説明

分散型データ処理装置、これを用いた自律型移動ロボット及びデータ処理方法

【課題】データの再生時において、データ処理時間の相違に関わらず、データの同期性や整合性を保持できるようにする。
【解決手段】各データ処理系に配したバッファのデータを記憶するための記憶部を有しており、それらのうち、基準バッファへの読み出しがあるか否かを判定する読出し判定手段10bと、基準バッファへの読み出しがあると判定されれば、各バッファのデータへの書き込みを禁止する書込み禁止手段10cと、各バッファのデータへの書き込みを禁止しているときに、対応する各バッファのデータどうしを関連付けて記憶部に記憶するバッファデータ記憶手段10dと、関連付けられたデータの記憶部への記憶が終了したか否かを判定する記憶終了判定手段10eと、関連付けられたデータの記憶部への記憶が終了したと判定されたときには、各バッファのデータへの書き込みの禁止を解除する書込み禁止解除手段10fとを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分散型データ処理装置、これを用いた自律型移動ロボット及びデータ処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、分散型実時間連続メディア処理装置とした名称において、特許文献1に開示された構成のものがある。
上記特許文献1に開示された分散型実時間連続メディア処理装置は、ネットワークを介した広域分散環境において、広域デジタル通信網からのフレーム同期ビットのタイミングに基づいてフレーミングクロックを抽出する機能と、このフレーミングクロックを所望の周波数になるように分周又は逓倍した基準クロックを生成し供給する機能とを持つ基準クロック供給手段と、供給された上記基準クロックをカウントする整数値カウンタを保持し、時間軸情報が保存されリンクから到着するパケットに対して、パケット入力時の上記整数値カウンタの値をタイムスタンプとしてそのパケットに付与して出力する機能を持つ時刻保存手段とを有するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3278794号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に開示された分散型実時間連続メディア処理装置は、データ再生時に、各データ処理部のデータ処理時間の揺らぎによる同期性や整合性に破綻が生じる虞がある。
【0005】
そこで本発明は、データの再生時において、データ処理時間の相違に関わらず、データの同期性や整合性を保持することができる分散型データ処理装置、これを用いた自律型移動ロボット及びデータ処理方法の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明に係る分散型データ処理装置は、複数のデータ処理系のそれぞれにバッファを配しているとともに、各バッファのデータを記憶するための記憶部を有する分散型データ処理装置であって、複数のデータ処理系のそれぞれに配したバッファのうち、基準とするバッファへの読み出しがあるか否かを判定する読出し判定手段と、基準とするバッファへの読み出しがあると判定されれば、各バッファのデータへの書き込みを禁止する書込み禁止手段と、各バッファのデータへの書き込みを禁止しているときに、基準とするバッファにある一のデータと、これに対応する他のバッファのデータとを関連付けて記憶部に記憶するデータ記憶手段と、関連付けられたデータの記憶部への記憶が終了したか否かを判定する記憶終了判定手段と、関連付けられたデータの記憶部への記憶が終了したと判定されたときには、各バッファのデータへの書き込みの禁止を解除する書込み禁止解除手段とを有することを特徴としている。
【0007】
同上の目的を達成するための本発明に係る自律型移動ロボットは、複数のデータ処理系のそれぞれにバッファを配しているとともに、各バッファのデータを記憶するための記憶部を有する自律型移動ロボットであって、複数のデータ処理系のそれぞれに配したバッファのうち、基準とするバッファへの読み出しがあるか否かを判定する読出し判定手段と、基準とするバッファへの読み出しがあると判定されれば、各バッファのデータへの書き込みを禁止する書込み禁止手段と、各バッファのデータへの書き込みを禁止しているときに、基準とするバッファにある一のデータと、これに対応する他のバッファのデータとを関連付けて記憶部に記憶するバッファデータ記憶手段と、関連付けられたデータの記憶部への記憶が終了したか否かを判定する記憶終了判定手段と、関連付けられたデータの記憶部への記憶が終了したと判定されたときには、各バッファのデータへの書き込みの禁止を解除する書込み禁止解除手段とを各データ処理部に配している。
【0008】
同上の目的を達成するための本発明に係るデータ処理方法は、複数のデータ処理系のそれぞれにバッファを配しているとともに、各バッファのデータを記憶するための記憶部を有する分散型データ処理装置において、複数のデータ処理系のそれぞれに配したバッファのうち、基準とするバッファへの読み出しがあるか否かを判定する読出しステップと、基準とするバッファへの読み出しがあると判定されれば、各バッファのデータへの書き込みを禁止する書込みステップと、各バッファのデータへの書き込みを禁止しているときに、基準とするバッファにある一のデータと、これに対応する他のバッファのデータとを関連付けて記憶部に記憶するデータ記憶ステップと、関連付けられたデータの記憶部への記憶が終了したか否かを判定する記憶終了判定ステップと、関連付けられたデータの記憶部への記憶が終了したと判定されたときには、各バッファのデータへの書き込みの禁止を解除する書込み禁止解除ステップとを有することを内容としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、データの再生時において、データの処理時間に関わらず、データの同期性や整合性を保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態に係る分散型データ処理装置を用いた自律型移動ロボットの概略構成を示す説明図である。
【図2】同上の自律型移動ロボットに設けた制御回路のブロック図である。
【図3】同上の自律型移動ロボットが有する機能をソフトウェアモジュールとして示すブロック図である。
【図4】(A)は、センサ動作モードにおけるバッファ内のデータの状態を模式的に示す説明図、(B)は、再生動作モードにおけるバッファ内のデータの状態を模式的に示す説明図である。
【図5】(A)は実センサ動作時の動作を示すフローチャート、(B)は、再生動作時の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る分散型データ処理装置を用いた自律型移動ロボットの概略構成を示す説明図、図2は、その自律型移動ロボットに設けた制御回路のブロック図である。また、図3は、その自律型移動ロボットが有する機能をソフトウェアモジュールとして示すブロック図である。
【0012】
本発明の一実施形態に係る分散型データ処理装置を用いた自律型移動ロボットAは、環境認識を行いながら自律して移動することができる機能を有するものであり、一般の乗用車両のハンドル/アクセル/ブレーキを、下記の車両制御コンピュータ40によって操作できるように、ステアリング用アクチュエータ5、ブレーキ/アクセル用アクチュエータ6を付加した自律走行車両である。
以下、「自律型移動ロボットA」を「自律走行車両A」という。
【0013】
すなわち、自律走行車両Aは、イーサネット(登録商標)7を介して互いに接続された車両位置/姿勢解析コンピュータ10、LRFデータ解析コンピュータ20、画像処理コンピュータ30及び車両制御コンピュータ40により、本車両全体の制御を行うようになっている。
【0014】
車両位置/姿勢解析コンピュータ10は、CPU(Central Processing Unit)やインターフェース回路(いずれも図示しない)等からなるものであり、これの入力側にはシリアル通信回路を介して、バーチカルジャイロ11、グローバルポジショニングシステム(以下、「GPS」と表記する。)12が接続されている。
【0015】
上記車両位置/姿勢解析コンピュータ10内にはメモリ13とハードディスク14が設けられており、そのメモリ13にはGPS12のデータ処理系に配したバッファ13aと、ジャイロ11のデータ処理系に配したバッファ13bとが領域形成されている。
【0016】
また、ハードディスク14には、各バッファ13a,13bのデータが記憶されるようになっている。本実施形態においては、ハードディスク14が、複数のデータ処理系のそれぞれに配したバッファのデータを記憶するための記憶部である。
【0017】
バッファ13aにあるデータは、シーケンシャルな読み出しが行われるとともに、バッファ13bにあるデータは、ランダムに読み出されるようになっている。
本実施形態においては、GPS12のデータ処理系に配したバッファ13aをデータ読み出しの基準としており、それを「基準とするバッファ」という。
【0018】
バーチカルジャイロ11は、光軸姿勢(向き)情報を取得するものであり、例えば姿勢角(ロール、ピッチ角度と角速度)、ヨー角速度、及びX,Y,Z3軸の加速度を出力するようになっている。
GPS12は、自律走行車両Aの座標情報(緯度経度情報)を取得するためのものである。
【0019】
上記した車両位置/姿勢解析コンピュータ10は、図3に示すように、GPSデータ取得ソフトウェアモジュール、ジャイロデータ取得ソフトウェアモジュール及び自己位置・姿勢解析ソフトウェアモジュールが組み込まれており、次の機能を発揮する。
<実センサ動作時>
実センサ動作時とは、GPS12,ジャイロ11からデータを取得して自律移動する動作状態をいい、センサ動作モードともいう。このセンサ動作モードにおいては、次の機能を有している。
【0020】
・一のデータ処理系に配した基準とするバッファに対してシーケンシャルな読み出しを行うとともに、他のデータ処理系に配したバッファに対してランダムな読み出しを行う機能。この機能を「読出し手段10a」という。
【0021】
本実施形態においては、GPS12のデータ処理系に配した基準とするバッファ13aに対してシーケンシャルな読み出しを行うとともに、バーチカルジャイロ11のデータ処理系に配したバッファ13bに対してランダムな読み出しを行うようにしている。
【0022】
さらに具体的には、バーチカルジャイロ11のバッファ13bにあるデータを読み出すとき、基準とするバッファ13aから読み出そうとするデータに付されたタイムスタンプに最も近いタイムスタンプを付されたデータを読み出すようにしている。
なお、他のバッファにあるデータにアクセスするとき、最も新しいデータにアクセスするようにしてもよい。
【0023】
・複数のデータ処理系のそれぞれに配したバッファのうち、シーケンシャルな読み出しを行う基準とするバッファへの読み出しがあるか否かを判定する機能。この機能を「読出し判定手段10b」という。
本実施形態においては、GPS12とバーチカルジャイロ11の各データ処理系のそれぞれに配したバッファ13a,13bのうち、シーケンシャルな読み出しを行う基準とするバッファ13aへの読み出しがあるか否かを判定している。
【0024】
・基準とするバッファへの読み出しがあると判定されれば、各バッファのデータへの書き込みを禁止する機能。この機能を「書込み禁止手段10c」という。
本実施形態においては、基準とするバッファ13aへの読み出しがあると判定されれば、そのバッファ13aとバッファ13bのデータへの書き込みをそれぞれ禁止している。
【0025】
・各バッファのデータへの書き込みを禁止しているときに、基準とするバッファにある一のデータと、これに対応する他のバッファのデータとを関連付けて(ハードディスク14)記憶部に順次記憶する機能。この機能を「バッファデータ記憶手段10d」という。
本実施形態においては、各バッファ13a,13bのデータへの書き込みを禁止しているときに、基準とするバッファ13aにある一のデータと、これに対応する他のバッファ13bのデータとを関連付けてハードディスク14に記憶している。
【0026】
さらに具体的には、基準とするバッファ13aにあるデータを読み出すとき、そのデータとこれに付されているタイムスタンプと、他のバッファ13bにあるデータのうち、最新のデータとこれに付されたタイムスタンプをハードディスク14に記憶している。
【0027】
・関連付けられたデータの記憶部への記憶が終了したか否かを判定する機能。この機能を「記憶終了判定手段10e」という。
本実施形態においては、バッファ13a,13bの互いに関連付けられたデータのハードディスク(記憶部)14への記憶が終了したか否かを判定している。
【0028】
・関連付けられたデータの記憶部への記憶が終了したと判定されたときには、各バッファへのデータの書き込みの禁止を解除する機能。この機能を「書込み禁止解除手段10f」という。
本実施形態においては、関連付けられたデータのハードディスク14への記憶が終了したと判定されたときには、各バッファ13a,13bのデータへの書き込みの禁止を解除している。
【0029】
<再生動作時>
再生動作時とは、センサ動作モードにおいて記憶部(ハードディスク14)に記憶保存したバッファ状態データを再生して、当該動作を再現する動作状態をいい、再生動作モードともいう。この再生動作モードにおいては、次の機能を有している。
【0030】
・関連付けられたデータを記憶部から順次取得する機能。この機能を「データ取得手段10g」という。
本実施形態においては、バッファ13a,13bの互いに関連付けられたデータをハードディスク14から順次取得している。
【0031】
・取得した関連付けられたデータの組み合わせか否かを判定する機能。この機能を「組み合わせ判定手段10h」という。
本実施形態においては、取得したバッファ13a,13bの互いに関連付けられたデータの組み合わせか否かを判定している。
【0032】
・取得した関連付けられたデータが所定の組み合わせではないと判定したときには、各バッファからのデータの読み出しを禁止する機能。この機能を「読出し禁止手段10i」という。
本実施形態においては、取得したバッファ13a,13bの互いに関連付けられたデータが所定の組み合わせではないと判定したときには、各バッファ13a,13bからのデータの読み出しを禁止している。
【0033】
・取得した関連付けられたデータが所定の組み合わせであると判定したときには、その取得した関連付けられたデータを読み出す機能。この機能を「データ読出し手段10j」という。
【0034】
LRFデータ解析コンピュータ20は、CPU(Central Processing Unit)やインターフェース回路(いずれも図示しない)等からなるものであり、これの入力側にはシリアル通信回路を介して、レーザーレンジファインダ(以下、「LRF」と表記する)21,22が接続されている。
【0035】
上記LRFデータ解析コンピュータ20内にはメモリ23とハードディスク24が設けられており、そのメモリ23にはLRF21のデータ処理系に配したバッファ23aと、LRF22のデータ処理系に配したバッファ23b、及び上記車両位置/姿勢解析コンピュータ10から送出された位置・姿勢データのデータ処理系に配したバッファ23cとが形成されている。
【0036】
また、ハードディスク24には、各バッファ23a〜23cから読み出されたデータが記憶されるようになっている。本実施形態においては、ハードディスク24が、複数のデータ処理系のそれぞれに配したバッファのデータを記憶するための記憶部である。
【0037】
バッファ23aにあるデータは、シーケンシャルな読み出しが行われるとともに、バッファ23b,23cにあるデータは、それぞれランダムに読み出されるようになっている。
本実施形態においては、LRF21のデータ処理系に配したバッファ23aを基準としており、以後、それを「基準とするバッファ」という。
【0038】
LRF21,22は、レーザ光の投光から受光までの時間を計測するタイムオブフライト方式により測距を行うものであり、本実施形態において示すものは、1つのレーザ光源を用い、光軸を光学的又は機械的に掃引することにより、物体の3次元的な形状を取得するスキャンタイプのものである。
本実施形態においては、一方のLRF21が遠距離用のものであり、他方のLRF22が近距離用のものであり、遠近を問わず移動領域をカバーできるようにしている。
【0039】
上記したLRFデータ解析コンピュータ20は、図3に示すように、二つのLRFデータ取得ソフトウェアモジュール、LRFデータ解析ソフトウェアモジュールが組み込まれており、上記した車両位置/姿勢解析コンピュータ10と同等の機能を発揮する。
【0040】
すなわち、LRFデータ解析コンピュータ20においては、LRF21のデータ処理系に配したバッファ23aと、LRF22のデータ処理系に配したバッファ23b、上記車両位置/姿勢解析コンピュータ10から送出された位置・姿勢データのデータ処理系に配したバッファ23cとを形成して、車両位置/姿勢解析コンピュータ10と同等のデータ処理を行っており、次の手段を有している。
【0041】
上記した読出し手段10a、読出し判定手段10b、書込み禁止手段10c、バッファデータ記憶手段10d、記憶終了判定手段10e、書込み禁止解除手段10f、データ取得手段10g、組み合わせ判定手段10h、読出し禁止手段10i及び及びデータ読出し10jにそれぞれ対応して、読出し手段20a、読出し判定手段20b、書込み禁止手段20c、バッファデータ記憶手段20d、記憶終了判定手段20e、書込み禁止解除手段20f、データ取得手段20g、組み合わせ判定手段20h、読出し禁止手段20i及びデータ読出し20jを有している。
【0042】
画像処理コンピュータ30は、CPU(Central Processing Unit)やインターフェース回路(いずれも図示しない)等からなるものであり、これの入力側にはシリアル通信回路又はパラレル通信回線を介して、移動領域の画像を取得するための3台のカメラ31〜33が接続されている。
【0043】
上記画像処理コンピュータ30内にはメモリ34とハードディスク35が設けられており、そのメモリ34にはカメラ31〜33及び車両位置/姿勢解析コンピュータ10の各データ処理系に配したバッファ34a〜34dが領域形成されている。
【0044】
また、ハードディスク35には、各バッファ34a〜34dのデータが記憶されるようになっている。本実施形態においては、ハードディスク35が、複数のデータ処理系のそれぞれに配したバッファのデータを記憶するための記憶部である。
【0045】
バッファ34aにあるデータは、シーケンシャルな読み出しが行われるとともに、バッファ34b〜34dにあるデータは、ランダムに読み出されるようになっている。
本実施形態においては、カメラ31のデータ処理系に配したバッファ34aを基準としており、以後、それを「基準とするバッファ」という。
【0046】
上記した画像処理コンピュータ30は、図3に示すように、三つの画像データ取得ソフトウェアモジュール、画像処理ソフトウェアモジュールが組み込まれており、上記した車両位置/姿勢解析コンピュータ10と同等の機能を発揮する。
【0047】
すなわち、画像処理コンピュータ30においては、カメラ31〜33の各データ処理系に配したバッファ34a〜34cと、上記車両位置/姿勢解析コンピュータ10から送出された位置・姿勢データのデータ処理系に配したバッファ34dとを形成して、車両位置/姿勢解析コンピュータ10と同等のデータ処理を行っており、次の手段を有している。
【0048】
上記した読出し手段10a、読出し判定手段10b、書込み禁止手段10c、バッファデータ記憶手段10d、記憶終了判定手段10e、書込み禁止解除手段10f、データ取得手段10g、組み合わせ判定手段10h、読出し禁止手段10i及びデータ読出し10jにそれぞれ対応して、読出し手段30a、読出し判定手段30b、書込み禁止手段30c、バッファデータ記憶手段30d、記憶終了判定手段30e、書込み禁止解除手段30f、データ取得手段30g、組み合わせ判定手段30h、読出し禁止手段30i及びデータ読出し30jを有している。
【0049】
車両制御コンピュータ40は、CPU(Central Processing Unit)やインターフェース回路(いずれも図示しない)等からなるものであり、これの出力側には、モータドライバ41を介してステアリング用アクチュエータ22と、ブレーキ/アクセル用アクチュエータ23とが接続されている。
【0050】
車両制御コンピュータ40内にはメモリ42とハードディスク43が設けられており、そのメモリ42に、画像処理コンピュータ30とLRFデータ解析コンピュータ20の各データ処理系に配したバッファ42a,42bが領域形成されている。
【0051】
また、ハードディスク43には、各バッファ42a,42bのデータが記憶されるようになっている。本実施形態においては、ハードディスク43が、複数のデータ処理系のそれぞれに配したバッファのデータを記憶するための記憶部である。
【0052】
バッファ42aにあるデータは、シーケンシャルな読み出しが行われるとともに、バッファ42bにあるデータは、ランダムに読み出されるようになっている。
本実施形態においては、LRFデータ解析コンピュータ20のデータ処理系に配したバッファ42aを基準としており、以後、それを「基準とするバッファ」という。
【0053】
上記した車両制御コンピュータ40は、図3に示すように、アクチュエータ制御ソフトウェアモジュールが組み込まれており、上記した車両位置/姿勢解析コンピュータ10と同等の機能を発揮する。
【0054】
すなわち、車両制御コンピュータ40においては、LRFデータ解析コンピュータ20から送出された中間データ(環境地図)のデータ処理系に配した基準とするバッファ42aに対してシーケンシャルアクセスを行うとともに、画像処理コンピュータ30から送出された中間データ(環境地図)のデータ処理系に配したバッファ42bとを形成して、車両位置/姿勢解析コンピュータ10と同等のデータ処理を行っており、次の手段を有している。
【0055】
上記した読出し手段10a、読出し判定手段10b、書込み禁止手段10c、バッファデータ記憶手段10d、記憶終了判定手段10e、書込み禁止解除手段10f、データ取得手段10g、組み合わせ判定手段10h、読出し禁止手段10i及びデータ読出し10jにそれぞれ対応して、読出し手段40a、読出し判定手段40b、書込み禁止手段40c、バッファデータ記憶手段40d、記憶終了判定手段40e、書込み禁止解除手段40f、データ取得手段40g、組み合わせ判定手段40h、読出し禁止手段40i及びデータ読出し40jを有している。
【0056】
次に、センサ動作モードと再生動作モードにおけるバッファ内のデータの状態について、図4(A),(B)を参照して説明する。図4(A)は、センサ動作モードにおけるバッファ内のデータの状態を模式的に示す説明図、(B)は、再生動作モードにおけるバッファ内のデータの状態を模式的に示す説明図である。
【0057】
なお、図中においては、バッファへの書込み手段を入力側データアクセッサ、上述した読出し手段を出力側データアクセッサと表記している。
また、上述したように、車両位置/姿勢解析コンピュータ10、LRFデータ解析コンピュータ20、画像処理コンピュータ30及び車両制御コンピュータ40のそれぞれにおいて、互いに同等のデータ処理を行っているので、以下には、LRFデータ解析コンピュータ20におけるデータ処理について説明し、他のコンピュータにおいてのデータ処理についての説明を省略する。
【0058】
<実センサ動作時(センサ動作モード)>
基準とするバッファ23aのデータを出力側から読み出すとき、その基準とするバッファ23aのデータのタイムスタンプと、そのときの他のバッファ23b,23cにあるデータの、それぞれ最も新しいタイムスタンプとこれを付されたデータをバッファ状態データとしてハードディスク24に記憶保存する。
【0059】
具体的には、データA(LRF21)についてはタイムスタンプt4のもの、データB(LRF22)についてはタイムスタンプt5のもの、データC(位置・姿勢データ)についてはタイムスタンプt3のものが、バッファ状態データとしてハードディスク24に記憶保存される。
【0060】
次に、出力側データアクセッサから、基準とするデータのタイムスタンプに応じて各バッファ23a〜23cに読み出しを行うが、その読み出しが終了するまでは、入力側からの各バッファ23a〜23cへのデータの書き込み挿入を禁止する。
【0061】
図においては、データA(LRF21)についてはタイムスタンプt5のもの、データB(LRF22)についてはタイムスタンプt6のもの、データC(位置・姿勢データ)についてはタイムスタンプt4のものが、バッファ23a〜23cへの書き込みが禁止される。
基準となるデータの読み出しがあった後、その他のバッファのデータを読み出す時間は、それぞれのデータの周期に比べて短いため、応答性の低下はほとんどない。
【0062】
<再生動作時(再生動作モード)>
図4(B)に示すように、再生動作時には、バッファデータ状態管理部は、実センサ動作時に記憶保存したバッファ状態データを読み出す。
出力側データアクセッサから、基準とするバッファ23aからのデータの読み出しがあったとき、その読み出しに係るデータのタイムスタンプを基にして、記憶保存されているその他のバッファ23b,23cのデータを読み出す。
具体的には、データAについてはタイムスタンプt4のもの、データBについてはタイムスタンプt6のもの、データCについてはタイムスタンプt2のものが読み出される。
以上の説明から明らかなように、実センサ動作時と再生動作時において、同じデータセットを用いた処理を行うことができる。
【0063】
上記の構成からなる自律型移動ロボットのデータ処理動作について、主に図5を参照して説明する。図5(A)は実センサ動作時の動作を示すフローチャート、(B)は、再生動作時の動作を示すフローチャートである。
【0064】
以下に示すデータ処理動作は、車両位置/姿勢解析コンピュータ10、LRFデータ解析コンピュータ20、画像処理コンピュータ30及び車両制御コンピュータ40のそれぞれに共通したものであるが、以下には、上記と同様にして、LRFデータ解析コンピュータ20におけるデータ処理について説明し、他のコンピュータにおけるデータ処理の説明を省略する。
【0065】
まず、分散型データ処理装置を用いたデータ処理方法は、複数のデータ処理系のそれぞれに配したバッファのうち、基準とするバッファへの読み出しがあるか否かを判定する読出しステップと、基準とするバッファへの読み出しがあると判定されれば、各バッファのデータへの書き込みを禁止する書込みステップと、各バッファのデータへの書き込みを禁止しているときに、基準とするバッファにある一のデータと、これに対応する他のバッファのデータとを関連付けて記憶部に記憶するデータ記憶ステップと、関連付けられたデータの記憶部への記憶が終了したか否かを判定する記憶終了判定ステップと、関連付けられたデータの記憶部への記憶が終了したと判定されたときには、各バッファのデータへの書き込みの禁止を解除する書込み禁止解除ステップと、関連付けられたデータを記憶部から順次取得するデータ取得ステップと、取得した関連付けられたデータの組み合わせか否かを判定する判定ステップと、取得した関連付けられたデータが所定の組み合わせではないと判定したときには、各バッファからのデータの読み出しを禁止する読出し禁止ステップと、取得した関連付けられたデータが所定の組み合わせであると判定したときには、その取得した関連付けられたデータを読み出すデータ読出しステップとを含むことを内容としており、具体的には次のとおりである。
【0066】
<実センサ動作時>
ステップ1:基準とするバッファ23aに対して、データの読み出しが発生したか否かを判定し、当該読み出しが発生していればステップ2に進む。なお、図5(A)においてはステップ1を「S1」と略記し、以下の各ステップについても同様に表記する。
【0067】
ステップ2:バッファ23a〜23cに対するデータの書き込みを禁止する。
ステップ3:各バッファ23a〜23c内の最新のタイムスタンプとこれを付されているデータをバッファ状態データとしてハードディスク24に記憶保存する。
【0068】
ステップ4:各バッファ23a〜23cからの読み出しが終了したか否かを判定し、当該読み出しが終了していれば、ステップ5に進む。
ステップ5:バッファ23a〜23cに対するデータの書き込みの禁止を解除する。
【0069】
<再生動作時>
ステップ1:バッファ23aに対して、データの読み出しが発生したか否かを判定し、当該読み出しが発生していればステップ2に進む。
なお、図5(B)においてはステップ1を「Sa1」と略記し、以下の各ステップについても同様に表記する。
【0070】
ステップ2:バッファ23aのデータAのタイムスタンプに対応するバッファ状態データをハードディスク24から取得する。
ステップ3:バッファ状態データが存在しないか否かを判定し、当該データが存在しないと判定したときにはステップ4に進み、そうでない場合にはステップ5に進む。
【0071】
ステップ4:バッファ23a〜23cからのデータの読み出しを禁止(ブロッキング)を行う。
ステップ5:バッファ状態データが存在するので、そのバッファ状態データをバッファ23a〜23cに書き込む。
【0072】
ステップ6:各バッファ23a〜23cからのデータの読み出しが終了か否かを判定し、終了したと判定されれば次のターンへ移行し、終了でなければステップ5に戻る。
【0073】
なお、本発明は上述した実施形態に限るものではなく、次のような変形実施が可能である。
・上述した実施形態においては、各データ処理部に記憶部を配設した例について説明したが、全てのデータ処理部に共通の記憶部を設けた構成であってもよい。
【0074】
・また、記憶部としていわば内蔵型のハードディスクを例として説明したが、RAМ等のメモリの他、フロッピィーディスク,コンパクトディスク,ディジタルビデオディスク,光磁気ディスク等であってもよい。また、記録形式も磁気的なものに限らず、それら情報記録媒体の記録構造に合わせたものを含む。
【符号の説明】
【0075】
10a,20a,30a,40a 読出し手段
10b,20b,30b,40b 読出し判定手段
10c,20c,30c,40c 書込み禁止手段
10d,20d,30d,40d バッファデータ記憶手段
10e,20e,30e,40e 記憶終了判定手段
10f,20f,30f,40f 書込み禁止解除手段
10g,20g,30g,40g データ取得手段
10h,20h,30h,40h 組み合わせ判定手段
10i,20i,30i,40i 読出し禁止手段
10j,20j,30j,40j データ読出し手段
13a,13b バッファ
14,24,35,43 記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のデータ処理系のそれぞれにバッファを配しているとともに、各バッファのデータを記憶するための記憶部を有する分散型データ処理装置であって、
複数のデータ処理系のそれぞれに配したバッファのうち、基準とするバッファへの読み出しがあるか否かを判定する読出し判定手段と、
基準とするバッファへの読み出しがあると判定されれば、各バッファのデータへの書き込みを禁止する書込み禁止手段と、
各バッファのデータへの書き込みを禁止しているときに、基準とするバッファにある一のデータと、これに対応する他のバッファのデータとを関連付けて記憶部に記憶するデータ記憶手段と、
関連付けられたデータの記憶部への記憶が終了したか否かを判定する記憶終了判定手段と、
関連付けられたデータの記憶部への記憶が終了したと判定されたときには、各バッファのデータへの書き込みの禁止を解除する書込み禁止解除手段とを有することを特徴とする分散型データ処理装置。
【請求項2】
複数のデータ処理系のそれぞれにバッファを配しているとともに、各バッファのデータを記憶するための記憶部を有しており、一のデータ処理系に配した基準とするバッファに対してシーケンシャルな読み出しを行うとともに、他のデータ処理系に配したバッファに対してランダムな読み出しを行う分散型データ処理装置であって、
複数のデータ処理系のそれぞれに配したバッファのうち、上記基準とするバッファへの読み出しがあるか否かを判定する読出し判定手段と、
基準とするバッファへの読み出しがあると判定されれば、各バッファのデータへの書き込みを禁止する書込み禁止手段と、
各バッファのデータへの書き込みを禁止しているときに、基準とするバッファにある一のデータと、これに対応する他のバッファのデータとを関連付けて記憶部に記憶するバッファデータ記憶手段と、
関連付けられたデータの記憶部への記憶が終了したか否かを判定する記憶終了判定手段と、
関連付けられたデータの記憶部への記憶が終了したと判定されたときには、各バッファのデータへの書き込みの禁止を解除する書込み禁止解除手段とを有することを特徴とする分散型データ処理装置。
【請求項3】
関連付けられたデータを記憶部から順次取得するデータ取得手段と、
取得した関連付けられたデータの組み合わせか否かを判定する組み合わせ判定手段と、
取得した関連付けられたデータが所定の組み合わせではないと判定したときには、各バッファからのデータの読み出しを禁止する読出し禁止手段と、
取得した関連付けられたデータが所定の組み合わせであると判定したときには、その取得した関連付けられたデータを読み出すデータ読出し手段とを有することを特徴とする請求項1又は2に記載の分散型データ処理装置。
【請求項4】
データ読出し手段は、他のバッファにあるデータを読み出すとき、基準とするバッファから読み出そうとするデータに付されたタイムスタンプに最も近いタイムスタンプを付されたデータを読み出すことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の分散型データ処理装置。
【請求項5】
データ読出し手段は、他のバッファにあるデータにアクセスするとき、最も新しいデータにアクセスすることを特徴とする1〜4のいずれか1項に記載の分散型データ処理装置。
【請求項6】
データ読出し手段によって基準とするバッファにあるデータを読み出すとき、そのデータとこれに付されているタイムスタンプと、他のバッファにあるデータのうち、最新のデータとこれに付されたタイムスタンプを記憶部に記憶するバッファデータ記憶手段を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の分散型データ処理装置。
【請求項7】
複数のデータ処理系のそれぞれにバッファを配しているとともに、各バッファのデータを記憶するための記憶部を有する自律型移動ロボットであって、
複数のデータ処理系のそれぞれに配したバッファのうち、基準とするバッファへの読み出しがあるか否かを判定する読出し判定手段と、
基準とするバッファへの読み出しがあると判定されれば、各バッファのデータへの書き込みを禁止する書込み禁止手段と、
各バッファのデータへの書き込みを禁止しているときに、基準とするバッファにある一のデータと、これに対応する他のバッファのデータとを関連付けて記憶部に記憶するバッファデータ記憶手段と、
関連付けられたデータの記憶部への記憶が終了したか否かを判定する記憶終了判定手段と、
関連付けられたデータの記憶部への記憶が終了したと判定されたときには、各バッファのデータへの書き込みの禁止を解除する書込み禁止解除手段とを各データ処理部に配していることを特徴とする自律型移動ロボット。
【請求項8】
複数のデータ処理系のそれぞれにバッファを配しているとともに、各バッファのデータを記憶するための記憶部を有しており、一のデータ処理系に配した基準とするバッファに対してシーケンシャルな読み出しを行うとともに、他のデータ処理系に配したバッファに対してランダムな読み出しを行う分散型データ処理部を有する自律型移動ロボットであって、
一のデータ処理系に配した基準とするバッファに対してシーケンシャルな読み出しを行うとともに、他のデータ処理系に配したバッファに対してランダムな読み出しを行う読出し手段と、
複数のデータ処理系のそれぞれに配したバッファのうち、シーケンシャルな読み出しを行う基準とするバッファへの読み出しがあるか否かを判定する読出し判定手段と、
基準とするバッファへの読み出しがあると判定されれば、各バッファのデータへの書き込みを禁止する書込み禁止手段と、
各バッファのデータへの書き込みを禁止しているときに、基準とするバッファにある一のデータと、これに対応する他のバッファのデータとを関連付けて記憶部に記憶するデータ記憶手段と、
関連付けられたデータの記憶部への記憶が終了したか否かを判定する記憶終了判定手段と、
関連付けられたデータの記憶部への記憶が終了したと判定されたときには、各バッファのデータへの書き込みの禁止を解除する書込み禁止解除手段とを各データ処理部に配していることを特徴とする自律型移動ロボット。
【請求項9】
関連付けられたデータを記憶部から順次取得するデータ取得手段と、
取得した関連付けられたデータの組み合わせか否かを判定する組み合わせ判定手段と、
取得した関連付けられたデータが所定のデータの組み合わせではないと判定したときには、各バッファからのデータの読み出しを禁止する読出し禁止手段と、
取得した関連付けられたデータが所定のデータの組み合わせであると判定したときには、その取得した関連付けられたデータを読み出すデータ読出し手段とを有することを特徴とする請求項7又は8に記載の自律型移動ロボット。
【請求項10】
複数のデータ処理系のそれぞれにバッファを配しているとともに、各バッファのデータを記憶するための記憶部を有する分散型データ処理装置を用いたデータ処理方法であって、
複数のデータ処理系のそれぞれに配したバッファのうち、基準とするバッファへの読み出しがあるか否かを判定する読出しステップと、
基準とするバッファへの読み出しがあると判定されれば、各バッファのデータへの書き込みを禁止する書込みステップと、
各バッファのデータへの書き込みを禁止しているときに、基準とするバッファにある一のデータと、これに対応する他のバッファのデータとを関連付けて記憶部に記憶するデータ記憶ステップと、
関連付けられたデータの記憶部への記憶が終了したか否かを判定する記憶終了判定ステップと、
関連付けられたデータの記憶部への記憶が終了したと判定されたときには、各バッファのデータへの書き込みの禁止を解除する書込み禁止解除ステップとを有することを特徴とする分散型データ処理装置を用いたデータ処理方法。
【請求項11】
関連付けられたデータを記憶部から順次取得するデータ取得ステップと、
取得した関連付けられたデータの組み合わせか否かを判定する判定ステップと、
取得した関連付けられたデータが所定の組み合わせではないと判定したときには、各バッファからのデータの読み出しを禁止する読出し禁止ステップと、
取得した関連付けられたデータが所定の組み合わせであると判定したときには、その取得した関連付けられたデータを読み出すデータ読出しステップとを有することを特徴とする請求項10に記載の分散型データ処理装置を用いたデータ処理方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2011−18116(P2011−18116A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−160844(P2009−160844)
【出願日】平成21年7月7日(2009.7.7)
【出願人】(500302552)株式会社IHIエアロスペース (298)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)