説明

分岐状ポリカーボネート

【課題】従来技術に述べる欠点のない長鎖分岐状ポリカーボネートおよびその製法を提供する。
【解決手段】式(1a):


[式中、R、R、RおよびRは互いに独立してC−C10アルキルを表し、R、RおよびRは互いに独立して水素またはC−C10アルキルを表し、またはRおよびR、並びにRおよびRは、それらが結合されている炭素原子と共に、C−C10シクロアルキル基を形成し、その場合シクロアルキル基は置換されてもよい。]
に適合する分岐状構造ユニットを含有する、ポリカーボネート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は芳香族ポリカーボネートおよびより特に分岐状ポリカーボネートに関する。
【背景技術】
【0002】
芳香族ポリカーボネートは、エンジニアリング熱可塑性材料のグループに属する。それらは、エンジニアリング用途において重要な特性、透明性、耐熱性および靭性の組合せによって特徴づけられる。
【0003】
高分子量直鎖状ポリカーボネートは、2相混合物中でビスフェノールのアルカリ金属塩とホスゲンとを反応させることによる相境界プロセス(phase boundary process)によって得られる。分子量はモノフェノール、例えばフェノールまたはtert−ブチルフェノールの量によって制御され得る。これらの反応は、本質的に直鎖状ポリマーのみを生成する。これは末端基分析によって確認され得る。
【0004】
相境界プロセスによる直鎖状ポリカーボネートの製造については、例えばH. Schnell著、「Chemistry and Physics of Polycarbonates」、Polymer Reviews、第9巻、Interscience Publishers、ニューヨーク1964年、33以下およびPolymer Reviews、第10巻、「Condensation Polymers by Interfacial and Solution Methods」、Paul W. Morgan著、Interscience Publishers、ニューヨーク1965年、VIII章、325頁が参照され得る。
【0005】
US B 4185009、DE A 2500092およびJP B 79039040には、特定のビスフェノールと連鎖停止剤および分岐剤としてイサチンビスフェノールとの混合物からスタートし、分岐して、高分子量のポリカーボネートが、相境界プロセスにおいてホスゲンとの反応後に得られ得る方法が開示されている。DE A 4240313には、分岐剤としてイサチンビスクレゾールを有するビスフェノールAおよびビスフェノールTMCに基づいて改良した流動性を有するコポリカーボネートについて開示されている。
【0006】
DE A 19913533には、オリゴマー性またはポリマー性分岐剤が使用されることを含む高度に架橋したポリカーボネートの製造について開示されている。DE A 19943642には、それらの擬似塑性によって採水器材料として使用するのに好適な分岐状ポリカーボネートについて開示している。
【0007】
US B 5367044には、1,1,1−トリス−(4−ヒドロキシフェニル)エタン(THPE)が、0.28−0.36モル%の量で分岐剤として用いられる分岐状ポリカーボネートから製造されたボトルについて記載されている。
【0008】
直鎖状ポリカーボネートと比較して、より良好な流動性のために、分岐状ポリカーボネートは比較的高い剪断速度でポリマー溶融の良好な流れが望ましい用途、例えば複雑な構造の射出成形において特に有用である。分岐状ポリカーボネートは擬似塑性によって区別され、もはやニュートン流体とみなすことができない。
【0009】
先行技術において、高純度の三官能性生成物は分岐剤として用いられる。直接的に製造され得、かつ第二成分としてビスフェノールのみを含む(それは面倒な分離を必要としない)三官能性化合物を用いることは有利である。
【0010】
【特許文献1】US B 4185009
【特許文献2】DE A 2500092
【特許文献3】JP B 79039040
【特許文献4】DE A 4240313
【特許文献5】DE A 19913533
【特許文献6】DE A 19943642
【特許文献7】US B 5367044
【非特許文献1】H. Schnell著、「Chemistry and Physics of Polycarbonates」、Polymer Reviews、第9巻、Interscience Publishers、ニューヨーク1964年、33以下
【非特許文献2】Polymer Reviews、第10巻、「Condensation Polymers by Interfacial and Solution Methods」
【非特許文献3】Paul W. Morgan著、Interscience Publishers、ニューヨーク1965年、VIII章、325頁
【発明の要旨】
【0011】
分岐状ポリカーボネートおよびその調製方法を開示する。このポリカーボネートは:
【0012】
【化1】

[式中、R、R、RおよびRは互いに独立してC−C10アルキルを表し、R、RおよびRは互いに独立して水素またはC−C10アルキルを表し、またはRおよびR、およびRおよびRは、それらが結合されている炭素原子と共に、C−C10シクロアルキル基を形成し、その場合シクロアルキル基は置換されてもよい。]
に適合する構造ユニットを含む。
【0013】
本目的は、これらの欠点を回避する長鎖分岐状ポリカーボネートおよびそれらの製造方法を提供することである。この目的は驚くべきことに一般式(1):
【0014】
【化2】

[式中、R、R、RおよびRは、互いに独立してC−C10アルキル、好ましくはC−Cアルキル、特に好ましくはC−C−アルキル、とりわけ特に好ましくはメチルを示し、R、RおよびRは互いに独立して水素またはC−C10アルキル、好ましくはC−Cアルキル、特に好ましくは水素またはC−Cアルキル、とりわけ特に好ましくは水素を示し、またはRおよびR、およびRおよびRはそれらが結合されている炭素原子と共に、独立してC−C10シクロアルキル、好ましくはC−Cシクロアリール、特にシクロペンチルまたはシクロヘキシルを形成してもよく、その場合シクロアルキル環は好ましくはC−Cアルキル、特にメチルによって置換されてもよい。]
に適合する少なくとも1種の分岐剤を使用することによって達成された。
【0015】
前記アルキル置換基は、直鎖状または分岐状であってよい。特に好ましい化合物は、一般式(2):
【0016】
【化3】

で示される化合物であり、それはビスフェノールA誘導体から誘導され、R、RおよびRは前記の意味を有する。
【0017】
ひとつのとりわけ特に好ましい分岐剤は、式(3)のものである:
【0018】
【化4】

【0019】
式(1)、(2)および(3)の化合物は、既知であり、既知の方法を用いて製造されてよい。
【0020】
式(3)の化合物は、例えばE. Nowakowska、K. Zdzislaw著、「Polish Journal of Applied Chemistry」40(3)、 247 (1997年);、J. Paryzkova、D. Snobl、P. Matousek、Vyzk. Ustav Org. Synt著、「Chemicky Prumysl」29(1)、30 (1979年);およびUS 3281478 of Union Carbide Corp.,ニューヨーク(25.10.1966年).
【0021】
本発明によるこれらの分岐状ポリカーボネートは、ビスフェノールA誘導体またはビスフェノール誘導体およびナトリウムビスフェノレートから、最も単純なケースにおいて、ビスフェノールA(BPA)およびナトリウムビスフェノレートA(NaBPA)を用いて120〜230℃、好ましくは130〜220℃、特に好ましくは150〜210℃、とりわけ特に好ましくは160〜200℃の温度で溶融中で、放出フェノールの除去によって製造されてよい(例えば具体的にはUS-A 3281478)。
【発明の開示】
【発明の効果】
【0022】
驚くべきことに、分岐剤の製造から得られる粗生成物は、その粗生成物において唯一確認できる不純物が単にビスフェノールから構成されているため、更に入念な精製をしないで使用することができることが解った。ビスフェノールのこの含量は、分岐状ポリカーボネートの合成についての計算で含まれてもよい。この含量はバッチからバッチに変化し、例えば使用に先立ってガスクロマトグラフィーによって簡単に決定され得る。
【0023】
従って、1つの実質的な利点はまた、分岐剤がポリカーボネートの合成に直接、即ちそれが、例えばBPA製造においてBPAストリームの蒸留、再結晶または溶融結晶化から製造される技術的な形態において用いられ得るということである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
分岐状ポリカーボネートは、特定の用途に必要な熱安定性を更に示す。
【0025】
本発明は式(1)の化合物からOH基を通して誘導される式(1a):
【0026】
【化5】

[式中、R〜Rは前記の意味を有する。]
を示す分岐状構造を含有するポリカーボネートを提供する。
【0027】
好ましいポリカーボネートは、式(2a)の分岐状構造を含むものである:
【0028】
【化6】

[式中、R、RおよびRは前記の意味を有する。]
【0029】
特に好ましくはポリカーボネートは式(3a)の分岐状構造を含むものである:
【0030】
【化7】

【0031】
本発明によるポリカーボネートは、式(1)または好ましい式(2)および/または(3)の本発明による分岐剤の少なくとも1種を用いて、例えばジフェノールとカルボン酸ハライド、好ましくはホスゲンおよび/または芳香族ジカルボン酸ジハライド、好ましくはベンゼンジカルボン酸ジハライドおよび/またはジフェニルカーボネートとを反応させることによって製造され得る。
【0032】
本発明によるポリカーボネートは、式(4)の少なくとも1種のジフェノール残基を含有する。
【0033】
【化8】

[各Dはもう一方と独立して炭素原子6〜40個、好ましくは炭素原子6〜35個、特に炭素原子6〜30個を有する芳香族基(この基は要すればヘテロ原子を含む。)を示し、および要すればC−C12アルキル、好ましくはC−C10アルキル、特に好ましくはC−Cアルキルおよび/またはハロゲンによって好ましくはフッ素または塩素によって置換されてもよく、およびさらに要すれば脂肪族または脂環族基を含んでもよい。]
【0034】
式(4)において、Dは好ましくは式(5)に適合する。
【0035】
【化9】

[式中、RとRは互いに独立して水素、C−C18アルキル、C−C18アルコキシ、ハロゲン、例えば塩素または臭素、またはいずれの場合も要すれば置換されたアリールまたはアラルキル、好ましくは水素またはC−C12アルキル、特に好ましくは水素またはC−Cアルキルおよびとりわけ特に好ましくは水素またはメチルであり、およびXは単結合、−SO−、−CO−、−O−、−S−、C〜Cアルキレン、C〜CアルキリデンまたはC〜Cシクロアルキリデン(それはC〜Cアルキル、好ましくはメチルまたはエチルで置換されてもよい)またはさらにC〜C12アリーレン(それは要すればヘテロ原子を含む別の芳香環と融合されてもよい)を示す。]
【0036】
Xは好ましくは単結合、C〜Cアルキレン、C〜Cアルキリデン、C〜Cシクロアルキリデン、−O−、−SO−、−CO−、−S−、−SO−を示し、または式(5a)または(5b):
【0037】
【化10】

[式中、R10およびR11は、各Xについて独立して選択され、かつ互いに独立して、水素またはC〜Cアルキル、好ましくは水素、メチルまたはエチルを示し、およびXは炭素を示し、mは4〜7、好ましくは4または5の整数を示す。但し、少なくとも1種の原子X上においてR10およびR11は同時にアルキルである。]に適合する。
【0038】
例として述べられるジヒドロキシ化合物は、ヒドロキノン、レゾルシノール、ジヒドロキシビフェニル、ビス(ヒドロキシフェニル)アルカン、ビス(ヒドロキシフェニル)シクロアルカン、ビス(ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(ヒドロキシフェニル)スルホキシド、α,α’−ビス(ヒドロキシフェニル)ジイソプロピルベンゼン、およびそれらの環−アルキル化および環−ハロゲン化合物およびまたα,ω−ビス(ヒドロキシフェニル)ポリシロキサンを包含する。
【0039】
好ましいジフェノールは4,4’−ジヒドロキシビフェニル(DOD)、4,4’−ジヒドロキシビフェニルエーテル(DODエーテル)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(ビスフェノールTMC)、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,4−ビス[2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル]ベンゼン、1,3−ビス[2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル]ベンゼン(ビスフェノールM)、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、2,4−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルブタン、2,2−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパンおよび2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパンが挙げられる。
【0040】
特に好ましいジフェノールは2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、4,4’−ジヒドロキシビフェニル(DOD)、4,4’−ジヒドロキシビフェニルエーテル(DODエーテル)、1,3−ビス[2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル]ベンゼン(ビスフェノールM)、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、2,2−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンおよび1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(ビスフェノールTMC)が挙げられる。
【0041】
とりわけ特に好ましい化合物は2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、4,4’−ジヒドロキシビフェニル(DOD)、4,4’−ジヒドロキシビフェニルエーテル(DODエーテル)、1,3−ビス[2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル]ベンゼン(ビスフェノールM)および1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(ビスフェノールTMC)が挙げられる。
【0042】
ジフェノールは、単独または互いの混合物としての両方で用いられてもよい。したがって、本発明の目的のために、ポリカーボネートはホモポリカーボネートおよびコポリカーボネートの両方を意味するものと理解される。コポリカーボネートは、式4および/または5から選択された少なくとも1つの別のジフェノール(使用したビスフェノールのモル数に対して)一般に少なくとも50モル%以下、好ましくは45モル%以下、特に好ましくは40モル以下、特に30モル%以下を一般に含む。ジフェノールは文献既知であり、または文献に知られた方法で製造されてもよい(例えば、H.J. Buyschら著、「Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry」VCH、ニューヨーク1991年、第5版、第19巻、348頁参照)。
【0043】
式(1)〜(3)の分岐剤は、好ましくは使用したジフェノールのモル数に対して0.05〜10モル%、特に好ましくは0.1−5モル%、とりわけ特に好ましくは0.2−1モル%の量で用いられる。
【0044】
本発明によるポリカーボネートは、一般的には、ジフェノール構造ブロックとしてビスフェノールAを有するポリカーボネートに対して検量されたゲル透過クロマトグラフィー(GPC)によって確定された分子量(重量平均)13,000〜100,000、好ましくは15,000〜80,000、特に好ましくは15,000〜60,000g/モルを有する。
【0045】
本発明はさらに、ジフェノールおよび式(1)または(2)または(3)の分岐剤が、水性アルカリ溶液中で溶解され、要すれば溶媒中で溶解されたカーボネートの源、例えばホスゲンと、水性アルカリ溶液、有機溶媒および触媒、好ましくはアミン化合物から調製された2相の混合物において反応させることを特徴とする、分岐状ポリカーボネートおよびコポリカーボネートの製造方法に関する。前記反応はまた、複数の段階で行なわれ得る。
【0046】
水性アルカリ溶液における分岐剤を含むジフェノールの濃度は、2〜25重量%、好ましくは2〜20重量%、特に好ましくは2〜18重量%および非常に特に好ましくは3〜15重量%である。水性アルカリ溶液は、アルカリまたはアルカリ土類金属の水酸化物が溶解されている水からなる。ナトリウムおよび水酸化カリウムが好ましい。
【0047】
ホスゲンがカーボン源として用いられる際、水性アルカリ溶液/有機溶媒の体積比は、5:95〜95:5、好ましくは20:80〜80:20、特に好ましくは30:70〜70:30、およびとりわけ特に好ましくは40:60〜60:40である。ビスフェノール:ホスゲンのモル比は、1:10以下、好ましくは1:6、特に好ましくは1:4およびとりわけ特に好ましくは1:3である。本発明による分岐状ポリカーボネートおよびコポリカーボネートの濃度は、1.0〜25重量%、好ましくは2〜20重量%、特に好ましくは2〜18重量%およびとりわけ特に好ましくは3〜15重量%である。
【0048】
ビスフェノールの導入量に対するアミン化合物の濃度は、0.1〜10モル%、好ましくは0.2〜8モル%、特に好ましくは0.3〜6モル%およびとりわけ特に好ましくは0.4〜5モル%である。
【0049】
カーボネート源はホスゲン、ジホスゲンまたはトリホスゲン、好ましくはホスゲンである。ホスゲンが用いられる場合において、溶剤を省くことは要すれば可能であり、ホスゲンを反応混合物へ直接導入してもよい。
【0050】
第三アミン、例えばトリエチルアミンまたはN−アルキルピペリジンは触媒として用いてもよい。トリアルキルアミンおよび4−(ジメチルアミノ)ピリジンは好適な触媒である。トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、トリブチルアミン、トリイソブチルアミン、N−メチルピペリジン、N−エチルピペリジンおよびN−プロピルピペリジンは特に好適である。
【0051】
考慮され得る有機溶媒は、ハロゲン化炭化水素、例えばメチレンクロリドおよび/またはクロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼンまたはそれらの混合物または芳香族炭化水素、例えばトルエンまたはキシレンである。
【0052】
反応温度は5℃〜100℃、好ましくは0℃〜80℃、特に好ましくは10℃〜70℃およびとりわけ特に好ましくは10℃〜60℃である。
【0053】
その代わりに、本発明によるポリカーボネートはまた溶融エステル交換方法によって製造され得る。溶解エステル交換方法は、例えば「Encyclopedia of Polymer Science」、第10巻(1969年)、「Chemistry and Physics of Polycarbonates, Polymer Reviews」、H. Schnell著、第9巻、John Wiley and Sons, Inc.(1964年)およびDE-C 1031512に記載されている。
【0054】
溶融エステル交換方法において、相境界プロセスのために既に記載されている芳香族ジフェノールおよび分岐剤を、好適な触媒および要すればさらなる添加剤の補助を受けて、カルボン酸ジエステルと溶融エステル交換する。
【0055】
本発明の目的のために、カルボン酸ジエステルは好ましくは式(6)および(7)である:
【0056】
【化11】

[式中、R、R’およびR”は互いに独立して水素、C−C34アルキル、C−C34シクロアルキル、C−C34アラルキルまたはC−C34アリールである。]
【0057】
下記のものが例として示され得る:
ジフェニルカーボネート、ブチルフェニル−フェニルカーボネート、ジ−ブチルフェニルカーボネート、イソブチルフェニル−フェニルカーボネート、ジ−イソブチルフェニルカーボネート、tert−ブチルフェニル−フェニルカーボネート、ジ−tert−ブチルフェニルカーボネート、n−ブチルフェニルカーボネート、n−ヘキシルフェニル−フェニルカーボネート、ジ−(n−ヘキシルフェニル)カーボネート、シクロヘキシルフェニル−フェニルカーボネート、ジ−シクロヘキシルフェニルカーボネート、フェニルフェノール−フェニルカーボネート、ジ−フェニルフェノールカーボネート、イソオクチルフェニル−フェニルカーボネート、ジ−イソオクチルフェニルカーボネート、n−ノニルフェノール−フェニルカーボネート、ジ−(n−ノニルフェノール)カーボネート、クミルフェニルフェニルカーボネート、ジ−クミルフェニルカーボネート、ナフチルフェニル−フェニルカーボネート、ジ−ナフチルフェニルカーボネート、ジ−tert−ブチルフェニル−フェニルカーボネート、ジ−(ジ−tert−ブチルフェニル)カーボネート、ジクミルフェニル−フェニルカーボネート、ジ−(ジクミルフェニル)カーボネート、フェノキシフェニル−フェニルカーボネート、ジ−(4−フェノキシフェニル)カーボネート、3−ペンタデシルフェニル−フェニルカーボネート、ジ−(3−ペンタデシルフェニル)カーボネート、トリチルフェニル−フェニルカーボネート、ジ−トリチルフェニルカーボネート。
【0058】
好ましい化合物は、ジフェニルカーボネート、tert−ブチルフェニル−フェニルカーボネート、ジ−tert−ブチルフェニルカーボネート、フェニルフェノールカーボネート、ジ−フェニルフェノールカーボネート、クミルフェニル−フェニルカーボネート、ジ−クミルフェニルカーボネートである。ジフェニルカーボネートは特に好ましい。
【0059】
前記明示のカルボン酸ジエステルの混合物もまた使用されてもよい。
【0060】
ジフェノールに対するカルボン酸ジエステルの割合は、100〜130モル%、好ましくは103〜120モル%、特に好ましくは103〜109モル%である。
【0061】
溶融エステル交換方法中で本発明の目的のために用いられる触媒は、上記文献に記載されるように、塩基性触媒、例えばアルカリ金属およびアルカリ土類金属水酸化物および酸化物だけでなく、オニウム塩と呼ばれるアンモニウムまたはホスホニウム塩が挙げられる。
【0062】
好ましくは、オニウム塩、特に好ましくはホスホニウム塩が使用される。
【0063】
本発明の目的のためのホスホニウム塩は式(8)を有するものである:
【0064】
【化12】

[式中、R1−4は独立してC−C10アルキル、C−C10アリール、C−C10アラルキルまたはC−Cシクロアルキル、好ましくはメチルまたはC−C14アリール、特に好ましくはメチルまたはフェニルを示し、およびXはアニオン、例えばヒドロキシド、スルフェート、硫酸水素、炭酸水素、カーボネート、ハライド、好ましくはクロリド、または式ORのアルコキシドを示し、その場合RはC−C14アリールまたはC−C12アラルキル、好ましくはフェニルである。]。
好ましい触媒はテトラフェニルホスホニウムクロリド、テトラフェニルホスホニウムヒドロキシド、テトラフェニルホスホニウムフェノラート、特に好ましくはテトラフェニルホスホニウムフェノラートである。
【0065】
触媒は、好ましくはジフェノール1モルに対して好ましくは10−8〜10−3モルの量、特に好ましくは10−7〜10−4モルの量で使用される。
【0066】
さらなる触媒は、ポリマー化の速度を速めるために単独でまたは要すればオニウム塩に加えて使用してもよい。かかる触媒は、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の塩、例えば水酸化物;リチウム、ナトリウムおよびカリウムのアルコキシドおよびアリールオキシド塩、好ましくはナトリウムの水酸化物、アルコキシドおよびアリールオキシド塩を含む。水酸化ナトリウムおよびナトリウムフェノラートは最も好まれる。触媒の量は、各場合ナトリウムとして計算されて、1〜200ppb、好ましくは5〜150ppbおよび最も好ましくは10〜125ppbの範囲内であり得る。
【0067】
芳香族ジフェノールとカルボン酸ジエステルの溶融エステル交換反応は、好ましくは2段階で行われる。第一段階において、芳香族ジフェノールおよびカルボン酸ジエステルは、80〜250℃、好ましくは100〜230℃、特に好ましくは120〜190℃の温度で標準圧下で0〜5時間、好ましくは0.25〜3時間で溶解される。触媒の添加後、オリゴカーボネートは、真空(2mmHgまで低下)の適用および温度上昇(260℃まで上昇)による蒸留によりモノフェノールを除去することにより芳香族ジフェノールとカルボン酸ジエステルから製造される。この段階は、プロセスからの大量の蒸気を生じさせる。得られたオリゴカーボネートは重量平均分子量M(ジクロロメタンまたはフェノール/o−ジクロロベンゼンの等量混合物中における相対溶液粘度(光散乱によって検量された)の測定により決定)2000g/モル〜18,000g/モル、好ましくは4000g/モル〜15,000g/モルにおける範囲を有する。
【0068】
第二段階において、ポリカーボネートは温度をさらに250−320℃、好ましくは270−295℃まで増加し、かつ圧力<2mmHgにすることによる、重縮合で製造される。蒸気の残りはこの段階でプロセスから除去される。
【0069】
触媒はまた、互いの(2以上の)組合せにおいて用いてもよい。
【0070】
アルカリ/アルカリ土類金属触媒が使用される際、後の時点(例えば、第二段階における重縮合についてのオリゴカーボネート合成の後)でアルカリ/アルカリ土類金属触媒を添加することは有利であり得る。
【0071】
本発明によるプロセスの目的のために、ポリカーボネートを生成するための芳香族ジフェノールとカルボン酸ジエステルの反応は、例えば、撹拌槽反応器、フィルムエバポレーター、フォーリングフィルムエバポレーター、撹拌槽反応器カスケード(cascades)、押出機、ニーダー、シンプルディスクリアクターおよび高粘度ディスクリアクター中で不連続的にまたは好ましくは連続的に行われ得る。
【0072】
しかしながら、本明細書中および好ましい範囲において記載した定義、パラメータ、化合物および説明はまた、必要に応じて互いに、即ち、特定の範囲および好ましい範囲間で組合せてもよい。
【0073】
本発明による分岐状ポリカーボネートおよびコポリカーボネートは、既知の方法でワークアップされ、かつ例えば射出成形または押出ブロー成形によって任意の成形品に加工される。
【0074】
さらに別の芳香族ポリカーボネートおよび/または別の芳香族ポリエステルカーボネートおよび/または別の芳香族ポリエステルは、既知の方法で、例えば配合によって本発明による分岐状ポリカーボネートおよびコポリカーボネートに添加されてもよい。
【0075】
これらの熱可塑性材料のための常套の添加剤、例えばフィラー、UV安定剤、熱安定剤、静電防止剤および顔料を通常の量で本発明による分岐状ポリカーボネートおよびコポリカーボネートに添加され得る。離型性、流動性および/または耐炎性も、外添の離型剤、流動性向上剤および/または防炎加工剤(例えば、アルキルおよびアリールホスフィット、ホスフェート、ホスファン、低分子量カルボン酸エステル、ハロゲン化合物、塩、チョーク、石英微粉、ガラスおよびカーボンファイバー、顔料およびそれらの組合せ:そのような化合物については、WO 99/55772、15−25頁および「Plastics Additives Handbook」、Ed. Hans Zweifel、第5版2000、Hanser Publishers、Munichに対応する章に記載されている。)を添加することによって改良してもよい。
【0076】
本発明による分岐状ポリカーボネートおよびコポリカーボネートは、要すれば別の熱可塑性材料および/または常套の添加剤とブレンドされ、任意の形状の成形品/押出品に加工され、かつ既知のポリカーボネート、ポリエステルカーボネートおよびポリエステルが使用されるどの用途でも用いられる。この特性の範囲のために、それらは比較的大きな成形部品、例えば自動車グレージングおよびシート製品として特に好適である。しかしながら、それらは光学データ記憶媒体、例えばCD類、CD−R類、DVD類またはDVD−R類の基材物質としても適切であるが、例えば電気的分野におけるフィルムとして、自動車構造における成形品および安全分野におけるカバーのためのシートとしても用いられ得る。本発明によるポリカーボネートは、公知のように、建築、車両および航空機、並びにヘルメットシールドの多数の領域で必需品である安全パネルの製造、フィルム、特にスキーフィルムの製造、ブロー成形品(例えばUS-A 2964794参照)、例えば1ガロン〜5ガロンの水タンクの製造、光透過性パネル、特にセルラー用シート(cellular sheets)屋根ふき材、建物、例えば駅や温室用および照明装置用、光学データ記憶媒体、交通照明ハウジングまたは交通信号、フォーム(DE-B 1031507参照)、糸およびフィラメント(DE-B 1137167およびDE-A 1785137参照)の製造のために使用され得る。
【0077】
ポリカーボネートは、さらに光用途(DE-A 1554020参照)のためにガラスファイバーを含有する半透明性プラスチックとしてまたは光透過性および光散乱性成形品の製造のための、硫酸バリウムおよび/または二酸化チタンおよび/または酸化ジルコニウムまたは有機ポリマー性アクリレートゴムを含む半透明プラスチックとして(EP-A 634445、EP-A 269324)、精密射出成形部品、例えばレンズ取付(lens mountings)の製造中の有機光導電体用の基材として用いられる。後の場合において、使用されるポリカーボネートはガラスファイバーおよび要すればさらに総重量に対してMoS約1〜10重量%を含むものである。本発明によるポリカーボネートは、さらに光学装置部品、特にスチルおよびビデオカメラ用のレンズ(DE-A 2701173参照)、光伝導媒体、特に光ファイバーケーブル(EP-A 0089801参照)、導電体およびプラグハウジングおよびソケット用の電気絶縁材料;香料、アフターシェーブおよび汗への改良した耐性を有する携帯電話のケーシング;ネットワークインターフェースデバイス;ランプ、例えばヘッドライト/スポットライトランプ、拡散ディスク(diffuser disks)または内部レンズおよびストリップライト;医療用用途、例えば人工肺および透析装置;食品用途、例えばボトル、陶器(crockery)およびチョコレートモールド;燃料または潤滑剤との接触が起こる自動車用途、例えばバンパー、要すればABSまたは好適ゴムとの適当なブレンドの形状で;スポーツ製品、例えばスラロームポールおよびスキーブーツ留め具;家庭用製品、例えば台所のシンク(sink)およびレターボックス;ハウジング、例えば電気配電キャビネット;例えば電動歯ブラシのハウジングおよびヘヤドライヤー用のハウジング;改良した洗浄溶剤に対する耐性を有する透明性洗濯機の蒸気口;防護めがね;視力矯正めがね、改良した台所蒸気、特にオイル蒸気への耐性を有する台所用途用のランプカバー;薬剤用の梱包用フィルム;チップボックスおよびチップキャリアまたはその他の用途、例えば飼育小屋(stall-feeding)のドアまたは動物の檻の製造のために使用される。
【0078】
本発明によるポリマーから得られ得る成形品および押出品は、本発明によっても与えられる。
【0079】
以下の例は、範囲を限定することなく、本発明を説明することを目的とする。
【実施例1】
【0080】
相対溶液粘度は、20℃でメチレンクロリド100ml中のポリマー0.5gで決定した。
【0081】
メルトボリュームレート(MVR)はISO1133に従って決定した。
【0082】
固有の溶融体積比率(IMVR)はISO1133に従って決定したが、サンプルは測定温度(以下の例において300℃)の温度で20分間で測定に先立って状態調整した。
【0083】
VICAT温度は、ISO306に従って決定した。
【0084】
ノッチ衝撃強度は、室温でISO180/4Aに従って決定した。
【0085】
降伏応力、伸張性および弾性率はISO527に従って決定した。
【0086】
引裂強度および破断点伸びはISO527に従って決定した。
【0087】
実施例1:
2,4−ビス[1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル]フェノール(「トリスフェノール」)の合成:
【0088】
【化13】

【0089】
ビスフェノールA(BPA、Bayer AG)1712g(5.00モル)を窒素雰囲気下190℃で溶融した。固形ナトリウムビスフェノレート(NaBPA)20.4g(0.05モル)を次いで添加した。形成したフェノールをウォータージェットバキューム(15−20mbar)下で、蒸留することによって180−190℃のボトム温度で得られた溶融体から除去した。バッチ調製を5回繰り返し、フェノールを除去した粗材料(総量353g;フェノール3.75モルの分離後)を組合せた。
【0090】
粗材料は、いずれの場合も酢酸(濃縮)75mlを有するトルエン3850mlから3つの部分に再結晶された。トリスフェノール含量約45%を有する(湿潤性)結晶生成物約7kgが得られた。この材料をいずれの場合もトルエン3リットルを含む1kg部中100℃で抽出した。抽出は100℃で約15分間トルエン懸濁液を撹拌し、次いでそれを加熱フィルタ(hot-filtering)に通すことによって行った。抽出残渣はともにトリスフェノール含量約85%を有して1540g(湿潤性)を生成した。全体量をトルエン4lを用いて100℃で2度再抽出し、抽出残渣を真空下80℃で乾燥させた。トリスフェノール94.2%を含有する生成物995.5gが得られた。トリスフェノール含量を更にトルエン3lを用いて80℃でもう一度抽出することによって増加させた。真空下80℃で乾燥後、トリスフェノール含量97.9%を有するベージュのパウダー945gが得られ、それは全体の収率11.6%に相当する。残余物はビスフェノールAからなる。
【0091】
収量:白色−ベージュパウダー945g(理論値11.6%)
分析:
トリメチルシリル誘導体での誘導体化後のGC−MS:期待質量362がここで生成物ピークとしてみられた。純度:97.94%(不純物としてBPA1.79%が確認された)。
【0092】
実施例2:
メチレンクロリド118mlおよびクロロベンゼン30mlを水118ml中ビスフェノールA15.862g(0.0694モル)およびナトリウムヒドロキシド6.13g(0.153モル)の窒素不活性溶液へ添加した。実施例1からの分岐剤0.081g(ビスフェノールAに対して0.00022モルまたは0.32モル%)および連鎖停止剤としてp−tert−ブチルフェノール(BUP)0.3559g(ビスフェノールAに対して0.00237モルまたは3.4モル%)を単段階処理において添加した。pH値13.4および20℃でホスゲン9.6ml(0.1394モル)を1時間に渡って添加した。pH値を12.6以下になるのを防ぐために、25%濃度(strength)のナトリウムヒドロキシド溶液をホスゲン化の間に添加した。ホスゲン化および窒素を用いたフラッシング(flushing)の完了後、N−エチルピペリジン96.7μl(ビスフェノールA1モル%に対して0.0007モル)を触媒として添加し、撹拌を1時間継続した。水相を分離後、有機相をリン酸で酸性化し、中性および無塩になるまで蒸留水で洗浄した。メタノール中で沈殿および真空ドライキャビネット中80℃で乾燥後ポリカーボネート16.8gが得られた。
【0093】
分析:
メチレンクロリド中相対溶液粘度(0.5g/溶液100ml):1.310/1.315
GPC(BPAポリカーボネートに対する検量):分子量Mw=31789、Mn=14010、分散指数D=2.27
【0094】
実施例3:
メチレンクロリド28.4lおよびクロロベンゼン9lを水28.4l中ビスフェノールA4096.3g(17.94モル)およびナトリウムヒドロキシド1584g(39.6モル)の窒素不活性溶液へ添加した。実施例1からの分岐剤20.88g(ビスフェノールAに対して0.0576モルまたは0.32モル%)および連鎖停止剤としてp−tert−ブチルフェノール(BUP)91.92g(ビスフェノールAに対して0.612モルまたは3.4モル%)を単段階処理において添加した。pH値13.4および21℃でホスゲン3560g(36モル)を1時間および20分に渡って添加した。pH値を12.6以下になるのを防ぐために、25%濃度のナトリウムヒドロキシド溶液をホスゲン化の間に添加した。ホスゲン化および窒素を用いたフラッシング(flushing)の完了後、N−エチルピペリジン24.7ml(ビスフェノールA1モル%に対して0.18モル)を触媒として添加し、撹拌を1時間継続した。水相を分離後、有機相をリン酸で酸性化し、中性および無塩になるまで蒸留水で洗浄した。溶媒をクロロベンゼンに交換した後、不揮発性押出機を通して生成物が押し出された。
【0095】
ポリカーボネート3460gが得られた(一次運転物(first runnings)の廃棄後)。
【0096】
分析:
メチレンクロリド中の相対溶液粘度(0.5g/溶液100ml):1.34
MVR300℃/1.2kg:1.7ml/10分
IMVR300℃/1.2kg 20分:1.7ml/10分
ビカーVSTB50:153.2℃
【0097】
実施例4:
メチレンクロリド28.4lおよびクロロベンゼン9lを水28.4l中ビスフェノールA4096.3g(17.94モル)およびナトリウムヒドロキシド1584g(39.6モル)の窒素不活性溶液へ添加した。実施例1からの分岐剤19.57g(ビスフェノールAに対して0.054モルまたは0.30モル%)および連鎖停止剤としてp−tert−ブチルフェノール(BUP)57.6g(ビスフェノールAに対して0.612モルまたは3.4モル%)を単段階処理において添加した。pH値13.4および21℃でホスゲン3560g(36モル)を1時間および20分に渡って添加した。pH値を12.6以下になるのを防ぐために、25%濃度のナトリウムヒドロキシド溶液をホスゲン化の間に添加した。ホスゲン化および窒素を用いたフラッシング(flushing)の完了後、N−エチルピペリジン24.7ml(ビスフェノールA1モル%に対して0.18モル)を触媒として添加し、撹拌を1時間継続した。水相を分離後、有機相をリン酸で酸性化し、中性および無塩になるまで蒸留水で洗浄した。溶媒をクロロベンゼンに交換した後、不揮発性押出機を通して生成物が押し出された。
【0098】
ポリカーボネート3732gが得られた(一次運転物(first runnings)の廃棄後)。
【0099】
分析:
メチレンクロリド中の相対溶液粘度(0.5g/溶液100ml):1.340
MVR300℃/1.2kg:2.4ml/10分
IMVR300℃/1.2kg 20分:2.2ml/10分
ビカーVSTB50:149.6℃
【0100】
実施例5:
メチレンクロリド28.4lおよびクロロベンゼン9lを水28.4l中ビスフェノールA4096.3g(17.94モル)およびナトリウムヒドロキシド1584g(39.6モル)の窒素不活性溶液へ添加した。実施例1からの分岐剤19.57g(ビスフェノールAに対して0.054モルまたは0.30モル%)および連鎖停止剤としてフェノール66.06g(ビスフェノールAに対して0.702モルまたは3.9モル%)を単段階処理において添加した。pH値13.4および21℃でホスゲン3560g(36モル)を1時間および20分に渡って添加した。pH値を12.6以下になるのを防ぐために、25%濃度のナトリウムヒドロキシド溶液をホスゲン化の間に添加した。ホスゲン化および窒素を用いたフラッシング(flushing)の完了後、N−エチルピペリジン24.7ml(ビスフェノールA1モル%に対して0.18モル)を触媒として添加し、撹拌を1時間継続した。水相を分離後、有機相をリン酸で酸性化し、中性および無塩になるまで蒸留水で洗浄した。溶媒をクロロベンゼンに交換した後、不揮発性押出機を通して生成物が押し出された。
【0101】
ポリカーボネート3775gが得られた(一次運転物(first runnings)の廃棄後)。
【0102】
分析:
メチレンクロリド中の相対溶液粘度(0.5g/溶液100ml):1.303
MVR300℃/1.2kg:4.2ml/10分
IMVR300℃/1.2kg 20分:4.3ml/10分
ビカーVSTB50:147.5℃
【0103】
溶融指数MVRは、所定の力の作用の下、特定の温度で10分で標準化されたノズルを通過する、加熱した熱可塑性の生成物のグラム数をいう。本件の場合において、力は1.2kgおよび温度300℃である。IMVRの場合において、サンプルは押し出しに先立って20分間300℃で機器の中で維持される。いずれかのポリマー分解がこの期間に発生する場合、分解度(degree of degradation)に依存してMVR試験においてよりも、より高い値が得られる。かかる露出後、生成物はより高い流動体であり、かつより多くの材料がノズルを通じて流れることができる。測定の正確さ/誤差限度の境界内で、MVRおよびIMVR値が事実上同一であるならば、これは材料の熱安定性(実施例3〜5参照)を確立する。
【0104】
実施例6:
メチレンクロリド24.1lおよびクロロベンゼン12.4lを水36.5l中ビスフェノールA4566g(20モル)およびナトリウムヒドロキシド1760g(44モル)の窒素不活性溶液へ添加した。実施例1からの分岐剤21.75g(ビスフェノールAに対して0.06モルまたは0.30モル%)および連鎖停止剤としてフェノール67.76g(ビスフェノールAに対して0.72モルまたは3.6モル%)を単段階処理において添加した。pH値13.4および21℃でホスゲン3956g(36モル)を1時間および20分に渡って添加した。pH値を12.6以下になるのを防ぐために、30%濃度のナトリウムヒドロキシド溶液をホスゲン化の間に添加した。ホスゲン化および窒素を用いたフラッシング(flushing)の完了後、N−エチルピペリジン24.7ml(ビスフェノールA1モル%に対して0.18モル)を触媒として添加し、撹拌を1時間継続した。水相を分離後、有機相をリン酸で酸性化し、中性および無塩になるまで蒸留水で洗浄した。溶媒をクロロベンゼンに交換した後、不揮発性押出機を通して生成物が押し出された。
【0105】
ポリカーボネート4020gが得られた(一次運転物(first runnings)の廃棄後)。
【0106】
分析:
メチレンクロリド中の相対溶液粘度(0.5g/溶液100ml):1.320
GPC(BPAポリカーボネートに対する検量):分子量Mw=34441、Mn=11334、分散指数D=3.04
【0107】
本発明によるポリカーボネートの物理特性:
【0108】
実施例3からの分岐状ポリカーボネートの機械的特性:

【0109】
比較例1
ジフェノールとしてビスフェノールAおよび分岐剤としてイサチンビスクレゾール(0.3%)を有し、連鎖停止剤としてフェノールおよびMVR3を有する分岐状ポリカーボネート。
【0110】

【0111】
実施例4からの分岐状ポリカーボネートの特性:

【0112】
実施例5からの分岐状ポリカーボネートの特性:

【0113】
本発明による実施例1、4および5と比較例との比較は、他の機械的性質は別途比較されるが、改良された破断点伸びを示す。
【0114】
実施例7:
生成物の熱安定性を、前記実施例3−5と同様の種々の分岐状ポリカーボネートに関して示され得る。
【0115】
実施例3によるポリマー:
MVR300℃/1.2kg:1.7モル/10分 IMVR300℃/1.2kg 20分:1.7ml/10分
実施例4によるポリマー:
MVR300℃/1.2kg:2.4モル/10分 IMVR300℃/1.2kg 20分:2.2ml/10分
実施例5によるポリマー:
MVR300℃/1.2kg:4.2モル/10分 IMVR300℃/1.2kg 20分:4.3ml/10分
MVRおよびIMVR測定からの結果は、分岐状構造要素が熱的に安定であることを示す。
【0116】
剪断速度(ISO 11443)の関数として粘性の測定は、同様に熱安定性に関しても表示をなし得る:
以下に測定された擬似塑性は、分岐点(branch point)が熱的応力の後でさえも無傷であり、かつ用いられる分岐剤中のいかなる想定の不純物も有害ではないことを更に証明する。従って、分岐構造単位の分解は発生しない。
【0117】
実施例3において得られた分岐状ポリカーボネートは、260、280および300℃で流動的な検討を行った。次のデータが得られた:

【0118】
これらは疑似塑性、分岐状材料用の典型値である。
【0119】
本発明を説明目的のために詳細に説明したが、そのような詳細は単に当該目的のためのものであり、特許請求の範囲によって限定され得る場合を除いては、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく当業者により変更がなされ得ることが理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1a):
【化1】

[式中、R、R、RおよびRは互いに独立してC−C10アルキルを表し、R、RおよびRは互いに独立して水素またはC−C10アルキルを表し、またはRおよびR、並びにRおよびRは、それらが結合されている炭素原子と共に、C−C10シクロアルキル基を形成し、その場合シクロアルキル基は置換されてもよい。]
に適合する分岐状構造ユニットを含有する、ポリカーボネート。
【請求項2】
相境界プロセスによる分岐状ポリカーボネートの製造プロセスにおいて、改良が式(1):
【化2】

[式中R〜Rは、請求項1と同意義である。]
に適合する少なくとも1種の化合物を分岐剤として使用することを含む、分岐状ポリカーボネートの製造プロセス。
【請求項3】
溶融エステル交換方法による分岐状ポリカーボネートの製造プロセスにおいて、改良が式(1):
【化3】

[式中R〜Rは、請求項1と同意義である。]
に適合する少なくとも1種の化合物を分岐剤として使用することを含む、分岐状ポリカーボネートの製造プロセス。
【請求項4】
請求項1記載のポリカーボネートを含有する、射出成形物品。
【請求項5】
請求項1記載のポリカーボネートを含有する、押出製品。

【公開番号】特開2006−131910(P2006−131910A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2005−319505(P2005−319505)
【出願日】平成17年11月2日(2005.11.2)
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【Fターム(参考)】