説明

分岐装置

【課題】耐久性に優れると共に、軌道を転換するときの消費エネルギーを削減できる分岐装置を提供すること。
【解決手段】可動桁B1,B2の各々の端部が搭載される台部4と、その台部4を支持すると共に敷設された走行レール2の上を転動する複数の車輪3と、その車輪3を駆動する駆動装置5と、走行レール2に沿って敷設されるガイドレール6と、そのガイドレール6の両側面に各々当接する案内部7とを備えているので、水平荷重が可動桁B1,B2から台部4に伝達されたときでも、台部4及び車輪3が横方向にずれることを防止できる。また、車輪3と作用荷重に対応した構造の案内部7とが別設されているので、案内部7と走行レール2とがこじれることがなく、駆動装置5が必要なトルクを平準化でき小型化できると共に、ピーク負荷を減少させて消費エネルギーを削減でき、さらに車輪3の回転につれて案内部7が摩耗するということがなく耐久性を向上できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は分岐装置に関し、特に、耐久性に優れると共に、軌道を転換するときの消費エネルギーを削減できる分岐装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
線路や軌道を分岐させ車両(列車)の進路を選択する機構として、桁長さ方向に隣り合い垂直軸で連結される2つの可動桁を搭載する台車と、軌道転換時に可動桁を水平移動させる流体圧シリンダ(油圧シリンダ)とを備える分岐装置が開示されている(特許文献1)。特許文献1に開示される技術では、流体圧シリンダを伸縮させることにより、台車に搭載された可動桁を水平移動させることができ、その結果、軌道を転換することができる。
【0003】
しかしながら、軌道を転換するときに可動桁から伝達される桁長さ方向の荷重(水平荷重)が流体圧シリンダのピストンロッドに曲げ荷重として作用するため、流体圧シリンダのシール部に無理な力が加わり、圧力を伝達する流体が漏れる等の故障が発生し易く、流体圧シリンダの寿命が短くなるという問題があった。
【0004】
また、別の方法として、特許文献2に開示される技術が知られている。特許文献2に開示される技術は、車輪を駆動するモータ及び減速機を台車に搭載し、台車をレールの上で自走可能となるようにするものである。台車がレールの上を自走して、台車に搭載された可動桁を移動させるので、特許文献1に開示される流体圧シリンダを不要にできる。この場合、台車に横方向の水平荷重が入力されると、車輪が横滑りを起こし台車の位置が横方向にずれることがある。可動桁を連結する垂直軸の下端部は台車に軸支されているので、台車の位置が横方向にずれると、垂直軸に水平荷重が作用して垂直軸が損傷したり、垂直軸の寿命が短くなったりするおそれがある。
【0005】
そこで、特許文献2記載の技術では、車輪にフランジが付けられている。台車に水平荷重が入力されると、フランジがレールの側面に当接し、車輪の横滑りが防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第2939377号公報(図1〜図4など)
【特許文献2】特開昭59−6763号公報(図13など)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、軌道を走行する車両が可動桁の付近で制動すると、その反力で可動桁が車両の進行方向に移動し、レールと交差する横方向の水平荷重が可動桁から台車に伝達される。また、軌道を転換するときにも同様に、水平荷重が可動桁から台車に伝達される。このように水平荷重が台車に伝達されると、車輪がレールの幅方向にずれるため、レールの側面とフランジとがこじれてしまう。レールとフランジとがこじれると、軌道を転換するとき、特に軌道転換開始時の車輪のスムーズな回転が妨げられる。これに抗して車輪を回転させるにはモータに大きなトルクが必要となるため、モータが大型化すると共にピーク負荷が増大し、モータを駆動するための消費エネルギーが増大するという問題点があった。
【0008】
また、レールとフランジとがこじれた状態で車輪を回転させると、フランジがレールの側面を圧迫しながら擦れるため、フランジの側面が早期に摩耗し、台車、特に車輪の耐久性が低下するという問題点があった。
【0009】
本発明は上述した問題点を解決するためになされたものであり、耐久性に優れると共に、軌道を転換するときの消費エネルギーを削減できる分岐装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0010】
この目的を達成するために、請求項1記載の分岐装置は、垂直軸のまわりに回動可能に連結されつつ隣り合う2つの可動桁の各々の端部が搭載される台部と、その台部を支持すると共に、敷設された走行レールの上を転動する複数の車輪と、その車輪を駆動する駆動装置とを備えるものであり、前記走行レールに沿って敷設されるガイドレールと、そのガイドレールの両側面に各々当接し前記台部に前記車輪と別設される案内部とを備えている。これにより、請求項1記載の分岐装置は、走行レールと交差する横方向の水平荷重が可動桁から台部に伝達されたときでも、台部および車輪が横方向にずれることを防止できる。また、車輪と案内部とが別設されているので、走行レールと案内部とがこじれることがないため、軌道を転換するときに車輪の回転が妨げられるということがなく、駆動装置に必要なトルクを平準化でき駆動装置を小型化できると共に、ピーク負荷を減少させて消費エネルギーを削減できる効果がある。
【0011】
また、車輪と案内部とが別設されているので、作用荷重に対応した構造を形成することにより、軌道を転換するときの車輪の回転につれて案内部が摩耗するということがなく、案内部が摩耗し難く耐久性を向上できる効果がある。
【0012】
請求項2記載の分岐装置は、前記案内部は、前記台部の下方から垂設される支持軸と、その支持軸に回動可能に軸支される1組もしくは複数組のローラとを備え、それら1組もしくは複数組のローラの外周が前記ガイドレールの両側面に各々当接されている。これにより、請求項2記載の分岐装置は、請求項1記載の分岐装置の奏する効果に加え、軌道を転換するときのガイドレールと案内部との摩擦抵抗を小さくできるため、駆動装置の小型化と消費エネルギーの削減とをさらに図ることができる効果がある。また、案内部の摩耗を防ぎ、耐久性をさらに向上できる効果がある。
【0013】
請求項3記載の分岐装置は、前記台部は、前記垂直軸の下端側が固定される垂直軸固定部を備え、前記ガイドレールは、前記台部および前記車輪が跨設されており、前記垂直軸の延長線は、前記走行レールと前記車輪とが接する点を結んでできる多角形の内側を通過する。これにより、請求項3記載の分岐装置は、請求項1又は2に記載の分岐装置の奏する効果に加え、可動桁からの過大な水平荷重が垂直軸固定部を介して台部に伝達されたときも、ガイドレールを中心に台部が回転しようとして浮き上がることを防止できる。その結果、ガイドレールへの案内部の当接が外れたり、案内部に過大な水平荷重が入力されて案内部が損傷したりすることを防止できる。これにより、過大な水平荷重が入力されたときでも、台部をガイドレールに沿って確実に移動させることができる効果がある。
【0014】
請求項4記載の分岐装置は、前記隣り合う2つの可動桁の各々の端部に設けられると共に、前記垂直軸を中心に回動可能に構成される第1支持部および第2支持部と、前記第1支持部または前記第2支持部の少なくとも一方に形成され、前記垂直軸が前記可動桁の桁長さ方向に沿ってスライド可能に貫装されるスライド孔とを備えている。これにより、請求項4記載の分岐装置は、請求項1から3のいずれかに記載の分岐装置の奏する効果に加え、可動桁は垂直軸に対して桁長さ方向への相対移動が可能となるため、外気温度の変化による可動桁の桁長さ方向の膨張・収縮を吸収することができ、可動桁の膨張・収縮による水平荷重が台部に伝達されることを防止できる。その結果、可動桁の膨張・収縮によりガイドレールの両側面に当接する案内部に過大な荷重が伝達されることが防止され、案内部の耐久性を向上できる効果がある。また、隣り合う可動桁は桁幅方向への相対移動が規制されるので、桁幅方向の台部の移動に可動桁を精度良く追随させることができ、軌道の転換精度を向上できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】(a)は本発明の第1実施の形態における分岐装置の基準状態を示す平面図であり、(b)は軌道転換状態を示す分岐装置の平面図である。
【図2】分岐装置の要部平面図である。
【図3】図1(a)の矢印III方向視における分岐装置の正面図である。
【図4】図3の矢印IV方向視における分岐装置の側面図である。
【図5】第2実施の形態における分岐装置の要部平面図である。
【図6】弾性支承として構成される支承機構の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、添付図面を参照して説明する。まず、分岐装置1の概要を説明する。図1(a)は本発明の第1実施の形態における分岐装置1の基準状態を示す平面図であり、図1(b)は軌道転換状態を示す分岐装置1の平面図である。分岐装置1は、図示しない車両(列車)が走行する軌道の基準線(本線軌道)の分岐始点側固定桁A1と分岐終点側固定桁A2とを接続する分岐軌道Bに配置されている。
【0017】
分岐軌道Bは、桁長さ方向に並設された複数の可動桁B1,B2,B3と、可動桁B1,B2,B3が互いに連結される垂直軸Qとを主に備えて構成されている。垂直軸Qにより連結される可動桁B1,B2,B3は、各垂直軸Qのまわりに屈曲可能に構成されている。分岐軌道Bは、車両の進路を基準線A1,B,A2又は分岐線(側線軌道)A1,B,Cに切り換える軌道である。分岐軌道Bは、分岐始点側固定桁A1と可動桁B1とを連結する垂直軸Pを固定支点として、分岐軌道Bが各垂直軸Qのまわりに屈曲しながら移動することにより、分岐軌道Bの分岐終点側端部(可動桁B3の端部)が分岐終点側固定桁A2に接続される基準状態(図1(a)参照)と、分岐軌道Bの分岐終点側端部(可動桁B3の端部)が基端側固定桁Cに接続される軌道転換状態(図1(b)参照)とを切り換える。
【0018】
分岐装置1は、可動桁B1,B2,B3を移動させて分岐軌道Bを移動させる機構である。分岐装置1は、道床に敷設される一対の走行レール2の上を転動する複数の車輪3と、それら車輪3に支持されると共に、隣り合う2つの可動桁B1,B2,B3の各々の端部が搭載される台部4とを主に備えて構成されている。本実施の形態においては、走行レール2は直線状に形成されており、垂直軸Qで互いに連結された可動桁B1,B2,B3の各々の端部に対応する複数箇所に敷設されている。
【0019】
走行レール2は、その上を分岐装置1の車輪3が転動し、可動桁B1,B2,B3及び台部4による垂直荷重を支える部材である。分岐軌道Bの複数箇所に敷設された走行レール2は、分岐終点側固定桁A2に近づくにつれて長くなるように形成されている。分岐軌道Bは垂直軸Pを固定支点として移動するので、台部4の移動可能距離、即ち走行レール2の長さを分岐軌道Bの移動距離に応じて長くする必要があるからである。
【0020】
次に、図2を参照して分岐装置1についてさらに説明する。図2は可動桁B1,B2を搭載する分岐装置1の要部平面図である。なお、図2では、可動桁B1,B2及び台部4を透視した状態を示しており、可動桁B1,B2及び台部4は想像線(二点鎖線)で図示し、台部4から下の部分を実線で図示している。また、図2では、走行レール2及びガイドレール6の長手方向の図示を一部省略している。
【0021】
分岐装置1は、上述したように、一対の走行レール2の上を転動する複数の車輪3と、それら車輪3に支持されると共に、隣り合う2つの可動桁B1,B2の各々の端部が搭載される台部4とを主に備えて構成されている。さらに分岐装置1は、車輪3を駆動する駆動装置5と、走行レール2に沿って敷設されるガイドレール6と、そのガイドレール6の両側面に各々当接し台部4に車輪3と別設される案内部7とを主に備えて構成されている。
【0022】
ここで、台部4は、垂直軸Qを中心に回動可能に連結される第1台部4a及び第2台部4bを備えて構成されている。第1台部4a及び第2台部4bは、走行レール2の長手方向に並設されており、各々の外形は平面視して矩形状とされている。台部4(第1台部4a及び第2台部4b)の上面と各可動桁B1,B2の下面には、軌道を転換するときに各可動桁B1,B2と台部4との間の相対運動を小さな摩擦抵抗で滑らかに行わせるための支承機構8(後述する)が配設されている。
【0023】
車輪3は、同一径で形成されると共に車軸3aの両端に固定されており、それら車軸3aは第1台部4aの移動方向の前側および後側、並びに第2台部4bの移動方向の前側および後側にそれぞれ回動可能に軸支されている。第1台部4a及び第2台部4bの各々に配設される車輪3及び車軸3aの一つは、駆動装置5としてのギヤモータ(減速機付きモータ)により駆動可能に構成されている。車輪3は、直線状に敷設された一対の平行な走行レール2の上を転動することにより、第1台部4a及び第2台部4bを移動可能に支持する。以上のように、台部4に対して2つの駆動装置5を用いて、異なる車軸3aに固定された車輪3を駆動するので、万一、駆動装置5の一方が故障しても、他方の駆動装置5を用い車輪3を駆動させて台部4を移動できる。
【0024】
ガイドレール6は、一対の走行レール2の間に敷設されている。そのガイドレール6の両側面に当接する案内部7は、第1台部4a及び第2台部4bの各々の車軸3a間に配設されている。案内部7の各々は、ガイドレール6の長手方向に適当な間隔をあけて配設され、ガイドレール6の両側面に外周が当接する2個ずつ合計4個のローラ7dを備え、それらローラ7dはガイドレールを挟んで対峙している。このように分岐装置1は、ガイドレール6の両側面に当接する案内部7を備えているので、ガイドレール6に沿って台部4を安定に移動できる。また、第1台部4a及び第2台部4bの各々に案内部7が配設されているので、連結された第1台部4a及び第2台部4bの直進性を確保することができる。
【0025】
次に図3を参照して、桁長さ方向における分岐装置1の構成について説明する。図3は、図1(a)の矢印III方向視における分岐装置1の正面図である。なお、図3においては案内部7を図示するために、車軸3aの長手方向の中央付近の図示を省略している。
【0026】
分岐装置1は、上述のように、道床Gに敷設される走行レール2の上を転動する複数の車輪3と、それら車輪3で支持される台部4とを主に備えて構成されている。車輪3は車軸3aの両端に固定され、その車軸3aは左右の車軸受け3bで軸支されており、各々の車軸受け3bは独立して台部4に固定されている。
【0027】
ガイドレール6は道床Gの走行レール2の間に敷設されており、台部4及び車輪3が跨設される。ガイドレール6の両側面に、案内部7としてのローラ7dの外周が当接している。案内部7は、台部4(第1台部4a及び第2台部4b)の下面からガイドレール6に向けて垂設される軸部7aと、その軸部7aの回りに回動可能に固定される本体部7bと、その本体部7bから下方に垂設される2本の支持軸7cとを備え、ローラ7dは各々の支持軸7cに回動可能に軸支されている。ガイドレール6の両側面にローラ7dの外周が当接しているので、台部4の移動に伴い2つのローラ7dがガイドレール6の両側面を転動する。これにより、台部4はガイドレール6に沿って走行レール2の上を直線状に移動できる。また、ガイドレール6の側面を転動するローラ7dを備えて案内部7が構成されているので、案内部7とガイドレール6との摩擦抵抗を小さくすることができ、案内部7やガイドレール6の摩耗を抑制できる。
【0028】
支承機構8は、フッ素樹脂製等の摩擦抵抗の小さな素材で略円筒状に形成されると共に台部4(第1台部4a及び第2台部4b)の上面に固定されるすべり沓8aと、そのすべり沓8aと接触しつつ各可動桁B1,B2の下面に固定されるスライド部8bとを備えて構成されている。各可動桁B1,B2は、すべり沓8a及びスライド部8bに支持されて台部4に搭載されており、軌道を転換するときには、すべり沓8aの上面とスライド部8bの下面とが摺接することによって、各可動桁B1,B2は滑らかに移動する。
【0029】
支承機構8により台部4に搭載される分岐始点側の可動桁B1及び分岐終点側の可動桁B2は、隣り合う各々の端面に、垂直軸Qを中心にして回動可能に連結される第1支持部9a及び第2支持部9bを備えている。分岐始点側の可動桁B1の端面に設けられた第1支持部9aは、垂直軸Qが可動桁B1の桁長さ方向に沿ってスライド可能に貫装されるスライド孔9cを備えている。スライド孔9cを貫通する垂直軸Qの下端部は、後述するように台部4に固定されている。
【0030】
スライド孔9cは、外気温度が低く可動桁B1,B2が収縮しているときに、少なくとも第1支持部9aの基部側(分岐始点側の可動桁B1側)に垂直軸Qと隙間が設けられるように構成されている。これにより、可動桁B1は、垂直軸Qに対して桁長さ方向への相対移動が可能となるため、外気温度の変化による可動桁B1の桁長さ方向の膨張をスライド孔9cが吸収し、可動桁B1が膨張して生ずる水平荷重が台部4や垂直軸Qに伝達されることを防止できる。また、膨張した可動桁B1が外気温度の変化によって収縮する場合も同様に、スライド孔9cが形成されているので、水平荷重が台部4や垂直軸Qに伝達されることを防止できる。その結果、可動桁B1,B2の膨張・収縮により案内部7に過大な荷重が伝達されることが防止され、案内部7の耐久性を向上できる。また、垂直軸Qに水平荷重が入力されることも防止できるため、垂直軸Qを中心にした可動桁B1,B2の回動もスムーズに行われると共に、垂直軸Qが損傷することも防止できる。さらに、連結された可動桁B1,B2は桁幅方向への相対移動が規制されるので、車輪3の転動に伴う台部4の移動に、可動桁B1,B2を精度良く追随させることができ、軌道の転換精度を向上できる。
【0031】
次に図4を参照して、桁幅方向における分岐装置1の構成について説明する。図4は、図3の矢印IV方向視における分岐装置1の側面図である。なお、図4においては、分岐始点側の可動桁B1の図示を省略している。
【0032】
分岐装置1の台部4(第1台部4a及び第2台部4b)は、第1支持部9a(図3参照)及び第2支持部9bを連結する垂直軸Qの下端部が固定されている。本実施の形態においては、第1台部4a及び第2台部4bは、隣り合う各々の端面に第1垂直軸固定部10a及び第2垂直軸固定部10bを備えており、第1垂直軸固定部10a及び第2垂直軸固定部10bに垂直軸Qの下端部が軸支されることにより、垂直軸Qを中心にして第1台部4a及び第2台部4bは回動可能に連結される。以上のように、分岐装置1の台部4(第1台部4a及び第2台部4b)は、第1支持部9a(図3参照)及び第2支持部9bを連結する垂直軸Qの下端部が固定されているので、走行レール2の上を台部4が移動することにより、台部4の移動に伴って垂直軸Qが移動し、それに伴い可動桁B1,B2を移動させることができる。
【0033】
ここで、台部4は走行レール2の上を直線状に移動するが、可動桁B1,B2は、分岐始点側の垂直軸P(図1参照)を支点として円弧状に移動する。このように台部4の移動する軌跡と可動桁B1,B2の移動する軌跡とは異なるが、可動桁B1,B2同士を連結する第1支持部9aはスライド孔9cを備えているので、これら2つの軌跡の差がスライド孔9cで吸収される。また、台部4は可動桁B1,B2の下面に固定されたスライド部8bをすべり沓8aで支持しているので、すべり沓8aの上をスライド部8bが摺動して、可動桁B1,B2が台部4の上を円弧状に移動する。これにより、軌道の転換がスムーズに行われる。
【0034】
以上のように第1実施の形態における分岐装置1は構成されているので、走行レール2と交差する横方向の水平荷重が可動桁B1,B2,B3から台部4に伝達されたときでも、台部4及び車輪3が横方向にずれることを防止できる。また、車輪3と案内部7とが別設されているので、水平荷重が入力されても案内部7と走行レール2とがこじれることがない。そのため、軌道を転換するときに車輪3の回転が妨げられるということがなく、駆動装置5に必要なトルクを平準化でき駆動装置5を小型化できると共に、ピーク負荷を減少させて消費エネルギーを削減できる。また、軌道を転換するときの車輪3の回転につれて案内部7が摩耗するということがなく、案内部7が摩耗し難く耐久性を向上できる。
【0035】
また、分岐装置1の台部4は、垂直軸Qの下端側が固定される垂直軸固定部10(第1垂直軸固定部10a及び第2垂直軸固定部10b)を備え、ガイドレール6は台部4及び車輪3が跨設されている。さらに、垂直軸Qの延長線は、走行レール2と車輪3とが接する点を結んでできる多角形(図2参照)(本実施の形態においては長方形)の内側を通過する。これにより、可動桁B1,B2,B3からの過大な水平荷重が垂直軸固定部10を介して台部4に伝達されたときも、ガイドレール6を中心に台部4が回転しようとして浮き上がることを防止できる。その結果、ガイドレール6への案内部7の当接が外れたり、案内部7に過大な水平荷重が入力されて案内部7が損傷したりすることを防止できる。その結果、過大な水平荷重が入力されたときでも、台部4をガイドレール6に沿って確実に移動させることができる。
【0036】
次に図5を参照して、第2実施の形態について説明する。図5は、第2実施の形態における分岐装置11の要部平面図である。なお、図5では、図2と同様に、可動桁B1,B2及び台部4を透視した状態を示しており、可動桁B1,B2及び台部4は想像線(二点鎖線)で図示し、台部4から下の部分を実線で図示している。また、図5では、走行レール13及びガイドレール16の長手方向の図示を一部省略している。
【0037】
ここで、第1実施の形態では、道床Gに敷設された直線状の走行レール2の上を車輪3が転動することにより台部4が移動する場合について説明した。これに対し第2実施の形態では、道床Gに敷設された円弧状の走行レール12a,12bの上を車輪13a,13bが転動することにより、台部4が円弧状に移動する場合について説明する。なお、第1実施の形態と同一の部分については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0038】
分岐装置11においては、図5に示すように、走行レール12a,12bは円弧状に形成されている。走行レール12a,12bの曲率半径は、可動桁B1,B2の回転中心からの距離に合わせた大きさに形成されている。走行レール12a,12b間には、円弧状に形成されるガイドレール16が走行レール12a,12bに沿って敷設されている。ガイドレール16の曲率半径も、可動桁B1,B2の回転中心からの距離に合わせた大きさに形成されている。従って、走行レール12a,12b及びガイドレール16の曲率半径は、分岐始点側の走行レール12a、ガイドレール16、分岐終点側の走行レール12bの順に大きくなるように設定されている。
【0039】
走行レール12a,12bの上を転動する車輪13a,13bは、車軸13cの両側に固定されている。分岐始点側の走行レール12aの上を転動する車輪13aの外径は、分岐終点側の走行レール12bの上を転動する車輪13bの外径より小さく設定されている。これは、上述のように、分岐始点側の走行レール12aの曲率半径は分岐終点側の走行レール12bの曲率半径より小さいので、走行レール12a,12bの上を空転することなく車輪13a,13bが転動できるようにするためである。
【0040】
なお、第1実施の形態で説明したように、第1台部4a及び第2台部4bは垂直軸Qを中心にして回動可能に連結されているので、走行レール12a,12b及びガイドレール16が円弧状に形成されていても、走行レール12a,12b及びガイドレール16に沿わせて台部4を屈曲させることができる。これにより、台部4を円滑に移動できる。その結果、第1実施の形態の場合(走行レール2が直線状の場合)と台部4を共通化することができ、台部4の汎用性を向上できる。
【0041】
また、第1実施の形態で説明したように、案内部7は、台部4(第1台部4a及び第2台部4b)の下面からガイドレール6(図3参照)に向けて垂設される軸部7aと、その軸部7aの回りに回動可能に固定される本体部7bと、その本体部7bから下方に垂設される2本の支持軸7cとを備え、ローラ7dは各々の支持軸7cに回動可能に軸支されている。このように本体部7bが、ガイドレール6に向けて垂設される軸部7aのまわりに回動可能に固定されているので、ガイドレール16が円弧状に形成されていても、ガイドレール16の長手方向に沿ってローラ7dを転動させることができ、台部4はガイドレール16に沿って案内される。
【0042】
以上のように第2実施の形態における分岐装置11は構成されているので、台部4は走行レール12a,12bの上を円弧状に移動し、可動桁B1,B2も、分岐始点側の垂直軸P(図1参照)を支点として円弧状に移動する。このように台部4の移動する軌跡と可動桁B1,B2の移動する軌跡とをほぼ等しくできるため、すべり沓8aを摺動するスライド部8bの摺動量を小さくできる。これにより、スライド部8bとすべり沓8aとが摺動することによって生じる摩耗量を削減することができ、スライド部8bやすべり沓8aのメンテナンス頻度を削減できる。
【0043】
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。例えば、上記実施の形態で挙げた数値(例えば、各構成の数量等)は一例であり、他の数値を採用することは当然可能である。
【0044】
上記各実施の形態では、第1台部4a及び第2台部4bが垂直軸Qで回動可能に連結されて台部4が構成される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、第1台部4a及び第2台部4bを連結することなく、一体化されたものとして構成することも当然可能である。また、第1台部4a及び第2台部4bを剛結合して一体化することも可能である。
【0045】
上記各実施の形態では、案内部7は、ローラ7dの外周がガイドレール6,16に当接し、ローラ7dがガイドレール6,16の側面を転動する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、他の形態とすることも当然可能である。他の形態としては、例えば、フッ素樹脂製等で形成されてガイドレール6,16の側面に当接し摺動するものが挙げられる。この場合も、入力された水平荷重を受けることができると共に、ガイドレール6,16に沿って台部4を移動させることができる。
【0046】
上記第2実施の形態では、分岐始点側の走行レール12aを転動する車輪13aの外径を、分岐終点側の走行レール12bを転動する車輪13bの外径より小さく形成することにより、曲率半径の異なる走行レール12a,12bの上を車輪13a,13bが転動する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、車輪13a,13bを同一径にすると共に、車軸13cに差動装置を配設して、車輪13a,13bの回転速度差を調整することにより、曲率半径の異なる走行レール12a,12bの上を転動させることも可能である。
【0047】
上記各実施の形態では、ガイドレール6,16の一方側および他方側にそれぞれ一輪ずつローラ7dを配設し、これら二輪のローラ7dでガイドレール6,16を両側から挟む場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、合計三輪以上のローラ7dでガイドレール6,16を両側から挟む構成とすることは当然可能である。例えば、ガイドレール6,16の一方側に一輪のローラ7dを、ガイドレール6,16の他方側に二輪のローラ7dを、それぞれ配設し、これら合計三輪のローラ7dでガイドレール6,16を両側から挟む構成としても良い。
【0048】
上記各実施の形態では、支承機構8をすべり支承として構成する場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、弾性支承により構成しても良い。ここで、この弾性支承の一例について図6を参照して説明する。なお、上記各実施の形態と同一の部分には同一の符号を付して、その説明を省略する。図6は、弾性支承として構成される支承機構1008の断面図である。
【0049】
図6に示すように、支承機構1008は、各可動桁B1,B2の下面および台部4の上面にそれぞれ固定される一対の連結板部1081と、それら一対の連結板部1081の間に固定される弾性部1082とを備え、弾性部1082の弾性変形によって、各可動桁B1,B2を台部4に対して水平方向に移動可能に支持する。
【0050】
なお、弾性部1082は、ゴム状弾性体から円板状に形成される複数枚のゴム基体1082aと、金属材料から円板状に形成される複数枚の積層板1082bとを備え、これらゴム基体1082aと積層板1082bとが交互に積層されている。
【符号の説明】
【0051】
1,11 分岐装置
2,12a,12b 走行レール
3,13a,13b 車輪
4 台部
4a 第1台部(台部の一部)
4b 第2台部(台部の一部)
5 駆動装置
6,16 ガイドレール
7 案内部
7a 軸部(案内部の一部)
7b 本体部(案内部の一部)
7c 支持軸(案内部の一部)
7d ローラ(案内部の一部)
9a 第1支持部
9b 第2支持部
9c スライド孔
10 垂直軸固定部
10a 第1垂直軸固定部(垂直軸固定部の一部)
10b 第2垂直軸固定部(垂直軸固定部の一部)
B1,B2,B3 可動桁
Q 垂直軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
垂直軸のまわりに回動可能に連結されつつ隣り合う2つの可動桁の各々の端部が搭載される台部と、その台部を支持すると共に、敷設された走行レールの上を転動する複数の車輪と、その車輪を駆動する駆動装置とを備える分岐装置において、
前記走行レールに沿って敷設されるガイドレールと、
そのガイドレールの両側面に各々当接し前記台部に前記車輪と別設される案内部とを備えていることを特徴とする分岐装置。
【請求項2】
前記案内部は、前記台部の下方から垂設される支持軸と、その支持軸に回動可能に軸支される1組もしくは複数組のローラとを備え、それら1組もしくは複数組のローラの外周が前記ガイドレールの両側面に各々当接されていることを特徴とする請求項1記載の分岐装置。
【請求項3】
前記台部は、前記垂直軸の下端側が固定される垂直軸固定部を備え、
前記ガイドレールは、前記台部および前記車輪が跨設されており、
前記垂直軸の延長線は、前記走行レールと前記車輪とが接する点を結んでできる多角形の内側を通過することを特徴とする請求項1又は2に記載の分岐装置。
【請求項4】
前記隣り合う2つの可動桁の各々の端部に設けられると共に、前記垂直軸を中心に回動可能に構成される第1支持部および第2支持部と、
前記第1支持部または前記第2支持部の少なくとも一方に形成され、前記垂直軸が前記可動桁の桁長さ方向に沿ってスライド可能に貫装されるスライド孔とを備えていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の分岐装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−107434(P2012−107434A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−257511(P2010−257511)
【出願日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(000004617)日本車輌製造株式会社 (722)
【出願人】(390021577)東海旅客鉄道株式会社 (413)
【Fターム(参考)】