説明

分岐ポリカーボネートの製造方法

【課題】分岐ポリカーボネートの改良された製造方法を提供する。
【解決手段】オリゴマー化の過程で重合系にカップリング触媒の少なくとも一部を添加することを特徴とする分岐剤を使用する分岐ポリカーボネートの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カップリング触媒化合物を添加するための改良技術を有する分岐ポリカーボネートの改良された製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
分岐ポリカーボネート樹脂及び分岐ポリカーボネートを製造するための方法は文献公知である。分岐ポリカーボネート樹脂製造のための公知の方法においては、ビスフェノールAのような二価フェノールを分岐剤として三官能又はより高官能性のヒドロキシル又はアシル化合物を使用してフォスゲンのようなカーボネート前躯体と反応させ長鎖分岐を与える。標準の線状ポリカーボネートの製造に於けるように、そのような方法は又モノフェノールのような単官能性化合物を連鎖停止剤として使用し、そしてカップリング触媒として作用しポリマー分子量を増加させる四級アミンのような相転移触媒を使用する。分岐ポリカーボネート樹脂生成物はせん断力に順応しそして中空成形のような或る用途において改良された加工性能を与える。特許文献1及び特許文献2、特許文献3及び特許文献4のような公知の分岐ポリカーボネート樹脂製造法においては、TEAのようなカップリング触媒がプロセスの種々の時間又は場所で添加できるが、添加のタイミングに関しての臨界性は教示されておらず、また分岐剤効率又は樹脂性能に対する利点に対してはなんら開示されていない。それゆえに、樹脂性能と原料利用効率の良好な組み合わせを与える分岐PCプロセスの改良が継続的に求められている。
【特許文献1】特開昭49−045318
【特許文献2】USPRe27,682
【特許文献3】USP6,225,436
【特許文献4】USP6,288,204
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題はポリカーボネートの製造においてカップリング触媒がより効果的に作用しそしてその製造方法と製品においてよりよい分岐効率とせん断順応性の利点を与える新規な方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
一観点においては、本発明は分岐剤の最適使用を与える分岐ポリカーボネートを製造するための方法である。より特徴的には、本発明は、a)二価フェノール、多官能性フェノール分岐剤、塩基及び水を組み合わせて反応混合物を形成し、b)それからカーボネート前躯体の少なくとも一部及び水と溶け合わない有機溶媒を添加して重合混合物を反応させ、部分的に二価フェノールをオリゴマー化させ、c)それからモノフェノール連鎖停止剤とカップリング触媒の少なくとも一部及び塩基を反応混合物に添加し、d)カーボネート前躯体の残り(もしあれば)を添加しそして重合混合物の反応を続け、e)もしあれば、カップリング触媒の残りを添加し、f)重合反応を完結させる段階的諸工程からなることを特徴とする、カップリング触媒を使用して二価フェノール、カーボネート前躯体、多官能性フェノール分岐剤及びモノフェノール連鎖停止剤から分岐ポリカーボネート組成物を製造する方法である。
好ましい一態様においては、カップリング触媒の全てを部分的にオリゴマー化した二価フェノールの存在下で工程c)に添加する。
【0005】
別の好ましい態様においては、工程c)に添加されるカップリング触媒の第一添加とは別にその後で、そして工程c)の反応混合物のさらなる反応及び重合の後で、カップリング触媒の第二添加又は後添加を行う。より好ましくは、工程c)に添加される第一のカップリング触媒を、Mwが1,200と1,800g/モルの間の所で、好ましくはMwが1,400と1,600g/モルの間の所で、オリゴマー化反応混合物に添加する。別の態様においては、カップリング触媒の第一添加が、添加される合計カップリング触媒量の0.5−20モル%の量である。別の好ましい態様においては、第二のカップリング触媒成分を、Mwが少なくとも10,000まで増加した所で、反応混合物に添加する。
【0006】
本発明の主題であるポリカーボネート重合方法と生成物の改良はポリカーボネート反応混合物にカップリング触媒を添加するタイミングにある。分岐は、驚くべきことに、その添加をオリゴマー化の過程で開始し及び/又は分割しそしてカップリング触媒の少量部分をプロセスの比較的初期に添加しカップリング触媒の残りを後で添加するときに、分岐がより効果的になることが見出された。カップリング触媒添加のためのこれらの技術の片方又は両方を使用することによって、本発明は、一般的に公知の反応物及び方法を使用した場合に較べて改良された分岐ポリカーボネート及び改良されたそれらの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、高い分岐度と改良されたレオロジー的性質を有する分岐ポリカーボネートを製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
二価フェノール
本発明の実施において使用される二価フェノールはカーボネート重合文献において一般的に知られておりそしてそこでは縮重合条件下での反応性基のみが二つのフェノール性ヒドロキシル基である。有用な二価フェノールは例えば一般式HO−Z−OHの二価フェノールであり、ここでZは6−30炭素原子のモノ−又はポリ−芳香族ラジカルからなり、それにフェノール性酸素原子が直接結合する。芳香族基は1以上のヘテロ原子からなりそして1以上の基、例えば1以上の酸素、窒素、硫黄、りん及び/又はハロゲン、1以上のアルキル、シクロアルキル又はアリール基のような1以上の一価炭化水素ラジカル、及び/又は1以上のアルコキシ及び/又はアリールオキシ基と置換していてもよい。好ましくは、二価フェノールHO−Z−OH中のフェノール性ヒドロキシ基は共に芳香族環のパラ位置に配列されている。
【0009】
本発明の方法で使用される二価フェノールとしては特許文献5;特許文献6;特許文献7及び特許文献8に開示されているような芳香族及び脂肪族で置換された誘導体を含むビス(アリール−ヒドロキシ−フェニル)アルキリデン、及び特許文献9に記載されているような芳香族ジオールを包含する。
【0010】
一般式HO−Z−OHの二価フェノールの好ましい例は、9,9−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンのようなビス(ヒドロキシフェニル)フルオレン;ハイドロキノン、レゾシノール、又は1,4−ジヒドロキシ−2−クロロベンゼンのようなジヒドロキシベンゼン及びハロ−及びアルキル−置換ジヒドロキシベンゼン;アルファー、アルファー’−ビス(ヒドロキシフェニル)−ジイソプロピルベンゼン;4,4’−ジヒドロキシジフェニルのようなジヒドロキシビフェニレン;ハロ−及びアルキル−置換ジヒドロキシビフェニレン;ビス−(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、又は、最も好ましくは、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(“ビスフェノールA”)のようなビス(ヒドロキシフェニル)アルカン;1−フェニル−1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン(“ビスフェノールAP”)、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン(“テトラブロモビスフェノールA”)、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン(“テトラメチルビスフェノールA”)のようなアルキル−、アリール−又はハロ置換したビス(ヒドロキシフェニル)アルカン;所望によりアルキル−、アリール−又はハロ置換したビス(ヒドロキシフェニル)シクロアルカン;所望によりアルキル−、アリール−又はハロ置換したビス(ヒドロキシフェニル)エーテル;所望によりアルキル−、アリール−又はハロ置換したビス(ヒドロキシアリール)スルフォン、好ましくはビス(ヒドロキシフェニル)スルフォン;又はビス(ヒドロキシフェニル)スルフォキサイドである。二価フェノールの好ましいその他の例は特許文献10の欄2、68行−欄3、1−22行、特許文献11の欄2、17−46行及び特許文献12の2ページ、24−55行と3ページ、1−19行に記載されている。二つ以上の二価フェノールの混合物、例えば、ビスフェノールAを1−99%と9,9−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンのような別の二価フェノール99−1%の混合物も使用可能である。本発明のポリカーボネートの製造に適した好ましい二価フェノールのうちでも好ましいものはビスフェノールA、ビスフェノールAP、テトラブロモビスフェノールA、及びテトラメチルビスフェノールAである。最も好ましい二価フェノールはビスフェノールAである。
【0011】
分岐剤
好適な分岐剤は一般的には三価又は多価化合物又はそれらの誘導体で典型的には以下のものの一つ以上である:フォログルシン;フォログルシド;2,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ヘプテン−3;4,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ヘプテン−2;4,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ペンテン−2;4,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン;1,3,5−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン;1,3,5−トリ(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾール;1,1,1−トリ(4−ヒドロキシフェニル)エタン;2,6−ビス(2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェノール;テトラ(4−ヒドロキシフェニル)メタン;トリスフェノール;ビス(2,4−ジヒドロキシフェニル)ケトン;1,4−ビス(4,4−ジヒドロキシトリフェニルメチル)ベンゼン;(,(’,(“−トリ(4−ヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリ−イソプロピルベンゼン;3,3−ビス(4−ヒドロキシアリール)オキシインドール;イサチンビスフェノール;5−クロロイサチン;5,7−ジクロロイサチン;5−ブロモイサチン;トリメリット酸;ピロメリット酸;ベンゾフェノンテトラカルボン酸;及び適切な化合物としてトリメリット酸トリクロライド、トリメソイルクロライド及びトリメリット酸無水物クロライドのような酸クロライド又はそれらの他の縮合反応誘導体を含む。特に好ましい分岐剤としてはフォログルシン;フォログルシド;1,1,1−トリ(4−ヒドロキシフェニル)エタン(THPE);トリメリット酸;トリメリット酸トリクロライド(TMTC);ピロメリット酸;ベンゾフェノンテトラカルボン酸及びそれらの酸クロライド;2,6−ビス(2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェノール及び1,3,5−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼンが包含される。
分岐剤は典型的には二価フェノールのモル基準で0.25−1.5モル%の量で使用される。
【0012】
カーボネート前躯体
本発明で使用するのに適したカーボネート前躯体は、二価フェノール化合物のアニオンによる攻撃でカルボニル炭素から移動することのできる脱離基を含み、そして必ずしも限定はしないが、カルボニルハライド又はアシルハライドを含み、それらのうち最も好ましいものはホスゲンである。カーボネート前躯体、好ましくはホスゲンはアルカリ水溶液中で二価フェノール化合物と接触しそして水と溶け合わない有機溶媒中の溶液として添加することができそして水溶液相と完全に混合するか又はガス状で反応混合物中に吹き込むことができそして選択的に有機相に溶解して落ち着く。カーボネート前躯体は、典型的には二価フェノール化合物のモル当たり1.0−1.8、好ましくは1.2−1.5モルの量で使用される。
【0013】
連鎖停止剤
連鎖停止剤は官能基、しばしばヒドロキシ基であり、オリゴマー又はポリマー鎖の末端に残っている未反応のヒドロキシル又はカルボン酸エステル基を引き抜くことのできるアニオンを生成する官能基を含む単官能性化合物である。本発明のポリカーボネートの製造に使用可能な停止剤の代表例はフェノール及びそれらの誘導体、飽和脂肪族アルコール、金属サルファイト、アルキル酸クロライド、トリアルキル−又はトリアリールシラノール、モノハロシラン、アミノアルコール、トリアルキルアルコール、アニリン及びメチルアニリンである。これらのうちで、フェノール、パラ−t−ブチルフェノール(PTBP)、p−クミルフェノール及びp−オクチルフェノール(4−(1,1,2,2−テトラメチルブチル)−フェノール即ちPTOP)が本発明で使用するのに好ましい。
【0014】
カップリング触媒
この方法においては、カップリング触媒は一般的には二価フェノール化合物のモル当たり典型的には0.001−0.1モルの範囲の量で使用される。触媒は好ましくは二価フェノール化合物のモル当たり少なくとも0.0025、好ましくは少なくとも0.008そしてより好ましくは少なくとも0.015モルの量で添加される。触媒は好ましくは二価フェノール化合物のモル当たり0.15まで、好ましくは0.1までそしてより好ましくは0.075モルまでの量で添加される。以下に議論するように、触媒の添加はオリゴマー化の過程で開始されそして好ましくは分割されそして第二部分は重合プロセスの後半で添加される。
【0015】
そのようなカップリング触媒としては、トリエチルアミン(TEA)、ジメチルアミノピリジン又はN,N−ジメチルアニリンのような四級アミン;2,2,6,6−テトラメチルピペリジン又は1,2−ジメチルイミダゾールのような環状アザ化合物;1−アザ−2−メトキシ−1−シクロヘプタン又はt−ブチル−シクロヘキシルイミノアセテートのようなイミノエーテル又はイミノカルボン酸エステル;又はホスフォニウム、スルフォニウム、アルソニウム又はセチルトリエチルアンモニウムブロマイドのような四級アンモニウム化合物が包含される。四級アミンは本発明に従った改良された方法で使用するのに好ましいカップリング触媒であり、そしてトリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、及び4−N,N−ジメチルアミノピリジンを含む。
【0016】
重合プロセス
本発明はバッチ又は連続で実施することができる一般的に公知の界面重合プロセスに適用できる。
公知のように、芳香族カーボネートポリマー重合のための標準的な界面重合(また相境界プロセスとも呼ばれる)はビスフェノールAのような二価フェノールとホスゲンまたはその他の二置換カルボン酸誘導体、又はハロフォーメート(グリコール又はジヒドロキシベンゼンのビスハロフォーメートのような)の反応を含む。最初に、二価フェノール化合物はアルカリ水溶液に少なくとも部分的に溶解し脱プロトン化してビスフェノレート(フェネート)を生成する。カーボネート前躯体をプロセスに供給し、所望により二相の第二を形成する有機溶媒中に溶解させる。アルカリ水溶液は7.0を超える、しばしば8.0又は9.0を超える、好ましくは少なくとも13−14のpHをもち、そして水中で苛性ソーダ、NaOH、のような塩基又はアルカリ金属及びアルカリ土類金属リン酸塩、炭酸水素塩、酸化物及び水酸化物のようなその他の塩基を添加することによって形成される。塩基は典型的には界面重合の過程で使用されそしてさらに適切なpHを維持するために適切な量を反応混合物に添加する。通常、二価フェノール化合物のモル当たり、合計で2−4、好ましくは3−4モルの量で塩基が添加される。苛性ソーダのような塩基を反応混合物に添加し、混合物のpHを二価フェノール化合物が少なくとも部分的に二価アニオン形態に変換されるレベルに調節する。亜硫酸ナトリウム又は亜ジチオン酸ナトリウムのような還元剤もまた反応混合物に添加するのが有利である。
【0017】
二相混合物の他の相は水と溶け合わずそしてその中にカーボネート前躯体及びポリカーボネート生成物が典型的に可溶である非−反応性有機溶媒である。溶媒の代表例としては、メチレンクロライド、1,2−ジクロロエタン、テトラクロロエタン、クロロベンゼン、及びクロロフォルムのような塩素化炭化水素を包含し、もし所望ならそれにテトラヒドロフラン、ジオキサン、ニトロベンゼン、ジメチルスルフォキサイド、キシレン、クレゾール又はアニソールを添加してもよい。
【0018】
上述のように、カーボネート前躯体を含む溶媒の液滴を分散させるか又は懸濁させるか又は前躯体をアルカリ混合物水溶液と接触させるのに十分なだけ撹拌する。水溶液相中でのカーボネート前躯体とフェネート反応物との反応は主としてカーボネート前躯体と二価フェノール化合物をもたらし、それはさらに多くの二価フェノール単位と反応して長鎖のオリゴマー及びポリマーを生成する。いくつかの二価フェノールは反応せずモノマーとして残りそして或るものは短鎖の中間体ビスエステルとして残る。例えば、カーボネート前躯体がホスゲンのようなアシルハライドであるとき、幾つかの末端基は停止剤残渣、フェノラートイオン又は未反応ヒドロキシ基となるが、これらの中間体は主としてビスクロロフォーメートとなる。カップリング触媒を添加すると、エステル基間でカップリング反応が起こりカーボネートポリマーに重合する。
【0019】
ポリカーボネート生成反応はpH7.0−14で、そして通常使用される溶媒の沸点(操作圧力で補正された)を超えない0℃−100℃の温度で行われる。しばしば、反応は0℃−45℃の温度で行われる。
【0020】
公知のように、分岐剤の使用は長鎖分岐をもったポリカーボネートを与え、それはポリマーに特定のレオロジー的な性質を与える。この方法においては、分岐剤は通常二価フェノールモノマーと組み合わせて反応混合物に添加される。しかしながら、分岐剤を添加する所は、ポリマー鎖成長の初期過程で添加されそしてかなりの停止が起こる前に添加される限り、分岐又は他のポリマーの性質に重大な影響をもつことは見出されてこなかった。
【0021】
停止剤が典型的には使用されそして二価フェノールをカルボニル前躯体と接触させる時間の前、過程又は後でモノマーに添加することができるが、しかしいくらか後で添加するのが好ましい。
【0022】
ポリマー鎖上のヒドロキシ又はカルボン酸エステル末端基を攻撃できる如何なる停止剤アニオンは、望ましくはないが、また(1)カーボネート前躯体の初期充填したうちの未反応分子を攻撃するか或いは(2)鎖が所望の長さに成長する機会を得る前に末端基を置き換えることができる。カーボネート前躯体の導入前に反応混合物に連鎖停止剤を添加する従来技術の実施は、上記結果の両方が起こることによって望ましくないカーボネート副生物の生成を結果として引き起こす。カーボネート副生物含有はポリカーボネートの所望の性質及び性能を低下させ、そして多くの用途においてそれらの不純物として見做される。例えば、低分子量カーボネートは最終のポリカーボネート組成物の機械的性質に負の影響を与える。
【0023】
カップリング触媒の分割及び/又は早期添加
上述のように、驚くべきことに、カップリング触媒の少なくとも一部を反応中にオリゴマー化が起こる過程の点で重合に添加することは高い分岐度と改良されたレオロジー的性質をもたらすことが見出された。これらの利点は、反応混合物中に反応性のホスゲンとオリゴマー分子の両方の混合物が存在しそしてホスゲンとジフェノールのクロロフォーメートとナトリウムフェネート基へのオリゴマー化と反応が完結する前にカップリング触媒を添加することによって得られると考えられる。“早期に”又は“オリゴマー化の過程”と呼ばれるのはこの段階でのカップリング触媒の添加を指す。
【0024】
最も改良されたレオロジー的性質は幾分早期の、オリゴマー化の過程で全体の分岐剤量の1−20%を添加することによって認められた。この発見の利点は、20%−30%少ない分岐剤が採用できそして製品性能を維持できるか又は標準の分岐剤量を維持しながらかなり改良された製品性能を与えることができる。
【0025】
TEA又は類似のカップリング触媒が分岐ポリカーボネートの製造に予め使用された場合には、カップリング触媒の全量は典型的にはカーボネート前躯体の添加の前にモノマーの初期フィードと一緒に又はホスゲンが反応系に添加された後でそしてホスゲンとジフェノールのクロロフォーメートとナトリウムフェネート基へのオリゴマー化と反応が完結した後で、一度に添加される。
【0026】
代わりに、カップリング触媒の早期及び/又は分割添加のための本発明に従った方法では、ほぼ同じ量又は幾分少ない量のカップリング触媒が使用されるがしかしそれはオリゴマー化の過程で添加され及び/又はオリゴマー化の過程で添加されるべき一成分で二成分に分割して添加される。この第一のカップリング触媒成分は、Mwが1,200と1,800g/モルの間、好ましくは1,400と1,600g/モルの間、そしてより好ましくはMwが1,500g/モルの所でオリゴマー化反応混合物に添加される。引き続き、カップリング触媒の残り、“第二”又は“後”カップリング触媒成分が、もしあれば、Mwが少なくとも10,000、好ましくは少なくとも15,000そしてより好ましくは15,000と45,000g/モルの間の所で反応混合物に添加される。
【0027】
得られる生成物はプロセスに又は分子量や靭性のようなポリマー物性に悪影響を与えずに改良された溶融粘度とせん断順応性をもつことが認められる。測定可能な変化は分岐鎖のより早いそしてそれゆえに長い鎖の成長によると理論付けられる。
【0028】
本発明に従えば、第一のカップリング触媒添加量は添加すべき合計のカップリング剤量の少なくとも0.5%、好ましくは少なくとも2%そしてより好ましくは少なくとも3.5%であるべきである。上限に関しては、第一のカップリング触媒添加量は極端な場合には添加すべき合計のカップリング剤量の100%であることができるが、しかし好ましくは20%以下そしてより好ましくは7%以下である。
【0029】
重合完結後、有機相及び水溶液相を分離して有機相を精製しそしてそこからポリカーボネート製品を回収する。有機相を必要に応じ希薄塩基、水及び/又は希薄酸で未反応モノマー、残留プロセス化学品及び/又はその他の電解質がなくなるまで遠心分離機で洗浄する。ポリカーボネート製品の回収はスプレードライ、スチーム脱気、ベント押し出し機中での直接脱気、又はトルエン、シクロヘキサン、ヘプタン、メタノール、ヘキサノール、又はメチルエチルケトンのような非−溶媒を使用して沈殿させることによって有効に行うことができる。
【0030】
上述のように、工程中で分岐剤をより効率的に使用することによって、比較的高い分岐剤含量をもつ樹脂の比粘度及びせん断力順応性をもつ樹脂が得られる。ここで使用されるとき、
比粘度はせん断のない(η
)状態で測定された樹脂粘度:高せん断速度、例えば、9s−1 、で測定された樹脂粘度で定義され、その比はη /η(γ=9/s)
として表される。例えば、本発明に従えば、樹脂は分岐剤濃度の30%少ないところで調製されるが、しかし市販されており従来技術の重合技術に従って調製された典型的な分岐PCとほぼ同じ比粘度をもっている。
【0031】
本発明を以下の実施例で説明する。以下の一般的な重合技術が以下の表に示されたそれぞれの実験の全てにおいて使用された。
【0032】
反応器は温度調節され、撹拌された10リッターのジャケット付きガラス反応器である。水、苛性ソーダ、ジクロロメタン、t−ブチルフェノール溶液とトリエチルアミン溶液の供給は調節システムで連結され適切な供給速度を与えそして窒素を充填して記載の原料物質の酸化を防止する。反応器中のpH電極はホスゲン化の過程でpHを調節しながら添加物を添加することを可能にする。以下に記載される重合のために下記の原料物質量と条件が使用される:
ビスフェノール−A(BPA):0.700kg(3モル)
トリスヒドロキシフェニルエタン(THPE):3.5g
水:3.870kg
苛性ソーダ溶液(水中に30wt%のNaOH):1.070kg
メチレンクロライド:2.000kg
ホスゲン流量:0.04g/s(0.4ミリモル/秒)
合計ホスゲン供給量:405g(4.1モル)
反応温度:20℃と40℃の間、通常25℃
撹拌速度:1000rpm
t−ブチルフェノール(PTBP)溶液:0.60kg(600gのメチレンクロライド中11.6g即ち77ミリモルのPTPB)
TEA溶液量:メチレンクロライド中のTEA0.36wt%溶液(即ち、TEA7.2g、71ミリモル)2000gで、有機相中で1340ppmとなる
【0033】
ビスフェノール−A(0.70kg)をガラスフラスコ中で真空下に10分間、脱酸素化する。それから、窒素下に保ち微量の酸素を取除く。脱酸素したビスフェノール−Aを10リッターの二重壁反応器に添加し一定速度で撹拌しながら窒素でパージした。ビスフェノール−Aを溶解させるために、アルゴンパージした水(3.87kg)と苛性ソーダ(30wt%のNaOH1.07kg)を添加した。溶解の過程で酸素を追い出すために混合物上に窒素パージした。BPAが全て溶解した後で、THPEと2.0kgのジクロロメタンを添加し、反応器の蓋を閉めそしてアルゴン雰囲気下で20分間撹拌し、それからホスゲンを注入開始した。ホスゲン化の過程及び残りの重合反応の間中、反応混合物を一定速度で撹拌する。反応の開始において、初期pHは約13である。ホスゲン化オリゴマー化反応はいくらかの副生物と一緒に主として下記の中間体を与える:
【0034】
【化1】

ここで、yは一般的に約10より小さい。オリゴマーの約3分の1は末端がナトリウム塩となっている。
【0035】
約55分後そして合計ホスゲン量の3分の1が添加された(125g、1.26モル)後で、t−ブチルフェノール(PTPB)を反応系に供給して分子量を調節した。ホスゲン添加の約112分後に30%の苛性ソーダ(即ち、NaOH、180g)を600g添加する。苛性ソーダ添加後に3.5%のTEA(ジクロロメタン中0.36wt%TEA溶液10.5g)の第一又は“早期”添加を行った。これは約120分後でそして合計ホスゲン(270g、2.7モル)の約四分の三を添加した後である。このとき、ポリマーの分子量は約1,500g/モルでありそして約3.8ミリモル(0.38g)のTEAを添加した。残りのホスゲンを添加し終わった後で、ホスゲン化を停止させそして系を窒素で20分間パージした。それから96.5%即ちジクロロメタン中の0.36wt%TEA溶液289.5g量に相当し有機相中で3000ppmを与えるTEA溶液の残りを“後”添加することによってカップリングを完結させた。カップリング触媒の添加後、2kgのメチレンクロライドを添加しそして溶液を15分間混合してカップリング反応を終了させた。撹拌を止めると、溶液は水溶液相と有機相に分離し始める。ポリマー溶液はホスゲンテープによってホスゲンとクロロフォーメート末端基が存在しないことをテストした。それから水溶液相と有機相を分離し、有機相を洗浄してポリマー溶液から不純物を取除きそしてn−ヘキサンと混合し、脱気し、乾燥しそして抽出することによってポリカーボネートを回収した。
【0036】
このようにして実施された特定の実験のそれぞれのプロセス工程の変化を列記して一覧表にした。得られたポリマーサンプルをダイオード配列−検知計(DAD)と分子量、粘度及び回折インデックス(RI)及び光散乱(LS)検知計を使用する分岐度を決定するための粘度計を装備したGPCによって解析した。
【0037】
【表1】

【0038】
ポリマーの分岐及びレオロジー的な改良はPhysica US200振動レオメーターを用いて260℃で分析することによって示された。測定のために、ポリマーサンプルをメチレンクロライドに溶解させそして溶媒を蒸発させることによってサンプルをペトリ皿中に作った。これらのサンプルを真空下120℃で約12時間乾燥させた。乾燥後、サンプル0.4gを約4000kg/cm
の圧力で圧縮成形し10mm径で厚み3mmのフィルム試験片とし、真空下でさらに4時間乾燥しそしてテストに使用した。レオメーターテストによって、改良された(大きな)せん断順応性はポリマーの長鎖分岐に比例して得られることが確かめられた。換言すれば、ポリマーの粘度はポリマー中のせん断が増加するにつれ低下する。
【0039】
GPC回折インデックス(RI)及び光散乱(LS)によるサンプルの解析は上記の表1に示される。表1より、3.5%早期の添加は高分子量材料を与える。計算された分岐値(1000モノマー単位における長鎖分岐)は0、3.5%、そして7%早期の部分TEA添加に対して1.31、1.78及び1.40である。この値は分岐量が高ければ高いので、早期の部分TEA添加は分岐量を増加させることがわかる。3.5%添加の高い値(1.78)は高分子量部分の量が比較的多いことによってもたらされる。それゆえに、平均値は7%添加の値よりも大きい。
【0040】
実験3においてはTHPE0.37wt%(0.5%の代わりに)のみが使用されたことに注目することは重要である。それゆえにこのサンプルの粘度挙動は高レベルのTHPEなしで、しかし早期TEA添加を使用しないものに比べずっと良好である(即ち、より高い構造粘度を示した)ことは驚くべきことである。
【特許文献5】USP2,999,835
【特許文献6】USP3,038,365
【特許文献7】USP3,334,154
【特許文献8】USP4,299,928
【特許文献9】USP3,169,121
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明の分岐ポリカーボネート樹脂は改良された加工性能を与えるため、中空成形のような成形用途において有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)二価フェノール、多官能性フェノール分岐剤、塩基及び水を組み合わせて反応混合物を形成し、b)それからカーボネート前躯体の少なくとも一部及び水と溶け合わない有機溶媒を添加して重合混合物を反応させ、部分的に二価フェノールをオリゴマー化させ、c)それからモノフェノール連鎖停止剤とカップリング触媒の少なくとも一部及び塩基を反応混合物に添加し、d)カーボネート前躯体の残り(もしあれば)を添加しそして重合混合物の反応を続け、e)もしあれば、カップリング触媒の残りを添加し、f)重合反応を完結させる段階的諸工程からなることを特徴とする、カップリング触媒を使用して二価フェノール、カーボネート前躯体、多官能性フェノール分岐剤及びモノフェノール連鎖停止剤から分岐ポリカーボネート組成物を製造する方法。
【請求項2】
カップリング触媒の全てを部分的にオリゴマー化した二価フェノールの存在下で工程c)に添加する、分岐ポリカーボネートを製造する請求項1記載の方法。
【請求項3】
工程c)に添加されるカップリング触媒を、Mwが1,200と1,800g/モルの間の所で、オリゴマー化反応混合物に添加する、分岐ポリカーボネートを製造する請求項2記載の方法。
【請求項4】
カップリング触媒を、Mwが1,400と1,600g/モルの間の所で、オリゴマー化反応混合物に添加する、分岐ポリカーボネートを製造する請求項3記載の方法。
【請求項5】
工程c)に添加されるカップリング触媒の第一添加とは別にその後で、そして工程c)の反応混合物のさらなる反応及び重合の後で、カップリング触媒の第二添加又は後添加を行う、分岐ポリカーボネートを製造する請求項1記載の方法。
【請求項6】
工程c)に添加される第一のカップリング触媒を、Mwが1,200と1,800g/モルの間の所で、オリゴマー化反応混合物に添加する、分岐ポリカーボネートを製造する請求項5記載の方法。
【請求項7】
第一のカップリング触媒を、Mwが1,400と1,600g/モルの間の所で、オリゴマー化反応混合物に添加する、分岐ポリカーボネートを製造する請求項5記載の方法。
【請求項8】
第二のカップリング触媒成分を、Mwが少なくとも10,000まで増加した所で、反応混合物に添加する、分岐ポリカーボネートを製造する請求項5記載の方法。
【請求項9】
カップリング触媒の第一添加が、添加される合計カップリング触媒量の0.5−20モル%の量である、分岐ポリカーボネートを製造する請求項5記載の方法。

【公表番号】特表2006−528261(P2006−528261A)
【公表日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−521085(P2006−521085)
【出願日】平成16年6月29日(2004.6.29)
【国際出願番号】PCT/US2004/020938
【国際公開番号】WO2005/010073
【国際公開日】平成17年2月3日(2005.2.3)
【出願人】(502130582)ダウ グローバル テクノロジーズ インコーポレーテッド (21)
【Fターム(参考)】