説明

分岐コネクタ

【課題】伝送路の分岐中央部の一点から各分岐接続先に対応して分岐された分岐伝送部の端部までの距離(伝送距離)が、すべての分岐接続先で略一定となる伝送路を構成することが可能な分岐コネクタを提供することを目的とする。
【解決手段】 分岐コネクタ20のプリント基板30には、分岐中央部40と、分岐中心点41から複数の分岐接続先の方向に2次元放射状に分岐し、該分岐接続先のそれぞれに対応した分岐伝送部42と、を備えた分岐伝送路である放射状伝送部43が、該プリント基板30の表面に配線パターンとして形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気信号の伝送路の分岐接続を行うため、例えば、車両の信号線の終端接続等に用いられる分岐コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
分岐コネクタは、例えば、電線接続用コネクタに使用される。電線接続用コネクタは、例えば、接続すべき電線の端部に取り付けられる電線側コネクタと、該電線側コネクタに接続し電気信号の伝送路の分岐接続を行う分岐伝送路を有する分岐コネクタを使用した接続回路側コネクタとから構成され、電線側コネクタと接続回路側コネクタとを嵌合することにより、電線側コネクタに端部を接続された複数本の電線を一括して分岐伝送路に接続することができるような構造になっている。
【0003】
近年、自動車としての安全性や快適性の要求に伴う車載通信においては、データ量の増加や複雑化に対応する高速でかつ信頼性の高いネットワークが構築されており、そのネットワークを介して制御信号、情報信号等の電気信号を伝送させるための車載通信における分岐コネクタの構成がいろいろと提案されている。また、車載通信の高速化に伴う、電気信号の波形歪を抑制するための電子部品(抵抗、コンデンサ等)を用いたフィルタ回路を挿入した、様々な分岐コネクタの構成も提案されている。
【0004】
例えば、バスバータイプの構造では、フィルタ回路を実装することが容易ではないことから、接続パターンが形成されているプリント基板上に、電子部品を実装してフィルタ回路を構成する分岐コネクタも提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−160938号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の分岐コネクタは、電気信号を分岐接続する伝送路において、各分岐接続先に対応して分岐された伝送路の一部分である分岐伝送部は、伝送路の主幹部に対して略直角に分岐し、分岐接続先毎の複数の分岐伝送部が略平行に構成されている。そのため、伝送路の主幹部の一点から各分岐伝送部の端部までの距離(伝送距離)は、一定ではなかった。また、高速通信においては、電気信号の波長が短くなっていることから、分岐接続先によって伝送距離の異なる従来の分岐コネクタでは、伝送距離の違いによる電気信号の伝搬時間や電圧値等の違いが問題となる可能性があった。
【0007】
そこで、本発明は、以上のような問題点を解決するためになされたもので、伝送路の分岐中央部の一点から各分岐接続先に対応して分岐された分岐伝送部の端部までの距離(伝送距離)が、すべての分岐接続先で略一定となる伝送路を構成することが可能な分岐コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した従来の問題点を解決すべく下記の発明を提供する。
本発明の第1の態様にかかる分岐コネクタは、電気信号の伝送路の分岐接続を行う分岐伝送路を有する分岐コネクタであって、前記分岐伝送路は、当該分岐伝送路内の1点である分岐中心点から分岐接続先毎の当該分岐伝送路の端部までの伝送距離がすべての前記分岐接続先で略同一であることを特徴とする。
【0009】
本発明の第2の態様にかかる分岐コネクタは、上記の本発明の第1の態様にかかる分岐コネクタにおいて、前記分岐コネクタは、前記分岐伝送路が面上及び/または多層基板のときの内層に形成され、前記分岐接続先のそれぞれに対応した雄端子を表面に立設したプリント基板を備え、前記プリント基板の面上に形成された前記分岐伝送路において、前記雄端子に電気的に接続するランドの中心と当該ランドに電気的に接続する前記分岐伝送路の前記分岐中心点との間の伝送距離が、すべての前記分岐接続先に対して略一定であることを特徴とする。
【0010】
本発明の第3の態様にかかる分岐コネクタは、上記の本発明の第2の態様にかかる分岐コネクタにおいて、前記プリント基板が両面基板であり、前記分岐伝送路が差動信号を伝送する差動伝送路であるとき、2つの前記分岐伝送路を、それぞれ1つずつ当該プリント基板の表面及び裏面に形成するとともに、前記分岐接続先毎にペアとなる前記プリント基板の表面の前記伝送距離と当該プリント基板の裏面の前記伝送距離が略一定であることを特徴とする。
【0011】
本発明の第4の態様にかかる分岐コネクタは、上記の本発明の第2または3の態様にかかる分岐コネクタにおいて、前記分岐コネクタは、前記プリント基板の面上に実装され、前記分岐接続先毎に対応した前記分岐伝送路の端部と当該分岐接続先毎に対応した前記雄端子とに電気的に接続し、当該分岐伝送路の端部と当該雄端子との間の電気信号の波形歪を抑制する電子部品を、前記雄端子毎に備えていることを特徴とする。
【0012】
本発明の第5の態様にかかる分岐コネクタは、上記の本発明の第4の態様にかかる分岐コネクタにおいて、前記プリント基板の面上に設けられ、前記雄端子に電気的に接続する前記ランドが、当該雄端子に電気的に接続する前記電子部品の一方の端部のランドを兼ねていることを特徴とする。
【0013】
本発明の第6の態様にかかる分岐コネクタは、上記の本発明の第4または5の態様にかかる分岐コネクタにおいて、前記プリント基板の面上に設けられ、前記雄端子に電気的に接続する前記ランドが、前記雄端子に隣接しかつ当該ランドとは直接電気的に接続していない前記電子部品との干渉を防止する形状を有していることを特徴とする。
【0014】
本発明の第7の態様にかかる分岐コネクタは、上記の本発明の第2の態様にかかる分岐コネクタにおいて、前記プリント基板が多層基板であり、前記分岐伝送路が差動信号を伝送する差動伝送路であるとき、前記プリント基板は、2つの前記分岐伝送路をそれぞれ1つずつ、当該プリント基板の絶縁層を少なくとも1層挟んで形成されるとともに、前記分岐接続先毎にペアとなる前記伝送距離が略一定であることを特徴とする。
【0015】
本発明の第8の態様にかかる分岐コネクタは、上記の本発明の第1の態様にかかる分岐コネクタにおいて、前記分岐コネクタは、前記分岐接続先のそれぞれに対応した接続端子部を有した前記分岐伝送路を構成するバスバーを備え、前記バスバーは、当該バスバーの前記分岐中心点と前記接続端子部の端部との間伝送距離が前記分岐接続先毎に略一定であることを特徴とする。
【0016】
本発明の第9の態様にかかる分岐コネクタは、上記の本発明の第8の態様にかかる分岐コネクタにおいて、前記分岐伝送路が差動信号を伝送する差動伝送路であるとき、前記分岐コネクタは、前記バスバーを2つ備え、前記バスバーが互いに接触しないように2層化した構成であることを特徴とする。
【0017】
本発明の第10の態様にかかる分岐コネクタは、上記の本発明の第1乃至9のいずれか1つの態様にかかる分岐コネクタにおいて、前記分岐伝送路は、前記分岐接続先のそれぞれに対応した端部を有した放射状伝送部を備え、前記放射状伝送部は、前記分岐中心を有する分岐中央部と、前記分岐中央部と一体化して形成され、前記分岐接続先のそれぞれに対応した端部を有する分岐伝送部と、を備え、前記放射状伝送部は、前記分岐伝送部の幅中心線が、前記分岐中央部の前記分岐中心点から2次元放射状に分岐し、前記分岐中心点から前記分岐伝送部の端部までの伝送距離がすべての前記分岐接続先で略同一となるとともに、前記分岐中央部と前記分岐伝送部とが一体化して形成されていることを特徴とする。
【0018】
本発明の第11の態様にかかる分岐コネクタは、上記の本発明の第10の態様にかかる分岐コネクタにおいて、前記放射状伝送部は、前記分岐中心点を中心に隣り合う前記分岐伝送部の幅中心線のなす角が略同角度となるようなに形成されていることを特徴とする。
【0019】
本発明の第12の態様にかかる分岐コネクタは、上記の本発明の第1乃至11のいずれか1つの態様にかかる分岐コネクタを、車載ネットワーク通信の終端接続部として用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、分岐伝送路の分岐中心から各分岐接続先に対応して分岐された分岐伝送路の端部までの距離(伝送距離)が、すべての分岐接続先で略一定となるため、制御信号、情報信号等の電気信号の伝搬時間や電圧値がすべての分岐接続先で略同一となり、信頼性の高い通信を行うことができる。
【0021】
また、プリント基板を用いることにより、容易に電子部品を実装することができ、電気信号の波形歪を抑制することができる。
【0022】
また、すべての分岐接続先で略同一となる分岐伝送路を有したバスバーを2層使用したり、両面のそれぞれに1つずつ分岐伝送路を形成した両面基板であるプリント基板を使用したり、1層に1つの分岐伝送路を形成した2層を備えた多層基板であるプリント基板を使用したりすることにより、差動伝送路にも使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態にかかる分岐コネクタを説明するための図である。
【図2】本発明の実施形態にかかる分岐コネクタ20の一例の概略側面図である。
【図3】本発明の実施形態にかかる分岐コネクタ20の一例の表面側の概略平面図である。
【図4】本発明の実施形態にかかる分岐コネクタ20の一例の裏面側の概略平面図である。
【図5】本発明の実施形態にかかる分岐コネクタ120の一例の概略側面図である。
【図6】本発明の実施形態にかかる分岐コネクタ120の一例の表面側の概略平面図である。
【図7】本発明の実施形態にかかる分岐コネクタ120の一例の裏面側の概略平面図である。
【図8】プリント基板130に実装された電子部品及びランドを説明するための拡大平面図である。
【図9】本発明の実施形態にかかる分岐コネクタ220の一例の概略側面図である。
【図10】本発明の実施形態にかかる分岐コネクタ220の一例の表面側の概略平面図である。
【図11】本発明の実施形態にかかる分岐コネクタ220の一例の裏面側の概略平面図である。
【図12】本発明の実施形態にかかる分岐コネクタ320の一例の概略側面図である。
【図13】本発明の実施形態にかかる分岐コネクタに使用されるバスバー70の一例の概略斜視図である。
【図14】(a)は、バスバー70のロアケース16側からの概略平面図であり、(b)は、バスバー70の概略側面図である。
【図15】本発明の実施形態にかかる分岐コネクタに使用される2つのバスバー70a及び70bの一例の概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、本実施の形態における記述は、本発明にかかる分岐コネクタの一例を示すものであり、これに限定されるものではない。本実施の形態における分岐コネクタの細部構成等に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0025】
まず、本発明の実施形態にかかる分岐コネクタについて説明する。図1は、本発明の実施形態にかかる分岐コネクタを説明するための図である。図1に示すように、例えば、本発明の実施形態にかかる分岐コネクタ20は、電線同士を接続するときに使用する電線側コネクタ11と接続回路側コネクタ14とを備えた電線接続用コネクタ1に使用される。
【0026】
電線側コネクタ11は、電線用単層ユニット12を複数層積層したものである。また、電線用単層ユニット12は、例えば成形性に優れたポリプロピレン等の材料で形成された扁平ハウジング内に、電気信号の伝送を行う電線に接続される第1接続端子部を平面的に配列したものである。尚、符号13はカバー部材である。
【0027】
接続回路側コネクタ14は、電線側コネクタ11を収納する、例えば成形性に優れたポリプロピレン等の材料で形成されたアッパーケース15と、第1接続端子部に嵌合する第2接続端子部と電気的に接続されている分岐伝送路を備えた分岐コネクタ20と、アッパーケース15と協働して分岐コネクタ20を挟みこむ、例えば成形性に優れたポリプロピレン等の材料で形成されたロアケース16と、を備えている。
【0028】
尚、図1においては、分岐コネクタ20として、プリント基板を用いた場合を示しているが、バスバーを用いても良い。また、プリント基板を用いた場合は、第1接続端子部を雌端子と呼び、第2接続端子部を雄端子と呼ぶ。また、バスバーを用いて場合は、第1接続端子部を雌接続端子部と呼び、第2接続端子部が雄接続端子部と呼ぶ。
【0029】
上述したように本発明の実施形態にかかる分岐コネクタ20を備えた電線接続用コネクタ1は、電線側コネクタ11と接続回路側コネクタ14とを嵌合させることによって、即ち、電線側コネクタ11の第1接続端子部と接続回路側コネクタ14の第2接続端子部とを嵌合させることによって、電気信号の伝送を行う電線を、分岐接続を行う所定の接続パターン(分岐伝送路)に一括して接続することができる。
【0030】
次に、本発明の実施形態にかかる分岐コネクタについて説明する。
まず、プリント基板を使用した本発明の実施形態にかかる分岐コネクタ20の一例について、図2乃至図4を参照して説明する。
【0031】
図2は、本発明の実施形態にかかる分岐コネクタ20の一例の概略側面図である。また、図3は、本発明の実施形態にかかる分岐コネクタ20の一例の表面側の概略平面図であり、図4は、その分岐コネクタ20の裏面側の概略平面図である。尚、本明細書では、分岐伝送路の分岐接続先数が5つの場合を例に挙げて説明する。
【0032】
図2乃至図4に示すように、本発明の実施形態にかかる分岐コネクタ20において、プリント基板30には、分岐中央部40と、分岐接続先のそれぞれの端部を有した5つの分岐伝送部42と、を備えた分岐伝送路である放射状伝送部43が、該プリント基板30の表面に配線パターンとして形成されている。尚、図2乃至図4においては、プリント基板30の表面に放射状伝送部43を設けているが、裏面に放射状伝送部43が設けられていても良い。ここで、プリント基板30の表面とはアッパーケース15側の面であり、プリント基板30の裏面とはロアケース16側の面である。
【0033】
放射状伝送部43は、分岐伝送部42の幅中心線45が、分岐中央部40の分岐中心点41から2次元放射状に分岐し、分岐中心点41から分岐伝送部42の端部44までの伝送距離がすべての分岐伝送部42で略同一となるとともに、分岐中央部40と分岐伝送部42とが一体化して形成されている。
【0034】
また、放射状伝送部43は、分岐中心点41から分岐伝送部42の幅中心線45上の端部44までの距離(伝送距離)Lが、すべての分岐接続先で略同一となる形状である。また、分岐中心点41を中心に隣り合う幅中心線45同士のなす角θは、略同角度であることが好ましい。また、すべての分岐接続先に対する分岐伝送部42の幅Wも略同一であることが好ましい。
【0035】
尚、図2乃至図4においては、分岐伝送路として、上述したような2次元放射状に分岐した分岐伝送部42を有した形状の放射状伝送部43である場合を例に挙げているが、分岐伝送路は、放射状伝送部43に限らず、分岐伝送路内の一点である分岐中心点から該分岐伝送路の分岐接続先のそれぞれに対応した端部までの伝送距離がすべての分岐接続先で略同一となるように形成された分岐伝送路であれば良い。
【0036】
また、プリント基板30には、表面に分岐接続先のそれぞれに対応した雄端子50が表面に立設している。尚、プリント基板30の表面に立設した雄端子50は、プリント基板30の表面に対して垂直をなすように固定されている。
【0037】
また、プリント基板30には、雄端子50のそれぞれに対応したランド52及び53が、放射状伝送部43の設けられている面(図2乃至図4では表面)及びその反対面(図2乃至図4では裏面)のそれぞれの面上に設けられている。尚、プリント基板30のランド52及びランド53は、同一のスルーホールの両端に位置しており、各ランド52は放射状伝送部43の各分岐伝送部42に直接電気的に接続し、各ランド53は放射状伝送部43に直接電気的に接続していない。ここで、直接電気的に接続するとは、他のランドや伝送路を介さずに電気的に接続することである。また、ランド52は、雄端子50に電気的に接続されている。
【0038】
上述したようなプリント基板30を使用することにより、分岐伝送路である放射状伝送部43の分岐中心点41から分岐伝送部42の端部44までの距離(伝送距離)Lが、すべての分岐接続先で略一定となるため、制御信号、情報信号等の電気信号の伝搬時間や電圧値がすべての分岐接続先で略同一となり、信頼性の高い通信を行うことができる。
【0039】
次に、本発明の実施形態にかかる分岐コネクタ20と異なる別の一例である分岐コネクタ120について、図5乃至図8を参照して説明する。
【0040】
図5は、本発明の実施形態にかかる分岐コネクタ120の一例の概略側面図である。また、図6は、本発明の実施形態にかかる分岐コネクタ120の一例の表面側の概略平面図であり、図7は、その分岐コネクタ120の裏面側の概略平面図である。また、図8は、プリント基板130に実装された電子部品及びランドを説明するための拡大平面図である。
【0041】
図2乃至図4に示した分岐コネクタ20と、図5乃至図7に示した分岐コネクタ120との相違点について説明する。分岐コネクタ20は、プリント基板30に電子部品が実装されていないが、分岐コネクタ120は、プリント基板130に電子部品60が実装されており、各分岐接続先の雄端子50と電気的に接続されるランド52と放射状伝送部43の各分岐伝送部42とが、電子部品60を介して電気的に接続されている。電子部品60は、抵抗61とインダクタンス62であり、すべての雄端子50のそれぞれに対応して、抵抗61及びインダクタンス62の1組がそれぞれ実装されている。
【0042】
抵抗61及びインダクタンス62の一端が雄端子50と電気的に接続されているランド52に電気的に接続され、抵抗61及びインダクタンス62の他端が放射状伝送部43の分岐伝送部42に電気的に接続されることにより、電子部品60である抵抗61及びインダクタンス62が並列回路を構成し、雄端子50と放射状伝送部43の分岐伝送部42との間の制御信号や情報信号等の電気信号の波形歪を抑制することができる。
【0043】
電子部品60は、半田付け等により容易にプリント基板130に実装することができる。尚、半田付けの場合、プリント基板130への電子部品60の実装に際しては、電子部品60を半田付けするのに必要な分岐伝送部42の最小領域を実装必要領域としたとき、実装必要領域以外の放射状伝送部43の領域をレジストして半田付けの影響を受けないようにしても良い。
【0044】
電子部品60と電気的に接続するランド52は、図8に示すように、+Y方向側の辺が長辺で、長辺に対向する−Y方向側の辺が短辺となる異型の台形形状を有しており、ランド52の中心部に、雄端子50の基端部51が位置している。即ち、各雄端子50と電気的に接続する各ランド52が、各雄端子50に隣接しかつ各ランド52と直接電気的に接続していない電子部品60との干渉を防止する形状を有している。
【0045】
また、各雄端子50と電気的に接続する各ランド52は、各電子部品60の一端のランド、即ち、各抵抗61及び各インダクタンス62の一端のランドを兼ねている。これにより、各電子部品60の一端のランドが各雄端子50と電気的に接続する各ランド52と一体化するので、各雄端子50と各電子部品60との間の距離が短くなり、電子部品60によるノイズ除去の効果を向上させることができる。また、一体化によりランド全体の面積が小さくなることからプリント基板130全体の小型化を更に図ることができる。即ち、分岐コネクタ120の小型化を更に図ることができる。
【0046】
また、各雄端子50と電気的に接続する各ランド52が、各雄端子50に隣接しかつ各ランド52と直接電気的に接続していない電子部品60との干渉を防止する形状を有しているので、各雄端子50が隣接する電子部品60に対してノイズの影響を与えることを防止するとともに、プリント基板130全体の小型化を更に図ることができる。
【0047】
尚、図5乃至図8において、各雄端子50と電気的に接続する各ランド52は、各電子部品60の一端のランドと一体化した形状であるが、各雄端子50と電気的に接続する各ランド52と各電子部品60の一端のランドとが別のランドであっても良く、電子部品60をプリント基板130に実装することにより、雄端子50と放射状伝送部43の分岐伝送部42との間の制御信号や情報信号等の電気信号の波形歪を抑制することができる。
【0048】
次に、本発明の実施形態にかかる分岐コネクタ20及び120と異なる別の一例である分岐コネクタ220について、図9乃至図11を参照して説明する。尚、プリント基板230は両面基板である。
【0049】
図9は、本発明の実施形態にかかる分岐コネクタ220の一例の概略側面図である。また、図10は、本発明の実施形態にかかる分岐コネクタ220の一例の表面側の概略平面図であり、図11は、その分岐コネクタ220の裏面側の概略平面図である。
【0050】
図5乃至図7に示した分岐コネクタ120と、図9乃至図11に示した分岐コネクタ220との相違点について説明する。分岐コネクタ120は、プリント基板130の片面にのみ放射状伝送部43が形成されているが、分岐コネクタ220は、プリント基板230の表面及び裏面に、それぞれ1つずつ放射状伝送部43を形成している。
【0051】
尚、プリント基板230は、プリント基板130の場合と同様に、各放射状伝送部43に対して、分岐接続先毎に雄端子50と、該雄端子50と電気的に接続するランド52と、スルーホールの該ランド52の反対の端部に設けられたランド53と、該ランド52と放射状伝送部43の各分岐伝送部42とに電気的に接続される電子部品60を備えている。また、プリント基板230の表面及び裏面に設けられた2つの放射状伝送部43に対応するすべての雄端子50は、プリント基板230の表面に立設している。
【0052】
プリント基板230の表面及び裏面に設けられた2つの放射状伝送部43は、プリント基板230の表面または裏面から透視したとき、各放射状伝送部43の分岐中心点41は、プリント基板230の表面または裏面から透視したとき、重なり合うように形成されることが好ましい。
【0053】
上記のような構成のプリント基板230を使用した分岐コネクタ220は、放射状伝送部43が差動信号を伝送する差動伝送路である場合に特に、信頼性の高い通信を行うことができる。
【0054】
次に、本発明の実施形態にかかる分岐コネクタ20、120及び220と異なる別の一例である分岐コネクタ320について、図12を参照して説明する。尚、プリント基板330は多層基板である。図12は、本発明の実施形態にかかる分岐コネクタ320の一例の概略側面図である。
【0055】
図9乃至図11に示した分岐コネクタ220と、図12に示した分岐コネクタ320との相違点について説明する。分岐コネクタ220は、プリント基板230の表面及び裏面にそれぞれ1つずつ放射状伝送部43が形成されているのに対して、分岐コネクタ320は、2つの放射状伝送部43を有し、プリント基板330を構成する複数の絶縁層の中の少なくとも1つの絶縁層を挟んで放射状伝送部43が形成されている。また、電子部品60がなくランド52と放射状伝送部43の各分岐伝送部42とが図2乃至図4に示した場合と同様に直接電気的に接続される。
【0056】
図12においては、中間の絶縁層370の両面に、それぞれ1つずつ放射状伝送部43が形成されている。尚、複数の絶縁層を挟むことも可能である。その場合は、内部の導電層はその他の伝送路とすることも可能である。また、図12においては、プリント基板330の内層に2つの放射状伝送部43をともに形成しているが、2つの放射状伝送部43の内の1つをプリント基板330の表面または裏面に形成しても良い。
【0057】
上記のような構成のプリント基板330を使用した分岐コネクタ330は、放射状伝送部43が差動信号を伝送する差動伝送路である場合に特に、信頼性の高い通信を行うことができる。
【0058】
次に、バスバーを使用した本発明の実施形態にかかる分岐コネクタの一例について、図13及び図14を参照して説明する。
【0059】
図13は、本発明の実施形態にかかる分岐コネクタに使用されるバスバー70の一例の概略斜視図である。また、図14(a)は、本発明の実施形態にかかる分岐コネクタに使用されるバスバー70のロアケース16側からの概略平面図であり、(b)はバスバー70の概略側面図である。
【0060】
図13及び図14に示すように、バスバー70は、分岐中央部140と、分岐接続先のそれぞれの端部を有した5つの分岐伝送部142と、を有する分岐伝送路である放射状伝送部143を備え、更に、放射状伝送部143の分岐伝送部142とそれぞれ直接電気的に接続する雄接続端子部150を備えている。
【0061】
放射状伝送部143は、分岐伝送部142の幅中心線145が、分岐中央部140の分岐中心点141から2次元放射状に分岐し、分岐中心点141から分岐伝送部142の端部144までの距離がすべての分岐伝送部142で略同一となるとともに、分岐中央部140と分岐伝送部142とが一体化して形成されている。
【0062】
放射状伝送部143は、分岐中心点141から分岐伝送部142の幅中心線145上の端部144までの距離Lが、すべての分岐接続先で略同一となる形状である。また、分岐中心点141を中心に隣り合う幅中心線145同士のなす角θは、略同角度であることが好ましい。また、すべての分岐接続先に対する分岐伝送部142の幅Wも略同一であることが好ましい。
【0063】
バスバー70は、雄接続端子部150が、放射状伝送部143の分岐伝送部142と一体化しおり、分岐中心点141から雄接続端子部150の端部までの伝送距離がすべての分岐接続先で略同一となるように形成されている。
【0064】
上述したようなバスバー70を使用することにより、分岐伝送路である放射状伝送部143の分岐中心点141から接続端子部150の端部までの伝送距離が、すべての分岐接続先で略一定となるため、制御信号、情報信号等の電気信号の伝搬時間や電圧値がすべての分岐接続先で略同一となり、信頼性の高い通信を行うことができる。
【0065】
また、図15に示すように、2つのバスバー70(70a及び70b)を互いに接触しないように2層化した構成にしても良い。即ち、バスバー70a及び70bの各放射状伝送部143a及び143bの面が互いに略平行で、かつ、面接触しないように2層化した構成にしても良い。このとき、放射状伝送部143aの分岐中心点141aと放射状伝送部143bの分岐中心点141bとは、放射面の一方から透視したとき、重なるように形成することが好ましい。また、2層化に限定されず、多層化とすることも可能である。
【0066】
図15に示した2つのバスバー70a及び70bを使用した分岐コネクタは、放射状伝送部143が差動信号を伝送する差動伝送路である場合に特に、信頼性の高い通信を行うことができる。
【0067】
上述したプリント基板30、130、230、または330、あるいはバスバー70を用いた本発明の実施形態にかかる分岐コネクタは、制御信号や情報信号等の電気信号の信頼性を必要とする、車両の通信プロトコルであるCAN等を適用した車載ネットワーク通信の終端接続部として用いことにより、車載ネットワーク通信のより高い信頼性を得ることができる。
【0068】
特に、次世代の自動車としてより安全性や快適性を要求されていることに伴う車両の制御システムのデータ量の増加や複雑化に対応する高速でかつ信頼性の高いネットワークを構築するための車両の通信プロトコルであるフレックスレイ(Flex Ray)を適用した信号線の終端接続部として、本発明の実施形態にかかる分岐コネクタを用いることにより、車両の電子機器や電気機器間及び制御コントローラとの通信のより高い信頼性を得ることができる。
【符号の説明】
【0069】
1 : 電線接続用コネクタ
11 : 電線側コネクタ
12 : 電線用単層ユニット
13 : カバー部材
14 : 接続回路側コネクタ
15 : アッパーケース
16 : ロアケース
20,120,220,320 : 分岐コネクタ
30,130,230,330 : プリント基板
40 : 分岐中央部
41 : 分岐中心点
42 : 分岐伝送部
43 : 放射状伝送部
44 : 幅中心位置
45 : 幅中心線
50 : 雄端子
51 : 基端部
52,53 : ランド
60 : 電子部品
61 : 抵抗
62 : インダクタンス
70、70a,70b : バスバー




【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気信号の伝送路の分岐接続を行う分岐伝送路を有する分岐コネクタであって、
前記分岐伝送路は、当該分岐伝送路内の1点である分岐中心点から分岐接続先毎の当該分岐伝送路の端部までの伝送距離がすべての前記分岐接続先で略同一であることを特徴とする分岐コネクタ。
【請求項2】
前記分岐コネクタは、前記分岐伝送路が面上及び/または多層基板のときの内層に形成され、前記分岐接続先のそれぞれに対応した雄端子を表面に立設したプリント基板を備え、
前記プリント基板の面上に形成された前記分岐伝送路において、前記雄端子に電気的に接続するランドの中心と当該ランドに電気的に接続する前記分岐伝送路の前記分岐中心点との間の伝送距離が、すべての前記分岐接続先に対して略一定であることを特徴とする特徴とする請求項1に記載の分岐コネクタ。
【請求項3】
前記プリント基板が両面基板であり、前記分岐伝送路が差動信号を伝送する差動伝送路であるとき、
2つの前記分岐伝送路を、それぞれ1つずつ当該プリント基板の表面及び裏面に形成するとともに、前記分岐接続先毎にペアとなる前記プリント基板の表面の前記伝送距離と当該プリント基板の裏面の前記伝送距離が略一定であることを特徴とする請求項2に記載の分岐コネクタ。
【請求項4】
前記分岐コネクタは、前記プリント基板の面上に実装され、前記分岐接続先毎に対応した前記分岐伝送路の端部と当該分岐接続先毎に対応した前記雄端子とに電気的に接続し、当該分岐伝送路の端部と当該雄端子との間の電気信号の波形歪を抑制する電子部品を、前記雄端子毎に備えていることを特徴とする請求項2または3に記載の分岐コネクタ。
【請求項5】
前記プリント基板の面上に設けられ、前記雄端子に電気的に接続する前記ランドが、当該雄端子に電気的に接続する前記電子部品の一方の端部のランドを兼ねていることを特徴とする請求項4に記載の分岐コネクタ。
【請求項6】
前記プリント基板の面上に設けられ、前記雄端子に電気的に接続する前記ランドが、前記雄端子に隣接しかつ当該ランドとは直接電気的に接続していない前記電子部品との干渉を防止する形状を有していることを特徴とする請求項4または5に記載の分岐コネクタ。
【請求項7】
前記プリント基板が多層基板であり、前記分岐伝送路が差動信号を伝送する差動伝送路であるとき、
前記プリント基板は、2つの前記分岐伝送路をそれぞれ1つずつ、当該プリント基板の絶縁層を少なくとも1層挟んで形成されるとともに、前記分岐接続先毎にペアとなる前記伝送距離が略一定であることを特徴とする請求項2に記載の分岐コネクタ。
【請求項8】
前記分岐コネクタは、前記分岐接続先のそれぞれに対応した接続端子部を有した前記分岐伝送路を構成するバスバーを備え、
前記バスバーは、当該バスバーの前記分岐中心点と前記接続端子部の端部との間伝送距離が前記分岐接続先毎に略一定であることを特徴とする請求項1に記載の分岐コネクタ。
【請求項9】
前記分岐伝送路が差動信号を伝送する差動伝送路であるとき、
前記分岐コネクタは、前記バスバーを2つ備え、
前記バスバーが互いに接触しないように2層化した構成であることを特徴とする請求項8に記載の分岐コネクタ。
【請求項10】
前記分岐伝送路は、前記分岐接続先のそれぞれに対応した端部を有した放射状伝送部を備え、
前記放射状伝送部は、
前記分岐中心を有する分岐中央部と、
前記分岐中央部と一体化して形成され、前記分岐接続先のそれぞれに対応した端部を有する分岐伝送部と、
を備え、
前記放射状伝送部は、前記分岐伝送部の幅中心線が、前記分岐中央部の前記分岐中心点から2次元放射状に分岐し、前記分岐中心点から前記分岐伝送部の端部までの伝送距離がすべての前記分岐接続先で略同一となるとともに、前記分岐中央部と前記分岐伝送部とが一体化して形成されていることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の分岐コネクタ。
【請求項11】
前記放射状伝送部は、前記分岐中心点を中心に隣り合う前記分岐伝送部の幅中心線のなす角が略同角度となるようなに形成されていることを特徴とする請求項10に記載の分岐コネクタ。
【請求項12】
車載ネットワーク通信の終端接続部として用いることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項に記載の分岐コネクタ。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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