分岐管装置
【課題】流体を流体路に流すだけで夾雑物が取り除かれ、滞留させることなく外部に排出することができる分岐管装置を提供すること。
【解決手段】流体管に接続され、該流体管に連通する流体路4及び流体路4に連通した分岐路5が内部に形成された管体7と、管体7内に配設され流体路4及び分岐路5の開閉切換を行う弁体6と、を備えた分岐管装置3であって、分岐路5は、流体路4よりも下方に設けられ、流体路4を流れる流体中の夾雑物を沈殿させる沈殿部5aと、沈殿部5aに連通し、分岐路5を流れる流体とともに沈殿部5aに沈殿した夾雑物を分岐路5外に導出可能とする導出部5bと、から形成されている。
【解決手段】流体管に接続され、該流体管に連通する流体路4及び流体路4に連通した分岐路5が内部に形成された管体7と、管体7内に配設され流体路4及び分岐路5の開閉切換を行う弁体6と、を備えた分岐管装置3であって、分岐路5は、流体路4よりも下方に設けられ、流体路4を流れる流体中の夾雑物を沈殿させる沈殿部5aと、沈殿部5aに連通し、分岐路5を流れる流体とともに沈殿部5aに沈殿した夾雑物を分岐路5外に導出可能とする導出部5bと、から形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体管に接続され、該流体管に連通する流体路及び該流体路に連通した分岐路が内部に形成された管体と、該管体内に配設され前記流体路及び前記分岐路の開閉切換を行う弁体と、を備えた分岐管装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の分岐管装置は、T字形の分岐管(管体)の直管部(流体路)と分岐部(分岐路)との交点に弁体を設け、通常時は弁体を直管部と平行に開き、必要時に回動させて斜めに直管部を遮断して一方の流水だけが分岐部と連通し流水中の夾雑物を排出している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−161559号公報(第1頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1にあっては、弁体を操作し、直管部を遮断するまでは流水中の夾雑物は下流へと流れてしまうという問題があり、さらに、比較的重量のある夾雑物の場合、直管部などの下部に滞留してしまい排出することができないという慮がある。
【0005】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、流体を流体路に流すだけで夾雑物が取り除かれ、滞留させることなく外部に排出することができる分岐管装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明の分岐管装置は、
流体管に接続され、該流体管に連通する流体路及び該流体路に連通した分岐路が内部に形成された管体と、該管体内に配設され前記流体路及び前記分岐路の開閉切換を行う弁体と、を備えた分岐管装置であって、
前記分岐路は、前記流体路よりも下方に設けられ、該流体路を流れる流体中の夾雑物を沈殿させる沈殿部と、該沈殿部に連通し、前記分岐路を流れる流体とともに前記沈殿部に沈殿した夾雑物を前記分岐路外に導出可能とする導出部と、から形成されていることを特徴としている。
この特徴によれば、分岐路に形成された沈殿部に、流体路を流れる流体中の夾雑物を沈殿させることできるため、流体路に流すだけで流体から夾雑物を取り除き浄化できるばかりか、分岐路を流れる流体の勢いを利用して、沈殿させた夾雑物を滞留させずに導出部を介し外部に排出できる。
【0007】
本発明の分岐管装置は、
前記導出部の端部開口に、該端部開口から流体を導出若しくは閉止可能な栓部材が設けられていることを特徴としている。
この特徴によれば、分岐路の出口である導出部の端部開口に、栓部材が設けられていることで、分岐路の沈殿部を常時開放し、常に夾雑物を沈殿させることができるとともに、閉止時には、導出部の端部開口から分岐路内に異物が進入することを防止でき、更に開放時には、沈殿させた夾雑物を導出部の端部開口から流体とともに排出できる。
【0008】
本発明の管路構造は、
本発明の分岐管装置が複数含まれた管路構造であって、
前記複数の分岐管装置は、互いの前記流体路が流体管を介し連通して構成されていることを特徴としている。
この特徴によれば、管路構造において、分岐管装置が流体路に沿って直列的に複数構成されており、複数存在する適宜の沈殿部に夾雑物を沈殿させ導出部を介し排出できるため、夾雑物の取りこぼしを解消できる。
【0009】
本発明の管路構造は、
前記複数の分岐管装置に、互いの前記分岐路を連通するバイパス管が介設されていることを特徴としている。
この特徴によれば、複数の分岐管装置間の流体路を閉状態とし、互いの分岐路を開状態としてバイパス管に流体をバイパスさせることで、当該分岐管装置の互いの流体路を連通していた流体管を断流状態として管交換等の施工ができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】分岐管装置が複数介設された管路構造を示す側面図である。
【図2】図1における管路構造に断流区間を設けた状態を示す側面図である。
【図3】(a)は、分岐管装置を示す正面図であり、(b)は、同じく側面図である。
【図4】(a)は、分岐管装置の断面図であり、(b)は、同じく側断面図である。
【図5】(a)は、流体路と分岐路の全開状態を示す側断面図であり、(b)は、同じく分岐管装置の平面図及び表示板のパターンAの表示を示す要部拡大図である。
【図6】(a)は、流体路4aの閉塞状態を示す側断面図であり、(b)は、同じく分岐管装置の平面図及び表示板のパターンBの表示を示す要部拡大図である。
【図7】(a)は、分岐路5の閉塞状態を示す側断面図であり、(b)は、同じく分岐管装置の平面図及び表示板のパターンCの表示を示す要部拡大図である。
【図8】(a)は、流体路4bの閉塞状態を示す側断面図であり、(b)は、同じく分岐管装置の平面図及び表示板のパターンDの表示を示す要部拡大図である。
【図9】断流区間の前後の分岐管装置にバイパス管を架設した状態を示す図である。
【図10】管路領域Gにおける分岐管装置の放流口が全て開放された状態を示す図である。
【図11】管路領域Gにおける末端の分岐管装置の放流口のみ開放された状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係る分岐管装置を実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例】
【0012】
実施例に係る分岐管装置3につき、図1から図11を参照して説明する。
【0013】
図1は、例えば上水道用として用いられ、本実施例では複数の流体管1、分岐管装置3及び消火栓9等の各部材が略網目状に配設された流体管網を構成した管路構造2を示している。この管路構造2において分岐管装置3は、流体管1を介してそれぞれ接続されており、本実施例において管路構造を流れる流体は、図示左側の上流側から図示右側の下流側に向けて流れているものとする。尚、上記した流体管網とは、上流側から下流側に向けて、単一の流路のみでなく複数の流路を構成するように接続された複数の流体管1、流体管1a等を意味する。例えば図1において、図示左側の上流側の消火栓9と、当該消火栓9よりも図示右側の下流側の消火栓9とに架けて、図示した流体管1による流路、及び流体管1aによる他の流路が構成されているものとする。
【0014】
この流体管1及び分岐管装置3は、コンクリート、鉄筋コンクリート、石綿、ダクタイル鋳鉄、その他鋳鉄、鋼、塩化ビニール、ポリエチレン若しくはポリオレフィン製等から成っており、流体管1若しくは分岐管装置3が金属製の場合、流体からの防錆を行う防錆処理として、モルタルや防錆塗料によって図示しないコーティング層が形成されている。尚、本実施例では流体管内の流体は上水であるが、流体管の内部を流れる流体は必ずしも上水に限らず、例えば工業用水や下水等の他、ガスやガスと液体との気液混合体であっても構わない。
【0015】
図4に示されるように、この分岐管装置3は、内部が流体管1に連通した流体路4及びこの流体路4に連通した分岐路5が形成された管体7と、流体路4及び分岐路5内の開閉切換を行う弁体6と、を備えている。更に、分岐路5を内部に形成した管体7の端部開口5cには、フランジ部8が形成されるとともに、このフランジ部8に接続した埋設深さ調整用のフランジ短管10を介し、端部開口5cから流体を導出若しくは閉止可能な消火栓9が設置されている。より詳しくは、消火栓9は、導出部5bの端部開口5cに連通する放流口9aと、放流口9aを開放若しくは閉止可能な操作弁9bと、放流口9aを塞ぐキャップ9cとで構成されている。つまり、分岐路5の出口となる放流口9aをキャップ9cで塞ぐとともに操作弁9bを閉止することで、放流口9aから分岐路5内に異物が進入することを防止できるようになっており、更に放流口9aからキャップ9cを取るとともに操作弁9bを開放することで、放流口9aから流体を排出できる。また、管体7とフランジ短管10とは、図示しないボルト・ナット及びシール部材で密封状に接続され、フランジ短管10と消火栓9とも上述と同様に密封状に接続されている。
【0016】
この管路構造2は、それぞれ設置された分岐管装置3において平常時では流体路4と分岐路5とが開放状態となっており、さらに消火栓9の放流口9aを塞いでいたキャップ9cを取外し、操作弁9bを開放状態とすることで外部へ流体を放出することが可能となっている。
【0017】
また、図2に示されるように、2箇所の分岐管装置3a、3bの区間を弁体6によって閉状態とすることで断流区間Eが形成される管路構造2aとすることができる。この管路構造2aにおける分岐管装置3同士は、上述した流体管網によって図示しない他の流路で連通されている。したがって、管路構造2aは、一部に断流区間Eが形成されても流体管網によって、断流区間E以外は不断流状態を維持できるため、断流区間をこの断流区間Eのみとし、当該区間Eでの流体管1の交換や補修等の作業を容易に行うことができるようになっている。
【0018】
次に、この分岐管装置3について詳しく説明する。先ず、分岐管装置3の管体7について説明すると、図4に示されるように、管体7の流体路4と分岐路5とは、連続する管壁7a及び外壁7cによって構成されており、この管壁7a及び外壁7cの下方には、管体7を立設させる脚部12が設けられている。この脚部12は、例えば工場等に配管として分岐管装置3が使用される場合、床等に自立させることができる。
【0019】
分岐管装置3の流体路4は、分岐管装置3の両側に接続される2本の流体管1の間に略直線状に連通され、断面視略円形の管壁7aによって形成されている。分岐路5は、流体路4の管軸方向の中央部の下部に形成された連通箇所11を介し下方に連通し、更に当該中央部の管壁7aの外面を一部を被覆して上方に向け略螺旋状に延設された外壁7cによって形成されている。すなわち、この分岐路5は、管壁7aの一部外面と外壁7cの内面とにより形成され、流体路4の下方から流体路4の略半周を取り巻くように螺旋曲線状に上方へ延びている。尚、この管体は、本実施例に限られず、例えば一本の流体管と連通する流体路が設けられてもよいし、分岐路が2方向以上に形成され、流体路から様々な方向に向けて形成されてもよく、多岐に亘る態様に適用することができる。
【0020】
分岐路5について特に詳しく説明すると、管体7において流体路4よりも連通箇所11を介し下方に設けられ、流体路4を流れる流体中の夾雑物を沈殿させる沈殿部5aと、沈殿部5aに連通し、分岐路5を流れる流体とともに沈殿部5aに沈殿した夾雑物を分岐路5外に導出可能とする導出部5bと、から形成されている。この沈殿部5aは、分岐路5において流体路4よりも下方に位置する部分であり、導出部5bは、分岐路5において沈殿部5aよりも上方に位置する部分である。
【0021】
これによれば、分岐路5に形成された沈殿部5aに、流体路4を流れる流体中の夾雑物をその重量により沈殿させることできるため、特別な装置を用いずに流体中の夾雑物が沈殿部5aに沈殿されるようになり、流体中から夾雑物を取り除き浄化できるばかりか、分岐路5を流れる流体の勢いを利用して、沈殿させた夾雑物を滞留させずに導出部5bを介し、フランジ短管10、消火栓9を通って流体とともに外部に排出することもできる。さらにその際には、この分岐路5は螺旋曲線上に上方へ延びているため、夾雑物が滞留し難い構造となっている。
【0022】
また、管体7と流体管1との継手部において、図示しないボルト・ナット及びシール部材によってそれぞれが密封状に接続されている。尚、管体及び流体管の継手部の形状は、受口形状や挿口形状で構成されてもよいし、端部にフランジを設けて接続されてもよく、流体管網との接続態様に合わせて適宜設定することができる。
【0023】
管体7には、流体路4と分岐路5とが連通する連通箇所11に弁体6が配置されるようになり、連通箇所11において弁体6が流体路4と分岐路5との開閉状態を切り換え可能になっている。この連通箇所11は、弁体6が回動可能に設置されるべく管体7の内周面が若干拡径されており、連通箇所11における外壁7cと対抗する管壁7aには、略水平方向に内外に貫通し外方に突設した突設部7bが設けられている。この突設部7bを挿入口として設置され、弁体6と係合する操作軸14が設けられている。つまり、操作軸14は、突設部7bを介して連通箇所11と管壁7aの外方とに渡り貫通して設置されている。
【0024】
次に、この操作軸14について説明する。操作軸14の外方側の端部14aは、比較的小径の略円筒状に延設されており、操作軸14の端部14a近傍の周面には、ウォームギア等の変向機構15が噛合して取り付けられている。更にこの変向機構15を介して操作軸14を回動させるスピンドル16が上方に延設されている。また、操作軸14の連通箇所11側の端部14bは、弁体6と係合する略矩形状を有している。
【0025】
操作軸14における端部14a側、すなわち連通箇所11から外方に露出する側は、ケース体17によって密封状に閉塞され、ケース体17の上面には、3本の表示線17a,17b,17cが形成されている。この表示線17aは、図5(a)において連通箇所11を境にした紙面左側の流体路4aとして示され、表示線17bは、分岐路5として示され,表示線17cは、紙面右側の流体路4bとして示されている。
【0026】
更に操作軸14の端部14aの延長には、流体路4及び分岐路5の開閉状態を表示するための表示板19が取り付けられている。この表示板19の略中央部に形成された貫通孔22に、操作軸14の端部14aが嵌合することで、表示板19が端部14aに軸支され、すなわち表示板19が、操作軸14を介し弁体6と同期して回動するようになっている。更に端部14aにナット18が取り付けられることによって表示板19の落下が防止されている。また、表示板19の周面には、略90度のピッチで流体路4及び分岐路5の開閉状態を示すパターンA,B,C,Dの表示が成されている。表示板19が流体路4及び分岐路5の開閉状態を表示する動作については、後述にて詳しく説明する。
【0027】
次に、弁体6について説明すると、本実施例の弁体6は、いわゆるボールバルブとして用いられる略球形状の弁体であって、2本の流体管1にそれぞれ連通される流体路4と分岐路5との三方に通ずる連通孔6aと、弁体6の外周面に形成された凹部6bと、を有し、連通箇所11内において回動することによって流体路4と分岐路5との開閉切換が行われている。
【0028】
弁体6を操作軸14によって操作する場合を説明すると、先ず、弁体6と操作軸14とは、弁体6に穿設された凹部6bに操作軸14の端部14bが嵌合される。次にスピンドル16を上下方向の軸回りに回転させると、変向機構15によって水平方向の軸回りの回転に変換されて操作軸14が回され、操作軸14の端部14bに嵌合される弁体6が連動することで回転されるようになっている。このように弁体6が回転することで弁体6の連通孔6aの向きが変わることによって流体路4及び分岐路5の開閉が行われている。すなわち、管体7に、弁体6と係合し、弁体6を管体7の外方から開閉操作する操作軸14が設けられていることによって、弁体6を直接操作せずとも、管体7の外方から容易に開閉操作をできる。尚、変向機能は、例えばかさ歯車等の回転の方向を変更する機構を用いてもよい。また、弁体は、本実施例の三方分岐のボール弁に限らない。
【0029】
前述のように、操作軸14と弁体6とがスピンドル16を回すことで連動して回動される。そのため、操作軸14の端部14aに軸支された表示板19も同様の態様によって連動して回動されるようになる。
【0030】
次に、表示板19が流体路4及び分岐路5の開閉状態を表示する動作について詳しく説明する。
【0031】
図5(a)に示されるように、流体路4は、連通箇所11を境にした左側の流体路4aと、連通箇所11を境にした右側の流体路4bと、からなる。また、弁体6は、連通孔6aが流体路4a、4bと分岐路5と連通され、流体路4a、4b及び分岐路5が全開状態時において、上方の流路を遮断する止壁部13側に位置する閉塞部6cが設けられている。このように流体路4a、4b及び分岐路5が全開状態となっている場合には、図5(b)の拡大部に示されるように、表示板19は、流体路4a、4b及び分岐路5全ての全開状態を表示するパターンAが上方を向くようになっている。
【0032】
表示板19がパターンAの状態からスピンドル16を略90度回転させると、図6(a)に示されるように、弁体6が回動されて連通孔6aが分岐路5と流体路4bと止壁部13との方向に連通するようになる。すなわち、流体路4aが弁体6の閉塞部6cによって閉塞されている状態となり、この場合には、図6(b)の拡大部に示されるように、表示板19が表示線17aと適合する線を有し、流体路4aのみが閉塞されている状態を表示するパターンBが上方を向くようになっている。
【0033】
図7(a)は、表示板19がパターンBの状態から更にスピンドル16を略90度回転させ、弁体6が回動されて連通孔6aが流体路4a、4bと止壁部13との方向に連通された様子を示している。すなわち、分岐路5が閉塞部6cによって閉塞されている状態となり、この場合には、図7(b)の拡大部に示されるように、表示板19が表示線17bと適合する線を有し、分岐路5のみが閉塞されている状態を表示するパターンCが上方を向くようになっている。
【0034】
図8(a)は、表示板19がパターンCの状態から更にスピンドル16を略90度回転させ、弁体6が回動されて連通孔6aが流体路4aと分岐路5と止壁部13との方向に連通された様子を示している。すなわち、流体路4bが閉塞部6cによって閉塞されている状態となり、この場合には、図8(b)の拡大部に示されるように、表示板19が表示線17cと適合する線を有し、流体路4bのみが閉塞されている状態を表示するパターンDが上方を向くようになっている。
【0035】
このようにスピンドル16を回転させることで操作軸14と弁体6と表示板19とが同時に連動して回動されるため、表示板19のパターンA,B,C,Dの表示と表示線17a,17b,17cとの状態を確認しながら流体路4及び分岐路5の開閉状態を適宜設定することができる。
【0036】
以上のように分岐管装置3が構成されている。次にこの分岐管装置3が複数含まれ形成される管路構造の態様について説明する。
【0037】
図9は、管路構造2における2箇所の分岐管装置3c、3dの区間を弁体6によって閉状態とすることで断流状態となる区間Fが形成される管路構造2bの態様が示されている。この管路構造2bは、流体管網によって図示しない他の流路で連通されているとともに、それぞれの分岐管装置3c、3dの延長に接続された消火栓9の放流口9aにバイパス管20が架設されている。
【0038】
したがって、管路構造2bは、断流状態となる区間Fが形成されても流体管網における他の流体管1aによって、区間F以外は不断流状態とされるだけでなく、互いの分岐路5を開状態としてバイパス管20に流体をバイパスさせることで、区間Fにおいてもバイパス管20から給水等することができる。さらに、このように管路構造2bが不断流状態とされながらも、分岐管装置3c、3dの互いの流体路4を連通していた流体管1を断流状態として管交換等の施工ができる。
【0039】
尚、特に図示しないが、上流側から下流側に向けて単一の流路にのみ流体が流れる流体単管路の場合、分岐管装置3c、3dの区間において管交換等の施工をする際に、上流側である分岐管装置3cよりも下流側である区間F及びその下流側は、完全に断流状態と成るが、バイパス管20が架設されていることにより、管路構造2bにおいて区間Fの下流側を不断流状態に形成することができる。また、区間Fにおいてもバイパス管20から給水等することができ、区間Fを不断流状態に形成することができる。
【0040】
次に、図10、図11の態様について説明する。図10、図11に示されるように、前述した流体管網若しくは流体単管路に対して、分岐管装置3が複数介設された管路構造2cを成しており、この管路構造2cにおいて分岐管装置3は、流体管1を介してそれぞれ接続されている。管路構造2cには、複数介設された分岐管装置3において、任意の複数の分岐管装置3同士の区間である管路領域Gが形成されており、この管路領域Gは、下流側の末端に位置する分岐管装置3eの弁体6によって該分岐管装置3eよりも下流側が閉状態とされ、断流状態と成っている。
【0041】
図10の態様について説明すると、上記の態様で構成された管路領域Gにおけるそれぞれの分岐管装置3の分岐路5は、いずれも開放状態となっており、更に、消火栓9の放流口9aが操作弁9bによっていずれも開放状態とされている。すなわち、分岐管装置3eを除く分岐管装置3の弁体6の連通孔6aは、いずれも三方開放状態となっており、ぞれぞれの放流口9aから流体が放出されている。
【0042】
このことにより、管路構造2cの管路領域Gにおいて、分岐管装置3が流体路4に沿って直列的に複数構成されており、複数存在する適宜の沈殿部5aに夾雑物を沈殿させ導出部5bを介し排出できるため、夾雑物の取りこぼしを解消できる。さらに排出の際には、作業者が放流口9aから放出される流体に夾雑物が混入されているかを確認することができ、夾雑物が混入している管路の範囲を割り出すことが容易になっている。
【0043】
また、図11の態様について説明すると、管路構造2cの管路領域Gにおけるそれぞれの分岐管装置3は、分岐路5がいずれも開放状態となっており、更に、分岐管装置3eにおける消火栓9の放流口9aのみが操作弁9bによって開放状態となっている。
【0044】
このことにより、管路構造2cの管路領域Gにおいて流体が放出される放流口9aが、分岐管装置3eのみ開放状態となっているため、管路領域G内の流体圧を著しく減少させることなく、夾雑物を滞留させずに分岐管装置3eへ効率よく送ることができ、分岐管装置3eの沈殿部5aに夾雑物を集約して排出させることができる。このように分岐管装置3e以外の放流口9aが閉状態とし、分岐管装置3eの沈殿部5aに夾雑物を集約して排出させることで、夾雑物の取りこぼしを解消することができる。
【0045】
以上説明したように、本発明の分岐管装置3は、流体管1に接続され、流体管1に連通する流体路4及び流体路4に連通した分岐路5が内部に形成された管体7と、管体7内に配設され流体路4及び分岐路5の開閉切換を行う弁体6と、を備えた分岐管装置3であって、分岐路5は、流体路4よりも下方に設けられ、流体路4を流れる流体中の夾雑物を沈殿させる沈殿部5aと、沈殿部5aに連通し、分岐路5を流れる流体とともに沈殿部5aに沈殿した夾雑物を分岐路5外に導出可能とする導出部5bと、から形成されている。このことによって、分岐路5に形成された沈殿部5aに、流体路4を流れる流体中の夾雑物をその重量により沈殿させることできるため、特別な装置を用いずに流体から夾雑物を取り除き浄化できるばかりか、分岐路5を流れる流体の勢いを利用して、沈殿させた夾雑物を滞留させずに導出部5bを介し外部に排出できる。
【0046】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0047】
例えば、管路構造を流れる流体の方向は、前記実施例に限らず、上流と下流とが適宜切り替わるようにされてもよい。また、分岐管に接続されるものは消火栓だけに限らず、例えば、ドレン等を用いてもよい。
【0048】
また、本発明の栓部材は、前記実施例において操作弁9bとなっていたが、栓部材はキャップやレバー等を用いてもよく、導出部の端部開口の開閉状態を操作できるものであればよい。
【符号の説明】
【0049】
1 流体管
2, 管路構造
2a,b,c 管路構造
3 分岐管装置
3a,b,c,d 分岐管装置
4,4a,4b 流体路
5 分岐路
5a 沈殿部
5b 導出部
5c 端部開口
6 弁体
7 管体
9 消火栓(栓部材)
11 連通箇所
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体管に接続され、該流体管に連通する流体路及び該流体路に連通した分岐路が内部に形成された管体と、該管体内に配設され前記流体路及び前記分岐路の開閉切換を行う弁体と、を備えた分岐管装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の分岐管装置は、T字形の分岐管(管体)の直管部(流体路)と分岐部(分岐路)との交点に弁体を設け、通常時は弁体を直管部と平行に開き、必要時に回動させて斜めに直管部を遮断して一方の流水だけが分岐部と連通し流水中の夾雑物を排出している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−161559号公報(第1頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1にあっては、弁体を操作し、直管部を遮断するまでは流水中の夾雑物は下流へと流れてしまうという問題があり、さらに、比較的重量のある夾雑物の場合、直管部などの下部に滞留してしまい排出することができないという慮がある。
【0005】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、流体を流体路に流すだけで夾雑物が取り除かれ、滞留させることなく外部に排出することができる分岐管装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明の分岐管装置は、
流体管に接続され、該流体管に連通する流体路及び該流体路に連通した分岐路が内部に形成された管体と、該管体内に配設され前記流体路及び前記分岐路の開閉切換を行う弁体と、を備えた分岐管装置であって、
前記分岐路は、前記流体路よりも下方に設けられ、該流体路を流れる流体中の夾雑物を沈殿させる沈殿部と、該沈殿部に連通し、前記分岐路を流れる流体とともに前記沈殿部に沈殿した夾雑物を前記分岐路外に導出可能とする導出部と、から形成されていることを特徴としている。
この特徴によれば、分岐路に形成された沈殿部に、流体路を流れる流体中の夾雑物を沈殿させることできるため、流体路に流すだけで流体から夾雑物を取り除き浄化できるばかりか、分岐路を流れる流体の勢いを利用して、沈殿させた夾雑物を滞留させずに導出部を介し外部に排出できる。
【0007】
本発明の分岐管装置は、
前記導出部の端部開口に、該端部開口から流体を導出若しくは閉止可能な栓部材が設けられていることを特徴としている。
この特徴によれば、分岐路の出口である導出部の端部開口に、栓部材が設けられていることで、分岐路の沈殿部を常時開放し、常に夾雑物を沈殿させることができるとともに、閉止時には、導出部の端部開口から分岐路内に異物が進入することを防止でき、更に開放時には、沈殿させた夾雑物を導出部の端部開口から流体とともに排出できる。
【0008】
本発明の管路構造は、
本発明の分岐管装置が複数含まれた管路構造であって、
前記複数の分岐管装置は、互いの前記流体路が流体管を介し連通して構成されていることを特徴としている。
この特徴によれば、管路構造において、分岐管装置が流体路に沿って直列的に複数構成されており、複数存在する適宜の沈殿部に夾雑物を沈殿させ導出部を介し排出できるため、夾雑物の取りこぼしを解消できる。
【0009】
本発明の管路構造は、
前記複数の分岐管装置に、互いの前記分岐路を連通するバイパス管が介設されていることを特徴としている。
この特徴によれば、複数の分岐管装置間の流体路を閉状態とし、互いの分岐路を開状態としてバイパス管に流体をバイパスさせることで、当該分岐管装置の互いの流体路を連通していた流体管を断流状態として管交換等の施工ができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】分岐管装置が複数介設された管路構造を示す側面図である。
【図2】図1における管路構造に断流区間を設けた状態を示す側面図である。
【図3】(a)は、分岐管装置を示す正面図であり、(b)は、同じく側面図である。
【図4】(a)は、分岐管装置の断面図であり、(b)は、同じく側断面図である。
【図5】(a)は、流体路と分岐路の全開状態を示す側断面図であり、(b)は、同じく分岐管装置の平面図及び表示板のパターンAの表示を示す要部拡大図である。
【図6】(a)は、流体路4aの閉塞状態を示す側断面図であり、(b)は、同じく分岐管装置の平面図及び表示板のパターンBの表示を示す要部拡大図である。
【図7】(a)は、分岐路5の閉塞状態を示す側断面図であり、(b)は、同じく分岐管装置の平面図及び表示板のパターンCの表示を示す要部拡大図である。
【図8】(a)は、流体路4bの閉塞状態を示す側断面図であり、(b)は、同じく分岐管装置の平面図及び表示板のパターンDの表示を示す要部拡大図である。
【図9】断流区間の前後の分岐管装置にバイパス管を架設した状態を示す図である。
【図10】管路領域Gにおける分岐管装置の放流口が全て開放された状態を示す図である。
【図11】管路領域Gにおける末端の分岐管装置の放流口のみ開放された状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係る分岐管装置を実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例】
【0012】
実施例に係る分岐管装置3につき、図1から図11を参照して説明する。
【0013】
図1は、例えば上水道用として用いられ、本実施例では複数の流体管1、分岐管装置3及び消火栓9等の各部材が略網目状に配設された流体管網を構成した管路構造2を示している。この管路構造2において分岐管装置3は、流体管1を介してそれぞれ接続されており、本実施例において管路構造を流れる流体は、図示左側の上流側から図示右側の下流側に向けて流れているものとする。尚、上記した流体管網とは、上流側から下流側に向けて、単一の流路のみでなく複数の流路を構成するように接続された複数の流体管1、流体管1a等を意味する。例えば図1において、図示左側の上流側の消火栓9と、当該消火栓9よりも図示右側の下流側の消火栓9とに架けて、図示した流体管1による流路、及び流体管1aによる他の流路が構成されているものとする。
【0014】
この流体管1及び分岐管装置3は、コンクリート、鉄筋コンクリート、石綿、ダクタイル鋳鉄、その他鋳鉄、鋼、塩化ビニール、ポリエチレン若しくはポリオレフィン製等から成っており、流体管1若しくは分岐管装置3が金属製の場合、流体からの防錆を行う防錆処理として、モルタルや防錆塗料によって図示しないコーティング層が形成されている。尚、本実施例では流体管内の流体は上水であるが、流体管の内部を流れる流体は必ずしも上水に限らず、例えば工業用水や下水等の他、ガスやガスと液体との気液混合体であっても構わない。
【0015】
図4に示されるように、この分岐管装置3は、内部が流体管1に連通した流体路4及びこの流体路4に連通した分岐路5が形成された管体7と、流体路4及び分岐路5内の開閉切換を行う弁体6と、を備えている。更に、分岐路5を内部に形成した管体7の端部開口5cには、フランジ部8が形成されるとともに、このフランジ部8に接続した埋設深さ調整用のフランジ短管10を介し、端部開口5cから流体を導出若しくは閉止可能な消火栓9が設置されている。より詳しくは、消火栓9は、導出部5bの端部開口5cに連通する放流口9aと、放流口9aを開放若しくは閉止可能な操作弁9bと、放流口9aを塞ぐキャップ9cとで構成されている。つまり、分岐路5の出口となる放流口9aをキャップ9cで塞ぐとともに操作弁9bを閉止することで、放流口9aから分岐路5内に異物が進入することを防止できるようになっており、更に放流口9aからキャップ9cを取るとともに操作弁9bを開放することで、放流口9aから流体を排出できる。また、管体7とフランジ短管10とは、図示しないボルト・ナット及びシール部材で密封状に接続され、フランジ短管10と消火栓9とも上述と同様に密封状に接続されている。
【0016】
この管路構造2は、それぞれ設置された分岐管装置3において平常時では流体路4と分岐路5とが開放状態となっており、さらに消火栓9の放流口9aを塞いでいたキャップ9cを取外し、操作弁9bを開放状態とすることで外部へ流体を放出することが可能となっている。
【0017】
また、図2に示されるように、2箇所の分岐管装置3a、3bの区間を弁体6によって閉状態とすることで断流区間Eが形成される管路構造2aとすることができる。この管路構造2aにおける分岐管装置3同士は、上述した流体管網によって図示しない他の流路で連通されている。したがって、管路構造2aは、一部に断流区間Eが形成されても流体管網によって、断流区間E以外は不断流状態を維持できるため、断流区間をこの断流区間Eのみとし、当該区間Eでの流体管1の交換や補修等の作業を容易に行うことができるようになっている。
【0018】
次に、この分岐管装置3について詳しく説明する。先ず、分岐管装置3の管体7について説明すると、図4に示されるように、管体7の流体路4と分岐路5とは、連続する管壁7a及び外壁7cによって構成されており、この管壁7a及び外壁7cの下方には、管体7を立設させる脚部12が設けられている。この脚部12は、例えば工場等に配管として分岐管装置3が使用される場合、床等に自立させることができる。
【0019】
分岐管装置3の流体路4は、分岐管装置3の両側に接続される2本の流体管1の間に略直線状に連通され、断面視略円形の管壁7aによって形成されている。分岐路5は、流体路4の管軸方向の中央部の下部に形成された連通箇所11を介し下方に連通し、更に当該中央部の管壁7aの外面を一部を被覆して上方に向け略螺旋状に延設された外壁7cによって形成されている。すなわち、この分岐路5は、管壁7aの一部外面と外壁7cの内面とにより形成され、流体路4の下方から流体路4の略半周を取り巻くように螺旋曲線状に上方へ延びている。尚、この管体は、本実施例に限られず、例えば一本の流体管と連通する流体路が設けられてもよいし、分岐路が2方向以上に形成され、流体路から様々な方向に向けて形成されてもよく、多岐に亘る態様に適用することができる。
【0020】
分岐路5について特に詳しく説明すると、管体7において流体路4よりも連通箇所11を介し下方に設けられ、流体路4を流れる流体中の夾雑物を沈殿させる沈殿部5aと、沈殿部5aに連通し、分岐路5を流れる流体とともに沈殿部5aに沈殿した夾雑物を分岐路5外に導出可能とする導出部5bと、から形成されている。この沈殿部5aは、分岐路5において流体路4よりも下方に位置する部分であり、導出部5bは、分岐路5において沈殿部5aよりも上方に位置する部分である。
【0021】
これによれば、分岐路5に形成された沈殿部5aに、流体路4を流れる流体中の夾雑物をその重量により沈殿させることできるため、特別な装置を用いずに流体中の夾雑物が沈殿部5aに沈殿されるようになり、流体中から夾雑物を取り除き浄化できるばかりか、分岐路5を流れる流体の勢いを利用して、沈殿させた夾雑物を滞留させずに導出部5bを介し、フランジ短管10、消火栓9を通って流体とともに外部に排出することもできる。さらにその際には、この分岐路5は螺旋曲線上に上方へ延びているため、夾雑物が滞留し難い構造となっている。
【0022】
また、管体7と流体管1との継手部において、図示しないボルト・ナット及びシール部材によってそれぞれが密封状に接続されている。尚、管体及び流体管の継手部の形状は、受口形状や挿口形状で構成されてもよいし、端部にフランジを設けて接続されてもよく、流体管網との接続態様に合わせて適宜設定することができる。
【0023】
管体7には、流体路4と分岐路5とが連通する連通箇所11に弁体6が配置されるようになり、連通箇所11において弁体6が流体路4と分岐路5との開閉状態を切り換え可能になっている。この連通箇所11は、弁体6が回動可能に設置されるべく管体7の内周面が若干拡径されており、連通箇所11における外壁7cと対抗する管壁7aには、略水平方向に内外に貫通し外方に突設した突設部7bが設けられている。この突設部7bを挿入口として設置され、弁体6と係合する操作軸14が設けられている。つまり、操作軸14は、突設部7bを介して連通箇所11と管壁7aの外方とに渡り貫通して設置されている。
【0024】
次に、この操作軸14について説明する。操作軸14の外方側の端部14aは、比較的小径の略円筒状に延設されており、操作軸14の端部14a近傍の周面には、ウォームギア等の変向機構15が噛合して取り付けられている。更にこの変向機構15を介して操作軸14を回動させるスピンドル16が上方に延設されている。また、操作軸14の連通箇所11側の端部14bは、弁体6と係合する略矩形状を有している。
【0025】
操作軸14における端部14a側、すなわち連通箇所11から外方に露出する側は、ケース体17によって密封状に閉塞され、ケース体17の上面には、3本の表示線17a,17b,17cが形成されている。この表示線17aは、図5(a)において連通箇所11を境にした紙面左側の流体路4aとして示され、表示線17bは、分岐路5として示され,表示線17cは、紙面右側の流体路4bとして示されている。
【0026】
更に操作軸14の端部14aの延長には、流体路4及び分岐路5の開閉状態を表示するための表示板19が取り付けられている。この表示板19の略中央部に形成された貫通孔22に、操作軸14の端部14aが嵌合することで、表示板19が端部14aに軸支され、すなわち表示板19が、操作軸14を介し弁体6と同期して回動するようになっている。更に端部14aにナット18が取り付けられることによって表示板19の落下が防止されている。また、表示板19の周面には、略90度のピッチで流体路4及び分岐路5の開閉状態を示すパターンA,B,C,Dの表示が成されている。表示板19が流体路4及び分岐路5の開閉状態を表示する動作については、後述にて詳しく説明する。
【0027】
次に、弁体6について説明すると、本実施例の弁体6は、いわゆるボールバルブとして用いられる略球形状の弁体であって、2本の流体管1にそれぞれ連通される流体路4と分岐路5との三方に通ずる連通孔6aと、弁体6の外周面に形成された凹部6bと、を有し、連通箇所11内において回動することによって流体路4と分岐路5との開閉切換が行われている。
【0028】
弁体6を操作軸14によって操作する場合を説明すると、先ず、弁体6と操作軸14とは、弁体6に穿設された凹部6bに操作軸14の端部14bが嵌合される。次にスピンドル16を上下方向の軸回りに回転させると、変向機構15によって水平方向の軸回りの回転に変換されて操作軸14が回され、操作軸14の端部14bに嵌合される弁体6が連動することで回転されるようになっている。このように弁体6が回転することで弁体6の連通孔6aの向きが変わることによって流体路4及び分岐路5の開閉が行われている。すなわち、管体7に、弁体6と係合し、弁体6を管体7の外方から開閉操作する操作軸14が設けられていることによって、弁体6を直接操作せずとも、管体7の外方から容易に開閉操作をできる。尚、変向機能は、例えばかさ歯車等の回転の方向を変更する機構を用いてもよい。また、弁体は、本実施例の三方分岐のボール弁に限らない。
【0029】
前述のように、操作軸14と弁体6とがスピンドル16を回すことで連動して回動される。そのため、操作軸14の端部14aに軸支された表示板19も同様の態様によって連動して回動されるようになる。
【0030】
次に、表示板19が流体路4及び分岐路5の開閉状態を表示する動作について詳しく説明する。
【0031】
図5(a)に示されるように、流体路4は、連通箇所11を境にした左側の流体路4aと、連通箇所11を境にした右側の流体路4bと、からなる。また、弁体6は、連通孔6aが流体路4a、4bと分岐路5と連通され、流体路4a、4b及び分岐路5が全開状態時において、上方の流路を遮断する止壁部13側に位置する閉塞部6cが設けられている。このように流体路4a、4b及び分岐路5が全開状態となっている場合には、図5(b)の拡大部に示されるように、表示板19は、流体路4a、4b及び分岐路5全ての全開状態を表示するパターンAが上方を向くようになっている。
【0032】
表示板19がパターンAの状態からスピンドル16を略90度回転させると、図6(a)に示されるように、弁体6が回動されて連通孔6aが分岐路5と流体路4bと止壁部13との方向に連通するようになる。すなわち、流体路4aが弁体6の閉塞部6cによって閉塞されている状態となり、この場合には、図6(b)の拡大部に示されるように、表示板19が表示線17aと適合する線を有し、流体路4aのみが閉塞されている状態を表示するパターンBが上方を向くようになっている。
【0033】
図7(a)は、表示板19がパターンBの状態から更にスピンドル16を略90度回転させ、弁体6が回動されて連通孔6aが流体路4a、4bと止壁部13との方向に連通された様子を示している。すなわち、分岐路5が閉塞部6cによって閉塞されている状態となり、この場合には、図7(b)の拡大部に示されるように、表示板19が表示線17bと適合する線を有し、分岐路5のみが閉塞されている状態を表示するパターンCが上方を向くようになっている。
【0034】
図8(a)は、表示板19がパターンCの状態から更にスピンドル16を略90度回転させ、弁体6が回動されて連通孔6aが流体路4aと分岐路5と止壁部13との方向に連通された様子を示している。すなわち、流体路4bが閉塞部6cによって閉塞されている状態となり、この場合には、図8(b)の拡大部に示されるように、表示板19が表示線17cと適合する線を有し、流体路4bのみが閉塞されている状態を表示するパターンDが上方を向くようになっている。
【0035】
このようにスピンドル16を回転させることで操作軸14と弁体6と表示板19とが同時に連動して回動されるため、表示板19のパターンA,B,C,Dの表示と表示線17a,17b,17cとの状態を確認しながら流体路4及び分岐路5の開閉状態を適宜設定することができる。
【0036】
以上のように分岐管装置3が構成されている。次にこの分岐管装置3が複数含まれ形成される管路構造の態様について説明する。
【0037】
図9は、管路構造2における2箇所の分岐管装置3c、3dの区間を弁体6によって閉状態とすることで断流状態となる区間Fが形成される管路構造2bの態様が示されている。この管路構造2bは、流体管網によって図示しない他の流路で連通されているとともに、それぞれの分岐管装置3c、3dの延長に接続された消火栓9の放流口9aにバイパス管20が架設されている。
【0038】
したがって、管路構造2bは、断流状態となる区間Fが形成されても流体管網における他の流体管1aによって、区間F以外は不断流状態とされるだけでなく、互いの分岐路5を開状態としてバイパス管20に流体をバイパスさせることで、区間Fにおいてもバイパス管20から給水等することができる。さらに、このように管路構造2bが不断流状態とされながらも、分岐管装置3c、3dの互いの流体路4を連通していた流体管1を断流状態として管交換等の施工ができる。
【0039】
尚、特に図示しないが、上流側から下流側に向けて単一の流路にのみ流体が流れる流体単管路の場合、分岐管装置3c、3dの区間において管交換等の施工をする際に、上流側である分岐管装置3cよりも下流側である区間F及びその下流側は、完全に断流状態と成るが、バイパス管20が架設されていることにより、管路構造2bにおいて区間Fの下流側を不断流状態に形成することができる。また、区間Fにおいてもバイパス管20から給水等することができ、区間Fを不断流状態に形成することができる。
【0040】
次に、図10、図11の態様について説明する。図10、図11に示されるように、前述した流体管網若しくは流体単管路に対して、分岐管装置3が複数介設された管路構造2cを成しており、この管路構造2cにおいて分岐管装置3は、流体管1を介してそれぞれ接続されている。管路構造2cには、複数介設された分岐管装置3において、任意の複数の分岐管装置3同士の区間である管路領域Gが形成されており、この管路領域Gは、下流側の末端に位置する分岐管装置3eの弁体6によって該分岐管装置3eよりも下流側が閉状態とされ、断流状態と成っている。
【0041】
図10の態様について説明すると、上記の態様で構成された管路領域Gにおけるそれぞれの分岐管装置3の分岐路5は、いずれも開放状態となっており、更に、消火栓9の放流口9aが操作弁9bによっていずれも開放状態とされている。すなわち、分岐管装置3eを除く分岐管装置3の弁体6の連通孔6aは、いずれも三方開放状態となっており、ぞれぞれの放流口9aから流体が放出されている。
【0042】
このことにより、管路構造2cの管路領域Gにおいて、分岐管装置3が流体路4に沿って直列的に複数構成されており、複数存在する適宜の沈殿部5aに夾雑物を沈殿させ導出部5bを介し排出できるため、夾雑物の取りこぼしを解消できる。さらに排出の際には、作業者が放流口9aから放出される流体に夾雑物が混入されているかを確認することができ、夾雑物が混入している管路の範囲を割り出すことが容易になっている。
【0043】
また、図11の態様について説明すると、管路構造2cの管路領域Gにおけるそれぞれの分岐管装置3は、分岐路5がいずれも開放状態となっており、更に、分岐管装置3eにおける消火栓9の放流口9aのみが操作弁9bによって開放状態となっている。
【0044】
このことにより、管路構造2cの管路領域Gにおいて流体が放出される放流口9aが、分岐管装置3eのみ開放状態となっているため、管路領域G内の流体圧を著しく減少させることなく、夾雑物を滞留させずに分岐管装置3eへ効率よく送ることができ、分岐管装置3eの沈殿部5aに夾雑物を集約して排出させることができる。このように分岐管装置3e以外の放流口9aが閉状態とし、分岐管装置3eの沈殿部5aに夾雑物を集約して排出させることで、夾雑物の取りこぼしを解消することができる。
【0045】
以上説明したように、本発明の分岐管装置3は、流体管1に接続され、流体管1に連通する流体路4及び流体路4に連通した分岐路5が内部に形成された管体7と、管体7内に配設され流体路4及び分岐路5の開閉切換を行う弁体6と、を備えた分岐管装置3であって、分岐路5は、流体路4よりも下方に設けられ、流体路4を流れる流体中の夾雑物を沈殿させる沈殿部5aと、沈殿部5aに連通し、分岐路5を流れる流体とともに沈殿部5aに沈殿した夾雑物を分岐路5外に導出可能とする導出部5bと、から形成されている。このことによって、分岐路5に形成された沈殿部5aに、流体路4を流れる流体中の夾雑物をその重量により沈殿させることできるため、特別な装置を用いずに流体から夾雑物を取り除き浄化できるばかりか、分岐路5を流れる流体の勢いを利用して、沈殿させた夾雑物を滞留させずに導出部5bを介し外部に排出できる。
【0046】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0047】
例えば、管路構造を流れる流体の方向は、前記実施例に限らず、上流と下流とが適宜切り替わるようにされてもよい。また、分岐管に接続されるものは消火栓だけに限らず、例えば、ドレン等を用いてもよい。
【0048】
また、本発明の栓部材は、前記実施例において操作弁9bとなっていたが、栓部材はキャップやレバー等を用いてもよく、導出部の端部開口の開閉状態を操作できるものであればよい。
【符号の説明】
【0049】
1 流体管
2, 管路構造
2a,b,c 管路構造
3 分岐管装置
3a,b,c,d 分岐管装置
4,4a,4b 流体路
5 分岐路
5a 沈殿部
5b 導出部
5c 端部開口
6 弁体
7 管体
9 消火栓(栓部材)
11 連通箇所
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体管に接続され、該流体管に連通する流体路及び該流体路に連通した分岐路が内部に形成された管体と、該管体内に配設され前記流体路及び前記分岐路の開閉切換を行う弁体と、を備えた分岐管装置であって、
前記分岐路は、前記流体路よりも下方に設けられ、該流体路を流れる流体中の夾雑物を沈殿させる沈殿部と、該沈殿部に連通し、前記分岐路を流れる流体とともに前記沈殿部に沈殿した夾雑物を前記分岐路外に導出可能とする導出部と、から形成されていることを特徴とする分岐管装置。
【請求項2】
前記導出部の端部開口に、該端部開口から流体を導出若しくは閉止可能な栓部材が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の分岐管装置。
【請求項3】
請求項1及び/または2に記載の分岐管装置が複数含まれた管路構造であって、
前記複数の分岐管装置は、互いの前記流体路が流体管を介し連通して構成されていることを特徴とする管路構造。
【請求項4】
前記複数の分岐管装置に、互いの前記分岐路を連通するバイパス管が介設されていることを特徴とする請求項3に記載の管路構造。
【請求項1】
流体管に接続され、該流体管に連通する流体路及び該流体路に連通した分岐路が内部に形成された管体と、該管体内に配設され前記流体路及び前記分岐路の開閉切換を行う弁体と、を備えた分岐管装置であって、
前記分岐路は、前記流体路よりも下方に設けられ、該流体路を流れる流体中の夾雑物を沈殿させる沈殿部と、該沈殿部に連通し、前記分岐路を流れる流体とともに前記沈殿部に沈殿した夾雑物を前記分岐路外に導出可能とする導出部と、から形成されていることを特徴とする分岐管装置。
【請求項2】
前記導出部の端部開口に、該端部開口から流体を導出若しくは閉止可能な栓部材が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の分岐管装置。
【請求項3】
請求項1及び/または2に記載の分岐管装置が複数含まれた管路構造であって、
前記複数の分岐管装置は、互いの前記流体路が流体管を介し連通して構成されていることを特徴とする管路構造。
【請求項4】
前記複数の分岐管装置に、互いの前記分岐路を連通するバイパス管が介設されていることを特徴とする請求項3に記載の管路構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−96136(P2013−96136A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−239703(P2011−239703)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000105556)コスモ工機株式会社 (270)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000105556)コスモ工機株式会社 (270)
[ Back to top ]