説明

分析のための細胞を含む流体の薄層の調製

分析のための流体サンプルの薄層を作るための装置は、分析チャンバの二次元アレイ45と、分析チャンバが並行して充填されることができるようにアレイに結合した入口チャネルの分岐パターン25とを持つ。分析チャンバは、流体サンプルで充填されるときに薄層を作るように入口チャネルより低い高さを持つ平面である。アレイは、チャンバの高速充填を可能にしながら、チャンバの高さのばらつきを削減できるように、一定面積内でチャンバ間により多くのスペーサーを可能にする。分析チャンバは血液などの特定流体サンプルによる毛細管充填にとって適切であり得る。出口チャネルのパターン35はアレイに結合することができる。入口チャネルと出口チャネルは櫛状パターンを形成することができ、櫛状パターンの指は互いにかみ合い、分析チャンバは櫛状パターンの互いにかみ合った指の間に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分析のための流体の薄層を調製するための装置及び方法、並びにかかる薄層を分析するためのシステム及び方法、特にカートリッジ内のサンプルの自動分析のための方法及び装置に関する。本発明は具体的には、分析のための薄層、特に赤血球などの細胞の単層(例えば重なった赤血球を持たない)を調製するための装置及び方法、並びに、かかる薄層又は細胞の単層を分析するためのシステム及び方法、特にカートリッジ内のサンプルの自動分析のための方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
細胞に基づく分析は、細胞を特定試薬で染色し、細胞集団を顕微鏡で調べることによって実行されることができる。例えば顕微鏡、カメラ、画像解析及び診断用のソフトウェアアプリケーションを用いる画像に基づく細胞診断の場合、細胞の重なりに起因する誤解を避けるために分離された細胞の単層を作ることが重要である。こうした方法の1つは長年知られており、手でスライドガラス上の多量の関連流体(例えば血液)をこすること(塗抹標本)を含む。一体型の密閉カートリッジの場合、この処理は使用できない。代わりに狭いチャネルの毛細管充填が使用できる。
【0003】
US特許6,599,475‐B1から、顕微鏡分析のために赤血球の薄い単層を作るためのプラスチック光学キュベットを提供することが知られている。直列につながれ、分離壁によって分離された複数の区画が設けられる。これらの壁は各々、赤血球の希釈を実現するために赤血球の一部のみの流れを許可し、区画の最後において分離された赤血球の単層が得られるようになっている。キュベット全体にわたって一定の厚さを実現するために、分離壁は溶接特徴を持ち、透明な蓋が上端に溶接される。区画は600x600x3マイクロメートルの寸法を持ち得る。マラリア原虫に対する血液サンプルの分析などの応用の場合、必要な検出限界を得るために大量の血液が分析される必要がある。ほぼ赤血球の寸法(5μm)程度の層厚さでは、これは大きな表面積(平方cm)が調べられる必要があることを意味する。
【0004】
US6,165,739‐A1は複数の毛細管ギャップチャンバを持つレーザーサイトメトリーのためのガラス又はプラスチックスライドを記載する。流体サンプルは容器から同時に全チャンバに入ることができる。多重併発反応を可能にするために異なる反応物質が各チャンバに備えられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、分析のための流体の薄層を調製するための代替装置及び方法、及び/又はかかる薄層を分析するためのシステム及び方法、特にカートリッジ内のサンプルの自動分析のための装置を提供することである。本発明の別の目的は、分析のための、例えば赤血球などの重なった細胞を持たない、赤血球などの細胞の単層を持つ層を、細胞を持つ流体から調製するための装置及び方法、並びに、かかる細胞の単層を分析するためのシステム及び方法、特にカートリッジ内のサンプルの自動分析のための方法及び装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様によれば、本発明は、流体サンプルの薄層を作るため、又は細胞(特に赤血球)を含む流体の層を作るための装置であって、各層は分析のための細胞(特に赤血球)の単層を持ち、装置は分析チャンバの二次元アレイと、分析チャンバが並行して充填されることができるようにアレイ内の分析チャンバの各々に結合した入口チャネルの分岐パターンとを持ち、分析チャンバは各々、流体サンプルの薄層を作るために、又は細胞(特に赤血球)を含む流体の層を作るために、入口チャネルより低い高さを持つ実質的に平面形状を持ち、各層はチャンバが流体サンプルで充填されるときに細胞の単層を持つ、装置を提供する。
【0007】
分析チャンバの二次元アレイ、及びチャンバを並列に結合する入口チャネルのパターンを設けることによって、一定面積内でチャンバ間により多くのスペーサーが設けられることができ、チャンバの高速充填を可能にしたまま、チャンバの高さのばらつきが削減されることができるようになっている。
【0008】
実施形態は任意の追加特徴を持つことができ、一部のこうした追加特徴は以下により詳細に記載される。
【0009】
本発明にかかる装置は好適にはさらに、入口チャネル(25)と分析チャンバ(45)の間に追加区域(55)を有し、この区域の高さは入口チャネル(25)より低く分析チャンバ(45)より高い。より好適な実施形態において、追加区域(55)の高さは6ミクロン以下である。この追加区域(55)の利点は、成熟した寄生虫を持つ赤血球がこの領域で豊富になるということである。これは白血球が走査範囲の縁において濃縮され、ひいては適切な分析を妨害するのを防ぐ。
【0010】
チャンバ及び/又はチャネルは、特定流体サンプル、例えば細胞を含む流体(特に血液)による毛細管充填に適した寸法を持つことができる。本発明の実施形態において、毛細管充填に適した寸法は例えばPBS若しくは純水などの標準水溶液による毛細管充填によって規定されることができる。これは本発明にかかる毛細管充填にとって適切な及び可能なチャネルが、例えば標準温度及び圧力においてPBS(リン酸緩衝生理食塩水)を基準として用いる、又は随意に例えば標準温度及び圧力において純水を用いる毛細管現象によって充填することを意味する。
【0011】
本発明の装置は好適には、櫛状又はフラクタルの充填及び通気チャネルを使用して組み合わされる複数のチャンバを持つ。好適な実施形態において総表面積は20mmであり視野は0.2x0.2=0.04mmであり、これは500個の反応チャンバを意味する。本発明の実施形態のいずれかに対する複数のチャンバは1乃至1000個のチャンバであることができる。好適には、分析チャンバの各々の総面積は100乃至2000mmであり、及び/又は分析チャンバの高さは1乃至10μmである。
【0012】
装置は分析チャンバの各々に結合した1つ以上の出口チャネルを持つ出口チャネルのパターンを持つ。入口及び出口チャネルのパターンは各々櫛状パターンを有することができ、櫛状パターンの指は互いにかみ合い、分析チャンバは櫛状パターンの互いにかみ合った指の間に配置される。本発明の別の態様は出口チャネル又は通気口における又はそれに隣接する流体止めの導入である。全方向においてチャネルの幅を変えるようにチャネル壁に鋭い移行部を導入することにより、角度が突然変えられないので、液体と壁の接触線は妨げられる。これはいわゆる接触線固定が後に続く流体のよどみにつながる。メニスカスは表面で凍結する。チャネルが二次で4つの壁を持つ場合、4つの壁全てにおいて拡張が行われ、同じ点において固定は非常に安定になることができる。壁の移行部は好適には角度計数を増加し、すなわちこれらは好適には段階的拡張であることができる。血液などの流体では水の蒸発はメニスカスにおける液体のガラス化による永久固定につながる可能性がある。
【0013】
装置は、細胞を含む流体サンプル(例えば血液)などの流体サンプルを受けるのに適した単一サンプルポートを持ち、サンプルポートは入口チャネルの分岐パターンに流体接続し、これらが毛細管現象によって充填するようになっている。入口管の好適な最小高さは、大きな白血球、単球によるつまりを防ぐことになるので、17マイクロメートルである。
【0014】
チャネルは入口チャネルを含むが出口チャネルを除く、及び/又はチャンバは好適には親水性表面を持つ。この親水性表面はこれらが作られる材料の特性であってもよく、又は他の手段によって、例えばコロナ放電によって、プラズマ放電によって、若しくは親水性被膜で被覆されることによって誘導されてもよい。通気チャネルは好適には、例えばそれらに親水性表面を持たせることによって、又は幅変化点において液体を固定するために1点において通気チャネルの幅を変えることによって、ガスを通しながら液体に対する流体止めを設けるように配置される。チャンバの上又は下の表面の少なくとも1つは好適には光学的検査及び測定を可能にするように透明であるか又は光学的に透明である。分析チャンバの二次元アレイ、及び随意に、分析チャンバが並行して充填されることができるようにアレイ内の分析チャンバの各々に結合した入口チャネルの分岐パターンは、好適には高分子材料、特にプラスチック材料で作られる。好適な実施形態において分析チャンバは、各々実質的に平面形状を持ち、中にチャンバが形成されている下部と、チャンバの上端を形成するカバー部とによって規定される高さを持つ。カバー部は好適には下部より柔軟であり、例えば接着、溶接、特に超音波溶接、溶剤結合、溶融などによる下部へのカバー部の取り付けが、寸法、特に下部に形成されるチャンバの床の平坦性を変更しないようになっている。
【0015】
個々の分析チャンバのサイズは0.02乃至500mmであることができる。分析チャンバの高さは1乃至10μmであることができる。分析チャンバの高さは、どの細胞又は寄生虫が分析されるかによって決まる。赤血球の場合好適な高さは2乃至4マイクロメートル、より好適には3マイクロメートルである。より小さな隙間高さは、正常な血液細胞全てを除去し、純粋な血漿を与える。より大きな隙間高さは赤血球と例えば寄生虫との混合をもたらす。
【0016】
入口及び出口チャネルは10‐200μmの深さと50‐1000μmの幅を持つことができる。本発明の別の態様は、流体サンプルの薄層を調製する方法、又は、分析のための、各層が細胞(特に赤血球)の単層を持つ、細胞(特に赤血球)を含む流体の層を調製するための方法を提供し、分析チャンバの二次元アレイと、分析チャンバが並行して充填されることができるようにアレイ内の分析チャンバの各々に結合した入口チャネルの分岐パターンとを持つ装置を使用し、分析チャンバは各々、薄層又は細胞(特に赤血球)を含む流体の層を作るために入口チャネルより低い高さを持つ実質的に平面形状を持ち、各層はチャンバが流体サンプルで充填されるときに細胞(特に赤血球)の単層を持ち、方法は、流体サンプルを供給するステップと、流体サンプルに分析チャンバを充填させるためにそれを入口チャネルのパターンに供給するステップとを持つ。充填は好適には毛細管現象による。本発明の実施形態において毛細管現象による充填はPBS又は随意に純水などの標準水溶液による毛細管充填によって規定されることができる。これは本発明にかかる毛細管現象による充填が、例えば標準温度及び圧力において基準としてPBS(リン酸緩衝生理食塩水)(又は随意に純水)を用いる毛細管現象による充填を意味する。PBSは塩化ナトリウム、リン酸ナトリウム、及び(一部の処方において)塩化カリウムとリン酸カリウムを含む、塩を含む緩衝液である。溶液の浸透圧とイオン濃度は通常は人体と一致する。PBSを作る1つの方法は、800g NaCl、20g KCl、144g NaHPO・12HO及び24g KHPOを8Lの蒸留水に溶かし、10Lまでつぎ足すことを含む。pHは約6.8であるが、1xPBSに希釈されると7.4に変わるはずである。希釈により、得られる1xPBSは137mM NaCl、10mMリン酸塩、2.7mM KClの終濃度、及び7.4のpHを持つはずである。別の調製はSambrook,Fritsch and Maniatis,(1989)in Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,New York,volume 3,appendix B.12によって記載されている:800mlの蒸留水に8gのNaCl、0.2gのKCl、1.44gのNaHPO・12HO及び0.24gのKHPOを溶かす。HClでpHを7.4に調整し、1リットルまでHOを加える。
【0017】
本発明の一部の方法にかかる毛細管現象は、例えば標準温度及び圧力において上述のPBS製剤の何れか1つで、又は随意に標準温度及び圧力において純水で充填することができる寸法を持つチャンバ及び/又はチャネルを利用する。
【0018】
本発明の方法は好適には櫛状又はフラクタルの充填及び通気チャネルを使用して組み合わされる多数のチャンバを使用する。本発明の実施形態にかかる装置は多数のチャンバを持つことができる。好適な実施形態において総表面積は20mmであり、視野は0.2x0.2=0.04mmであり、これは500個の反応チャンバを意味する。本発明の実施形態のいずれかに対する複数のチャンバは100乃至1000個のチャンバであることができる。
【0019】
本発明の方法は、分析チャンバの各々に結合した1つ以上の出口チャネルを持つ出口チャネルのパターンを持つ装置とともに使用されることができる。入口及び出口チャネルのパターンは各々櫛状パターンを有することができ、櫛状パターンの指は互いにかみ合い、分析チャンバは櫛状パターンの互いにかみ合った指の間に配置される。本発明の別の態様は出口チャネル又は通気口における又はそれに隣接するサンプル流体の流体止めの方法ステップである。全方向においてチャネルの幅を変えるようにチャネル壁に鋭い移行部を導入することにより、角度が突然変えられないので、液体と壁の接触線は妨げられる。これはいわゆる接触線固定が後に続く流体のよどみにつながる。メニスカスは表面で凍結する。チャネルが二次で4つの壁を持つ場合、4つの壁全てにおいて拡張が行われ、同じ点において固定は非常に安定になることができる。壁の移行部は好適には角度計数を増加し、すなわちこれらは好適には段階的拡張であることができる。血液などの流体では水の蒸発はメニスカスにおける液体のガラス化による永久固定につながる可能性がある。
【0020】
本発明の別の態様はかかる装置を製造する対応方法を提供する。
【0021】
本発明の別の態様は、流体サンプルの薄層を分析するため、又は、各層が細胞の単層を持つ、細胞(特に赤血球)を含む流体の層を分析するための光学検出器と、流体サンプルの薄層又は、各層が細胞の単層を持つ、細胞(特に赤血球)を含む流体の層を作るための装置とを有する分析システムを提供し、装置は分析チャンバの二次元アレイと、分析チャンバが並行して充填されることができるようにアレイ内の分析チャンバの各々に結合した入口チャネルの分岐パターンとを持ち、分析チャンバは各々、薄層又は細胞(特に赤血球)を含む流体の層を作るために、入口チャネルより低い高さを持つ実質的に平面形状を持ち、各層はチャンバが流体サンプルで充填されるときに細胞の単層を持つ。
【0022】
本発明の別の態様は、分析チャンバの二次元アレイと、分析チャンバが並行して充填されることができるようにアレイ内の分析チャンバの各々に結合した入口チャネルの分岐パターンとを持つ装置を用いて調製される、流体サンプルの薄層を分析する方法、又は、各層が細胞の単層を持つ、細胞(特に赤血球)を含む流体の層を分析する方法を提供し、分析チャンバは各々、薄層又は細胞(特に赤血球)を含む流体の層を作るために入口チャネルより低い高さを持つ実質的に平面形状を持ち、各層はチャンバが流体サンプルで充填されるときに細胞の単層を持ち、方法は、光学検出器を設けるステップと、光学検出器を用いて、分析チャンバにおいて、各層が細胞の単層を持つ薄層又は細胞(特に赤血球)を含む流体の層を分析するステップとを持つ。
【0023】
追加の特徴のいずれかは一緒に組み合わされ、態様のいずれかと組み合わされることができる。特に先行技術に勝る他の利点が当業者に明らかになる。例えば本発明は単一チャンバを使用せず、並列結合したチャンバのアレイを使用する。アレイは二次元アレイであることができ、従って小型設計を可能にする。チャンバの二次元アレイはそれらが並行して充填されることができるように流体結合される。特に本発明の装置は多重分析チャンバを持ち、チャンバは例えば入口チャネルより実質的に低い高さを持つ。
【0024】
多数の変更及び修正が本発明の請求項から逸脱することなくなされることができる。従って、本発明の形態は例示に過ぎず本発明の範囲を限定する意図ではないことが明らかに理解されるべきである。
【0025】
どのように本発明が実施され得るか、例として添付の図面を参照して記載される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】分析領域のアレイと反復的な互いにかみ合ったチャネル構造とを示すカートリッジの一部の平面図である。
【図2】カートリッジの断面図である。
【図3】本発明の一実施形態にかかる分析領域と通気チャネルとの間の移行部を遠近法で描く拡大図である。
【図4】カートリッジを含む分析システムの略図を示す。
【図5】成熟した寄生虫に感染した赤血球に対する追加分析領域を含んで示す、本発明にかかるカートリッジの一部の平面図を示す。
【図6】図5にかかるカートリッジの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明は特定の実施形態に関して特定の図面を参照して記載されるが、本発明はそれらに限定されず、請求項によってのみ限定される。記載された図面は略図に過ぎず限定的なものではない。図面において、要素の一部のサイズは拡大され、例示のために縮尺通りに描かれていないことがある。"有する"という語が本発明の記載及び請求項において使用される場合、これは他の要素又はステップを除外しない。例えば"a"又は"an"、"the"など、単数名詞に言及するときに不定冠詞又は定冠詞が使用される場合、これは他のことが明記されない限りその名詞の複数を含む。
【0028】
請求項において使用される"有する"という語は、その後に列挙される手段に制限されるものと解釈されてはならず、これは他の要素又はステップを除外しない。従って、"手段A及びBを有する装置"なる表現の範囲は、部品A及びBのみから構成される装置に限定されてはならない。これは本発明に関して装置の単なる関連部品がA及びBであることを意味する。
【0029】
さらに、記載及び請求項における第1、第2、第3などの語は、同様の要素を区別するために使用され、必ずしも起こった順番又は年代順を説明するために使用されない。そのように使用される用語は適切な状況下で交換可能であり、本明細書に記載の本発明の実施形態は本明細書に記載された又は図示されたもの以外の順番で動作可能であることが理解される。
【0030】
さらに、記載及び請求項における上端、下端、上、下などの語は、説明の目的で使用され、必ずしも相対位置を説明するために使用されない。そのように使用される語は適切な状況下で交換可能であり、本明細書に記載の本発明の実施形態は本明細書に記載された又は図示されたもの以外の方向で動作可能であることが理解される。
【0031】
本発明は、例えばカートリッジ内のサンプルの自動分析のための装置及び方法に関する。カートリッジ内のサンプルの自動分析のために、流体サンプルの層厚さの正確な制御が重要になり得る。実施形態の少なくとも一部は、薄層細胞塗抹標本調製と、プラスチックで作られる新たなカートリッジの設計を含む。細胞塗抹標本調製は好適には、細胞(特に赤血球)を含む流体の層を形成することを意味し、各層は細胞の単層を持つ。細胞は好適には重なり合わない。細胞は好適には赤血球である。これは寄生虫などの血液感染性疾患の医療診断のための分析システムにとって有利に適用されることができ、そのうちマラリア顕微鏡診断が一例である。赤血球はDNAを含まないので、血中の外来細胞の存在は任意の方法によって、例えば任意の光学的方法、例えばDNAの存在を示す任意の染色法によって決定されることができる。本発明の利点は、例えば所与の性能に対する低コスト及び/又は高速動作、及び/又は分析のための広い面積の提供であり得る。
【0032】
成形プラスチックの部品などの低コスト部品は通常、大きな面積にわたって一定のチャネル高さを得るために必要な平坦性を欠く。以下により詳細に記載される通り、プラスチックで低コストで製造されることができる微細構造は、ユーザの影響に対する脆弱性をほとんど伴わずに、マイクロメートル領域でより正確な層厚さを提供することができる。本発明の一部の実施形態において、狭い隙間を持つ領域のアレイが作られ、大きな隙間を持つチャネルによって接続される。領域サイズ及びアスペクト比は場合によっては画像解析要件に適応されることができる。個々の領域は分析される総面積より十分に小さい。このようにして高速でよく制御された細胞の単層の作製が実現されることができる。
【0033】
実施形態の概論として、本発明の一部の実施形態によって対処される一部の問題又は欠点が簡潔に記載される。
【0034】
血液の薄層塗抹標本(例えば細胞の単層、特に赤血球の単層、特に重ならない赤血球の層)を作るために、大きな表面積にわたってサンプルを広げる必要がある。しかしながらこの文脈において、密閉カートリッジ及びさらにはプラスチックのもの(低コストを維持するため)を設計することは異なる技術的課題をもたらす。カートリッジは使い捨てカートリッジであることができる。カートリッジは、カートリッジの中身の分析を可能にするために、測定装置に例えば差し込まれて組み込まれることができる装置である。例えば、小さな隙間(ほぼ塗抹標本の薄い高さ程度であるカートリッジ内の上下の距離)によって示される流れ抵抗は、分析領域を大きな面積にわたって流体サンプルで迅速に充填することを困難にする。また、より詳細に説明される通り、こうした薄い隙間を大きな表面積にわたってプラスチックで製造するとき、隙間サイズのばらつきを生じる大きな工程変動が存在し得る。
【0035】
・狭い隙間を持つ大きな面積の毛細管充填は、チャネル内部の流体の流れ抵抗によって制限され(Δpν=12ηLV/h)、圧力降下はΔpν、チャネルの長さはL、平均流速はV、チャネルの高さはhである。ほぼ細胞の厚さ程度であるチャネルの高さhで、細胞は強い流れ抵抗を作り出した。これは克服されることができる距離が限られることを意味する。
【0036】
・流速及び充填されることができる距離は流体の粘度ηに依存し、これは血液の場合、主にヘマトクリット値(赤血球の濃度)に依存して広範囲で変化し得る。
【0037】
・毛細管力は隙間高さの逆数に対応し(Δp=2σcosΘ/h)、Δpは毛細管力、表面張力はσで与えられ、基板に対する流体の接触角はΘ、隙間の高さはhである。
【0038】
・わずかな厚さ変動は強い流速変動につながり、その結果予測不可能な充填パターン、不完全な充填及び空気の混入につながる。
【0039】
・低コストカートリッジの場合、基板とカバーがプラスチックから作られる必要があり、これは押出(ホイル)又は射出成形(より厚い部分及びフレーム)によって加工される。射出成形は工程に固有の不均一冷却に起因する形状偏差をもたらす。これは局所的にほぼ数十ミクロン程度の、全体ではさらに多くの平坦性偏差につながる。ホイルは厳密な厚さ公差と平坦性で加工されることができるが、曲げ剛性は非常に低い(1/dに対応する)ので、隙間の大きな変動が予測され、これは不均一で再現不可能な充填につながり、細胞の積み重ねを誘導し画像解析に支障をきたす大き過ぎる隙間につながり得る。これは、染料の有効光学的厚さのばらつきが画像解析のばらつき(閾値など)につながり、故に偽陰性又は偽陽性につながるため、非常に重要である。
【0040】
これら全ての理由で、例えば画像に基づくマラリア診断で使用するための、血液などの流体サンプルの薄層塗抹標本調製のための低コストカートリッジを層厚さの所望の精度で作ることは困難である。
【0041】
図1.第1の実施形態にかかるカートリッジの平面図
本発明の一部の実施形態はマイクロ流体チャンバのアレイの形で分析領域を持つ。これは一定の全面積に対してより多くのスペーサーを可能にし、従って特定の高さを維持することを助けることができる。これらのチャンバは高速充填を可能にするように入口チャネルによって並列に結合されることができる。単一サンプリングポートは、流体サンプルの容易な流入を可能にするために入口チャネルに流体接続されて配置されることができる。通気チャネルもまた配置される。チャネルは並行して多くのチャネルのより速い充填を可能にするように互いにかみ合ったパターンであることができる。場合によっては分析領域のアレイに向かうサンプルの毛細管流動のための互いにかみ合った指のセットが存在する。充填は好適には毛細管現象による。本発明の実施形態において、毛細管現象による充填は、例えば標準温度及び圧力におけるPBSなどの標準水溶液による、又は随意に標準温度及び圧力における純水による毛細管充填によって規定されることができる。PBSは塩化ナトリウム、リン酸ナトリウム、及び(一部の処方では)塩化カリウムとリン酸カリウムを含む、塩を含む緩衝液である。溶液の浸透圧とイオン濃度は通常は人体と一致する。PBSを作る1つの方法は、800g NaCl、20g KCl、144g NaHPO・12HO及び24g KHPOを8Lの蒸留水に溶かし、10Lまでつぎ足すことを含む。pHは約6.8であるが、1xPBSに希釈されると7.4に変わるはずである。希釈により、得られる1xPBSは137mM NaCl、10mMリン酸塩、2.7mM KClの終濃度、及び7.4のpHを持つはずである。別の調製はSambrook,Fritsch and Maniatis,(1989)in Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,New York,volume 3,appendix B.12によって記載されている:800mlの蒸留水に8gのNaCl、0.2gのKCl、1.44gのNaHPO・12HO及び0.24gのKHPOを溶かす。HClでpHを7.4に調整し、1リットルまでHOを加える。
【0042】
毛細管現象は、上記PBS溶液のいずれか1つを例えば標準温度及び圧力において使用するときの、又は随意に標準温度及び圧力において純水を用いる、毛細管力による充填によって定義され得る。
【0043】
ある量の全血から赤血球の自動読み取り可能な単層を作るためには、入口管と分析チャンバの形式と構成が最も重要である。入口管と分析チャンバの入口は大きな白血球によって容易に詰まる。全分析チャンバの総入口幅はこれを最小限にするほど大きくなければならない。1マイクロリットルの全血の分析の場合、分析チャンバ入口の最小全幅は少なくとも110mmである(1マイクロリットル中の白血球の数かける直径=1.1 104*10 10−6m=110mm)。
【0044】
入口チャネルとチャンバの内面は好適には親水性である。これは装置が作られる材料の選択によって、又はプラズマ若しくはコロナ処理などの処理によって、又は親水性被膜で被覆することによって実現されることができる。
【0045】
通気チャネルに対し互いにかみ合った中が空洞の指の別のセットが存在することができる。通気チャネルは好適には、それらが液体止めを形成するが、ガスを通過させ、液体の流れを妨げない又は少なくとも液体の流れのよどみを生じないように適応される。例えば通気チャネルの表面は親水性であってもよく、又は通気チャネルの幅は流体サンプルを止めるように突然広く変化してもよい。分析領域は上述の指の間に位置することができる。分析領域は分析システムの顕微鏡の視野に相当する寸法を持つように配置されることができる。
【0046】
図1において、カートリッジの形の装置の一実施例の上面図が示され、図2は同じ実施例の断面図である。とりわけ、図1に示された全分析領域は小さな基本分析領域に分割され、プラスチックカートリッジが、各々薄層塗抹標本の所望の高さ(ほぼμm程度)に実質的に等しい高さ(隙間)を持つ小分析領域のアレイを持つようになっている。場合によっては小分析領域はシステムにおいて使用される顕微鏡などの光学検出器の視野に対応する。こうした分割は製造中のプラスチック工程変動の問題を顕著に解決する。分析チャンバの上又は下の材料の少なくとも1つは好適には光学的検査法を可能にするために透明であるか又は工学的に透明である。
【0047】
図1はまた、以下でより詳細に記載される通りとりわけ分析領域の間に密封領域75も示す。
【0048】
図1はまた、充填チャネル25の形の入口チャネル、通気チャネル35の形の出口チャネル、及び分析領域45の形の実質的に平面の分析チャンバの特定配置も示す。入口チャネル、小分析領域及び出口チャネル(例えば通気チャネル)の間に流れ連通があり、入口チャネルの高さは小分析領域の高さより実質的に大きい(入口チャネルの隙間が厚く、分析領域の薄い隙間にもかかわらずその断面積が小さいため、流れは微細である)。随意に、流体の流入のための単一サンプルポートが存在することができ、サンプルポートは入口チャネルに流体接続される。カートリッジ内の流体の典型的な流れが異なる矢印によって図1に図示される。
【0049】
別の実施形態において、(空気圧制御のための)通気チャネルは血液を小分析領域に十分に保持するための手段を有する(例えば、通気チャネルと各分析領域との接触面における小さな段の使用)。本発明の別の態様は出口チャネル又は通気口における又はそれに隣接する流体止めの導入である。
【0050】
とりわけ図3に矢印によって示される通り、全方向においてチャネルの幅を変えるようにチャネル壁に鋭い移行部を導入することによって、角度が突然変えられないので液体と壁との接触線は妨げられる。これはいわゆる接触線固定が後に続く流体のよどみにつながる。メニスカスは表面において凍結する。チャネルが二次であり4つの壁を持つ場合、4つの壁全てにおいて拡張がなされ、同じ点において固定は非常に安定になることができる。壁移行部は好適には角度計数を増加し、すなわちこれらは好適には段階的な拡張であることができる。血液などの流体では水の蒸発はメニスカスにおける液体のガラス化による永久固定につながり得る。
【0051】
特定の場合においては、上述の4方向の代わりに2方向の突然の拡張が固定安定性にとって十分であることができることに留意されたい。これはとりわけ液体に対して表面がどれだけ強くぬれているかに依存し得る。
【0052】
カートリッジは、厳密な層厚さ公差で、例えば赤血球の単層を得るために血液などの流体サンプルで高速かつ再現可能に充填するために設計されることができる。図1の実施形態は分析領域に結合された、互いにかみ合った入口及び通気チャネルのツリー型パターンを持つ。これらの領域は所要の隙間高さを持ち、スペーサーによって分離され、これは隙間高さを設定するだけでなく流れ方向を制御することを助ける。分析領域は画像解析装置の光学場に一致するように配置されることができ、隙間変動を制限するために最大幅を持つ。スペーサーは基板の一体部分として形成され、これは逆構造を持つ原型からの複製によって製造されることができる。カートリッジのカバーは例えばプラスチック又はガラスの平坦薄板から作られることができ、これは使用される分析のタイプに応じて所望であれば1つ又は多くの種類の試薬で内面に塗付されることができる。基板とカバーは例えばレーザー若しくは熱接合によって接合されることができる。好適にはカートリッジは上カバー部と下部から作られる。チャネル及び分析チャンバは下部に形成されることができ、カバー部は例えば接着、溶接、超音波溶接、レーザー溶接、熱接合などによって上端まで密封される。カバー部は好適には下部より柔軟であり、下部における分析チャンバの寸法安定性と平坦性が上部への接続によって影響を受けないようになっている。同じ理由から、分析チャンバへのカバー部の下垂に起因する温度変化によってチャンバの高さが変化しないように、例えば25%未満、より好適には10%未満の差である同様の熱膨張係数のカバー部と下部が好ましい。
【0053】
入口チャネルは分岐し、分析領域より大きいチャネル高さを持つ。入口チャネルは単一サンプル入口ポートに接続されることができる。分析領域の充填がほとんど同時に開始するように分析領域の高速充填を可能にするために流れ抵抗は低い。分析領域における流路は5μmなどの狭い隙間を持つことができ、好適には短く、これは通気チャネルまでの完全かつ速い充填を確実にする。通気チャネルは単一出口(廃液チャンバ)に接続される。分析領域から通気領域への移行部における高さの段階により、毛細管現象が低下するので血液はそこで止まり、通気チャネルは(少なくとも全分析領域が充填されるまでは)充填しない。
【0054】
分析領域の寸法は結像光学系の場に関連することができる(例えば少なくとも1つの端が場の内部にあるなど)。本発明の装置は好適には櫛状又はフラクタルの充填及び通気チャネルを使用して組み合わされる多数のチャンバを持つ。本発明の実施形態にかかる装置は多数のチャンバを持つ。好適な実施形態において総面積は20mmであり視野は0.2x0.2=0.04mmであり、これは500個の反応チャンバを意味する。本発明の実施形態のいずれかに対するチャンバの数は100乃至1000チャンバであることができる。
【0055】
装置は分析チャンバの各々に結合した1つ以上の出口チャネルを持つ出口チャネルのパターンを持つ。入口及び出口チャネルのパターンは各々櫛状パターンを有することができ、櫛状パターンの指は互いにかみ合い、分析チャンバは櫛状パターンの互いにかみ合った指の間に配置される。
【0056】
分析システムは、分析領域の方向を認識し、それを分析中にカートリッジの相対運動と撮像法を制御するステッピング制御のための制御入力として使用することができる、結像光学系及び画像解析ソフトウェアを持つことができる。分析領域を分離する壁に特徴が加えられることができ、又は代替的に、全カートリッジに対する分析領域の位置についての情報を与えるために分析領域の内部に特徴が存在することができる。これは画像解析ソフトウェアによって解釈される符号又は記号であることができる。
【0057】
図2.断面図
チャネルを規定する基板表面は少なくとも3つの異なるレベルを持つことができる:(i)流体サンプルに対する入口チャネルのレベル、(ii)分析領域のレベル、及び(iii)分析領域間のスペーサーに対する密封領域。
【0058】
通気領域は入口と同じレベルか、又は入口のレベルと分析領域のレベルの間のレベルを持つことができる。入口の領域はある種の櫛状構造としてあらわされることができ、これは通気構造と互いにかみ合い、複数の等しい分析領域が二者間の接続として規定されるようになっている。図1は互いにかみ合った配列を図示するために一部分のみをあらわす。これは目安に過ぎない。全表面積を効率的にカバーするために、ある種のフラクタル構造においてはより多くのチャネル分割が設計されることができる。分析領域は密封領域によって分離される。分析領域と密封領域との間の段高さは分析領域の隙間高さを規定する。個々の分析領域のサイズは好適には0.01乃至1mm、より好適には0.03乃至0.2mmであることができる。分析領域における隙間高さは1乃至10μm、より好適には3乃至6μmであることができる。総分析面積は好適には1乃至500mm、より好適には5乃至250mmである。
【0059】
密封領域は好適には50乃至500μmの幅を持つ。
【0060】
充填及び通気チャネルは好適には、10‐200μm、より好適には50‐100μmの深さと、50‐1000μm、より好適には100‐300μmの幅を持つ。
【0061】
基板及びカバーのために使用されることができる材料は、好適には高分子、例えば透明な、特に光学的に透明な高分子であり、例えばポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリカーボネート、シクロオレフィン(共)重合体、ポリエステル、ポリウレタンなどである。入口チャネルは、毛細管充填力を増すために接触角を減らすように処理されることができ、分析領域は細胞付着及び/又は細胞染色を増強するために前処理されることができる。こうした処理はプラズマ若しくはコロナ放電又は親水性被膜での被覆であることができる。他方で、本発明の一態様は、ガスの通気を可能にしながら、液体が通気チャネルを通って排出するのを防ぐための流体止めの導入である。通気チャネルは、流体サンプルによってぬれることを防ぐために好適には90度以上まで接触角を増加するように前処理されることができる。こうした処理は親水性被膜での被覆であることができる。別の方法は流体サンプルのメニスカスを固定するために突然全方向に出口チャネルの幅を増加することである。
【0062】
カバーと基板は、レーザー溶接などの接合技術によって取り外せないように接合されるか、又は代替的に永久接合なしに互いに接触しているだけである。基板へのカバーの付着を増強するために接触領域は前処理されることができる。好適には、接合されるときに基板の寸法と平坦性が影響を受けないようにカバーは基板より柔軟である。
【0063】
血液を充填するための入口領域は、例えば貫通孔などのサンプルポート及び随意に充填後に閉じられることができるキャップを設けることによって、好都合な充填が可能になるように設計されることができる。試薬は乾燥状態で入口領域に設けられることができる。起こり得る血液などの過剰流体の流出を防ぐために通気チャネルの終端において廃液容器が含まれることができる。
【0064】
図5及び6は本発明にかかるカートリッジを示し、入口チャネル(25)と分析チャンバ(45)の間に追加区域(55)を有し、この区域の高さは入口チャネル(25)より低く分析チャンバ(45)より高い。追加区域(55)の高さは好適には6ミクロン以下である。この追加領域は複数の利点を持つ。血中マラリア原虫の検出を加速するために、カートリッジ内にこの追加領域が作られ、その中では成熟したマラリア原虫が豊富である。
【0065】
具体的な実施例として、成熟した寄生虫を持つ赤血球は3ミクロン未満の分析チャンバに入ることができないが、4ミクロンの領域には容易に流入する。この差はわずかであるが追加走査範囲をエッチングすることによって容易に作られる(図5及び6の略図を参照)。
【0066】
この追加領域は、さもなければ白血球も走査範囲の縁において濃縮され、成熟した寄生虫を見えなくしてしまうので、有利である。白血球は4ミクロンの隙間に入るには大き過ぎるので、成熟した寄生虫を持つ厚い赤血球のみがこの領域において豊富になる。
【0067】
好適な実施形態において、指の刺し傷から血液を速く保存するためにより大きな血液量チャンバがカートリッジに加えられる。このチャンバが充填される場合、信頼できる測定を確実にするために指の刺し傷から十分な血液が採取される。より大きな量のチャンバはカートリッジ上の追加チャネルであることもできる。
【0068】
一般的に、例えば有機溶媒において染料溶液で分析チャンバを事前充填することによって染料が分析チャンバに加えられることができる。これらの溶媒は速く蒸発し、必要量の乾燥染料を分析チャンバに残す。染料は生体液体、好適には血液に入ることによって(再び)溶解される。
【0069】
カートリッジのための製造ステップ
構造化される基板は射出成形又は他の複製技術によって製造されることができる。鋳型として必要な原型構造はフォトリソグラフィ、電気めっき、及び/又はエッチングを用いて製造されることができる。1つの適切な方法は2つのリソグラフィマスクを要する。第1のものは分析領域用のパターンを含む。第2のステップにおいて、基板(例えばシリカ)の選択的エッチングのためのレジストパターンを作るために入口及び通気チャネルのチャネル構造をあらわすマスクが使用される。エッチング後、エッチレジストははがされ、分析領域上の感光性樹脂が基板上に残る。このようにして3つのレベルが基板上に作られることができる。代替的な方法はSU‐8などの多層レジストを使用することである。この基板は例えば光ディスク製造(例えばDVD、CD‐ROMディスク)において定着した方法で電気めっきによって例えばNiシムなどの金属へ複製されることができる。金属、例えばNiシムは鋳造によるプラスチックでの複製のための鋳型への挿入物として使用される。複製法は原型を用いる複製法によって下部又は基板を製造し、その後例えば溶接、超音波溶接、レーザー溶接、接着、熱接合などの任意の適切な方法によってカバー層を取り付けることを含むことができる。
【0070】
図3.分析システム
図4は上記装置を含む分析システムを示す。マイクロ流体工学部品130が図の下半分に示され、ソフトウェア50及び計算ハードウェア60が上半分に示される。マイクロ流体工学部品は取り外し可能なカートリッジの形であることができ、又はそれらが使用の合間に洗浄されることができる場合はシステムに組み込まれることができる。このシステムは少なくとも、分岐入口チャネル及び分析チャンバ110への流入を制御するためのサンプルチャンバ70を持つ。必要であれば弁80又はポンプなどのアクチュエータといった任意項目が設けられ得るが、分析チャンバへの流体の流入は好適には毛細管現象による。用途に応じて、任意の他のステージ120が分析領域の出口チャネルの後に含まれることができる。要望通り多くの評価を並行して行うために多くの分析領域が存在することができる。1つ以上の評価がなされることができ、例えば複数のチャンバが1つの評価専用であってもよく、全チャンバが1つの評価専用であってもよく、又は多くの評価が並行してなされることができる。適切な反応物質、例えば適切な染料が分析チャンバに予め設置され得る。光学検出器100は分析チャンバを観察し、典型的には表示画面55を通してユーザに提示するために、サンプルの特性を決定する画像の解析のためのソフトウェア50における部分40へ画像信号を与える。
【0071】
ソフトウェア部分はまた、解析部40を制御し流れ制御部30を制御するためのコントローラ10も含む。流れ制御部はサンプルの供給を制御するために弁又はポンプを制御する。随意にコントローラはカートリッジと検出器の相対位置を動かすために位置調節装置65に結合され得る。随意にコントローラはサンプルに対する環境コントローラ20に結合されることができる。ソフトウェアのさらなる部分がユーザインターフェース及び結果のさらなる解析を提供するように配置されることができる。全ソフトウェアは従来のプログラミング言語を使用することができ、汎用マイクロプロセッサ、パーソナルコンピュータ又は他のハードウェアなどの従来の計算ハードウェア60で実行されることができる。
【0072】
コントローラは任意の適切なコントローラ又はマイクロコントローラであってよく、例えばFPGAなどのマイクロプロセッサ又はプログラム可能論理デバイスを含んでよい。
【0073】
実施例:
本発明にかかる装置が本発明の実施例において記載される。装置は55mmの長さを持つ1つの入口チャネルと、このチャネル沿いに55mmの幅と4mmの長さの2つの分析チャンバを有することができる。第2の想定されるさらに小型の方法は、28mmの長さの2つ又は3つの入口チャネルと4つの分析チャンバを持つことである。各チャンバは28mm幅の入口を持ち、4mmの長さである。充填時間は入口チャネルの充填特性と、入口チャネルに血液を供給しているチャネルの長さに依存する。こうした大きな入口幅とたった4mmの長さを持つ分析チャンバは、非常に速く、数秒未満で充填する。1mm幅、28mm長の入口チャネルと隙間18マイクロメートルを、毛細管力と30mmの供給チャネルのみで充填するための所要時間は13秒であり、これは1分未満の充填時間の要件を満たす。全入口チャネルを可能な限り小さくすることは、指の刺し傷から必要な総血液量を最小限にするので、最も有用である。
【0074】
プロトタイプでの実験は本発明にかかる装置が全血で40秒以内に充填することを示す。
【0075】
応用:
応用は、マラリア診断、HIV、HCV、FBCなどの少なくとも細胞に基づく診断を含むことができる。細胞に基づくとは、細胞が流体サンプル内にあることを意味する。しかしながら、本発明の実施形態の方法のいずれに対しても、診断法は診断法の一部として細胞の様子を特定することに限定されない。例えば赤血球はDNA又はRNAを含まないので、血液サンプル中でDNA又はRNAのいずれかを検出することは、DNA又はRNAの検出が血液サンプル中に異物が存在し得ることを示すので、本発明にかかる診断検査である。装置は高速分散試験のためのカートリッジの形であることができる。装置はバイオセンサー、又は任意の他の種類の医用診断装置の一部を成すことができる。他の応用、変更及び追加が請求項の範囲内で構想されることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞を含む流体の層を作るための装置であって、各層は分析のための細胞の単層を持ち、前記装置は分析チャンバの二次元アレイと、前記分析チャンバが並行して充填されることができるように前記アレイ内の前記分析チャンバの各々に結合した入口チャネルの分岐パターンとを持ち、前記分析チャンバは各々、前記細胞を含む流体の層を作るために前記入口チャネルより低い高さを持つ実質的に平面形状を持ち、各層は前記チャンバが前記流体サンプルで充填されるときに細胞の単層を持つ、装置。
【請求項2】
前記入口チャンバと前記分析チャンバの間に追加区域をさらに有し、当該区域の高さが前記入口チャンバより低く前記分析チャンバより高い、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記追加区域の高さが6ミクロン以下である、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記分析チャンバのアレイに結合した出口チャネルのパターンを持つ請求項1又は2に記載の装置。
【請求項5】
前記出口チャネルを通る液体の流れを止めるがガスは通過させる液体止めをさらに有する、請求項3に記載の装置。
【請求項6】
前記入口チャネルと前記出口チャネルのパターンが各々櫛状パターンを有し、前記櫛状パターンの指が互いにかみ合い、前記分析チャンバが前記櫛状パターンの互いにかみ合った指の間に配置される、請求項3又は4に記載の装置。
【請求項7】
前記分析チャンバの各々の総面積が100乃至2000mmであり、及び/又は前記分析チャンバの高さが1乃至10μmである、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記入口チャネルが10‐200μmの深さと50‐1000μmの幅を持つ、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
分析のために、各層が細胞の単層を持つ、細胞を含む流体の層を調製する方法であって、分析チャンバの二次元アレイと、前記分析チャンバが並行して充填されることができるように前記アレイ内の前記分析チャンバの各々に結合した入口チャネルの分岐パターンとを持つ装置を使用し、前記分析チャンバが各々、前記細胞を含む流体の層を作るために前記入口チャネルより低い高さを持つ実質的に平面形状を持ち、前記チャンバが前記流体サンプルで充填されるときに各層が細胞の単層を持ち、前記方法は、前記流体サンプルを供給するステップと、前記流体サンプルに前記分析チャンバを充填させるために当該流体サンプルを前記入口チャネルのパターンに供給するステップとを持つ、方法。
【請求項10】
分析のために、各層が細胞の単層を持つ、細胞を含む流体の層を作るための装置を製造する方法であって、前記方法は、分析チャンバの二次元アレイを形成するステップと、前記分析チャンバが並行して充填されることができるように前記アレイ内の前記分析チャンバの各々に結合した入口チャネルの分岐パターンを形成するステップとを持ち、前記分析チャンバが前記入口チャネルより低い高さを持つ実質的に平面形状を持つように形成される、方法。
【請求項11】
各層が細胞の単層を持つ、細胞を含む流体の層を分析するための光学検出器と、各層が細胞の単層を持つ前記細胞を含む流体の層を作るための装置とを有する分析システムであって、前記装置は分析チャンバの二次元アレイと、前記分析チャンバが並行して充填されることができるように前記分析チャンバの各々に結合した入口チャネルの分岐パターンとを持ち、前記分析チャンバが各々前記細胞を含む流体の層を作るために前記入口チャネルより低い高さを持つ実質的に平面形状を持ち、前記チャンバが前記流体サンプルで充填されるときに各層が細胞の単層を持つ、分析システム。
【請求項12】
前記分析チャンバのアレイに結合した出口チャネルのパターンを持つ、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記入口チャネルと前記出口チャネルのパターンが各々櫛状パターンを有し、前記櫛状パターンの指が互いにかみ合い、前記分析チャンバが前記櫛状パターンの互いにかみ合った指の間に配置される、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記分析チャンバの各々の面積が0.02乃至1mmであり、及び/又は前記分析チャンバの高さが1乃至10μmであり、及び/又は前記入口チャネルが10‐200μmの深さと50‐1000μmの幅を持つ、請求項10乃至12のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項15】
細胞を含む流体の層を分析する方法であって、各層が細胞の単層を持ち、分析チャンバの二次元アレイと、前記分析チャンバが並行して充填されることができるように前記アレイ内の前記分析チャンバの各々に結合した入口チャネルの分岐パターンとを持つ装置を用いて調製され、前記分析チャンバが各々前記細胞を含む流体の層を作るために前記入口チャネルより低い高さを持つ実質的に平面形状を持ち、前記チャンバが前記流体サンプルで充填されるときに各層が細胞の単層を持ち、前記方法は、光学検出器を設けるステップと、前記光学検出器を用いて、前記分析チャンバにおいて、各層が細胞の単層を持つ前記細胞を含む流体の層を分析するステップと持つ、方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公表番号】特表2012−523229(P2012−523229A)
【公表日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−504124(P2012−504124)
【出願日】平成22年4月9日(2010.4.9)
【国際出願番号】PCT/IB2010/051537
【国際公開番号】WO2010/116341
【国際公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】