパ面
64 直進案内環
65 直進案内溝
66 2群支持環
66a カムフォロア
67 フォーカスリング
68 カム環
68a カム溝
69 回路基板
70 フレキシブルプリント基板(配線)
71 ピン支持部材
72 接点ピン
74 絞り機構
76 絞り操作レバー
77 係脱部
A 光軸
L2 第2レンズ群(撮影レンズ群)(フォーカスレンズ)
L3 第3レンズ群(撮影レンズ群)
M モータ
P 水密パッキン(シーリング部材)
S 環状空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影レンズ群(L1、L2)を内蔵する鏡筒部(50)と、該鏡筒部に着脱可能に接続しかつ撮影レンズ群を内蔵しないエクステンションチューブ(20)と、を備える分割式レンズ鏡筒において、
上記エクステンションチューブの上記鏡筒部に対する接続端部に上記撮影レンズ群の光軸を中心とする小径環状マウント部(24、25、26)を突設し、上記鏡筒部のエクステンションチューブに対する接続端部に、上記光軸を中心とし、自身の内周部が上記小径環状マウント部の外周部と着脱する大径環状マウント部(53、55、57)を突設し、
上記鏡筒部とエクステンションチューブの少なくとも一方に、上記大径環状マウント部と小径環状マウント部を接続したときに、他方に形成した上記大径環状マウント部または小径環状マウント部が圧接する、弾性材料からなる環状体であるシーリング部材(P)を設け、
上記鏡筒部の接続端部に、上記大径環状マウント部より内周側に位置し、かつ上記エクステンションチューブ側に向かって突出する環状防滴壁(61)を形成したことを特徴とする分割式レンズ鏡筒の防滴構造。
【請求項2】
請求項1記載の分割式レンズ鏡筒の防滴構造において、
上記大径環状マウント部と小径環状マウント部のそれぞれに、該大径環状マウント部と小径環状マウント部を接続したときに、上記シーリング部材によって上記鏡筒部の内部空間との連通が遮断される空間を形成する空間形成部(24、25、26、27、53、55、57)を形成し、
上記環状防滴壁と上記大径環状マウント部の間に形成される環状空間の容積を、上記空間形成部によって形成された上記空間の容積より大きくした分割式レンズ鏡筒の防滴構造。
【請求項3】
請求項1または2記載の分割式レンズ鏡筒の防滴構造において、
上記環状防滴壁の外周面が、上記エクステンションチューブ側に向かうにつれて径が大きくなるテーパ面(62)である分割式レンズ鏡筒の防滴構造。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項記載の分割式レンズ鏡筒の防滴構造において、
上記鏡筒部が、少なくとも一部の上記撮影レンズ群を移動させるためのモータ(M)と、該モータに電力を供給するための配線(69)と、を内蔵する分割式レンズ鏡筒の防滴構造。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項記載の分割式レンズ鏡筒の防滴構造において、
上記鏡筒部が、上記大径環状マウント部を有する固定環(51)と、該固定環の内周部に固定した、上記撮影レンズ群を支持するレンズ支持環(59)と、を具備し、
上記シーリング部材を、上記固定環とレンズ支持環の間に跨るように設け、かつ、上記大径環状マウント部と小径環状マウント部を接続したときに上記小径環状マウント部が該シーリング部材に圧接する分割式レンズ鏡筒の防滴構造。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項記載の分割式レンズ鏡筒の防滴構造において、
上記環状防滴壁が、上記シーリング部材の保持部材を兼ねている分割式レンズ鏡筒の防滴構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−27762(P2011−27762A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−170057(P2009−170057)
【出願日】平成21年7月21日(2009.7.21)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】