説明

分析装置

【課題】試料を送液する流路を備えた分析装置において、流路詰まりによる測定不能状態を自動で回避することができる分析装置を提供することである。
【課題手段】前記溶離液を送液する溶離液送液部と、溶離液流路上に設けられた試料導入部と、当該試料導入部と流路を介して接続された分離カラムと、前記試料導入部と前記分離カラムの間に設けられ、前記試料導入部と前記分離カラムの間の流路を第一及び第二の流路に分ける切り替え手段と、前記第一及び第二の流路上にそれぞれ設けられた第一及び第二のフィルタと、前記第一又は第二のフィルタを洗浄する洗浄液が通過する洗浄液流路と、前記洗浄液を送液する洗浄液送液部と、前記洗浄液流路と前記第一及び第二の流路を介して接続し、前記第一及び第二のフィルタを洗浄した洗浄液が排出される排出流路と、を備えることを特徴とする分析装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は分析装置に関し、特に送液部,試料導入部,検出部を有する液体クロマトグラフなどの分析装置における測定中の流路詰まりを解消する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
血液や細胞培養液など多種多様な成分を含む溶液試料から目的とする測定対象成分を測定する方法として、高速液体クロマトグラフや液体クロマトグラフ質量分析装置、また流路の中で測定対象成分を特異的に反応させて検出するフローインジェクション分析装置などが知られている。これらはいずれも、溶液試料を試料導入部から検出部に送る流路を有する。
【0003】
高速液体クロマトグラフでは、試料導入部と検出部の間に分離カラムがあり、測定対象成分は他の成分から分離カラム内で分離されて検出部に送られる。またフローインジェクション分析装置では、試料導入部から検出部に送られる間に化学反応を起こさせることで、検出部での測定対象成分の感度や選択性を向上させることがしばしば行われる。
【0004】
これらの装置において、測定対象となる血清や細胞培養液などは、測定対象成分以外にタンパク質やDNA,脂質など多量の様々な成分を含む。試料導入部以降の流路において、これら試料溶液中に含まれる物質により詰まりが発生し、測定が停止するという問題が発生する。
【0005】
例えば液体クロマトグラフの場合、試料導入部の後方にある分離カラム入り口で詰まりが発生し、流路内の圧力が上昇する。圧力上昇が、送液ポンプあるいは流路構成部品の耐圧上限を超えると、液漏れ等が発生し正常な測定ができなくなる。通常は圧力センサにて詰まりにより発生する圧力上昇をモニタしており、規定圧力を超えると目詰まりによる異常と判断して測定が中断される。特に、多くの測定試料を自動に連続して測定している場合、当然のことながら目詰まりが発生する度に測定が停止すると、測定効率が低下する。
【0006】
このような流路詰まりが発生した場合、詰まり発生部を特定して詰まりが発生した箇所,分離カラムや流路部品を交換しなければならない。これらは測定者が自ら行う必要があり、時間と手間がかかる作業である。
【0007】
流路詰まりを回避する方法として、試料溶液を予めフィルタに通して粒子状成分を除去する処理をしてから測定する手段が一般によく知られている。しかし測定試料が多量に存在する場合、用手法で手間がかかる上、試料数だけフィルタを準備する必要があり、費用もかさむという問題がある。
【0008】
流路詰まりを回避する別の方法として、分離カラムの前段にサイズの小さなプレカラムを設けることで、高価な分離カラムの詰まりを回避して費用の発生を抑える手段もよく用いられる。この方法は、詰まり発生した場合に測定が停止するという本質的問題は解決していない。またプレカラムも比較的高価である。
【0009】
流路詰まりを回避する更に別の方法として、特許文献1ならびに特許文献2では、バイパス流路を設けた濾過装置を提供している。即ち、メインフィルタに目詰まりが発生した場合にバイパス流路を利用する。また特許文献1においては、目詰まり発生検知部を有し、測定者は目詰まりが起きたことを知ることができる。
【0010】
流路詰まりを回避する更に別の方法として、特許文献3では、測定毎あるいは一定数測定毎に試料が通過する流路を洗浄する手段を提供している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2006−076136号公報
【特許文献2】特開平2−265563号公報
【特許文献3】特開2008−309596号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特許文献1,2の方法では、目詰まりが発生しても即座に送液は停止しないが、フィルタの交換ならびに回復のために測定者の作業が発生するという問題は解決されない。また、特許文献3の方法では、流路洗浄を行うほど詰まり発生の頻度を減らすことができるが、測定とは別に洗浄時間を必要とすることから、測定の時間効率が低下してしまう。また本手段の場合、カラム部の粒子成分は除けないため、粒子成分による流路詰まりには対応できない。
【0013】
本発明が解決しようとする課題は、試料を送液する流路を備えた分析装置において、流路詰まりによる測定不能状態を自動で回避することができる分析装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明では、以下の分析装置を提供する。
【0015】
試料を溶離する溶離液が通過する溶離液流路と、前記溶離液を前記溶離液流路内で送液する溶離液送液部と、溶離液が通過する前記溶離液流路上に設けられた試料導入部と、当該試料導入部と流路を介して接続された分離カラムと、前記試料導入部と前記分離カラムの間に設けられ、前記試料導入部と前記分離カラムの間の流路を第一及び第二の流路に分ける切り替え手段と、前記第一及び第二の流路上にそれぞれ設けられた第一及び第二のフィルタと、前記第一又は第二のフィルタを洗浄する洗浄液が通過する洗浄液流路と、前記洗浄液を当該洗浄液流路内で送液する洗浄液送液部と、前記洗浄液流路と前記第一及び第二の流路を介して接続し、前記第一及び第二のフィルタを洗浄した洗浄液が排出される排出流路と、を備え、当該切り替え手段は、前記溶離液が第一の流路を通過するときに前記洗浄液が第二の流路を通過し、前記溶離液が第二の流路を通過するときに前記洗浄液が第一の流路を通過するようにすることを特徴とする分析装置。
【0016】
試料を溶離する溶離液が通過する溶離液流路と、前記溶離液を前記溶離液流路内で送液する溶離液送液部と、溶離液が通過する前記溶離液流路上に設けられた試料導入部と、当該試料導入部と流路を介して接続された反応コイルと、前記試料導入部と前記分離カラムの間に設けられ、前記試料導入部と前記分離カラムの間の流路を第一及び第二の流路に分ける切り替え手段と、前記第一及び第二の流路上にそれぞれ設けられた第一及び第二のフィルタと、前記第一又は第二のフィルタを洗浄する洗浄液が通過する洗浄液流路と、前記洗浄液を当該洗浄液流路内で送液する洗浄液送液部と、前記洗浄液流路と前記第一及び第二の流路を介して接続し、前記第一及び第二のフィルタを洗浄した洗浄液が排出される排出流路と、を備え、当該切り替え手段は、前記溶離液が第一の流路を通過するときに前記洗浄液が第二の流路を通過し、前記溶離液が第二の流路を通過するときに前記洗浄液が第一の流路を通過するようにすることを特徴とする分析装置。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、試料由来の流路詰まりがフィルタ部で詰まりが発生しても、流路を切り替えることで測定が継続できる。詰まりフィルタは測定中に自動で洗浄,回復されるため、人力を介さず継続的に安定した測定を実現することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明による、液体クロマトグラフの一実施例である。
【図2】本発明による、液体クロマトグラフの一実施例(切り替え時)である。
【図3】本発明による、フローインジェクション分析装置の一実施例である。
【図4】本発明による、フローインジェクション分析装置の一実施例(切り替え時)である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施例を、図面を用いて以下に詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。
【実施例1】
【0020】
本発明を用いた実施例として、液体クロマトグラフによる血清中薬剤成分の分析を例に説明する。
【0021】
本実施例の液体クロマトグラフの主要構成について、図1を用いて説明する。液体クロマトグラフは、溶離液101を分析流路に導入するための送液ポンプ102と、測定対象である溶液試料を分析流路に導入するための試料導入部103と、試料導入部103の直後の分析流路に設置され、2つのフィルタ109,110を各流路に設けた流路切り替えバルブ108と、試料導入部103から導入された溶液試料中に含まれる様々な成分を相互に分離する分離カラム104と、分離カラムで分離された測定対象成分をイオン化するイオン源105と、イオン化された成分を検出する質量分析計106、これらを制御しまた質量分析計106で得られたシグナルを記録する制御部107、から主に構成される。
【0022】
流路切り替えバルブ108の前後には、流路内圧力をモニタする圧力センサ111および112が設置される。圧力センサ111は送液ポンプ102と試料導入部103の間に、また圧力センサ112は流路切り替えバルブ108と分離カラム104の間に設置される。流路切り替えバルブ108には、分析流路だけでなくフィルタ洗浄用流路が接続される。洗浄液113あるいは洗浄液118のいずれかを選択して洗浄用流路に導入するための送液ポンプ114が流路切り替えバルブ108に接続されている。圧力センサ116は送液ポンプ114と流路切り替えバルブ108の間に、また圧力センサ117は流路切り替えバルブ108の後段,廃液流路115に設置される。フィルタ109および110は、どちらか一方が分析流路に、またもう一方が洗浄流路にあり、流路切り替えバルブ108のバルブ位置により決定される。
【0023】
液体クロマトグラフを用いて血清試料中薬剤成分を測定する場合、血清試料は有機溶媒添加による除タンパク操作、あるいは溶媒抽出や固相抽出などの前処理を施した後に、試料導入部から導入されることが通常である。これらの操作により、血清試料中のタンパク質を始めとした主要成分の多くは除去されることが期待されるが、一方でリン脂質など脂溶性成分の一部は溶液中に残存する。測定対象成分を溶液中に残したままその他の成分を全て除去することは、非常に困難である。そのため、多くの試料溶液を連続して測定した場合、試料導入部103以降で残存成分による目詰まりが発生する。従来の液体クロマトグラフでは、試料導入部の後段には分離カラムが設けられており、すなわち分離カラムの目詰まりが起こる。その場合、分離カラムは使用不能となり操作者による分離カラム交換作業が必要となる。当然、目詰まりが発生してから分離カラムを交換するまでの間、測定は停止する。
【0024】
一方、本実施例において、同様に残存成分を多く含む血清処理試料溶液を連続して測定した場合、流路切り替えバルブ108の流路内に設置されたフィルタ109に目詰まりが発生する。目詰まりが発生すると、発生箇所で圧力損失が起きるため、目詰まり箇所の前後で送液圧力に大きな差が生じる。本実施例では圧力センサ111と112が流路切り替えバルブ108の流路の上流および下流位置に設けられており、両圧力センサの圧力をモニタすることでフィルタ目詰まりを発見することができる。例えばフィルタにフィルタ外径4mm,孔径1μm,厚さ2mmのメッシュフィルタを用い、送液ポンプから水/アセト二トリル=50/50混合液を流速1mL/minで送液した場合、目詰まりが発生していない状態でのフィルタ部の圧力損失は0.2MPa以下である。そのため、目詰まりをモニタするには、圧力差の閾値は1.0MPa以上とすれば十分に判定可能である。またこの程度の圧力上昇であれば、通常の高速液体クロマトグラフでは測定値に影響を与えない。
【0025】
上記圧力差をモニタすることでフィルタ目詰まりを検知した場合、制御部107から流路切り替えバルブ108のバルブ位置を切り替える信号が送られ、流路は図2に示すように変更される。分析側流路には目詰まりが発生していないフィルタ110が切り替えられ、一方で目詰まりしたフィルタ109は洗浄側流路に切り替えられる。流路を切り替えることで、フィルタ部(流路切り替えバルブ部)での圧力損失は0.2MPa以下となり、正常な測定を継続することができる。
【0026】
ここで目詰まりしたフィルタは、洗浄液113により洗浄される。血清処理試料の場合、先に記載したように目詰まりの原因となる成分の多くは脂溶性成分であるため、洗浄液113には脂溶性溶媒を用いることが望ましい。例えばクロロホルム/メタノール混合液(容量比2/1)は、脂質成分を溶解するのに汎用される溶液である。このような脂溶性溶媒をフィルタ109に送液することで、脂溶性成分は溶媒中に溶解し、廃液流路115より排出される。洗浄流路には圧力センサ116および117が設置されており、両圧力センサの圧力差をモニタすることで、目詰まりしたフィルタの洗浄の度合いを知ることができる。例えば送液流路で圧力損失1.0MPaに相当する目詰まりが発生したフィルタは、洗浄流路でクロロホルム/メタノール混合液を送液した場合、1.5MPa程度の圧力損失が発生する。洗浄液送液の間、圧力損失をモニタし、0.2MPa以下になるまで混合液を継続することでフィルタ洗浄が終了し目詰まり成分が除去できたことを確認することができる。洗浄終了後は、溶離液101と同じ組成である洗浄液118を送液することで、クロロホルム/メタノール混合液が分析流路に混入することを避けることができる。その他、送液ポンプ114は、複数の洗浄液113あるいは洗浄液118として、アルカリ,酸,有機溶媒,溶離液と同等のものを洗浄液として切り替えて、流路に導入することができる。
【0027】
また脂溶性溶媒に溶解しない、粒子状成分が試料溶液中に混入し、目詰まりを起こす場合もある。本実施例では、分析流路と洗浄流路とでフィルタ109ないし110への送液方向が異なる。そのため、脂溶性溶媒に溶解しない粒子状成分がフィルタ表面に存在した場合であっても、フィルタを逆洗するために同様に廃液流路から排出することが可能である。
【0028】
以上のように、本実施例によれば、血清処理試料中の脂質成分により試料導入部後段に設置したフィルタで目詰まりが発生した場合でも、圧力変化により目詰まりを検知し、流路を切り替えることで測定を継続することができる。目詰まりが発生したフィルタは洗浄流路にて自動で洗浄され、詰まり成分が除去される。そのため、測定者の処置無しに継続的に測定を行うことが可能となる。
【実施例2】
【0029】
本発明を用いた別の実施例として、フローインジェクション分析装置による血清中成分分析を例に説明する。
【0030】
本実施例のフローインジェクション分析装置の主要構成について、図3を用いて説明する。フローインジェクション分析装置は、溶離液101を分析流路に導入するための送液ポンプ102と、測定対象である溶液試料を分析流路に導入するための試料導入部103と、試料導入部103の直後の分析流路に設置され、2つのフィルタ109,110を各流路に設けた流路切り替えバルブ108と、試料中成分と反応する成分を含む反応液119と、反応液119を送液する送液ポンプ120と、反応液流路と分析流路を接続する三方ジョイント121と、恒温槽122内に設置された反応コイル123と、反応液119と反応した測定成分を検出する紫外可視吸光検出器124と、これらを制御しまた紫外可視吸光検出器124で得られたシグナルを記録する制御部107、から主に構成される。
【0031】
流路切り替えバルブ108の前後には、流路内圧力をモニタする圧力センサ111および112が設置される。圧力センサ111は送液ポンプ102と試料導入部103の間に、また圧力センサ112は流路切り替えバルブ108と反応コイル123の間に設置される。流路切り替えバルブ108には、分析流路だけでなくフィルタ洗浄用流路が接続される。洗浄液113あるいは洗浄液118のいずれかを選択して洗浄流路に導入するための送液ポンプ114が流路切り替えバルブ108に接続されている。
【0032】
圧力センサ116は送液ポンプ114と流路切り替えバルブ108の間に、また圧力センサ117は流路切り替えバルブ108の後段,廃液流路に設置される。フィルタ109および110は、どちらか一方が分析流路に、またもう一方が洗浄流路にあり、流路切り替えバルブ108のバルブ位置により決定される。
【0033】
血清試料中にはタンパク質や脂質,無機物質など多種多様な成分が含まれており、またその量は測定試料毎にまちまちである。そのため、従来のフローインジェクション分析装置を用いて多くの試料溶液を連続して測定した場合、試料導入部103以降でこれら成分による目詰まりが発生することは容易に想像できる。
【0034】
一方、本実施例において血清処理試料溶液を連続して測定した場合、流路切り替えバルブ108の流路内に設置されたフィルタ109に目詰まりが発生する。目詰まりが発生すると、発生箇所で圧力損失が起きるため、目詰まり箇所の前後で送液圧力に大きな差が生じる。本実施例では圧力センサ111と112が流路切り替えバルブ108の流路の上流および下流位置に設けられており、両圧力センサの圧力をモニタすることでフィルタ目詰まりを発見することができる。例えばフィルタにフィルタ外径4mm,孔径1μm,厚さ2mmのメッシュフィルタを用い、送液ポンプからイオン交換水を流速0.5mL/minで送液した場合、目詰まりが発生していない状態でのフィルタ部の圧力損失は0.2MPa以下である。そのため、目詰まりをモニタするには、圧力差の閾値は1.0MPa以上とすれば十分に判定可能である。
【0035】
上記圧力差をモニタすることでフィルタ目詰まりを検知した場合、制御部107から流路切り替えバルブ108のバルブ位置を切り替える信号が送られ、流路は図4に示すように変更される。分析側流路には目詰まりが発生していないフィルタ110が切り替えられ、一方で目詰まりしたフィルタ109は洗浄側流路に切り替えられる。流路を切り替えることで、フィルタ部(流路切り替えバルブ部)での圧力損失は0.2MPa以下となり、正常な測定を継続することができる。
【0036】
ここで目詰まりしたフィルタは、洗浄液113により高い流速で洗浄される。血清試料について種々検討した結果、目詰まりの原因となる成分はタンパク質,脂溶性成分およびこれらの混合成分であった。即ち、洗浄液113にはアルカリ性溶媒を用いることが望ましい。例えば0.1M水酸化ナトリウム水溶液は、タンパク質をはじめとした生物由来成分を分解除去するのに汎用される溶液である。このようなアルカリ性溶媒をフィルタ109に送液することで、目詰まり成分は除去され、廃液流路115より排出される。
【0037】
洗浄流路には圧力センサ116および117が設置されており、両圧力センサの圧力差をモニタすることで、目詰まりしたフィルタの洗浄の度合いを知ることができる。例えば分析流路でイオン交換水送液時に圧力損失1.0MPaに相当する目詰まりが発生したフィルタは、洗浄流路で水酸化ナトリウム水溶液を送液した場合、同様に1.0MPa程度の圧力損失が発生する。洗浄液送液の間、圧力損失をモニタし、0.2MPa以下になるまで混合液を継続することでフィルタ洗浄が終了し目詰まり成分が除去できたことを確認することができる。洗浄終了後は、溶離液101と同じ組成である洗浄液118、この場合はイオン交換水を洗浄流路に送液することで、0.1M水酸化ナトリウム水溶液が分析流路に混入することを避けることができる。その他、送液ポンプ114は、複数の洗浄液113あるいは洗浄液118として、アルカリ,酸,有機溶媒,溶離液と同等のものを洗浄液として切り替えて、流路に導入することができる。
【0038】
また粒子状成分が試料溶液中に混入し、目詰まりを起こす場合もある。本実施例のように、分析流路と洗浄流路とでフィルタ109ないし110への送液方向が異なる。そのため、洗浄液に溶解しない粒子状成分がフィルタ表面に存在した場合であっても、フィルタを逆洗するために同様に廃液流路から排出することが可能である。
【0039】
以上のように、本実施例によれば、血清試料中成分により試料導入部後段に設置したフィルタで目詰まりが発生した場合でも、圧力変化により目詰まりを検知し、流路を切り替えることで測定を継続することができる。目詰まりが発生したフィルタは洗浄流路にて自動で洗浄され、詰まり成分が除去される。そのため、測定者の処置無しに継続的に測定を行うことが可能となる。
【符号の説明】
【0040】
101 溶離液
102,114,120 送液ポンプ
103 試料導入部
104 分離カラム
105 イオン源
106 質量分析計
107 制御部
108 流路切り替えバルブ
109,110 フィルタ
111,112,116,117 圧力センサ
113,118 洗浄液
115 廃液流路
119 反応液
121 三方ジョイント
122 恒温槽
123 反応コイル
124 紫外可視吸光検出器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を溶離する溶離液が通過する溶離液流路と、
前記溶離液を前記溶離液流路内で送液する溶離液送液部と、
溶離液が通過する前記溶離液流路上に設けられた試料導入部と、
当該試料導入部と流路を介して接続された分離カラムと、
前記試料導入部と前記分離カラムの間に設けられ、前記試料導入部と前記分離カラムの間の流路を第一及び第二の流路に分ける切り替え手段と、
前記第一及び第二の流路上にそれぞれ設けられた第一及び第二のフィルタと、
前記第一又は第二のフィルタを洗浄する洗浄液が通過する洗浄液流路と、
前記洗浄液を当該洗浄液流路内で送液する洗浄液送液部と、
前記洗浄液流路と前記第一及び第二の流路を介して接続し、前記第一及び第二のフィルタを洗浄した洗浄液が排出される排出流路と、
を備え、
当該切り替え手段は、前記溶離液が第一の流路を通過するときに前記洗浄液が第二の流路を通過し、前記溶離液が第二の流路を通過するときに前記洗浄液が第一の流路を通過するようにすること
を特徴とする分析装置。
【請求項2】
請求項1の分析装置において、
前記第一及び第二のフィルタの前後の流路上に圧力センサを設け、
当該第一及び第二のフィルタの前後の流路上の圧力センサ間の圧力差をモニタする制御部
を備えることを特徴とする分析装置。
【請求項3】
請求項1の分析装置において、
前記第一のフィルタおよび第二のフィルタにおける前記溶離液が流れる方向と前記洗浄液が流れる方向が逆向きとなるように前記第一及び第二の流路が構成されることを特徴とする分析装置。
【請求項4】
請求項1の分析装置において、
前記洗浄液送液部は、複数の洗浄液を切り替えて洗浄液流路に導入することを特徴とする分析装置。
【請求項5】
試料を溶離する溶離液が通過する溶離液流路と、
前記溶離液を前記溶離液流路内で送液する溶離液送液部と、
溶離液が通過する前記溶離液流路上に設けられた試料導入部と、
当該試料導入部と流路を介して接続された反応コイルと、
前記試料導入部と前記分離カラムの間に設けられ、前記試料導入部と前記分離カラムの間の流路を第一及び第二の流路に分ける切り替え手段と、
前記第一及び第二の流路上にそれぞれ設けられた第一及び第二のフィルタと、
前記第一又は第二のフィルタを洗浄する洗浄液が通過する洗浄液流路と、
前記洗浄液を当該洗浄液流路内で送液する洗浄液送液部と、
前記洗浄液流路と前記第一及び第二の流路を介して接続し、前記第一及び第二のフィルタを洗浄した洗浄液が排出される排出流路と、
を備え、
当該切り替え手段は、前記溶離液が第一の流路を通過するときに前記洗浄液が第二の流路を通過し、前記溶離液が第二の流路を通過するときに前記洗浄液が第一の流路を通過するようにすること
を特徴とする分析装置。
【請求項6】
請求項5の分析装置において、
前記第一及び第二のフィルタの前後の流路上に圧力センサを設け、
当該第一及び第二のフィルタの前後の流路上の圧力センサ間の圧力差をモニタする制御部
を備えることを特徴とする分析装置。
【請求項7】
請求項5の分析装置において、
前記第一のフィルタおよび第二のフィルタにおける前記溶離液が流れる方向と前記洗浄液が流れる方向が逆向きとなるように前記第一及び第二の流路が構成されることを特徴とする分析装置。
【請求項8】
請求項5の分析装置において、
前記洗浄液送液部は、複数の洗浄液を切り替えて洗浄液流路に導入することを特徴とする分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−145513(P2012−145513A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−5389(P2011−5389)
【出願日】平成23年1月14日(2011.1.14)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)