説明

分岐装置

【課題】直線区間形成時と曲線区間形成時とにおける軌道全長を調整可能として、配置自由度の拡大を図ることができる分岐装置を提供すること。
【解決手段】可動桁10a〜10fの移動方向を規制するガイドレールは、上り線側固定桁A1側に曲率中心が位置すると共に上り線側固定桁A1から遠いものほど半径が大きな円弧状に形成され、かつ、曲率中心が桁幅方向中央よりも一方側に偏って位置している。よって、直線区間から曲線区間への転換により、軌道全長を長くする必要がある場合には、その延長分を可動桁10a〜10fの間の遊間をt1からt3へ拡大することで補うことができる一方、曲線区間から直線区間への転換により、軌道全長を短くする必要がある場合には、その短縮分を可動桁10a〜10fの間の遊間をt3からt1へ縮小することで吸収することができる。その結果、分岐装置100の配置自由度の拡大を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分岐装置に関し、特に、直線区間形成時と曲線区間形成時とにおける軌道全長を調整可能として、配置自由度の拡大を図ることができる分岐装置できる分岐装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
線路や軌道を分岐させ、鉄道車両などの車両の進路を選択する分岐装置が特許文献1に開示されている。この分岐装置によれば、上り線と下り線とからなる複線式固定軌道A,Bの渡り部に、複線式固定軌道Aに接続された連絡軌道Cと、複線式固定軌道Bに接続された連絡軌道Dとが軌道長さ方向に対向して配置されており、これら連結軌道C,Dが搭載された台車3を台車レール4に沿って移動させることで、互いの上り線同士および下り線同士が接続される基準位置と、互いの上下異なる線同士が接続される渡り位置との間で軌道を転換する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平05−140902号公報(図1及び図2など)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、基準位置と渡り位置とを比較すると、渡り位置では、接続すべき固定軌道A,B間の離間距離が遠くなると共に軌道線形が曲線となるため、離間距離が近く軌道線形も直線となる基準位置と比較して、必要な軌道長さが長くなる。しかしながら、上述した従来の分岐装置では、長さ方向に並べた複数の可動桁1a,…,1b,…が、その相対向する端部同士で垂直軸Qまわりに連結されているので、軌道全長が一定のままで軌道が転換される。即ち、直線区間形成時と曲線区間形成時とにおける軌道全長が調整されないため、曲線区間形成時における連結軌道C,D間における遊間が過大となる、或いは、直線区間形成時における連結軌道C,D間における遊間が過小となることがないように分岐装置を配置する制約が生じ、その配置自由度が制限されるという問題点があった。
【0005】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、直線区間形成時と曲線区間形成時とにおける軌道全長を調整可能として、配置自由度の拡大を図ることができる分岐装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0006】
請求項1記載の分岐装置によれば、長手方向に複数が並ぶ可動桁の相対向する端部が台車装置に搭載されており、その台車装置がガイドレールに沿って移動して、最後端可動桁が少なくとも基準位置と分岐位置との間を移動することで、車両の走行進路が切り替えられる。
【0007】
この場合、台車装置に可動桁の相対向する端部の少なくとも一方を回転可能かつ長手方向に相対移動可能に連結する連結部材を備え、ガイドレールは、始端側固定桁側にそれぞれのガイドレールの曲率中心が別個に位置すると共に始端側固定桁から遠いものほど半径が大きな円弧状に形成され、かつ、曲率中心が桁幅方向中央よりも一方側に偏って位置するので、複数の可動桁により直線区間が形成された状態から、ガイドレールの曲率中心が位置する側(桁幅方向の一方側)へ向けて台車装置を移動させ、曲線区間を形成する場合には、各可動桁間の遊間を大きくして、分岐装置の全長を長くすることができる一方、その状態から、台車装置を反対側へ移動させ、直線区間を形成する場合には、各可動桁間の遊間を小さくして、分岐装置の全長を短くすることができるという効果がある。即ち、直線区間から曲線区間に転換され、軌道全長を長くする必要がある場合には、その延長分を可動桁間の遊間の拡大で補うことができる一方、曲線区間から直線区間に転換され、軌道全長を短くする必要がある場合には、その短縮分を可動桁間の遊間の縮小で吸収することができる。その結果、分岐装置を配置する際の制約を抑制することができるので、その分、分岐装置の配置自由度の拡大を図ることができるという効果がある。
【0008】
請求項2記載の分岐装置によれば、請求項1記載の分岐装置の奏する効果に加え、台車装置は、可動桁の相対向する端部が搭載される台部と、その台部を支持すると共にガイドレールに沿って敷設された台車レールの上面を転動する車輪と、ガイドレールの両側面を転動する1組もしくは複数組のガイドローラと、それらガイドローラが取着されるガイド本体部と、そのガイド本体部を台部に回転可能に連結するガイド連結軸とを備えているので、車輪の耐久性を向上させることができると共に、駆動装置を小型化して、消費エネルギーの削減を図ることができるという効果がある。
【0009】
即ち、ガイドレール上を、フランジが設けられた車輪が転動することで、水平荷重をフランジにより支えつつ、車輪の転動によって台車装置をガイドレールに沿って移動させることもできるが、この場合には、フランジがガイドレールに対してこじれた状態になると、車輪をスムーズに転動させることができず、車輪の耐久性の低下や駆動装置の消費エネルギーの増大を招く。これに対し、本発明によれば、ガイドレールに沿って敷設された台車レールの上面を車輪が転動し、その車輪とは別設された1組もしくは複数組のガイドローラがガイドレールの両側面を転動するので、可動桁から台部に水平荷重が作用した場合には、ガイドローラがガイドレールの側面に係合することで、水平荷重を支えることができる。よって、車輪にフランジを設けることを不要とできるので、フランジが台車レールに対してこじれた状態とならず、車輪をスムーズに回転させることができる。従って、車輪の耐久性を向上させることができると共に、駆動装置を小型化して、消費エネルギーの削減を図ることができる。
【0010】
更に、1組もしくは複数組のガイドローラが取着されたガイド本体部は、ガイド連結軸により、台部に回転可能に連結されているので、軌道の転換時に可動桁間に角折れ変位が生じた場合でも、ガイド連結軸を介して、ガイド本体部と台部とを相対回転させることができ、その結果、ガイドローラの負担を軽減できるという効果がある。よって、その分、ガイドローラの耐久性の向上を図ることができる。また、ガイドローラの材質として低強度のものを選択することが可能になると共にガイドローラを小型化することが可能となり、製品コストの削減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施の形態における分岐装置100の上面図であり、(a)は基準進路が形成された状態を、(b)は分岐進路が形成された状態を、それぞれ図示する。
【図2】(a)は分岐装置の部分拡大上面図であり、(b)は分岐装置の部分拡大側面図である。
【図3】分岐装置の部分拡大上面図である。
【図4】ガイドレールの配置を模式的に図示した模式図である。
【図5】分岐装置の部分拡大側面図である。
【図6】図5のVI−VI線における分岐装置の断面図である。
【図7】ガイド部の上面視を模式的に図示した模式図である。
【図8】図6のVIII−VIII線における連結機構の断面図である。
【図9】分岐装置の部分拡大上面図である。
【図10】弾性支承として構成される支承機構の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好ましい実施の形態について添付図面を参照して説明する。まず、図1を参照して、分岐装置100の全体構成について説明する。図1は本発明の一実施の形態における分岐装置100の上面図であり、図1(a)では可動桁10a〜13fの基準位置への配置により基準進路が形成された状態が、図1(b)では可動桁10a〜13fの分岐位置への配置により分岐進路が形成された状態が、それぞれ図示されている。なお、図1では、架台30a〜30f及び各レール31a〜31f,32a〜32f等の図示が省略されている。
【0013】
図1に示すように、分岐装置100は、上り線側固定桁A1,A2及び下り線側固定桁B1,B2の間に配置され、上り線側固定桁A1及び下り線側固定桁B1に接続される可動桁10a〜10f,11a〜11fと、上り線側固定桁A2及び下り線側固定桁B2に接続される可動桁12a〜12f,13a〜13fとが軌道長さ方向(図1(a)左右方向)に対向して配置されることで、車両(図示せず)の走行進路を形成する。
【0014】
即ち、基準進路が形成された状態では、図1(a)に示すように、上り線側固定桁A1,A2及び可動桁10a〜10f,12a〜12fにより上り線が形成されると共に、下り線側固定桁B1,B2及び可動桁11a〜11f,13a〜13fにより下り線が上り線と並列に形成される。
【0015】
これら可動桁10a〜10f等は、後述するように、台車装置20a〜20f(図2(b)参照)に搭載されており、台車装置20a〜20fがガイドレール32a〜32f等(図3参照)に沿って移動することで、図1(b)に示すように、分岐位置に配置され、互いの上下異なる線同士が接続される曲線区間としての分岐進路を形成する。一方、可動桁10a〜10f等は、図1(b)に示す状態から、台車装置20a〜20f等がガイドレール32a〜32f等に沿って逆方向へ移動することで、図1(a)に示すように、基準位置に配置され、互いの上り線同士および下り線同士が接続される直線区間としての基準進路を形成する。
【0016】
次いで、図2を参照して、分岐装置100の詳細構成について説明する。図2(a)は分岐装置100の部分拡大上面図であり、図2(b)は分岐装置100の部分拡大側面図である。なお、可動桁10a〜10f,11a〜11fと可動桁12a〜12f,13a〜13fとは、上り線側固定桁A1,A2及び下り線側固定桁B1,B2間に設置される際の設置方向が異なるのみで、他の構成はいずれも同じであるので、以下においては、可動桁10a〜10f,11a〜11fについてのみ説明し、可動桁12a〜12f,13a〜13fについての説明は省略する。また、可動桁11a〜11fが搭載される台車装置についても、可動桁10a〜10fが搭載される台車装置20a〜20fと同じ構成であるので、以下において、その説明は省略する。
【0017】
図2に示すように、分岐装置100は、可動桁10a〜10f,11a〜11fの相対向する端部を支持する台車装置20a〜20e及び可動桁10f,11fの後端側端部を支持する後端側台車装置20fと、それら台車装置20a〜20e及び後端側台車装置20fが移動するための軌道が形成される架台30a〜30fと、を備え、台車装置20a〜20e及び後端側台車装置20fが移動することで、車両の走行進路を基準進路と分岐進路とに切り替える。
【0018】
次いで、図3を参照して、架台30a〜30fについて説明する。図3は、分岐装置100の部分拡大上面図であり、可動桁10d,10e及び可動桁11d,11eの相対向する端部の図示が部分的に省略されている。なお、図3は、図1(a)の状態(即ち、可動桁10a〜10f,11a〜11fの基準位置への配置により基準進路が形成された状態)に対応する。
【0019】
また、架台30a〜30fは、軌道の長さ及び半径(台車レール31a〜31f,33a〜33f及びガイドレール32a〜32f,34a〜34fのレール長さ及び半径)が異なるのみで、他の構成はいずれも同じであるので、以下においては、架台30dを代表例として説明し、架台30a〜30c,30e,30fについての説明は省略する。
【0020】
図3に示すように、分岐装置100の下面側であって、可動桁10d,10e及び可動桁11d,11eの相対向する端部の下面側には、台車装置20d(図2(b)参照)が移動するための軌道を形成するための架台30dが配設されている。架台30dには、台車レール31d,33dとガイドレール32d,34dとがそれぞれ二本ずつ合計四本が敷設されている。
【0021】
台車レール31dは、可動桁10d,10eの相対向する端部が搭載される台車装置20dの車輪221(図5及び図6参照)が転動するレールであり、上面視において、上り線側固定桁A1及び下り線側固定桁B1側(図1参照)に曲率中心が位置し、上り線側固定桁A2及び下り線側固定桁B2側(図1参照)に凸となる円弧状に湾曲して形成されている。この台車レール31dにより、可動桁10d,10e及び台車装置20dの重量(垂直荷重)が支えられる。
【0022】
ガイドレール32dは、可動桁10dの長手方向(桁長さ方向、図3左右方向)への移動を規制すると共に、台車装置20dの移動を案内するためのレールであり、台車装置20dに配設された複数組(本実施の形態では2組)のガイドローラ231(図5及び図6参照)の外周面の間に狭持されている。このガイドレール32dは、上面視において、台車レール31dと同心の円弧状(即ち、上り線側固定桁A1及び下り線側固定桁B1側に曲率中心が位置し、上り線側固定桁A2及び下り線側固定桁B2側に凸となる円弧状)に湾曲して形成されている。このガイドレール32dにより、可動桁10dがその長手方向へ移動しようとする際の水平方向の荷重(水平荷重)が支えられると共に、台車装置20dの移動方向がガイドレール32dに沿う方向のみに規制される。
【0023】
台車レール33dは、可動桁11d,11eの相対向する端部が搭載される台車装置の車輪(図示せず)が転動するレールであり、台車レール31dと同様の円弧状に湾曲して形成され、可動桁11d,11e及びそれら可動桁11d,11eの相対向する端部が搭載される台車装置(図示せず)の重量(垂直荷重)を支える。
【0024】
ガイドレール34dは、可動桁11dの長手方向(桁長さ方向、図3左右方向)への移動を規制すると共に、可動桁11d,11eの相対向する端部が搭載される台車装置(図示せず)の移動を案内するためのレールであり、ガイドレール32dと同様に、一対のガイドローラの外周面の間に狭持されている。このガイドレール34dは、上面視において、台車レール33dと同心の円弧状に湾曲して形成されており、可動桁11dがその長手方向へ移動しようとする際の水平方向の荷重(水平荷重)を支えると共に、台車装置の移動方向を規制する。
【0025】
なお、ガイドレール32d及びガイドレール34dは同じ半径の円弧状に形成されると共に、基準進路形成時の桁長さ方向(図3左右方向)における曲率中心の位置が同じ位置に配置されている(図4参照)。一方、台車レール31dの半径は台車レール33dの半径よりも若干小さくされており、台車レール31d及び台車レール33dの架台30d上での重なりが防止されている。
【0026】
次いで、図4を参照して、ガイドレール32a〜32f,34a〜34fについて説明する。図4は、ガイドレール32a〜32f,34a〜34fの配置を模式的に図示した模式図であり、図1(a)の状態(即ち、可動桁10a〜10f,11a〜11fの基準位置への配置により基準進路が形成された状態)に対応する。なお、図4では、可動桁10a〜10f,11a〜11fの桁幅方向中央を通過する仮想線C1,C2が一点鎖線により図示されると共に、ガイドレール32a〜32f,34a〜34fを除く他の構成の図示が省略されている。
【0027】
分岐装置100は、その始端側に位置する可動桁10a,11aの始端側端部(より具体的には、後述する連結機構50)を固定支点とし、後端側に位置する可動桁10f,11fの後端側端部の移動が最大となる状態で移動されるので(図1(b)参照)、ガイドレール32a〜32f,34a〜34fのレール長さは、固定支点(即ち、上り線側固定桁A1及び下り線側固定桁B1)側に近いものほど短く、固定支点から遠いものほど長くされている。なお、台車レール31a〜31f,33a〜33f(図2参照)のレール長さも同様である。
【0028】
また、ガイドレール32a〜32f,34a〜34fの半径は、固定支点(即ち、上り線側固定桁A1及び下り線側固定桁B1)側に近いものほど小さく、固定支点から遠いものほど大きな半径とされている。即ち、ガイドレール32a,34aの半径が最小となり、固定支点から離れるものほど半径が順次大きくなり、ガイドレール32f,34fの半径が最大とされている。なお、台車レール31a〜31f,33a〜33f(図2参照)の半径も同様である。
【0029】
ここで、ガイドレール32a〜32fの曲率中心P1a〜P1fは、仮想線C1よりも隣接する可動桁11a〜11f側(即ち、仮想線C2側)に偏って位置し、ガイドレール34a〜34fの曲率中心P2a〜P2fは、仮想線C2よりも隣接する可動桁10a〜10f側(即ち、仮想線C1側)に偏って位置している。
【0030】
なお、可動桁10a〜10f,11a〜11fの桁長さはいずれも同じ長さであり、台車装置20a〜20eによる支持位置もそれぞれ同じ位置であるので、ガイドレール32a〜32e,34a〜34eの仮想線C1,C2方向における間隔は等間隔とされている。また、台車レール31a〜31f,33a〜33f(図3参照)は、上述した通りガイドレール32a〜32f,34a〜34fと同心であるので、それらの曲率中心は、曲率中心P1a〜P1f,P2a〜P2fとなる。
【0031】
次いで、図5を参照して、台車装置20a〜20eによる可動桁10a〜10fの支持構造について説明する。図5は、分岐装置100の部分拡大側面図であり、図1(a)の状態(即ち、可動桁10a〜10fの基準位置への配置により基準進路が形成された状態)に対応する。なお、可動桁10a〜10f、11a〜11fの台車装置20a〜20e等による支持構造はそれぞれ同じ構造であるので、以下においては、台車装置20dによる可動桁10d,10eの支持構造についてのみ説明し、他の支持構造についてはその説明を省略する。
【0032】
図5に示すように、可動桁10d,10eは、それらの相対向する端部の一方(上り線側固定桁A1側(図1参照)、図5左側)の端部が台車装置20dに固定されると共に、相対向する端部の他方(上り線側固定桁A2側(図1参照)、図5右側)が、台車装置20dに垂直軸L(図8参照)まわりに回転可能に連結されている。
【0033】
即ち、可動桁10a〜10fは、分岐装置100の後端側(図5右側)の端部(即ち、走行進路の切り替え時の移動量が大きな側)が台車装置20a〜20e及び後端側台車装置20fに固定される一方、分岐装置100の始端側(図5左側)の端部(即ち、走行進路の切り替え時の移動量が小さい側)が基礎部M及び台車装置20a〜20eに垂直軸Lまわりに回転可能に連結されている。
【0034】
次いで、図5から図8を参照して、台車装置20a〜20eの詳細構成について説明する。図6は、図5のVI−VI線における分岐装置100の断面図である。なお、上述したように、台車装置20a〜20eはいずれも同じ構成であるので、ここでは、台車装置20dについて説明し、他の台車装置20a〜20c,20eについてはその説明を省略する。
【0035】
図5及び図6に示すように、台車装置20dは、台部210と、その台部210の下面側に配設される一対の車輪保持部220と、それら一対の車輪保持部220に並設されつつ台部210の下面側に配設されるガイド部230とを備えている。
【0036】
台部210は、台車装置20dの骨格をなす部材であり、鉄鋼材料から平板状に形成されている。車輪保持部220は、台車装置20dを移動させる駆動部として機能すると共に、可動桁10d,10eの重量(垂直荷重)を支える支持部として機能する部位であり、複数(本実施の形態では2個)が、台部210の下面側であって、可動桁10dの桁幅方向(図6左右方向)一側および他側の端部に配設されている。
【0037】
車輪保持部220は、直列に配置される二輪の車輪221と、それら両車輪221を回転可能に軸支する保持部本体222と、その保持部本体222を揺動可能な状態で台部210に保持する保持部223と、二輪の車輪221の内の一方の車輪221に回転駆動力を付与する駆動装置224とを備えている。
【0038】
二輪の車輪221は、同径に形成されると共に、保持部本体222の一側(図6右側)と他側(図6左側)とにそれぞれ軸支され、転動方向(図6左右方向)に所定間隔を隔てて配置されている。なお、二輪の車輪221は、台車レール31dに沿って一列に配置されている。即ち、各車輪221の回転軸は、円弧状に湾曲した台車レール31d(図3参照)の法線方向に平行とされており、台車レール31d上を転動可能とされている。また、車輪221の両側にフランジは形成されていない。よって、車輪221は、台車レール31dのレール幅方向に移動(滑動)可能とされている。
【0039】
保持部本体222は、二輪の車輪221を軸支する両位置の中間点が、保持部223により揺動可能に軸支されており、これにより、一側の車輪221を台車レール31dに近接させる方向(図6時計まわり)及び他側の車輪221を台車レール31dに近接させる方向(図6反時計まわり)に揺動可能とされている。
【0040】
その結果、二輪の車輪221をそれぞれ台車レール31dに確実に接地させることができるので、車輪221と台車レール31dとの間の接地面のレベル管理を容易とすることができる。
【0041】
ここで、車輪221の数を多くする(例えば、保持部本体222に三輪以上を軸支した場合や台部210に三輪以上を直接軸支した場合など)と、台車装置20dの支持を安定して行えると共に各車輪221の分担荷重を軽減することができる一方で、車輪221と台車レール31dとの間の接地面のレベル管理が困難となる。この場合、本実施の形態では、二輪一組の車輪221を有する車輪保持部220を2個備え、それら各車輪保持部220が共に揺動可能とされているので、車輪221の数を多くした場合でも、接地面のレベル管理を容易とすることができる。即ち、台車装置20dの支持の安定化や各車輪221の分担荷重の軽減と、接地面のレベル管理の容易化との両立を図ることができる。
【0042】
駆動装置224は、電動モータや油圧モータなどの回転駆動アクチュエータであり、連結アーム225を介して、保持部本体222に連結固定されている。この駆動装置224は、複数(本実施の形態では2個)の車輪保持部220のそれぞれに配設されているので、駆動輪を複数(本実施の形態では合計二輪)とすることができる。よって、一方の駆動系統が故障した場合でも、他方の駆動系統により、台車装置20dの移動を確保することができるので、分岐装置100による車両の走行進路の切り替えを確実に行うことができる。
【0043】
この場合、各駆動輪は、それぞれ別の車輪保持部220に軸支されているので、車輪221と台車レール31dとの間の接地面のレベル精度が悪い場合であっても、駆動輪をそれぞれ台車レール31dに確実に接地させることができる。よって、駆動輪が複数設けられた場合に、各駆動輪の回転駆動力を台車レール31dへ確実に伝達させることができるので、その伝達効率の向上を図ることができる。
【0044】
なお、駆動装置224は、可動桁10dの桁幅方向(図6左右方向)外側に位置する車輪221に同軸に配設されており、かかる外側に位置する車輪221を駆動輪として回転駆動力を付与する。
【0045】
かかる駆動輪は、台部210の側面(図6左右側面)よりも外側に配置されているので、駆動装置224も台部210の側面よりも外側に配置することができるので、作業スペースを確保して、駆動装置224のメンテナンス作業性の向上を図ることができる。また、このように、一対の車輪保持部220の外側に位置する車輪221をそれぞれ駆動輪とすることで、台車装置20dをいずれの方向へ移動させる場合であっても、一方の駆動輪を、保持部223を介して、台部210を押す車輪とし、他方の駆動輪を、保持部223を介して、台部210を引っ張る車輪とすることができるので、全体として駆動力を安定して発揮させることができる。
【0046】
ガイド部230は、台車装置20dの移動方向を案内する案内部として機能すると共に、可動桁10dを走行する車両の制動などによって、可動桁10dにその長手方向(図5左右方向)への荷重が作用した場合に、その荷重(水平荷重)を支える支持部として機能する部位であり、台部210の下面側であって、車輪保持部220よりも分岐装置100の始端側(図5左側)となる位置において、可動桁10dの桁幅方向(図6左右方向)中央に配設されている。
【0047】
ここで、ガイド部230の説明においては、図5及び図6に加え、図7を適宜参照する。図7は、ガイド部230の上面視を模式的に図示した模式図である。なお、図7では、ガイド本体部232が二点鎖線により、台部210が破線により、それぞれ図示されると共に、台部210及びガイドレール32dの一部の図示が省略されている。
【0048】
ガイド部230は、ガイドレール32dを両側から挟む二輪一組のガイドローラ231と、それら各ガイドローラ231を回転可能に軸支するガイド本体部232と、そのガイド本体部232を回転可能な状態で台部210に軸支する支持軸233とを備えている。
【0049】
ガイドローラ231は、複数(本実施の形態では合計四輪)がそれぞれ同径に形成され、二輪一組が複数組(本実施の形態では2組)配設されている。
【0050】
即ち、ガイドローラ231は、各組が、図5及び図7に示すように、ガイドレール32dの両側面(図5及び図7右側面および左側面)に二輪の外周面を当接させつつ(又は、ガイドレール32dの両側面と二輪の外周面との間に所定の隙間を設けつつ)、両組が、図6及び図7に示すように、支持軸233の回転軸01から等距離となる位置に間隔を隔てて配設されている。
【0051】
このように、ガイドローラ231は、複数組がガイド本体部232に取着されているので、可動桁10dから台部210に水平荷重が作用した場合に分担する水平荷重を複数組のガイドローラ231のそれぞれに分散して、その負担を軽減できる。よって、その分、ガイドローラ231自体やその軸部などの材質として低強度のものを選択することが可能になる。
【0052】
また、ガイドレール32dは、図5に示すように、台車レール31dとの間に所定間隔を隔てつつ並設されているため、ガイドローラ231の大型化(大径化)は、ガイドレール32dと台車レール31dとの間(図5左右方向)に形成されるスペースを狭くすることに繋がり、このスペース内でメンテナンス作業などを行う際の作業者の作業性の悪化を招く。これに対し、本実施の形態のように、複数組のガイドローラ231を設ける構成とすることで、各ガイドローラ231を小型化(小径化)できるので、その分、ガイドレール32dと台車レール31dとの間のスペースを拡大して、上記作業性の向上を図ることができる。また、ガイドローラ231を複数組としても、これらは、図6及び図7に示すように、ガイドレール32dに沿って配設されるので、ガイドレール32dと台車レール31dとの間のスペースが狭くなることを回避できる。
【0053】
各ガイドローラ231の回転軸02及び支持軸233の回転軸01は、台車装置20dの移動平面に対して垂直方向(図5及び図6上下方向)を向いており、台車装置20dが移動する場合には、ガイドレール32dの側面上を両ガイドローラ231が転動されると共に、その転動により台車装置20dがガイドレール32dに沿って案内される。
【0054】
なお、ガイドローラ231の外周面は、軸方向(図5及び図6上下方向)に沿って同径の平坦面として形成されると共に、ガイドレール32dの両側面(ガイドローラ231の転動面)は、ガイドローラ231の軸方向と平行な平坦面として形成されている。よって、ガイドローラ231は、ガイドレール32dのレール高さ方向(図5及び図6上下方向)に移動可能とされている。
【0055】
このように、台車装置20dの台部210には、ガイド部230が、車輪保持部220とは別設されているので、可動桁10dから台部210に水平荷重(例えば、図5左右方向荷重)が作用した場合には、ガイド部230のガイドローラ231がガイドレール32dの側面に係合することで、その水平荷重を支えることができる。
【0056】
よって、車輪221にフランジを設けることを不要とできるので、フランジが台車レール31dに対してこじれた状態とならず、車輪221をスムーズに回転させることができる。従って、車輪221の耐久性を向上させることができると共に、駆動装置224を小型化して、消費エネルギーの削減を図ることができる。
【0057】
この場合、図5から図7に示すように、ガイド本体部232は、下面側に複数組のガイドローラ231が回転軸02を回転中心として回転可能に軸支される一方で、上面側が、回転軸01を回転中心として支持軸233により、台部210に回転可能に連結されている。これにより、台部210は、ガイド部230がガイドレール32dのレール長さ方向におけるいずれの位置にある場合であっても、また、複数組のガイドローラ231をガイド本体部232に設けた場合であっても、ガイド部230に対して、回転軸01を回転中心として、正逆両方向(図7時計回り又は反時計回り)に回転できる。
【0058】
よって、軌道の転換時、台車装置20dの移動に伴い、可動桁10d,10e間に角折れ変位が生じた場合でも、支持軸233を介して、ガイド本体部232と台部210とを相対回転させることができる(即ち、図7に示すように、ガイドレール32dに係合するガイドローラ231及びそれを支持するガイド本体部232に対して、台部210を、回転軸01を回転中心として回転させることができる)ので、ガイド部230(即ち、ガイドローラ231自体、それをガイド本体部232に軸支する軸部、或いは、ガイド本体部232や支持軸233)の負担を軽減できる。
【0059】
よって、その分、ガイド部230における各部の耐久性の向上を図ることができる。また、ガイド部230の各部(例えば、ガイドローラ231)の材質として低強度のものを選択することが可能になると共に、ガイド部230を小型化(例えば、ガイドローラ231を小径化)することが可能となり、製品コストの削減を図ることができる。
【0060】
次いで、台車装置20dと可動桁10d,10eとの連結構造について説明する。台車装置20dには、可動桁10dの後端側(図5右側)が連結固定部10d1を介して固定される一方、可動桁10eの始端側(図5左側)が連結機構50及び支承機構60を介して回転可能に連結されている。これにより、隣り合う可動桁10d,10e同士が、相対回転可能かつ長手方向(図5左右方向)に相対移動可能に連結される。
【0061】
図5及び図6に示すように、連結機構50は、台車装置20dに可動桁10eを垂直軸L(図8参照)まわりに回転可能に連結する部位であり、台車装置20dの上面側に固着され可動桁10eへ向けて垂設される連結軸部51と、可動桁10eの下面側に固着され連結軸部51が回転可能かつ直進移動可能に貫装される軸保持部52とを備える。
【0062】
なお、連結固定部10d1は、図6に示すように、桁幅方向両側に一対が所定間隔を隔てつつ対向して配設されており、これら一対の連結固定部10d1により、可動桁10dが台車装置20dに固定されると共に、図5に示すように、一対の連結固定部10d1の対向面間に、連結機構50の半分(図5左側部分)が入り込んでいる。また、各可動桁10a〜10c,10e,10fにおける連結固定部は、可動桁10dにおける連結固定部10d1と同様の構成であるので、その説明は省略する。
【0063】
ここで、図8を参照して、連結機構50の詳細構成について説明する。図8は、図6のVIII−VIII線における連結機構50の断面図である。連結軸部51は、台車装置20dの移動平面に対して垂直な垂直軸Lを有する断面円形の円柱状体として形成されている。軸保持部52は、可動桁10eの長手方向(図8上下方向)に延設されるスライド溝52aを備えており、このスライド溝52aに連結軸部51が貫装されている。なお、連結軸部51と軸保持部52との間には、一対のスライドプレート53が介設されている。
【0064】
一対のスライドプレート53は、その対向面が互いに平行に形成されると共に対向面間隔が連結軸部51の外径とほぼ等しい寸法に設定されており、連結軸部51を、回転可能かつ可動桁10eの長手方向(図8上下方向)のみへ直進移動可能に保持する。これにより、可動桁10eが台車装置20dに対して、垂直軸Lまわりに相対的に回転可能かつ可動桁10eの長手方向に沿って相対的に前進後退(図8矢印F,B方向へ移動)可能に、連結される。
【0065】
図5及び図6に戻って説明する。このように構成された連結機構50を介して、可動桁10eが台車装置20dに連結されているので、台車装置20dを桁幅方向(図6左右方向)へ移動させる場合には、かかる台車装置20dの移動を、連結軸部51を介して軸保持部52に伝達することができ、その結果、連結機構50を関節として、可動桁10eと可動桁10dとを相対的に角折れ変位(傾斜)させつつ、可動桁10eを桁幅方向へ移動させることができる。
【0066】
また、外気温度の影響により、可動桁20eの長手方向(図5左右方向)長さが収縮または伸張する場合でも、連結軸部51が軸保持部52に対してスライド溝52aに沿って相対移動することで、可動桁10eの長手方向長さの収縮または伸長を吸収することができる。これにより、連結機構50や台車装置20dのガイド部230に過大な水平荷重が作用することを抑制して、その耐久性の向上を図ることができる。また、分岐装置100全体として、複数の可動桁10a〜10fの収縮または伸張が累積せず、一桁分の収縮または伸張のみが発生する構成とすることができるので、その分、最後端可動桁(可動桁10f,11f及び可動桁12f,13f)同士の間における遊間を小さく設定することができる。その結果、車両が走行する際の段差を小さくすることができるので、段差通過時の車両の衝撃を抑制して、車両のスムーズな走行を達成することができる。
【0067】
なお、このように、可動桁10eが台車装置20dに対して連結機構50を介して連結される構成では、軌道の転換時に、台車装置20dの移動が他の台車装置と進行方向前後にばらつき易く、可動桁間の角折れ変位が大きくなるため、ガイド部230の負担が大きくなる。よって、本実施の形態のように、ガイド本体部232と台部210とが相対回転可能に連結する上述した構成が特に有効となり、これにより、温度変化による各可動桁の伸縮の影響を抑制する効果と、ガイド部230の負担を軽減する効果との両立を図ることができる。
【0068】
支承機構60は、台車装置20dに対して可動桁10eを水平方向に移動可能に支持する部位であり、可動桁10eの桁幅方向(図6左右方向)両側であって、連結機構50よりも分岐装置100の後端側(図5右側)となる位置において、台車装置20dの上面側と可動桁10eの下面側との対向面間に介設されている。
【0069】
なお、支承機構60の一部は、ゴム状弾性体から構成されるゴム基体と、そのゴム基体に埋設されると共に所定間隔を隔てつつ積層される金属性の積層板とにより構成される。よって、ゴム基体の弾性特性により、支承機構60は、圧縮引張方向(図5及び図6上下方向)やせん断方向(図5及び図6左右方向)だけでなく、曲げ方向(台車装置20dの上面側と可動桁10eの下面側との対向面間が平行な状態から非平行な状態となる方向)にも弾性変形することができ、これにより、可動桁10eと台車装置20dとの間の間隔(図5及び図6上下方向寸法)を変化させることができる。
【0070】
よって、車両通過時に、桁たわみ(曲げ変形)が生じた場合には、その桁たわみを、支承機構60におけるゴム基体の弾性変形により、吸収することができ、その結果、ガイド部230の負担を軽減できる。よって、その分、ガイド部230における各部の耐久性の向上を図ることができる。また、ガイド部230の各部の材質として低強度のものを選択することが可能になると共に、ガイド部230を小型化することが可能となり、製品コストの削減を図ることができる。
【0071】
また、ゴム基体の内部に複数の積層板が積層された状態で埋設されているので、支承機構の変形性を発揮させつつ、その剛性を確保することができる。よって、ゴム基体の弾性変形により、可動桁10eと台車装置20dとの間の間隔を変化可能としつつ、可動桁10eからの垂直荷重を支持すると共に、台車装置20dに対する可動桁10eの水平方向への移動を安定して行わせることができる。
【0072】
なお、分岐装置100の始端側に位置する可動桁10a,11aの始端側端部は、上述した連結機構50及び支承機構60を介して、上り線側固定桁A1及び下り線固定桁B1を支持する基礎部Mに垂直軸Lまわりに回転可能に連結されている(図2(b)参照)。即ち、基礎部Mの上面に連結軸部51が固定されると共に、その連結軸部51が貫装される軸保持部52が可動桁10a,11aの下面側に固定されている(図示せず)。
【0073】
また、分岐装置100の後端側に位置する可動桁10f,11fの後端側端部は、後端側台車装置20fに支持されている(図2(b)参照)。後端側台車装置20fは、上述した台車装置20a〜20eに対して、台部が台部210よりも小さく形成されると共に、連結機構50及び支承機構60が省略されている点が異なるのみで、他の構成は同様であるので、その説明は省略する。
【0074】
次いで、図9を参照して、基準進路の形成時と分岐進路の形成時とにおける軌道長さの変化について説明する。図9は、分岐装置100の部分拡大上面図であり、図9(a)及び図9(b)は、図1(a)及び図1(b)にそれぞれ対応する。なお、上述したように、可動桁10a〜10f,11a〜11fと可動桁12a〜12f,13a〜13fとは、設置方向が異なる以外は同じ構成であるので、可動桁10a〜10f,11a〜11fについてのみ説明し、可動桁12a〜12f,13a〜13fについての説明は省略する。
【0075】
分岐装置100は、図9(a)に示すように、基準進路の形成時において、可動桁10a〜10f,11a〜11fの間の遊間がt1に設定されると共に、可動桁10f,11fと可動桁12f,13fとの間の遊間がt2に設定されている。
【0076】
この場合、分岐装置100は、可動桁10a〜10f,11a〜11fの一方の端部が台車装置20a〜20eに連結機構50を介して回転可能かつ長手方向に相対移動可能に連結され(図5参照)、ガイドレール32a〜32f,34a〜34fは、固定支点(上り線側固定桁A1及び下り線固定桁B1)側に曲率中心P1a〜P1f,P2a〜P2fが位置すると共に固定支点から遠いものほど半径が大きな円弧状に形成され、かつ、曲率中心P1a〜P1f,P2a〜P2fが桁幅方向中央よりも一方側に偏って(即ち、上り線側のガイドレール32a〜32fの曲率中心P1a〜P1fは仮想線C1よりも下り線側に偏って、下り線側のガイドレール34a〜34fの曲率中心P2a〜P2fは仮想線C2よりも上り線側に偏って)位置している(図4参照)。
【0077】
よって、図9(a)に示す直線区間としての基準進路が形成された状態から、台車装置20a〜20e及び後端側台車装置20fがガイドレール32a〜32f,34a〜34fに沿って移動し、図9(b)に示す曲線区間としての分岐進路が形成されると、可動桁10a〜10fについては、それら可動桁10a〜10fの間の遊間がt1よりも大きなt3に拡大され(t1<t3)、軌道長さ(可動桁10a〜10fの全長)を長くすることができる。
【0078】
即ち、図9(b)に示すように、直線区間から曲線区間への転換に伴い、軌道全長を長くする必要がある場合には、その延長分を可動桁10a〜10fの間の遊間を拡大することで補うことができる。一方、図9(a)に示すように、曲線区間から直線区間への転換に伴い、軌道全長を短くする必要がある場合には、その短縮分を可動桁10a〜10fの間の遊間を縮小することで吸収することができる。その結果、分岐装置100を配置する際の制約を抑制することができるので、その分、分岐装置100の配置自由度の拡大を図ることができる。
【0079】
なお、可動桁11a〜11fについては、それら可動桁11a〜11fの間の遊間がt1よりも小さなt4a〜t4eに縮小され(t4a〜t4e<t1)、軌道長さ(可動桁11a〜11fの全長)が短くされる。
【0080】
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
【0081】
上記各実施の形態で挙げた数値は一例であり、他の数値を採用することは当然可能である。例えば、上記実施の形態では、分岐装置100が6個の可動桁10a〜10fを備える場合を説明したが、かかる可動桁の個数は、5個以下であっても良く、7個以上であっても良い。同様に、車輪221やガイドローラ231についても任意の個数を設定することができる。
【0082】
上記実施の形態では、連結軸部51を基礎部M及び台車装置20a〜20eに固定すると共に軸保持部52を可動桁10a〜10fに固定して連結機構50を構成する場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、上下を反転して構成することは当然可能である。即ち、連結軸部51を可動桁10a〜10fの下面に固定すると共にその連結軸部51が貫装されるように軸保持部52を基礎部M及び台車装置20a〜20eの上面に固定して連結機構50を構成しても良い。
【0083】
上記実施の形態では、台車装置20a〜20e及び後端側台車装置20fが、台車レール31a〜31f等の上面を転動する車輪221と、ガイドレール32a〜32f等の両側面を転動するガイドローラ231とを備える場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、台車レール31a〜31f等およびガイドローラ231を省略すると共に、車輪221に水平荷重を支えるためのフランジを設け、かかるフランジ付きの車輪221がガイドレール32a〜32f等の上面を転動する構成としても良い。即ち、請求項1記載の「ガイドレールに沿って移動する台車装置」とは、ガイドレールの両側面を一対のガイドローラが転動することで、台車装置がガイドレールに案内される構成と、フランジ付きの車輪がガイドレールの上面を転動することで、台車装置がガイドレールに案内される構成との両者を含む趣旨である。
【0084】
上記実施の形態では、可動桁10a〜10fと可動桁13a〜13fとが接続されて分岐進路を形成する場合のみを説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、可動桁11a〜11fと可動桁12a〜12fとが接続されて分岐進路を形成することは当然可能である。
【0085】
また、可動桁10a〜10f,11a〜11f及び可動桁12a〜12f,13a〜13fを対向配置し、互いの上下同じ線同士が接続されるまたは異なる線同士が接続される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、可動桁10a〜10fのみを設け、その可動桁10a〜10fの最後端の可動桁10fが、第1の固定桁と第2の固定桁とに接続されるように、軌道を転換する構成であっても良い。
【0086】
上記実施の形態では、支承機構60が弾性変形可能に構成される、即ち、ゴム基体を備えて構成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、ゴム基体を省略して支承機構60を構成しても良い。即ち、弾性部に相当する部材全体を金属材料から構成し、この金属材料から構成される部材にスライド部を固定しても良い。
【0087】
また、支承機構60において、必ずしも滑り機構を備える必要はなく、弾性変形にて基礎部M及び台車装置20a〜20eに対する水平方向への可動桁10a〜13fの移動に対応させても良い。即ち、支承機構を弾性支承にて構成しても良い。ここで、この弾性支承の一例について図10を参照して説明する。なお、上記実施の形態と同一の部分には同一の符号を付して、その説明を省略する。図10は、弾性支承として構成される支承機構1060の断面図である。
【0088】
図10に示すように、支承機構1060は、台車装置20dの上面に固定される基部62と、その基部62の上面および可動桁10eの下面にそれぞれ固定される一対の連結板部1064と、それら一対の連結板部1064の間に固定される弾性部1063とを備え、弾性部1063の弾性変形によって、可動桁10eを台車装置20dに対して水平方向に移動可能に支持する。
【0089】
なお、弾性部1063は、ゴム状弾性体から円板状に形成される複数枚のゴム基体1063aと、金属材料から円板状に形成される複数枚の積層板1063bとを備え、これらゴム基体1063aと積層板1063bとが交互に積層されている。
【0090】
上記実施の形態では、ガイドレール32dの一方側および他方側にそれぞれ一輪ずつガイドローラ231を配設し、これら二輪のガイドローラ231でガイドレール32dを両側から挟む場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、合計三輪以上のガイドローラ231でガイドレール32dを両側から挟む構成とすることは当然可能である。例えば、ガイドレール32dの一方側に一輪のガイドローラ231を、ガイドレール32dの他方側に二輪のガイドローラ231を、それぞれ配設し、これら合計三輪のガイドローラ231でガイドレール32dを両側から挟む構成としても良い。
【符号の説明】
【0091】
100 分岐装置
10a〜10f,11a〜11f 可動桁
12a〜12f,13a〜13f 可動桁
10a,11a,12a,13a 可動桁(最始端可動桁)
20a〜20e 台車装置
20f 後端側台車装置(台車装置の一部)
210 台部
221 車輪
224 駆動装置
230 ガイド部
231 ガイドローラ
232 ガイド本体部
233 ガイド連結軸
31a〜31f,33a〜33f 台車レール
32a〜32f,34a〜34f ガイドレール
50 連結機構(連結部材)
A1,A2 上り線側固定桁(始端側固定桁の一部)
B1,B2 下り線側固定桁(始端側固定桁の一部)
P1a〜P1f,P2a〜P2f 曲率中心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に複数が並べられ車両の走行進路を形成する可動桁と、それら複数の可動桁の相対向する端部が搭載されると共に敷設されたガイドレールに沿って移動する台車装置と、を備え、前記複数の可動桁の内の最始端可動桁が始端側固定桁に接続されると共に、前記台車装置が前記ガイドレールに沿って移動することで、前記車両の走行進路が切り替えられる分岐装置であって、
前記台車装置に前記可動桁の前記相対向する端部の少なくとも一方を回転可能かつ長手方向に相対移動可能に連結する連結部材を備え、
前記ガイドレールは、前記始端側固定桁側にそれぞれのガイドレールの曲率中心が別個に位置すると共に前記始端側固定桁から遠いものほど半径が大きな円弧状に形成され、かつ、前記曲率中心が桁幅方向中央よりも桁幅方向一方側に偏って位置することを特徴とする分岐装置。
【請求項2】
前記台車装置は、前記可動桁の相対向する端部が搭載される台部と、その台部を支持すると共に前記ガイドレールに沿って敷設された台車レールの上面を転動する車輪と、前記ガイドレールの両側面を転動する1組もしくは複数組のガイドローラと、それらガイドローラが取着されるガイド本体部と、そのガイド本体部を前記台部に回転可能に連結するガイド連結軸と、を備えていることを特徴とする分岐装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−107456(P2012−107456A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−258285(P2010−258285)
【出願日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(000004617)日本車輌製造株式会社 (722)
【出願人】(390021577)東海旅客鉄道株式会社 (413)