分画培地作成用シャーレ
【課題】培地の剥離が抑制された分画培地作成用シャーレを提供する。
【解決手段】底面部と、前記底面部の外周に配設される側壁と、前記底面部を複数の小分画に分割しかつ前記側壁と連設される隔壁とからなり、前記底面部には、前記隔壁近傍に設けられた凹部と、前記側壁近傍に設けられた凸部とが形成されることを特徴とする分画培地作成用シャーレ本体である。蓋部を装着して分画培地作成用シャーレとすることができる。
【解決手段】底面部と、前記底面部の外周に配設される側壁と、前記底面部を複数の小分画に分割しかつ前記側壁と連設される隔壁とからなり、前記底面部には、前記隔壁近傍に設けられた凹部と、前記側壁近傍に設けられた凸部とが形成されることを特徴とする分画培地作成用シャーレ本体である。蓋部を装着して分画培地作成用シャーレとすることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャーレの培地画分が2以上に分画された分割培地作成用シャーレに関し、より詳細には、培地を充填する底面部の上面に凸部と凹部とが形成され、充填した培地の剥離が効果的に防止される分画培地作成用シャーレに関する。
【背景技術】
【0002】
シャーレは、入れ子になるようにわずかに口径の異なる、ごく浅い円筒形の容器が2枚で一組として構成される。これらをそれぞれシャーレ本体と蓋部と称すれば、蓋部はシャーレ本体よりもやや大きくて浅く、シャーレ本体は前記蓋部よりもやや小さく、かつ深く構成されている。シャーレ本体の上端は底面部と平行になるように加工されているので、蓋部を装着したシャーレ本体を静置すると、自重でシャーレ本体と蓋部とが密着し、適度にシールされるようになっている。なお、シャーレ本体に充填された培地は、充填後に蓋部を装着した後にシャーレを反転して、蓋部を載置台側に向けて保管されることが一般的である。この態様であれば、雑菌が培地表面に落ちるのを回避することができるからである。
【0003】
シャーレは、微生物を培養するために培地を充填して使用することができるが、1つの微生物の培養に1つのシャーレを使用すると、異なる培地用の複数のシャーレが必要となる。このため、透明な合成樹脂からなり、省力化を図る目的で、シャーレ本体の内部に隔壁を設けて複数の区画に分画し、各分画にそれぞれ同一または異なる培地を充填しうる分画培地作成用シャーレが開発されている。
【0004】
しかしながら、分画培地作成用シャーレ本体に培地を充填し、その後にシャーレをさかさまにして保存すると、培地が乾燥し、シャーレ本体から培地が剥離する場合がある。
一方、このような培地の落下を防止しうる分画培地作成用シャーレも開発されている。例えば、シャーレ本体の内側がその中央に配設した隔壁で2つに区分されるものであって、分画培地作成用シャーレ内の前記隔壁近傍の底面部、側壁近傍の底面部および/または隔壁部に突起物からなる剥離防止手段を形成したものがある(特許第2627142号)。特許文献1は、隔壁によって複数の分画を形成した場合、前記隔壁が培地より突出すると白金耳の先端が隔壁と接触して接種作業に支障をきたすことに鑑みて、隔壁の高さを培地高さよりも低く制限する点に特徴があり、更に剥離防止手段を付加したものである。前記剥離防止手段の具体的構成は、シャーレ本体の底面部から凸状に隆起した帯状の突起物であり、分画培地作成用シャーレの隔壁またはその近傍、および/または分画培地作成用シャーレ本体の側壁またはその近傍に設けられている。なお、分画培地作成用シャーレ本体を2以上の小分画に分割する隔壁としては、シャーレ本体の底面部から突出して形成される一枚の板状物(図3)のほか、特許文献1の図8、図9には、各分画を仕切る断面視、アーチ型の隔壁も開示されている。
【0005】
また、各区画の底面部の上面が、それを囲む隔壁および内側壁の根元で連続的に窪んでおり、かつ該底面部が平坦である分画培地作成用シャーレもある(特許文献2)。連続的な窪み部が隔壁および内側壁の根元に形成されると、窪み部が非連続的に形成された分画培地と相違して著しく培地の剥離が抑制される、という。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第2627142号
【特許文献2】特許第4204674号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1、特許文献2記載に開示される分画培地作成用シャーレは、分画培地作成用シャーレ本体の底面部に凹部、または凸部を形成し、この凹部や凸部に培地を充填して剥離を防止するものである。しかしながら、上記に開示される分画培地作成用シャーレでも、培地の剥離防止は十分でない。
【0008】
その理由は明確ではないが、合成樹脂製のシャーレ本体はそりや歪みなどの変形が生じやすく、このよう変形によって培地が剥離しやすくなると推察される。例えば、特許文献1、特許文献2記載に開示される分画培地作成用シャーレは透明な合成樹脂を使用して射出成形で製造され、樹脂の注入口は底面部の中央部となる。この態様では、樹脂注入口の上部を通過するように隔壁が形成され、前記隔壁を中央にして左右を把持すると、形状が左右対称であるため容易に各分画の側壁がゆがみ、この歪みによって培地が剥離されやすい。
【0009】
前記特許文献1は、培地を仕切る隔壁の高さを培地の高さよりも低くして接種操作を改善する点に特徴があり、隔壁が低く、各分画の側壁を両手で把持するとわずかの力で側壁がゆがみ、たとえ隔壁や側壁の近傍に凸部を形成しても、この歪みによって培地と前記凸部との嵌合が容易に解消され、培地が剥離される場合がある。
【0010】
また、培地の剥離は、シャーレ本体の歪みだけでなく、培地を充填してから使用するまでの振動によっても発生すると考えられる。例えば、培地を充填したシャーレ本体に植菌する際、また、植菌後にインキュベーターに挿入する際にも、シャーレ本体の底面部と載置台との摩擦によって振動が発生し、このような振動によって剥離が発生しやすくなる。更に、シャーレ本体に蓋部を装着する際に、シャーレ本体の外周と蓋部の内周とのサイズが大きく異なると、シャーレ本体と蓋部とが接触する際に振動を発生しやすい。このような振動は、培地剥離の一因となる。
【0011】
更に、分画培地作成用シャーレは、1つのシャーレに複数の培地を充填して作業やスペースの省力化を図るものであり、保存時には、複数の分画培地作成用シャーレを安定かつコンパクトに積層しうることが好ましい。しかも、このような保存時または使用時の積層の際にも、振動の発生を回避しうることが好ましい。
【0012】
上記現状に鑑みて、本発明は、培地の剥離を防止しうる分画培地作成用シャーレを提供することを目的とする。
また、本発明は、複数の分画培地作成用シャーレを安定かつ簡便に積層しうる、分画培地作成用シャーレを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、分画培地作成用シャーレにおける培地の剥離を詳細に検討した結果、分画培地作成用シャーレ本体の複数の分画に区分する隔壁の近傍の底面部に凹部を形成し、かつ側壁の近傍の底面部に凸部を形成すると、全てが凹部で形成される場合よりも培地の剥離を効率的に回避できること、また、分画培地作成用シャーレ本体の操作時の歪みや振動を回避することで培地の剥離を防止しうること、このような歪みを回避する方法として、前記凹部や凸部、更に底面部の下面に形成する足部などを左右非対称に配設することでシャーレ本体の歪みを回避できること、前記隔壁を板状でなく、2つの小隔壁の頂部を連接して構成するアーチ型の隔壁とすることで、分画培地作成用シャーレの強度を向上させ、使用時や保管時のゆがみを効率的に低減して培地の剥離を防止しうることなどを見出し、本発明を完成させた。
すなわち本発明は、底面部と、前記底面部の外周に配設される側壁と、前記底面部を複数の小分画に分割しかつ前記側壁と連設される隔壁とからなり、前記底面部には、前記隔壁近傍に設けられた凹部と、前記側壁近傍に設けられた凸部とが形成されることを特徴とする分画培地作成用シャーレ本体を提供するものである。
【0014】
また、前記凹部および/または凸部は、2〜20個に分割される分画培地作成用シャーレ本体を提供するものである。
また、前記凹部の深さは、0.3〜3mm、より好ましくは0.5〜2.5mmである分画培地作成用シャーレ本体を提供するものである。
【0015】
また、前記凸部の高さは、0.5〜3mm、より好ましくは1.0〜2.5mmである分画培地作成用シャーレ本体を提供するものである。
また、前記凹部および/または凸部は、分画培地作成用シャーレ本体の底面部に、非対称に形成されることを特徴とする分画培地作成用シャーレ本体を提供するものである。
【0016】
また、前記シャーレ本体に配設される隔壁は、小分画を構成する小隔壁が頂部で連設するアーチ型であることを特徴とする、分画培地作成用シャーレ本体を提供するものである。
【0017】
また、前記アーチ型を構成する2枚の小隔壁は、分画培地作成用シャーレ本体の側壁近傍および/または中央部でその下端部が連設されることを特徴とする分画培地作成用シャーレ本体を提供するものである。
【0018】
また、前記隔壁の高さは、側壁近傍で中央より高く構成されることを特徴とする分画培地作成用シャーレ本体を提供するものである。
また、前記シャーレ本体は、底面部の下面に足部が形成されていることを特徴とする、前記分画培地作成用シャーレ本体を提供するものである。
【0019】
更に、前記足部は、不連続に形成されることを特徴とする分画培地作成用シャーレ本体を提供するものである。
更に、上記分画培地作成用シャーレ本体と、蓋部からなる分画培地作成用シャーレを提供するものである。
【0020】
また、前記蓋部は、天面部と、前記天面部の外周に配設される側壁とからなり、前記天面部には、前記シャーレ本体の側壁の上端と嵌合しうる縁高部が形成されていることを特徴とする、分画培地作成用シャーレを提供するものである。
【0021】
また、前記縁高部の内側には、複数個のリブが形成されていることを特徴とする分画培地作成用シャーレを提供するものである。
また、前記蓋部の縁高部の上面には、突起部が形成されていることを特徴とする分画培地作成用シャーレを提供するものである。
【0022】
また、前記突起部は、不連続に構成されることを特徴とする分画培地作成用シャーレを提供するものである。
加えて、角部が円弧で形成される上記分画培地作成用シャーレを提供するものである。
更に、前記分画培地作成用シャーレに、培地を充填してなる分画培地を提供するものである。
【発明の効果】
【0023】
本発明の分画培地作成用シャーレによれば、シャーレ本体の底面部に凹部と凸部とが形成されているため、これに培地を充填すると培地が前記凹部と凸部にも充填されて嵌合し、培地の剥離が効率的に抑制される。
【0024】
また、本発明の分画培地作成用シャーレが、底面部と側壁からなる小分画を側壁上端部を介して複数連設したものである場合には、シャーレ本体の強度が向上するためシャーレ本体の使用時のそりや歪みが抑制され、培地の剥離を効率的に抑制することができる。
【0025】
また、本発明の分画培地作成用シャーレは、蓋部にシャーレ本体の側壁上端と嵌合しうる縁高部を形成し、シャーレ本体の底面部に足部を形成すると、複数の分画培地作成用シャーレを上方に積層する場合に、前記底面部と縁高部とが組み合わさり、積層幅を減少して省スペースで保管することができる。
【0026】
また、本発明の分画培地作成用シャーレは、シャーレ本体の底面部の外周近傍に足部を形成すると、載置台との接触面を低減することができ、摩擦による振動を抑制することができる。このため、これに培地を充填すると振動によって生ずる培地の剥離を効率的に抑制することができる。
【0027】
また、本発明の分画培地作成用シャーレは、射出成形によって製造することができ、製造が容易であり、かつ安価に製造することができる。
本発明の分画培地は、上記分画培地作成用シャーレに培地を充填したものであり、保管時や作業時の振動による培地の剥離が抑制されたものである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は、本発明の分画培地作成用シャーレであり、本発明のシャーレ本体に蓋部を装着した状態を説明する図であり、図1(a)は、分画培地作成用シャーレ(300)の平面図であり、図1(b)は分画培地作成用シャーレ(300)の側面図であり、図1(c)は分画培地作成用シャーレ(300)の底面図である。
【図2】図2は、本発明の分画培地作成用シャーレ本体(100)の好適な態様の一例を説明する図である。図2(a)は、前記シャーレ本体(100)の平面図、図2(b)は右側面図、図2(c)は正面図、図2(d)は底面図である。
【図3】図3は、図2(a)に示すシャーレ本体(100)のX−X線の部分断面図である。
【図4】図4は、本発明のシャーレ本体(100)に形成された凹部(40)を説明する図であり、図2(a)のC−C線の部分断面図である。
【図5】図5は、本発明のシャーレ本体(100)に形成された隔壁(30)を説明する図であり、図2(a)のD−D線の部分断面図である。
【図6】図6は、本発明のシャーレ本体(100)に形成された凸部(50)を説明する図であり、図6(a)は、図2(a)のA−A線の部分断面図であり、図6(b)は、図2(a)のB−B線の部分断面図である。
【図7】図7は、本発明のシャーレ本体(100)に形成された隔壁(30)が側壁(20)と連接される態様を説明する図であり、図2(a)に示す本発明のシャーレ本体(100)の正面図の部分拡大図である。
【図8】図8は、本発明のシャーレ本体(100)に形成された隔壁(30)と側壁(20)との関係を説明する図であり、図8は図7のA−A線の部分断面図である。
【図9】図9は、突出部(25)と、隔壁(30)との関係を説明する図であり、図9(a)、図9(b)、図9(c)は、図7のB−B線の部分断面図、C−C線の部分断面図、D−D線の部分断面図である。
【図10】図10は、シャーレ本体(100)の底面図の部分拡大図である。
【図11】図11は、本発明のシャーレ本体(100)の他の態様であり、2つの小隔壁(31)からなる隔壁(30)が直接に側壁(20)と連設する態様を説明する図である。
【図12】図12は、図11に示すシャーレ本体(100)の隔壁(30)と側壁(20)との連接の態様を説明する図であり、図11のA−A線の部分断面図である。
【図13】図13は、本発明のシャーレ本体(100)の他の態様であり、2つの小隔壁(31)からなる隔壁(30)が側壁(20)から内側に陥没する陥没型の突出部(25')と連設する態様を説明する図であり、シャーレ本体(100)の平面図の部分拡大図である。
【図14】図14は、図13に示すシャーレ本体(100)の隔壁(30)と側壁(20)との連接の態様を説明する図であり、図13のA−A線の部分断面図である。
【図15】図15は、小隔壁(31)からなる隔壁(30)が、側壁(20)の近傍で合一して突出部(25')を構成し、前記突出部(25')は底部(10)に連設して、隔壁(30)に形成される空洞が存在しない態様を説明する図である。
【図16】図16は、本発明のシャーレ本体(100)の他の態様であり、突出部(25、25')の上部に板状突出部(25a)が形成されることを説明する図である。
【図17】図17は、本発明のシャーレ本体(100)の他の態様であり、突出部(25、25')の上部に板状突出部(25a)が形成されることを説明する図であり、図17(a)は、図16(a)のA−A線の部分断面図であり、図17(b)は、図16(b)のA−A線の部分断面図である。
【図18】図18(a)は、図2(a)と同じシャーレ本体(100)であり、図18(b)は、図18(a)のA−A線の部分断面図である。
【図19】図19は、本発明のシャーレ本体(100)の中央部で前記小隔壁(31)の底面部が相互に連設される態様を説明する図であり、図19(a)は図2のE−E線の部分断面図であり、図19(b)は、図2(a)のF−F線の部分断面図である。
【図20】図20は、本発明のシャーレ本体(100)において、足部(50)と隔壁(30)と、凸部(50)との関係を示す説明図である。
【図21】図21は、本発明のシャーレ本体(100)の底面部(10)に形成した足部(60)を説明する図であり、図2(d)のG−G線の部分断面図である。
【図22】図22は、本発明の分画培地作成用シャーレを構成する蓋部(200)の好適な態様の一例を説明する図であり、図22(a)は平面図、図22(b)は左側面図、図22(c)は右側面図、図22(d)は正面図、図22(e)は底面図である。
【図23】図23は、本発明で使用する蓋部(200)の縁高部(230)を説明する図であり、図22(a)のA−A線の部分断面図である。蓋部(200)を装着する際のシャーレ本体(100)を破線で示し、複数の分画培地作成用シャーレを積層する場合の分画培地作成用シャーレ本体(100)を蓋部(200)の上部に破線で示す。
【図24】図24は、本発明で使用する蓋部(200)に形成した突起部(240)および縁高部(230)を説明する図であり、図24は、図22(a)のB−B線近傍の部分拡大図である。
【図25】図25は図22(e)のC−C線近傍の部分拡大図であり、縁高部(230)の内側に形成されたリブ(235a)およびリブ(235b)を説明する図である。
【図26】図26は、図22(a)のB−B線断面であり、本発明で使用する蓋部(200)の縁高部(230)の内側に形成されたリブ(235a)、リブ(235b)を説明する図である。
【図27】図27は、本発明の分画培地を説明する図であり、培地高さと隔壁(30)高さとの関係を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の第一は、底面部と、前記底面部の外周に配設される側壁と、前記底面部を複数の小分画に分割しかつ前記側壁と連設される隔壁とからなり、前記底面部には、前記隔壁近傍に設けられた凹部と、前記側壁近傍に設けられた凸部とが形成されることを特徴とする分画培地作成用シャーレ本体である。
【0030】
また、本発明の第二は、上記分画培地作成用シャーレ本体と、蓋部からなる分画培地作成用シャーレである。
更に、本発明の第三は、前記分画培地作成用シャーレに、培地を充填してなる分画培地に、培地を充填してなる分画培地である。以下、図面を用いて本発明を詳細に説明する。
(1)分画培地作成用シャーレ本体
本発明の分画培地作成用シャーレ(300)は、分画培地作成用シャーレ本体と蓋部とからなる。図1に本発明の分画培地作成用シャーレ(300)の一例であって、前記シャーレ本体(100)に蓋部(200)を装着した状態の平面図、底面図および側面図を示す。図1(a)は、分画培地作成用シャーレの平面図であり、蓋部(200)の天面部(210)とその外周に配設された側壁(220)と、天面部(210)の一部であって側壁(220)近傍に形成された縁高部(230)、ならびに前記縁高部(230)の上部に不連続に形成された突起部(240)を示している。図1(b)は分画培地作成用シャーレ(300)の側面図であり、シャーレ本体(100)に、それより大径かつ短い蓋部(200)が装着される態様を示す。また、図1(c)は分画培地作成用シャーレ(300)の底面図であり、シャーレ本体(100)の底面部(10)とその外周に配設された側壁(20)と、前記側壁(20)の近傍に不連続に形成された足部(60)とを示している。なお、底面部(10)には、2以上の区画に分割する隔壁(30)と、その近傍に凹部(40)とが形成されている。ただし、図1は例示であり、本発明は上記図1に限定されるものではない。
図2は、図1に示すシャーレ本体(100)を説明する図である。図2(a)は、前記シャーレ本体(100)の平面図、図2(b)は右側面図、図2(c)は正面図、図2(d)は底面図である。なお、左側面図は、右側面図と対称であり、また背面図は正面図と対称である。
(i)隔壁
本発明の分画培地作成用シャーレ本体(100)は、底面部(10)の外周に側壁(20)が形成され、かつ前記底面部(10)の上面は、隔壁(30)によって少なくとも2以上の小分画に分割される。本発明において、「隔壁」とは、底面部(10)を複数の小分画に分割しかつ前記側壁と連設されるものである。2以上の小分画に分割することができればよく、例えば、前記図2(a)では、底面部(10)の中央に形成された隔壁(30)によって底面部(10)を2つの小分画(α、β)に分割しているが、十文字に配置された隔壁によって4つの小分画を形成してもよく、その他、放射線状に配置した隔壁によって複数の小分画を形成するものであってもよい。
【0031】
「隔壁」の形状は問わず、一枚の板状物であってもよく、その他の形状であってもよい。図2(a)に示すシャーレ本体(100)のX−X線の部分断面図を図3に示す。底面部(10)が隆起して2つの小隔壁(31)を構成し、この小隔壁(31)の頂部がアーチ型に連接して1つの隔壁(30)を構成している。前記隔壁(30)によって底面部(10)が2つに分割され、小分画(α)と小分画(β)とが形成されている。小隔壁(31)の頂部をアーチ型に連接してなる隔壁(30)は、強度に優れ、使用時の湾曲や歪みが少なく、培地の剥離を効率的に回避することができる。また、アーチ型であれば、隔壁(30)の中央部が中空であるため、重量を軽減することができる。
【0032】
隔壁(30)の高さは、分画培地作成用シャーレのサイズや充填する培地量に応じて適宜選択することができる。分画培地作成用シャーレの直径が10cmの場合で例示すれば、図3では、隔壁の高さ(h1)は、2.5〜10mm、より好ましくは2.5〜5mmである。なお、隔壁(30)の高さ(h1)は、分画培地作成用シャーレ本体で均一である必要はない。
(ii)凹部
本発明では、底面部(10)の隔壁(30)の近傍に凹部(40)が形成されることを特徴とする。隔壁(30)の近傍に凹部(40)を形成すると、側壁(20)の近傍に形成した凸部(50)と相まって、培地の剥離を効率的に防止することができる。
【0033】
前記凹部(40)は、底面部(10)に1以上存在すればよいが、好ましくは各小分画に1以上、より好ましくは2以上である。前記図2(a)では、等間隔に2箇所の凹部(40)がそれぞれの小分画(α、β)に形成される態様を示す。より好ましくは、各小分画に2〜20個、より好ましくは2〜10個、特に好ましくは2〜5個である。
【0034】
本発明では、凹部は、各小分画に同数、または同形状で配置される必要はない。例えば、前記隔壁(30)を中心として凹部(40)が左右非対称に配設される場合には、底面部(10)の歪みが少ないため、培地の剥離防止機能が効果的に発揮される。
【0035】
図4に、図2(a)のC−C線の部分断面図を示す。底面部(10)が線状に陥没して凹部(40)を形成している。前記したように、シャーレの直径が10cmの場合で例示すれば、凹部(40)の深さ(d1)は、0.3〜3mm、より好ましくは0.5〜2.5mmである。また、凹部(40)の長さ(L1)に制限は無いが、好ましくは、凹部(40)の全長が、隔壁(30)の長さの50〜100%、より好ましくは60〜90%となるように調製する。この範囲で底面部(10)の歪みが発生した場合でも、培地を充填した後に培地の剥離を効率的に抑制することができる。
【0036】
また、図5に、図2(a)のD−D線の部分断面図を示す。隔壁(30)に隣接してその両側に凹部(40)が形成されている。
本発明では、前記凹部(40)は、角部の全てが円弧で形成されることが好ましい。凹部(40)の角部が円弧であれば培地充填時の気泡の発生を抑制することができ、および培地固化後に角部からのヒビ割れを抑制することができる。
(iii)凸部
本発明では、図2(a)に示すように、側壁(20)の内周近傍の底面部(10)に凸部(50)が形成されることを特徴とする。隔壁(30)の近傍に形成した凹部(40)と相まって、シャーレ本体(100)に歪みが発生した場合でも、培地の剥離を防止しうることが判明した。
【0037】
本発明では、底面部(10)に少なくとも1つの凸部が形成されるが、より好ましくは、各小分画に1以上、より好ましくは2以上である。前記図2(a)では、3個の長尺の凸部(50)がそれぞれの小分画(α、β)に形成される態様を示す。
【0038】
凸部(50)は、より好ましくは、各小分画に2〜20個、より好ましくは2〜10個、特に好ましくは2〜5個である。なお、前記凸部(50)は、各小分画に同数、または同形状で配置される必要もない。例えば、図2(a)で示すシャーレ本体(100)では、前記隔壁(30)を中心にして凸部(50)が左右対称に配設されているが、α分画に3個、β分画に2個などと非対称に配設してもよい。凹部(40)の場合と同様に、凸部(50)が左右非対称に構成されている場合には、シャーレ本体(100)を左右から把持した際に均等に生ずる歪みを効率的に回避することができるからである。なお、凸部(50)は、コロニーの識別性に影響を与えないように、側壁(20)から3mm以内にその頂部が配置されるように配設されることが好ましい。
【0039】
図6(a)に、図2(a)のA−A線の部分断面図を示す。凸部(50)の高さ(h2)は、0.5〜3mm、より好ましくは1.0〜2.5mmである。また、幅(w1)は、0.3〜1.0mm、より好ましくは0.4〜0.8mmである。この範囲で底面部(10)の歪みを回避でき、かつ培地を充填した後に培地の底面部に凹凸を形成して、その剥離を効率的に抑制することができる。
【0040】
前記凸部(50)は、角部の全てが円弧で形成されることが好ましい。凹部(40)の角部が円弧であれば培地充填時の気泡の発生を抑制することができ、および培地固化後に角部からのヒビ割れを抑制することができる。
【0041】
図6(b)に、図2(a)のB−B線の部分断面図を示す。底面部(10)が線状に突出して凸部(50)が形成される態様が示されている。なお、前記したように、底面部および頂部も角部が全て円弧で形成されている。本発明では、前記凸部(50)の長さ(L2)は、底面部と頂部とで同一であってもよいが、図6(b)に示すように、底面部よりも頂部を短くしてもよい。なお、凸部(50)の長さ(L2)に制限はないが、好ましくは、凸部(50)の全長は、シャーレ本体(100)の全周の30〜90%、より好ましくは50〜90%である。
(iv)突出部
図2(a)に示す本発明のシャーレ本体(100)の部分拡大図を図7に示す。本発明では、前記隔壁(30)は、側壁(20)に連接されるが、この際、図7に示すように、側壁(20)の一部が突出部(25)を形成し、この突出部(25)と隔壁(30)とが連接されるものであってもよい。
【0042】
図7のA−A線の部分断面図を図8に示す。なお、同図において、各構成要素の説明のため、便宜的に突出部(25)と他の構成要素との境界を破線で示した。側壁(20)の一部がシャーレ本体(100)の内側に突出して突出部(25)を形成し、この突出部(25)が隔壁(30)に連接している。同図に示す突出部(25)は、隔壁(30)との連接部から側壁(20)に向かってその高さが増している。側壁(20)の近傍で突出部(25)の高さを高くすると、側壁(20)との接触面積が拡大するためシャーレ本体の強度が増し、湾曲や歪みなどの変形を防止することができる。
【0043】
更に、隔壁(30)、凹部(40)、底面部(10)、突出部(25)の関係を説明するため、図7のB−B線の部分断面図、C−C線の部分断面図、D−D線の部分断面図を、それぞれ図9(a)、図9(b)、図9(c)に示す。図9(b)および図9(c)に示すように、隔壁(30)は、小隔壁(31)の頂部がアーチ型に連接して構成されるため、中央に空洞部が形成されている。一方、前記隔壁(30)を構成する小隔壁(31)は、側壁の近傍で相互に接近し、合一し、図9(a)に示す前記突出部(25)に連接する。このため、隔壁(30)の下部中央に形成される空洞部が側壁(20)の近傍では存在しない。隔壁(30)が小隔壁(31)からなる場合には、前記空洞部の存在によって隔壁(30)の頂部を中心として左右に広がるなど、容易に変形が発生するが、側壁(20)の近傍で2つの小隔壁(31)が相互に連接するため、上記歪みの発生を効率的に回避することができる。なお、図9(b)では、前記隔壁(30)に隣接して、底面部(10)が陥没してなる凹部(40)が形成される態様を示している。
【0044】
本発明では、前記突出部(25)も、角部が円弧で形成されることが好ましい。振動による衝撃を、前記円弧によって緩和し、培地の剥離を効率的に防止するためである。なお、図10に、シャーレ本体(100)の底面図の部分拡大図を示す。隔壁(30)の端部も、角部が円弧で形成されている。
【0045】
一方、隔壁(30)と側壁(20)との連設は、前記図7に示す態様に限定されるものではない。例えば、図11の部分拡大図に示すように、2つの小隔壁(31)からなる隔壁(30)が直接に側壁(20)と連設する態様であってもよい。図11のA−A線の部分断面図を図12に示す。
【0046】
本発明では、隔壁(30)を側壁(20)に形成する突出部(25)として、更に、側壁(20)の一部をシャーレ本体(100)の内側に陥没して突出させてなる突出部(25')であってもよい。陥没型突出部(25')も、図8と同様に、側壁(20)の近傍で隔壁(30)よりも高くなるように構成されていてもよい。このような陥没型の突出部(25')を配設したシャーレ本体(100)の平面図の部分拡大図を図13に示す。側壁(20)と同じ厚みを維持しながら側壁(20)が陥没して突出部(25')を形成するため、図7と相違して、平面視、突出部(25')の横幅が隔壁(30)の横幅と同じ位まで広がっている。
【0047】
また、図13のA−A線の部分断面図を図14に示す。図14では、側壁(20)が内側に陥没して突出部(25')を形成するが、前記突出部(25')の下端は底面部(10)に連接している。このことは、図8と同様に、2つの小隔壁(31)の端部が側壁(20)の近傍で合一し、隔壁(30)の中央部に形成される空洞部が存在しないことを意味する。これにより、側壁(20)から内側に陥没する突出部(25')を形成して隔壁(30)と連接する場合でも、シャーレ本体(100)の強度を向上させ歪みを効率的に回避することができる。なお、説明のため、図13のB−B断面図を図15に示す。シャーレ本体(100)の側壁(20)の近傍には、小隔壁(31)を連接させる場合に発生する底面部(10)の空洞が存在しない。
【0048】
なお、本発明において、隔壁(30)とは、底面部(10)を複数の小分画に分割しかつ前記側壁と連設されるものである。前記突出部(25)は、側壁(20)の一部からなるが、底面部(10)を複数の小分画に分割しかつ側壁(20)と連設される点で、「隔壁」の概念に含まれるものとする。
【0049】
なお、前記突出部(25)の形状は上記に限定されるものではなく、例えば、図16(a)、図16(b)に示す態様であってもよい。これらと図7、図13との相違は、突出部(25、25')の上部に、さらに板状突出部(25a)が形成される点にある。これらのA−A線の部分断面図を図17に示す。図17(a)は、図16(a)のA−A線の部分断面図であり、図17(b)は、図16(b)のA−A線の部分断面図である。
【0050】
板状突出部(25a)を形成することで、隔壁(30)と側壁(20)との連接面積を向上させ、シャーレ本体(100)の強度を向上させ、使用時の歪みを回避することができる。
(v)射出注入口
本発明のシャーレ本体(100)は、射出成形によって製造することができる。その際、射出注入口は、隔壁(30)の下端部に形成することが好ましい。コロニーの視認性に影響を与えることが無いからである。図18(a)に、図2(a)と同じシャーレ本体(100)を示し、図18(b)に図18(a)のA−A線の部分断面図を示す。図18(a)に示すように、底面部(10)の直径上に小隔壁(31)からなる隔壁(30)が形成され、前記隔壁(30)に向かって射出注入口(15)が連接されている。本発明では、隔壁(30)の下端部であって、シャーレ本体の中央部に形成することが好ましい。これにより、アーチ型の隔壁(30)の空洞部に樹脂が充填され、シャーレ本体の中央部でも2つの小隔壁(31)の下端を合一に成形し、歪みなどによって発生する培地の剥離を抑制することができる。
【0051】
即ち、前記したように、本発明では、突出部(25)を介して側壁(20)と隔壁(30)とが連接され、その際に、2つの小隔壁(31)の下端部が合一される。更に、射出注入口(15)をシャーレ本体の中央に配設することで、中央部でも2つの小隔壁(31)の下端部を合一に成形することができ、これにより、使用時の歪みをより効果的に抑制することができる。
【0052】
図2(a)のE−E線の部分断面図を図19(a)に示す。底面部(10)が隆起して2つの小隔壁(31)からなるアーチ型の隔壁(30)が形成され、かつ射出注入口(15)に注入する樹脂によって前記小隔壁(31)の底面部の空洞部に樹脂が充填される。また、図2(a)のF−F線の部分断面図を図19(b)に示す。
(vi)足部
前記シャーレ本体(100)は、底面部(10)の下面に足部(60)が形成されていることが好ましい。図2(d)に示すシャーレ本体(100)では、均等に4個の足部(60)が形成されている。足部(60)を形成することで、底面部(10)と載置台との摩擦が低減し、振動による培地の剥離を回避することができる。
【0053】
また、足部(60)の数と長さは特に制限されるものではなく、例えば側壁(20)に沿って形成した連続した輪状の足部であってもよく、複数に分断された不連続の突起物からなるものであってもよい。更に、足部(60)は、例えば、隔壁(30)を中心として左右または上下に対称に配設されるものであってもよく、非対称に配設されるものであってもよい。足部(60)を非対称に配設すると、使用時や保管時の歪みをより効率的に回避することができる。
【0054】
本発明では、例えば図20に示すように、足部(60)が底面部(10)の上面に形成した前記凸部(50)と凸部(50)との間隙に亘って底面部(10)の下面に連続して形成され、または、隔壁(30)と側壁(20)との連接部において、2つの小隔壁(31)に亘って連続するように形成されていることが好ましい。底面部(10)の上面の凸部(50)と底面部(10)の下面の足部(60)とが相互に凸部(50)間、足部(60)間の間隙を埋めるように配設されることで、シャーレ本体(100)の変形を抑制することができる。
【0055】
前記図2(d)のG−G線の部分断面図を図21に示す。本発明において、足部(60)の高さ(h3)は0.2〜3mm、より好ましくは0.5〜2mmである。
なお、本発明において、前記足部(60)も、角部が円弧で形成されることが好ましい。頂部が円弧であればより載置台との摩擦を低減することができる。
(vii)側壁
本発明では、底面部(10)の外周に側壁が形成される。前記図21に示すように、側壁(20)の上端部に膨らみ部(23)が形成され、前記膨らみ部(23)の角部は、円弧に形成されている。側壁(20)の上端に角部が円弧状の膨らみ部(23)が形成されると、蓋部(200)との接触面積が低減するため、頂部が円弧であればより蓋との摩擦を低減することができ、振動などによるキズを回避することができる。
(2)蓋部
本発明の分画培地作成用シャーレ本体は、蓋部とともに分画培地作成用シャーレを構成する。蓋部は、従来公知のシャーレを構成する蓋部をいずれも使用することができる。
(i)縁高部
本発明では、図22(a)の平面図に示すように、蓋部(200)として、天面部(210)と、前記天面部(210)の外周に配設される側壁(220)とからなり、前記天面部(210)には、前記シャーレ本体(100)の側壁(20)の上端を支持しうる縁高部(230)が形成されているものを好ましく使用することができる。シャーレ本体(100)の側壁(20)の上端が、蓋部(200)に形成した縁高部(230)に装着されると、使用時の蓋部(200)の動きが低減するため、振動や衝撃によって発生しやすいキズの発生を抑制することができる。なお、図22(b)は、図1に示す本発明で好適に使用できる蓋部(200)の左側面図、図22(c)は右側面図、図22(d)は正面図、図22(e)は底面図である。なお、背面図は正面図と同一である。
【0056】
図22(a)のA−A線の部分断面図を図23に示す。本発明で使用する蓋部(200)に形成される縁高部(230)は、側壁部(220)の近傍に配設された連続した輪状の縁高部(230)であることが好ましい。なお、図23において、符号240は、後記する突出部である。更に、蓋部(200)を装着する際のシャーレ本体(100)を破線で示し、複数の分画培地作成用シャーレを積層する場合の分画培地作成用シャーレ本体(100)を蓋部(200)の上部に破線で示す。
【0057】
蓋部(200)の外周近傍に形成した前記縁高部(230)によって、相対的に蓋部(200)の天面部(210)が凹み、この凹み部に他のシャーレ本体(100)を載置すると足部(60)が天面部(210)の前記凹み部と接触して安定して積層される。前記縁高部(230)の幅(w2)は、1.5〜5mm、より好ましくは2〜4mmである。上記範囲であれば、シャーレ本体(100)の側壁(20)の上端の幅は、一般には0.8〜1.5mmであるため、蓋部(200)の縁高部(230)にシャーレ本体(100)の側壁(20)を簡便に装着でき、かつ蓋部(200)のゆれを防止することができる。また、天面部(210)にシャーレ本体(100)を安定して積層することができる。なお、摩擦を回避するためには、シャーレ本体(100)の底面部(10)は、蓋部(200)の天面部(210)と接触しないことが好ましい。従って、蓋部(200)の前記縁高部(230)の深さは、足部(60)の高さ(h3)よりも浅くなるように調製することが好ましい。
(ii)突起部
本発明では、蓋部(230)の天面部(210)の上面に、突起部(240)が形成されていてもよい。図22(a)には、天面部(210)の外周近傍に、均等に5個の突起部(240)が形成されている態様を示す。シャーレ(300)は、培地を充填した後に、天地を反転して保存されることが一般的である。従って、蓋部(200)の天面部(210)に突起部(240)を形成すると、保存時の足部として機能し、載置台との摩擦を低減して培地の剥離を効率的に回避することができる。従って、前記突起部(240)の高さ(h4)は、足部(60)と同様に、0.2〜3mm、より好ましくは0.5〜2mmである。
【0058】
前記突起部(240)は、前記したシャーレ本体(100)に形成した足部(60)と同様に、複数に分断された不連続の突起物からなるものであってもよい。また、天面部(210)に左右または上下非対称に配設されるものであってもよい。使用時や保管時の歪みをより効率的に回避することができる。
【0059】
更に、前記突起部(240)も、角部が円弧で形成されることが好ましい。頂部が円弧であればより載置台との摩擦を低減することができる。
図24に、図22(a)のB−B線近傍の部分拡大図を示す。図24には、突起部(240)と突起部(240)との間に間隙が形成される態様が示されている。本発明では、足部(60)などの角部を円弧で形成して摩擦を低減しているが、これによって、分画培地作成用シャーレを積層した場合にわずかの振動で積層物が崩れる場合がある。しかしながら、蓋部(200)の上面外周に突起部(240)を形成すれば、前記突起部(240)が障壁となり、このようなすべりを止めることができる。
(iii)リブ
本発明では、蓋部(200)の前記縁高部(230)の内側に、前記縁高部(230)の底面と平行して配設されるリブ(235a)が形成されてもよい。更に、前記リブ(235a)の側壁に形成されるリブ(235b)が形成されてもよい。図25に図22(e)のC−C線近傍の部分拡大図を示す。
【0060】
前記リブ(235a)の高さ(h5)は、0.1〜1.0mmである。リブ(235a)は、縁高部(230)のいずれに形成されていてもよく、その数は3〜20個であることが好ましい。また、リブ(235b)は、前記リブ(235a)の一部に形成されていればよく、そのサイズは問わない。
【0061】
図22(a)のB−B線断面を図26に示す。なお、破線は、蓋部(200)を装着する際のシャーレ本体(100)である。前記リブ(235a)が存在しない場合には、シャーレ本体(100)の側壁(20)の上端と縁高部(230)の内側の全面とが接触するが、上記リブ(235a)を形成すると、シャーレ本体(100)の側壁(20)の上端と上記リブ(235a)とが接触するため、蓋部(200)とシャーレ本体(100)との接触によるキズの発生を抑制し、通気性を確保することで底面部(10)に培地を充填した後の水滴の発生を抑制することができる。更に、接触面積を低減し、蓋部(200)が振動した場合にもその衝撃の伝達量を低減し、培地の剥離を防止することができる。同様に、リブ(235b)を形成すると、シャーレ本体(100)の側壁(20)の外側と蓋部(200)の側壁(220)との接触面積が低減し、前記リブ(235a)と同様に、蓋部(200)とシャーレ本体(100)との接触によるキズの発生防止、通気性確保による水滴の抑制効果が発揮される。更に、前記接触面積の低減により、シャーレ本体(100)または蓋部(200)が振動した場合にもその衝撃の伝達量を更に低減し、培地の剥離を防止することができる。
(3)分画培地作成用シャーレ
前記分画培地作成用シャーレ本体(100)に蓋部(200)を装着して、本発明の分画培地作成用シャーレ(300)を調製することができる。ポリスチレンなどで製造して透明なシャーレとすることができる。なお、上記シャーレ本体(100)は、隔壁(30)によって、円形の底面部(10)が2つの小分画(α、β)に分割される態様で例示したが、本発明はこれに限定されず、底面部(10)の外周に側壁(20)が配設され、かつ隔壁(30)によって2以上に底面部(10)が分割されるものであれば、底面部(10)の形状は、三角や四角などの方形、その他であってもよい。
(4)分画培地
本発明の分画培地作成用シャーレ本体(100)に培地を充填して、分画培地を調製することができる。
【0062】
充填する培地は、図27に示すように、前記隔壁(30)の上端と同一か、隔壁(30)より高く充填するものであってもよい。隔壁(30)が突出しないように培地が充填されていると、接種作業の際に白金耳の先端が隔壁と接触することなく、簡便に接種作業を行うことができる。
(5)分画培地作成用シャーレの製造方法
本発明の分画培地(300)は、シャーレ本体(100)、蓋部(200)をそれぞれ射出成形、型抜き成型などで製造することができる。
【0063】
分画培地作成用シャーレ(300)を構成する部材としては、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂やポリアミド系樹脂、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ABS、ASなどを例示することができる。なお、射出成形の際の樹脂注入口は、底面部(10)または天面部(210)の中央部であることが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明によれば、培地の剥離が効率的に抑制された分画培地作成用シャーレを提供することができ、有用である。
【符号の説明】
【0065】
10・・・分画培地作成用シャーレ本体の底面部、
20・・・分画培地作成用シャーレ本体の側壁、
30・・・分画培地作成用シャーレ本体の隔壁、
40・・・分画培地作成用シャーレ本体の底面部に形成した凹部、
50・・・分画培地作成用シャーレ本体の底面部に形成した凸部、
60・・・分画培地作成用シャーレ本体の底面部に形成した足部、
100・・・分画培地作成用シャーレ本体、
200・・・蓋部、
210・・・蓋部の天面部、
220・・・蓋部の側壁、
230・・・蓋部の縁高部、
235・・・縁高部の内側に形成したリブ、
240・・・蓋部の上面に形成した突起部、
300・・・本発明の分画培地作成用シャーレ
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャーレの培地画分が2以上に分画された分割培地作成用シャーレに関し、より詳細には、培地を充填する底面部の上面に凸部と凹部とが形成され、充填した培地の剥離が効果的に防止される分画培地作成用シャーレに関する。
【背景技術】
【0002】
シャーレは、入れ子になるようにわずかに口径の異なる、ごく浅い円筒形の容器が2枚で一組として構成される。これらをそれぞれシャーレ本体と蓋部と称すれば、蓋部はシャーレ本体よりもやや大きくて浅く、シャーレ本体は前記蓋部よりもやや小さく、かつ深く構成されている。シャーレ本体の上端は底面部と平行になるように加工されているので、蓋部を装着したシャーレ本体を静置すると、自重でシャーレ本体と蓋部とが密着し、適度にシールされるようになっている。なお、シャーレ本体に充填された培地は、充填後に蓋部を装着した後にシャーレを反転して、蓋部を載置台側に向けて保管されることが一般的である。この態様であれば、雑菌が培地表面に落ちるのを回避することができるからである。
【0003】
シャーレは、微生物を培養するために培地を充填して使用することができるが、1つの微生物の培養に1つのシャーレを使用すると、異なる培地用の複数のシャーレが必要となる。このため、透明な合成樹脂からなり、省力化を図る目的で、シャーレ本体の内部に隔壁を設けて複数の区画に分画し、各分画にそれぞれ同一または異なる培地を充填しうる分画培地作成用シャーレが開発されている。
【0004】
しかしながら、分画培地作成用シャーレ本体に培地を充填し、その後にシャーレをさかさまにして保存すると、培地が乾燥し、シャーレ本体から培地が剥離する場合がある。
一方、このような培地の落下を防止しうる分画培地作成用シャーレも開発されている。例えば、シャーレ本体の内側がその中央に配設した隔壁で2つに区分されるものであって、分画培地作成用シャーレ内の前記隔壁近傍の底面部、側壁近傍の底面部および/または隔壁部に突起物からなる剥離防止手段を形成したものがある(特許第2627142号)。特許文献1は、隔壁によって複数の分画を形成した場合、前記隔壁が培地より突出すると白金耳の先端が隔壁と接触して接種作業に支障をきたすことに鑑みて、隔壁の高さを培地高さよりも低く制限する点に特徴があり、更に剥離防止手段を付加したものである。前記剥離防止手段の具体的構成は、シャーレ本体の底面部から凸状に隆起した帯状の突起物であり、分画培地作成用シャーレの隔壁またはその近傍、および/または分画培地作成用シャーレ本体の側壁またはその近傍に設けられている。なお、分画培地作成用シャーレ本体を2以上の小分画に分割する隔壁としては、シャーレ本体の底面部から突出して形成される一枚の板状物(図3)のほか、特許文献1の図8、図9には、各分画を仕切る断面視、アーチ型の隔壁も開示されている。
【0005】
また、各区画の底面部の上面が、それを囲む隔壁および内側壁の根元で連続的に窪んでおり、かつ該底面部が平坦である分画培地作成用シャーレもある(特許文献2)。連続的な窪み部が隔壁および内側壁の根元に形成されると、窪み部が非連続的に形成された分画培地と相違して著しく培地の剥離が抑制される、という。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第2627142号
【特許文献2】特許第4204674号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1、特許文献2記載に開示される分画培地作成用シャーレは、分画培地作成用シャーレ本体の底面部に凹部、または凸部を形成し、この凹部や凸部に培地を充填して剥離を防止するものである。しかしながら、上記に開示される分画培地作成用シャーレでも、培地の剥離防止は十分でない。
【0008】
その理由は明確ではないが、合成樹脂製のシャーレ本体はそりや歪みなどの変形が生じやすく、このよう変形によって培地が剥離しやすくなると推察される。例えば、特許文献1、特許文献2記載に開示される分画培地作成用シャーレは透明な合成樹脂を使用して射出成形で製造され、樹脂の注入口は底面部の中央部となる。この態様では、樹脂注入口の上部を通過するように隔壁が形成され、前記隔壁を中央にして左右を把持すると、形状が左右対称であるため容易に各分画の側壁がゆがみ、この歪みによって培地が剥離されやすい。
【0009】
前記特許文献1は、培地を仕切る隔壁の高さを培地の高さよりも低くして接種操作を改善する点に特徴があり、隔壁が低く、各分画の側壁を両手で把持するとわずかの力で側壁がゆがみ、たとえ隔壁や側壁の近傍に凸部を形成しても、この歪みによって培地と前記凸部との嵌合が容易に解消され、培地が剥離される場合がある。
【0010】
また、培地の剥離は、シャーレ本体の歪みだけでなく、培地を充填してから使用するまでの振動によっても発生すると考えられる。例えば、培地を充填したシャーレ本体に植菌する際、また、植菌後にインキュベーターに挿入する際にも、シャーレ本体の底面部と載置台との摩擦によって振動が発生し、このような振動によって剥離が発生しやすくなる。更に、シャーレ本体に蓋部を装着する際に、シャーレ本体の外周と蓋部の内周とのサイズが大きく異なると、シャーレ本体と蓋部とが接触する際に振動を発生しやすい。このような振動は、培地剥離の一因となる。
【0011】
更に、分画培地作成用シャーレは、1つのシャーレに複数の培地を充填して作業やスペースの省力化を図るものであり、保存時には、複数の分画培地作成用シャーレを安定かつコンパクトに積層しうることが好ましい。しかも、このような保存時または使用時の積層の際にも、振動の発生を回避しうることが好ましい。
【0012】
上記現状に鑑みて、本発明は、培地の剥離を防止しうる分画培地作成用シャーレを提供することを目的とする。
また、本発明は、複数の分画培地作成用シャーレを安定かつ簡便に積層しうる、分画培地作成用シャーレを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、分画培地作成用シャーレにおける培地の剥離を詳細に検討した結果、分画培地作成用シャーレ本体の複数の分画に区分する隔壁の近傍の底面部に凹部を形成し、かつ側壁の近傍の底面部に凸部を形成すると、全てが凹部で形成される場合よりも培地の剥離を効率的に回避できること、また、分画培地作成用シャーレ本体の操作時の歪みや振動を回避することで培地の剥離を防止しうること、このような歪みを回避する方法として、前記凹部や凸部、更に底面部の下面に形成する足部などを左右非対称に配設することでシャーレ本体の歪みを回避できること、前記隔壁を板状でなく、2つの小隔壁の頂部を連接して構成するアーチ型の隔壁とすることで、分画培地作成用シャーレの強度を向上させ、使用時や保管時のゆがみを効率的に低減して培地の剥離を防止しうることなどを見出し、本発明を完成させた。
すなわち本発明は、底面部と、前記底面部の外周に配設される側壁と、前記底面部を複数の小分画に分割しかつ前記側壁と連設される隔壁とからなり、前記底面部には、前記隔壁近傍に設けられた凹部と、前記側壁近傍に設けられた凸部とが形成されることを特徴とする分画培地作成用シャーレ本体を提供するものである。
【0014】
また、前記凹部および/または凸部は、2〜20個に分割される分画培地作成用シャーレ本体を提供するものである。
また、前記凹部の深さは、0.3〜3mm、より好ましくは0.5〜2.5mmである分画培地作成用シャーレ本体を提供するものである。
【0015】
また、前記凸部の高さは、0.5〜3mm、より好ましくは1.0〜2.5mmである分画培地作成用シャーレ本体を提供するものである。
また、前記凹部および/または凸部は、分画培地作成用シャーレ本体の底面部に、非対称に形成されることを特徴とする分画培地作成用シャーレ本体を提供するものである。
【0016】
また、前記シャーレ本体に配設される隔壁は、小分画を構成する小隔壁が頂部で連設するアーチ型であることを特徴とする、分画培地作成用シャーレ本体を提供するものである。
【0017】
また、前記アーチ型を構成する2枚の小隔壁は、分画培地作成用シャーレ本体の側壁近傍および/または中央部でその下端部が連設されることを特徴とする分画培地作成用シャーレ本体を提供するものである。
【0018】
また、前記隔壁の高さは、側壁近傍で中央より高く構成されることを特徴とする分画培地作成用シャーレ本体を提供するものである。
また、前記シャーレ本体は、底面部の下面に足部が形成されていることを特徴とする、前記分画培地作成用シャーレ本体を提供するものである。
【0019】
更に、前記足部は、不連続に形成されることを特徴とする分画培地作成用シャーレ本体を提供するものである。
更に、上記分画培地作成用シャーレ本体と、蓋部からなる分画培地作成用シャーレを提供するものである。
【0020】
また、前記蓋部は、天面部と、前記天面部の外周に配設される側壁とからなり、前記天面部には、前記シャーレ本体の側壁の上端と嵌合しうる縁高部が形成されていることを特徴とする、分画培地作成用シャーレを提供するものである。
【0021】
また、前記縁高部の内側には、複数個のリブが形成されていることを特徴とする分画培地作成用シャーレを提供するものである。
また、前記蓋部の縁高部の上面には、突起部が形成されていることを特徴とする分画培地作成用シャーレを提供するものである。
【0022】
また、前記突起部は、不連続に構成されることを特徴とする分画培地作成用シャーレを提供するものである。
加えて、角部が円弧で形成される上記分画培地作成用シャーレを提供するものである。
更に、前記分画培地作成用シャーレに、培地を充填してなる分画培地を提供するものである。
【発明の効果】
【0023】
本発明の分画培地作成用シャーレによれば、シャーレ本体の底面部に凹部と凸部とが形成されているため、これに培地を充填すると培地が前記凹部と凸部にも充填されて嵌合し、培地の剥離が効率的に抑制される。
【0024】
また、本発明の分画培地作成用シャーレが、底面部と側壁からなる小分画を側壁上端部を介して複数連設したものである場合には、シャーレ本体の強度が向上するためシャーレ本体の使用時のそりや歪みが抑制され、培地の剥離を効率的に抑制することができる。
【0025】
また、本発明の分画培地作成用シャーレは、蓋部にシャーレ本体の側壁上端と嵌合しうる縁高部を形成し、シャーレ本体の底面部に足部を形成すると、複数の分画培地作成用シャーレを上方に積層する場合に、前記底面部と縁高部とが組み合わさり、積層幅を減少して省スペースで保管することができる。
【0026】
また、本発明の分画培地作成用シャーレは、シャーレ本体の底面部の外周近傍に足部を形成すると、載置台との接触面を低減することができ、摩擦による振動を抑制することができる。このため、これに培地を充填すると振動によって生ずる培地の剥離を効率的に抑制することができる。
【0027】
また、本発明の分画培地作成用シャーレは、射出成形によって製造することができ、製造が容易であり、かつ安価に製造することができる。
本発明の分画培地は、上記分画培地作成用シャーレに培地を充填したものであり、保管時や作業時の振動による培地の剥離が抑制されたものである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は、本発明の分画培地作成用シャーレであり、本発明のシャーレ本体に蓋部を装着した状態を説明する図であり、図1(a)は、分画培地作成用シャーレ(300)の平面図であり、図1(b)は分画培地作成用シャーレ(300)の側面図であり、図1(c)は分画培地作成用シャーレ(300)の底面図である。
【図2】図2は、本発明の分画培地作成用シャーレ本体(100)の好適な態様の一例を説明する図である。図2(a)は、前記シャーレ本体(100)の平面図、図2(b)は右側面図、図2(c)は正面図、図2(d)は底面図である。
【図3】図3は、図2(a)に示すシャーレ本体(100)のX−X線の部分断面図である。
【図4】図4は、本発明のシャーレ本体(100)に形成された凹部(40)を説明する図であり、図2(a)のC−C線の部分断面図である。
【図5】図5は、本発明のシャーレ本体(100)に形成された隔壁(30)を説明する図であり、図2(a)のD−D線の部分断面図である。
【図6】図6は、本発明のシャーレ本体(100)に形成された凸部(50)を説明する図であり、図6(a)は、図2(a)のA−A線の部分断面図であり、図6(b)は、図2(a)のB−B線の部分断面図である。
【図7】図7は、本発明のシャーレ本体(100)に形成された隔壁(30)が側壁(20)と連接される態様を説明する図であり、図2(a)に示す本発明のシャーレ本体(100)の正面図の部分拡大図である。
【図8】図8は、本発明のシャーレ本体(100)に形成された隔壁(30)と側壁(20)との関係を説明する図であり、図8は図7のA−A線の部分断面図である。
【図9】図9は、突出部(25)と、隔壁(30)との関係を説明する図であり、図9(a)、図9(b)、図9(c)は、図7のB−B線の部分断面図、C−C線の部分断面図、D−D線の部分断面図である。
【図10】図10は、シャーレ本体(100)の底面図の部分拡大図である。
【図11】図11は、本発明のシャーレ本体(100)の他の態様であり、2つの小隔壁(31)からなる隔壁(30)が直接に側壁(20)と連設する態様を説明する図である。
【図12】図12は、図11に示すシャーレ本体(100)の隔壁(30)と側壁(20)との連接の態様を説明する図であり、図11のA−A線の部分断面図である。
【図13】図13は、本発明のシャーレ本体(100)の他の態様であり、2つの小隔壁(31)からなる隔壁(30)が側壁(20)から内側に陥没する陥没型の突出部(25')と連設する態様を説明する図であり、シャーレ本体(100)の平面図の部分拡大図である。
【図14】図14は、図13に示すシャーレ本体(100)の隔壁(30)と側壁(20)との連接の態様を説明する図であり、図13のA−A線の部分断面図である。
【図15】図15は、小隔壁(31)からなる隔壁(30)が、側壁(20)の近傍で合一して突出部(25')を構成し、前記突出部(25')は底部(10)に連設して、隔壁(30)に形成される空洞が存在しない態様を説明する図である。
【図16】図16は、本発明のシャーレ本体(100)の他の態様であり、突出部(25、25')の上部に板状突出部(25a)が形成されることを説明する図である。
【図17】図17は、本発明のシャーレ本体(100)の他の態様であり、突出部(25、25')の上部に板状突出部(25a)が形成されることを説明する図であり、図17(a)は、図16(a)のA−A線の部分断面図であり、図17(b)は、図16(b)のA−A線の部分断面図である。
【図18】図18(a)は、図2(a)と同じシャーレ本体(100)であり、図18(b)は、図18(a)のA−A線の部分断面図である。
【図19】図19は、本発明のシャーレ本体(100)の中央部で前記小隔壁(31)の底面部が相互に連設される態様を説明する図であり、図19(a)は図2のE−E線の部分断面図であり、図19(b)は、図2(a)のF−F線の部分断面図である。
【図20】図20は、本発明のシャーレ本体(100)において、足部(50)と隔壁(30)と、凸部(50)との関係を示す説明図である。
【図21】図21は、本発明のシャーレ本体(100)の底面部(10)に形成した足部(60)を説明する図であり、図2(d)のG−G線の部分断面図である。
【図22】図22は、本発明の分画培地作成用シャーレを構成する蓋部(200)の好適な態様の一例を説明する図であり、図22(a)は平面図、図22(b)は左側面図、図22(c)は右側面図、図22(d)は正面図、図22(e)は底面図である。
【図23】図23は、本発明で使用する蓋部(200)の縁高部(230)を説明する図であり、図22(a)のA−A線の部分断面図である。蓋部(200)を装着する際のシャーレ本体(100)を破線で示し、複数の分画培地作成用シャーレを積層する場合の分画培地作成用シャーレ本体(100)を蓋部(200)の上部に破線で示す。
【図24】図24は、本発明で使用する蓋部(200)に形成した突起部(240)および縁高部(230)を説明する図であり、図24は、図22(a)のB−B線近傍の部分拡大図である。
【図25】図25は図22(e)のC−C線近傍の部分拡大図であり、縁高部(230)の内側に形成されたリブ(235a)およびリブ(235b)を説明する図である。
【図26】図26は、図22(a)のB−B線断面であり、本発明で使用する蓋部(200)の縁高部(230)の内側に形成されたリブ(235a)、リブ(235b)を説明する図である。
【図27】図27は、本発明の分画培地を説明する図であり、培地高さと隔壁(30)高さとの関係を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の第一は、底面部と、前記底面部の外周に配設される側壁と、前記底面部を複数の小分画に分割しかつ前記側壁と連設される隔壁とからなり、前記底面部には、前記隔壁近傍に設けられた凹部と、前記側壁近傍に設けられた凸部とが形成されることを特徴とする分画培地作成用シャーレ本体である。
【0030】
また、本発明の第二は、上記分画培地作成用シャーレ本体と、蓋部からなる分画培地作成用シャーレである。
更に、本発明の第三は、前記分画培地作成用シャーレに、培地を充填してなる分画培地に、培地を充填してなる分画培地である。以下、図面を用いて本発明を詳細に説明する。
(1)分画培地作成用シャーレ本体
本発明の分画培地作成用シャーレ(300)は、分画培地作成用シャーレ本体と蓋部とからなる。図1に本発明の分画培地作成用シャーレ(300)の一例であって、前記シャーレ本体(100)に蓋部(200)を装着した状態の平面図、底面図および側面図を示す。図1(a)は、分画培地作成用シャーレの平面図であり、蓋部(200)の天面部(210)とその外周に配設された側壁(220)と、天面部(210)の一部であって側壁(220)近傍に形成された縁高部(230)、ならびに前記縁高部(230)の上部に不連続に形成された突起部(240)を示している。図1(b)は分画培地作成用シャーレ(300)の側面図であり、シャーレ本体(100)に、それより大径かつ短い蓋部(200)が装着される態様を示す。また、図1(c)は分画培地作成用シャーレ(300)の底面図であり、シャーレ本体(100)の底面部(10)とその外周に配設された側壁(20)と、前記側壁(20)の近傍に不連続に形成された足部(60)とを示している。なお、底面部(10)には、2以上の区画に分割する隔壁(30)と、その近傍に凹部(40)とが形成されている。ただし、図1は例示であり、本発明は上記図1に限定されるものではない。
図2は、図1に示すシャーレ本体(100)を説明する図である。図2(a)は、前記シャーレ本体(100)の平面図、図2(b)は右側面図、図2(c)は正面図、図2(d)は底面図である。なお、左側面図は、右側面図と対称であり、また背面図は正面図と対称である。
(i)隔壁
本発明の分画培地作成用シャーレ本体(100)は、底面部(10)の外周に側壁(20)が形成され、かつ前記底面部(10)の上面は、隔壁(30)によって少なくとも2以上の小分画に分割される。本発明において、「隔壁」とは、底面部(10)を複数の小分画に分割しかつ前記側壁と連設されるものである。2以上の小分画に分割することができればよく、例えば、前記図2(a)では、底面部(10)の中央に形成された隔壁(30)によって底面部(10)を2つの小分画(α、β)に分割しているが、十文字に配置された隔壁によって4つの小分画を形成してもよく、その他、放射線状に配置した隔壁によって複数の小分画を形成するものであってもよい。
【0031】
「隔壁」の形状は問わず、一枚の板状物であってもよく、その他の形状であってもよい。図2(a)に示すシャーレ本体(100)のX−X線の部分断面図を図3に示す。底面部(10)が隆起して2つの小隔壁(31)を構成し、この小隔壁(31)の頂部がアーチ型に連接して1つの隔壁(30)を構成している。前記隔壁(30)によって底面部(10)が2つに分割され、小分画(α)と小分画(β)とが形成されている。小隔壁(31)の頂部をアーチ型に連接してなる隔壁(30)は、強度に優れ、使用時の湾曲や歪みが少なく、培地の剥離を効率的に回避することができる。また、アーチ型であれば、隔壁(30)の中央部が中空であるため、重量を軽減することができる。
【0032】
隔壁(30)の高さは、分画培地作成用シャーレのサイズや充填する培地量に応じて適宜選択することができる。分画培地作成用シャーレの直径が10cmの場合で例示すれば、図3では、隔壁の高さ(h1)は、2.5〜10mm、より好ましくは2.5〜5mmである。なお、隔壁(30)の高さ(h1)は、分画培地作成用シャーレ本体で均一である必要はない。
(ii)凹部
本発明では、底面部(10)の隔壁(30)の近傍に凹部(40)が形成されることを特徴とする。隔壁(30)の近傍に凹部(40)を形成すると、側壁(20)の近傍に形成した凸部(50)と相まって、培地の剥離を効率的に防止することができる。
【0033】
前記凹部(40)は、底面部(10)に1以上存在すればよいが、好ましくは各小分画に1以上、より好ましくは2以上である。前記図2(a)では、等間隔に2箇所の凹部(40)がそれぞれの小分画(α、β)に形成される態様を示す。より好ましくは、各小分画に2〜20個、より好ましくは2〜10個、特に好ましくは2〜5個である。
【0034】
本発明では、凹部は、各小分画に同数、または同形状で配置される必要はない。例えば、前記隔壁(30)を中心として凹部(40)が左右非対称に配設される場合には、底面部(10)の歪みが少ないため、培地の剥離防止機能が効果的に発揮される。
【0035】
図4に、図2(a)のC−C線の部分断面図を示す。底面部(10)が線状に陥没して凹部(40)を形成している。前記したように、シャーレの直径が10cmの場合で例示すれば、凹部(40)の深さ(d1)は、0.3〜3mm、より好ましくは0.5〜2.5mmである。また、凹部(40)の長さ(L1)に制限は無いが、好ましくは、凹部(40)の全長が、隔壁(30)の長さの50〜100%、より好ましくは60〜90%となるように調製する。この範囲で底面部(10)の歪みが発生した場合でも、培地を充填した後に培地の剥離を効率的に抑制することができる。
【0036】
また、図5に、図2(a)のD−D線の部分断面図を示す。隔壁(30)に隣接してその両側に凹部(40)が形成されている。
本発明では、前記凹部(40)は、角部の全てが円弧で形成されることが好ましい。凹部(40)の角部が円弧であれば培地充填時の気泡の発生を抑制することができ、および培地固化後に角部からのヒビ割れを抑制することができる。
(iii)凸部
本発明では、図2(a)に示すように、側壁(20)の内周近傍の底面部(10)に凸部(50)が形成されることを特徴とする。隔壁(30)の近傍に形成した凹部(40)と相まって、シャーレ本体(100)に歪みが発生した場合でも、培地の剥離を防止しうることが判明した。
【0037】
本発明では、底面部(10)に少なくとも1つの凸部が形成されるが、より好ましくは、各小分画に1以上、より好ましくは2以上である。前記図2(a)では、3個の長尺の凸部(50)がそれぞれの小分画(α、β)に形成される態様を示す。
【0038】
凸部(50)は、より好ましくは、各小分画に2〜20個、より好ましくは2〜10個、特に好ましくは2〜5個である。なお、前記凸部(50)は、各小分画に同数、または同形状で配置される必要もない。例えば、図2(a)で示すシャーレ本体(100)では、前記隔壁(30)を中心にして凸部(50)が左右対称に配設されているが、α分画に3個、β分画に2個などと非対称に配設してもよい。凹部(40)の場合と同様に、凸部(50)が左右非対称に構成されている場合には、シャーレ本体(100)を左右から把持した際に均等に生ずる歪みを効率的に回避することができるからである。なお、凸部(50)は、コロニーの識別性に影響を与えないように、側壁(20)から3mm以内にその頂部が配置されるように配設されることが好ましい。
【0039】
図6(a)に、図2(a)のA−A線の部分断面図を示す。凸部(50)の高さ(h2)は、0.5〜3mm、より好ましくは1.0〜2.5mmである。また、幅(w1)は、0.3〜1.0mm、より好ましくは0.4〜0.8mmである。この範囲で底面部(10)の歪みを回避でき、かつ培地を充填した後に培地の底面部に凹凸を形成して、その剥離を効率的に抑制することができる。
【0040】
前記凸部(50)は、角部の全てが円弧で形成されることが好ましい。凹部(40)の角部が円弧であれば培地充填時の気泡の発生を抑制することができ、および培地固化後に角部からのヒビ割れを抑制することができる。
【0041】
図6(b)に、図2(a)のB−B線の部分断面図を示す。底面部(10)が線状に突出して凸部(50)が形成される態様が示されている。なお、前記したように、底面部および頂部も角部が全て円弧で形成されている。本発明では、前記凸部(50)の長さ(L2)は、底面部と頂部とで同一であってもよいが、図6(b)に示すように、底面部よりも頂部を短くしてもよい。なお、凸部(50)の長さ(L2)に制限はないが、好ましくは、凸部(50)の全長は、シャーレ本体(100)の全周の30〜90%、より好ましくは50〜90%である。
(iv)突出部
図2(a)に示す本発明のシャーレ本体(100)の部分拡大図を図7に示す。本発明では、前記隔壁(30)は、側壁(20)に連接されるが、この際、図7に示すように、側壁(20)の一部が突出部(25)を形成し、この突出部(25)と隔壁(30)とが連接されるものであってもよい。
【0042】
図7のA−A線の部分断面図を図8に示す。なお、同図において、各構成要素の説明のため、便宜的に突出部(25)と他の構成要素との境界を破線で示した。側壁(20)の一部がシャーレ本体(100)の内側に突出して突出部(25)を形成し、この突出部(25)が隔壁(30)に連接している。同図に示す突出部(25)は、隔壁(30)との連接部から側壁(20)に向かってその高さが増している。側壁(20)の近傍で突出部(25)の高さを高くすると、側壁(20)との接触面積が拡大するためシャーレ本体の強度が増し、湾曲や歪みなどの変形を防止することができる。
【0043】
更に、隔壁(30)、凹部(40)、底面部(10)、突出部(25)の関係を説明するため、図7のB−B線の部分断面図、C−C線の部分断面図、D−D線の部分断面図を、それぞれ図9(a)、図9(b)、図9(c)に示す。図9(b)および図9(c)に示すように、隔壁(30)は、小隔壁(31)の頂部がアーチ型に連接して構成されるため、中央に空洞部が形成されている。一方、前記隔壁(30)を構成する小隔壁(31)は、側壁の近傍で相互に接近し、合一し、図9(a)に示す前記突出部(25)に連接する。このため、隔壁(30)の下部中央に形成される空洞部が側壁(20)の近傍では存在しない。隔壁(30)が小隔壁(31)からなる場合には、前記空洞部の存在によって隔壁(30)の頂部を中心として左右に広がるなど、容易に変形が発生するが、側壁(20)の近傍で2つの小隔壁(31)が相互に連接するため、上記歪みの発生を効率的に回避することができる。なお、図9(b)では、前記隔壁(30)に隣接して、底面部(10)が陥没してなる凹部(40)が形成される態様を示している。
【0044】
本発明では、前記突出部(25)も、角部が円弧で形成されることが好ましい。振動による衝撃を、前記円弧によって緩和し、培地の剥離を効率的に防止するためである。なお、図10に、シャーレ本体(100)の底面図の部分拡大図を示す。隔壁(30)の端部も、角部が円弧で形成されている。
【0045】
一方、隔壁(30)と側壁(20)との連設は、前記図7に示す態様に限定されるものではない。例えば、図11の部分拡大図に示すように、2つの小隔壁(31)からなる隔壁(30)が直接に側壁(20)と連設する態様であってもよい。図11のA−A線の部分断面図を図12に示す。
【0046】
本発明では、隔壁(30)を側壁(20)に形成する突出部(25)として、更に、側壁(20)の一部をシャーレ本体(100)の内側に陥没して突出させてなる突出部(25')であってもよい。陥没型突出部(25')も、図8と同様に、側壁(20)の近傍で隔壁(30)よりも高くなるように構成されていてもよい。このような陥没型の突出部(25')を配設したシャーレ本体(100)の平面図の部分拡大図を図13に示す。側壁(20)と同じ厚みを維持しながら側壁(20)が陥没して突出部(25')を形成するため、図7と相違して、平面視、突出部(25')の横幅が隔壁(30)の横幅と同じ位まで広がっている。
【0047】
また、図13のA−A線の部分断面図を図14に示す。図14では、側壁(20)が内側に陥没して突出部(25')を形成するが、前記突出部(25')の下端は底面部(10)に連接している。このことは、図8と同様に、2つの小隔壁(31)の端部が側壁(20)の近傍で合一し、隔壁(30)の中央部に形成される空洞部が存在しないことを意味する。これにより、側壁(20)から内側に陥没する突出部(25')を形成して隔壁(30)と連接する場合でも、シャーレ本体(100)の強度を向上させ歪みを効率的に回避することができる。なお、説明のため、図13のB−B断面図を図15に示す。シャーレ本体(100)の側壁(20)の近傍には、小隔壁(31)を連接させる場合に発生する底面部(10)の空洞が存在しない。
【0048】
なお、本発明において、隔壁(30)とは、底面部(10)を複数の小分画に分割しかつ前記側壁と連設されるものである。前記突出部(25)は、側壁(20)の一部からなるが、底面部(10)を複数の小分画に分割しかつ側壁(20)と連設される点で、「隔壁」の概念に含まれるものとする。
【0049】
なお、前記突出部(25)の形状は上記に限定されるものではなく、例えば、図16(a)、図16(b)に示す態様であってもよい。これらと図7、図13との相違は、突出部(25、25')の上部に、さらに板状突出部(25a)が形成される点にある。これらのA−A線の部分断面図を図17に示す。図17(a)は、図16(a)のA−A線の部分断面図であり、図17(b)は、図16(b)のA−A線の部分断面図である。
【0050】
板状突出部(25a)を形成することで、隔壁(30)と側壁(20)との連接面積を向上させ、シャーレ本体(100)の強度を向上させ、使用時の歪みを回避することができる。
(v)射出注入口
本発明のシャーレ本体(100)は、射出成形によって製造することができる。その際、射出注入口は、隔壁(30)の下端部に形成することが好ましい。コロニーの視認性に影響を与えることが無いからである。図18(a)に、図2(a)と同じシャーレ本体(100)を示し、図18(b)に図18(a)のA−A線の部分断面図を示す。図18(a)に示すように、底面部(10)の直径上に小隔壁(31)からなる隔壁(30)が形成され、前記隔壁(30)に向かって射出注入口(15)が連接されている。本発明では、隔壁(30)の下端部であって、シャーレ本体の中央部に形成することが好ましい。これにより、アーチ型の隔壁(30)の空洞部に樹脂が充填され、シャーレ本体の中央部でも2つの小隔壁(31)の下端を合一に成形し、歪みなどによって発生する培地の剥離を抑制することができる。
【0051】
即ち、前記したように、本発明では、突出部(25)を介して側壁(20)と隔壁(30)とが連接され、その際に、2つの小隔壁(31)の下端部が合一される。更に、射出注入口(15)をシャーレ本体の中央に配設することで、中央部でも2つの小隔壁(31)の下端部を合一に成形することができ、これにより、使用時の歪みをより効果的に抑制することができる。
【0052】
図2(a)のE−E線の部分断面図を図19(a)に示す。底面部(10)が隆起して2つの小隔壁(31)からなるアーチ型の隔壁(30)が形成され、かつ射出注入口(15)に注入する樹脂によって前記小隔壁(31)の底面部の空洞部に樹脂が充填される。また、図2(a)のF−F線の部分断面図を図19(b)に示す。
(vi)足部
前記シャーレ本体(100)は、底面部(10)の下面に足部(60)が形成されていることが好ましい。図2(d)に示すシャーレ本体(100)では、均等に4個の足部(60)が形成されている。足部(60)を形成することで、底面部(10)と載置台との摩擦が低減し、振動による培地の剥離を回避することができる。
【0053】
また、足部(60)の数と長さは特に制限されるものではなく、例えば側壁(20)に沿って形成した連続した輪状の足部であってもよく、複数に分断された不連続の突起物からなるものであってもよい。更に、足部(60)は、例えば、隔壁(30)を中心として左右または上下に対称に配設されるものであってもよく、非対称に配設されるものであってもよい。足部(60)を非対称に配設すると、使用時や保管時の歪みをより効率的に回避することができる。
【0054】
本発明では、例えば図20に示すように、足部(60)が底面部(10)の上面に形成した前記凸部(50)と凸部(50)との間隙に亘って底面部(10)の下面に連続して形成され、または、隔壁(30)と側壁(20)との連接部において、2つの小隔壁(31)に亘って連続するように形成されていることが好ましい。底面部(10)の上面の凸部(50)と底面部(10)の下面の足部(60)とが相互に凸部(50)間、足部(60)間の間隙を埋めるように配設されることで、シャーレ本体(100)の変形を抑制することができる。
【0055】
前記図2(d)のG−G線の部分断面図を図21に示す。本発明において、足部(60)の高さ(h3)は0.2〜3mm、より好ましくは0.5〜2mmである。
なお、本発明において、前記足部(60)も、角部が円弧で形成されることが好ましい。頂部が円弧であればより載置台との摩擦を低減することができる。
(vii)側壁
本発明では、底面部(10)の外周に側壁が形成される。前記図21に示すように、側壁(20)の上端部に膨らみ部(23)が形成され、前記膨らみ部(23)の角部は、円弧に形成されている。側壁(20)の上端に角部が円弧状の膨らみ部(23)が形成されると、蓋部(200)との接触面積が低減するため、頂部が円弧であればより蓋との摩擦を低減することができ、振動などによるキズを回避することができる。
(2)蓋部
本発明の分画培地作成用シャーレ本体は、蓋部とともに分画培地作成用シャーレを構成する。蓋部は、従来公知のシャーレを構成する蓋部をいずれも使用することができる。
(i)縁高部
本発明では、図22(a)の平面図に示すように、蓋部(200)として、天面部(210)と、前記天面部(210)の外周に配設される側壁(220)とからなり、前記天面部(210)には、前記シャーレ本体(100)の側壁(20)の上端を支持しうる縁高部(230)が形成されているものを好ましく使用することができる。シャーレ本体(100)の側壁(20)の上端が、蓋部(200)に形成した縁高部(230)に装着されると、使用時の蓋部(200)の動きが低減するため、振動や衝撃によって発生しやすいキズの発生を抑制することができる。なお、図22(b)は、図1に示す本発明で好適に使用できる蓋部(200)の左側面図、図22(c)は右側面図、図22(d)は正面図、図22(e)は底面図である。なお、背面図は正面図と同一である。
【0056】
図22(a)のA−A線の部分断面図を図23に示す。本発明で使用する蓋部(200)に形成される縁高部(230)は、側壁部(220)の近傍に配設された連続した輪状の縁高部(230)であることが好ましい。なお、図23において、符号240は、後記する突出部である。更に、蓋部(200)を装着する際のシャーレ本体(100)を破線で示し、複数の分画培地作成用シャーレを積層する場合の分画培地作成用シャーレ本体(100)を蓋部(200)の上部に破線で示す。
【0057】
蓋部(200)の外周近傍に形成した前記縁高部(230)によって、相対的に蓋部(200)の天面部(210)が凹み、この凹み部に他のシャーレ本体(100)を載置すると足部(60)が天面部(210)の前記凹み部と接触して安定して積層される。前記縁高部(230)の幅(w2)は、1.5〜5mm、より好ましくは2〜4mmである。上記範囲であれば、シャーレ本体(100)の側壁(20)の上端の幅は、一般には0.8〜1.5mmであるため、蓋部(200)の縁高部(230)にシャーレ本体(100)の側壁(20)を簡便に装着でき、かつ蓋部(200)のゆれを防止することができる。また、天面部(210)にシャーレ本体(100)を安定して積層することができる。なお、摩擦を回避するためには、シャーレ本体(100)の底面部(10)は、蓋部(200)の天面部(210)と接触しないことが好ましい。従って、蓋部(200)の前記縁高部(230)の深さは、足部(60)の高さ(h3)よりも浅くなるように調製することが好ましい。
(ii)突起部
本発明では、蓋部(230)の天面部(210)の上面に、突起部(240)が形成されていてもよい。図22(a)には、天面部(210)の外周近傍に、均等に5個の突起部(240)が形成されている態様を示す。シャーレ(300)は、培地を充填した後に、天地を反転して保存されることが一般的である。従って、蓋部(200)の天面部(210)に突起部(240)を形成すると、保存時の足部として機能し、載置台との摩擦を低減して培地の剥離を効率的に回避することができる。従って、前記突起部(240)の高さ(h4)は、足部(60)と同様に、0.2〜3mm、より好ましくは0.5〜2mmである。
【0058】
前記突起部(240)は、前記したシャーレ本体(100)に形成した足部(60)と同様に、複数に分断された不連続の突起物からなるものであってもよい。また、天面部(210)に左右または上下非対称に配設されるものであってもよい。使用時や保管時の歪みをより効率的に回避することができる。
【0059】
更に、前記突起部(240)も、角部が円弧で形成されることが好ましい。頂部が円弧であればより載置台との摩擦を低減することができる。
図24に、図22(a)のB−B線近傍の部分拡大図を示す。図24には、突起部(240)と突起部(240)との間に間隙が形成される態様が示されている。本発明では、足部(60)などの角部を円弧で形成して摩擦を低減しているが、これによって、分画培地作成用シャーレを積層した場合にわずかの振動で積層物が崩れる場合がある。しかしながら、蓋部(200)の上面外周に突起部(240)を形成すれば、前記突起部(240)が障壁となり、このようなすべりを止めることができる。
(iii)リブ
本発明では、蓋部(200)の前記縁高部(230)の内側に、前記縁高部(230)の底面と平行して配設されるリブ(235a)が形成されてもよい。更に、前記リブ(235a)の側壁に形成されるリブ(235b)が形成されてもよい。図25に図22(e)のC−C線近傍の部分拡大図を示す。
【0060】
前記リブ(235a)の高さ(h5)は、0.1〜1.0mmである。リブ(235a)は、縁高部(230)のいずれに形成されていてもよく、その数は3〜20個であることが好ましい。また、リブ(235b)は、前記リブ(235a)の一部に形成されていればよく、そのサイズは問わない。
【0061】
図22(a)のB−B線断面を図26に示す。なお、破線は、蓋部(200)を装着する際のシャーレ本体(100)である。前記リブ(235a)が存在しない場合には、シャーレ本体(100)の側壁(20)の上端と縁高部(230)の内側の全面とが接触するが、上記リブ(235a)を形成すると、シャーレ本体(100)の側壁(20)の上端と上記リブ(235a)とが接触するため、蓋部(200)とシャーレ本体(100)との接触によるキズの発生を抑制し、通気性を確保することで底面部(10)に培地を充填した後の水滴の発生を抑制することができる。更に、接触面積を低減し、蓋部(200)が振動した場合にもその衝撃の伝達量を低減し、培地の剥離を防止することができる。同様に、リブ(235b)を形成すると、シャーレ本体(100)の側壁(20)の外側と蓋部(200)の側壁(220)との接触面積が低減し、前記リブ(235a)と同様に、蓋部(200)とシャーレ本体(100)との接触によるキズの発生防止、通気性確保による水滴の抑制効果が発揮される。更に、前記接触面積の低減により、シャーレ本体(100)または蓋部(200)が振動した場合にもその衝撃の伝達量を更に低減し、培地の剥離を防止することができる。
(3)分画培地作成用シャーレ
前記分画培地作成用シャーレ本体(100)に蓋部(200)を装着して、本発明の分画培地作成用シャーレ(300)を調製することができる。ポリスチレンなどで製造して透明なシャーレとすることができる。なお、上記シャーレ本体(100)は、隔壁(30)によって、円形の底面部(10)が2つの小分画(α、β)に分割される態様で例示したが、本発明はこれに限定されず、底面部(10)の外周に側壁(20)が配設され、かつ隔壁(30)によって2以上に底面部(10)が分割されるものであれば、底面部(10)の形状は、三角や四角などの方形、その他であってもよい。
(4)分画培地
本発明の分画培地作成用シャーレ本体(100)に培地を充填して、分画培地を調製することができる。
【0062】
充填する培地は、図27に示すように、前記隔壁(30)の上端と同一か、隔壁(30)より高く充填するものであってもよい。隔壁(30)が突出しないように培地が充填されていると、接種作業の際に白金耳の先端が隔壁と接触することなく、簡便に接種作業を行うことができる。
(5)分画培地作成用シャーレの製造方法
本発明の分画培地(300)は、シャーレ本体(100)、蓋部(200)をそれぞれ射出成形、型抜き成型などで製造することができる。
【0063】
分画培地作成用シャーレ(300)を構成する部材としては、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂やポリアミド系樹脂、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ABS、ASなどを例示することができる。なお、射出成形の際の樹脂注入口は、底面部(10)または天面部(210)の中央部であることが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明によれば、培地の剥離が効率的に抑制された分画培地作成用シャーレを提供することができ、有用である。
【符号の説明】
【0065】
10・・・分画培地作成用シャーレ本体の底面部、
20・・・分画培地作成用シャーレ本体の側壁、
30・・・分画培地作成用シャーレ本体の隔壁、
40・・・分画培地作成用シャーレ本体の底面部に形成した凹部、
50・・・分画培地作成用シャーレ本体の底面部に形成した凸部、
60・・・分画培地作成用シャーレ本体の底面部に形成した足部、
100・・・分画培地作成用シャーレ本体、
200・・・蓋部、
210・・・蓋部の天面部、
220・・・蓋部の側壁、
230・・・蓋部の縁高部、
235・・・縁高部の内側に形成したリブ、
240・・・蓋部の上面に形成した突起部、
300・・・本発明の分画培地作成用シャーレ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
底面部と、前記底面部の外周に配設される側壁と、前記底面部を複数の小分画に分割しかつ前記側壁と連設される隔壁とからなり、
前記底面部には、前記隔壁近傍に設けられた凹部と、前記側壁近傍に設けられた凸部とが形成されることを特徴とする分画培地作成用シャーレ本体。
【請求項2】
前記シャーレ本体に配設される隔壁は、断面視、アーチ型であることを特徴とする、請求項1記載の分画培地作成用シャーレ本体。
【請求項3】
前記シャーレ本体は、底面部の外周近傍に、不連続な足部が形成されていることを特徴とする、請求項1または2記載の分画培地作成用シャーレ本体。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の分画培地作成用シャーレ本体と、蓋部からなる分画培地作成用シャーレ。
【請求項5】
前記蓋部は、天面部と、前記天面部の外周に配設される側壁とからなり、
前記天面部の内面には、前記シャーレ本体の側壁の上端と嵌合しうる縁高部が形成されていることを特徴とする、請求項4記載の分画培地作成用シャーレ。
【請求項6】
請求項5または6記載の分画培地作成用シャーレに、培地を充填してなる分画培地。
【請求項1】
底面部と、前記底面部の外周に配設される側壁と、前記底面部を複数の小分画に分割しかつ前記側壁と連設される隔壁とからなり、
前記底面部には、前記隔壁近傍に設けられた凹部と、前記側壁近傍に設けられた凸部とが形成されることを特徴とする分画培地作成用シャーレ本体。
【請求項2】
前記シャーレ本体に配設される隔壁は、断面視、アーチ型であることを特徴とする、請求項1記載の分画培地作成用シャーレ本体。
【請求項3】
前記シャーレ本体は、底面部の外周近傍に、不連続な足部が形成されていることを特徴とする、請求項1または2記載の分画培地作成用シャーレ本体。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の分画培地作成用シャーレ本体と、蓋部からなる分画培地作成用シャーレ。
【請求項5】
前記蓋部は、天面部と、前記天面部の外周に配設される側壁とからなり、
前記天面部の内面には、前記シャーレ本体の側壁の上端と嵌合しうる縁高部が形成されていることを特徴とする、請求項4記載の分画培地作成用シャーレ。
【請求項6】
請求項5または6記載の分画培地作成用シャーレに、培地を充填してなる分画培地。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【公開番号】特開2011−182648(P2011−182648A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−48085(P2010−48085)
【出願日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】
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