説明

分岐装置

【課題】安価で、かつ、短い穿孔ストロークで、土被りが浅い場合にも工事を行い得る不断流穿孔用の分岐装置を提供する。
【解決手段】分岐孔28を開閉する横断面円弧状の閉塞部500を有する弁体5と、第1分割ケース21における内周面に形成され弁体5が閉弁時に接触する弁座56と、弁体5を回転させるための回転機構6とを備え、弁座56は第1分割ケース21における分岐管部28の近傍の内周面に設けられ、閉塞部500が弁座56に接触する接触部に囲まれていない領域に従動ギヤ51Cが設けられ、弁体5の接触部が弁座5に接触した閉弁位置において従動ギヤ51Cが閉塞部500の第1の端部から第2分割ケース22の周方向Rの中心まで延び、駆動ギヤ手段63が従動ギヤ51Cに第2分割ケース22の周方向Rの中心において歯合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水道やガスなどの既設管から分岐を取り出すのに適した不断流穿孔用の分岐装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ホールソーを備えた穿孔機を用いて不断水下で既設管の一部を穿孔する工法は周知である(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−321109
【0003】
この種の穿孔工事の基本的な手順等について簡単に説明する。
まず、図9Aに示すように、既設管1の一部を一対の分割ケース21,22からなる密閉ケース2で覆う。前記第1分割ケース21には仕切弁の弁体100が設けられている。その後、前記第1分割ケース21に穿孔機3を取り付ける。
この状態で、図9Bのように、穿孔機3を運転し、主軸を回しながら先端のホールソー4で既設管1に円形の開孔11をあける。その後、図9Cのようにホールソー4を後退させた後、弁体100を閉弁する。こうして穿孔工事が終了した後に、穿孔機3を取り外し、第1分割ケース21に所定の分岐配管を連ね弁体100を開弁することで分岐工事が完了する。
【発明の開示】
【0004】
しかし、かかる従来の装置においては、上下動する弁体100を収容するための大きな弁箱が別途必要となる。そのため、コストアップを招く。
また、弁体100が既設管1から離れたところで上下に移動するため、ホールソー4を進退させるストロークが長くなる。そのため、穿孔機3の大型化を招く。
さらに、弁体100が上下動するため、弁の操作キャップ101の高さが高くなるので、必要となる土被りが深くなる。
【0005】
下記の特許文献2および特許文献3において、分岐孔を持つサドルと既設管との間に円弧状の弁体が収容された分岐装置が開示されている。この弁体は1つの分割ケース内を周方向に移動して前記分岐孔を閉塞する。
【特許文献2】特開平6−74387号
【特許文献3】特開2006−207747
【0006】
しかし、これらの先行技術においては、分岐の口径(分岐径)が大きくなった場合については何ら開示されていない。
【0007】
したがって、本発明の主目的は前記従来の問題に鑑みてなされたもので、安価で、かつ、短い穿孔ストロークで、土被りが浅い場合にも工事を行い得る不断流穿孔用の分岐装置を提供することである。本発明の更なる目的は既設管の呼径が小さく、かつ、同口径または同口径に近い分岐径の場合にも適用可能な分岐装置を提供することである。
【0008】
前記目的を達成するために、本発明の分岐装置は、ホールソーを備えた穿孔機で、既設管の管壁の一部を穿孔して前記管壁に開孔を形成し、当該既設管に分岐配管を接続するのに適した不断流穿孔用の分岐装置であって、既設管の周方向に2つに分割され既設管の一部を囲繞する第1および第2分割ケースを有する密閉ケースと、前記第1分割ケースには既設管の径方向に突出して分岐する分岐管部が一体に形成され、前記密閉ケースの内周面と既設管の外周面との間において、既設管の周方向に沿って回転することにより、前記分岐管部の分岐孔を開閉する横断面円弧状の閉塞部を有する弁体と、前記第1分割ケースにおける内周面に設けられ前記弁体が閉弁時に接触する弁座と、前記弁体を回転させるための回転機構とを備え、前記回転機構は、前記密閉ケースの外において回転操作される操作部と、前記操作部の回転により回転する駆動ギヤ手段と、前記弁体に形成され前記駆動ギヤ手段の回転で前記弁体を前記既設管の前記周方向に回転させる従動ギヤとを備え、前記第1分割ケースと前記既設管との間には、前記弁体を収容し、かつ、移動可能とする第1空間が設けられ、前記第2分割ケースと前記既設管との間には、前記弁体を収容し、かつ、移動可能とする第2空間が設けられ、前記第1空間と前記第2空間とは互いに周方向に連なっており、ここにおいて、前記弁座は前記第1分割ケースにおける前記分岐管部の近傍の前記内周面に設けられ、前記閉塞部が前記弁座に接触する接触部に囲まれていない外側の領域に前記従動ギヤが設けられ、前記弁体の接触部が前記弁座に接触した閉弁位置において前記従動ギヤが前記外側の領域における前記閉塞部の第1の端部から前記第2分割ケースの周方向の中心まで延び、前記駆動ギヤ手段が前記従動ギヤに前記第2分割ケースの周方向の概ね中心において歯合する。
【0009】
本発明によれば、弁体の横断面円弧状の閉塞部が密閉ケースと既設管との隙間を、既設管に沿って回転するから、弁箱や弁蓋などの弁体を収容する部分を別途設ける必要がない。そのため、装置が安価で小型になる。
また、円弧状の弁体は平板状の弁体に比べ曲げ強度も大きくなる。そのため、弁体を薄くすることが可能となる。
更に、前記弁体を収容する部分を別途設ける必要がない。そのため、穿孔のストロークが短くなる。
また、弁体が上下動するのではなく、既設管の外周面に沿って回転する。そのため、弁の高さが低くなる。その結果、浅い土被りでも施工が可能となる。
【0010】
また、第2分割ケースの周方向の中心において、駆動ギヤ手段が従動ギヤに歯合し、かつ、弁座が分岐管部の近傍に設けられている。そのため、従動ギヤが弁座と干渉しにくい。したがって、既設管の呼径が小さく(たとえば、φ50〜φ200)、かつ、分岐孔の径が既設管の径に近い場合(または、同口径の場合)でも、従動ギヤが弁座と交錯しない状態となり、本装置による不断水穿孔が可能となる。
【0011】
本発明において、前記閉塞部および前記従動ギヤを含む前記弁体が前記既設管の管軸のまわりに210°〜270°の範囲にわたってC字状に設けられ、前記従動ギヤが前記分岐管部の管軸に交差する位置に配置されているのが好ましい。
本態様によれば、従動ギヤが分岐管部の管軸に交差する位置に配置されており、そのため、従動ギヤを介して閉塞部に伝わる駆動力が弁体の左右の中心に加わるので、従動ギヤを2本設ける必要がない。したがって、駆動ギヤ手段の構造が簡易になる。
また、弁体が210°〜270°の範囲にわたって設けられており、完全な円環ではない。そのため、従動ギヤと閉塞部とが一体の弁体を既設管の外周に装着することができる。
【0012】
本発明においては、前記C字状の弁体における周方向に欠けた欠け部の長さが前記既設管の外径よりも小さい場合に、前記弁体を弾性変形させて前記欠け部を拡げることで前記弁体が前記既設管に装着されることが可能である。
本態様によれば、欠け部を拡げて弁体を前記既設管の外周に装着する。そのため、欠け部が小さく、弁体の周方向の長さが可及的に大きいものとなる。したがって、既設管の呼径が小さく、かつ、同口径の場合でも従動ギヤが弁座と交錯しない。
【0013】
本発明において、前記弁体はステンレススチールの板材で形成され、前記従動ギヤは前記板材に形成された互いに平行な複数の貫通孔を包含するのが好ましい。
本態様によれば、弁体が薄く、そのため、本装置が安価でコンパクトになる。
【0014】
本発明において、前記従動ギヤに係合するウオームで前記駆動ギヤ手段が構成されているのが好ましい。
本態様によれば、従動ギヤがウオームホイールの役割を果たす。そのため、弁体が不用意に回転するのを防止できる。
【0015】
本発明において、前記既設管の管壁に向って開口し前記ウオームの一部が前記従動ギヤに歯合するのを可能とする第1開口部と、上方に向って開口する第2開口部と、前記ウオームの一部を収容する凹所と、前記ウオームの下端を回転自在に支持する支持部とを備えたギヤケース部が前記第2分割ケースに一体に設けられ、前記ギヤケース部の第2開口部を閉塞するカバーが前記ギヤケース部に締結され、前記カバーを上下に貫通する貫通部から前記操作部が上方に突出しており、このように構成されていることで、前記第2開口部から前記ウオームを挿入して組み立てることを可能としてもよい。
本態様によれば、ギヤケースの構造が簡易になる。
また、前記カバーを前記ギヤケース部から取り外すことで、前記駆動ギヤ手段を前記ギヤケース部から前記第2開口部を通して取り出すことが可能となる。そのため、本装置の組み立てが容易になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明は、添付の書類を参考にした以下の好的な実施例の説明からより明瞭に理解されるであろう。しかしながら、実施例および図面は単なる図示および説明のためのものであり、本発明の範囲を定めるために利用されるべきものではない。本発明の範囲は請求の範囲のみによって定まる。添付図面において、複数の図面における同一の部品番号は、同一または相当部分を示す。
【0017】
実施例:
以下、本発明の一実施例を図面にしたがって説明する。
まず、本分岐装置の全体構成について説明する。
分岐装置2:
図1に示す分岐装置2は、図5Aに示すように、ホールソー4を備えた穿孔機3で、既設管1の管内に流体(たとえば、水等)が流れている状態で、既設管1の管壁12の一部を穿孔し、当該既設管1から分岐を取り出す不断流穿孔に用いるものである。
【0018】
図1に示すように、分岐装置2は、既設管1を囲繞する密閉ケース20を有している。前記密閉ケース20は、既設管1の周方向Rに分割された第1および第2分割ケース21,22と、第1分割ケース21に一体に形成され、既設管1の管径方向Cに突出して分岐する分岐管部27とを備えている。
【0019】
分割ケース21,22:
前記第1分割ケース21と第2分割ケース22とは、分岐管部27の軸線27Lに略直交する仮想平面Hに沿って分割されている。分割ケース21,22は、既設管1に対して既設管1の管径方向Cから外嵌装着され、結合部25が組立ボルト25aにより締結されて組み立てられる。
【0020】
各分割ケース21,22は、既設管1の外周面13に概ね沿って湾曲した内周面29をそれぞれ備えている。図1および図2Bに示すように、各分割ケース21,22の結合部25と内周面29における前記既設管1の管軸方向Lの両端部とには、それぞれ、溝状のパッキン装着部24が形成されている。前記パッキン装着部24には、ゴムパッキン26が装着され、既設管1と分岐装置2との間や、第1分割ケース21と第2分割ケース22との間がシールされる。
【0021】
分岐管部27:
図5Aに示すように、前記分岐管部27のたとえばフランジのような継手部81には、穿孔機3が取り付けられる。ホールソー4が分岐管部27の分岐孔28を通って、既設管1の管径方向Cに向って送り込まれることで、図6Aに示すように、既設管1の管壁12が切削されて、図6Bに示すように、該既設管1に開孔11が穿孔される。なお、図5Bに示すように、ホールソー4の回転中心には、該ホールソー4の位置決めを行うためのセンタードリル41が既設管1に向って突出して設けられている。
【0022】
弁体5:
図1に示すように、前記既設管1と第1および第2分割ケース21、22との間には、それぞれ、第1および第2空間S1、S2が設けられている。前記第1空間S1と前記第2空間S2とは周方向Rに互いに連通しており、横断面円弧状の弁体5を2つの分割ケース21、22にわたって移動できるように収容している。前記弁体5は、分割ケース21,22の内周面29と既設管1の外周面13に沿って、かつ、既設管1の周方向Rに回転することにより、前記分岐管部27の分岐孔28を開閉する。
【0023】
すなわち、図5Aの開弁時および図6Aの穿孔時において、弁体5は前記第2空間S2に半分以上の部分が収容されており、回転機構6により回転されて、図7Aおよび図7Bの閉弁時に半分以上の部分が前記第1空間S1に収容されて分岐孔28を閉塞する。
図1に示すように第1分割ケース21には、前記円弧状の弁体5の回転を案内する案内部55が一体に設けられている。
【0024】
前記弁体5を既設管1の周方向Rに回転させることにより、該弁体5を図5Aに示す開弁位置と、図7Aに示す閉弁位置に回転移動させることが可能である。
【0025】
図1に示す分岐管部27を有する第1分割ケース21には、前記分岐管部27の近傍に沿って略円周状にシール用のゴムリング(弁座の一例)56がゴムリング装着溝57に装着されている。
弁体5が、図7Aに示す閉弁位置に回転移動されると、図3Bに示す弁体5の閉塞部500の第1接触部5fが、図2Bに示すゴムリング56の第2接触部56fに密着し、図7Aに示すように、前記分岐孔28が閉塞され、第1分割ケース21および弁体5によって既設管1の開孔11の周囲が密閉される。
【0026】
つぎに、本発明の要部について更に詳しく説明する。
回転機構6:
図1に示す前記第2分割ケース22には、弁体5を回転させるための回転機構6が設けられている。前記回転機構6は、第2分割ケース22(密閉ケース20)の外において回転操作される操作部67と、前記操作部67の回転により回転する駆動ギヤ手段63とを備えている。
【0027】
前記駆動ギヤ手段63は、前記操作部67と一体に回転するウオーム61からなる。
一方、図3Bに示すように、弁体5には、ウオームホイールを構成する従動ギヤ51Cが設けられている。図1に示すように、後述する第1開口部70aから第2空間S2に向かってウオーム61が突出している。従動ギヤ51Cは前記ウオーム61に歯合し、該ウオーム61の回転で前記周方向Rに回転することにより弁体5を回転させる。
【0028】
すなわち、作業者が操作部67を回転させると、ウオーム61および従動ギヤ51Cが回転されることで、弁体5が回転される。
したがって、操作部67、ウオーム61(駆動ギヤ手段63)および従動ギヤ51Cは弁体5を回転させるための回転機構6を構成している。
【0029】
ギヤケース部70:
図1および図2Aに示すように、第2分割ケース22の側部には、ギヤケース部70が該第2分割ケース22に一体に形成されている。図1に示す前記ギヤケース部70は、既設管1の管壁12に向って開口し前記ウオーム61の一部が前記従動ギヤ51Cに歯合するのを可能とする第1開口部70aと、上方に向って開口する第2開口部70bと、ウオーム61の一部を収容する凹所73と、ウオーム61の下端61dを回転自在に支持する支持部75dとを備えている。
そのため、前記第2開口部70bから前記駆動ギヤ手段63を挿入して組み立てることが可能である。
【0030】
前記第1および第2分割ケース21,22はそれぞれ前記既設管1に沿った曲面部30を有している。図2Aに示すように、前記ギヤケース部70は、第2分割ケース22の曲面部30から上方に向って立ち上がる側壁71と、前記側壁71の上端に一体に形成され前記カバー66が締結されるフランジ72とを備えている。
【0031】
したがって、図1に示すカバー66はフランジ72を介して図示しないボルトによりギヤケース部70に締結され、該ギヤケース部70の第2開口部70bを閉塞する。なお、カバー66とフランジ72との間にはゴムパッキン(図示せず)が介挿される。
【0032】
駆動ギヤ手段63の取り付け;
前記操作部67はウオーム61の上方に一体に形成されている。
前記カバー66には、該カバー66を上下に貫通する貫通部66bが形成されている。前記ウオーム61は、カバー66の貫通部66bに回転自在に取り付けられる。ギヤケース部70にウオーム61を挿入した後、該ギヤケース部70にカバー66を取り付けると、ウオーム61の上部に形成された操作部67が前記貫通部66bから上方Z1に突出する。
【0033】
弁体5およびゴムリング56:
図1に示すように、前記弁体5は、横断面円弧状に形成されており、既設管1の外周面13に沿って湾曲した凹面53と、図7Aおよび図7Bに示す閉弁位置において前記分岐孔28に対向する凸面52とを備えている。
図5Aおよび図7Aに示すように、前記閉塞部500は、密閉ケース20の内周面29と既設管1の外周面13との間において、既設管1の周方向Rに沿って回転することにより、前記分岐管部27の分岐孔28を開閉するものである。
【0034】
図3A〜図3Cは、弁体5の理解を容易にするために、該弁体5を平板状に展開した状態で示したものである。
図3Bに示すように、前記弁体5はステンレススチールの板材で形成されている。弁体5は閉塞部500とギヤ部503とが一体に形成されている。
【0035】
閉塞部500;
前記閉塞部500は、従動ギヤ51Cと第1接触部5fとの間の第1の端部501から弁体5の先端部に対応する第2の端部502にかけて形成されている。
前記閉弁位置(図7Aおよび図7B)において、前記ゴムリング56(図2B)が接触する第1接触部5f(網点で示した部分)はループ状に形成され、前記ループ状の第1接触部5f(図3Bの網点で示した部分)に囲まれていない外側の領域Aoに前記従動ギヤ51Cが形成されている。
前記閉弁位置において、図3Bの弁体5の閉塞部500の第1接触部5fに、図2Bのゴムリング(弁座)56の第2接触部56fが接触する。
【0036】
図1に示すように、前記閉塞部500および従動ギヤ51Cを含む弁体5は、既設管1の管軸L1のまわりに210°〜270°の範囲にわたってC字状に形成されている。
図4に示すように、前記C字状の弁体5における周方向Rに欠けた欠け部50Lの長さDは、既設管1の外径φよりも小さい。
そのため、弁体5を既設管1に装着する際には、たとえば、専用の治具を用いて弁体5を矢印の方向に引っ張って弾性変形させて、前記欠け部50Lを拡げる。
【0037】
ギヤ部503;
図3Bに示すように、前記ギヤ部503には従動ギヤ51Cが形成されている。従動ギヤ51Cは、前記板材に形成された互いに平行な複数の貫通孔7cを包含する。前記従動ギヤ51Cは前記ゴムリング56に接触する第1接触部5fに囲まれていない外側の領域Aoに形成されている。
【0038】
図1に示すように、前記従動ギヤ51Cはウオーム61に歯合するヘリカルギヤで形成されている。
【0039】
したがって、弁体5は、図1に示す開弁位置から、図7Aおよび図7Bに示すように、該弁体5の閉塞部500の第1接触部5f(図3)がゴムリング56に接触する閉弁位置まで回転される。
前記閉弁位置において、前記従動ギヤ51Cが閉塞部500の第1の端部501(図3B)から第2分割ケース22の周方向Rの中心Oまで延び、ウオーム61が従動ギヤ51Cに第2分割ケース22の周方向Rの中心Oにおいて歯合している。
【0040】
なお、図3Aおよび図3Cに示すように、前記ギヤ部503の管軸方向Lの両端部は前記凹面53側に折り曲げられている。
また、図1に示すように、閉塞部500の第2の端部(先端部)502は、凹面53側に若干曲げられている。
【0041】
不断流穿孔方法:
まず、専用の治具を用いて図4に示す矢印方向に弁体5を弾性変形させて欠け部50Lを拡げる。ついで、既設管1の下方から上方に向って第2分割ケース22を既設管1に装着した後、第2分割ケース22を既設管1を中心に回転させ、図1に示すように、第1分割ケース21を装着し既設管1の外周面13を囲繞するように分岐装置2を取り付ける。この取り付け後、作業者は、前記組立ボルト25aにより両分割ケース21,22を組み立てる。
【0042】
なお、前記組み立て後、前記弁体5を分岐管部27の分岐孔28を塞いだ閉弁位置(図8A参照)に移動し、前記閉弁状態の既設管1と密閉ケース20との間に水を注入して、水密試験を行ってもよい。
【0043】
その後、図5Aに示すように、作業者は、操作部67を操作して弁体5を開弁位置に設定し、更に、分岐管部27の継手部81に、穿孔機3の継手部31を図示しないボルトを用いて取り付ける。こうして、分岐装置2は、既設管1の一部を気密状態で囲繞する。
【0044】
前記囲繞後、図5Bに示すように、ホールソー4を回転させながら既設管1に向って穿孔方向C1に移動させると、センタードリル41が既設管1の管壁12を切削し、該センタードリル41を中心に回転するホールソー4が既設管1に対して位置決めされる。その後、図6Aに示すように、ホールソー4によって既設管1の管壁12の一部が切り取られ開孔11が形成される。
前記センタードリル41およびホールソー4による穿孔後、図6Bに示すように、ホールソー4を退避方向C2に移動させる。
【0045】
その後、作業者が操作部67を回転させると、ウオーム61が回転し、該ウオーム61に歯合する従動ギヤ51Cによって、前記分岐孔28の閉弁方向R1に回転され、開弁位置の弁体5が、図7Aに示す閉弁位置に移動される。前記弁体5の閉弁位置への移動により、弁体5がゴムリング56の表面に密着し、分岐孔28が閉塞される。
【0046】
その後、穿孔機3を図7Bに示すように分岐装置2から取り外す。前記穿孔機3の取り外し後、図8Aに示すように、分岐配管90の継手部91を図示しないボルトを用いて該分岐管部27の継手部81に接続する。
【0047】
その後、作業者が操作部67を開弁方向R2に回転させて、図8Bに示す開弁位置まで弁体5を回転させることにより、既設管1に分岐配管90を接続する工事が完了する。
【0048】
以上のとおり、図面を参照しながら好適な実施例を説明したが、当業者であれば本明細書を見て、自明な範囲で種々の変更および修正を容易に想定するであろう。
前述した実施例では、駆動ギヤ手段としてウオームを用いたが、平歯車を用いてもよい。かかる場合には、従動ギヤは平歯車で形成される。
また、密閉ケースは鋳造品であってもよいし、鋼板で形成されてもよい。密閉ケースを鋼板で形成した場合には、第1および第2分割ケースを仮に組み立てた状態で溶接により2つの分割ケースを一体にして密閉ケースが形成されてもよい。
さらに、ゴムパッキンは分割ケースに設けられることとしたが、ゴムパッキンは弁体に設けられてもよい。
したがって、以上のような変更および修正は、請求の範囲から定まる本発明の範囲内のものと解釈される。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の不断流穿孔用の分岐装置は、水道やガスなどの既設管から分岐を取り出すのに用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】図1は本発明の一実施例にかかる分岐装置を示す概略断面図である。
【図2】図2Aは第2分割ケースを示す概略正面図、図2Bは第1分割ケースを示す概略背面図である。
【図3】図3Aは弁体の概略平面図、図3Bは平面に展開した状態の弁体を示す概略正面図、図3Cは同弁体の概略側面図である。
【図4】図4は第2分割ケースを既設管に取り付ける方法を示す概略横断面図である。
【図5】図5Aおよび図5Bは、それぞれ、不断流穿孔方法を示す分岐装置等の概略断面図である。
【図6】図6Aおよび図6Bは、それぞれ、不断流穿孔方法を示す分岐装置等の概略断面図である。
【図7】図7Aおよび図7Bは、それぞれ、不断流穿孔方法を示す分岐装置等の概略断面図である。
【図8】図8Aおよび図8Bは、それぞれ、不断流穿孔方法を示す分岐装置等の概略断面図である。
【図9】図9は従来の不断流穿孔方法を示す装置等の概略断面図である。
【符号の説明】
【0051】
1:既設管
2:分岐装置
3:穿孔機
4:ホールソー
5:弁体
6:回転機構
7c:貫通孔
11:開孔
12:管壁
20:密閉ケース
21:第1分割ケース
22:第2分割ケース
28:分岐孔
30:曲面部
50:溝
50a:第1装着溝
50b:第2装着溝
50L:欠け部
51C:従動ギヤ
52:凸面
53:凹面
56:ゴムリング(弁座の一例)
61:ウオーム
63:駆動ギヤ手段
66:カバー
66b:貫通部
67:操作部
70:ギヤケース部
70a:第1開口部
70b:第2開口部
72:フランジ
73:凹所
75d:支持部
90:分岐配管
500:閉塞部
501:第1の端部
L1:管軸
R:周方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホールソーを備えた穿孔機で、既設管の管壁の一部を穿孔して前記管壁に開孔を形成し、当該既設管に分岐配管を接続するのに適した不断流穿孔用の分岐装置であって、
既設管の周方向に2つに分割され既設管の一部を囲繞する第1および第2分割ケースを有する密閉ケースと、前記第1分割ケースには既設管の径方向に突出して分岐する分岐管部が一体に形成され、
前記密閉ケースの内周面と既設管の外周面との間において、既設管の周方向に沿って回転することにより、前記分岐管部の分岐孔を開閉する横断面円弧状の閉塞部を有する弁体と、
前記第1分割ケースにおける内周面に設けられ前記弁体が閉弁時に接触する弁座と、
前記弁体を回転させるための回転機構とを備え、前記回転機構は、
前記密閉ケースの外において回転操作される操作部と、
前記操作部の回転により回転する駆動ギヤ手段と、
前記弁体に形成され前記駆動ギヤ手段の回転で前記弁体を前記既設管の前記周方向に回転させる従動ギヤとを備え、
前記第1分割ケースと前記既設管との間には、前記弁体を収容し、かつ、移動可能とする第1空間が設けられ、
前記第2分割ケースと前記既設管との間には、前記弁体を収容し、かつ、移動可能とする第2空間が設けられ、
前記第1空間と前記第2空間とは互いに周方向に連なっており、
ここにおいて、前記弁座は前記第1分割ケースにおける前記分岐管部の近傍の前記内周面に設けられ、
前記閉塞部が前記弁座に接触する接触部に囲まれていない外側の領域に前記従動ギヤが設けられ、
前記弁体の接触部が前記弁座に接触した閉弁位置において前記従動ギヤが前記外側の領域における前記閉塞部の第1の端部から前記第2分割ケースの周方向の中心まで延び、
前記駆動ギヤ手段が前記従動ギヤに前記第2分割ケースの周方向の概ね中心において歯合する分岐装置。
【請求項2】
請求項1において、前記閉塞部および前記従動ギヤを含む前記弁体が前記既設管の管軸のまわりに210°〜270°の範囲にわたってC字状に設けられ、
前記従動ギヤが前記分岐管部の管軸に交差する位置に配置されている分岐装置。
【請求項3】
請求項2において、前記C字状の弁体における周方向に欠けた欠け部の長さが前記既設管の外径よりも小さく、かつ、前記弁体を弾性変形させて前記欠け部を拡げることで前記弁体が前記既設管に装着されることが可能な分岐装置。
【請求項4】
請求項3において、前記弁体はステンレススチールの板材で形成され、
前記従動ギヤは前記板材に形成された互いに平行な複数の貫通孔を包含する分岐装置。
【請求項5】
請求項1もしくは4において、前記従動ギヤに係合するウオームで前記駆動ギヤ手段が構成されている分岐装置。
【請求項6】
請求項5において、前記既設管の管壁に向って開口し前記ウオームの一部が前記従動ギヤに歯合するのを可能とする第1開口部と、上方に向って開口する第2開口部と、前記ウオームの一部を収容する凹所と、前記ウオームの下端を回転自在に支持する支持部とを備えたギヤケース部が前記第2分割ケースに一体に設けられ、
前記ギヤケース部の第2開口部を閉塞するカバーが前記ギヤケース部に締結され、
前記カバーを上下に貫通する貫通部から前記操作部が上方に突出しており、
このように構成されていることで、前記第2開口部から前記ウオームを挿入して組み立てることを可能とした分岐装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−144817(P2010−144817A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−321994(P2008−321994)
【出願日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【出願人】(399130348)株式会社水研 (19)
【Fターム(参考)】