説明

分析装置の製造方法及びコーティング組成物

【課題】生体試料中の多種類の生理活性物質の検出および分析に用いられる分析装置の製造において、捕捉物質が吸着防止剤でコーティングされることがなく、目的とする生理活性物質との結合能が低下する現象を回避することができ、さらに、分析目的としないタンパク質や、標識物質(標識抗体等)の非特異的な吸着を防ぐことができ、しかも、製造工程が簡略化されるコーティング組成物および分析装置の製造方法を提供する。
【解決手段】ホスホリルコリン基を有する第一単位と官能基を有する第二単位とを含む高分子物質に、生理活性物質を捕捉するための捕捉物質が、捕捉物質に含まれる官能基と前記高分子物質に含まれる第二単位の官能基との間で、結合されてなる捕捉物質結合高分子物質を含むコーティング組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体試料中の種々の生理活性物質の検出および分析に用いられる分析装置の製造方法、および該分析装置の製造に用いる捕捉物質結合高分子物質を含むコーティング組成物、および該分析装置を用いた生理活性物質の分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
DNA、RNA、タンパク質、ペプチド、ホルモン、脂質、糖タンパク質等の生理活性物質の分析は、臨床分野、産業分野において重要である。臨床分野においては、DNA、RNAの配列や量を分析することで遺伝性疾患の診断を実施したり、タンパク質、ペプチド、ホルモン、脂質、糖たんぱく質等を定性、或いは定量することにより感染症、代謝異常等の各種疾患の診断が行われる。また、産業分野においては、例えば食品業界において、アレルギー症状を引き起こす食品中のアレルゲンの存在を定性或いは定量することで食の安全の維持が図られている。
【0003】
このような生理活性物質を分析するために、生理活性物質を分析デバイス上に捕獲する方法がとられている。最も汎用されている分析方法の一つであるサンドイッチ免疫測定法では、生理活性物質を捕捉するための捕捉物質(捕捉抗体)を反応部位となる基板上に固定化しておき、この基板上に生理活性物質を含む試料を接触させることで捕捉物質に生理活性物質を捕捉させている。続いて捕捉されなかった物質を洗い流した後に、捕捉物質とは異なる結合性(異なるエピトープ)を有する標識物質(標識抗体)を、捕捉された生理活性物質に反応させ、次いで、過剰量の標識物質を洗い流してから標識物質(標識抗体)を検出することで、生理活性物質の量を測定する。このようなサンドイッチ免疫測定法における反応部位としては、例えば、基板表面に形成された反応槽壁面、マイクロチップと呼ばれる微細な流路を有するデバイスの流路壁面、或いは、スライドグラス等の平面基板の表面が挙げられる。
【0004】
また、すべての蛋白質(プロテオーム)の変動をプロファイリングする技術として、超微量の蛋白質や、数ナノリットルから数マイクロリットルというような超微量の溶液の操作を可能とするマイクロフルイディクスの技術や、チップ上での前処理、分離、検出を目標とする「ラボ・オン・チップ」の技術がある。これらの技術においては、サンプルである蛋白質などの生理活性物質が、2枚の基板の界面に形成された流路内に固定化された捕捉物質(捕捉抗体)と特異的に反応し、かつ捕捉物質固定化部以外の流路の内壁への非特異吸着を抑制することが必要となる。
【0005】
このような測定系において、反応部位、例えば、基板表面に形成された反応槽壁面、マイクロチップの流路壁面、スライドガラス等の平面基板表面への標識物質(標識抗体)の非特異的吸着は、信号雑音比を低下させる原因となり、検出精度を低下させる。このため、通常のサンドイッチ免疫測定系では、標識物質(標識抗体)の非特異的な吸着を防ぐため、反応部位となる基板上に、生理活性物質を捕捉するための捕捉物質(捕捉抗体)の固定化を行った後に、吸着防止剤のコーティングが行われる(例えば、非特許文献1)。このような吸着防止剤として、牛血清アルブミン、カゼイン等のタンパク質や、リン脂質を含む高分子物質が一般的に利用されている。
【0006】
しかしながらこの方法では、基板上に固定された捕捉物質(捕捉抗体)が吸着防止剤に覆われるため、捕捉物質(捕捉抗体)に生理活性物質が捕捉されにくく、感度が低くなるという問題がある。また、吸着防止剤をコーティングするための工程を要するため、全体の工程が多くなるという問題もある。
【0007】
上記問題点を改善するものとして、生理活性物質や標識物質(標識抗体)の非特異吸着を防止するためのホスホリルコリン基を有し、且つ、および捕捉物質(捕捉抗体)を固定化するための活性エステル基を有する高分子物質を基板にコーティングしてなるバイオチップ用基板の製造方法が開発された(特許文献1)。特許文献1のバイオチップ基板の製造方法によれば、高分子物質のコーティング溶液中に、標識物質(標識抗体)の非特異吸着を防止するためのホスホリルコリン基と、捕捉物質(捕捉抗体)を固定化するための活性エステル基が含まれているので、該高分子物質を基板上にコーティングすることにより、活性エステル基が吸着防止剤に覆われることなく塗膜表面上に露出して固定され、該活性エステル基を介して捕捉物質(捕捉抗体)を基板上に効率よく固定化することができる。このため、特許文献1のバイオチップ基板の方法によれば、捕捉物質(捕捉抗体)が吸着防止剤でコーティングされることがないので、生理活性物質との結合能が低下する現象を回避することができる。さらに、該バイオチップ基板上にはホスホリルコリン基が露出して固定されているので、分析目的としないタンパク質等の物質や、標識物質(標識抗体)の非特異的な吸着を防ぐことができ、吸着防止剤をコーティングする工程を設ける必要がない。
【特許文献1】WO2005−029095
【非特許文献1】Acta Med Okayama Vol.48., No.6,. pp299-304
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1の方法は、生理活性物質を捕捉するための捕捉物質を基板上に固定化するにあたって、ホスホリルコリン基を有し、且つ、活性エステル基を有する高分子物質を含むコーティング組成物を基板上にコーティングすることにより高分子物質を固定化した後に、捕捉物質を固定化している。このため、特許文献1の方法は、従来の捕捉物質を固定化した後に吸着防止剤をコーティングする方法(ステップ数2個)に比べて、バイオチップ等の分析装置の製造に要するステップ数は2個であるため、従来方法とステップ数は変わらず、製造工程が簡略化されていないという問題点がある。
【0009】
そこで本発明は、生体試料中の多種類の生理活性物質の検出および分析に用いられる分析装置の製造において、捕捉物質が吸着防止剤でコーティングされることがなく、目的とする生理活性物質との結合能が低下する現象を回避することができ、さらに、分析目的としないタンパク質等の夾雑物質や、標識物質(標識抗体)等の非特異的な吸着を防ぐことができ、しかも、製造工程が簡略化される方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、分析装置に用いる基板の表面にコーティングするための、或いは分析装置としての基板表面に形成された反応槽壁面にコーティングするための、或いは、分析装置の流路壁面にコーティングするための、捕捉物質結合高分子物質を含むコーティング組成物を提供する。即ち、本発明のコーティング組成物は、ホスホリルコリン基を有する第一単位と、官能基を有する第二単位とを含む高分子物質に、生理活性物質を捕捉するための捕捉物質が、該捕捉物質に含まれる官能基と前記高分子物質に含まれる第二単位の官能基との間で、結合されてなる捕捉物質結合高分子物質を含むことを特徴とする。
【0011】
本発明の一番目の分析装置の製造方法は、前記コーティング組成物を基板表面にコーティングすることにより、基板表面にホスホリルコリンと捕捉物質を存在させることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の二番目の分析装置の製造方法は、前記コーティング組成物を基板表面に形成された反応槽壁面にコーティングすることにより、反応槽壁面にホスホリルコリンと捕捉物質を存在させることを特徴とする。
【0013】
またさらに、本発明の三番目の分析装置の製造方法は、2枚の平面基板の界面に流路が形成され、該流路の入口および出口を形成した分析装置の製造方法であって、該分析装置の流路壁面に前記コーティング組成物をコーティングすることにより、流路壁面にホスホリルコリンと捕捉物質を存在させることを特徴とする。
【0014】
上記本発明の一番目〜三番目の製造方法により得られた各分析装置は、本発明のコーティング組成物がコーティングされた基板表面、流路壁面、或いは反応槽壁面において、固定されている捕捉物質が試料中の生理活性物質を捕捉し、且つ、固定されているホスホリルコリン基は分析目的としないタンパク質等の夾雑物質や、標識物質(標識抗体)の非特異吸着を抑制する性質を有し、しかも、固定されている捕捉物質は、吸着防止剤等により覆われることがないので、捕捉物質は生理活性物質に対する結合能が低下しない特徴を有する。本発明の方法により得られる分析装置は、マイクロチップとして有用である。
【0015】
本発明の一番目の分析方法は、前記一番目の分析装置の製造方法により得られた分析装置を用いて試料中の生理活性物質を分析する方法であって、該分析装置の基板上に生理活性物質を含む液体試料を供給し、生理活性物質の存在の有無、或いは量を検知することを特徴とする。
【0016】
本発明の二番目の分析方法は、前記二番目の分析装置の製造方法により得られた分析装置を用いて試料中の生理活性物質を分析する方法であって、該分析装置の反応槽壁面に生理活性物質を含む液体試料を供給し、生理活性物質の存在の有無、或いは量を検知することを特徴とする。
【0017】
本発明の三番目の分析方法は、前記三番目の分析装置の製造方法により得られた分析装置を用いて試料中の生理活性物質を分析する方法であって、該分析装置としてのマイクロチップの流路の入口から流路の壁面に生理活性物質を含む液体試料を供給し、生理活性物質の存在の有無、或いは量を検知することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明のコーティング組成物および分析装置の製造方法によれば、コーティング組成物中の捕捉物質結合高分子物質に、標識物質(標識抗体等)や分析目的としない生理活性物質等の非特異吸着を防止するためのホスホリルコリン基と、生理活性物質を捕捉するための捕捉物質が含まれているので、該コーティング組成物を基板表面、流路壁面、或いは反応槽壁面にコーティングすることにより、1ステップにより捕捉物質を固定化することができると同時に標識物質(標識抗体等)や分析目的としない生理活性物質等の非特異吸着を防止することができる。従来は、捕捉物質を固定化するために高分子物質をコーティングしてから、捕捉物質を固定化する、2段階のステップを要していたものが、本発明では1ステップで可能となるため、生理活性物質の分析装置の製造工程が簡素化できる。
【0019】
また、本発明のコーティング組成物は、捕捉物質が結合した高分子物質が含まれているため、一度に大量調製しておけば、必要なときに必要な量をコーティングするだけで、捕捉物質の固定化を行うことができる。
【0020】
高分子と捕捉物質を予め結合させてから基板にコーティングすると、捕捉物質の一部は高分子に巻き込まれて高分子の内部に埋もれてしまい機能できなくなるものがあると当初予想されていた。また、高分子と基板の間に埋もれた捕捉物質が、基板への高分子のコーティングに何らかの影響、例えば、コーティングのむら、コーティングのはがれ易くなる等の悪影響が当初予想されていたが、本発明はこれらの悪い予想にも関わらず、以下の実施例に実証するように、従来の、予め高分子物質をコーティングさせた後、捕捉物質を結合させる方法に比べて、予想外に同等以上の反応性が得られた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
(コーティング組成物)
本発明のコーティング組成物に含まれる捕捉物質結合高分子物質は、ホスホリルコリン基を有する第一単位と官能基を有する第二単位とを含む高分子物質に、生理活性物質を捕捉するための捕捉物質が、捕捉物質に含まれる官能基と前記高分子物質に含まれる第二単位の官能基との間で、共有結合されたものである。或いは、本発明のコーティング組成物に含まれる捕捉物質結合高分子物質は、ホスホリルコリン基を有する第一単位と官能基を有する第二単位と、ブチルメタクリレート基を有する第三単位を含む高分子物質に、生理活性物質を捕捉するための捕捉物質が、該捕捉物質に含まれる官能基と前記高分子物質に含まれる第二単位の官能基との間で、共有結合されたものである。
【0022】
ホスホリルコリン基を有する第一単位と官能基を有する第二単位とを含む前記高分子物質は、ホスホリルコリン基を有する単量体と、官能基を有する単量体との共重合により得ることができる。ホスホリルコリン基を有する第一単位と官能基を有する第二単位とブチルメタクリレート基を有する第三単位を含む前記高分子物質は、ホスホリルコリン基を有する単量体と、官能基を有する単量体、ブチルメタクリレート基を有する単量体との共重合により得ることができる。
【0023】
本発明のコーティング組成物中の高分子物質の製造に用いられる前記ホスホリルコリン基を有する単量体は、メタクリル基またはアクリル基を有する構成としてもよい。
【0024】
本発明のコーティング組成物中の高分子物質の製造に用いられる前記官能基を有する単量体は、カルボン酸誘導基を有する単量体であってもよく、さらに、活性エステル基を有する単量体であってもよく、さらに具体的には、p−ニトロフェニル基またはN−ヒドロキシスクシンイミド基を有する単量体であってもよい。
【0025】
本発明のコーティング組成物に使用する高分子物質において、第一単位に含まれるホスホリルコリン基の例には、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン基、および6−メタクリロイルオキシヘキシルホスホリルコリン基等の(メタ)アクリロイルオキシアルキルホスホリルコリン基;
2−メタクリロイルオキシエトキシエチルホスホリルコリン基、および10−メタクリロイルオキシエトキシノニルホスホリルコリン基等の(メタ)アクリロイルオキシアルコキシアルキルホスホリルコリン基;
アリルホスホリルコリン基、ブテニルホスホリルコリン基、ヘキセニルホスホリルコリン基、オクテニルホスホリルコリン基、およびデセニルホスホリルコリン基等のアルケニルホスホリルコリン基等の基を有し、ホスホリルコリン基がこれらの基中に含まれている構成が挙げられる。
【0026】
また、これらのホスホリルコリン基のうち、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン基が好ましい。
【0027】
本発明のコーティング組成物に使用する高分子物質において、第二単位の官能基の例には、次の式(1)で示されるエステル基が挙げられる。
【0028】
【化1】

(ただし、上記式(1)において、Aは水酸基を除く一価の脱離基である。)
【0029】
前記式(1)に示すように、第二単位にカルボニル基を介して脱離基Aが存在するため、高分子物質中に生理活性物質を捕捉する捕捉物質をさらに確実に化学的に導入することができる。
【0030】
前記式(1)に示される一価の基が下記式(p)または式(q)から選択されるいずれかの基であってもよい。こうすることにより、脱離基Aをさらに確実に活性化し、反応性をさらに向上させることができる。なお、下記式(p)または式(q)は、それぞれ、Nを含む環状化合物NからHが抜けた構成やCを含む環状化合物のCからHが抜けた構成とすることもできる。
【0031】
【化2】

【0032】
(ただし、上記式(p)および式(q)において、R1 およびR2 は、それぞれ独立して、一価の有機酸であり、直鎖状、分岐状、および環状のいずれであってもよい。また、上記式(p)においてR1 はCとともに環を形成する二価の基であってもよい。また、上記式(q)において、R2 はNとともに環を形成する二価の基であってもよい。)
【0033】
上記式(p)に示される基として、例えば下記式(r)、(s)および(w)に示される基が挙げられる。また、上記式(q)に示される基として、例えば下記式(u)に示される基が挙げられる。
【0034】
上記式(1)に示される基は、例えば下記式(r)、(s)等に示される酸無水物由来の基;
下記式(t)に示される酸ハロゲン化物由来の基;
下記式(v)に示される活性化アミド由来の基とすることができる。
【0035】
【化3】

【0036】
前記式(1)に示される官能基の例には、活性化されたカルボン酸誘導基が挙げられる。活性化されたカルボン酸誘導基は、カルボン酸のカルボキシル基が活性化されたものであり、C=Oを介して脱離基を有するカルボン酸である。活性化されたカルボン酸誘導基としては、例えば、カルボン酸であるアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸などのカルボキシル基が、酸無水物、酸ハロゲン化物、活性エステル、又は活性化アミド等に変換された化合物が挙げられる。カルボン酸誘導基は、こうした化合物に由来する活性化された基であり、例えば、p−ニトロフェニル基やN−ヒドロキシスクシンイミド基、コハク酸イミド基、フタル酸イミド基、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミド基等の活性エステル基;−Cl、−F等のハロゲン;等の基を有することができる。
【0037】
カルボン酸誘導基のうち、活性エステル基は、穏やかな条件における反応性に優れるため、好ましく用いられる。穏やかな条件としては、例えば中性またはアルカリ性の条件、具体的には、pH7.0以上10.0以下、好ましくはpH7.6以上、9.0以下、さらに好ましくは、pH7.6以上、8.0以下とすることができる。
【0038】
本発明で言う「活性エステル基」は、その定義について厳密な規定はなされていないが、慣用的な表現として一般的に用いられているものである。「活性エステル基」は、エステル基のアルコール側に酸性度の高い電子求引性基を有して求核反応を活性化するエステル群、すなわち反応活性の高いエステル基を意味するものとして知られている。実際的には、フェノールエステル類、チオフェノールエステル類、N−ヒドロキシアミンエステル類、複素環ヒドロキシ化合物のエステル類等がアルキルエステル等に比べてはるかに高い活性を有する活性エステル基として一般的に知られている。
【0039】
本発明のコーティング組成物に使用する高分子物質に結合される捕捉物質には、例えば、ビオチン、アビジン、ストレプトアビジン、エストラジオール、ハプテン、ホルモン、オリゴヌクレオチド、核酸、糖、脂質、ペプチド、抗体、酵素等のタンパク質、オリゴペプチド、糖タンパク質、生理活性物質が人工的に修飾されたもの等、これらの物質のうち2種以上が結合したものが挙げられる。これらの捕捉物質の1種または2種以上が高分子タンパク質に結合されて、捕捉物質結合高分子物質を構成してもよい。
【0040】
本発明において捕捉物質により捕捉される生理活性物質には、前記捕捉物質に対して生化学的親和性により結合する物質であり、例えば、ビオチン、アビジン、ストレプトアビジン、エストラジオール、ハプテン、ホルモン、オリゴヌクレオチド、核酸、糖、脂質、ペプチド、抗体、酵素等のタンパク質、オリゴペプチド、糖タンパク質、生理活性物質が人工的に修飾されたもの等、これらの物質のうち2種以上が結合したもの、免疫複合体が挙げられる。
【0041】
捕捉物質が高分子物質に共有結合される条件は、中性またはアルカリ性の条件、好ましくは、pH7.6以上とすることができる。
【0042】
本発明のコーティング組成物に使用する高分子物質において、第三単位が含まれていてもよく、第三単位を構成する単量体にはブチルメタクリレート基を含む単量体が用いられる。
【0043】
本発明のコーティング組成物に使用する高分子物質の製造は、前記第一単位を構成する単量体(第一単量体と呼ぶ)と前記第二単位を構成する単量体(第二単量体と呼ぶ)を共重合させるか、或いは、第一単量体と第二単量体と前記第三単位を構成する単量体(第三単量体と呼ぶ)を共重合させて行うことができる。好ましくは、各単量体を混合しラジカル重合等の公知の重合方法により行うことができる。例えば、Ar等の不活性ガス雰囲気にて、溶液重合させて行うことができる。各単量体はブロック共重合していてもよく、或いはランダムに共重合していてもよい。
【0044】
本発明で用いる高分子物質の具体的な例として、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC:略語)基を有する第一単量体と、p−ニトロフェニルオキシカルボニルポリエチレングリコールメタクリレート(NPMA:略語)基を有する第二単量体と、ブチルメタクリレート(BMA)基を有する第三単量体との共重合体が挙げられる。これらの単量体の共重合体であるpoly(MPC−co−BMA−co−NPMA)(PMBN)は、模式的に下記の一般式(2)で示される。
【0045】
【化4】

【0046】
上記一般式(2)において、a、bおよびcは、それぞれ独立して正の整数を表す。また、上記一般式(2)において、第一、第二、第三単量体がブロック共重合していてもよいし、これらの単量体がランダムに共重合していてもよい。nは任意の整数を表す。
【0047】
上記一般式(2)で示される共重合体は、高分子物質の適度な疎水化と、非特異吸着を抑制する性質と、捕捉物質を固定化する性質とのバランスにより一層優れた構成である。このため、該共重合体を捕捉物質と反応させることにより、第二単位の官能基と、捕捉物質に含まれる官能基との間で共有結合が形成され、捕捉物質結合高分子物質を得ることができる。
【0048】
本発明で用いる高分子物質の別の具体的な例として、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC:略語)基を有する第一単量体と、p−ニトロフェニルオキシカルボニルポリエチレングリコールメタクリレート(NPMA:略語)基を有する第二単量体との共重合体が挙げられる。これらの単量体の共重合体であるpoly(MPC−co−NPMA)は、模式的に下記の一般式(3)で示される。
【0049】
【化5】

【0050】
上記一般式(3)において、aおよびcは、それぞれ独立して正の整数を表す。また、上記一般式(3)において、第一、第二単量体がブロック共重合していてもよいし、これらの単量体がランダムに共重合していてもよい。nは任意の整数を表す。
【0051】
上記一般式(3)で示される共重合体は、非特異吸着を抑制する性質と、捕捉物質を固定化する性質とのバランスにより一層優れた構成である。このため、該共重合体を捕捉物質と反応させることにより、第二単位の官能基と、捕捉物質に含まれる官能基との間で共有結合が形成され、捕捉物質結合高分子物質を得ることができる。
【0052】
本発明における捕捉物質結合高分子物質を得る好適な態様は、活性エステル基含有ポリマー10重量部に対して、アミノ基の導入されたビオチン14重量部以上20重量部以下を容器中で混合し、10℃以上60℃以下に反応溶液温度を保ちながら4時間以上溶液が十分混合した状態で反応させる。アミノ基が導入されたビオチンが14重量部より少ないと反応が十分に進まず、20重量部より多いと反応に対し必要以上のビオチン量となり無駄が多く工業的に好ましくない。反応温度が10℃より低いと反応が進む速度が遅くなり工業的に好ましく、60℃より高いと捕捉物質が失活する可能性があるため好ましくない。
【0053】
捕捉物質結合高分子物質を含有するコーティング組成物に含ませることができる希釈溶媒としては、活性エステル基含有ポリマーおよびアミノ基が導入されたビオチンが溶解するものであれば特に限定はない。例えば、水、燐酸水素二カリウム水溶液、燐酸二水素カリウム水溶液、炭酸ナトリウム水溶液、炭酸水素ナトリウム水溶液、四ホウ酸ナトリウムほう砂水溶液等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。ただし、活性エステル基が加水分解する可能性があるため、有機溶媒系が好ましい。また、トリメチルアミン、トリエチルアミン等を添加することによって活性エステルを分解し易くし反応を促進することも可能である。
【0054】
(基板)
本発明の分析装置に使用する基板は、分析装置の少なくとも一部を構成するものとして使用される。本発明に使用する基板の素材は、例えば、ガラス、プラスチック、金属その他を用いることができる。このうち、表面処理の容易性、量産性の観点から、プラスチックが好ましく、特に、熱可塑性樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂としては、蛍光発生量の少ないものが生理活性物質の検出反応におけるバックグランドを低下させて、検出感度を高めるために好ましい。蛍光発光量の少ない熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリペンテン等の直鎖状ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリアミド、飽和環状ポリオレフィン、含フッ素樹脂等を用いることが好ましく、耐熱性、耐薬品性、低蛍光性、成形性に特に優れる飽和環状ポリオレフィンを用いることがより好ましい。ここで飽和環状ポリオレフィンとは、環状オレフィン構造を有する重合体単独、または環状オレフィンとα−オレフィンとの共重合体を水素添加した飽和重合体等を指す。
【0055】
(分析装置)
本発明の分析装置に使用する基板の形状は特に限定しない。
【0056】
図1は本発明の分析装置の実施形態の1例を示し、基板形状がスライドグラス状の平面基板である場合の分析装置の構成を示す平面図であり、図2はその断面図である。1は液体試料中の生理活性物質を分析するための平面基板2からなる分析装置であり、該平面基板2の特定部位に本発明のコーティング組成物をコーティングしてなる捕獲ゾーン3が形成されている。なお、捕獲ゾーン3は、平面基板2の表面の一部又は全部であってもよい。図1、図2の分析装置1は、捕獲ゾーン3に液体試料を接触させて捕捉物質に捕捉された液体試料中の生理活性物質の検出又は定量に用いることができる。
【0057】
図3は、本発明の分析装置の別の実施形態の1例を示し、平面基板12表面に形成された反応槽壁面に本発明のコーティング組成物をコーティングしてなる捕獲ゾーン13が形成されている分析装置11の構成を示す平面図であり、図4はその断面図である。
【0058】
図3、図4の分析装置11は、捕獲ゾーン13に液体試料を接触させて捕捉物質に捕捉された液体試料中の生理活性物質の検出又は定量に用いることができる。
【0059】
図5は本発明の実施形態の1例に係るマイクロチップとしての分析装置の構成を示す平面図であり、図6はその断面図である。21は液体試料中の生理活性物質を分析するためのマイクロチップであり、第一部材25と第二部材26が接合されて構成されている。第一部材25には、幅1μm−5000μm、深さ1μm−5000μmの断面寸法を持つ溝が形成されており、第二部材26と接合されたときに、流路22を形成する。流路22は、液体を流通可能な微細流路として機能する。流路22の一方の端には流路入口23と他方の端には流路出口24が設けられている。流路入口23は液体試料の導入部として機能する。また、流路出口24は外気に連通しているため、流路22内の液体を流動させる導気孔としても機能する。この流路入口23と流路出口24の間に液体試料や試薬等を導入するための導入口を1個以上設けてもよい。また、目的に応じてこうした流路につながる別の流路を設けることも可能である。
【0060】
流路22内に、液体試料中の目的とする生理活性物質を捕獲するための捕獲ゾーン27が設けられており、該捕獲ゾーン27は本発明のコーティング組成物が塗布されて形成されている。該捕獲ゾーン27は、流路22表面の一部または全体に形成されていてもよい。
【0061】
マイクロチップ21を構成する第一部材25と第二部材26のうち、少なくとも片方を検出光に対して透明な樹脂とすることができる。透明な樹脂材料は、生理活性物質の検出反応に用いられる検出光の波長に応じて適宜選択される。第一部材25と第二部材26のうち少なくとも一方を透明とすることにより、送液の状態を容易に確認することができる。また、第一部材25と第二部材26のうち少なくとも一方について適宜な着色を施してもよい。こうすることにより、光学的に流路22内の反応を観察する際に、感度を挙げる作用も期待できる。
【0062】
図5、図6に示したマイクロチップ21は、流路22中に液体試料を流動させて捕捉物質に捕捉された液体試料中の生理活性物質の検出または定量に用いることができる。
【0063】
流路入口23又は流路出口24の径は、第一部材25又は第二部材26の厚さや流路22の幅等に応じて適宜設計される。また、流路22となる溝については、以下の構成とすることができる。マイクロチップ用基板に捕捉物質が固定されたマイクロチップ21の流路22中で生理活性物質の検出反応を効率よく行うためには、ある程度の流速が必要である。また、反応に寄与するのは捕捉物質が固定化されている流路22表面部分である。これらのことから、少ない量の液体試料で効率よく反応させるには、流路22の断面積が小さい方が好ましい。
【0064】
図5、図6に示したマイクロチップ21は、流路22中に液体試料を流動させて、捕捉物質に捕捉された液体試料中の生理活性物質の検出または定量に用いることができる。
【0065】
次に、図5、図6に示したマイクロチップ21の製造方法について説明する。
まず、流路22となる溝が一方の面に彫刻された第一部材25であって、該流路22に連通し且つ第一部材25の他方の面に貫通する流路入口23と流路出口24を設けた第一部材25を作製する。
【0066】
次に、第一部材25と接合されたときに、第一部材25の溝に対して蓋をして流路22を形成する第二部材26を接合する。このとき両部材の接合面、例えば、流路22を形成する側の面を、本発明のコーティング組成物で予めコーティングしておく。該コーティングは、例えば、マイクロチップ用基板の作製時に基板上にコーティング組成物を付着させる方法、或いは流路形成部内の特定の部位にピンスポッター或いはインクジェット方式のスポットによりコーティングする方法、或いは流路を形成させた後に流路内にコーティング剤を満たしてコーティングする方法が挙げられ、これらの方法により流路内壁面の一部又は全体をコーティングすることもできる。
【0067】
コーティング組成物の膜が形成された後、洗浄を行い、余分なコーティング組成物を除去する。
【0068】
図1〜図6に示す本発明の分析装置における捕獲ゾーンは、ホスホリルコリン基を含む第一単位と、カルボン酸誘導基を含む第二単位とを有し、該第二単位に生理活性物質を捕捉する捕捉物質が共有結合にて結合されてなる高分子物質でコーティングされている。高分子化合物中の複数のカルボン酸誘導基は、捕捉物質と共有結合されているか、或いは不活性化されている。ここで、カルボン酸誘導基が不活性化されているとは、カルボン酸誘導基を構成する一部の基(脱離基)が他の基に置換されて、活性を喪失していることをいう。
【0069】
(分析装置の使用方法)
次に、本発明の分析装置の実施形態の一つとして、マイクロチップの使用方法を、捕捉物質として一次抗体がチップ上に固定化されている場合を例にして説明する。
【0070】
マイクロチップを使用する際には、まず、マイクロポンプやマイクロシリンジ等の送液手段を用いて、一定量の液体試料を送液する。この工程で抗体に検出目的のタンパク質が捕捉される。液体試料の送液の後、洗浄液を一定量送液して洗浄を行う。
【0071】
次に、分析目的のタンパク質に対する抗体に蛍光物質等の標識を施した二次抗体を一定量送液し、洗浄を行う。液体試料中に分析目的のタンパク質が存在すれば、蛍光検出器等により標識を検出できる。
【実施例】
【0072】
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0073】
[実施例1]
捕捉物質結合高分子物質の調製及び反応条件
官能基を有する捕捉物質として、アミノ基が導入されたビオチン(Ez−linkTM Amine−PEO3 −Biotin:登録商標、PIERCE社製)を準備し、水に溶解した水溶液(ビオチン水溶液)を調製した。このビオチン溶液を、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン−ブチルメタクリレート−p−ニトロフェニルオキシカルボニルポリエチレングリコールメタクリレート共重合体(活性エステル基含有高分子物質)と理論官能基数換算で1.0、1.2、1.4、1.6、1.8倍当量となるように各々混合し、37℃で2、4、6、12、24時間反応させた。
【0074】
前記工程で得られた反応溶液をエタノールで50倍希釈して270nm波長の吸光度を測定することで残存する高分子物質中の遊離官能基量(アミノ基と結合していない活性エステル基量)を測定した。その結果を、横軸に結合反応時間、縦軸に吸光度をとったグラフとして図7に示す。図7によれば、ビオチン溶液を1.6倍当量以上加えたときに遊離活性エステル量が最小となり高分子物質にビオチンが効率よく結合していることが分かっる。また、5時間で反応がほぼ終了していることが確認できる。
【0075】
[実施例2]
捕捉物質結合高分子物質の保存安定性
前記実施例1において、アミノ基が導入されたビオチン(Ez−linkTM Amine−PEO3 −Biotin:登録商標、PIERCE社製)を2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン−ブチルメタクリレート−p−ニトロフェニルオキシカルボニルポリエチレングリコールメタクリレート共重合体(活性エステル基含有高分子物質)の理論官能基数の1.8倍当量加え、37℃で6時間反応させて得た混合液を冷蔵保管して経時変化を調べた。
【0076】
飽和環状ポリオレフィン樹脂からなる平面基板を、前記工程で冷蔵保管した混合液の0.5重量%エタノール溶液に浸漬することにより、基板表面にホスホリルコリン基とビオチンとを有する高分子物質を導入した。当該基板にCy3標識ストレプトアビジン溶液をスポットし、洗浄した後にCy3の蛍光シグナルを測定することで基板表面のビオチン量を測定した。その結果を横軸にCy3標識ストレプトアビジン濃度(ng/ml)、縦軸にCy3蛍光強度をとったグラフとして図8に示す。図8によれば、保存期間が0(結合反応直後)、1、2,28日のもので比較検討した結果、28日経過した混合液でもシグナルの低下は認められず、ビオチンを安定して基板表面に導入できることが確認できることが分かる。
【0077】
[実施例3]
従来法によるビオチン固定化基板と本発明に係る方法によるビオチン固定化基板とのビオチン固定化量の比較
1.従来法によるビオチンの固定化基板の作製
飽和環状ポリオレフィン樹脂からなる平面基板を活性エステル含有高分子物質の0.5重量%エタノール溶液に浸漬することにより、基板表面にホスホリルコリン基と活性エステル基とを有する高分子物質を導入した。続いて表面に溝(幅300μm、深さ100μm、長さ6.5cm)を形成させたポリジメチルシロキサン(PDMS、フルイドウェアテクノロジーズ社製)を、基板とPDMSの境に流路が形成されるように圧着した。スポッティング溶液で50μMに調製したビオチン(Ez−linkTM Amine−PEO3 −Biotin:登録商標、PIERCE社製)を流路に満たし、37℃で5時間インキュベーションして基板表面の活性エステル基とビオチンのアミノ基を反応させることで流路内の基板側表面にホスホリルコリン基とビオチンを有するマイクロチップを作製した。
【0078】
2.本発明に係る方法によるビオチン固定化基板の作製
前記実施例2に記載の方法で調製した混合液の0.5重量%エタノール溶液に浸漬することにより、基板表面にホスホリルコリン基とビオチンを有するマイクロチップを作製した。
【0079】
3.ビオチン固定化量の比較
PBSで100ng/mLに調製したCy5標識ストレプトアビジン(FluoroLinkTM CyTM5Labelled Streptavidin:商品名、Amersham Biosciences社製)を流路に37℃10分間送液して洗浄後、Cy5の蛍光シグナルをマイクロアレイスキャナー(Biodetect 64Reader:商品名、GeneScan社製)で検出した。その結果、従来法によるビオチン固定化基板のCy5の蛍光シグナルは20082であったのに対し、本発明に係る方法によるビオチン固定化基板のCy5の蛍光シグナルは20142であり、本発明のコーティング組成物を用いる方法でも従来法と同等以上のシグナルが得られることが確認できた。
【0080】
[実施例4]
従来法によるビオチン固定化基板と本発明に係る方法によるビオチン固定化基板を用いた免疫測定結果の比較
前記実施例3で作製した従来法と本発明の方法による2種類のマイクロチップを用いたB型肝炎ウィルスの表面抗原(HBsAg)を免疫測定により検出し、シグナルの違いを調べた。エピトープの異なる2種類の抗HBsAg抗体(第1抗体:SCANTIBODIES LABORATORY,INC 社製、第2抗体:特殊免疫研究所製)を準備し、公知の方法でストレプトアビジン(SA)標識抗HBsAg第1抗体と西洋ワサビ由来ペルオキシダーゼ(HRP)標識抗HBsAg第2抗体を調製した。SA標識第1抗体、HRP標識第2抗体及びHBsAgをそれぞれ2μg/mL、1μg/mL及び1ng/mLとなるように混合し流路に37℃で10分間送液した。流路内にPBSを送液して洗浄後、HRPの発色基質溶液であるSAT Blueを送液して発色度合を熱レンズ顕微鏡(GRINSpectra:商品名、日本板硝子社製)で測定した。その結果を図9のグラフに示す。図9によれば、本発明に係る方法により調製したビオチン固定化基板において、従来法と同等以上の信号雑音比が得られることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明のコーティング組成物を基板にコーティングした分析装置は、標識物質(標識抗体等)の非特異吸着を防止するためのホスホリルコリン基を有し、且つ、捕捉物質(捕捉抗体)を固定化した構成であり、マイクロチップとして、生理活性物質の分析分野、臨床分野において有用である。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の実施形態の1例に係る分析装置の構成を示す平面図である。
【図2】図1の分析装置の断面図である。
【図3】本発明の実施形態の別の1例に係る分析装置の構成を示す平面図である。
【図4】図3の分析装置の断面図である。
【図5】本発明の実施形態のさらに別の1例に係るマイクロチップとしての分析装置の構成を示す平面図である。
【図6】図5の分析装置の断面図である。
【図7】本発明のコーティング組成物に含まれる捕捉物質結合高分子物質の反応条件を、横軸に結合反応時間、縦軸に吸光度をとったグラフとして示す。
【図8】本発明のコーティング組成物に含まれる捕捉物質結合高分子物質の保存安定性を、横軸にCy3標識ストレプトアビジン濃度(ng/ml)、縦軸にCy3蛍光強度をとったグラフとして示す。
【図9】従来法によるビオチン固定化基板と本発明に係る方法によるビオチン固定化基板を用いた免疫測定結果の比較を示すグラフである。
【符号の説明】
【0083】
1,11 分析装置
2、12 平面基板
3、13 捕獲ゾーン
21 マイクロチップ
22 流路
23 流路入口
24 流路出口
25 第一部材
26 第二部材
27 捕獲ゾーン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホスホリルコリン基を有する第一単位と官能基を有する第二単位とを含む高分子物質に、生理活性物質を捕捉するための捕捉物質が、該捕捉物質に含まれる官能基と前記高分子物質に含まれる第二単位の官能基との間で、結合されてなる捕捉物質結合高分子物質を含むコーティング組成物。
【請求項2】
前記高分子物質に含まれる官能基がカルボン酸誘導基である、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項3】
前記カルボン酸誘導基が活性エステル基である、請求項2に記載のコーティング組成物。
【請求項4】
前記捕捉物質に含まれる官能基がアミノ基である、請求項1乃至3の何れか1項に記載のコーティング組成物。
【請求項5】
前記高分子物質が第三単位としてブチルメタクリレート基を有する請求項1乃至4の何れか1項に記載のコーティング組成物。
【請求項6】
前記捕捉物質はビオチンを含む、請求項1乃至5の何れか1項に記載のコーティング組成物。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか1項に記載のコーティング組成物を基板表面にコーティングすることにより、基板表面にホスホリルコリンと捕捉物質を存在させることを特徴とする分析装置の製造方法。
【請求項8】
請求項1乃至6の何れか1項に記載のコーティング組成物を、基板表面に形成された反応槽壁面にコーティングすることにより、反応槽壁面にホスホリルコリンと捕捉物質を存在させることを特徴とする分析装置の製造方法。
【請求項9】
2枚の平面基板の界面に流路が形成され、該流路の入口および出口を形成した分析装置の製造方法であって、該分析装置の流路壁面に請求項1乃至6の何れか1項に記載のコーティング組成物をコーティングすることにより、流路壁面にホスホリルコリンと捕捉物質を存在させることを特徴とする分析装置の製造方法。
【請求項10】
請求項1乃至6の何れか1項に記載のコーティング組成物をコーティングした後に、コーティング面を洗浄することを特徴とする請求項7、8又は9に記載の分析装置の製造方法。
【請求項11】
請求項7に記載の製造方法で製造された分析装置の基板上に生理活性物質を含む液体試料を供給し、生理活性物質の存在の有無、或いは量を検知することを特徴とする試料の分析方法。
【請求項12】
請求項8に記載の製造方法で製造された分析装置の反応槽壁面に生理活性物質を含む液体試料を供給し、生理活性物質の存在の有無、或いは量を検知することを特徴とする試料の分析方法。
【請求項13】
請求項9に記載の製造方法で製造された分析装置の流路の入口から流路の壁面に生理活性物質を含む液体試料を供給し、生理活性物質の存在の有無、或いは量を検知することを特徴とする試料の分析方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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