説明

分岐用継手のシール部材

【課題】分岐用継手によりガス管等の本管に分岐管を接続した場合に、地震による地盤変動等によって分岐用継手が座屈変形しても、分岐用継手の締結圧力を増大することなく、ガス等の漏洩を確実に防止することができる。
【解決手段】本管12に分岐管9を接続するための分岐用継手(T)と本管12との間に介在させる、分岐用継手のシール部材において、基板1と、基板1の少なくとも一方の表面に突設された仕切り壁2とからなり、基板1および仕切り壁2は、何れも、ゴム等の軟質材からなり、仕切り壁2は、縦横に交差している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、分岐用継手のシール部材、特に、分岐用継手によりガス管等の本管に分岐管を接続した場合に、地震による地盤変動等によって分岐用継手が座屈変形しても、分岐用継手の締結圧力を増大することなく、ガス等の漏洩を確実に防止することができる、分岐用継手のシール部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地中に埋設されたガス管等の本管に分岐管を接続するための分岐用継手のシール部材として、特開平7−217785号公報に開示されるものがある。以下、このシール部材を従来シール部材といい、図面を参照しながら説明する。
【0003】
図6は、従来シール部材の一方のシートを示す断面図、図7は、従来シール部材を使用して本管に分岐用継手を装着した分岐部を示す正面図である。
【0004】
図6に示すように、従来シール部材Bの一方のシート3は、中間ゴム層4と中間ゴム層4の両面に、中間ゴム層4より軟質の表面ゴム層5を貼り合わせた三層構造からなり、従来シール部材Bの他方のシート6は、単層のゴム板からなっている。
【0005】
図7に示すように、分岐用継手(T)は、それぞれ半円筒形状をした一方のスリーブ片7と他方のスリーブ片8とからなり、一方のスリーブ片7の中央上部には、分岐管9が接続される、開口10Aを有する分岐部10が形成されている。一方のスリーブ片7における分岐部10の開口10Aの周囲の内面には、Oリング11が挿入される溝7Aが形成され、溝7A内にOリング11を挿入することによって、継手部からのガス等の漏洩を防止している。一方のスリーブ片7と他方のスリーブ片8とは、ガス管等の本管12に締結用ボルト13により装着される。
【0006】
従来シール部材Bを使用して、分岐用継手(T)により本管12に分岐管9を接続するには、先ず、一方のシート3を本管12に、本管12にあけられた分岐口12Aを塞がないように本管12の上半部に取り付ける。次いで、一方のスリーブ片7を一方のシート3の上に乗せる。この際、Oリング11を一方のスリーブ片7の溝7A内に挿入しておく。次いで、他方のシート6を本管12の下半部に取り付ける。次いで、他方のスリーブ片8を他方のシート6の上から被せ、両スリーブ片7、8を互いにボルト13により締結する。そして、分岐部10の開口10A内に分岐管9をねじ込む。
【0007】
上述のように、従来シール部材Bを介して分岐用継手(T)を本管12に装着することによって、地盤沈下等によって分岐用継手が座屈変形してOリング11によるシールが不完全になっても、一方のシート3の軟質の表面ゴム層5が弾性変形して、Oリング11の介在間隔に入り込むので、ガス等の漏洩を防止することができる。
【0008】
【特許文献1】特開平7−217785号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来シール部材Bは、平板状であり、しかも、板厚も限られているので、図8(a)に示すように、分岐用継手(T)が座屈変形していない場合には、従来シール部材Bと分岐用継手(T)とは、互いに面接触するので、従来シール部材Bによるシール効果は発揮されるが、図8(b)に示すように、分岐用継手(T)が座屈変形した場合には、従来シール部材Bと分岐用継手(T)とは、互いに点接触となるので、従来シール部材Bによるシール効果は激減する。なお、分岐用継手(T)の締結圧力を高めれば、その分、シール効果は増大するが、締結圧力を高めると、本管12に悪影響を及ぼす。
【0010】
従って、この発明は、分岐用継手によりガス管等の本管に分岐管を接続した場合に、地震による地盤変動等によって分岐用継手が座屈変形しても、分岐用継手の締結圧力を増大することなく、ガス等の漏洩を確実に防止することができる、分岐用継手のシール部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明は、上記目的を達成するためになされたものであって、下記を特徴とするものである。
【0012】
請求項1に記載の発明は、本管に分岐管を接続するための分岐用継手と前記本管との間に介在させる、分岐用継手のシール部材において、基板と、前記基板の少なくとも一方の表面に突設された仕切り壁とからなり、前記基板および前記仕切り壁は、何れも、軟質材からなり、前記仕切り壁は、縦横に交差していることに特徴を有するものである。
【0013】
請求項2に記載の発明は、本管に分岐管を接続するための分岐用継手と前記本管との間に介在させる、分岐用継手のシール部材において、縦横に交差した仕切り壁からなり、前記仕切り壁は、軟質材からなることに特徴を有するものである。
【0014】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の発明において、前記軟質材は、ゴムからなることに特徴を有するものである。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、互いに縦横に交差した、ゴム等の柔軟性を有する材質からなる仕切り壁によって、分岐用継手と本管との間には、閉鎖空間が形成されるので、地震による地盤変動等によって分岐用継手が座屈変形しても、ガス等は、この閉鎖空間内に留まり、外部に流出することはない。従って、分岐用継手(T)からのガス等の漏洩を確実に防止することができる。しかも、この閉鎖空間は、シール部材に小さい力をかけることにより容易に形成されるので、分岐用継手の締結力を増大させる必要がない。従って、本管に締結力の増大による悪影響を及ぼすこともない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に、この発明の、分岐用継手のシール部材の一実施態様を、図面を参照しながら説明する。
【0017】
図1は、この発明のシール部材を示す部分斜視図、図2は、この発明の他のシール部材を示す部分斜視図、図3は、この発明のシール部材が巻き付けられた本管を示す斜視図、図4は、この発明のシール部材が巻き付けられた本管に分岐用継手を装着した分岐部の分解斜視図である。図5は、この発明のシール部材のシール状態を示す図であり、(a)は、この発明のシール部材Aと座屈変形していない分岐用継手(T)との接触状態を示す部分断面図であり、(b)は、この発明のシール部材Aと座屈変形した分岐用継手(T)との接触状態を示す部分断面図である。
【0018】
図1から図4に示すように、この発明のシール部材Aは、基板1と、基板1の表裏両面に、基板1と一体的に突設された仕切り壁2とからなっている。基板1および仕切り壁2は、何れも、ゴム等の軟質材からなり、仕切り壁2は、格子状に縦横に交差している。仕切り壁2は、格子状に交差させる以外に、ひし形、五角形等の多角形状になるように交差させても良い。
【0019】
この発明のシール部材Aによれば、分岐用継手(T)に座屈変形がない場合には、図5(a)に示すように、シール部材Aの仕切り壁2が分岐用継手(T)と本管12とに密着してシールする。一方、分岐用継手(T)に座屈変形が生じた場合には、図5(b)に示すように、分岐用継手(T)と接触する仕切り壁2の割合が減少し、その分、シール性が低下するように思えるが、本管12内のガス等は、分岐用継手(T)と仕切り壁2とによって形成された閉鎖空間(S)内に流入し、外部に流出することはない。従って、分岐用継手(T)からのガス等の漏洩を確実に防止することができる。
【0020】
しかも、閉鎖空間(S)は、シール部材Aに小さい力をかけることにより容易に形成されるので、分岐用継手の締結力を増大させる必要がない。従って、本管12に締結力の増大による悪影響を及ぼすこともない。
【0021】
このように構成されている、この発明のシール部材Aを使用して、分岐用継手(T)により本管12に分岐管9を接続するには、以下のようにする。
【0022】
なお、分岐用継手(T)は、図7に示すものと同様である。すなわち、分岐用継手(T)は、それぞれ半円筒形状をした一方のスリーブ片7と他方のスリーブ片8とからなり、一方のスリーブ片7の中央上部には、分岐管9が接続される、開口10Aを有する分岐部10が形成されている。一方のスリーブ片7における分岐部10の開口10Aの周囲の内面には、Oリング11が挿入される溝7Aが形成され、溝7A内にOリング11を挿入することによって、継手部からのガス等の漏洩を防止している。一方のスリーブ片7と他方のスリーブ片8とは、ガス管等の本管12に締結用ボルト13により装着される。
【0023】
先ず、図3に示すように、本管12にこの発明のシール部材Aを巻き付ける。この場合、本管12に形成された分岐口12Aを塞がないように巻き付ける。次に、図4に示すように、一方のスリーブ片7と他方のシート6とをシール部材Aに被せる。次に、両スリーブ片7、8を互いにボルト(図示せず)により締結する。そして、分岐部10の開口10A内に分岐管9をねじ込む。
【0024】
上述のように、この発明のシール部材Aを介して分岐用継手(T)を本管12に装着すると、地盤沈下等によって分岐用継手が座屈変形してOリング11によるシールが不完全になっても、本管12内のガス等は、分岐用継手(T)と仕切り壁2とによって形成された閉鎖空間(S)内に流入し、外部に流出することはない。従って、分岐用継手(T)からのガス等の漏洩を確実に防止することができる。
【0025】
しかも、閉鎖空間(S)は、シール部材Aに小さい力をかけることにより容易に形成されるので、分岐用継手の締結力を増大させる必要がない。従って、本管12に締結力の増大による悪影響を及ぼすこともない。
【0026】
以上の例は、シール部材Aを、基板1と、基板1の表裏両面に、基板1と一体的に突設された仕切り壁2とにより構成したものであるが、基板1の片面に、基板1と一体的に仕切り壁2を形成したものであっても、あるいは、図2に示すように、基板1をなくし、仕切り壁2のみを縦横に交差させたものであっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】この発明のシール部材を示す部分斜視図である。
【図2】この発明の他のシール部材を示す部分斜視図である。
【図3】この発明のシール部材が巻き付けられた本管を示す斜視図である。
【図4】この発明のシール部材が巻き付けられた本管に分岐用継手を装着した分岐部の分解斜視図である。
【図5】この発明のシール部材のシール状態を示す図であり、(a)は、この発明のシール部材Aと座屈変形していない分岐用継手(T)との接触状態を示す部分断面図であり、(b)は、この発明のシール部材Aと座屈変形した分岐用継手(T)との接触状態を示す部分断面図である。
【図6】従来シール部材の一方のシートを示す断面図である。
【図7】従来シール部材を使用して本管に分岐用継手を装着した分岐部を示す正面図である。
【図8】従来シール部材のシール状態を示す図であり、(a)は、従来シール部材Bと座屈変形していない分岐用継手(T)との接触状態を示す部分断面図であり、(b)は、従来シール部材Bと座屈変形した分岐用継手(T)との接触状態を示す部分断面図である。
【符号の説明】
【0028】
1:基板
2:仕切り壁
3:一方のシート
4:中間ゴム層
5:表面ゴム層
6:他方のシート
7:一方のスリーブ片
7A:溝
8:他方のスリーブ片
9:分岐管
10:分岐部
10A:開口
11:Oリング
12:本管
12A:分岐口
13:ボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本管に分岐管を接続するための分岐用継手と前記本管との間に介在させる、分岐用継手のシール部材において、
基板と、前記基板の少なくとも一方の表面に突設された仕切り壁とからなり、前記基板および前記仕切り壁は、何れも、軟質材からなり、前記仕切り壁は、縦横に交差していることを特徴とする、分岐用継手のシール部材。
【請求項2】
本管に分岐管を接続するための分岐用継手と前記本管との間に介在させる、分岐用継手のシール部材において、
縦横に交差した仕切り壁からなり、前記仕切り壁は、軟質材からなることを特徴とする、分岐用継手のシール部材。
【請求項3】
前記軟質材は、ゴムからなることを特徴とする、請求項1または2に記載の、分岐用継手のシール部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−144818(P2009−144818A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−322775(P2007−322775)
【出願日】平成19年12月14日(2007.12.14)
【出願人】(000220262)東京瓦斯株式会社 (1,166)
【出願人】(000231877)日本鋳鉄管株式会社 (48)
【Fターム(参考)】