説明

分取精製装置

【課題】溶出液の回収開始を早めて目的物の回収効率を上げつつ、溶出液の蒸発を短時間で行う分取精製装置を提供する。
【解決手段】目的成分を含む水をカラム8に流して目的成分をカラム8中に捕集し、次に溶媒を流して目的成分を回収する分取精製装置において、カラム8を入口側を下、排出側を上として上下方向に保持し、カラム8中に目的成分が捕集された状態で、水と低相溶性で、水より比重の大きな溶媒をカラム8に送給する送液手段7と、カラム8から出る溶液を回収流路13と廃液流路14の何れかに流すように流路を切り替える流路切替手段12と、カラム8から水が出るときは廃液流路14に流し、溶媒を含む溶液が出るときは回収流路13に流すように、流路切替手段12を制御する流路制御手段30と、水を廃液流路14に流すときは第1流量で溶媒を送給させ、溶媒を含む溶液を回収流路13に流すときは第1流量よりも低い流量で溶媒を送給させる流量制御手段30を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶液に含まれる1乃至複数の成分を液体クロマトグラフを利用してそれぞれ分離した後に、各成分をそれぞれ精製して固形物として回収するための分取精製装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、製薬分野などで用いられる分取精製システムでは、合成により得られた目的化合物を分析したり或いはライブラリとして保管したりするために、液体クロマトグラフを利用した分取精製装置が使用されている(特許文献1)。
【0003】
これらの装置では、試料溶液中の複数の目的成分(化合物)を液体クロマトグラフにより時間的に分離し、目的成分毎に別のトラップカラムに導入して一旦捕集する。その後に各トラップカラムに溶媒を流して該カラム内に捕集していた成分を短時間で溶出させることで、目的成分を高い濃度で含有する溶液を容器に回収する。こうして分取した各溶液について蒸発・乾固処理を行って溶媒を除去し、目的成分を固形物として回収する。このような蒸発・乾固処理は、採取された溶出液を加熱したり、真空遠心分離したりするなどといった方法により行われるのが一般的である。
【0004】
しかし、上記のような蒸発・乾固処理方法では、それだけで数時間から1日程度の時間が必要である。製薬分野では、多くの合成化合物から薬効のある化合物を探索するために、分析機器の高速化や分析手法の最適化などにより分析時間を短縮するなど、様々な効率化が図られているが、上述したような蒸発・乾固工程が全工程の中でもっとも時間がかかるものであるため、この時間を短縮することが重要である。
【0005】
回収した溶出液中の溶媒を蒸発させるのに時間が掛かる大きな要因の1つは、回収された溶出液に水が混入していることである。トラップカラムに捕集されている目的成分を溶出させるための溶媒としては有機溶媒が使用されることが多いが、有機溶媒は水に比べると遙かに沸点が低く揮発性が高いため、有機溶媒に目的成分が溶解しているだけであれば蒸発・乾固処理の時間は短くて済む。それに対し、揮発性に劣る水が混じっていると、蒸発・乾固処理に要する時間が長くなってしまう。
【0006】
目的化合物は移動相と共にトラップカラムに導入され、捕集されるが、この移動相は多くの場合、水又は水が主成分である水系の溶媒である。こうした場合、目的成分の捕集終了時点でトラップカラム内には水が残留している。また、目的成分の捕集を確実に行うために、移動相を水で希釈して移動相の溶出力を下げる必要があり、トラップカラムの手前で移動相に合流させるように水を流路に導入するという手法がしばしば採用される。このような場合にも、目的成分の捕集終了時点でトラップカラム内には水が残留する。さらにまた、トラップカラム内には目的成分以外の不要成分、例えば移動相由来の塩類なども存在するため、これらを除去するために目的成分の捕集後にトラップカラムに水を導入してカラム内を水洗する後処理を行うこともある。この場合にはトラップカラム内の移動相が水に置換されるため、カラムトラップ内は水が充満した状態になる。
【0007】
上記の様々な理由により、目的成分を捕集した後のトラップカラムの内部は水が多く保持された状態となっていることが多い。このようにトラップカラム内に水が多く保持された状態のままで目的成分を再溶出させるべく有機溶媒をトラップカラムに送り込むと、トラップカラムから溶出してくる溶液には必然的に水が含まれてしまうことになる。回収した溶液に水と有機溶媒の両方が含まれると、水の蒸発に時間がかかるのみならず、回収容器に溜まった有機溶媒の上部を水が蓋のように覆い、有機溶媒の蒸発までが妨げられてしまう。
【0008】
この問題を解決するため、目的成分を捕集したトラップカラムから該目的成分を溶出させるのに先立って、該カラム内に残留する水などの不所望の溶媒を短時間で排除することができる分取精製装置が開発された(特許文献2)。この分取精製装置では、トラップカラム中に目的成分が捕集された状態で、トラップカラム中に残る第1溶媒(水又は水系の溶媒)よりも大きな比重を持ち、かつ第1溶媒と低相溶性である第2溶媒がカラムトラップの下端から送液される。これにより、第1溶媒が第2溶媒に押し上げられてトラップカラムから排出される。この第1溶媒を廃棄することでトラップカラム中の第1溶媒を除去することができる。このように特許文献2の分取精製装置では、水を含まない有機系の溶媒に目的成分が溶解した溶出液を回収することができるので、該溶出液中の溶媒の蒸発・乾固処理を短時間で行って固形状の目的成分を取得することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平2-122260号公報
【特許文献2】国際公開第2009/044426号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献2に開示された分取精製装置では、第1溶媒と低相溶性である第2溶媒で第1溶媒を押し上げる。第2溶媒と第1溶媒は互いに溶解しないが、両者の界面付近で部分的に乳化してエマルジョンを形成する。このエマルジョンには第1溶媒が含まれるため、特許文献2では、トラップカラム上端から排出されるエマルジョンを全て廃棄し、第2溶媒のみを回収するようにしていた。この方法によると、回収容器内に水が入らないため目的化合物を含む溶出液の蒸発・乾固の効率がよくなる。
【0011】
しかし、トラップカラム内の吸着材に捕集されていた目的化合物はエマルジョン中の第2溶媒にも溶出している。即ち、トラップカラムから排出されるエマルジョンは目的化合物を含む。従って、エマルジョンを全て廃棄すると、特にトラップカラムに捕集されている目的成分が微量である場合などに回収効率が低下する。
【0012】
本発明はかかる課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、溶出液の回収開始時期を早めて目的化合物の回収効率を上げつつ、目的化合物を含む溶出液の蒸発・乾固を効率よく行う分取精製装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために成された本発明の第一の態様に係る分取精製装置は、目的成分を含む溶液をトラップカラムに流して該目的成分をトラップカラム中に捕集し、その後に溶出力を有する溶媒を前記トラップカラムに流し、該トラップカラム中に捕集されている目的成分を溶出させて回収する分取精製装置において、
a) 前記トラップカラムを入口側端を下、排出側端を上として、カラム内流路が上下方向に延伸するように保持する保持手段と、
b) 前記保持手段に保持された前記トラップカラム中に目的成分が捕集された状態で、該トラップカラム中に残る第1溶媒と低相溶性であり、第1溶媒より比重の大きな第2溶媒を該トラップカラムの入口側端に送給する送液手段と、
c) 前記トラップカラムの排出側端から出てくる溶液を、回収容器に至る回収流路と廃液口に至る廃液流路との何れかに選択的に流すように流路を切り替える流路切替手段と、
d) 前記送液手段により第2溶媒が前記トラップカラムに送給されるのに対応してこれに押し上げられて前記トラップカラムの排出側端から第1溶媒が出てくるときは該第1溶媒を前記廃液流路に流し、前記トラップカラムの排出側端から第2溶媒を含んだ溶液が出るタイミングで該溶液を前記回収流路に流すように、前記流路切替手段を制御する流路制御手段と、
e) 前記トラップカラムの排出側端から第1溶媒を前記廃液流路に流すときは、前記送液手段に第1の送液流量で前記第2溶媒を送給させ、前記トラップカラムの排出側端から第2溶媒を含んだ溶液を前記回収流路に流すときは前記送液手段に前記第1送液流量よりも低い第2送液流量で前記第2溶媒を送給させる送液流量制御手段と、
を備えることを特徴とする。
【0014】
ここで、第1溶媒は液体クロマトグラフで雑多な成分を含む溶液から目的成分を分離するために利用される移動相、又はトラップカラム内に目的成分を捕集した後に該カラム内を洗浄したり清浄化したりするために利用される洗浄液であり、一般的には、水単体又は水を主成分とする水系の溶媒である。また、第2溶媒は第1溶媒に対して上述した相溶性や比重の条件を満たし、目的成分を溶出可能な溶媒であり、例えばジクロロメタン(比重:1.32)又はこれを含む混合液である有機溶媒である。この混合液とは、溶出力や化合物の溶解度などを調整するために例えばメタノールなどを混ぜたものである。
また、「前記トラップカラムの排出側端から第2溶媒を含んだ溶液が出るタイミング」とは、トラップカラムの排出側端から排出される溶液に第2溶媒が含まれ始める時点(エマルジョンが排出され始める時点)、又はその前後の時点をいう。
【0015】
上記課題を解決するために成された本発明の第二の態様に係る分取精製装置は、第一の態様に係る分取精製装置において、
f)前記トラップカラムの内容積と前記第1送液流量に基づき、第2溶媒の前記トラップカラムへの送給を開始してから該トラップカラムの排出側端から第2溶媒を含んだ溶液が排出され始めるまでの時間を算出する演算手段をさらに備え、
前記流路制御手段は、前記演算手段で算出された時間になると前記トラップカラムの排出側端から出てくる第2溶媒を含んだ溶液を回収流路に流すように前記流路切替手段を制御することを特徴とする。
【0016】
上記課題を解決するために成された本発明の第三の態様に係る分取精製装置は、第一の態様に係る分取精製装置において、
g) 第2溶媒の前記トラップカラムへの送給を開始してから該トラップカラムの排出側端から第2溶媒を含んだ溶液が排出され始めるまでの時間をユーザが設定する回収流路側切替時間設定手段をさらに備え、
前記流路制御手段は、前記回収流路側切替時間設定手段で設定された時間になると前記トラップカラムの排出側端から出てくる第2溶媒を含んだ溶液を回収流路に流すように前記流路切替手段を制御することを特徴とする。
【0017】
上記課題を解決するために成された本発明の第四の態様に係る分取精製装置は、第一の態様に係る分取精製装置において、
h) 前記トラップカラムの排出側端から排出される溶液が第2溶媒を含むか否かを判断する排出溶液識別手段をさらに備え、
前記流路制御手段は、前記排出溶液識別手段が排出溶液が第2溶媒を含むと判断すると前記トラップカラムの排出側端から出てくる第2溶媒を含んだ溶液を回収流路に流すように前記流路切替手段を制御することを特徴とする。
【0018】
上記課題を解決するために成された本発明の第五の態様に係る分取精製装置は、第一から第四の態様に係る分取精製装置において、
i)前記トラップカラムから出てくる第2溶媒を回収流路に流した後、前記流路切替手段によって流路を回収流路から廃液流路に切り替える時間をユーザが設定する廃液流路切替時間設定手段をさらに備え、
前記流路切替手段は、前記廃液流側切替時間設定手段で設定された時間になると前記トラップカラムから出てくる溶液を廃液流路に流すように、前記流路切替手段を制御することを特徴とする。
【0019】
上記課題を解決するために成された本発明の第六の態様に係る分取精製装置は、第五の態様に係る分取精製装置において、前記廃液流路切替時間設定手段で設定された時間は、前記トラップカラムに捕集された目的成分が第2溶媒によって全て溶出する時間であることを特徴とする。
【0020】
上記課題を解決するために成された本発明の第七の態様に係る分取精製装置は、第五の態様に係る分取精製装置において、前記廃液流路切替時間設定手段で設定された時間は、前記回収容器に回収された溶液に含まれる目的成分の乾固が完了する時間であることを特徴とする。
【0021】
上記課題を解決するために成された本発明の第八の態様に係る分取精製装置は、第一から第七の態様に係る分取精製装置において、
j)前記回収容器を加温する加温手段と、
k)前記回収容器内に滴下又は流下される前記排出溶液を飛散させるべくガス流を形成するガス供給手段と、
を更に備えることを特徴とする。
【0022】
ここで、ガスは一般に不活性ガスが好ましく、例えば、ヘリウム、アルゴン、窒素などを用いることができる。
【0023】
上記課題を解決するために成された本発明の第九の態様に係る分取精製装置は、第一〜第八の態様に係る分取精製装置において、
前記送液手段は、第2溶媒と第3溶媒のいずれかをトラップカラムの入口側端に送給し、
l)前記送液手段に送給される溶媒の種類を、第2溶媒と、トラップカラムの洗浄用の第3溶媒のいずれかに切り替える溶媒切替手段と、
m)前記溶媒切替手段が溶媒を第2溶媒から第3溶媒に切り替える時間をユーザが設定する第3溶媒切替時間設定手段と、
n) 前記第3溶媒切替時間設定手段で設定された時間になると、前記溶媒切替手段が前記送液手段に送給する溶媒を第2溶媒から第3溶媒に切り替える溶媒制御手段と、
をさらに備えることを特徴とする。
【0024】
ここで、第3溶媒は例えばアセトニトリルなどの、トラップカラムのリンスに適した溶媒である。これにより、トラップカラム内の第2溶媒が第3溶媒に置換され、トラップカラムを次の分析に供する準備が整えられる。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係る分取精製装置では、第1溶媒と低相溶性である第2溶媒で第1溶媒を押し上げるため、第2溶媒と第1溶媒の境界面でエマルジョンが形成される。本発明の第一の態様にかかる分取精製装置では、トラップカラムの排出側端から第2溶媒を含んだ溶液が出てくるタイミングで、すなわちトラップカラムからエマルジョンが排出され始めるタイミングで排出溶液の回収が始まる。エマルジョン中の第2溶媒には目的成分が溶出しているため、かかる構成をとることによって目的成分の回収効率を上げることができる。
エマルジョン状態となる少し前から回収を始めた場合、第2溶媒を全て回収することができるため、目的成分の回収効率を確実にあげることができる。エマルジョン状態となった少し後から回収を始めた場合、トラップカラムから最初に排出される第2溶媒を回収することはできないが、回収容器に回収されるエマルジョンの量が少なくなるため、結果的に第1溶媒(水)の量が少なくなり、回収容器内での溶媒の蒸発を短時間で効率よく行うことができる。
【0026】
また、第一の態様に係る分取精製装置では、トラップカラムの排出側端から第2溶媒を含んだ溶液が出てくるタイミングで、トラップカラムから出る第1溶媒を廃液流路に流しているときの流量よりも低い流量で第2溶媒が送液される。かかる構成によると単位時間当たりに回収容器に流入するエマルジョンの量を減らすことができるため、回収容器内の溶媒の蒸発を従来より短時間で行うことができる。
トラップカラムからエマルジョンが排出されるタイミングで第2溶媒の送液流量を低量に変更することにより、さらに、トラップカラム内、又は流路内で目的成分が析出して流路が塞がれるという問題も解決することができる。この問題は、溶媒に溶解している化合物が難水溶性である場合、該化合物が水と接触すると析出し、その析出物で流路が詰まるというものである。本発明に係る分取精製装置では、第1溶媒と第2溶媒とのエマルジョンがトラップカラムから排出されている間、送液流量が低量に設定されるため、エマルジョン内における第1溶媒と第2溶媒との混濁化の程度が抑制される。従って、エマルジョン内の第2溶媒に溶解している目的化合物が第1溶媒(水)に接触する程度が抑制され、溶媒が流路内を流れている間に目的化合物が析出するのが抑制される。
【0027】
さらに本発明の第五の態様に係る分取精製装置では、トラップカラムから出てくる第2溶媒を回収流路に流した後、前記流路切替手段によって流路を回収流路から廃液流路に切り替える時間をユーザが設定し、設定された時間になるとトラップカラムから出てくる溶液は廃液流路に流される。従って、トラップカラム中に捕集されていた目的成分がまだカラム内に残留しているうちに回収作業を終了させたい場合にも、第六の態様ではトラップカラムに捕集された目的成分が第2溶媒によって全て溶出する時間まで、第七の態様では回収容器内の溶媒の蒸発・乾固が終了し、目的成分の乾固が完了するまで、回収流路に溶媒が送給され続ける。この送液により回収流路内に残留する目的成分量が低下するため、溶媒の送給を停止させた後に目的成分が回収流路内に析出する事態を抑制することができる。なお、回収容器内に送給される溶媒の送液流量は低くおさえられており、かつ送給される溶媒は揮発性の高い有機溶媒であるため、かかる構成でも目的成分の乾固作業の効率に悪影響はない。
【0028】
さらに、本発明の第八の態様に係る分取精製装置ではガス供給手段によりガス流が形成され、該ガス流によって回収容器に滴下又は流下された溶液が破砕されて容器内で霧状に飛散する。飛散した微小液滴は容器内壁に付着するが、容器は加温手段により加温されているため、液滴中の溶媒は迅速に蒸発し、目的成分が容器の内壁に析出する。溶液が水を多く含んでいる場合には、容器の内壁に付着した液滴中の溶媒が完全に蒸発せず、内壁を伝い落ちて容器底部に溜まることがある。このように容器底部に溜まった溶液にガス流を吹き付けることによっても、溶媒の蒸発を促進することができる。
【0029】
さらに、本発明の第九の態様に係る分取精製装置では、ユーザが設定した時間になると、第2溶媒からカラム洗浄用の第3溶媒に溶媒が切り替えられ、トラップカラムに送給される。これにより、トラップカラムを洗浄し、次の分析に備えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一実施例に係る分取精製装置の概略構成図。
【図2】本発明の一実施例に係る分取精製装置による自動分取精製のための制御フローチャート。
【図3】本発明に係る分取精製装置動作時におけるトラップカラム内の溶媒の変化を説明する説明図。
【図4】本発明に係る分取精製装置動作時におけるトラップカラムからの溶出液の変化を説明する説明図。
【図5】本実施例に係る分取精製装置によって回収された溶出液から溶媒を蒸発させるための説明図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明に係る分取精製装置の一実施例を図1〜図5を用いて説明する。
【実施例】
【0032】
図1は本実施例の分取精製装置の概略構成図である。図1において、溶液容器1には目的化合物の溶解した移動相が収容されている。洗浄水容器2には、本発明における第1溶媒としての純水が収容されている。また、溶出用溶媒容器3には、本発明における第2溶媒としてのジクロロメタン/メタノール混合液(以下、ジクロロメタン、図中ではDCMと表記)が、洗浄液容器4には、本発明における第3溶媒としてのアセトニトリルが収容されている。切替バルブ5は上記4つの容器1〜4の液体の何れかを選択的に供給流路6に流すように流路を切り替えるものであり、供給流路6上には所定の流量で以て液体を吸引して送出する送液ポンプ7が設けられている。
【0033】
トラップカラム8は、内径20mm、高さ30mm、孔の径が0.8mmであり、目的化合物を捕集するための吸着材が内部に充填されている。トラップカラム8は、本発明におけるカラム保持手段に相当するカラムラック9により、上記供給流路6が接続される入口端8aを真下に、後述する排出流路10が接続される出口端8bを上向きにして略垂直に起立保持される。図1ではトラップカラム8を1本のみ示しているが、図1中に点線で示すように複数のトラップカラムを並べてカラムラック9に保持することも可能である。
【0034】
一端がトラップカラムの出口端8bに接続された排出流路10の他端は分取ヘッド11に内蔵された二方切替バルブ12のaポートに接続され、該バルブ12のbポートには分取流路13が接続され、cポートには廃液口に至る廃液流路14が接続されている。二方切替バルブ12は排出流路10に対し、分取流路13又は廃液流路14を択一的に接続する。分取流路13の末端は供給された溶液を滴下する溶液ノズル13aとなっており、この溶液ノズル13aにはガス流路15の末端のガス噴出ノズル15aがごく近接して設けられている。ガス流路15上には開閉バルブ16が設けられ、開閉バルブ16が開放されると図示しないガスボンベ等から供給される窒素ガスがガス噴出ノズル15aから噴出する。なお、溶液ノズル13aとガス噴出ノズル15aとは二重管構造としてもよい。
【0035】
分取精製された目的化合物を回収するための回収容器17は容器ラック18内に複数収容されている。容器ラック18にはヒータ19及び温度センサ20が設けられ、該温度センサ20により検出されるモニタ温度に基づいて温調部21がヒータ19へ供給する加熱電流を調整することにより、回収容器17を適宜の温度に加温できるようにしている。分取ヘッド11は図示しない駆動機構により上下移動及び水平移動が可能となっており、容器ラック18内に収容された複数の回収容器17の中の任意の容器上に移動し、且つ溶液ノズル13a及びガス噴出ノズル15aが容器内まで挿入されるように下降することで、その回収容器17内に溶液を滴下できるようになっている。
【0036】
なお、分取ヘッド11が移動する代わりに容器ラック18が移動することにより、溶液ノズル13aから滴下される溶液が容器ラック18に収容された任意の回収容器17内に注入される構成としてもよい。
【0037】
CPU等を含む制御部30は予め設定されたプログラムに従って、バルブ5、12の切替動作、送液ポンプ7の動作(流量又は流速)、温調部21の目標温度の設定などを実行することで、分取精製作業を自動的に遂行する。また、操作部31はその分取精製作業のための条件などを入力設定するためのものである。
【0038】
次に、本実施例の分取精製装置における自動分取精製動作を図2〜図5を参照して説明する。図2はこの自動分取精製のための制御フローチャート、図3は自動分取精製動作時におけるトラップカラム8内の溶媒の変化を説明するための説明図、図4は自動分取精製動作時におけるトラップカラム8からの溶出液中の溶媒及び目的化合物の変化を説明するための説明図、図5は回収された溶出液から溶媒を蒸発させるための説明図である。
【0039】
まず、制御部30は切替バルブ5により溶液容器1(bポート)と供給流路6(aポート)とを接続し、所定の一定流量で送液を行うように送液ポンプ7を動作させる。このとき、二方切替バルブ12により排出流路10(aポート)と廃液流路14(cポート)とを接続する。送液ポンプ7は溶液容器1中の溶液を吸引して入口端8aからトラップカラム8に導入する。すると、トラップカラム8中の吸着剤に溶液中の目的化合物が捕集される(ステップS1、図3(a)参照)。目的化合物が除去された移動相は出口端8bから排出流路10、廃液流路14を経て廃液口に廃棄される。
【0040】
所定時間だけ又は溶液容器1に用意された溶液が無くなるまでトラップカラム8に上記溶液が供給されると、次に制御部30は、洗浄水容器2(cポート)と供給流路6(aポート)とを接続するように切替バルブ5を切り替える。すると、送液ポンプ7は洗浄水容器2中の純水を吸引して入口端8aからトラップカラム8に導入する。これにより、先の目的化合物の捕集時に吸着剤に付着した塩類などの不所望で水溶性の物質がトラップカラム8内から除去される(ステップS2)。この純水の送給により、図3(b)に示すように、その送給開始直前にトラップカラム8内に溜まっていた移動相は水に置換され、水がトラップカラム8内に充満した状態となる。吸着剤に捕集されている目的化合物は水には殆ど溶出しないため、この時点ではトラップカラム8内に捕集された状態が維持される。
【0041】
次いで、制御部30は溶出用溶媒容器3(dポート)と供給流路6(aポート)とを接続するように切替バルブ5を切り替える。すると、送液ポンプ7は溶出用溶媒容器3中のジクロロメタンを吸引して入口端8aからトラップカラム8に導入し始める(ステップS3)。このとき、送液ポンプ7の送液流量は0.5mL/minに設定しておく。ジクロロメタンは水よりも比重が大きく(比重1.32)、水との相溶性もない。そのため、トラップカラム8の入口端8aからジクロロメタンが導入されると、図3(c)に示すように、ジクロロメタンはトラップカラム8内に存在していた水とあまり混じることなく、ジクロロメタンと水との界面は徐々に上昇してゆく。即ち、ジクロロメタンは水を押し上げながらトラップカラム8の底部から徐々に溜まってゆく。一方、押し上げられた水はトラップカラム8の上端の出口端8bから溢れ出し、二方切替バルブ12を経て廃液流路14から廃液口に至る。
【0042】
ジクロロメタンと水とは互いに溶解はしないものの、界面で一部が乳化してエマルジョンを形成する。そのため、図3(d)に示すように、水とジクロロメタンとの界面がトラップカラム8の上端に近づくと、トラップカラム8の出口端8bからの溶出液は水からエマルジョン(分散系溶液)へと移行する。ジクロロメタンは強い溶出力を有するため、吸着剤に捕集されていた目的化合物は水には溶け出さないがジクロロメタンには溶け出す。従って、エマルジョンがトラップカラム8から排出され始めるようになるとほぼ同時に、溶出液中に目的化合物が含まれ始める。
【0043】
制御部30は、トラップカラム8内の空隙容積(つまりジクロロメタンを導入し始める直前にトラップカラム8内に溜まっている水の容量)と送液ポンプ7によるジクロロメタンの送液流量(0.5mL/min)とを基に、ジクロロメタンの送液開始からエマルジョンがトラップカラム8から排出され始めるまでの時間t1を予測し、ジクロロメタンの送液開始からの経過時間がt1に達したか否かを判定する(ステップS4)。なお、エマルジョンがトラップカラム8から排出され始めるまでの時間t1は、ユーザが予め実験で確認、または計算し、操作部31から設定できるようにしてもよい。
【0044】
制御部30はジクロロメタンの送液開始からの経過時間が設定時間t1に達したことを認識すると、送液ポンプ7の送液流量を0.1mL/minに低下させる(ステップS5)。それと同時に二方切換バルブ12を廃液流路14側から分取流路13側に切り替えることでエマルジョンの分取を開始する(ステップS6)。
【0045】
また同時に制御部30は、開閉バルブ16を開放することでガス流路15を通した窒素ガスの供給を開始する(ステップS7)。また、温調部21に対し目標温度を指示して容器ラック18の加熱を開始し、これにより回収容器17を加温し始める(ステップS8)。目標温度としては、例えばジクロロメタンの沸点と同程度又はそれよりも少し高い程度としておけばよく、40〜45℃程度でよい。なお、窒素ガスの供給や回収容器17の加温は分取の開始前に開始しても構わない。
【0046】
ステップS5で送液ポンプ7の送液流量を0.1mL/minに低下させていたため、トラップカラム8からの溶出液、つまり目的化合物を含むエマルジョンが分取流路13を経て溶液ノズル13aから滴下する単位時間当たりの滴下量はかなり少なくなる。回収容器17内に滴下する少量のエマルジョンは、ごく近傍にガス噴出ノズル15aから噴出されたガス流が存在するため、図5に示すように、真っ直ぐ落下せずに細かい液滴となって周囲に飛散する。回収容器17は上述のようにジクロロメタンの沸点と同程度に加温されているため、少量の細かい液滴が回収容器17の内周壁面や内底壁面に付着すると、液滴中のジクロロメタンの殆どが蒸発する。一方、液滴中に含まれる水は、ジクロロメタンより揮発性が低いため蒸発に時間がかかり、内壁を伝い落ちて容器底部に溜まることもある。このようにして回収容器17内に残った水が完全に蒸発するまで、エマルジョンの回収容器17内への単位時間当たりの流入量を低く抑えておくと、加温による水の蒸発がスムーズに行われる。即ち、エマルジョンが回収され始めてから回収容器17内に残る水が完全に蒸発するまでの期間、送液ポンプ7の単位時間当たりの送液量を低く設定することで、回収容器17内に回収された溶出液からの溶媒の蒸発効率を上げ、目的化合物の乾固までの時間を短縮することが可能になる。なお、内壁を伝い落ちて容器底部に溜まった水にガス流を吹き付けて溶媒の蒸発を促進することもできる。
送液流量を低下させることでエマルジョンの混濁化の程度が抑えられ、一定時間内に回収容器17内に流入する水の割合が少なくなった場合には、回収容器17内壁に付着したジクロロメタンのみが蒸発しきれずに容器底部に溜まることもある。かかる場合は、容器底部に溜まったジクロロメタンの上部に水が存在しないため、ジクロロメタンの蒸発を妨げる蓋の役割をするものがなくなり、ジクロロメタンの蒸発を効率的に行うことができる。
【0047】
エマルジョンがトラップカラム8から排出され、分取流路13を通って回収容器17まで到達する間、送液ポンプ7の単位時間当たりの送液量を低く設定することは次のような有利な効果をも生み出す。即ち、目的化合物はジクロロメタンには易溶性だが、水には難溶性である場合、ジクロロメタンに溶出している目的化合物が水に接すると析出してしまい、析出物で流路が詰まってしまう。エマルジョンは水と有機溶媒(ここではジクロロメタン)の混濁液であるため、単位時間当たりの送液流量を低くすることでエマルジョン内における両者の混濁の程度が抑えられる。従って、送液ポンプ7の単位時間当たりの送液流量を低く設定すると、分取流路13内での目的化合物の析出が抑制されるという効果が生じることになる。
【0048】
次に、制御部30はジクロロメタンの送液開始からの経過時間が設定時間t2に達したか否かを判定する(ステップS9)。t2は予め設定された時間であり、ジクロロメタンの送液開始の時点から、回収容器17内に溜まった水が蒸発するまでに要するであろう予測時間である。制御部30は設定時間t2が経過したと判断すると、送液ポンプ7の送液流量を元の流量(0.5mL/min)に戻す(ステップS10)。
【0049】
回収容器17内や分取流路13、カラム8内に水が存在すると目的化合物の回収等にとって良くないので、分取流路13、カラム8からエマルジョンが回収容器17内に排出された後、一旦、ジクロロメタンの送液を停止して、水を蒸発させることも考えられる。
しかし、そうすると、蒸発させている間に分取流路17、カラム8内に残存する目的化合物が乾固してしまい、その後にカラム8、分取流路13にジクロロメタンを流しても、目的化合物を十分に回収することができない。
そこで、本実施例ではジクロロメタンを流し続けるようにしている。ただし、低流量(0.1ml/min)で流し続けることでジクロロメタンが即座に蒸発するようにしたため、目的成分の乾固作業や水の蒸発作業(蒸発時間)に影響はない。
【0050】
次に制御部30はジクロロメタンの送液開始からの経過時間が設定時間t3に達したか否かを判定する(ステップS11)。t3は予め設定された時間であり、本実施例では実験や計算で明らかになった、ジクロロメタンの送液開始から、トラップカラム8から目的成分が全て溶出し終えるまでの時間である。制御部30は設定時間t3が経過したと判断すると、二方切替バルブ12を廃液流路14側に切り替える(ステップS12)。これによって、トラップカラム8に捕集された目的成分のほとんどすべてを回収容器17に回収することができる。
【0051】
同時に、制御部30はガス流路15の開閉バルブ16を閉じて窒素ガスの供給を停止し、ヒータ19の加温を終了させる(ステップS13)。また同時に制御部30は切替バルブ5の供給流路6(aポート)と溶媒溶液4(eポート)とを接続し、溶媒容器4に入ったアセトニトリルが送液ポンプ7を介して供給流路7に20mL/minで送給されるようにする(ステップS14)。アセトニトリルはトラップカラム8をリンスするのに適した溶媒であるため、次の分析に備え、アセトニトリルでトラップカラム8を洗浄、置換するためである。
【0052】
制御部30は、トラップカラム8内の空隙容積と送液ポンプ7によるアセトニトリルの送液流量(20mL/min)とを元に、ジクロロメタンの送液開始からトラップカラム8内部が全てアセトニトリルで置換されるまでの時間t4を予測し、ジクロロメタンの送液開始からの経過時間がt4に達したか否かを判定する(ステップS15)。なお時間t4は、ユーザが予め実験で確認、または計算し、操作部31から設定できるようにしてもよい。
【0053】
制御部30はジクロロメタンの送液開始からの経過時間が規定時間t4に達したことを認識すると、送液ポンプ7の送液を停止し(ステップS16)、分取精製作業を終了させる。
【0054】
なお、上記実施例は本発明の一例に過ぎず、本発明の趣旨の範囲で適宜変更、追加が許容される。例えば、上記実施例では、送液ポンプ7の送液流量を変化させたり、二方切替バルブ12を廃液流路14側と分取流路13側のいずれかに切り替えたりする時間を計算により求めたが、他の方法により決定することもできる。例えば、図1においてトラップカラム8からの排出流路10上に該流路中を通過する溶液の濁度を識別可能な濁度計を設置する。このような濁度計がトラップカラム8からの溶出液が水からジクロロメタンとのエマルジョンに変化したことを検出すると、制御部30は送液ポンプ7の送液流量を0.1mL/minに低下させ、また、二方切替バルブ12を廃液流路14側から分取流路13側へ切り替えて目的化合物を含む溶出液の分取を開始する。
【0055】
また、送液ポンプ7の送液流量を変化させたり、二方切替バルブ12を廃液流路14側と分取流路13側のいずれかに切り替えたりするタイミングを、上記で計算、又は予測された時間より少し前、又は後に設定することもできる。その場合、切替タイミングを早める、又は送らせる時間(例えば数十秒)をユーザが設定する設定手段をさらに設け、切り替えのタイミングを設定手段で設定された時間だけずらすようにすればよい。
【0056】
また、上記実施例ではトラップカラム8を1本のみ使用する場合について説明したが、次のようにトラップカラム8を複数本使用する構成とすることもできる。即ち、予め同一又は異なる化合物が捕集されたトラップカラムを複数本用意し、それらをカラムラック9に装着する。そして、それらのうち1本を選択して上記供給流路6及び廃液流路14に接続可能なように流路切替手段(バルブ)を設け、選択されたトラップカラムからの化合物の溶出を行えるようにする。これにより、複数のトラップカラムから溶出した化合物をそれぞれ別の回収容器に回収することができる。
【0057】
また例えば、上記実施例では、トラップカラム8内の移動相を水で置換し、その水をジクロロメタンで追い出すようにしたが、移動相そのものに水、または水系の溶媒を用いる場合に、その移動相をトラップカラム8から追い出すためにジクロロメタンを導入するという構成の場合にも本願発明を適用可能である。
また、本実施例では、第2溶媒としてジクロロメタン/メタノール混合液、第3溶媒としてアセトニトリルを使用したが、これらの溶媒は上記に限定されるものではなく、また、目的成分ごとに最適な溶媒を複数用意し、流路切替手段で最適な溶媒に適宜切り替える構成にすることも可能である。
【符号の説明】
【0058】
1…溶液容器
2…洗浄水容器
3…溶出用溶媒容器
4…洗浄液容器
5…切替バルブ
6…供給流路
7…送液ポンプ
8…トラップカラム
9…カラムラック
10…排出流路
11…分取ヘッド
12…二方切替バルブ
13…分取流路
14…廃液流路
15…ガス流路
16…開閉バルブ
17…回収容器
18…容器ラック
19…ヒータ
20…温度センサ
21…温調部
30…制御部
31…操作部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
目的成分を含む溶液をトラップカラムに流して該目的成分をトラップカラム中に捕集し、その後に溶出力を有する溶媒を前記トラップカラムに流し、該トラップカラム中に捕集されている目的成分を溶出させて回収する分取精製装置において、
a) 前記トラップカラムを入口側端を下、排出側端を上として、カラム内流路が上下方向に延伸するように保持する保持手段と、
b) 前記保持手段に保持された前記トラップカラム中に目的成分が捕集された状態で、該トラップカラム中に残る第1溶媒と低相溶性であり、第1溶媒より比重の大きな第2溶媒を該トラップカラムの入口側端に送給する送液手段と、
c) 前記トラップカラムの排出側端から出てくる溶液を、回収容器に至る回収流路と廃液口に至る廃液流路との何れかに選択的に流すように流路を切り替える流路切替手段と、
d) 前記送液手段により第2溶媒が前記トラップカラムに送給されるのに対応してこれに押し上げられて前記トラップカラムの排出側端から第1溶媒が出てくるときは該第1溶媒を前記廃液流路に流し、前記トラップカラムの排出側端から第2溶媒を含んだ溶液が出るタイミングで該溶液を前記回収流路に流すように、前記流路切替手段を制御する流路制御手段と、
e) 前記トラップカラムの排出側端から第1溶媒を前記廃液流路に流すときは、前記送液手段に第1の送液流量で前記第2溶媒を送給させ、前記トラップカラムの排出側端から第2溶媒を含んだ溶液を前記回収流路に流すときは前記送液手段に前記第1送液流量よりも低い第2送液流量で前記第2溶媒を送給させる送液流量制御手段と、
を備えることを特徴とする分取精製装置。
【請求項2】
請求項1に記載の分取精製装置において、
f)前記トラップカラムの内容積と前記第1送液流量に基づき、第2溶媒の前記トラップカラムへの送給を開始してから該トラップカラムの排出側端から第2溶媒を含んだ溶液が排出され始めるまでの時間を算出する演算手段をさらに備え、
前記流路制御手段は、前記演算手段で算出された時間になると前記トラップカラムの排出側端から出てくる第2溶媒を含んだ溶液を回収流路に流すように前記流路切替手段を制御することを特徴とする分取精製装置。
【請求項3】
請求項1に記載の分取精製装置において、
g) 第2溶媒の前記トラップカラムへの送給を開始してから該トラップカラムの排出側端から第2溶媒を含んだ溶液が排出され始めるまでの時間をユーザが設定する回収流路側切替時間設定手段をさらに備え、
前記流路制御手段は、前記回収流路側切替時間設定手段で設定された時間になると前記トラップカラムの排出側端から出てくる第2溶媒を含んだ溶液を回収流路に流すように前記流路切替手段を制御することを特徴とする分取精製装置。
【請求項4】
請求項1に記載の分取精製装置において、
h) 前記トラップカラムの排出側端から排出される溶液が第2溶媒を含むか否かを判断する排出溶液識別手段をさらに備え、
前記流路制御手段は、前記排出溶液識別手段が排出溶液が第2溶媒を含むと判断すると前記トラップカラムの排出側端から出てくる第2溶媒を含んだ溶液を回収流路に流すように前記流路切替手段を制御することを特徴とする分取精製装置。
【請求項5】
請求項1〜4に記載の分取精製装置において、
i)前記トラップカラムから出てくる第2溶媒を回収流路に流した後、前記流路切替手段によって流路を回収流路から廃液流路に切り替える時間をユーザが設定する廃液流路切替時間設定手段をさらに備え、
前記流路切替手段は、前記廃液流側切替時間設定手段で設定された時間になると前記トラップカラムから出てくる溶液を廃液流路に流すように、前記流路切替手段を制御することを特徴とする分取精製装置。
【請求項6】
請求項5に記載の分取精製装置において、前記廃液流路切替時間設定手段で設定された時間は、前記トラップカラムに捕集された目的成分が第2溶媒によって全て溶出する時間であることを特徴とする分取精製装置。
【請求項7】
請求項5に記載の分取精製装置において、前記廃液流路切替時間設定手段で設定された時間は、前記回収容器に回収された溶液に含まれる目的成分の乾固が完了する時間であることを特徴とする分取精製装置。
【請求項8】
請求項1〜7に記載の分取精製装置において、
j)前記回収容器を加温する加温手段と、
k)前記回収容器内に滴下又は流下される前記排出溶液を飛散させるべくガス流を形成するガス供給手段と、
を更に備える分取精製装置。
【請求項9】
請求項1〜8に記載の分取精製装置において、
前記送液手段は、第2溶媒と第3溶媒のいずれかをトラップカラムの入口側端に送給し、
l)前記送液手段に送給される溶媒の種類を、第2溶媒と、トラップカラムの洗浄用の第3溶媒のいずれかに切り替える溶媒切替手段と、
m)前記溶媒切替手段が溶媒を第2溶媒から第3溶媒に切り替える時間をユーザが設定する第3溶媒切替時間設定手段と、
n) 前記第3溶媒切替時間設定手段で設定された時間になると、前記溶媒切替手段が前記送液手段に送給する溶媒を第2溶媒から第3溶媒に切り替える溶媒制御手段と、
をさらに備える分取精製装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−164049(P2011−164049A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−29889(P2010−29889)
【出願日】平成22年2月15日(2010.2.15)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)