説明

分注装置、分注方法及び自動分析装置

【課題】液体試料が微量化し、粘度が広範に亘る液体試料であっても高精度な分注を可能とする分注装置、分注方法及び自動分析装置を提供すること。
【解決手段】検体または試薬を含む液体試料を吸引する吸引位置と、吸引した液体試料を吐出する吐出位置との間を移動する分注ノズルによって液体試料を吸引し、吸引した液体試料を吐出位置に配置された容器に吐出して分注を行う分注装置、分注方法及び自動分析装置。分注装置10は、分注ノズル11の移動経路上に、分注ノズルの吐出端面に分注ノズルの内面よりも親和性が低い薬剤を塗布する薬剤塗布部18が配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分注装置、分注方法及び自動分析装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、血液や体液等の生体試料を分析する自動分析装置は、分注装置を用いて検体や試薬等の液体試料を反応容器に分注している。このとき、分注装置は、粘度が広範に亘る液体試料を精度良く分注するために、液体試料の吐出開始時における分注ノズル内の空気の体積を求め、求めた空気の体積から所望量の液体試料の分注に必要なプランジャの押し込み動作量を算出するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2004−20320号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に開示された分注装置は、分注ノズル内の空気の体積を求める手段を必要とすることから構成が複雑になるうえ、粘度が広範に亘る液体試料を分注するうえで必ずしも分注精度の向上が期待できないという問題があった。特に、近年、分析コスト低減の要求から、検体や試薬の微量化が求められ、分注する液体試料が微量になるほど粘度の違いは分注精度に大きく影響し、液体試料の量が1μL程度になると分注精度の確保が難しくなるという問題があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、液体試料が微量化し、粘度が広範に亘る液体試料であっても高精度な分注を可能とする分注装置、分注方法及び自動分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の分注装置は、検体または試薬を含む液体試料を吸引する吸引位置と、吸引した前記液体試料を吐出する吐出位置との間を移動する分注ノズルによって前記液体試料を吸引し、吸引した前記液体試料を前記吐出位置に配置された容器に吐出して分注を行う分注装置であって、前記分注ノズルの移動経路上に、前記分注ノズルの吐出端面に前記液体試料に対して前記分注ノズルの内面よりも親和性が低い薬剤を塗布する薬剤塗布部が配置されていることを特徴とする。
【0007】
また、本発明の分注装置は、上記の発明において、前記薬剤塗布部は、前記分注ノズルの移動経路上であって、前記液体試料を吐出した分注ノズルを洗浄する洗浄槽と前記検体を保持した検体容器との間に配置されていることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の分注装置は、上記の発明において、前記薬剤塗布部は、前記薬剤を含浸した含浸部材、前記薬剤を塗布したシート又は前記薬剤の薬剤容器のいずれか一つであることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の分注装置は、上記の発明において、前記分注ノズルの吐出端面に塗布された前記薬剤の定着を促進する定着促進部が前記分注ノズルの移動経路上に配置されていることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の分注装置は、上記の発明において、前記定着促進部は、前記分注ノズルの吐出端面に風又は温風を送風し、前記吐出端面に塗布された前記薬剤を乾燥させることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の分注装置は、上記の発明において、前記薬剤塗布部は、前記分注ノズルの吐出端面への前記薬剤の塗布を確認する確認手段を備えていることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の分注装置は、上記の発明において、前記確認手段は、前記分注ノズルが前記薬剤塗布部に接触した際の圧力を検知する圧力検知手段又は前記薬剤容器内の薬剤の液面を検知する液面検知手段であることを特徴とする。
【0013】
また、上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の分注方法は、検体または試薬を含む液体試料を吸引する吸引工程と、吸引した前記液体試料を吐出する吐出工程と、前記分注ノズルを洗浄する洗浄工程と、を含む分注方法において、前記洗浄工程の後に、前記分注ノズルの吐出端面に前記液体試料に対して親和性が低い薬剤を塗布する塗布工程を含むことを特徴とする。
【0014】
また、本発明の分注方法は、上記の発明において、前記塗布工程の後に、前記分注ノズルの吐出端面に塗布した前記薬剤の定着を促進する定着促進工程を含むことを特徴とする。
【0015】
また、本発明の分注方法は、上記の発明において、前記塗布工程の後に、前記分注ノズルの吐出端面への前記薬剤の塗布を確認する塗布確認工程を含むことを特徴とする。
【0016】
また、上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の自動分析装置は、検体と試薬とを攪拌して反応させ、反応液の光学的特性を測定して前記反応液を分析する自動分析装置であって、前記分注装置を用いて前記検体又は前記試薬を分注することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の分注装置は、分注ノズルの移動経路上に、分注ノズルの吐出端面に液体試料に対して親和性が低い薬剤を塗布する薬剤塗布部が配置され、本発明の分注方法は、洗浄工程の後に、分注ノズルの吐出端面に液体試料に対して前記分注ノズルの内面よりも親和性が低い薬剤を塗布する塗布工程を含んでいる。また、本発明の自動分析装置は、前記分注装置を用いて検体又は試薬を分注する。このため、本発明の分注装置、分注方法および自動分析装置は、液体試料が微量化し、粘度が広範に亘る液体試料であっても高精度な分注を行うことができるという効果を奏する。
【0018】
(実施の形態1)
以下、本発明の分注装置、分注方法及び自動分析装置にかかる実施の形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。図1は、本発明の分注装置を備えた本発明の自動分析装置を示す概略構成図である。図2は、本発明の分注装置の概略構成を示す斜視図である。図3は、本発明の分注装置で使用する分注ノズルを示す縦断面図である。図4は、図3に示す分注ノズルのA部拡大図である。なお、本明細書に添付した各図面は、表示した各構成要素の相対位置を模式的に示すものであって、各構成要素の絶対的な大きさを示すものではない。
【0019】
自動分析装置1は、図1に示すように、第1試薬テーブル2、第2試薬テーブル3、反応テーブル5、第1試薬分注装置7、第2試薬分注装置8、検体容器移送部9、検体分注装置10、攪拌部21、測光部22、洗浄部23及び制御部25を備えている。
【0020】
第1試薬テーブル2及び第2試薬テーブル3は、それぞれ構造が同一であるので、第1試薬テーブル2について説明し、第2試薬テーブル3については、対応する構成要素に対応する符号を使用する。
【0021】
第1試薬テーブル2は、図1に示すように、駆動手段に回転されて保持した複数の試薬容器2aを周方向に搬送する。このとき、第1試薬テーブル2は、外周に第1読取部2bが配置されている。第1読取部2bは、複数の試薬容器2aに添付されたバーコードラベル等の情報記録媒体の情報を読み取る。
【0022】
反応テーブル5は、図1に示すように、複数の反応容器6が周方向に沿って配列され、試薬テーブル2,3の駆動手段とは異なる駆動手段によって正転或いは逆転されて反応容器6を搬送する。反応テーブル5は、例えば、一周期で時計方向に(1周−1反応容器)/4回転し、四周期で(1周−1反応容器)回転する。
【0023】
反応容器6は、四角筒形状の容量が数nL〜数十μLと微量なキュベットである。反応容器6は、測光部22が出射する分析光の80%以上を透過する透明素材、例えば、耐熱ガラスを含むガラス,環状オレフィンやポリスチレン等の合成樹脂が使用される。反応容器6は、反応テーブル5の近傍に設けた第1試薬分注装置7や第2試薬分注装置8によって第1試薬テーブル2や第2試薬テーブル3の試薬容器2a,3aから試薬が分注される。
【0024】
ここで、第1試薬分注装置7及び第2試薬分注装置8は、それぞれ構造が同一であるので、第1試薬分注装置7について説明し、第2試薬分注装置8については、対応する構成要素に対応する符号を使用する。
【0025】
第1試薬分注装置7は、図1に示すように、水平面内を矢印方向に回動されると共に、上下方向に昇降されるアーム7aと、試薬を分注する分注ノズル7bとを有している。アーム7aは、一端が支柱の上部に支持されている。第1試薬分注装置7は、洗浄水によって分注ノズル7bを洗浄する洗浄槽7cが分注ノズル7bの移動軌跡上に配置されている。洗浄槽7cは、分注ノズル7bから吐出させて分注ノズル7bの内側を洗浄した洗浄水を廃棄すると共に、槽内に噴出する洗浄水によって分注ノズル7bの外側を洗浄する。
【0026】
検体容器移送部9は、図1に示すように、複数のラック9aを矢印方向に沿って移送する移送手段であり、ラック9aを歩進させながら移送する。ラック9aは、検体を収容した複数の検体容器9bを保持している。ここで、検体容器移送部9は、中央に緊急検体を収容する保冷庫9cが設けられている。そして、検体容器9bは、検体容器移送部9によって移送されるラック9aの歩進が停止するごとに、検体分注装置10によって検体が各反応容器6へ分注される。
【0027】
検体分注装置10は、本発明の分注装置であり、図2に示すように、水平方向に回動すると共に、上下方向に昇降する駆動アーム10aと、駆動アーム10aに支持された分注ノズル11と、駆動アーム10aを支持する支柱10cと、分注ノズル11を洗浄する洗浄槽10dを有している。洗浄槽10dは、洗浄水を槽内に噴出する配管と、槽内に噴出して分注ノズル11の外面を洗浄した洗浄水を排出する配管とが接続されている。洗浄槽10dは、第1試薬分注装置7の洗浄槽7cと同様に、分注ノズル11の移動軌跡上に配置されている。検体分注装置10は、分注動作を実現するノズル駆動機構12、ポンプ駆動機構15、薬剤塗布部18及び定着促進部19を備えている。
【0028】
ここで、分注ノズル11は、ステンレス等の金属を加工するか、或いはポリスチレン等の合成樹脂を射出成型して製造される。分注ノズル11は、図3及び図4に示すように、分注対象の液体を保持する保持筒部11aと、保持筒部11aの先端に形成され、液体を吸引し、吐出する開口11cが形成された吐出端面11bとを有している。分注ノズル11は、保持筒部11aの先端側が先細に成形され、吐出端面11bは、液体との接触角が保持筒部11aの内面よりも大きくなるように処理されている。即ち、分注ノズル11は、図3に示すように、先端の少なくとも吐出端面11bの表面に分注対象の液体に対して分注ノズルの保持筒部11a内面よりも親和性が低いフッ素樹脂又はシリコーン樹脂からなる非親和性膜11dが形成されている。このため、保持筒部11aの内面と吐出端面11bとの境界(例えば、図4のB部参照)は、液体との接触角が異なる境界となる。このように、吐出端面11bに非親和性膜11dを形成することにより、分注ノズル11は、分注する液体の液切れ性が向上する。
【0029】
ノズル駆動機構12は、分注ノズル11を昇降させると共に回動させるものであり、図2に示すように、回動モータ13と昇降モータ14を有している。回動モータ13は、回転軸13aに取り付けたホイール13bと支柱10cに取り付けたホイール10eとの間にタイミンベルト13cが巻き掛けられている。昇降モータ14は、回転軸に取り付けたホイールとねじ軸10fの下端に取り付けたホイール10gとの間にタイミンベルト14aが巻き掛けられている。ここで、ねじ軸10fは、支柱10cの下端に取り付けた昇降ブロック10hに螺着されており、昇降ブロック10hと共にボールねじを構成している。
【0030】
ポンプ駆動機構15は、分注ノズル11に検体の分注を行わせるものであり、図2に示すように、プランジャポンプ15aと分注モータ15eとを備えている。プランジャポンプ15aは、シリンダ15bとプランジャ15cとを有し、分注モータ15eによってプランジャ15cが往復駆動される。分注モータ15eは、回転軸に連設されたねじ軸15fに昇降ブロック15gが取り付けられている。分注モータ15eは、昇降ブロック15gにプランジャ15cから延出するロッド15dの下端が連結されている。ここで、プランジャポンプ15aは、シリンダ15bと分注ノズル11との間、シリンダ15bと洗浄水タンクとの間が配管15hによって接続されている。そして、シリンダ15bと洗浄水タンクとの間を接続する配管15hには、ポンプ16と弁17が設けられている。
【0031】
ポンプ16は、洗浄水タンクに保持された洗浄水をポンプ駆動機構15のシリンダ15bへ圧送する。弁17は、前記洗浄水タンクとポンプ駆動機構15との間を接続する配管15hにおける洗浄水の流通を切り替える。
【0032】
薬剤塗布部18は、図2に示すように、分注ノズル11の移動経路上に配置され、分注対象の検体に対して分注ノズル11の内面よりも親和性が低いフッ素樹脂溶液又はシリコーン樹脂溶液等の薬剤を分注ノズル11の吐出端面11bに塗布する。薬剤塗布部18は、図2及び図5に示すように、配管18aから供給されるフッ素樹脂溶液又はシリコーン樹脂溶液等の薬剤を含浸した含浸パッドであり、下部には前記薬剤の塗布を確認する確認手段として圧力サンサ18bが配置されている。圧力サンサ18bは、分注ノズル11が下降して吐出端面11bが薬剤塗布部18に接触した際の圧力を検知して吐出端面11bへの前記薬剤の塗布を確認する。圧力センサ18bは、検知した圧力を圧力信号として制御部25へ出力する。
【0033】
定着促進部19は、分注ノズルの移動経路上に配置され、分注ノズル11の吐出端面11bにブロア又はヒータを備えたブロアによって風又は温風を送風する。定着促進部19は、分注ノズル11の吐出端面11bに塗布されたフッ素樹脂溶液又はシリコーン樹脂溶液等の薬剤を乾燥させることで吐出端面11bに塗布された薬剤の定着を促進させる部分であり、ブロア又はヒータを備えたブロアが使用される。
【0034】
攪拌部21は、図1に示すように、反応テーブル5外周の第2試薬分注装置8近傍に配置され、反応容器6に分注された検体と試薬とを含む液体試料を攪拌する。攪拌部21は、例えば、表面弾性波素子によって液体試料を非接触で攪拌する攪拌装置や、攪拌棒によって液体試料を攪拌する攪拌装置が使用される。
【0035】
測光部22は、図1に示すように、反応テーブル5外周の攪拌部21と洗浄部23との間に配置され、試薬と検体とが反応した反応容器6内の反応液を分析するための分析光を出射する。測光部22は、反応容器6内の反応液を透過した分析光の光量に対応する光信号を制御部25へ出力する。
【0036】
洗浄部23は、図1に示すように、反応テーブル5外周の検体分注装置10近傍に配置され、ノズルによって反応容器6内の反応液を吸引して排出した後、前記ノズルから洗剤や洗浄水等の洗浄液を注入し、吸引する。洗浄部23は、この動作を複数回繰り返すことにより、測光部22による測光が終了した反応容器6内を洗浄する。
【0037】
制御部25は、例えば、マイクロコンピュータ等が使用され、図1に示すように自動分析装置1の各構成部と接続されている。制御部25は、自動分析装置1の各構成部の作動を制御すると共に、測光部22が出力した光信号に基づく反応液の吸光度から検体の成分濃度等を分析する。また、制御部25は、キーボード等の入力部26から入力される分析指令に基づいて自動分析装置1の各構成部の作動を制御しながら分析動作を実行させると共に、分析結果や警告情報の他、入力部26から入力される表示指令に基づく各種情報等をディスプレイパネル等の表示部27に表示する。また更に、制御部25は、薬剤塗布部18の圧力サンサ18aから入力される圧力信号を予め設定した圧力閾値に関する閾値信号を比較することによって分注ノズル11の吐出端面11bへフッ素樹脂又はシリコーン樹脂の溶液が適切に塗布されたか否かを判定する。
【0038】
以上のように構成される自動分析装置1は、制御部25の制御の下に作動し、回転する反応テーブル5によって周方向に沿って搬送されてくる複数の反応容器6に検体分注装置10によってラック9aに保持された複数の検体容器9bから検体が順次分注される。検体が順次分注された反応容器6は、試薬分注機構7,8が試薬容器2a,3aから順次試薬が分注される。
【0039】
このようにして、試薬と検体が分注された反応容器6は、反応テーブル5が停止する都度、攪拌部21によって順次攪拌されて試薬と検体とが反応し、反応テーブル5が再び回転したときに測光部22を通過する。このとき、反応容器6内の試薬と検体とが反応した反応液は、測光部22で測光され、制御部25によって成分濃度等が分析される。そして、反応液の測光が終了した反応容器6は、洗浄部23に移送されて洗浄された後、再度検体の分析に使用される。
【0040】
ここで、本発明の検体分注装置10は、分注対象の検体に対して分注ノズル11の保持筒部11a内面よりも親和性が低いフッ素樹脂溶液又はシリコーン樹脂溶液等の薬剤を分注ノズル11の吐出端面11bに塗布する薬剤塗布部18を備えている。このため、検体分注装置10は、必要に応じて前記薬剤を分注ノズル11の吐出端面11bに塗布することができる。従って、検体分注装置10は、例えば検体の分析中に、制御部25の制御のもとに、前記薬剤を分注ノズル11の吐出端面11bに塗布することができる。このような前記薬剤を分注ノズル11の吐出端面11bに塗布する際の制御部25による検体分注装置10の作動工程を、図6に示すフローチャートを参照しつつ以下に説明する。
【0041】
先ず、制御部25は、分注ノズル11を洗浄する(ステップS100)。このとき、制御部25は、検体を反応容器6に吐出した反応テーブル5上の位置から分注ノズル11を洗浄槽10dの直上まで移動した後、洗浄槽10dで分注ノズル11を洗浄する。次に、制御部25は、水平方向に回動させて分注ノズル11を洗浄槽10dの位置から薬剤塗布部18の直上へ移動する(ステップS102)。
【0042】
次いで、制御部25は、分注ノズル11を下降させ、吐出端面11bへ前記薬剤を塗布する(ステップS104)。このとき、分注ノズル11が下降して吐出端面11bが薬剤塗布部18に接触した際の圧力を圧力サンサ18bが検知し、検知した圧力を圧力信号として制御部25へ出力する。これにより、制御部25は、圧力サンサ18bから入力される圧力信号をもとに吐出端面11bへの前記薬剤の塗布を確認する(ステップS106)。
【0043】
ここで、制御部25は、薬剤塗布部18の圧力サンサ18aから入力される圧力信号を予め設定した圧力閾値に関する閾値信号と比較することによって分注ノズル11の吐出端面11bへ前記薬剤が適切に塗布されたか否かを判定する。前記薬剤が適切に塗布されていないと判定した場合、制御部25は、表示部27にその旨を表示すると共に、再度前記薬剤を塗布する動作を検体分注装置10に実行させる。
【0044】
前記薬剤が適切に塗布されている場合、制御部25は、分注ノズル11を元の位置へ上昇させる(ステップS108)。次に、制御部25は、水平方向に回動させて分注ノズル11を薬剤塗布部18の位置から定着促進部19の直上へ移動し、塗布した前記薬剤の定着を促進させる(ステップS110)。これにより、分注ノズル11は、吐出端面11bに塗布された前記薬剤が非親和性膜11dとして定着する。
【0045】
次いで、制御部25は、水平方向に回動させて分注ノズル11を定着促進部19の位置からラック9aに保持された検体容器9bの位置へ移動させる(ステップS110)。その後、制御部25は、分注ノズル11を下降させ、検体容器9bから検体を吸引する(ステップS114)。
【0046】
次に、制御部25は、分注ノズル11を上昇させた後、水平方向に回動させて分注ノズル11を反応容器6の位置へ移動させる(ステップS116)。次いで、制御部25は、分注ノズル11を下降させて検体を反応容器6へ吐出させる(ステップS118)。
【0047】
このとき、分注ノズル11は、検体に対して保持筒部11aの内面よりも親和性が低い薬剤が吐出端面11bに薬剤塗布部18によって塗布される。従って、検体分注装置11は、分注する複数の検体の粘度が広範に亘っていても液切れよく検体を分注することができ、粘度の異なる複数の検体を分注量のばらつきを抑えて高精度に分注することができる。
【0048】
(実施例1,比較例1)
ここで、検体分注装置10の分注性能を確認するため、フッ素樹脂からなる非親和性膜11dを形成したステンレスからなる分注ノズル11(実施例1)と、非親和性膜11dを形成していない以外は分注ノズル11と同一のステンレスからなる比較ノズル(比較例1)とを用い、指定分注量を0.4μLに設定して1mPa・sと3mPa・sの粘度を有するテスト検体を分注(吐出)した際の実分注量(μL)を測定した。ここで、テスト検体の粘度は、人間の血液の粘度に基づいて決定した。
【0049】
この結果を、1mPa・sの実分注量を基準とする実分注量差(%)と共に表1に示した。ここで、表1に示す結果は、各ノズルについてテスト検体を100回吐出し、その都度測定した実分注量の平均値及び実分注量の平均値に基づく実分注量差(%)であり、各実分注量は、テスト検体として色素を分注し、それを希釈した後に、吸光度を測定することによって測定した。また、実分注量差(%)は、(実分注量差/1mPa・sの実分注量)×100によって求めた。
【0050】
【表1】

【0051】
表1に示すように、分注ノズル11を使用した検体分注装置10は、比較ノズルを使用した検体分注装置に比べて実分注量差(%)を約1/2まで小さく抑えることができる。即ち、本発明の検体分注装置10は、吐出端面11bに非親和性膜11dを形成した簡単な構成の分注ノズル11を使用することによって、粘度の異なる液体を分注しても、分注量のばらつきを小さく抑えることができ、粘度が広範に亘る液体試料の高精度な分注を可能とすることができることが分かった。
【0052】
ここで、図6に示すフローチャートにおいては、分注ノズル11が検体を分注する都度吐出端面11bに薬剤を塗布している。しかし、本発明の分注方法は、洗浄工程の後に、分注ノズルの吐出端面に液体試料に対して親和性が低い薬剤を塗布する塗布工程を含んでいればよい。このため、本発明の分注方法は、例えば、数回の分注に対して1回だけ薬剤を塗布し、或いは自動分析装置1の電源をオンしたウォーミングアップ中に分注ノズルを洗浄水によって洗浄した後、吐出端面11bに薬剤を塗布するようにしてもよい。
【0053】
検体に対して分注ノズル11の内面よりも親和性が低いフッ素樹脂溶液からなる薬剤としては、例えば、株式会社フロロテクノロジー製,商品名「フロロサーフ」FG3020TH−8.0等を使用することができ、シリコーン樹脂溶液からなる薬剤としては、NTTアドバンステクノロジ株式会社製,商品名「ハイレック」1550、Shell Car Care Int.社製,商品名「Rain-X」を使用することができる。この場合、吐出端面11bに塗布されたこれらの薬剤は、検体に対して親和性が低いので、完全に乾燥することによって非親和性膜11dとして定着されず、いわゆる生乾きの状態でも分注ノズル11を分注に使用することができる。
【0054】
一方、薬剤塗布部は、上述の薬剤塗布部18に代えて、図7に示すように、フッ素樹脂からなる薬剤又はシリコーン樹脂からなる薬剤31aを塗布したシート31を使用してもよい。このとき、分注ノズル11は、吐出端面11bを上方からシート31に接触させて薬剤を吐出端面11bに転写する。その後、転写した薬剤31aを常温又は高温で乾燥することによって吐出端面11bに保持筒部11aの内面よりも親和性が低い非親和性膜を形成してもよい。また、シート31は、2本のロール32の間に掛け渡し、薬剤31aを吐出端面11bに転写する都度、シート31を一方のロール32側へ巻き取るようにする。このとき、吐出端面11bをシート31に接触した際の圧力は、シート31の下部に配置した圧力サンサ33によって検知する。
【0055】
更に、薬剤塗布部は、図8に示すように、フッ素樹脂溶液からなる薬剤又はシリコーン樹脂溶液からなる薬剤35aを保持した薬剤容器35としてもよい。この場合、薬剤容器35は、分注ノズル11の吐出端面11bへの前記薬剤の塗布を確認する確認手段として、分注ノズル11の下端が薬剤35aに接触したことを静電容量の変化によって検知する公知の液面検知手段(例えば、特許第3064487号公報参照)を備えている。
【0056】
尚、本発明の分注装置で使用する分注ノズルは、総てが先端部分をテーパ状にしたものについて説明したが、先端部分がテーパ状でなく、ストレートなパイプからなる分注ノズルであってもよい。
【0057】
また、上述の実施の形態は、検体分注装置10の分注ノズル11に薬剤を塗布する薬剤塗布部18を設けた場合について説明した。しかし、例えば、第1試薬分注装置7や第2試薬分注装置8の分注ノズル7bや分注ノズル8bに薬剤塗布部を設けてもよい。この場合、第1試薬分注装置7や第2試薬分注装置8は、薬剤塗布部を試薬容器2a,3aと分注ノズル7b,8bを洗浄する洗浄槽7c,8cとの間に配置する。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の分注装置を備えた本発明の自動分析装置を示す概略構成図である。
【図2】本発明の分注装置の概略構成を示す斜視図である。
【図3】本発明の分注装置で使用する分注ノズルを示す縦断面図である。
【図4】図3に示す分注ノズルのA部拡大図である。
【図5】本発明の分注装置の薬剤塗布部と分注ノズルを示す斜視図である。
【図6】分注ノズルの吐出端面に薬剤を塗布する際の検体分注装置の作動工程を示すフローチャートである。
【図7】薬剤塗布部の第1の変形例を示す斜視図である。
【図8】薬剤塗布部の第2の変形例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0059】
1 自動分析装置
2 第1試薬テーブル
3 第2試薬テーブル
5 反応テーブル
6 反応容器
7 第1試薬分注装置
8 第2試薬分注装置
9 検体容器移送部
10 検体分注装置
11 分注ノズル
12 ノズル駆動機構
13 回動モータ
14 昇降モータ
15 ポンプ駆動機構
16 ポンプ
17 弁
18 薬剤塗布部
19 定着促進部
21 攪拌部
22 測光部
23 洗浄部
25 制御部
26 入力部
27 表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体または試薬を含む液体試料を吸引する吸引位置と、吸引した前記液体試料を吐出する吐出位置との間を移動する分注ノズルによって前記液体試料を吸引し、吸引した前記液体試料を前記吐出位置に配置された容器に吐出して分注を行う分注装置であって、
前記分注ノズルの移動経路上に、前記分注ノズルの吐出端面に前記液体試料に対して前記分注ノズルの内面よりも親和性が低い薬剤を塗布する薬剤塗布部が配置されていることを特徴とする分注装置。
【請求項2】
前記薬剤塗布部は、前記分注ノズルの移動経路上であって、前記液体試料を吐出した分注ノズルを洗浄する洗浄槽と前記検体を保持した検体容器との間に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の分注装置。
【請求項3】
前記薬剤塗布部は、前記薬剤を含浸した含浸部材、前記薬剤を塗布したシート又は前記薬剤の薬剤容器のいずれか一つであることを特徴とする請求項1又は2に記載の分注装置。
【請求項4】
前記分注ノズルの吐出端面に塗布された前記薬剤の定着を促進する定着促進部が前記分注ノズルの移動経路上に配置されていることを特徴とする請求項3に記載の分注装置。
【請求項5】
前記定着促進部は、前記分注ノズルの吐出端面に風又は温風を送風し、前記吐出端面に塗布された前記薬剤を乾燥させることを特徴とする請求項4に記載の分注装置。
【請求項6】
前記薬剤塗布部は、前記分注ノズルの吐出端面への前記薬剤の塗布を確認する確認手段を備えていることを特徴とする請求項5に記載の分注装置。
【請求項7】
前記確認手段は、前記分注ノズルが前記薬剤塗布部に接触した際の圧力を検知する圧力検知手段又は前記薬剤容器内の薬剤の液面を検知する液面検知手段であることを特徴とする請求項6に記載の分注装置。
【請求項8】
検体または試薬を含む液体試料を吸引する吸引工程と、
吸引した前記液体試料を吐出する吐出工程と、
前記分注ノズルを洗浄する洗浄工程と、
を含む分注方法において、
前記洗浄工程の後に、前記分注ノズルの吐出端面に前記液体試料に対して親和性が低い薬剤を塗布する塗布工程を含むことを特徴とする分注方法。
【請求項9】
前記塗布工程の後に、前記分注ノズルの吐出端面に塗布した前記薬剤の定着を促進する定着促進工程を含むことを特徴とする請求項8に記載の分注方法。
【請求項10】
前記塗布工程の後に、前記分注ノズルの吐出端面への前記薬剤の塗布を確認する塗布確認工程を含むことを特徴とする請求項8又は9に記載の分注方法。
【請求項11】
検体と試薬とを攪拌して反応させ、反応液の光学的特性を測定して前記反応液を分析する自動分析装置であって、請求項1〜7のいずれか一つに記載の分注装置を用いて前記検体又は前記試薬を分注することを特徴とする自動分析装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2009−75082(P2009−75082A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−198750(P2008−198750)
【出願日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】