説明

分注装置

【課題】気泡を確実に除去することができる分注装置を提供すること。
【解決手段】給水ポンプ19によって配管15内に脱気水Waを供給して分注ノズル11先端近傍まで満たし、分注ポンプ13の近傍に設けられた給水弁17を閉じて分注ノズル11先端側が開放された脱気水空間を形成し、この脱気水空間に対して分注ポンプ13を動作させることによって分注ノズル11による吸排動作を行わせる分注装置1において、給水弁17を介して脱気水空間に接続され、負圧状態を維持した負圧手段24を備え、脱気水空間内の気泡を除去する場合、給水弁17のA端とC端とを開にして、配管15と、負圧手段24が接続された配管23とを連通状態にして脱気水空間を負圧状態にすることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検体または試薬を含む液体試料を分注する分注装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、検体または試薬を含む液体試料を分注する際に使用する分注装置は、分注ポンプを動作させることによって配管内の液体、例えば、液体を吸引または吐出することによって配管に接続された分注ノズルから液体試料を吸引し、この吸引した液体試料を所定位置に吐出して分注を行っている。
【0003】
しかし、メンテナンス等によって部品類を交換した場合、配管内に僅かな気泡が混入し、液体を収容するシリンダの内部、またはシリンダの加減圧を調整するプランジャの表面に気泡が付着することがある。このような場合、気泡が付着した状態で液体試料を分注すると、分注すべき液体試料の量にばらつきが生じ、その結果、分注精度が低下してしまう問題点があった。
【0004】
そこで、この問題を解決するために、シリンダの注入口から吐出口に向けてプランジャの周りを旋回するようにして液体を流すことによってシリンダ内部に旋回流を発生させ、この発生させた旋回流によってシリンダの内部およびプランジャの表面に付着する気泡を除去する分注装置が知られている(特許文献1)。
【0005】
【特許文献1】特開2006−343246号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、シリンダ内部の液体に旋回流を発生させることによって気泡を除去する分注装置では、シリンダ内部の隅に付着した気泡、特にシリンダとプランジャとの間に入り込んだ気泡を除去することができない問題点があった。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、気泡を確実に除去することができる分注装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の分注装置は、分注ノズルと給水ポンプとの間を接続する配管に分注ポンプが接続され、該給水ポンプによって前記配管内に脱気水を供給して前記分注ノズル先端近傍まで満たし、前記分注ポンプの近傍に設けられた給水弁を閉じて分注ノズル先端側が開放された脱気水空間を形成し、この脱気水空間に対して前記分注ポンプを動作させることによって前記分注ノズルによる吸排動作を行わせる分注装置において、切替弁を介して前記脱気水空間に接続され、負圧状態を維持した負圧手段を備え、前記脱気水空間内の気泡を除去する場合、前記切替弁を開にして前記脱気水空間を負圧状態にすることを特徴とする。
【0009】
また、本発明にかかる分注装置は、上記の発明において、前記給水弁は、前記切替弁の機能を有し、前記負圧手段が接続されることを特徴とする。
【0010】
また、本発明にかかる分注装置は、上記の発明において、前記負圧手段は、予め負圧状態に設定した前記脱気水を満たしておくことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明にかかる分注装置では、分注ノズルと給水ポンプとの間を接続する配管に分注ポンプが接続され、該給水ポンプによって前記配管内に脱気水を供給して前記分注ノズル先端近傍まで満たし、前記分注ポンプの近傍に設けられた給水弁を閉じて分注ノズル先端側が開放された脱気水空間を形成し、この形成された脱気水空間に対して切替弁を介して負圧状態を維持した負圧手段を設け、前記脱気水空間内の気泡を除去する場合、前記切替弁を開にして前記脱気水空間を負圧状態にすることで、各気泡の容積が大きくなり、前記脱気水空間内の気泡を容易に除去することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の分注装置にかかる好適な実施の形態について説明する。なお、この実施の形態により発明が限定されるものではない。また、図面の記載においては、同一の部分には同一の符号を付している。
【0013】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1にかかる分注装置の構成を示すブロック図である。この図1における分注装置1は、例えば、検体または試薬を含む液体試料を吸引し、吸引した液体試料を吐出して分注を行うものである。分注装置1は、図1に示すように、分注ノズル11、分注ポンプ13、圧力センサ16、給水弁17、給水ポンプ19、負圧手段24および制御機構30を備える。
【0014】
分注ノズル11は、ステンレス等によって棒管状に形成されたものからなり、ノズル駆動部12によって、図中矢印Xで示す水平方向および矢印Yで示す垂直方向に移動する。また、位置P1、位置P2および位置P3の位置にそれぞれ対応して、検体40aが入った検体容器40、検体40aを吐出する反応容器41および脱気水Waを吐出する洗浄容器42が配置される。
【0015】
分注ポンプ13は、シリンジポンプによって実現され、プランジャ駆動部14によってプランジャ13aを吸排動作する。また、プランジャ駆動部14は、制御部31からの情報に基づいて制御され、プランジャ13aの吸排動作の移動量等を制限する。また、分注ポンプ13は、配管15によって分注ノズル11および給水弁17に接続されている。
【0016】
圧力センサ16は、配管15内の圧力を検出し、圧力信号として制御部31に出力する。
【0017】
給水弁17は、三方弁によって実現され、配管15に接続されるとともに、配管21および配管23にそれぞれ接続されている。より詳細には、給水弁17は、A端が配管15に、B端が配管21に、C端が配管23にそれぞれ接続されており、給水弁駆動部18によって、各端が開閉される。
【0018】
給水ポンプ19は、タンク20に貯蔵された脱気水Waを吸い上げ、分注ポンプ13と給水ポンプ19との間に設けた給水弁17を介して配管15内に脱気水Waを供給する。なお、給水ポンプ19には、配管22が接続され、この配管22の他端は、脱気水Waを収容するタンク20に接続される。なお、脱気水Waは、脱気されたイオン交換水または蒸留水等の非圧縮性流体である。
【0019】
負圧手段24は、シリンジポンプによって実現され、配管15内に満たされた脱気水Waに加わる圧力を負圧状態にする。負圧手段24は、予め配管23内に脱気水Waを満たし、この満たした脱気水Waに対して負圧手段24のプランジャ24aの吸引動作を完了させた状態で、スペーサによって実現される留具25を用いてプランジャ24aが動かないようにしている。この留具25によって、配管23内の脱気水Waが負圧状態に設定される。
【0020】
つぎに、制御機構30について説明する。制御機構30は、制御部31、入力部32、気泡判定部33、切替処理部34、記憶部35および出力部36を備える。ノズル駆動部12、プランジャ駆動部14、圧力センサ16、給水弁駆動部18、給水ポンプ19および制御機構30が備えるこれらの各部は、制御部31に接続されている。
【0021】
制御部31は、CPUによって実現され、分注装置1の各部の処理および動作を制御する。制御部31は、これらの各構成部位に入力される情報について所定の入出力制御を行い、かつ、この情報に対して所定の情報処理を行う。
【0022】
入力部32は、キーボード、マウス、入出力機能を備えたタッチパネル等によって実現され、検体を分注するために必要な指示情報等を外部から取得する。また、入力部32は、図示しない通信ネットワークを介して制御部31への指示情報を取得し、送信する。
【0023】
気泡判定部33は、圧力センサ16から出力される圧力信号をもとに配管15内の圧力を検出し、検出した圧力波形をもとに配管15内の気泡の有無を判定する。
【0024】
切替処理部34は、制御部31を介して、操作者が入力部32に入力する情報に基づいて給水弁駆動部18を制御し、給水弁17の開閉動作および配管の接続の切替処理を行う。
【0025】
記憶部35は、磁気的に情報を記憶するハードディスクと、分注装置1が処理を実行する際にその処理にかかる各種プログラムをハードディスクからロードして電気的に記憶するメモリとを用いて実現される。また、記憶部35は、CD−ROM、DVD−ROMおよびPCカード等の記録媒体に記録された情報を読み取ることができる補助記憶装置を備えてもよい。
【0026】
出力部36は、ディスプレイ、プリンタおよびスピーカ等によって実現され、各種情報を出力する。出力部36は、気泡判定部33が配管15内に気泡有りと判定した場合、配管15内に気泡が有る旨を報知する。
【0027】
以上のように構成される分注装置1は、制御部31の制御のもと、給水ポンプ19によってタンク20から脱気水Waを供給し、脱気水Waで分注ノズル11から給水弁17までの空間を満たす。その後、給水弁17を閉じ、プランジャ駆動部14によってプランジャ13aを排出動作させることで、位置P3に配置された洗浄容器42に所定量の脱気水Waを吐出する。その後、プランジャ駆動部14によってプランジャ13aを吸排動作させることで、位置P1に配置された検体容器40内の検体40aを吸引し、位置P2に配置された反応容器41に吐出する。これにより、検体容器40から反応容器41に1つの検体40aを分注する一連の分注作業が完了する。なお、分注ノズル11の先端部で検体40aを吸引または吐出するとき、検体40aと脱気水Waとの間には空気層が介在するため、検体40aが脱気水Waと混合することがない。
【0028】
つぎに、分注装置1が、例えば、メンテナンス等によって分注ポンプ13を交換した場合、脱気水Waで満たされた配管15内に気泡が発生することがある。このような場合、切替処理部34は、給水弁駆動部18を駆動させて給水弁17のA端とC端とを開にし、配管15と配管23とを連通状態に切り替える。この切替によって、負圧手段24に満たされている負圧状態の脱気水Waが、配管15内に満たされた脱気水Waに加わる圧力を負圧状態にし、分注ノズル11の反対方向に勢いよく脱気水Waを逆流させる。この逆流の流れとともに、負圧によって各気泡の容積が大きくなることから、分注ポンプ13に付着した気泡が容易に剥離される。その後、分注ポンプ13から剥離された気泡は、給水ポンプ19が供給する脱気水Waとともに分注ノズル11から吐出することで配管15内の気泡が除去される。
【0029】
ここで、図2に示すフローチャートを参照して、配管15内の気泡を除去する場合における切替処理部34による切替処理手順について説明する。図2において、まず、切替処理部34は、制御部31を介して操作者が入力部32に入力した情報をもとに、給水弁駆動部18を駆動させて給水弁17のA端、B端、およびC端の全てが閉じた状態から、A端およびC端を開にして、配管15と、負圧手段24が接続された配管23とを連通状態にする切替を行う(ステップS101)。これによって、上述したように、負圧手段24の負圧状態が、配管15内に作用することになる。
【0030】
その後、切替処理部34は、給水弁駆動部18を介して給水弁17のC端を閉にするとともに、B端を開にし、配管15と配管21とを連通状態にする切替を行う(ステップS102)。
【0031】
その後、給水ポンプ19を駆動させて、配管15内に脱気水Waを供給し、分注ノズル11から脱気水Waとともに剥離された気泡を吐出する吐出処理を行う(ステップS103)。
【0032】
その後、切替処理部34は、制御部31を介して、気泡判定部33が行った判定結果を取得し(ステップS104)、気泡判定部33が配管15内に気泡有りと判定したか否かを判定する(ステップS105)。気泡判定部33が配管15内に気泡有りと判定した場合(ステップS105:Yes)、ステップS101へ移行し、配管15内に気泡が存在しないと判定されるまで、上述したステップS101〜ステップS104による切替と吐出との処理を繰り繰り返す。一方、気泡判定部33が配管15内に気泡が存在しないと判定した場合(ステップS105:No)、本処理を終了する。
【0033】
この実施の形態1では、給水弁17を介して配管15に接続され、負圧状態を維持した負圧手段24を備え、この負圧手段24の負圧状態を配管15内に作用させるという簡易な構成で、配管15内に入り込んだ気泡を確実に除去することができる。
【0034】
(実施の形態2)
つぎに、本発明の実施の形態2について説明する。上述した実施の形態1では、負圧手段24が、給水弁17を介して配管15内に接続されていたが、本発明の実施の形態2では、負圧手段53が、切替弁51を介して配管15に接続されている。
【0035】
図3は、本発明の実施の形態2にかかる分注装置の構成を示すブロック図である。図3に示すように、この実施の形態2では、実施の形態1と同様の負圧手段53が、分注ポンプ13と給水弁50との間に、切替弁51を介して配管15に接続され、この負圧手段53の負圧状態を配管15内に作用させる。切替弁51は、電磁弁によって実現され、配管15に接続されるとともに、配管52に接続されている。より詳細には、切替弁51は、F端が配管15に、G端が配管52に接続されている。また、給水弁50は、電磁弁によって実現され、D端が配管15に接続されるとともに、E端が配管21に接続されている。また、切替処理部37は、制御部31を介して、操作者が入力部32に入力する情報に基づいて給水弁駆動部18および切替弁駆動部55を制御し、給水弁50および切替弁51の開閉動作および配管の接続の切替処理を行う。
【0036】
ここで、図4に示すフローチャートを参照して、配管15内の気泡を除去する場合における切替処理部37による切替処理手順について説明する。図4において、まず、切替処理部37は、制御部31を介して操作者が入力部32に入力した情報をもとに、給水弁駆動部18を駆動させ、給水弁50の弁を閉にし(ステップS201)、切替弁駆動部55を駆動させ、切替弁51の弁を開にし、配管15と、負圧手段53が接続された配管52とを連通状態にする切替を行う(ステップS202)。この切替によって、負圧手段53の負圧状態が、配管15内に作用することになる。
【0037】
その後、切替処理部37は、切替弁駆動部55を駆動させ、切替弁51の弁を閉にし(ステップS203)、給水弁駆動部18を駆動させ、給水弁50の弁を開にし、配管15と配管21とを連通状態にする切替を行う(ステップS204)。
【0038】
その後、給水ポンプ19を駆動させて、配管15内に脱気水Waを供給し、分注ノズル11から脱気水Waとともに剥離された気泡を吐出する吐出処理を行う(ステップS205)。
【0039】
その後、切替処理部37は、制御部31を介して、気泡判定部33が行った判定結果を取得し(ステップS206)、気泡判定部33が配管15内に気泡有りと判定したか否かを判定する(ステップS207)。気泡判定部33が配管15内に気泡有りと判定した場合(ステップS207:Yes)、ステップS201へ移行し、配管15内に気泡が存在しないと判定されるまで、上述したステップS201〜ステップS206による切替と吐出との処理を繰り返す。一方、気泡判定部33が配管15内に気泡が存在しないと判定した場合(ステップS207:No)、本処理を終了する。
【0040】
この実施の形態2では、負圧手段53の接続する位置を固定することなく、切替弁51を介して配管15に接続できるので、分注装置1の設計の自由度が増すうえ、配管15内に入り込んだ気泡を確実に除去することができる。
【0041】
ここで、上述した実施の形態1,2で用いた気泡判定部33について詳細に説明する。図5に示すように、気泡判定部33は、処理部33a、検出部33b、算出部33cおよび判定部33dを有する。処理部33aは、圧力センサ16から出力される圧力信号を増幅し、増幅した圧力信号に基づいてデジタル信号に変換処理し、具体的にはA/D変換器によって実現される。検出部33bは、処理部33aによってデジタル信号に変換された圧力信号から配管15内の圧力を検出する。算出部33cは、検出部33bが検出した圧力信号が示す圧力波形を時間軸に沿って複数区間に区分した各圧力波形の傾きを算出する。判定部33dは、検出部33bが算出した傾きが、予め求められた気泡不存在時の傾きの範囲外である区間の数に基づいて、配管15内における気泡の有無を判定する。
【0042】
つぎに、図6を参照して、圧力センサ16によって検出される配管15内の圧力波形について説明する。この圧力波形Wは、分注装置1が検体を分注する際の配管15内の圧力変化を圧力センサ16の出力電圧によって示したものである。なお、図6において、横軸は時間(秒)であり、左縦軸は、圧力センサ16が出力する圧力信号の出力電圧(V)であり、右縦軸は、制御部31からプランジャ駆動部14に出力される分注ポンプ13内のプランジャ13aを駆動する駆動信号Sの駆動電圧(V)である。
【0043】
図6に示すように、圧力波形Wは、分注ノズル11内部の洗浄時の圧力波形W1、脱気水Waの吐出時の圧力波形W2、分注ノズル11内の先端に所定量の空気吸引時の圧力波形W3、分注ノズル11内に所定量の検体吸引時の圧力波形W4、検体容器40に分析の必要な量よりも少し多めに吸引した分注ノズル11内の余分量の吐出時の波形W5、反応容器41に吸引した分注ノズル11内の検体吐出時の圧力波形W6が順次現れたものとなる。
【0044】
ここで、図7は、圧力波形W2を模式的に拡大したものであり、配管15内の脱気水Wa中に気泡が存在しない場合を示し、この場合、2つの大きな山を形成する波形となっている。これに対し、脱気水Wa中に気泡が存在すると、気泡によって圧力の伝達が遅くなるため、圧力変化が緩慢になり、圧力波形W2は、図8に示すように1つの大きな山のみを形成する圧力波形W21となる。図に示した圧力波形W21は、脱気水Wa中に存在する気泡の量が多い場合であり、気泡の量が少なくなるに従って、図7に示した圧力波形W2に近づく。
【0045】
そこで、この気泡判定部33では、図9に示すように、圧力波形W2の区間を時間軸で複数の区間A1〜A8に区切り、各区間A1〜A8において、気泡が存在しないときの圧力波形W2の基準傾きK1〜K8と、圧力センサ16によって検出された圧力波形の各区間の傾きとをそれぞれ比較し、各区間の傾きが、各基準傾きK1〜K8から所定の傾き範囲を超えた区間の数を計数し、この計数値が1以上である場合に、配管15内に気泡が存在すると判定するようにしている。
【0046】
具体的には、図9に示すように、気泡が存在しない圧力波形W2に対応して所定のサンプリング時点t1〜t9によって区切られる区間A1〜A8を設定し、気泡が存在しない圧力波形W2に対応した各区間A1〜A8の基準傾きK1〜K8を設定しておく。このサンプリング時点t1〜t9は、たとえば、圧力波形W2の極大点や極小点に対応付けておくことが好ましい。圧力センサ16によって求められた圧力信号は、処理部33aによってデジタルの圧力電圧値に変換され、検出部33bは、各サンプリング時点t1〜t9の圧力電圧値C1〜C9を検出し、算出部33cが、各区間A1〜A8の傾きKK1〜KK8を算出する。たとえば、区間A1の傾きKK1は、KK1=(C2−C1)/(t2−t1)によって求められる。
【0047】
判定部33dは、各傾きKK1〜KK8から各基準傾きK1〜K8を減算し、減算結果が所定の絶対値範囲内である場合に、「○」の判定をし、所定の絶対値範囲外である場合に「×」の判定をし、「×」の判定が1以上あった場合に、配管15内に気泡が存在すると判定するようにしている。たとえば、図9では、全区間A1〜A8が「○」の判定であり、配管15内に気泡が存在しないと判定出力する。一方、図10では、区間A3〜A6が「×」の判定があり、「×」の判定が1以上であるので、配管15内に気泡が存在すると判定出力する。
【0048】
ここで、図11に示すフローチャートを参照して、気泡判定部33による配管15内の気泡の有無判定処理手順について説明する。図11において、まず、分注装置1は、分析装置立上げ時における分注開始前のチェックに際し、制御部31の制御のもと、分注ポンプ13を駆動し、内部の洗浄が済んだ分注ノズル11から位置P3の洗浄容器42に脱気水Waを吐出するが、処理部33aは、このときに圧力センサ16が検出する圧力波形をデジタル信号に変換し、この変換されたデジタル信号をもとに、検出部33bが、圧力波形を検出する(ステップS301)。
【0049】
その後、算出部33cは、検出部33bが検出した圧力波形をもとに各区間A1〜A8毎の傾きを算出する(ステップS302)。その後、判定部33dは、各区間A1〜A8毎に算出した傾きKK1〜KK8と、予め求められた気泡が存在しない時の基準傾きK1〜K8とをそれぞれ比較し、傾きKK1〜KK8が、予め求められた基準傾きK1〜K8から所定の傾き範囲外である区間の数に基づいて配管15内の気泡の有無を判定する(ステップS303)。具体的には、所定の傾き範囲外となった区間の数が1以上である場合に配管15内に気泡が存在すると判定する。気泡が存在しないと判定された場合(ステップS303:No)、本処理を終了する。この場合、判定部33dは、制御部31を介して、出力部36に配管15内に気泡がない旨の表示等の出力を行ってもよい。この判定作業の終了により、分注装置1は、検体または試薬を含む液体試料の分注を開始する。
【0050】
一方、気泡が存在すると判定された場合(ステップS303:Yes)、判定部33dは、泡抜き回数が設定回数以下であるか否かを判断する(ステップS304)。泡抜き回数が設定回数以上の場合(ステップS304:No)、この場合は、泡抜き動作にもかかわらず配管15内に気泡が混入している場合であるから、ステップS305に移行し、異常を告知し(ステップS305)、判定部33dは、制御部31を介して、出力部36に配管15内に気泡がある旨の表示等の出力を行う。
【0051】
これに対し、泡抜き回数が所定回数以下の場合(ステップS304:Yes)、泡抜き処理を実行する(ステップS306)。この泡抜き処理は、給水弁駆動部18に制御信号を出力して弁を開き、給水ポンプ19を駆動してタンク20内の脱気水Waを配管15内に供給することによって実行される。この泡抜き処理によって、配管15内に混入している気泡が、脱気水Waと共に洗浄容器42に吐出される。その後、判定部33dは、ステップS301に戻り、上述した配管15内における気泡の有無判定処理を繰り返す。
【0052】
この気泡判定部33では、配管15内の圧力を圧力センサ16によって検出すればよいので、配管15内における気泡の有無判定を分注前に簡単に判定することができる。この結果、分注精度の低い分注に起因する再検査等を実施するための時間を短くすることができ、分析時間の短縮化を図ることができる。
【0053】
また、この気泡判定部33では、「×」の判定が1以上の場合に、配管15内に気泡が存在すると判定するようにしていたが、これに限らず、気泡が存在する場合の圧力波形と気泡が存在しない場合の圧力波形との違いの多少によって、「×」の判定数を可変するようにしてもよい。
【0054】
さらに、この気泡判定部33では、「○」あるいは「×」の判定に所定の傾き範囲を設定するようにしていたが、この傾き範囲に替えて、各区間A1〜A8の傾きが正か負かによって判定するようにしてもよい。たとえば、区間A1の基準傾きK1を「正」とした場合、傾きKK1が「正」である場合には、「○」の判定を行い、傾きKK1が「負」である場合に、「×」の判定を行うようにする。これによって判定部33dによる判定処理が簡易になる。
【0055】
また、この気泡判定部33では、区間A1〜A8が同じ時間幅をもっていたが、これに限らず、各区間A1〜A8の時間幅は、気泡の存在しない圧力波形に合わせて異ならせてもよい。
【0056】
また、この気泡判定部33では、脱気水Waの吐出時の圧力波形W2をもとに気泡の有無判定を行うようにしていたがこれに限らず、配管15内に生じる他の圧力波形をもとに、気泡の有無判定を行うようにしてもよい。
【0057】
ところで、上述した実施の形態1,2では、負圧手段24または負圧手段53によって配管15内の脱気水Waに加わる圧力を負圧状態にされた後、オペレータによって留具25または留具54を取り外し、プランジャ24aまたはプランジャ53aを動かして脱気水Waの吸排動作を行うようにすることが好ましい。この吸排動作を行うことによって、配管15内で脱気水Waが移動するので、配管15および分注ポンプ13内に付着し、容積が大きくなった気泡を、確実に脱気水Wa内へ剥離させることができる。
【0058】
また、上述した実施の形態1,2では、配管15内を負圧手段24または負圧手段53で負圧状態にするとき、プランジャ13aを固定しておくことが好ましい。このプランジャ13aの固定によって、配管15および分注ポンプ13内の負圧状態を確実にすることができる。
【0059】
また、上述した実施の形態1,2では、長時間に亘って分注作業を停止していた後に分注を再開する場合、環境温度、気圧および些細なリーク等に起因して配管中に気泡が生じることがあるため、分注再開時に、上述した気泡除去処理を行うことが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】実施の形態1にかかる分注装置の構成を示すブロック図である。
【図2】実施の形態1の切替処理部による切替処理手順を示すフローチャートである。
【図3】実施の形態2にかかる分注装置の構成を示すブロック図である。
【図4】実施の形態2の切替処理部による切替処理手順を示すフローチャートである。
【図5】気泡判定部の構成を示すブロック図である。
【図6】圧力センサによって検出された配管内の脱気水の圧力波形を示す波形図である。
【図7】配管内の脱気水中の気泡が存在しない場合の圧力波形を模式的に拡大した図である。
【図8】配管内の脱気水中の気泡が多く存在する場合の圧力波形を模式的に拡大した図である。
【図9】配管内の脱気水中に気泡が存在しない場合の判定処理を説明する説明図である。
【図10】配管内の脱気水中に気泡が多く存在する場合の判定処理を説明する説明図である。
【図11】気泡判定部による配管内の気泡の有無判定処理手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0061】
1 分注装置
11 分注ノズル
12 ノズル駆動部
13 分注ポンプ
13a,24a,53a プランジャ
14 プランジャ駆動部
15,21,22,23,52 配管
16 圧力センサ
17,50 給水弁
19 給水ポンプ
20 タンク
24,53 負圧手段
25,54 留具
30 制御機構
31 制御部
32 入力部
33 気泡判定部
33a 処理部
33b 検出部
33c 算出部
33d 判定部
34,37 切替処理部
35 記憶部
36 出力部
40 検体容器
40a 検体
41 反応容器
42 洗浄容器
55 切替弁駆動部
Wa 脱気水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分注ノズルと給水ポンプとの間を接続する配管に分注ポンプが接続され、該給水ポンプによって前記配管内に脱気水を供給して前記分注ノズル先端近傍まで満たし、前記分注ポンプの近傍に設けられた給水弁を閉じて分注ノズル先端側が開放された脱気水空間を形成し、この脱気水空間に対して前記分注ポンプを動作させることによって前記分注ノズルによる吸排動作を行わせる分注装置において、
切替弁を介して前記脱気水空間に接続され、負圧状態を維持した負圧手段を備え、前記脱気水空間内の気泡を除去する場合、前記切替弁を開にして前記脱気水空間を負圧状態にすることを特徴とする分注装置。
【請求項2】
前記給水弁は、前記切替弁の機能を有し、前記負圧手段が接続されることを特徴とする請求項1に記載の分注装置。
【請求項3】
前記負圧手段は、予め負圧状態に設定した前記脱気水を満たしておくことを特徴とする請求項1または2に記載の分注装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−14490(P2010−14490A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−173724(P2008−173724)
【出願日】平成20年7月2日(2008.7.2)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】