分岐型および非分岐型単層カーボンナノホーンとその製造方法
【課題】個々の単離した単層カーボンナノホーン、あるいはサイズの小さい単層カーボンナノホーン集合体を得ること。
【解決手段】空気中、加熱下で単層カーボンナノホーン集合体を酸化処理し、酸化処理した単層カーボンナノホーン集合体を超音波破砕することで、分岐型および非分岐型単層カーボンナノホーンを単離する。
【解決手段】空気中、加熱下で単層カーボンナノホーン集合体を酸化処理し、酸化処理した単層カーボンナノホーン集合体を超音波破砕することで、分岐型および非分岐型単層カーボンナノホーンを単離する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分岐型および非分岐型単層カーボンナノホーンとその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、単層カーボンナノホーン(SWNHs)は集合体として存在することが知られており(特許文献1参照)、このSWNH集合体は、例えば、中心から外方に向かって放射状に、先端部が円錐形状の単層カーボンナノホーンの閉鎖先端部が突き出た球状粒子の構造を有している。
【0003】
しかし、SWNH集合体から単離した単一の単層カーボンナノホーンは未だ報告されていない。
【0004】
一方、カーボンナノチューブでは、切断した単層カーボンナノチューブ、すなわち長さ8〜100nmの短い単層カーボンナノチューブが得られたことが報告されている。ただし、切断した短い単層カーボンナノチューブは直径1〜2nmでストレートな管である。また、分岐構造の単層カーボンナノチューブ(Y-shaped SWNTs)の存在が見出されているが、長さは大体数ミクロンであり、単離したものは未だ報告されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−064004号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
単層カーボンナノホーンは、高純度で大量生産が可能なカーボンナノ材料であり、その用途には、内部のナノ空間を利用したものや、外壁に触媒を担持させたもの等がある。しかし、従来の単層カーボンナノホーンは、いずれも直径が50nmを超え典型的には100nm程度の集合体であるため、単層カーボンナノホーン間の狭い空間を利用することはできなかった。
【0007】
また、生体内で使用する場合には、単層カーボンナノホーン集合体の100nmというサイズは大きく、対外排出が困難であるという問題点があった。
【0008】
このように、個々の単層カーボンナノホーンを単離すること、あるいはサイズの小さい単層カーボンナノホーン集合体を得ることが望まれていた。
【0009】
本発明は、以上の通りの事情に鑑みてなされたものであり、個々の単離した単層カーボンナノホーン、あるいはサイズの小さい単層カーボンナノホーン集合体を得ることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記の課題を解決するために、以下のことを特徴としている。
【0011】
第1:他のカーボンナノホーンと集合体を形成せずに分離して1本で単独に存在し、分岐構造を有している分岐型単層カーボンナノホーン。
【0012】
第2:二方型、三方型、または多方型の分岐構造を有している上記第1の分岐型単層カーボンナノホーン。
【0013】
第3:閉鎖構造を有している上記第1または第2の分岐型単層カーボンナノホーン。
【0014】
第4:開孔を有している上記第1または第2の分岐型単層カーボンナノホーン。
【0015】
第5:他のカーボンナノホーンと集合体を形成せずに分離して1本で単独に存在し、非分岐構造を有している非分岐型単層カーボンナノホーン。
【0016】
第6:閉鎖構造を有している上記第5の非分岐型単層カーボンナノホーン。
【0017】
第7:開孔を有している上記第5の非分岐型単層カーボンナノホーン。
【0018】
第8:動的光散乱法による直径が10〜50nmの単層カーボンナノホーン集合体。
【0019】
第9:上記第1〜第4のいずれかの分岐型単層カーボンナノホーン、上記第5〜第7のいずれかの分岐型単層カーボンナノホーン、および上記第8の単層カーボンナノホーン集合体から選ばれる少なくとも1種を含有する単層カーボンナノホーン分散液。
【0020】
第10:上記第1〜第4のいずれかの分岐型単層カーボンナノホーンを製造する方法であって、空気中、加熱下で単層カーボンナノホーン集合体を酸化処理する工程と、酸化処理した単層カーボンナノホーン集合体を超音波破砕する工程とを含むことを特徴とする分岐型単層カーボンナノホーンの製造方法。
【0021】
第11:上記第5〜第7のいずれかの非分岐型単層カーボンナノホーンを製造する方法であって、空気中、加熱下で単層カーボンナノホーン集合体を酸化処理する工程と、酸化処理した単層カーボンナノホーン集合体を超音波破砕する工程とを含むことを特徴とする非分岐型単層カーボンナノホーンの製造方法。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、個々の単離した単層カーボンナノホーンあるいはサイズの小さい単層カーボンナノホーン集合体、およびこれらを効率良く得ることができる製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】左の写真は、濃度の異なるショ糖水溶液を層状に遠心管内に収容した後、最上部にコール酸で分散させたSWNHsを入れた状態(左)、および遠心分離後、上から4つの区画に分けて、分散液を分取する直前の状態(右)を示す。右のグラフは、得られた4区画のそれぞれに対して動的光散乱測定を行った結果得られた粒子サイズ分布を示す。
【図2】str-SWNHおよびbrn-SWNHのTEM写真である。
【図3】brn-SWNHのTEM写真である。
【図4】brn-SWNH等のTEM写真である。
【図5】小径のSWNH集合体のTEM写真である。
【図6】実施例1において得られた各形状のSWNHsの個数の割合を示すグラフである。
【図7】実施例1において単離したstr-SWNH、brn-SWNHの直径分布を示すグラフである。直径値は各個SWNHの最大太さである。
【図8】実施例1において単離したstr-SWNH、brn-SWNHの長さ分布を示すグラフである。長さの数値は各個SWNHの最長方向の長さである。
【図9】実施例2で得られた、Gd2O3を内包するstr-SWNHおよびbrn-SWNHのTEM写真である。
【図10】比較例1において、密度勾配遠心分離した遠心管最上部のas-grown SWNHのTEM写真である。
【図11】空気中酸化処理の温度と単離されたstr-SWNHおよびbrn-SWNHの相対量との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0025】
図2は、本発明の分岐型単層カーボンナノホーンおよび非分岐型単層カーボンナノホーンのTEM像である。同図中(a)の左側、(b)〜(e)、(g)にY字に分岐した二方型の分岐型単層カーボンナノホーンが観察され、同図中(a)の右側、および(f)に非分岐型単層カーボンナノホーンが観察される。
【0026】
また図3(a)〜(h)、図4(a)〜(c)のTEM像には、三方に分岐した三方型の分岐型単層カーボンナノホーン、それ以上の多方に分岐した多方型の分岐型単層カーボンナノホーンも観察される。
【0027】
分岐型単層カーボンナノホーン(branched SWNH: brn-SWNH)は、他のカーボンナノホーンと集合体を形成せずに分離して1本で単独に存在している。非分岐型単層カーボンナノホーン(straight SWNH: str-SWNH)も同様に、他のカーボンナノホーンと集合体を形成せずに分離して1本で単独に存在している。
【0028】
brn-SWNHおよびstr-SWNHは、先端が閉じたホーン形状をしており、管の直径は例えば2〜15 nmであり、長さは、例えば5〜100nmであり30〜80nmのものが多く存在する。
【0029】
brn-SWNHおよびstr-SWNHのホーン形状の円錐角は、特に限定されないが、典型的には19°程度である。
【0030】
本発明のbrn-SWNHおよびstr-SWNHは、例えば、従来から知られている単層カーボンナノホーン集合体(SWNH集合体)を原料として、空気中、加熱下で単層カーボンナノホーンを酸化処理した後、酸化処理した単層カーボンナノホーンを超音波破砕することで、SWNH集合体が分解して得ることができる。酸化処理時の温度は、例えば350〜450℃である。
【0031】
本発明のbrn-SWNHおよびstr-SWNHは、先端部を含む全体が閉じた閉鎖構造を有するものとして得ることもできるが、上記の酸化処理により形成された開孔を有しているものであってもよい。図9は、酸化したSWNHsにGd2O3を内包した後、Gd2O3@SWNHsの集合体を超音波処理し密度勾配遠心分離を行って得られたstr-SWNH(同図(b)、(c))およびbrn-SWNH(同図(a))であり、先端が閉じたstr-SWNHおよびbrn-SWNHの中に酸化開孔を通じてGd2O3が内包されていることが分かる。
【0032】
また、本発明の方法によれば、上記のbrn-SWNHおよびstr-SWNHと共に、図5(a)〜(c)の矢印で示す、as-grown SWNH集合体よりも径の小さい、例えば動的光散乱法による直径が10〜50nm、さらには10〜40nmのSWNH集合体が得られる。このSWNH集合体は、典型的には球状であり、図4にもbrn-SWNH等と共にこのような径の小さいSWNH集合体が見られる。
【0033】
本発明により得られるbrn-SWNH、str-SWNH、および直径50nm以下のSWNH集合体、あるいはこれらの混合物は、例えば、水系媒体等にこれらが分散された分散液として得ることができる。
【0034】
本発明のstr-SWNHおよびbrn-SWNHは、例えば、これらをドラッグキャリアーとして用いたドラッグデリバリーシステムへの応用、これらにマグネタイトを内包したもののMRI撮像や高周波磁場温熱治療への応用、酸化開孔を形成したもののガス吸着材としての応用、電界電子放出端子への応用、これらにGd酸化物を内包することで生体内におけるstr-SWNHまたはbrn-SWNHの分布を測定する技術への応用、Pt、Pd、Rh等の触媒担持体としての応用等が期待できる。
【実施例】
【0035】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0036】
<実施例1>
空気中、450℃で酸化処理したas-grown SWNH集合体をコール酸水溶液に分散(2mg/ml)させて、超音波破砕(300W、1〜3時間)を行った。
【0037】
得られた分散液を密度勾配(ショ糖水溶液、5、10、15%)遠心分離にて分離した(約4500G, 3時間)。遠心管の長さ方向3〜4区画から液を分取し(図1左、写真)、各々に含まれるSWNH集合体のサイズを動的光散乱法で測定したところ、遠心管の上から下に向かって粒子径が大きくなることが分かった(図1右、グラフ)。
【0038】
また、SWNHsの構造とサイズを透過電子顕微鏡(TEM)で観察したところ、遠心管最上層には、as-grown SWNH集合体よりも径の小さい集合体(図4、図5)と共に、単一のstr-SWNHおよびbrn-SWNHが見られた(図2〜図5)。
【0039】
TEM写真より、str-SWNHおよびbrn-SWNHの個数の割合は、単離したSWNHs(遠心管最上部)の中にそれぞれ約20〜30%であることが分かった(図6)。また、単離したstr-SWNH、brn-SWNHの直径分布(図7)は2〜15nmで広い範囲にあること、長さ(図8)は30〜80nmのものが多く存在することが明らかになった。これらの結果は全て同じ条件で(空気中450℃で酸化処理し、超音波破砕(300W, 1.5時間)、密度勾配遠心(4600g, 5時間)により単離したSWNHsから得たものである。
<実施例2>
酸化処理したSWNH集合体にGd2O3を内包した後、Gd2O3@SWNH集合体を実施例1と同様に超音波破砕し、密度勾配遠心分離を行ったところ、Gd2O3を内包するstr-SWNHおよびbrn-SWNHを得ることが可能であった(図9)。図9より、単離したstr-SWNHおよびbrn-SWNHの先端部は閉じていることが分かる。
<比較例1>
未酸化処理as-grown SWNHの集合体を実施例1と同様に超音波破砕し、密度勾配遠心分離を行ったが、str-SWNHおよびbrn-SWNHは得られなかった。図10は、密度勾配遠心分離した遠心管最上部のas-grown SWNHのTEM写真である。
【0040】
このように、酸化処理はstr-SWNHおよびbrn-SWNHの形成に必要である。なお、強酸の酸化処理(HNO3/H2SO4またはH2O2/H2SO4)は、カーボンナノチューブの切断によく用いられているが、SWNHsは欠陥が多いので、酸によりSWNHの構造が壊れる。これに対して本発明では、低温(例えば350〜450℃)での空気中酸化処理により、大量のstr-SWNHおよびbrn-SWNHの単離ができるようになった(図11)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、分岐型および非分岐型単層カーボンナノホーンとその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、単層カーボンナノホーン(SWNHs)は集合体として存在することが知られており(特許文献1参照)、このSWNH集合体は、例えば、中心から外方に向かって放射状に、先端部が円錐形状の単層カーボンナノホーンの閉鎖先端部が突き出た球状粒子の構造を有している。
【0003】
しかし、SWNH集合体から単離した単一の単層カーボンナノホーンは未だ報告されていない。
【0004】
一方、カーボンナノチューブでは、切断した単層カーボンナノチューブ、すなわち長さ8〜100nmの短い単層カーボンナノチューブが得られたことが報告されている。ただし、切断した短い単層カーボンナノチューブは直径1〜2nmでストレートな管である。また、分岐構造の単層カーボンナノチューブ(Y-shaped SWNTs)の存在が見出されているが、長さは大体数ミクロンであり、単離したものは未だ報告されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−064004号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
単層カーボンナノホーンは、高純度で大量生産が可能なカーボンナノ材料であり、その用途には、内部のナノ空間を利用したものや、外壁に触媒を担持させたもの等がある。しかし、従来の単層カーボンナノホーンは、いずれも直径が50nmを超え典型的には100nm程度の集合体であるため、単層カーボンナノホーン間の狭い空間を利用することはできなかった。
【0007】
また、生体内で使用する場合には、単層カーボンナノホーン集合体の100nmというサイズは大きく、対外排出が困難であるという問題点があった。
【0008】
このように、個々の単層カーボンナノホーンを単離すること、あるいはサイズの小さい単層カーボンナノホーン集合体を得ることが望まれていた。
【0009】
本発明は、以上の通りの事情に鑑みてなされたものであり、個々の単離した単層カーボンナノホーン、あるいはサイズの小さい単層カーボンナノホーン集合体を得ることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記の課題を解決するために、以下のことを特徴としている。
【0011】
第1:他のカーボンナノホーンと集合体を形成せずに分離して1本で単独に存在し、分岐構造を有している分岐型単層カーボンナノホーン。
【0012】
第2:二方型、三方型、または多方型の分岐構造を有している上記第1の分岐型単層カーボンナノホーン。
【0013】
第3:閉鎖構造を有している上記第1または第2の分岐型単層カーボンナノホーン。
【0014】
第4:開孔を有している上記第1または第2の分岐型単層カーボンナノホーン。
【0015】
第5:他のカーボンナノホーンと集合体を形成せずに分離して1本で単独に存在し、非分岐構造を有している非分岐型単層カーボンナノホーン。
【0016】
第6:閉鎖構造を有している上記第5の非分岐型単層カーボンナノホーン。
【0017】
第7:開孔を有している上記第5の非分岐型単層カーボンナノホーン。
【0018】
第8:動的光散乱法による直径が10〜50nmの単層カーボンナノホーン集合体。
【0019】
第9:上記第1〜第4のいずれかの分岐型単層カーボンナノホーン、上記第5〜第7のいずれかの分岐型単層カーボンナノホーン、および上記第8の単層カーボンナノホーン集合体から選ばれる少なくとも1種を含有する単層カーボンナノホーン分散液。
【0020】
第10:上記第1〜第4のいずれかの分岐型単層カーボンナノホーンを製造する方法であって、空気中、加熱下で単層カーボンナノホーン集合体を酸化処理する工程と、酸化処理した単層カーボンナノホーン集合体を超音波破砕する工程とを含むことを特徴とする分岐型単層カーボンナノホーンの製造方法。
【0021】
第11:上記第5〜第7のいずれかの非分岐型単層カーボンナノホーンを製造する方法であって、空気中、加熱下で単層カーボンナノホーン集合体を酸化処理する工程と、酸化処理した単層カーボンナノホーン集合体を超音波破砕する工程とを含むことを特徴とする非分岐型単層カーボンナノホーンの製造方法。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、個々の単離した単層カーボンナノホーンあるいはサイズの小さい単層カーボンナノホーン集合体、およびこれらを効率良く得ることができる製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】左の写真は、濃度の異なるショ糖水溶液を層状に遠心管内に収容した後、最上部にコール酸で分散させたSWNHsを入れた状態(左)、および遠心分離後、上から4つの区画に分けて、分散液を分取する直前の状態(右)を示す。右のグラフは、得られた4区画のそれぞれに対して動的光散乱測定を行った結果得られた粒子サイズ分布を示す。
【図2】str-SWNHおよびbrn-SWNHのTEM写真である。
【図3】brn-SWNHのTEM写真である。
【図4】brn-SWNH等のTEM写真である。
【図5】小径のSWNH集合体のTEM写真である。
【図6】実施例1において得られた各形状のSWNHsの個数の割合を示すグラフである。
【図7】実施例1において単離したstr-SWNH、brn-SWNHの直径分布を示すグラフである。直径値は各個SWNHの最大太さである。
【図8】実施例1において単離したstr-SWNH、brn-SWNHの長さ分布を示すグラフである。長さの数値は各個SWNHの最長方向の長さである。
【図9】実施例2で得られた、Gd2O3を内包するstr-SWNHおよびbrn-SWNHのTEM写真である。
【図10】比較例1において、密度勾配遠心分離した遠心管最上部のas-grown SWNHのTEM写真である。
【図11】空気中酸化処理の温度と単離されたstr-SWNHおよびbrn-SWNHの相対量との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0025】
図2は、本発明の分岐型単層カーボンナノホーンおよび非分岐型単層カーボンナノホーンのTEM像である。同図中(a)の左側、(b)〜(e)、(g)にY字に分岐した二方型の分岐型単層カーボンナノホーンが観察され、同図中(a)の右側、および(f)に非分岐型単層カーボンナノホーンが観察される。
【0026】
また図3(a)〜(h)、図4(a)〜(c)のTEM像には、三方に分岐した三方型の分岐型単層カーボンナノホーン、それ以上の多方に分岐した多方型の分岐型単層カーボンナノホーンも観察される。
【0027】
分岐型単層カーボンナノホーン(branched SWNH: brn-SWNH)は、他のカーボンナノホーンと集合体を形成せずに分離して1本で単独に存在している。非分岐型単層カーボンナノホーン(straight SWNH: str-SWNH)も同様に、他のカーボンナノホーンと集合体を形成せずに分離して1本で単独に存在している。
【0028】
brn-SWNHおよびstr-SWNHは、先端が閉じたホーン形状をしており、管の直径は例えば2〜15 nmであり、長さは、例えば5〜100nmであり30〜80nmのものが多く存在する。
【0029】
brn-SWNHおよびstr-SWNHのホーン形状の円錐角は、特に限定されないが、典型的には19°程度である。
【0030】
本発明のbrn-SWNHおよびstr-SWNHは、例えば、従来から知られている単層カーボンナノホーン集合体(SWNH集合体)を原料として、空気中、加熱下で単層カーボンナノホーンを酸化処理した後、酸化処理した単層カーボンナノホーンを超音波破砕することで、SWNH集合体が分解して得ることができる。酸化処理時の温度は、例えば350〜450℃である。
【0031】
本発明のbrn-SWNHおよびstr-SWNHは、先端部を含む全体が閉じた閉鎖構造を有するものとして得ることもできるが、上記の酸化処理により形成された開孔を有しているものであってもよい。図9は、酸化したSWNHsにGd2O3を内包した後、Gd2O3@SWNHsの集合体を超音波処理し密度勾配遠心分離を行って得られたstr-SWNH(同図(b)、(c))およびbrn-SWNH(同図(a))であり、先端が閉じたstr-SWNHおよびbrn-SWNHの中に酸化開孔を通じてGd2O3が内包されていることが分かる。
【0032】
また、本発明の方法によれば、上記のbrn-SWNHおよびstr-SWNHと共に、図5(a)〜(c)の矢印で示す、as-grown SWNH集合体よりも径の小さい、例えば動的光散乱法による直径が10〜50nm、さらには10〜40nmのSWNH集合体が得られる。このSWNH集合体は、典型的には球状であり、図4にもbrn-SWNH等と共にこのような径の小さいSWNH集合体が見られる。
【0033】
本発明により得られるbrn-SWNH、str-SWNH、および直径50nm以下のSWNH集合体、あるいはこれらの混合物は、例えば、水系媒体等にこれらが分散された分散液として得ることができる。
【0034】
本発明のstr-SWNHおよびbrn-SWNHは、例えば、これらをドラッグキャリアーとして用いたドラッグデリバリーシステムへの応用、これらにマグネタイトを内包したもののMRI撮像や高周波磁場温熱治療への応用、酸化開孔を形成したもののガス吸着材としての応用、電界電子放出端子への応用、これらにGd酸化物を内包することで生体内におけるstr-SWNHまたはbrn-SWNHの分布を測定する技術への応用、Pt、Pd、Rh等の触媒担持体としての応用等が期待できる。
【実施例】
【0035】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0036】
<実施例1>
空気中、450℃で酸化処理したas-grown SWNH集合体をコール酸水溶液に分散(2mg/ml)させて、超音波破砕(300W、1〜3時間)を行った。
【0037】
得られた分散液を密度勾配(ショ糖水溶液、5、10、15%)遠心分離にて分離した(約4500G, 3時間)。遠心管の長さ方向3〜4区画から液を分取し(図1左、写真)、各々に含まれるSWNH集合体のサイズを動的光散乱法で測定したところ、遠心管の上から下に向かって粒子径が大きくなることが分かった(図1右、グラフ)。
【0038】
また、SWNHsの構造とサイズを透過電子顕微鏡(TEM)で観察したところ、遠心管最上層には、as-grown SWNH集合体よりも径の小さい集合体(図4、図5)と共に、単一のstr-SWNHおよびbrn-SWNHが見られた(図2〜図5)。
【0039】
TEM写真より、str-SWNHおよびbrn-SWNHの個数の割合は、単離したSWNHs(遠心管最上部)の中にそれぞれ約20〜30%であることが分かった(図6)。また、単離したstr-SWNH、brn-SWNHの直径分布(図7)は2〜15nmで広い範囲にあること、長さ(図8)は30〜80nmのものが多く存在することが明らかになった。これらの結果は全て同じ条件で(空気中450℃で酸化処理し、超音波破砕(300W, 1.5時間)、密度勾配遠心(4600g, 5時間)により単離したSWNHsから得たものである。
<実施例2>
酸化処理したSWNH集合体にGd2O3を内包した後、Gd2O3@SWNH集合体を実施例1と同様に超音波破砕し、密度勾配遠心分離を行ったところ、Gd2O3を内包するstr-SWNHおよびbrn-SWNHを得ることが可能であった(図9)。図9より、単離したstr-SWNHおよびbrn-SWNHの先端部は閉じていることが分かる。
<比較例1>
未酸化処理as-grown SWNHの集合体を実施例1と同様に超音波破砕し、密度勾配遠心分離を行ったが、str-SWNHおよびbrn-SWNHは得られなかった。図10は、密度勾配遠心分離した遠心管最上部のas-grown SWNHのTEM写真である。
【0040】
このように、酸化処理はstr-SWNHおよびbrn-SWNHの形成に必要である。なお、強酸の酸化処理(HNO3/H2SO4またはH2O2/H2SO4)は、カーボンナノチューブの切断によく用いられているが、SWNHsは欠陥が多いので、酸によりSWNHの構造が壊れる。これに対して本発明では、低温(例えば350〜450℃)での空気中酸化処理により、大量のstr-SWNHおよびbrn-SWNHの単離ができるようになった(図11)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
他のカーボンナノホーンと集合体を形成せずに分離して1本で単独に存在し、分岐構造を有している分岐型単層カーボンナノホーン。
【請求項2】
二方型、三方型、または多方型の分岐構造を有している請求項1に記載の分岐型単層カーボンナノホーン。
【請求項3】
閉鎖構造を有している請求項1または2に記載の分岐型単層カーボンナノホーン。
【請求項4】
開孔を有している請求項1または2に記載の分岐型単層カーボンナノホーン。
【請求項5】
他のカーボンナノホーンと集合体を形成せずに分離して1本で単独に存在し、非分岐構造を有している非分岐型単層カーボンナノホーン。
【請求項6】
閉鎖構造を有している請求項5に記載の非分岐型単層カーボンナノホーン。
【請求項7】
開孔を有している請求項5に記載の非分岐型単層カーボンナノホーン。
【請求項8】
動的光散乱法による直径が10〜50nmの単層カーボンナノホーン集合体。
【請求項9】
請求項1〜4のいずれかに記載の分岐型単層カーボンナノホーン、請求項5〜7のいずれかに記載の分岐型単層カーボンナノホーン、および請求項8に記載の単層カーボンナノホーン集合体から選ばれる少なくとも1種を含有する単層カーボンナノホーン分散液。
【請求項10】
請求項1〜4のいずれかに記載の分岐型単層カーボンナノホーンを製造する方法であって、空気中、加熱下で単層カーボンナノホーン集合体を酸化処理する工程と、酸化処理した単層カーボンナノホーン集合体を超音波破砕する工程とを含むことを特徴とする分岐型単層カーボンナノホーンの製造方法。
【請求項11】
請求項5〜7のいずれかに記載の非分岐型単層カーボンナノホーンを製造する方法であって、空気中、加熱下で単層カーボンナノホーン集合体を酸化処理する工程と、酸化処理した単層カーボンナノホーン集合体を超音波破砕する工程とを含むことを特徴とする非分岐型単層カーボンナノホーンの製造方法。
【請求項1】
他のカーボンナノホーンと集合体を形成せずに分離して1本で単独に存在し、分岐構造を有している分岐型単層カーボンナノホーン。
【請求項2】
二方型、三方型、または多方型の分岐構造を有している請求項1に記載の分岐型単層カーボンナノホーン。
【請求項3】
閉鎖構造を有している請求項1または2に記載の分岐型単層カーボンナノホーン。
【請求項4】
開孔を有している請求項1または2に記載の分岐型単層カーボンナノホーン。
【請求項5】
他のカーボンナノホーンと集合体を形成せずに分離して1本で単独に存在し、非分岐構造を有している非分岐型単層カーボンナノホーン。
【請求項6】
閉鎖構造を有している請求項5に記載の非分岐型単層カーボンナノホーン。
【請求項7】
開孔を有している請求項5に記載の非分岐型単層カーボンナノホーン。
【請求項8】
動的光散乱法による直径が10〜50nmの単層カーボンナノホーン集合体。
【請求項9】
請求項1〜4のいずれかに記載の分岐型単層カーボンナノホーン、請求項5〜7のいずれかに記載の分岐型単層カーボンナノホーン、および請求項8に記載の単層カーボンナノホーン集合体から選ばれる少なくとも1種を含有する単層カーボンナノホーン分散液。
【請求項10】
請求項1〜4のいずれかに記載の分岐型単層カーボンナノホーンを製造する方法であって、空気中、加熱下で単層カーボンナノホーン集合体を酸化処理する工程と、酸化処理した単層カーボンナノホーン集合体を超音波破砕する工程とを含むことを特徴とする分岐型単層カーボンナノホーンの製造方法。
【請求項11】
請求項5〜7のいずれかに記載の非分岐型単層カーボンナノホーンを製造する方法であって、空気中、加熱下で単層カーボンナノホーン集合体を酸化処理する工程と、酸化処理した単層カーボンナノホーン集合体を超音波破砕する工程とを含むことを特徴とする非分岐型単層カーボンナノホーンの製造方法。
【図6】
【図7】
【図8】
【図11】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図9】
【図10】
【図7】
【図8】
【図11】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2010−202421(P2010−202421A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−46675(P2009−46675)
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】
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