説明

分散染料

本発明は式(1)の分散染料に関する。
【化1】


ここで、X、YおよびZは、独立に、水素、ハロゲン、シアノ、ニトロまたはSOFであり; X、YおよびZの少なくとも1種がSOFであり;
は水素、メチル、ヒドロキシルまたはNHRであり;
は水素、クロロまたはメトキシであり;
は水素、(C−C)アルキルまたは−CH(CHCOOCHCNであり;
は水素、(C−C)アルキルまたは−CH(CHCOOCHCNであり;
は、−COCH、−COC、−SOCHまたはSOであり;
nとmは、独立に、0、1または2であり、
但し、YとZの両方がClである場合は、Rはメチル以外であり、
が水素で、RとRの両方がアルキルである場合は、Rは、NHSOCHまたはNHSOから選択される。
式(1)の分散染料は、ポリエステル繊維とポリエステル混合物に対して優れた洗濯堅牢度と光堅牢度を与える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な分散染料およびその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、分散染料は、合成繊維や、該合成繊維と他の繊維、例えばセルロース、ポリウレタン、ナイロン、ウールとの混合繊維を、通常の吸尽染色、連続染色、および印刷技術を用いて染色するために使用されている。
【0003】
国際公開第WO2008074719号の対応インド出願であり、名称が「分散染料混合物」であるインド特許出願第2162/KOLNP/2009は、合成繊維材料の彩色に用いる、アントラキノン染料またはベンゾジフラノン染料と分散アゾ染料との混合物を開示している。この特許は、所望の堅牢度を達成するための分散染料混合物について強調している。
【0004】
国際公開第WO950200014号の対応インド出願であるインド特許第IN190551号(1700/DEL/94)は、モノアゾ染料および合成繊維材料の彩色方法、彩色時の合成繊維、プラスチックの大量彩色方法、彩色時のプラスチック、ある種の新規アゾ染料、およびアゾ染料を含む組成物に関する。特許第IN190551号の分割出願であるIN197577号(935/DEL/2002)およびIN196765号(936/DEL/2002)もアゾ染料化合物の製造方法を教示している。
【0005】
近年、流行、ファッションおよび市場の要求の変化とともに、混合織物の消費が大きく増加している。これらの新しい織物は、細いデニールのポリエステル繊維を用いた、またはポリウレタン、ナイロン、およびウールとの混合繊維を用いた微細繊維から製造されている。これらの新しい彩色織物の堅牢度の中で、光堅牢度、昇華堅牢度、特に従来の分散染料を用いて染色または印刷した時の洗濯堅牢度が低下する。
【0006】
合成織物に分散染料を用いた場合の光堅牢度および洗濯堅牢度の限界を克服するために、本発明者らは、すべての堅牢度が優れ、特に洗濯堅牢度が優れたある種の分散染料を開発した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、分散アゾ染料を提供することである。
【0008】
本発明のさらなる目的は、ポリエステル繊維に対して優れた洗濯堅牢度を有する分散アゾ染料を提供することである。
【0009】
本発明の別の目的は、合成織物材料の彩色方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様として、以下の式の分散染料が提供される。
【0011】
【化1】

【0012】
ここで、X、YおよびZは、独立に、水素、ハロゲン、シアノ、ニトロまたはSOFであって、X、YおよびZの少なくとも1種がSOFであり;
は水素、メチル、ヒドロキシルまたはNHRであり;
は水素、クロロまたはメトキシであり;
は水素、(C−C)アルキルまたは−CH(CHCOOCHCNであり;
は水素、(C−C)アルキルまたは−CH(CHCOOCHCNであり;
は、−COCH、−COC、−SOCHまたはSOであり;
nとmは、独立に、0、1または2である。
但し、YとZの両方がClである場合は、Rはメチル以外であり、
が水素で、RとRの両方がアルキルである場合は、Rは、NHSOCHまたはNHSOから選択される。
【発明の効果】
【0013】
式(1)で規定される分散染料は、ポリエステル繊維に対して優れた洗濯堅牢度と光堅牢度を有する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
分散アゾ染料は、第一芳香族アミンのジアゾ化とそれに続く適切なカップリング化合物との結合により一般的に合成されている。
【0015】
本発明は、分散染料と、それら染料の繊維への適用方法に関する。
【0016】
分散染料は、ポリエステルや、該ポリエステルと他の繊維、例えばセルロース、ポリウレタン、ナイロン、ウールとの混合繊維を、通常の吸尽染色、連続染色、および印刷技術を用いて染色するために使用されている。近年、微細なデニールのポリエステル繊維の使用、またはポリエステル繊維、ナイロンおよびウールとの混合繊維の使用により、彩色繊維の堅牢度の中でも光堅牢度、昇華堅牢度、特に洗濯堅牢度が低下している。この染色分野および印刷分野において、この使用に耐えうる優れた染料が望まれている。
【0017】
これらの問題を解決するため、本発明者らは、式(1)で示される、優れた堅牢度を有する新規な分散アゾ染料を設計した。
【0018】
【化2】

【0019】
ここで、X、YおよびZは、独立に、水素、ハロゲン、シアノ、ニトロまたはSOFであって、X、YおよびZの少なくとも1種がSOFであり;
は水素、メチル、ヒドロキシルまたはNHRであり;
は水素、クロロまたはメトキシであり;
は水素、(C−C)アルキルまたは−CH(CHCOOCHCNであり;
は水素、(C−C)アルキルまたは−CH(CHCOOCHCNであり;
は、−COCH、−COC、−SOCHまたはSOであり;
nとmは、独立に、0、1または2である。
但し、YとZの両方がClである場合は、Rはメチル以外であり、
が水素で、RとRの両方がアルキルである場合は、Rは、NHSOCHまたはNHSOから選択される。
【0020】
適切な条件の下では、第一芳香族アミンはうまくジアゾ化され、特別に開発されたカップリング成分と結合して、式(1)の新規な分散染料が得られる。これらの新規な分散染料は、優れた洗濯堅牢度と光堅牢度を有する。
【0021】
本発明のある態様として、本発明の分散染料と、さらに彩色に通常使用される分散剤等の成分を少なくとも1種と、必要に応じて界面活性剤または湿潤剤を含む組成物を提供する。該染料組成物は、通常、全染料の10重量%〜65重量%、好ましくは20重量%〜50重量%を、単一化合物または混合物として固体状態で含む。
【0022】
好ましい分散剤は、リグニンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸/ホルムアルデヒド縮合物およびフェノール/クレゾール/スルファニル酸/ホルムアルデヒド縮合物である。湿潤剤の好ましい例は、スルホン化されていてもよくあるいはリン酸塩でもよいアルキルアリールエトキシレートであり、および含まれてもよい他の成分の代表的な例は、無機塩、鉱油またはノナノール等の脱泡剤、有機液体および緩衝剤である。分散剤は、染料混合物の80重量%〜400重量%存在してもよい。湿潤剤は、染料混合物の0.1重量%〜20重量%存在してもよい。
【0023】
本発明の分散染料または分散染料混合物は、適切な分散剤とともに、水系媒体中でガラスビーズまたは砂を用いて粉砕される。本発明の組成物は、分散剤、フィラーおよび他の界面活性剤をさらに含んでもよく、および噴霧乾燥等の技術により乾燥してもよく、それにより15重量%〜65重量%の染料を含む固体組成物が得られる。
【0024】
繊維材料を染色する場合、一般的な方法で染料は分散剤とともに水中で粉砕され、得られた染料は、液体状態で、あるいは液体を噴霧乾燥して得られる粉末の状態で染色または印刷のために使用される。得られた各染料は、本発明の染料の1種を含む、または2種以上の混合物を含む状態で、染色または印刷に使用される。
【0025】
吸尽染色では、ポリエステル繊維、複合繊維および混合繊維は、高温染色、キャリア染色および連続染色により染色され、優れた堅牢度を有する。式(1)の染料は、別々に、あるいは式(1)の誘導体の混合物として、染色および印刷のために用いることができる。
【0026】
印刷の場合、ポリエステル繊維、織物材料は、直接印刷または抜染により処理され、優れた堅牢度を有する。
【0027】
本発明の態様は、以下の実施例を用いてより詳細に記載され、部は特に断らない限り重量部を意味する。
【実施例】
【0028】
以下のように本発明を具体的に説明するが、本発明はそれらの実施例に限定されるものではない。
【0029】
実施例1.
構造式(2)
【0030】
【化3】

【0031】
構造式(2)の実施例1は、以下の方法で合成される:
40%ニトロシル硫酸3mlを、2,5−ジクロロフルオロスルホニル2.0gと、酢酸とプロピオン酸(86:14、25ml)との混合物に0〜5℃で添加し、5℃未満で2時間攪拌した。カプラー N−エチル−N−シアノメトキシカルボニルエチルアニリン(シアノメチル3−(エチル(フェニル)アミノ)プロパネート)2.1gをメタノール100mlに溶解し、0〜5℃の合成したジアゾ化溶液をこのカプラー溶液に添加した。この反応物を5℃以下で1時間各攪拌し、結晶固体を濾別して水で洗浄した。
【0032】
50%ウェットケーキ7gが得られた。収率は80%であった。アセトン溶液における実施例1の染料のλmaxは515nmであった。
【0033】
得られたウエットプレスケーキ2.0gを、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物2.0gと水50gとガラスビーズ500gとともに24時間粉砕し、その後で濾過して、ガラスビーズを分離した。
【0034】
得られた最終液体20gを水100mlの中に加え、酢酸でpH4に調製し、吸尽染色のために、染浴の中にポリエステル10g分を加えた。
【0035】
染浴を135℃に加熱しその温度を40分間維持した。適切に濯ぎ、洗浄、乾燥を行うと、染められた材料は、深いルビーの色合いを与え、優れた洗濯堅牢度、光堅牢度、および昇華堅牢度を有していた。
【0036】
染色された織物の堅牢特性は、以下の試験方法により評価された。
【0037】
洗濯堅牢度は、AATCC 61 2A試験法、光堅牢度はISO 105 B02試験法、昇華試験は、180度で30秒および210度で30秒である。
【0038】
実施例2.
式(3)の染料は実施例1に記載された方法と同じ方法で合成され、表に記載された以下の染料が得られた。
【0039】
【化4】

【0040】
【表1】

【0041】
これらの染料は、優れた洗濯堅牢度、光堅牢度および昇華堅牢度を示した。
【0042】
実施例3.
式(4)の染料は実施例1に記載された方法と同じ方法で合成され、表に記載された以下の染料が得られた。
【0043】
【化5】

【0044】
【表2】

【0045】
これらの染料は、光り輝く色合いを与え、優れた洗濯堅牢度、光堅牢度および昇華堅牢度を示した。
【0046】
実施例4.
式(5)の染料は実施例1に記載された方法と同じ方法で合成され、表に記載された以下の染料が得られた。
【0047】
【化6】

【0048】
【表3】

【0049】
これらの染料は、優れた洗濯堅牢度、光堅牢度および昇華堅牢度を示した。
【0050】
実施例5.
式(6)の染料は実施例1に記載された方法と同じ方法で合成され、表に記載された以下の染料が得られた。
【0051】
【化7】

【0052】
【表4】

【0053】
これらの染料は、優れた洗濯堅牢度、光堅牢度および昇華堅牢度を示した。
【0054】
実施例6.
式(7)の染料は実施例1に記載された方法と同じ方法で合成され、表に記載された以下の染料が得られた。
【0055】
【化8】

【0056】
【表5】

【0057】
これらの染料は、優れた洗濯堅牢度、光堅牢度および昇華堅牢度を示した。
【0058】
比較例1.
WO95/20014の表1に実施例37の染料として記載されている以下の染料を、本特許の実施例1の染料として記載されている染料と、以下のように、光堅牢度、洗濯堅牢度、および昇華堅牢度について比較した。
【0059】
【化9】

【0060】
【表6】

【0061】
洗濯堅牢度は、AATCC 61 2A試験法、光堅牢度はISO 105 B02試験法、昇華試験は、180度で30秒および210度で30秒である。
【0062】
本特許の実施例1の染料と、WO95/20014の染料37は、非常に類似した化学物質であり、アミノ基の置換基がエチル基とCCOOCHCNである点だけが相違している。しかし、その特性の違いは、特に洗濯堅牢度で非常に大きく、また昇華堅牢度と光堅牢度でも大きい。この比較例は、WO95/20014の場合のように1つのみの置換基に代えて、2つのCCOOCHCN置換基を導入すると、洗濯堅牢度を向上させることができるという論理手法に対する確信を与える。2つのCCOOCHCN置換基を導入すると、より優れた洗濯堅牢度が得られ、および昇華堅牢度と光堅牢度も向上する。
【0063】
比較例2.
WO95/20014の実施例37の比較染料の光堅牢度特性を増加させるさらに別のアプローチとして、本特許の発明者らは、カップリング成分の3−(メタ)位に、−NHSOCHまたは−NHSOを導入した。以下の比較データは、想定された変化により優れた特性が得られることを明確に示している。
【0064】
【化10】

【0065】
【表7】

【0066】
洗濯堅牢度は、AATCC 61 2A試験法、光堅牢度はISO 105 B02試験法、昇華試験は、180度で30秒および210度で30秒である。
【0067】
本特許の実施例3−2の染料と、WO95/20014の染料37は、非常に類似した化学物質であり、カップリング成分の−NHSOCHの有無のみが相違している。しかし、その特性の違いは、特に光堅牢度で非常に大きく、また昇華堅牢度と洗濯堅牢度でも大きい。この比較例は、−NHSOCH置換基を導入すれば、WO95/20014の比較染料37の光堅牢度を向上させることができるという論理手法に対する確信を与える。NHSOCH置換基を導入すると、より優れた光堅牢度が得られ、および昇華堅牢度と洗濯堅牢度も向上する。
【0068】
本発明は、特定の態様を用いて説明されているが、前述の記載を考慮すれば、多くの代替例、改良例および変形例が可能なことは当業者には明らかである。したがって、前述のすべての代替例、改良例および変形例は、添付の特許請求の範囲の精神および広い範囲に含まれるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表される新規な分散アゾ染料:
【化1】

ここで、X、YおよびZは、独立に、水素、ハロゲン、シアノ、ニトロまたはSOFであり; X、YおよびZの少なくとも1種がSOFであり;
は水素、メチル、ヒドロキシルまたはNHRであり;
は水素、クロロまたはメトキシであり;
は水素、(C−C)アルキルまたは−CH(CHCOOCHCNであり;
は水素、(C−C)アルキルまたは−CH(CHCOOCHCNであり;
は、−COCH、−COC、−SOCHまたはSOであり;
nとmは、独立に、0、1または2であり、
但し、YとZの両方がClである場合は、Rはメチル以外であり、
が水素で、RとRの両方がアルキルである場合は、Rは、NHSOCHまたはNHSOから選択される。
【請求項2】
式(1)の化合物が式(2)の化合物である請求項1記載の新規な分散アゾ染料。
【化2】

【請求項3】
式(1)の化合物が式(3)の化合物である請求項1記載の新規な分散アゾ染料。
【化3】

【表1】

【請求項4】
式(1)の化合物が式(4)の化合物である請求項1記載の新規な分散アゾ染料。
【化4】

【表2】

【請求項5】
式(1)の化合物が式(5)の化合物である請求項1記載の新規な分散アゾ染料。
【化5】

【表3】

【請求項6】
式(1)の化合物が式(6)の化合物である請求項1記載の新規な分散アゾ染料。
【化6】

【表4】

【請求項7】
式(1)の化合物が式(7)の化合物である請求項1記載の新規な分散アゾ染料。
【化7】

【表5】

【請求項8】
式(1)のアゾ染料またはそれらの混合物、染料混合物の80重量%〜400重量%の分散剤、および必要に応じて染料混合物の0.1重量%〜20重量%の湿潤剤を含む請求項1から7のいずれか1つに記載の分散染料組成物。
【請求項9】
単一成分または2種以上の成分である請求項1から8のいずれか1つに記載の染色された材料。

【公表番号】特表2013−515811(P2013−515811A)
【公表日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−545526(P2012−545526)
【出願日】平成22年12月23日(2010.12.23)
【国際出願番号】PCT/IN2010/000851
【国際公開番号】WO2011/077462
【国際公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(512165064)カラーテックス・インダストリーズ・リミテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】COLOURTEX INDUSTRIES LIMITED
【Fターム(参考)】