説明

分注ノズル内径汚れ検知方法および検体分注装置

【課題】分注ノズルの内径汚れの有無をいつでも判定する方法および検体分注装置を提供する。
【解決手段】本発明の分注ノズル内径汚れ検知方法は、分注洗浄終了後、分注ノズル(50)の吸引・吐出時の分注ノズル(50)を接続した配管(59)内の圧力変化を圧力センサ(54)で検出する検出ステップと、検出した圧力変化から圧力変化波形の山の数を演算部(13c)により演算する演算ステップと、演算した山の数に基づいて分注ノズルの内径汚れを判定部(13d)により判定する判定ステップとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液や尿などの検体を分析する分析装置における分注ノズル内径汚れ検知方法および検体分注装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
生化学などの自動分析装置においては、分注ポンプおよびこれに連結された分注ノズルを有する分注装置を設け、ノズル移送部により分注ノズルを検体吸引位置、検体吐出位置およびノズル洗浄位置に移動して、分注ポンプを吸排動作させることにより、検体容器から所定量の検体を反応容器に分注するようにしている。この種の自動分析装置においては、検体として、血清あるいは血漿などが使用されるが、前記検体中にはフィブリンなどの固形物が存在するため、その固形物が分注ノズルやそれに連結されている配管に詰まる場合がある。分注ノズルに詰まりが生じると、所定量の検体を反応容器に分注できないため、分析結果に重大な悪影響を及ぼすことになる。このため、分注動作中の所定のタイミングにおける圧力センサの出力をモニタすることにより、分注ノズルが実際に詰まっているのか、骨髄等の血清以外の体液や、透析患者の血清等の粘性の高い検体を分注したのかを判別して、再検処理数を低減する分注装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平11−83868号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では、分注装置による検体吸引後、ノズル詰まりを判定し、詰まり発生と判定した場合は前記分注ノズルはノズル洗浄装置にて洗浄されているが、分注ノズルの詰まりが完全に洗浄されたか否かは確認されておらず、分注ノズル内の汚れが完全に除去しきれない場合であってもそのまま分注処理がなされ、検体や液体試料が無駄になることがあった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、分注ノズル内径汚れの有無をいつでも判定することができ、検体や試薬を含む液体試料を無駄にせず、再検を行う時間を減らすことが可能な分注ノズル内径汚れの検知方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の分注ノズル内径汚れの検知方法は、検体の吸引および吐出を行なう分注ノズルを備えた検体分注装置を用いて、分注洗浄終了後の前記分注ノズル内径汚れを検知する分注ノズル内径汚れ検知方法であって、前記分注ノズルを接続した配管内における前記分注ノズルの吸引または吐出時の圧力変化を検出する検出ステップと、前記検出ステップにて検出した前記圧力変化から圧力変化波形の山の数を演算する演算ステップと、前記演算ステップにて演算した前記山の数に基づいて前記分注ノズル内径汚れの有無を判定する判定ステップと、を含むことを特徴とする。
【0007】
また、本発明の分注ノズル内径汚れの検知方法は、上記の発明において、前記分注ノズル内径汚れの有無を判定する工程は、所定の閾値を越える前記山の数が2以下の場合に前記分注ノズルに内径汚れが有ると判定することを特徴とする。
【0008】
また、本発明の分注ノズル内径汚れの検知方法は、上記の発明において、前記検体分注装置による検体吸引または吐出時の圧力波形により分注ノズル詰まりを検知する分注ノズル詰まり検知ステップと、前記分注ノズル詰まり検知ステップにより分注ノズルに詰まりが有ると判定された場合に、吸引検体廃棄後分注プローブを洗浄する分注プローブ洗浄ステップと、を含み、前記分注プローブ洗浄ステップ後に、分注ノズルから洗浄水吐出時の圧力変化に基づいて前記分注ノズル内径汚れの有無を判定することを特徴とする。
【0009】
また、本発明の検体分注装置は、検体の吸引および吐出を行なう分注ノズルを備えた検体分注装置であって、前記分注ノズルを接続した配管内における圧力変化を検出する圧力検知手段と、前記分注ノズルの吸引または吐出時に、前記圧力検知手段が検出した前記配管内の圧力変化から圧力変化波形の山の数を演算する演算手段と、前記演算手段が演算した前記山の数に基づいて前記分注ノズルの内径汚れの有無を判定する判定手段と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
また、本発明の検体分注装置は、上記の発明において、前記判定手段は、所定の閾値を越える前記山の数が2以下の場合に前記分注ノズルに内径汚れが有ると判定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明にかかる検体分注装置における分注ノズルの内径汚れの有無判定方法および検体分注装置は、前記分注ノズルの吸引または吐出時に検出した配管内の圧力変化から圧力変化波形の山の数を演算するので、分注ノズルの内径汚れの有無をいつでも判定することができ、検体や試薬を含む液体試料を無駄にせず、再検を行う時間を減らすことができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明に係る分注ノズルの内径汚れの検知方法の好適な実施の形態について説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、図面の記載において、同一部分には同一の符号を付している。
【0013】
図1は、本発明にかかる分注ノズルの内径汚れの検知方法を使用する分析装置1の構成を示す概略構成図である。分析装置1は、分析対象である検体および試薬を反応容器32にそれぞれ分注し、分注した反応容器32内で生じる反応を光学的に測定する測定機構9と、測定機構9を含む分析装置1全体の制御を行うとともに測定機構9における測定結果の分析を行う制御機構10とを備える。分析装置1は、これらの二つの機構が連携することによって複数の検体の分析を自動的に行う。
【0014】
検体テーブル2は、駆動手段によって矢印で示す方向に回転され、外周には周方向に沿って等間隔で配置される収納室21が複数設けられている。各収納室21は、検体を収容した検体容器22が着脱自在に収納される。検体容器22は、上方に向けて開口する開口部22aを有している。また、検体テーブル2が回転すると、検体容器22は検体分注装置5によって検体が吸引される検体吸引位置に搬送される。なお、検体容器22には、収容された検体の種類や分析項目に関する検体情報を有する識別ラベル(図示せず)が貼り付けられ、検体テーブル2は、検体容器22の識別ラベルの情報を読み取る読取部23を備えている。
【0015】
試薬テーブル4は、駆動手段によって矢印で示す方向に回転され、断面が扇形の凹部に成形された収納室41が周方向に沿って等間隔で複数配置されている。各収納室41には、試薬を収納した試薬容器42が着脱自在に収納される。試薬容器42は、上方に向けて開口する開口部42aを有している。また、試薬テーブル4が回転すると、試薬容器42は試薬分注装置7によって試薬が吸引される試薬吸引位置に搬送される。なお、試薬容器42の外径方向には、収容された試薬の種類やロット番号等に関する試薬情報を有する識別ラベル(図示せず)が貼り付けられ、試薬テーブル4は、試薬容器42の識別ラベルの情報を読み取る読取部43を備えている。
【0016】
検体分注装置5は、検体の吸引および吐出を行なう分注ノズルが先端部に取り付けられ、鉛直方向への昇降および自身の基端部を通過する鉛直線を中心軸とする回転を自在に行なうアームを備える。検体分注機構5は、検体テーブル2と反応テーブル3との間に設けられ、検体テーブル2によって所定位置に搬送された検体容器22内の検体を分注ノズルによって吸引し、アームを旋回させ、反応テーブル3によって所定位置に搬送された反応容器32に分注して検体を所定タイミングで反応テーブル3上の反応容器32内に移送する。
【0017】
試薬分注装置7は、試薬の吸引および吐出を行なう分注ノズルが先端部に取り付けられ、鉛直方向への昇降および自身の基端部を通過する鉛直線を中心軸とする回転を自在に行なうアームを備える。試薬分注機構7は、試薬テーブル4と反応テーブル3との間に設けられ、試薬テーブル4によって所定位置に搬送された試薬容器42内の試薬を分注ノズルによって吸引し、アームを旋回させ、反応テーブル3によって所定位置に搬送された反応容器32に分注して試薬を所定タイミングで反応テーブル3上の反応容器32内に移送する。
【0018】
検体分注ノズル洗浄装置6は、検体テーブル2と反応テーブル3との間であって、検体分注装置5における分注ノズル50の水平移動の軌跡の途中位置に設けられ、試薬分注ノズル洗浄装置8は、試薬テーブル4と反応テーブル3との間であって、試薬分注装置7における分注ノズル50の水平移動の軌跡の途中位置に設けられる。
【0019】
反応テーブル3は、駆動手段によって矢印で示す方向に回転され、外周には周方向に沿って複数の反応容器収納部である凹部31が等間隔で設けられている。各凹部31には、反応容器32が着脱自在に収納される。また、反応テーブル3が回転すると、反応容器32は試薬分注装置7によって試薬が吐出される試薬吐出位置に、検体分注装置5によって検体が吐出される検体吐出位置に搬送される。反応テーブル3は、各凹部31の半径方向両側に測定光が通過する開口が形成されている。反応テーブル3の外周近傍には、測光装置33、洗浄装置34及び攪拌装置35が配置されている。
【0020】
反応容器32は、測光装置33の光源33aから出射された分析光に含まれる光の80%以上を透過する透明素材、例えば、耐熱ガラスを含むガラス、環状オレフィンやポリスチレン等の合成樹脂が使用される。
【0021】
測光装置33は、反応テーブル3の外周近傍に配置され、反応容器32に保持された液体を分析する分析光を出射する光源33aと、液体を保持した反応容器32を透過した分析光を分光して受光する受光部33bとを有している。測光装置33は、前記光源33aと受光部33bが反応テーブル3の凹部31を挟んで半径方向に対向する位置に配置されている。
【0022】
洗浄装置34は、反応容器32から液体や洗浄液を排出する排出手段と、洗浄液の分注手段とを有している。洗浄装置34は、測光終了後の反応容器32から測光後の液体を排出した後、洗浄液を分注する。洗浄装置34は、洗浄液の分注と排出の動作を複数回繰り返すことにより、反応容器32の内部を洗浄する。このようにして洗浄された反応容器32は、再度、新たな検体の分析に使用される。
【0023】
攪拌装置35は、反応容器32に保持された液体を攪拌する装置であり、パルスモータ、アーム、カム、攪拌板等を有している。
【0024】
制御部101は、検体テーブル2、検体分注装置5、反応テーブル3、測光装置33、洗浄装置34、攪拌装置35、試薬分注装置7、試薬テーブル4、読取部23および43、ノズル洗浄装置6および8、分析部103、入力部102、記憶部104、送受信部107および出力部105等と接続される。制御部101は、記憶部104が記憶するプログラムをメモリから読み出すことにより分析装置1の制御を実行する。
【0025】
分析部103は、制御部101を介して測光装置33に接続され、受光部33bが受光した光量に基づく反応容器32内の液体の吸光度から検体の成分濃度等を分析し、分析結果を制御部101に出力する。入力部102は、制御部101へ検査項目等を入力する操作を行う部分であり、例えば、キーボードやマウス等が使用される。出力部105は、分析内容や警報等を表示するもので、ディスプレイパネル等が使用される。なお、入力部102および出力部105は、タッチパネルによって実現するようにしてもよい。出力部105は、プリンタ、スピーカー等を用いて構成され、制御部101の制御のもと、分析に関する諸情報を出力する。送受信部107は、図示しない通信ネットワークを介して所定の形式にしたがった情報の送受信を行なうインターフェースとしての機能を有する。
【0026】
以上のように構成される分析装置1は、回転する反応テーブル3によって周方向に沿って搬送されてくる複数の反応容器32に、試薬分注装置7により試薬容器42から試薬を順次分注される。試薬が分注された反応容器32は、反応テーブル3によって周方向に沿って搬送され、検体分注装置5によって検体テーブル2に保持された複数の検体容器22から検体が順次分注される。
【0027】
そして、検体が分注された反応容器32は、反応テーブル3によって攪拌装置35へ搬送され、分注された試薬と検体が順次攪拌されて反応する。このようにして検体と試薬が反応した反応液を保持した反応容器32は、反応テーブル3が再び回転したときに測光装置33を通過し、光源から出射された分析光の光束が透過する。このとき、反応液を透過した光束は、受光部33bで側光され、分析部103によって成分濃度等が分析される。そして、分析が終了した反応容器32は、洗浄装置34によって洗浄された後、再度検体の分析に使用される。
【0028】
以下、本発明の検体分注装置における分注ノズルの内径汚れの有無判定方法および検体分注装置にかかる実施の形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0029】
図2は、この発明の検体分注装置5の構成を示すブロック図である。検体分注装置5は、図2に示すように、分注ノズル50、シリンジ52、圧力センサ54、洗浄水ポンプ56等を備えている。
【0030】
分注ノズル50は、配管59によってシリンジ52、圧力センサ54及び洗浄水ポンプ56と接続されている。分注ノズル50は、ノズル駆動部51によって図中矢印Zで示す上下方向および矢印Xで示す水平方向に搬送され、検体テーブル2の収納部21に収納された検体容器22から検体を吸引し、この検体を反応テーブル3の凹部31に収納された反応容器32に吐出することによって検体を分注する。
【0031】
シリンジ52は、プランジャー駆動部53の駆動によってプランジャー52bをシリンダー52a内を往復動させることにより検体を吸引・吐出するシリンジポンプである。プランジャー駆動部53の駆動によりプランジャー52bをシリンダー52a内を後退移動させることにより、分注ノズル50は検体容器22内の検体を吸引し、プランジャー駆動部53の駆動によりプランジャー52bをシリンダー52a内を進出移動させることにより、反応容器32に検体を吐出させる。
【0032】
圧力センサ54は、配管59内の圧力を検出し、圧力信号(アナログ)として増幅回路57へ出力する。
【0033】
洗浄水ポンプ56は、タンク58に貯留された脱気した洗浄水L1を吸い上げ、圧力センサ54との間に設けた電磁弁55を介して配管59内に圧送する。このとき、電磁弁55は、制御部101からの制御信号によって、吸い上げた洗浄水L1を配管59内に圧送する場合には「開」に切り替えられ、シリンジ52によって分注ノズル50が検体を吸引し、吐出する場合には「閉」に切り替えられる。
【0034】
増幅回路57は、圧力センサ54から出力される圧力信号(アナログ)を増幅し、増幅した圧力信号を汚れ検知部13へ出力する。
【0035】
汚れ検知部13は、処理部13a、検出部13b、演算部13cおよび判定部13dを備えている。
【0036】
処理部13aは、増幅回路57から入力される圧力信号(アナログ)をデジタル信号に変換処理する部分で、例えばA/D変換器が使用される。検出部13bは、処理部13aによってデジタル信号に変換された圧力信号から配管59内の圧力を検出する。演算部13cは、検出部13bが検出した圧力変化から圧力変化波形の山の数を演算し、演算結果を判定部13dに出力する。判定部13dは、演算部13cが演算した山の数に基づいて分注ノズル50の内径汚れの有無を判定する。
【0037】
制御部101は、ノズル駆動部51、プランジャー駆動部53、洗浄水ポンプ56および電磁弁55の作動を制御する。判定部13dにより判定された汚れの有無は、制御部101を介して出力部によりディスプレイ装置に表示させ、あるいは警報装置によって警報音を発することによってオペレータに告知させてもよい。
【0038】
以上のように構成される検体分注装置5において、本形態の分注ノズルの内径汚れ検知方法は、分注ノズル50による検体分注後であって、当該分注ノズル50の検体分注ノズル洗浄装置6による洗浄後に、前記分注ノズル50内に汚れが残存するか否かを検知するために使用される。
【0039】
本形態では、上記の分注ノズル50の検体分注ノズル洗浄装置6での洗浄後、引き続き洗浄水ポンプ56を駆動してタンク58内の洗浄水L1を分注ノズル50から吐出し、該吐出時の配管59内の圧力波形を検出し、圧力変化波形の山の数を演算して、演算した山の数に基づいて分注ノズル50の内径汚れの有無を判定する。
【0040】
図3は、内径に汚れのない分注ノズル50から洗浄水L1を検体分注ノズル洗浄装置6に吐出する際の圧力波形を拡大して示したものである。分注ノズル50の内径に汚れがない場合には、図3に示すように、駆動信号Sがプランジャー駆動部53に入力された後、駆動信号Sの入力が停止されるまでの間、波形Wには複数の山P1、P2、P3が見られる。
【0041】
これに対し、分注ノズル50内に汚れが存在すると、圧力変化が緩慢になる。このため、図4に示すように、波形Wには山が1つだけとなる。図4は、分注ノズル50の汚れがひどい場合であり、汚れの程度が少なくなるに従って山が出現してくる。
【0042】
従って、本形態では、山の数に基づいて前記分注ノズルの内径汚れの有無を判定する。即ち、図5に示すように、駆動信号Sがプランジャー駆動部53に入力された後、駆動信号Sの入力が停止されるまでの信号出力時間tにおいて、駆動信号Sが入力された後の最大電圧値よりも所定値ΔV(=2V)だけ小さい電圧値を閾値Tsとして設定し、判定部13dに記憶させる。そして、信号出力時間tにおいて、演算部13cは、波形Wに含まれる閾値Tsを超える電圧値を有する山Pの数Niを演算する。一方、予め清浄な分注ノズルで洗浄水L1を吐出させた場合にも、演算部13cは、同様にして山Pの数N0を演算し、判定部13dに記憶させる。判定部13dは、演算部13cが演算した山Pの数NiとN0を比較し、数Niが数N0よりも小さい場合に(Ni<N0)、分注ノズル50の内径汚れがあると判定する。
【0043】
以下、汚れ検知部13による分注ノズル50の内径汚れの有無の判定と判定結果に基づく対処を図6に示すフローチャートに基づいて説明する。先ず、洗浄水ポンプ56を駆動してタンク58内の洗浄水L1を分注ノズル50から吐出して、圧力センサ54により該吐出時の配管59内の圧力波形を検出し(ステップS10)、圧力変化波形に基づき演算部13cは山の数Niを演算し(ステップS12)、判定部13dは演算した山の数Niと山のN0数を比較して、分注ノズル50の内径汚れの有無を判定する(ステップS14)。
【0044】
山の数Niが山の数N0以上場合(ステップS14:No)、判定部13dは、分注ノズル50の内径汚れがないと判定し、新たな検体の分注を行なう(ステップS16)。この場合、新たな検体の分注の前に、出力部105はディスプレイにその旨を表示してもよい。一方、山の数Niが山の数N0より小さい場合(ステップS14:Yes)、判定部13dは分注ノズル50の内径汚れがあると判定し、異常を告知する(ステップS18)。異常の告知は、例えば、ディスプレイ装置に分注ノズルの内径汚れが存在する旨を表示し、あるいはアラームによって警報音を発する。この告知に従い、分注ノズル50の内径汚れを洗浄するために、分析装置内に別途設けられた洗剤が貯留された貯留槽で、洗剤の吸引・吐出により当該分注ノズル50を洗浄したり、当該分注ノズル50を検体分注装置5から取り外して超音波洗浄などを行なう。
【0045】
このように、本形態の検体分注装置における分注ノズルの内径汚れ検知方法および検体分注装置は、電磁弁55を閉じてシリンジ52を駆動し、分注ノズル50から洗浄水L1を吐出することにより、配管59内の圧力変化を検出すればよいので、分注ノズル50の内径汚れの有無をいつでも簡単に判定することができる。
【0046】
一方、本形態の変形例として、分注ノズル50による検体吸引時に分注ノズル50の詰まりが発生した場合であって、前記分注ノズル50の検体分注ノズル洗浄装置6による洗浄後に、前記分注ノズル50内に汚れが残存するか否かを検知するための使用が例示される。
【0047】
以下に、分注ノズルの詰まり検知について説明する。
【0048】
図7(a)〜(d)は、異なる検体((a)〜(d))の吸引動作期間(T1)、吐出動作期間(T2)および洗浄水吐出による洗浄動作期間(T3)の、分注ノズル50が接続された配管59内の圧力波形である。図7(a)は正常な検体(低粘度の血清)、図7(b)は骨髄等の体液や透析患者の血清等の粘度の高い検体、図7(c)および(d)はフィブリンを含む血漿等の検体の吸引・吐出・ノズル洗浄時の圧力波形であるが、図7(c)および(d)は、フィブリンの作用により分注ノズルが一部閉塞および完全に閉塞した状態である。
【0049】
検体分注前の検体分注装置5において、配管59にて連結されたシリンジ52および分注ノズル50には、洗浄水L1が分注ノズル50の先端まで満たされている。
【0050】
プランジャー駆動部53を駆動して、プランジャー52bをシリンダー52a内で後退移動させ分注ノズル50内に検体((a)〜(d))を所定量吸い込み(図7(a)〜(d)のT1)、ノズル駆動部51によって分注ノズル50を上昇させ、反応テーブル3の検体吐出位置まで水平移動後、再び分注ノズル50を下降させ、吸い込んだ検体((a)〜(d))は、分注ノズルの詰まりがない場合は反応容器32に吐出する(図7(a)〜(d)のT2)。
【0051】
そして、ノズル駆動部51によって分注ノズル50を再度上昇させ、検体分注ノズル洗浄装置6まで水平移動後、再び分注ノズル50を下降させ、電磁弁55を開に切り替え、洗浄水ポンプ56を駆動してタンク58内の洗浄水L1を配管59に圧送し、洗浄水L1を分注ノズル50から検体分注ノズル洗浄装置6に吐出することにより分注ノズル50を洗浄する(図7(a)〜(d)のT3)。
【0052】
図7(a)および(b)では、検体吸引(T1)後で吐出(T2)前のt1時において、配管59内の圧力は大気圧に戻っていることから、分注ノズル50の詰まりもなく、所定量の検体が吸入されているため、反応容器32に検体を吐出後、他の検体の分注に備えて分注ノズル50は検体分注ノズル洗浄装置6にて洗浄される。
【0053】
図7(c)および(d)では、検体吸引(T1)後で吐出(T2)前のt1時において、程度の差はあるものの配管内は陰圧のままであり、分注ノズル50には詰まりが発生し所定量の検体は吸引されていない。したがって、該検体を分析に用いると正確な分析値が得られないため、吸引した検体は廃棄され、分注ノズルは詰まり除去のために検体分注ノズル洗浄装置6で洗浄される。
【0054】
本発明の分注ノズルの内径汚れの検知方法は、上記(c)および(d)の検体を分注した分注ノズル50の検体分注ノズル洗浄装置6での洗浄後に、分注ノズル50内に汚れが存在しているか否かの確認に使用される。
【0055】
図8のフローチャートを用いて、検体吸引時に分注ノズル詰まりが発生した場合の、本発明の分注ノズル内径汚れの有無の判定方法と判定結果に基づく対処について説明する。
【0056】
先ず、検体分注装置5は、分注ノズル50により検体容器22から検体を吸入し(ステップS100)、検体吸入後の圧力波形を検出して分注ノズル50の詰まりを判別する(ステップS102)。検体吸入後に詰まり判定手段により分注ノズル50の詰まりを検知しなかった場合(ステップS102:No、図7(a)および(b)の場合)、検体を反応容器32に吐出し(ステップS104)、別の検体の分注に備えて(ステップS100)、検体分注ノズル洗浄装置6で分注ノズル50を洗浄する(S106)。
【0057】
一方、検体吸入後、詰まり判定手段により分注ノズル50の詰まりを検知した場合(ステップS102:Yes、図7(c)および(d)の場合)、規定量の検体は吸引されておらず、該検体を分析に用いると正確な分析値が得られないため、該検体は検体分注ノズル洗浄装置6に吐出されて廃棄される(ステップS108)。
【0058】
その後、分注ノズル50は、詰まりを除去するために検体分注ノズル洗浄装置6で洗浄され(ステップS110)、洗浄終了後、引き続き洗浄水ポンプ56を駆動してタンク58内の洗浄水L1を分注ノズル50から吐出して、圧力センサ54により該吐出時の配管59内の圧力波形を検出し(ステップS112)、圧力変化波形に基づき演算部13cは山の数Niを演算し(ステップS114)、判定部13dは演算した山の数Niと山のN0数を比較して、分注ノズル50の内径汚れの有無を判定する(ステップS116)。
【0059】
山の数Niが山の数N0以上場合(ステップS116:No)、判定部13dは、分注ノズル50の内径汚れがないと判定し、新たな検体の分注を行なう(ステップS100)。この場合、新たな検体の分注の前に、出力部105はディスプレイにその旨を表示してもよい。一方、山の数Niが山の数N0より小さい場合(ステップS116:Yes)、判定部13dは分注ノズル50の内径汚れがあると判定し、異常を告知する(ステップS118)。異常の告知は、例えば、ディスプレイ装置に分注ノズルの内径汚れが存在する旨を表示し、あるいはアラームによって警報音を発する。この告知に従い、分注ノズル50の内径汚れを洗浄するために、分析装置内に別途設けられた洗剤が貯留された貯留槽で、当該分注ノズル50で洗剤を吸引・吐出させたり、当該分注ノズル50を検体分注装置5から取り外して超音波洗浄などを行なう。
【0060】
このように、本発明の検体分注装置における分注ノズルの内径汚れ検知方法および検体分注装置は、配管59内の圧力変化を検出すればよいので、分注ノズル50の内径汚れの有無をいつでも簡単に判定することができ、検体や試薬を含む液体試料を無駄にせず、再検を行う時間を減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本実施の形態にかかる検体分注装置を使用する分析装置の概略構成図である。
【図2】本実施の形態にかかる検体分注装置の構成を示すブロック図である。
【図3】清浄な分注ノズルの洗浄水吐出時の圧力波形を示す図である。
【図4】分注ノズルに内径汚れが存在する場合の洗浄水吐出時の圧力波形を示す図である。
【図5】検出した圧力変化から圧力変化波形の山の数の演算方法を説明する図である。
【図6】本実施の形態にかかる分注ノズル内径汚れの有無の判定方法について説明するフローチャートである。
【図7】分注ノズルで異なる検体を吸引、吐出し、その後洗浄するまでの圧力波形を示す図である。
【図8】本実施の形態の変形例にかかる分注ノズル内径汚れの有無の判定方法について説明するフローチャートである。
【符号の説明】
【0062】
1 分析装置
2 検体テーブル
21 収納部
22 検体容器
22a 開口部
23 読取部
3 反応テーブル
31 凹部
32 反応容器
33 測光装置
33a 光源
33b 受光部
34 洗浄装置
35 攪拌装置
4 試薬テーブル
41 収納部
42 試薬容器
42a 開口部
43 読取部
5 検体分注装置
6 検体分注ノズル洗浄装置
7 試薬分注装置
8 試薬分注ノズル洗浄装置
9 測定機構
10 制御機構
13 汚れ検知部
13a 処理部
13b 検出部
13c 演算部
13d 判定部
50 分注ノズル
51 ノズル駆動部
52 シリンジ
52a シリンダー
52b プランジャー
53 プランジャー駆動部
54 圧力センサ
55 電磁弁
56 洗浄水ポンプ
58 タンク
101 制御部
102 入力部
103 分析部
104 記憶部
105 出力部
107 送受信部
L1 洗浄水
P 圧力変化波形の山
W 圧力変化波形
S 駆動信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体の吸引および吐出を行なう分注ノズルを備えた検体分注装置を用いて、分注洗浄終了後の前記分注ノズル内径汚れを検知する分注ノズル内径汚れ検知方法であって、
前記分注ノズルを接続した配管内における前記分注ノズルの吸引または吐出時の圧力変化を検出する検出ステップと、
前記検出ステップにて検出した前記圧力変化から圧力変化波形の山の数を演算する演算ステップと、
前記演算ステップにて演算した前記山の数に基づいて前記分注ノズル内径汚れの有無を判定する判定ステップと、
を含むことを特徴とする分注ノズル内径汚れ検知方法。
【請求項2】
前記判定ステップは、所定の閾値を越える前記山の数が2以下の場合に前記分注ノズルに内径汚れが有ると判定することを特徴とする請求項1に記載の分注ノズル内径汚れ検知方法。
【請求項3】
前記検体分注装置による検体吸引または吐出時の圧力波形により分注ノズル詰まりを検知する分注ノズル詰まり検知ステップと、
前記分注ノズル詰まり検知ステップにより分注ノズルに詰まりが有ると判定された場合に、吸引検体廃棄後分注プローブを洗浄する分注プローブ洗浄ステップと、
を含み、前記分注プローブ洗浄ステップ後に、分注ノズルから洗浄水吐出時の圧力変化に基づいて前記分注ノズル内径汚れの有無を判定することを特徴とする請求項1または2に記載の分注ノズル内径汚れ検知方法。
【請求項4】
検体の吸引および吐出を行なう分注ノズルを備えた検体分注装置であって、
前記分注ノズルを接続した配管内における圧力変化を検出する圧力検知手段と、
前記分注ノズルの吸引または吐出時に、前記圧力検知手段が検出した前記配管内の圧力変化から圧力変化波形の山の数を演算する演算手段と、
前記演算手段が演算した前記山の数に基づいて前記分注ノズルの内径汚れの有無を判定する判定手段と、
を備えたことを特徴とする検体分注装置。
【請求項5】
前記判定手段は、所定の閾値を越える前記山の数が2以下の場合に前記分注ノズルに内径汚れが有ると判定することを特徴とする請求項4に記載の検体分注装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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