分裂酵母由来のI−SpomIエンドヌクレアーゼの特徴
【課題】酵素I−SpomIをコードする単離されたDNAならびにその認識および切断部位を提供する。
【解決手段】分裂酵母(Schizosaccharomyces pombe)から特異性を有する制限酵素I−SpomIをコードするDNA配列をクローニング、および発現ベクター、形質転換された細胞株ならびにトランスジェニック動物に組み込むことができる。ベクターは、遺伝子マッピングおよび遺伝子の部位指定挿入に有用である。
【解決手段】分裂酵母(Schizosaccharomyces pombe)から特異性を有する制限酵素I−SpomIをコードするDNA配列をクローニング、および発現ベクター、形質転換された細胞株ならびにトランスジェニック動物に組み込むことができる。ベクターは、遺伝子マッピングおよび遺伝子の部位指定挿入に有用である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制限エンドヌクレアーゼI−SpomIおよびI−SpomI制限部位に対応するヌクレオチド配列をコードするヌクレオチド配列に関する。本発明は、またヌクレオチド配列を含有するベクター、ベクターで形質転換された細胞、ベクターに基づくトランスジェニック動物、および生物の細胞に由来する細胞株にも関する。本発明は、また真核生物ゲノムのマッピングおよびインビボ部位指定遺伝子組換えに関するI−SpomIの使用にも関する。
【0002】
発明の背景
遺伝子を生物、例えば哺乳動物の生殖細胞系列に導入できることは、生物学において非常に興味深い。外来的に加えられたDNAを取り込み、そしてDNAに含まれた遺伝子を発現する哺乳動物細胞の性向は、何年も前から解っている。遺伝子操作の結果は、これらの動物の子孫に遺伝される。これらの子孫のすべての細胞は、その遺伝的構成の一部として導入遺伝子を受け継ぐ。かかる動物が、トランスジェニックであると称される。
【0003】
トランスジェニック哺乳動物は、胚形成期および分化における遺伝子制御の研究、遺伝子作用の研究、および免疫系における細胞の複雑な相互作用の研究に関する手段を提供してきた。まるごとの動物は複雑な生物学的過程を志向する、操作された遺伝子に関する究極のアッセイ系である。
【0004】
トランスジェニック動物は、種々の遺伝子の組織特異的な、または発達上の制御に寄与するDNA配列を機能的に分析するための一般的なアッセイを提供できる。加えて、トランスジェニック動物は、組換えタンパク質を発現するための、およびヒトの遺伝的障害の正確な動物モデルを作製するための有用な手段を提供する。
【0005】
遺伝子クローニングならびに動物および動物細胞における発現の一般的な議論に関しては、Sambrookら、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、第3版、Cold Spring Harbor Laboratory Press(2001)、およびGreenら、Genome Analysis: A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press(1977)を参照されたい。
【0006】
特定の疾患および遺伝的障害に対する素因を有するトランスジェニック系は、これらの状態に導く事象の研究において非常に価値がある。遺伝的障害の処置の有効性は、障害の1次的原因である遺伝子欠損の同定に依存し得るということは周知である。疾患または障害を導く動物モデルを提供することにより有効な処置の発見を促すことができ、これにより、例えば遺伝子組換え処置プロトコルの効率、安全性および作用様式の研究が可能になる。
【0007】
染色体と外来性DNAとの間の相同組換え(HR)は、ゲノムへの遺伝的変化を導入するための方法の基礎である(Capecchi、Science 244: 1288〜1292(1989)、Smithieら、Nature 317: 230〜234(1985))。組換えメカニズムのパラメーターは、細胞(Bernsteinら、Mol.Cell.Biol.12: 360〜367(1992); Brennerら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA.83: 1762〜1766(1986); Linら、Mol.Cell.Biol.10: 113〜119(1990); Linら、Mol.Cell.Biol.10: 103〜112(1990))およびインビトロ系(JessbergerおよびBerg、Mol.Cell.Biol.11: 445〜457(1991))に導入されたプラスミド配列を研究することにより決定されている。HRは、DNAにおける二本鎖切断により促進される。
【0008】
エンドヌクレアーゼの中でパン酵母(Saccharomyces cerevisiae)ミトコンドリアエンドヌクレアーゼI−SceI(JacquierおよびDujon、Cell 41: 383〜394(1985))は、特徴的であり、特定の染色体標的を切断するための、したがって生きた生物における染色体を操作するための手段として開発され得る(米国特許第5,474,896号)。I−SceIタンパク質は、予め決定された配列が予め決定された部位に挿入されるようになる非相互的メカニズムである、酵母のミトコンドリアにおけるイントロンホーミングに寄与するエンドヌクレアーゼである。エンドヌクレアーゼI−SceIは、2本鎖切断を開始することにより、酵母の核における組換えを触媒できるということが証明されている(Plessisら、Genetics 130: 451〜460(1992))。エンドヌクレアーゼI−SceIの認識部位は、18bpの長さであり、したがってI−SceIタンパク質は、非常に稀な、ゲノムにおける切断制限エンドヌクレアーゼである(Thierryら、Nucleic Acids Res.19: 189〜190(1991))。加えて、I−SceIタンパク質は、リコンビナーゼではないので、その染色体操作の可能性は、宿主およびドナー分子の双方に関する標的部位要件を有する系の可能性よりも大きい(Kilbyら、Reviews 9: 413〜421(1993))。
【0009】
酵母I−SceIエンドヌクレアーゼは、哺乳動物細胞における染色体標的で2本鎖切断を効率的に誘起でき、そして部位特異的組換え、遺伝子置換または挿入に至る切断をフランキングする領域と相同性を共有するドナー分子を用いて切断を修復できる(米国特許第5,474,896号)。酵素は、高い効率で組換えを触媒する。これは、2本鎖切断修復経路により染色体DNAと外来性DNA間の組換えが哺乳動物細胞において生じ得ることを明示している(Szostakら、Cell 33: 25〜35(1983))。
【0010】
I−SceIは、多くの異なる適用に用いられている。かかる適用は、2本鎖切断の研究、染色体構造の調査、哺乳動物および細菌細胞における遺伝子置換を含む遺伝子転移の研究、ショウジョウバエにおける相同組換えによる遺伝子標的化(gene targeting)、ならびに植物における染色体切断の生成に関連している。AnglanaおよびBacchetti、Nucl.Acids.Res.27: 4276〜4281(1999); Bellaicheら、Genetics 152: 1037〜1044(1999); Choulikaら、CR Acad.Sci.III317: 1013〜1019(1994); Choulikaら、Mol.Cell.Biol.15: 1968〜1973(1994); Cohen-Tannoudjiら、Mol.Cell.Biol.18: 1444〜1448(1998); Liangら、およびGarrard、Methods 17: 95〜103(1999); Machidaら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 94: 8675〜8680(1997); Melkerson-Watsonら、Infect.Immun.69: 5933〜5942(2000); Mogilaら、Methods Mol.Biol.113: 439〜445(1999); Monteilhetら、Nucl.Acids.Res.18: 1407〜1413; NahonおよびRaveh、Adv.Exp.Med.Biol.451: 411〜414(1998); Neuvegliseら、Gene 213: 37〜46(1998); Nicolasら、Virology 266: 211〜224(2000); Perrinら、Embo J.12: 2939〜2947(1993); Posfaiら、Nucl.Acids.Res.27: 4409〜4415; Puchta、Methods Mol.Biol.113: 447〜451(1999); Rongら、Science 288: 2013〜2018; Thierryら、Nucl.Acids.Res.19: 189〜190; ならびにA.Plessisら、Genetics 130: 451〜460(1992)。
【0011】
グループIイントロンは、その効率のよい増殖メカニズムのために多くの進化的門に広範に及んでいる。そのいくつかは、イントロンを含まない同族DNA配列においてイントロン挿入部位を認識し、そしてその部位近くのDNAにおいて2本鎖切断を導入するホーミングエンドヌクレアーゼをコードする。その後、遺伝子変換過程でイントロン含有遺伝子は、切断されたレシピエントアレルの修復のための鋳型として作用し、介在配列の複製を導く(1−4)。グループIイントロンホーミングと対照的に、グループIIイントロン可動性は、リボヌクレオタンパク質(RNP)粒子を形成する、イントロンラリアット(intron lariat)に結合するイントロンコード化タンパク質により促進されるレトロホーミングメカニズムに基づく。RNP粒子は、イントロンRNAの逆スプライシングおよび逆転写によるDNA標的部位へのイントロンの組み込みを導く(5)。これに加えて、タンパク質成分は、エンドヌクレオチド結合分解活性を有し、アンチセンス鎖を切断する。RNAは、DNA上に配置された後、アンチセンス鎖が、タンパク質部分により切断される前にセンス鎖に組み込まれる(6)。したがって、イントロンRNAおよびRNP粒子のタンパク質成分の双方が、イントロン標的部位の認識に関与する。後者のエレメントは、またDNA巻き戻しに必須である(7)。グループIのみならずグループIIイントロンもホーミングを行う。翻訳後除去されるポリペプチドであるインテインをコードするいくつかのDNA配列は、グループIイントロンで記載されたのと同一の様式で増殖する。インテインは、LAGLIDADGファミリーまたはH−N−Hファミリーのエンドヌクレアーゼを含有する(3、8−12)。これらの酵素は、タンパク質スプライシング活性を担持する既存のインテインへのエンドヌクレアーゼ遺伝子の侵入により進化してきた可能性がある(13)。インテインエンドヌクレアーゼPI−SceIおよびPI−PfuIの結晶に関する構造研究により、グループIイントロンエンドヌクレアーゼとは対照的に、これは別のDNA結合ドメインを用いてその特異性を増強していることが強く示されている。I−SceIでは、DNA認識領域(DRR)は、特異的基質が切断部位からおよそ2個のらせん回転離れて接触することを確立させるが(14)、PI−PfuIでは、スターラップドメイン(stirrup domain)が、同一の目的を満たしている(15)。
【0012】
LAGLIDADGホーミングエンドヌクレアーゼは、イントロン挿入部位の近くで4bpの3′−OHのオーバーハングを作る(16−18)。最適な活性の条件は、酵素に基づく。例えばミトコンドリアの外で調製されたI−SceII(19)は、およそ30℃の温度および中性のpHを好むが、一方、I−DomI(18、20)は、およそ70℃の温度およびアルカリ性のpH値を好む。細菌性II型制限酵素と異なって、同族の修飾系が存在しないので、ホーミングエンドヌクレアーゼは、宿主ゲノムに及ぼす有害な影響を排除するために非常に高度な認識配列特異性を有していなければならない。したがって、その認識部位は、更に長い(14〜30bp、ある種のインテインコード化エンドヌクレアーゼに関しては40bpまで)。結晶化酵素、I−CreI(21)、PI−SceI(22)、I−DmoI(23)およびHis−CysボックスホーミングエンドヌクレアーゼI−PpoI(24)に関して示されているように、イントロンコード化ホーミングエンドヌクレアーゼは、βシートに依存してDNAの主溝と接触する。それゆえにそのプロファイルは、非常に単調で、そしてDNA(23、25)の広い面積を覆うが、一方、球状の制限エンドヌクレアーゼ(26)は、通常、標的配列(4)とそのα−ヘリックスからの側鎖を介して相互作用する。公知のホーミングエンドヌクレアーゼは、コンセンサスモチーフの出現に依存して4つのファミリーに分類された(LAGLIDADG、GIY−YIG、H−N−HおよびHis−Cysボックス)。後者の2つの群は、今では構造に基づいて単一の群、ββα−Me群に分類されている(27)。これとは対照的に細菌性II型制限酵素のメンバーは、更に多岐にわたる。LAGLIDADGタンパク質ファミリーに属するエンドヌクレアーゼは、最も一般的な代表である。このクラスの主な特徴は、タンパク質において1または2回出現するドデカペプチドモチーフである。
【0013】
1つのモチーフを有するエンドヌクレアーゼは、ホモ2量体としてその基質と結合し、一方、2つのLAGLIDADGモチーフを有する酵素は、単量体として作用する傾向がある。例外は、パン酵母(S. cerevisiae)のcox1遺伝子のイントロンaI4αによりコードされるI−SceII、および同一生物のイントロンcox1I5αからのI−SceIVである。I−SceIIは、2つのドデカペプチドモチーフを有するが、ホモ2量体として活性である(19)。I−SceIVは、ヘテロ2量体として作用する(28)。I−SceI(29)またはI−DmoI(18)のような2ドメインの酵素は、遺伝子複製事象によりI−CreI(17)およびI−CeuI(30)のような1ドメインのホーミングエンドヌクレアーゼから生じると推測された。(3、4、21、23、31)。
【0014】
2つのLAGLIDADGモチーフを有するいくつかのタンパク質は、そのイントロンRNAのスプライシングに関与している。それらは、マチュラーゼと称される(32、33)。マチュラーゼは、コファクターとして作用し、そしてスプライシング事象のためのイントロンRNA構造の触媒性コアを安定化する(34、35)。いくつかのドデカペプチドエンドヌクレアーゼもまた潜在性のマチュラーゼ活性を有し、これは、いくつかのアミノ酸の変異により顕示され得る(36〜38)。そのうちのわずかなものだけが、I−AniI(39、40)およびI−ScaI(41〜43)に関して報告されたように、双方の活性を同時に顕示する。
【0015】
分裂酵母(Schizosaccharomyces pombe)のミトコンドリアcox1遺伝子では、4つまでのグループIイントロンが見出された(44)。そのうちの2つは、ドデカペプチドファミリーのタンパク質をコードするオープン・リーディグ・フレームを含有する(45、46)。
【0016】
要約すると、ヒト疾患および遺伝的障害のトランスジェニック動物モデルを提供するための試薬および方法に関する技術的な必要性が存在する。試薬は、特に高度な特異性を有する制限酵素、その対応する制限部位およびこの酵素をコードする遺伝子に基づくことができる。とりわけ天然遺伝子またはそのフラグメントを、疾患を緩解できる、または細胞もしくは動物を修飾することにより、かかる疾患の研究のための分子手段を提供できる別の遺伝子または遺伝子フラグメントと置換するための試薬および方法に関する必要性が存在する。
【0017】
発明の概要
したがって本発明は、技術的にこれらの必要性を満たすことを補助する。とりわけ本発明は、酵素I−SpomIをコードする単離されたDNAに関する。
【0018】
本発明の1つの実施態様では、酵素I−SpomIをコードする本発明のDNA配列に機能的に連結されたプロモーターを含むDNA配列が提供される。
【0019】
本発明は、更に酵素I−SpomIをコードする本発明のDNA配列および本明細書にて記載される別のDNA配列に相補的な単離されたRNAに関する。
【0020】
本発明の別の実施態様では、ベクターが提供される。ベクターは、酵素I−SpomIをコードする本発明のDNA配列を含有するプラスミド、バクテリオファージ、コスミド、またはウイルス、特にレトロウイルスベクターでよい。
【0021】
本発明の別の実施態様では、ベクターは、I−SpomI制限部位をコードする本発明のDNA配列を含有するプラスミド、バクテリオファージ、コスミド、またはウイルス、特にレトロウイルスベクターでよい。
【0022】
本発明は、またI−SpomI制限部位を含有する組換え染色体および細胞を作製するための方法にも関する。1つの実施態様では、I−SpomI制限部位は、組換えにより導入される。
【0023】
本発明は、更にI−SpomI酵素を発現する組換え染色体および細胞を作製するための方法に関する。1つの実施態様では、I−SpomI酵素をコードする配列は、組換えにより導入される。
【0024】
本発明は、更にI−SpomI部位または酵素I−SpomIをコードするDNA配列を含む組換え染色体にも関する。組換え染色体は、原核または真核生物に由来してよい。1つの実施態様では、本発明は、組換え哺乳動物、酵母、菌類、細菌、植物、線虫または昆虫染色体に関する。好ましい態様では、本発明は、組換えショウジョウバエ、線虫(C.elegans)、植物またはマウス染色体に関する。
【0025】
加えて、本発明は、本発明のベクターで形質転換された原核細胞、例えば大腸菌(E.coli)または真核細胞に関する。1つの実施態様では、本発明は、本発明のベクターで形質転換された哺乳動物、酵母、菌類、細菌、植物、線虫または昆虫細胞に関する。好ましい実施態様では、本発明は、本発明のベクターで形質転換された組換えショウジョウバエ、線虫(C.elegans)、植物またはマウス細胞に関する。別の実施態様では、細胞は、幹細胞、好ましくは哺乳動物幹細胞および最も好ましくはマウス幹細胞である。本発明は、更にこれらの細胞に由来する細胞株に関する。
【0026】
また、本発明は、酵素I−SpomIをコードするDNA配列を含有するトランスジェニック生物、およびトランスジェニック生物の細胞から培養された細胞株にも関する。
【0027】
加えて、本発明は、酵素I−SpomIに関する少なくとも1つの制限部位が生物の染色体に挿入されているトランスジェニック生物に関する。
【0028】
更に、本発明は、酵素I−SpomIを用いる真核生物ゲノムを遺伝子マッピングする方法に関する。
【0029】
本発明は、また酵素I−SpomIを用いる生物におけるインビボ部位指定組換えの方法にも関する。
【0030】
発明の詳細な説明
分裂酵母(Schizosaccharomyces pombe)のミトコンドリアcox1遺伝子における第1のグループIイントロンの遺伝子産物であるI−SpomIは、エンドヌクレアーゼ活性を有している。これは、イントロンを含まないcox1アレル内のイントロン挿入近くのフランキング配列を認識する。N末端で大幅に修飾したI−SpomIは、元来のリーディグ・フレームの遺伝子産物に比較して切断能力に影響がなく、またエンドヌクレアーゼの配列特異性にも影響がなかった。ホーミングエンドヌクレアーゼの開始コドンの位置は、可変性であり、そして宿主遺伝子の種々の部分に位置することができる。代表的なのは先行するエクソン配列を有するフレームにORFを有するもの、また別にイントロン配列に限定されるリーディグ・フレームを有するもの、またはイントロン内にイントロン性ORFを有するものさえもある。もう1つの基本的な問題は、エンドヌクレアーゼが活性化するために修飾またはプロセシングされる必要があるかどうかである。I−SceII(19)およびI−SceIII(55)に関しては、これらが前駆体タンパク質として合成され、そしてプロセシングされると報告されている。
【0031】
本発明者らは、分裂酵母(S.pombe)のcox1I1bのループ8イントロンの2次構造の配列が、インビトロで特異的エンドヌクレアーゼとして作用するタンパク質をコードすることを決定した。I−SpomIの配列は、ジーンバンク受入番号NC 001326 X00886 X02819 X15738(遺伝子=「cox1」;イントロンORF)またはX54421 X00886 X02819 X15738で見出すことができる。
【0032】
I−SpomIのインビトロ活性に関する最適条件は、I−SceI(29)にとって好ましい条件に非常に類似している。9.0と10.0の間の高pH値の嗜好は、むしろ異常である。例えば、I−ScaI(43)は、pH8.0〜9.0で、およびI−CreI(51)は7.0〜9.0の間で最高の活性を示す。他のLAGLIDADGエンドヌクレアーゼと共有する特徴的な様相は、2価カチオンMg2+への依存性であるが、切断活性に及ぼすMn2+またはZn2+のような他のコファクターの影響は調査されなかった。
【0033】
I−SpomIの切断パターンは、異なる分野のLAGLIDADG型の多くの他のエンドヌクレアーゼ、例えばI−AniI(39)、I−ScaI(43)、I−SceI(16)、II(37)およびIII(56)、I−CeuI(30)、I−ChuI(57)、I−CreI(17)、I−CpaII(58)、I−DmoI(20)、I−PorI(59)、PI−SceI(60)、PI−ThyI(61)、PI−TliI(62)およびPI−TfuII(63)、ならびにパン酵母(S.cerevisiae)のHOエンドヌクレアーゼ(64)に関して記載されているように、4ヌクレオチドの長さの典型的な3′オーバーハングを示す。I−SpomIは、イントロン挿入部位から2ヌクレオチド離れているセンス鎖およびアンチセンス鎖を切断する。I−SpomIの認識部位は、20ヌクレオチドの長さである。部位の中央の4つの塩基は、酵素のエンドヌクレオチド鎖切断の位置とほぼ一致し、I−CreIで報告されている(65)のと同様に基質認識を必要としない。これらは、各側の5つの必須ヌクレオチドによりフランキングされている。必要とされる配列の各々の縁には別の2つの塩基が存在し、これを変化させることはできない(図5A)。したがって、−11と+9位間の14個の単一変異は切断に影響する。イントロンコード化ホーミングエンドスクレアーゼと同様に、I−SpomIは、長いDNA配列を認識するが、タンパク質は、細菌性制限エンドヌクレアーゼと比較するとむしろ小型である。細菌性II型制限酵素は、DNAを取り込み、そして主溝の水素結合ドナーをほとんど飽和し、そしてそれに加えてしばしば認識部位の副溝に接触する(26)。イントロンコード化ホーミングエンドヌクレアーゼのプロファイルは、β−シートに基づいて単調であるので、さらなる鎖を用いることなくDNAの主溝上の認識部位の特異的塩基と相互作用し、亜飽和接触を行う(4)。認識パターンにしたがって、I−SpomIに関して本発明者らは、酵素の触媒ドメインがDNAの副溝に面するが、一方2つの認識ドメインは隣の主溝に面する一方の側からの基質DNAへの接触を仮説として取り上げる。これは、また必須塩基によりフランキングされた4つの中央の塩基における認識の独立性をも説明する。I−SpomI認識部位内の必須および非必須ヌクレオチドの順序は、対称的であるが、I−CreI(66)のようなホモ2量体LAGLIDADG酵素に関して存在するようなパリンドローム配列はない。一般に、単量体ドデカペプチドエンドヌクレアーゼのエンドヌクレアーゼドメインは、ホモ2量体酵素と比較して顕著な非対称性を有している。これが認識部位に関してゆるやかな対称性要件の原因となり、そして基質の拡張された範囲の獲得を可能にする(3、67)。ドデカペプチドホーミングエンドヌクレアーゼの認識および切断配列は、非常に多岐にわたっている。
【0034】
131LAGLIDADGタンパク質(10)のアラインメントによれば、I−AniI(39)は、I−SpomIに最もよく相対するが、切断部位も認識部位もI−SpomIには類似していない。
【0035】
ホーミングエンドヌクレアーゼORFsは、これらの露出されたループの侵入の後、グループIイントロンのRNA2次構造の異なる末梢ループに生じる(2、68−70)。したがって、イントロンおよびイントロンORFは、独立した遺伝子エレメントであると考えられる(71)。GIY−YIG酵素I−TevIIに対しての、ファージT4sunY遺伝子のエクソン接合部配列およびループL9.1のORFをフランキングするイントロン配列のアラインメントは、I−TevII認識配列にわたる高度な類似性を示した(72)。この知見および触媒コア配列をコードするDNA上のイントロン可動性の独立性は、トランスでエンドヌクレアーゼに適用する場合(73)、イントロン侵入の仮説を支持する。ドデカペプチドホーミングエンドヌクレアーゼのORFsは、ループL1(I−SceIII(56))、L2(I−SceIV(28)、I−SceVII(74)、I−ScaI(41))、L6(I−CeuI(30)、I−CreI(75))およびL8(I−AniI(39、74)、I−DdiI(71)(76)、I−SceI(16、74)、I−SceII(19、74))に挿入される(図6)。
【0036】
最近精製されたI−ScaIは、エンドヌクレアーゼおよびマチュラーゼの双方の活性を有していると報告された最初のタンパク質であったが、一方パン酵母(S.cerevisiae)のcyt b遺伝子のイントロンbi2におけるマチュラーゼ相同体が、エンドヌクレアーゼ活性を得るためには2つの非隣接アミノ酸の置換に依存する(38、41、42)。双方の活性を含有する別のタンパク質は、エメリセラ・ニデュランス(Emericella nidulans)(39)のミトコンドリア性グループIイントロンIによりコードされるI−AniIである。双方の活性を含有するタンパク質は、この進化の中間体であることを意味する。
【0037】
異なる界からのLAGLIDADG酵素の複数の配列アラインメントに基づいて、以前は、異なる遺伝子間および種々の宿主間のエンドヌクレアーゼの交換は、非常に起こりにくいことが示されてきた(10)。代わりに、これらの可動性エレメントの獲得は何度も独立して起こり、そして共通の始祖において一度だけとは限らない。元来のイントロンは、自己スプライシングするので、エンドヌクレアーゼORFは、本質的なリボザイム機能を維持するためにイントロン2次構造の末梢ループに挿入されなければならない(図6)。したがってこの侵入の位置は、宿主生物または遺伝子に依存するのではなく、各々のイントロンの2次構造に依存する。それにもかかわらず、ORFのイントロンへの挿入により自己スプライシングの損傷が引き起こされることがあり、この方法を改善するためにマチュラーゼタンパク質の必要性が生じる。分裂酵母(S.pombe)のcox1の4つのグループIイントロンで、インビトロで自己触媒的にスプライシングするものはないことが報告されているが、パン酵母(S.cerevisiae)rnlイントロンの自己触媒的スプライシングが観察されており(44)、これは恐らくインビボでのスプライシング過程におけるマチュラーゼタンパク質の関与のためであろう。この研究では、本発明者らは、分裂酵母(S.pombe)のイントロンcox1I1bにおける2つのLAGLIDADGモチーフを含む酵素コアがI−SpomIからエンドヌクレアーゼ活性を得るのに十分であることを示し、始祖ORFが、ループL8の挿入部位に依然存在するが、全遺伝子産物の開始コドンにより調節されると結論づけた。
【0038】
I−SpomI遺伝子配列
本発明は、酵素I−SpomIをコードする単離されたDNA配列に関する。酵素I−SpomIは、エンドヌクレアーゼ、とりわけDNAエンドヌクレアーゼである。
【0039】
分裂酵母(Schizosaccharomyces pombe)のミトコンドリアゲノムのcox1遺伝子の第1のグループIイントロン(cox1I1b)は、2つのコンセンサスモチーフを有するLAGLIDADGタンパク質ファミリーの典型的なメンバーであるポリペプチドをコードするオープン・リーディグ・フレームを含有する。
【0040】
大腸菌(E.coli)において人工的に発現されるこのタンパク質のエンドヌクレアーゼ活性の生化学的な特徴づけが行われ、そしてイントロンRNA2次構造のループ8に位置するcox1I1b ORFの304コドンの翻訳産物は、インビトロで特異的なエンドヌクレアーゼ活性を呈する。ヌクレオチド鎖切断の最適なインビトロ条件が特徴づけられ、そしてかかる条件を用いてタンパク質の切断および認識部位を決定した。他のLAGLIDADGタンパク質からの知見に合致して、I−SpomIは、イントロン挿入部位の近くで4ヌクレオチドの3′オーバーハングを有する2本鎖切断を生じ、そして20ヌクレオチドの新規な配列を認識する。
【0041】
酵素I−SpomIをコードするDNA配列は、精製された形態であることが好ましい。加えて、本発明のDNA配列は、外来性のタンパク質および脂質、ならびに外来性の微生物、例えば細菌およびウイルスを含まないことが好ましい。I−SpomIをコードする本質的に精製されそして単離されたDNA配列は、とりわけ発現ベクターを調製するのに有用である。
【0042】
従来の化学合成技術を用いて、ヌクレオシド単位間の3′――――>5′リン酸結合の形成により本発明の遺伝子を調製できる。例えば、周知のリン酸ジエステル、リン酸トリエステル、および亜リン酸トリエステル技術、ならびに公知のこれらの研究法を修飾した方法を用いることができる。ホスホロアミダイト研究法に基づくもののような自動合成機を用いてデオキシリボヌクレオチドを調製することができる。オリゴおよびポリリボヌクレオチドもまた、従来の技術を用いてRNAポリメラーゼおよびリガーゼの助けを借りて入手することができる。
【0043】
本発明は、勿論、本発明の配列と同一の特性を実質的に呈する本発明のDNA配列の変種を含む。これは、DNA配列が本明細書にて開示する配列と同一である必要はないことを意味している。例えば、1つ以上のコドンが同一アミノ酸をコードできる公知の遺伝子コードの縮重のために、DNA配列は、図7で示されるものから変化でき、そして依然として図7でコードされるのと同一のアミノ酸配列を有するタンパク質をコードする。変化は、酵素I−SpomIの切断特性を有する酵素をコードするようなDNA配列の特性を実質的に損なわない1つまたはそれ以上のヌクレオチドに関与する単一もしくは複数の塩基置換、欠失、または挿入もしくは局所変異に起因し得る。
【0044】
本発明は、酵素的に活性なI−SpomIをコードできる、精製された形態のDNA配列のフラグメントを包含することを意図する。実施例のように活性を決定することができる。したがって、「I−SpomI酵素」なる用語は、I−SpomI制限部位を切断する能力を維持している元来のタンパク質の変種およびフラグメントを含むことを意味する。
【0045】
本発明は、単離および精製された、すなわち均質な、組換えおよび非組換え双方のI−SpomIポリペプチドを提供する。望ましい生物学的活性を保持する元来のI−SpomIタンパク質の変種および誘導体を、元来のI−SpomIポリペプチドをコードするヌクレオチド配列の変異により入手することができる。多くの従来の方法のいずれかにより元来のアミノ酸配列を変化させることができる。元来の配列のフラグメントへのライゲーションを可能にする制限部位によりフランキングされた変異配列を含有するオリゴヌクレオチドを合成することにより、特定の座で変異を導入することができる。ライゲーションの後、得られた再構築された配列は、望ましいアミノ酸挿入、置換、または欠失を有するアナログをコードする。
【0046】
または、オリゴヌクレオチドを指定する部位特異的変異誘発手段を用いて、変化した遺伝子を提供することができる、この場合予め決定されたコドンを置換、欠失または挿入により変化させることができる。前記した変化させる方法の実例は、Walderら(Gene 42: 133(1986)); Bauerら(Gene 37: 73(1985)); Craik(BioTechniques,January 12〜19(1985)); Smithら(Genetic Engineering: Principles and Methods,Plenum Press(1981)); Kunkel(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82: 488(1985)); Kunkelら(Methods in Enzymol.154: 367(1987)); Sambrookら(Molecular Cloning: A Laboratory Manual、第3版、Cold Spring Harbor Laboratory Press(2001)、および米国特許第4,518,584号および第4,737,462号により開示されており、そのすべてを参照として本明細書に組み入れられる。
【0047】
酵素I−SpomIをコードする本発明のDNA配列を、遺伝子のすべてまたは特定の領域を増幅するのに有用な、周知のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)で増幅することができる。例えばS.Kwokら、J.Virol.,61: 1690〜1694(1987);米国特許第4,683,202号;および米国特許第4,683,195号を参照されたい。より具体的には、増幅すべきDNAのプラスおよびマイナス鎖に相補的である、10〜300塩基対離れて位置する公知の配列のDNAプライマーペアをオリゴヌクレオチドの合成のための周知の技術により調製することができる。プライマーがDNAにアニーリングするとき、各プライマーの1つの末端を伸長させ、そして修飾して制限エンドヌクレアーゼ部位を作ることができる。PCR反応混合物は、DNA、DNAプライマーペア、4つのデオキシリボヌクレオシド三リン酸、MgCl2、DNAポリメラーゼ、および従来のバッファーを含有できる。DNAを多くのサイクルで増幅することができる。一般に、各サイクルが短時間の高温でのDNAの変性、反応混合物の冷却、およびDNAポリメラーゼを用いる重合からなる、多くのサイクルを用いることにより検出の感度を上げることができる。増幅された配列を当業者に公知の技術を用いて検出することができる。
【0048】
2.本発明のI−SpomI遺伝子を含有するヌクレオチドプローブ
酵素I−SpomIをコードする本発明のDNA配列を、生物学的材料におけるヌクレオチド配列を検出するためのプローブとして用いることもできる。プローブを原子または無機ラジカルで、最も一般的には放射性核種を用いて、または分子生物学的実験で一般に用いられるいずれかの非放射性材料で標識することができる。放射性標識には32P、3H、14C等がある。適切なシグナルを提供し、そして十分な半減期を有するいずれかの放射性標識を用いることができる。他の標識には、標識抗体に対する特異的結合メンバーとして提供され得るリガンド、蛍光物質、化学発光物質、酵素、標識リガンドの特異的結合対メンバーとして機能できる抗体などが含まれる。標識の選択は、ハイブリダイゼーションの速度およびDNAまたはRNAに対するプローブの結合に及ぼす標識の影響により規定される。標識は、ハイブリダイゼーションに利用できるDNAまたはRNAの量を検出するのに十分な感度を提供することが必要であろう。
【0049】
本発明のヌクレオチド配列を遺伝子へのハイブリダイズするためのプローブとして用いる場合、プローブで試験されるヌクレオチド配列は、好ましくは水不溶性固体、多孔性支持体、例えばナイロン膜に添加される。本発明の標識ポリヌクレオチドおよび従来のハイブリダイゼーション試薬を用いてハイブリダイゼーションを実施できる。特別なハイブリダイゼーション技術は、本発明には必要でない。
【0050】
ハイブリダイゼーション溶液に存在する標識プローブの量は、標識の特性、支持体に合理的に結合できる標識プローブの量、およびハイブリダイゼーションのストリンジェンシーに依存して広範に変化する。一般に、実質的に化学量論よりも過剰なプローブを用いて、固定されたDNAまたはRNAへのプローブ結合率を高める。
【0051】
様々な程度のストリンジェンシーのハイブリダイゼーションを用いることができる。条件が厳密になるほど、2本鎖形成のためのプローブとポリヌクレオチドの間のハイブリダイゼーションに必要である相補性が大きくなる。温度、プローブ濃度、プローブの長さ、イオン強度、時間等により厳密性を調節できる。便宜的にはハイブリダイゼーションの厳密性は、反応溶液の極性の変化により変化する。用いる温度を経験的に決定できるか、またはこの目的に開発された周知の式から決定できる。
【0052】
好ましいハイブリダイゼーション条件には、標準的なハイブリダイゼーション条件、例えばChurchおよびGilbert、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81(7): 1991〜1995(1984年4月)、およびChurchおよびGilbert、Prog.Clin.Biol.Res.177(2): 17〜21(1985)に記載された条件などが挙げられ、双方共に参照として具体的に本明細書に組み入れられる。
【0053】
3.I−SpomIをコードするヌクレオチド配列を含有するヌクレオチド配列
本発明は、また酵素I−SpomIまたはI−SpomI制限部位をコードする本発明のDNA配列に関するもので、この場合ヌクレオチド配列は、他の核酸に連結されている。核酸はいずれかの供給源、例えばプラスミド、クローン化DNAもしくはRNA、または原核および真核生物を含むいずれかの供給源に由来する天然DNAもしくはRNAから入手することができる。核酸は、I−SpomI酵素をコードする核酸が導入されている組換え染色体でよい。同様に、核酸は、I−SpomI制限部位が導入されている組換え染色体でよい。Sambrookら、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory、ニューヨーク(2001)に記載される技術を含む種々の技術により、生物学的材料、例えば微生物の培養物、生物学的液体または組織からDNAまたはRNAを抽出することができる。一般に細菌、酵母、ウイルス、または高等生物、例えば植物または動物から核酸を入手する。核酸は、更に複雑な混合物のフラクション、例えばヒトの全DNAに含まれる遺伝子の一部、または特定の微生物の核酸配列の一部でよい。核酸は、巨大分子のフラクションでよいか、または核酸は、連続した遺伝子もしくは遺伝子の集合体からなってもよい。DNAは1本鎖または2本鎖形態でよい。フラグメントが1本鎖形態である場合、従来の技術にしたがって、DNAポリメラーゼを用いてこれを2本鎖形態に変換することができる。
【0054】
本発明のDNA配列を構造遺伝子に連結することができる。本明細書で用いる「構造遺伝子」なる用語は、その鋳型またはメッセンジャーmRNAにより具体的なタンパク質またはポリペプチドに特徴的なアミノ酸の配列をコードするDNA配列を意味する。本発明のヌクレオチド配列は、発現調節配列、すなわち遺伝子に機能的に連結されている場合、遺伝子の発現を調節および制御するDNA配列と共に機能できる。
【0055】
4.本発明のヌクレオチド配列を含有するベクター
本発明は、また酵素I−SpomIまたはI−SpomI制限部位をコードする本発明のDNA配列を含有するクローニングおよび発現ベクターにも関する。
【0056】
更にとりわけ、酵素をコードするDNA配列を、配列をクローニングするためのビークルにライゲートすることができる。遺伝子クローニングに関与する主要な工程は、原核生物または真核生物からの目的の遺伝子を含有するDNAを分離する、特定の部位で、得られたDNAフラグメントおよびクローニングビークルからのDNAを切断する、2つのDNAフラグメントを一緒に混合する、そしてフラグメントをライゲートして組換えDNA分子を得るための手段を含む。次いで組換え分子を宿主細胞に移すことができ、そして細胞を複製させて元来のDNA配列のクローンを含有する同一の細胞を生成させることが可能になる。
【0057】
本発明で用いるビークルは、本発明のヌクレオチド配列を宿主細胞に輸送することができるいずれかの1本鎖または2本鎖DNA分子でよい。ビークルが細胞内で複製することもできる場合、これは少なくとも1つの、宿主細胞内の複製起点として作用できるDNA配列を含有しなければならない。加えて、ビークルは、本発明の遺伝子をコードするDNA配列を挿入するための1つまたはそれ以上の部位を含有しなければならない。これらの部位は、通常付着末端を形成できる制限酵素部位に相当し、これは、ビークルにライゲートされるプロモーター配列における付着末端と相補的である。一般に、これらの特性を有するプラスミド、バクテリオファージ、コスミドビークル、細菌性人工染色体(BAC)、または酵母性人工染色体(YAC)を用いて本発明を実施できる。
【0058】
本発明のヌクレオチド配列は、ビークルの部位のいずれかの組み合わせに適合する付着末端を有することができる。または、配列は、ビークルのクローニング部位における対応する平滑末端にライゲートすることができる1つまたはそれ以上の平滑末端を有することができる。望む場合、例えば酵素Bal 31またはλ exoIIIを用いて連続的なエクソヌクレアーゼ欠失により、ライゲートされるヌクレオチド配列を更に加工することができる。本発明のヌクレオチド配列が付着末端の望ましい組み合わせを含有しない事象においては、リンカー、アダプター、またはホモ重合体テーリング(homopolymer tailing)を加えることにより配列を修飾することができる。
【0059】
本発明のヌクレオチド配列をクローニングするために用いられるビークル、例えばプラスミドは、宿主細胞により示される有用な特性に寄与する1つまたはそれ以上の遺伝子、例えば選択マーカーを担持することが好ましい。好ましい試験計画では、2つの異なる薬物に抵抗するための遺伝子を有するビークルを選択する。例えば抗生物質に関する遺伝子へのDNA配列の挿入により遺伝子を不活性化し、薬物抵抗性を破壊する。細胞が組換え体で形質転換されている場合、第2の薬物抵抗性遺伝子は影響を受けず、第2の薬物に対する抵抗性および第1の薬物に対する感受性により目的の遺伝子を含有するコロニーを選択することができる。好ましい抗生物質マーカーは、宿主細胞にクロラムフェニコール、アンピシリンまたはテトラサイクリン抵抗性を付与する遺伝子である。
【0060】
種々の制限酵素を用いてビークルを切断することができる。制限酵素の同一性は、一般に、ライゲートされるDNA配列の末端およびビークルの制限部位の同一性に依存する。制限酵素は、ビークルの制限部位に合致し、これが今度はライゲートされる核酸フラグメントの末端に合致する。
【0061】
ライゲーション反応を周知の技術および従来の試薬を用いて設定できる。DNA2本鎖の隣接する5′−リン酸および遊離の3′−ヒドロキシ基間のリン酸ジエステル結合の形成を触媒するDNAリガーゼを用いてライゲーションを実施する。DNAリガーゼは、種々の微生物に由来してよい。好ましいDNAリガーゼは、大腸菌(E.coli)およびバクテリオファージT4に由来する酵素である。T4 DNAリガーゼは、DNAフラグメントを平滑または粘着末端、例えば制限酵素消化により作製できる末端とライゲートすることができる。大腸菌(E.coli)DNAリガーゼを用いて、付着末端を含有する2本鎖DNA分子の末端の間のリン酸ジエステル結合の形成を触媒することができる。
【0062】
原核または真核細胞においてクローニングを実施できる。クローニングビークルを複製するための宿主は、勿論、ビークルと適合し、そしてビークルがそこで複製できるものである。プラスミドを用いる場合、プラスミドは、細菌もしくはその他の生物に由来してよいか、またはプラスミドを合成により調製することができる。プラスミドは、宿主細胞染色体とは独立して複製することができるか、または組み込みプラスミドを用いることができる。プラスミドは、宿主細胞のDNA複製酵素を利用して複製することができるか、またはプラスミドは、プラスミド複製に必要な酵素をコードする遺伝子を担持することができる。多くの異なるプラスミドを本発明の実施に用いることができる。
【0063】
酵素I−SpomIをコードする本発明のDNA配列をビークルにライゲートさせて発現ベクターを形成することもできる。この場合に用いるビークルは、適当な宿主細胞のプロモーターに機能的に連結された遺伝子を発現することができるものである。細菌、例えば大腸菌(E.coli)、酵母、昆虫、菌類、線虫、植物または哺乳動物細胞の遺伝子を発現するのに用いられることが知られているビークルを用いるのが好ましい。
【0064】
ビークルを修飾するのに当業者に公知のいずれか代替の技術を用いることができる。
【0065】
発現系
本発明は、また組換えクローニングおよびDNAを含有する発現ベクター、ならびに組換えベクターを含有する宿主細胞をも提供する。実験室手引書、例えばCurrent Protocols in Molecular Biology(Ausubelら、Wiley(1998))に手引きを見出すことができる。
【0066】
DNAを含む発現ベクターを用いてI−SpomI酵素を調製することができる。I−SpomI酵素を生成する方法には、酵素の発現を促進する条件下で、I−SpomI酵素をコードする組換え発現ベクターで形質転換された宿主細胞を培養することと、次いで培養物から発現された酵素を収集することとが含まれる。発現された酵素を精製するための手順が、用いられる宿主細胞のタイプのような因子により、およびペプチドが膜結合しているか、または宿主細胞から分泌される可溶性形態であるかどうかにより変化することは当業者に理解されよう。
【0067】
いずれか適当な発現系を用いることができる。ベクターは、例えば哺乳動物、微生物、ウイルスまたは昆虫遺伝子に由来する、適当な転写または翻訳制御ヌクレオチド配列に機能的に連結された本発明のポリペプチドまたはフラグメントをコードするDNAを含む。制御配列の実例としては、転写プロモーター、オペレーターまたはエンハンサー、mRNAリボソーム結合部位、ならびに転写および翻訳開始および終止を調節する適当な配列などが挙げられる。制御配列が機能的にDNA配列に関係している場合、ヌクレオチド配列は、動作可能なように連結されている。したがって、プロモーターヌクレオチド配列が、DNA配列の転写を調節する場合、プロモーターヌクレオチド配列は、DNA配列に動作可能なように連結されている。望ましい宿主細胞において複製する能力を付与する複製起点、および形質転換体が同定される選択遺伝子を一般に発現ベクターに組み込む。
【0068】
加えて、ペプチド、例えば(元来のまたは異種性の)適当なシグナルペプチドをコードする配列を発現ベクターに組み込むことができる。シグナルペプチド(分泌リーダー)に関するDNA配列をフレーム内で本発明の核酸配列に融合して、最初にDNAを転写し、そしてmRNAを、シグナルペプチドを含む融合タンパク質に翻訳することができる。目的の宿主細胞において機能的であるシグナルペプチドは、ポリペプチドの細胞外分泌を促進する。細胞からのポリペプチドの分泌時にポリペプチドペプチドからシグナルペプチドが切断される。
【0069】
シグナルペプチドが切断される(複数の)位置がコンピュータープログラムにより推定されるものとは異なることがあり、そして組換えポリペプチドを発現するのに用いられる宿主細胞のタイプのような因子にしたがって変化し得ることもまた当業者に理解されよう。タンパク質調製物は1つ以上の部位でのシグナルペプチドの切断により得られる、異なるN末端アミノ酸を有するタンパク質分子の混合物を含んでよい。
【0070】
ポリペプチドの発現のための適当な宿主細胞には、原核生物、酵母または高等真核生物細胞などが挙げられる。哺乳動物、線虫、植物、細菌、菌類、酵母または昆虫細胞が宿主細胞として用いられるのが一般的に好ましい。細菌、菌類、酵母および哺乳動物宿主細胞で用いるための適当なクローニングおよび発現ベクターは、例えばPouwelsら、Cloning Vectors: A Laboratory Manual,Elsevier、ニューヨーク(1985)に記載されている。細胞を含まない翻訳系を用いて、本明細書に開示されるDNA構築物に由来するRNAを用いてポリペプチドを生成することもできる。
【0071】
原核生物系
原核生物にはグラム陰性またはグラム陽性生物などが挙げられる。形質転換に適した原核生物宿主細胞には、例えば大腸菌(E.coli)、枯草菌(Bacillus subtilis)、ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)およびシュードモナス属(Pseudomonas)、ストレプトマイセス属(Streptomyces)およびブドウ球菌(Straphylococcus)属内のその他の様々な種などが挙げられる。原核生物宿主細胞、例えば大腸菌(E.coli)では、原核生物宿主細胞における組換えポリペプチドの発現を促進するために、ポリペプチドはN末端メチオニン残基を含んでよい。N末端Metを、発現された組換えポリペプチドから切断することができる。
【0072】
原核生物宿主細胞で使用するための発現ベクターは、一般に1つまたはそれ以上の表現型選択マーカー遺伝子を含む。表現型選択マーカー遺伝子は例えば抗生物質抵抗性を付与するか、または独立栄養性の要件を提供するタンパク質をコードする遺伝子である。原核生物宿主細胞のための有用な発現ベクターの実例としては、市販により入手可能なプラスミド、例えばクローニングベクターpBR322(ATCC37017)またはpBR322から誘導されるベクター、例えばpuCグループからのベクターなどが挙げられる。pBR322は、アンピシリンおよびテトラサイクリン抵抗性に関する遺伝子を含有し、したがって形質転換された細胞を同定するための単純な手段を提供する。適当なプロモーターおよびDNA配列を、pBR322ベクターに挿入する。他の市販により入手可能なベクターには、例えばpKK223〜3(Pharmacia Fine Chemicals、ウプサラ、スゥエーデン)およびpGEM1(Promega Biotec、マジソン、ウィスコンシン州、米国)などが挙げられる。
【0073】
組換え原核生物宿主細胞発現ベクターに通常用いられるプロモーター配列には、β−ラクタマーゼ(ペニシリナーゼ)、ラクトースプロモーター系(Changら、Nature 275: 615(1978); およびGoeddelら、Nature 281: 544(1979))、トリプトファン(trp)プロモーター系(Goeddelら、Nucl.Acids.Res.8: 4057(1980);およびEP−A−36776)、およびtacプロモーター(Maniatis、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory、412頁(1982))などが挙げられる。特に有用な原核生物宿主細胞発現系は、ファージλPLプロモーターおよびcI857ts熱不安定性レプレッサー配列を用いる。λPLプロモーターの誘導体を組み込む、American Type Culture Collectionから入手可能なプラスミドベクターには、プラスミドpHUB2(大腸菌(E.coli)JMB9株に常在する、ATCC37092)およびpPLc28(大腸菌(E.coli)RR1に常在する、ATCC53082)などが挙げられる。
【0074】
酵母系
または、酵母宿主細胞において、好ましくは酵母菌属(例えばパン酵母(S.cerevisiae))からポリペプチドを発現させることができる。酵母の他の属、例えばピチア(pichia)またはクルイベロマイセス(Kluyveromyces)を用いることもできる。酵母ベクターは、しばしば2μ酵母プラスミドからの複製配列の起点、自己複製配列(ARS)、プロモーター領域、ポリアデニル化のための配列、転写終止のための配列、および選択マーカー遺伝子を含有する。酵母ベクターのための適当なプロモーター配列には、とりわけガラクトース制御プロモーター、例えばGRAP1配列(Molecular Genetics of Yeast,John R.Johnston、Oxford University Press(1994))、メタロチオネインのためのプロモーター、3−ホスホグリセレートキナーゼ(Hitzemanら、J.Biol.Chem.255: 2073(1980))または他の糖分解酵素(Hessら、J.Adv.Enzyme Reg.7: 149(1968); およびHollandら、Biochem.17: 4900(1978))、例えばエノラーゼ、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ、ヘキソキナーゼ、ピルビン酸デカルボキシラーゼ、ホスホフルクトキナーゼ、グルコース−6−リン酸イソメラーゼ、3−ホスホグリセレートムターゼ、ピルビン酸キナーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、ホスホグルコースイソメラーゼおよびグルコキナーゼなどが挙げられる。他の酵母発現に適したベクターおよびプロモーターは、更にHitzeman、EPA−73,657に記載されている。別の代替は、Russellら(J.Biol.Chem.258: 2674(1982))およびBeierら(Nature 300: 724(1982))に記載されるグルコース抑制ADH2プロモーターである。酵母宿主細胞では、ベクターは、好ましくはシャトルベクターである。酵母および大腸菌(E.coli)の双方で複製可能なシャトルベクターを、大腸菌(E.coli)における選択および複製のためにpBR322からのDNA配列(Amp′遺伝子および複製起点)を前記した酵母ベクターに挿入することにより構築することができる。
【0075】
酵母α−因子リーダー配列を用いてポリペプチドの分泌を指示することができる。α−因子リーダー配列は、しばしばプロモーター配列および構造遺伝子配列の間に挿入される。例えばKurjanら、Cell 30: 933(1982)およびBitterら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81: 5330(1984)を参照されたい。酵母宿主からの組換えポリペプチドの分泌を促進するのに適した他のリーダー配列は、当業者に公知である。リーダー配列をその3′末端の近くで修飾して、1つまたはそれ以上の制限部位を含有させることができる。これはリーダー配列の構造遺伝子への融合を促進する。
【0076】
酵母形質転換プロトコルは当業者に公知である。かかるプロトコルの1つは、Hinnenら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 75: 1929(1978)に記載されている。Hinnenらのプロトコルは選択培地中でLeu+形質転換体を選択し、その場合、選択培地は、酵母窒素塩基 0.67%、グルコース 2%、アデニン 10mg/mlおよびウラシル 20mg/mlから成る。
【0077】
ADH2プロモーター配列を含有するベクターにより形質転換された酵母宿主細胞を、発現を誘導するために「富化」培地で増殖させることができる。富化培地の例としては、酵母抽出物 1%、ペプトン 1%およびグルコース 2%から成るものが挙げられる。グルコースが培地から枯渇した場合ADH2プロモーターの脱抑制が起こる。
【0078】
哺乳動物または昆虫系
哺乳動物または昆虫宿主細胞培養系用いて組換えポリペプチドを発現させることもできる。昆虫細胞内で異種性タンパク質を生成するためのバキュロウイルス系は、LuckowおよびSummers、Bio/Technology 6: 47(1988)により説明されている。哺乳動物起源の確立された細胞系を用いることもできる。適当な哺乳動物宿主細胞系の実例には、サル腎臓細胞のCOS−7系(ATCC CRL1651)(Gluzmanら、Cell 23: 175(1981))、L細胞、C127細胞、3T3細胞(ATCC CCL163)、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、HeLa細胞およびBHK(ATCC CRL10)細胞株、ならびにMcMahanら(EMBO J.10: 2821(1991))に記載されるアフリカミドリザル腎臓細胞株CV1(ATCC CCL70)から誘導されるCV1/EBNA細胞株などが挙げられる。
【0079】
哺乳動物細胞にDNAを導入するための確立された方法が記載されている(Kaufman,R.J.、Large Scale Mammalian Cell Culture 15〜69頁(1990))。市販により入手可能な試薬を用いる別のプロトコル、例えばリポフェクタミン脂質試薬(Gibco/BRL)またはリポフェクタミン・プラス脂質試薬を用いて細胞をトランスフェクトすることができる(Felgnerら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84: 7413〜7417(1987))。加えて、エレクトロポレーションを用いて従来の手段、例えばSambrookら(Molecular Cloning: A Laboratory Manual第3版、1〜3巻、Cold Spring Harbor Laboratory Press(2001))を用いて哺乳動物細胞をトランスフェクトすることができる。技術分野で公知の方法、例えば細胞毒性薬物に対する抵抗性を用いて安定した形質転換体の選択を実施することができる。Kaufmanら、Meth.in Enzymology 185: 487〜511(1990)は、いくつかの選択スキーム、例えばジヒドロ葉酸リダクターゼ(DHFR)抵抗性について記載している。DHFR選択に適した宿主株は、DHFRが欠損しているCHO DX−B11株でよい(UrlaubおよびChasin、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77: 4216〜4220(1980))。DHFR cDNAを発現するプラスミドをDX−B11株に導入することができ、プラスミドを含有する細胞のみが適当な選択培地中で増殖できる。発現ベクターに組み込むことができる選択マーカー他の実例としては、抗生物質に対して抵抗性を付与するcDNA、例えばG418およびヒグロマイシンBなどが挙げられる。これらの化合物に対する抵抗性に基づいてベクターを宿す細胞を選択することができる。
【0080】
哺乳動物宿主細胞発現ベクターの転写および翻訳調節配列をウイルスゲノムから切り出すことができる。通常用いられるプロモーター配列およびエンハンサー配列は、ポリオーマウイルス、アデノウイルス2、シミアンウイルス40(SV40)、およびヒトサイトメガロウイルスから誘導される。SV40ウイルスゲノムから誘導されるDNA配列、例えばSV40起源の初期および後期プロモーター、エンハンサー、スプライスおよびポリアデニル化部位を用いて哺乳動物宿主細胞において構造遺伝子配列の発現のための他の遺伝的エレメントを提供することができる。ウイルス性初期および後期プロモーターは、共にウイルスゲノムからフラグメントとして容易に得られるのでとりわけ有用であり、これは、ウイルス性の複製起点を含有することもできる(Fiersら、Nature 273: 113(1978); Kaufman、Meth.in Enzymology(1990))。複製部位のSV40ウイルス起点に位置する、HindIII部位からBglI部位に伸びるおよそ250bpの配列が含まれる場合、より小型のまたは大型のSV40フラグメントを用いることもできる。
【0081】
哺乳動物発現ベクターからの異種性遺伝子の発現を改善することが示されている別の調節配列には、CHO細胞から誘導される発現増強配列エレメント(EASE)(Morrisら、Animal Cell Technology、529〜534頁(1997);およびPCT出願WO97/25420)ならびにアデノウイルス2のトリパータイトリーダー(tripartite leader, TPL)およびVA遺伝子RNAs(Gingerasら、J.Biol.Chem.257: 13475〜13491(1982))のようなエレメントなどがある。ウイルス起源の配列内リボソーム進入部位(IRES)配列によりジシストロンのmRNAが効率的に翻訳されるようになる(OhおよびSarnow、Current Opinion in Genetics and Development 3: 295〜300(1993); Rameshら、Nucleic Acids Research 24: 2697〜2700(1996))。選択マーカーのための遺伝子(例えばDHFR)が続く、ジシストロンのmRNAの一部としての異種性cDNAの発現が、宿主のトランスフェクション能力および異種性cDNAの発現を改善することが示されている(Kaufman、Meth.in Enzymology(1990))。ジシストロンのmRNAを用いる発現ベクターの実例には、Mosserら、Biotechnique 22: 150〜161(1997)に記載されるpTR-DC/GFP、およびMorrisら、Animal Cell Technology 529〜534頁(1997)に記載されるp2A5Iである。
【0082】
有用な高発現ベクター、pCAVNOTは、Mosleyら、Cell 59: 335〜348(1989)に記載されている。哺乳動物宿主細胞において使用される他の発現ベクターを、例えばOkayamaおよびBerg(Mol.Cell.Biol.3: 280(1983))ならびにSambrookら(Molecular Cloning: A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory、ニューヨーク(2001))に開示されるように構築することができる。C127ネズミ乳腺上皮細胞における哺乳動物cDNAの安定した高レベル発現のための有用な系、を実質的にCosmanら(Mol.Immunol.23: 935(1986))に記載されるように構築することができる。別の有用な哺乳動物発現ベクターは、EP−A−0367566およびWO91/18982に記載されており、これは参照として本明細書に組み入れられる。
【0083】
別の有用な発現ベクター、pFLAG(登録商標)およびpDC311を使用することもできる。FLAG(登録商標)技術は、pFLAG(登録商標)発現ベクターにより発現された組換えタンパク質のN末端への低分子量(1kD)、親水性FLAG(登録商標)マーカーペプチドの融合を中心としている。pDC311は、CHO細胞におけるタンパク質の発現に用いられる別の特殊なベクターである。pDC311は、目的の遺伝子およびDHFR翻訳のための配列内リボソーム結合部位、発現増強配列エレメント(EASE)、ヒトCMVプロモーター、トリパータイトリーダー配列、およびポリアデニル化部位を有するジヒドロ葉酸リダクターゼ(DHFR)遺伝子を含有するバイシストロン配列により特徴づけられる。
【0084】
用いることができるシグナルペプチドに関しては、望む場合、元来のシグナルペプチドを異種性のシグナルペプチドまたはリーダー配列と置換することができる。シグナルペプチドまたはリーダー配列の選択は、組換えポリペプチドが生成される宿主細胞のタイプのような因子に依存し得る。説明のために、哺乳動物宿主細胞において機能的である異種性シグナルペプチドの実例としては、米国特許第4,965,195号に記載されるインターロイキン−7(IL−7)のシグナル配列;Cosmanら、Nature 312: 768(1984)に記載されるインターロイキン−2レセプターのシグナル配列;欧州特許第367,566号に記載されるインターロイキン−4レセプターシグナルペプチド;米国特許第4,968,607号に記載されるI型インターロイキン−1レセプターシグナルペプチド;および欧州特許第460,846号に記載されるII型インターロイキン−1レセプターシグナルペプチドなどが挙げられる。
【0085】
I−SpomIの発現は、恒常的または誘導的のいずれかでよい。誘導能が望ましい場合、誘導プロモーターを用いることができる。誘導系の実例にはBrown、米国特許第6,180,391号;Yeeら、米国特許第6,133,027号;Reeves、米国特許第5,965,440号;およびFilmusら、米国特許第5,877,018号が挙げられる。
【0086】
精製
本発明は、またポリペプチドおよびそのフラグメントを単離および精製する方法をも含む。
【0087】
単離および精製
1つの好ましい実施態様では、本発明のポリペプチドまたはフラグメントの、本発明のポリペプチドまたはフラグメントの精製を助ける別のポリペプチドへの融合を用いて組換えポリペプチドまたはフラグメントの精製を行うことができる。かかる融合パートナーには、ポリHis、HA−GST、またはその他の抗原同定ペプチド、およびFc部分などが含まれ得る。
【0088】
別の好ましい実施態様では、Tap−Tag技術により精製を行う(Rigautら、Nat.Biotechnol.17(10): 1030〜1032(1999年10月))。
【0089】
宿主細胞のいずれかのタイプに関しては、当業者に公知であるように、組換えポリペプチドまたはフラグメントを精製するための手段は、用いる宿主細胞のタイプのような因子、および組換えポリペプチドまたはフラグメントが培養培地に分泌されるか、またはされないかによって変わる。
【0090】
一般に、分泌されない場合は、組換えポリペプチドまたはフラグメントを宿主細胞から、または可溶性であり、そして分泌される場合は、培地もしくは上澄から単離し、続いて1回またはそれ以上の濃縮、塩析、イオン交換、疎水性相互作用、アフィニティ精製またはサイズ排除クロマトグラフィー工程を行うことができる。これらの工程を達成するための具体的な方法に関しては、最初に市販により入手可能なタンパク質濃縮フィルター、例えばAmiconまたはMillipore Pellicon限外濾過ユニットを用いて培養培地を濃縮することができる。濃縮工程に続いて、濃縮物を精製マトリックス、例えばゲル濾過媒体に適用することができる。また別に、アニオン交換樹脂、例えば吊り下がったジエチルアミノエチル(DEAE)基を有するマトリックスまたは基質を用いることができる。マトリックスは、アクリルアミド、アガロース、デキストラン、セルロースまたは通常タンパク質精製に用いられる他の型でよい。または、カチオン交換工程を用いることができる。適当なカチオン交換体は、スルホプロピルまたはカルボキシメチル基を含む種々の不溶性マトリックスを含む。加えて、クロマトフォーカシングステップを用いることができる。または、疎水性相互作用クロマトグラフィー工程を用いることができる。適当なマトリックスは、樹脂に結合したフェニルまたはオクチル基でよい。加えて、選択的に組換えタンパク質に結合するマトリックスを有するアフィニティクロマトグラフィーを用いることができる。用いられるかかる樹脂の実例は、レクチンカラム、色素カラムおよび金属キレートカラムである。最後に、1回またはそれ以上の疎水性RP−HPLC媒体(例えば吊り下がったメチル、オクチル、オクチルデシルまたは他の脂肪族基を有するシリカゲルまたは重合体樹脂)を用いて更にポリペプチドを精製することができる。前記の精製工程のいくつかまたはすべては種々の組み合わせで周知であり、これを用いて単離および精製された組換えタンパク質を提供することができる。
【0091】
本発明のポリペプチド結合タンパク質、例えば本発明のポリペプチドに対して生成されたモノクローナル抗体を含むアフィニティカラムを利用して発現されたポリペプチドをアフィニティ精製することも可能である。従来の技術を用いて、例えばこれらのポリペプチドを例えば高塩分溶出バッファー中で、次いで使用するための低塩分バッファーに透析するか、もしくは利用するアフィニティマトリックスに依存してpHまたは他の成分を変化させることにより、アフィニティマトリックスから除去するか、または例えば本発明から誘導されるポリペプチドのようなアフィニティ部分の天然に生じる基質を用いて競合的に除去することができる。
【0092】
本発明のこの実施態様では、ポリペプチド結合タンパク質、例えば抗ポリペプチド抗体または本発明のポリペプチドと相互作用する他のタンパク質を固相支持体、例えばカラムクロマトグラフィーマトリックスまたはその表面に本発明のポリペプチドを発現する細胞を同定、分離、もしくは精製するのに適した類似の基質に結合させることができる。本発明のポリペプチド結合タンパク質の、表面に接触する固相への粘着をいずれかの手段により達成できる、例えば磁性微粒子をこれらのポリペプチド結合タンパク質で被覆し、磁場を通るインキュベーション容器中に維持することができる。細胞混合物の懸濁液を、そこにかかるポリペプチド結合タンパク質を有している固相と接触させる。その表面に本発明のポリペプチドを有している細胞は、固定されたポリペプチド結合タンパク質に結合し、次いで未結合細胞は、洗い流される。このアフィニティ結合方法は、かかるポリペプチドを発現する細胞を溶液から精製、スクリーニング、または分離するのに有用である。固相から陽性として選択された細胞を放出する方法は、当業界で公知であり、そして例えば酵素の使用を包含する。かかる酵素は、好ましくは無毒であり、そして細胞に対して無害であり、ならびに細胞表面結合パートナーを切断するように志向させるのが好ましい。
【0093】
また別に、本発明のポリペプチド発現細胞を含有すると推定される細胞の混合物を最初に本発明のビオチン化ポリペプチド結合タンパク質と共にインキュベートすることができる。インキュベーション時間は、典型的には、本発明のポリペプチドに十分に結合することを確実にする時間である、少なくとも1時間である。次いで、得られた混合物を、アビジン被覆ビーズを充填したカラムを通過させ、それによりアビジンに関するビオチンの高親和性のためにポリペプチド結合細胞がビーズに結合する。アビジン被覆ビーズの仕様は、当業界で公知である。Berensonら、J.Cell.Biochem.10D: 239(1986)を参照されたい。未結合材料の洗浄および結合細胞の遊離は従来の方法を用いて実施する。
【0094】
精製の望ましい程度は、タンパク質の使用目的に依存する。例えば、ポリペプチドが、インビボで投与される場合、比較的高純度であるのが望ましい。かかる場合、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)により分析したときに、他のタンパク質に相当するタンパク質バンドが検出されないようにポリペプチドを精製する。異なったグリコシル化、異なった翻訳後プロセシング等のために、ポリペプチドに相当する複数のバンドがSDS−PAGEにより可視化され得ることは当業者には理解されよう。本発明のポリペプチドをSDS−PAGEにより分析したときに、単一のタンパク質バンドにより示されるように、実質的に均一になるまで精製するのが最も好ましい。銀染色、クーマシー青色染色または(タンパク質が放射性標識されている場合)オートラジオグラフィーによりタンパク質バンドを可視化することができる。
【0095】
5.本発明の核酸を含有する細胞および染色体
従来の技術を用いて本発明の核酸を宿主細胞に導入することができる。例えばリン酸カルシウム沈殿(GrahamおよびVan Der Eb、Virology 52: 456〜467(1973); ChenおよびOkayama、Mol.Cell.Biol.7: 2745〜2752(1987); Rippeら、Mol.Cell.Biol.10: 689〜695(1990))、DEAE−デキストラン(Gopal、Mol.Cell.Biol.5: 1188〜1190(1985))、エレクトロポレーション(Tur-Kaspaら、Mol.Cell.Biol.6: 716〜718(1986))、直接マイクロインジェクション(HarlandおよびWeintraub、J.Cell Biol.101: 1094〜1099(1985))、DNA充填リポソーム(NicolauおよびSene、Biochim.Biophys.Acta 721: 185〜190(1982); Fraleyら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 76: 3348〜3352(1979))およびリポフェクタミンDNA複合体、細胞ソニケーション(Fechheimerら、「スクレープローディングおよびソニケーションローディングによるプラスミドDNAでの哺乳動物細胞のトランスフェクション」Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84: 8463〜8467(1987))、高速マイクロプロジェクタイルを用いる遺伝子衝撃(Yangら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87: 9568〜9572(1990))、ならびにレセプター媒介トランスフェクション(WuおよびWu、Biochemistry、27: 887〜892(1988);WuおよびWu、J.Biol.Chem.262: 4429〜4432(1987))により核酸を導入することができる。以下で論じるように、ウイルスベクターを用いることもできる。
【0096】
好ましい細胞は、細菌、植物、線虫、酵母、昆虫および哺乳動物である。微生物純粋培養を用いることができる。とりわけ好ましいものは、ショウジョウバエおよびマウス細胞である。細胞は、1次細胞または細胞株でよい。細胞は、ゲノムに組み込まれた核酸を含有できる。または、核酸は、組み込まれていないままでもよい。好ましい実施態様では、組換え哺乳動物または昆虫染色体は、組み込まれたI−SpomI部位を含有する。とりわけ好ましいのは、ショウジョウバエ、線虫(C.elegans)またはマウス染色体である。
【0097】
別の好ましい態様では、組換え細胞、植物、線虫、酵母、哺乳動物、または昆虫染色体は、I−SpomI酵素を発現する核酸を含有する。とりわけ好ましいものは、ショウジョウバエ、線虫(C.elegans)、またはマウス染色体である。
【0098】
原核または真核細胞においてクローニングを実施することができる。クローニングビークルを複製するための宿主は、もちろんビークルに適合し、そしてそこでビークルが複製できる。好ましくはクローニングは、細菌または酵母細胞内で実施されるが、菌類、動物および植物起源の細胞を用いることもできる。クローニング作業を行うのに好ましい宿主細胞は、細菌細胞、例えば大腸菌(E.coli)である。大腸菌(E.coli)細胞の使用は、たいていのクローニングビークル、例えば細菌ブラスミドおよびバクテリオファージがこれらの細胞内で複製するので特に好ましい。
【0099】
本発明の好ましい実施態様では、従来の技術を用いて、動作可能なようにプロモーターに連結された本発明のヌクレオチド配列をコードするDNA配列を含有する発現ベクターを哺乳動物細胞に挿入する。
【0100】
6.ウイルスベクター
(a)アデノウイルスベクター
インビボ分配のための1つの方法は、アデノウイルス発現ベクターの使用に関連する。アデノウイルスを用いてI−SceIをヒト細胞に効率よく分配している(AnglanaおよびBacchetti、Nucleic Acids Research 27: 4276〜4281(1999))。またアデノウイルスをベクターとして用いてHOエンドヌクレアーゼを分配している(Nicolasら、Virology 266: 211〜244(2000))。アデノウイルスベクターを用いてI−SpomI酵素をコードする核酸を分配することができる。
【0101】
遺伝子構成、すなわち、36kB、直線状、2本鎖DNAウイルスであるアデノウイルスの知識によりアデノウイルスDNAの大きな切片の7kBまでの外来性配列との置換が可能になる(GrunhausおよびHorwitz、クローニングベクターとしてのアデノウイルス、Seminar in Virology 3: 237〜252(1992))。アデノウイルスDNAは、遺伝毒性の可能性なしにエピソームの様式で複製できるので、宿主細胞のアデノウイルス感染は、染色体組み込みには至らない。また、アデノウイルスは、構造的に安定であり、大規模な増幅の後のゲノムの再構成は、検出されていない。アデノウイルスは、その細胞サイクル段階にかかわらず、本質的にすべての上皮細胞に感染できる。アデノウイルスは、それが中程度の大きさのゲノムであり、操作が容易であり、高力価で、広範な標的細胞範囲を有し、そして感染性が高いために、遺伝子移入ベクターとして使用するのにとりわけ適している。複製欠損であるアデノウイルスベクターの作製および増殖は、ヘルパー細胞株に依存し、これは、恒常的にアデノウイルスタンパク質を発現する(例えばGrahamら、「ヒトアデノウイルス5型からのDNAにより形質転換されたヒト細胞株の特徴」J.Gen.Virol.36: 59〜79(1977))。
【0102】
アデノウイルスベクターは、真核生物遺伝子発現(Leveroら、「インビトロおよびインビボでの外来性遺伝子の発現のための欠損および非欠損アデノウイルスベクター」Gene 101: 195〜202(1991); Gomez-Foixら、「筋肉グリコーゲンホスホリラーゼ遺伝子の肝細胞へのアデノウイルス媒介移入が、グリコーゲンの制御変化に寄与する」J.Biol.Chem.267: 25129〜25134(1992))およびワクチン開発(GrunhausおよびHorwitz、Seminar in Virology 3: 237〜252(1992); GrahamおよびPrevec、「アデノウイルス基盤発現ベクターおよび組換えワクチン」Biotechnology 20: 363〜390(1992))に用いられている。組換えアデノウイルスを遺伝子治療に使用できることが動物実験により示唆されている(Stratford-PerricaudetおよびPerricaudet、Human Gene Transfer(Cohen-HaguenauerおよびBorion(編)、Editions John Libbey Eurotext、フランス(1991))、51〜61頁; Stratford-Perricaudetら、Hum.Gene Ther.1: 241-256(1990))。組換えアデノウイルスの異なる組織への投与における研究には、気管点滴注入(Rosenfeldら、「組換えアルファ1−アンチトリプシン遺伝子の肺上皮へのインビボアデノウイルス媒介移入」)Science 252: 431〜434(1991); Rosenfeldら、「ヒトシスチン繊維症膜コンダクタンスレギュレーター遺伝子の気道上皮へのインビボ移入」Cell 68: 143〜155(1992))筋肉注射(Ragotら、「ヒトミニジストロフィン遺伝子のmdxマウスの骨格筋への効率のよいアデノウイルス媒介移入」Nature 361: 647〜650(1993))、末梢静脈内注射(HerzおよびGerard、「低密度リポタンパク質レセプター遺伝子のアデノウイルス媒介移入は、正常マウスにおいてコレステロールクリアランスを急速に促進する」Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90: 2812〜2816(1993))および脳への定位的接種(Le Gal La Salleら、「脳のニューロンおよびグリアへの遺伝子移入のためのアデノウイルスベクター」Science 259: 988〜990(1993))などがある。
【0103】
(b)レトロウイルスベクター
レトロウイルスベクターを用いてI−SpomI酵素またはI−SpomI部位をコードする核酸を細胞に分配することができる。レトロウイルスベクターの使用により核酸の宿主染色体への組み込みが促進される。
【0104】
レトロウイルスは、逆転写の方法により感染された細胞内でそのRNAを2本鎖DNAに変換する能力により特徴づけられる1本鎖RNAウイルスの一群である(Coffin、「レトロウイルス科およびその複製」、Virology(Fieldsら(編)、ニューヨーク:Raven Press)1437〜1500頁(1990))。次いで得られたDNAをプロウイルスとして安定して細胞染色体に組み込み、ウイルスタンパク質の合成を志向させる。組み込みによりレシピエント細胞およびその子孫におけるウイルス遺伝子配列の保持に至る。レトロウイルスベクターを構築するために、特定のウイルス配列の代わりに目的の遺伝子をコードする核酸をウイルスゲノムに挿入して、複製欠損であるウイルスを生成する。ビリオンを生成するために、gag、polおよびenv遺伝子を含有するが、LTRを含有しないパッケージング細胞株およびパッケージング成分を構築する(Mannら、「レトロウイルスパッケージング変異体の構築およびヘルパー不含の欠損レトロウイルスを生成するためのその使用」、Cell 33: 153〜159(1983))。レトロウイルスLTRと一緒にヒトcDNAおよびパッケージング配列を含有する組換えプラスミドをこの細胞株に導入する場合、パッケージング配列により組換えプラスミドのRNA転写がウイルス粒子にパッケージングされ、次いでこれが培養培地に分泌される(NicolasおよびRubenstein、「レトロウイルス」、ベクター:分子クローニングベクターおよびその使用に関する調査、RodriguezおよびDenhardt(編)、Stoneham: Butterworth、493〜513頁(1988); Temin、Gene Transfer、(Kucherlapati(編)、ニューヨーク:Plenum Press)149〜188頁(1986); Mannら、Cell 33: 153〜159(1983))。次いで組換えレトロウイルスを含有する培地を収集し、場合によっては濃縮してもよく、そして遺伝子移入に用いる。レトロウイルスベクターは、広範な細胞タイプに感染できる。
【0105】
(c)発現構築物としてのその他のウイルスベクター
他のウイルスベクターを、本発明の発現または分配構築物として用いることができる。ウイルス、例えばワクシナウイルス(Ridgeway、「哺乳動物発現ベクター」、ベクター:分子クローニングベクター及びその使用に関する調査(RodriguezおよびDenhardt(編)、Stoneham: Butterworth)467〜492頁(1988);BaichwalおよびSugden、「動物DNAウイルスに由来する遺伝子移入のためのベクター:移入された遺伝子の一過性および安定した発現」、Gene transfer, (Kucherlapati(編)、ニューヨーク:Plenum Press)117〜148頁(1986); Couparら、「複数の外来性遺伝子を発現する組換えワクシニアウイルスの構築のための一般法」、Gene 68: 1〜10(1988))、アデノ随伴ウイルス(AAV)(Ridgeway、RodriguezおよびDenhardt(編)、Stoneham: Butterworth、467〜492頁(1988); BaichwalおよびSugden、Gene transfer (Kucherlapati(編)、ニューヨーク:Plenum Press)117〜148頁(1986))およびヘルペスウイルスに由来するベクターを用いることができる。
【0106】
他のベクターは、例えばアフリカツメガエル卵母細胞に関してはSegalら(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 92: 806-810(1995))、植物に関してはMachidaら(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 94: 8675〜8680(1997))およびKirikら(EMBO 19(20): 5562〜5566(2000))、ならびにショウジョウバエに関してはBellaicheら(Genetics 152: 1037〜1044(1999))に開示されている。
【0107】
7.幹細胞
1つの実施態様では、I−SpomI酵素またはI−SpomI部位をコードする核酸を含有する幹細胞を調製することができる。特定の遺伝子のマウスゲノムへの通常の挿入は、マウスES細胞の使用により達成することができる(例えばKusakabeら、米国特許第6,190,910号参照)。マウスES細胞は、インビトロで着床前胚(Evansら、Nature 292: 154〜159(1981); Martin、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 78: 7634〜7638(1981))または胎児生殖細胞(Matsuiら、Cell 70: 841〜847(1992))から誘導された未分化の多能性細胞である。マウスES細胞は、連続継代で未分化状態を維持する(Williamsら、Nature 336: 684〜687(1988))。
【0108】
通常の着床前胚と共にキメラに合体させ、そして子宮に戻したマウスES細胞は、通常の発生に参加する(Richardら、Cytogenet.Cell Genet.65: 169〜171(1994))。キメラにおいてマウスES細胞が、機能的生殖細胞に寄与する能力により、マウス系に部位特異的変異を導入する方法が提供される。適当なトランスフェクションおよび選択計画を用いれば、相同組換えを用いて特定遺伝子の計画的な変化を伴うES細胞株を誘導することができる(例えばJaisserら、米国特許第5,830,729号)。これらの遺伝的に操作された細胞を用いて正常な胚を有するキメラを形成することができ、キメラ動物が回収される。ES細胞が、キメラ動物の生殖系列に寄与する場合、次いで次世代で、計画された変異のためのマウス系統が確立される。好ましい実施態様では、マウスD3胚幹細胞株を用いる。他のES細胞、例えばウシ胎児幹細胞(Simsら、米国特許第6,107,543号)を同様に用いることができる。
【0109】
8.トランスジェニク動物
トランスジェニク動物を作製するために、従来の技術を用いることができる。1つの実施態様では、ES細胞を用いてトランスジェニク動物を作製することができる。別の実施態様では、I−SpomI酵素またはI−SpomI制限部位をコードするプラスミドを1−細胞期マウス受精卵の雄前核に注射できる。次いで注射した卵を偽妊娠代理母の雌に移すことができる。代理母の雌の卵を出産まで成長させる。
【0110】
トランスジェニク動物は、初期発達段階(通常1−細胞期)で、動物または動物の祖先の生殖系列に導入されている遺伝子を担持する。Wagnerら、P.N.A.S.USA 78: 5016(1981); およびStewartら、Science 217: 1046(1982)は、ヒトグロビン遺伝子を含有するトランスジェニクマウスについて記載している。Constantiniら、Nature 294: 92(1981); およびLacyら、Cell 34: 343(1983)は、ウサギグロビン遺伝子を含有するトランスジェニクマウスについて記載している。McKnightら、Cell 34: 335(1983)は、ニワトリトランスフェリン遺伝子を含有するトランスジェニクマウスについて記載している。Brinsterら、Nature 306: 332(1983)は、機能的に再構成された免疫グロブリン遺伝子を含有するトランスジェニクマウスについて記載している。Palmiterら、Nature 300: 611(1982)は、重金属誘導メタロチオネインプロモーター配列に融合されたラット成長ホルモン遺伝子を含有するトランスジェニクマウスについて記載している。Palmiterら、Cell 29: 701(1982)は、メタロチオネインプロモーター配列に融合されたチミジンキナーゼ遺伝子を含有するトランスジェニクマウスについて記載している。Palmiterら、Science 222: 809(1983)は、メタロチオネインプロモーター配列に融合されたヒト成長ホルモン遺伝子を含有するトランスジェニクマウスについて記載している。
【0111】
9.ネスト化染色体フラグメンテーション計画
真核生物ゲノムを遺伝子マッピングするためのネスト化染色体フラグメンテーション(the nested chromosomal fragmentation)計画は、制限エンドヌクレアーゼI−SpomIの独特な特性、例えば20bpの長さの認識部位を利用する。たいていの真核生物ゲノムにおける天然のI−SpomI認識部位の不在も、またこのマッピング計画に利用される。
【0112】
最初に、前記したように選択マーカーを含有する特定のカセットを用いる相同組換えによるか、または無作為挿入により1つまたはそれ以上のI−SpomI認識部位が、ゲノムの種々の位置で人工的に挿入される。次いでI−SpomI制限酵素と共にインキュベートしたときに、得られたトランスジェニック系統のゲノムを、人工的に挿入された(複数の)I−SpomI部位で完全に切断する。切断によりネスト化染色体フラグメントが生成される。
【0113】
次いで染色体フラグメントを精製し、そしてパルスフィールドゲル(PFG)電気泳動により分離して、染色体において挿入された部位の位置を「マッピング」することが可能になる。全DNAが、制限酵素で切断される場合、各々の人工的に導入されたI−SpomI部位が、ゲノムにおける独特な「分子道標」を提供する。したがって各々が、道標間の物理学的なゲノムの間隔を決定する単一のI−SpomI部位を担持する1組のトランスジェニック系統を作成できる。結果的に、人工的に導入されたI−SpomI制限部位を用いてゲノム全体、染色体またはいずれかの目的のセグメントをマッピングすることができる。
【0114】
ネスト化染色体フラグメントを固体膜に移し、フラグメントのDNAに相補的なDNAを含有する標識プローブをハイブリダイズすることができる。観察されるハイブリダイゼーションバンドパターンに基づいて、真核生物ゲノムをマッピングすることができる。適当な「道標」を有する1組のトランスジェニック系統を参照として用いて、直接ハイブリダイゼーションによりいずれかの新規遺伝子またはクローンをマッピングする。
【0115】
10.インビボ部位指定組換え
半数体細胞では、人工的なI−SpomI部位での染色体内の単一の切断の結果、死に至る細胞分割停止の結果を招く(生存率わずか数%)。切断部位に相同的な無傷配列の存在は、結果的に修復され、100%の細胞が生存する。2倍体細胞では、I−SpomI部位での染色体内の単一の切断の結果、染色体相同性を用いる修復に至り、100%の細胞が生存する。双方の場合、誘導された2本鎖切断の修復の結果、ドナーDNA分子からの非相同性配列の切断および挿入をフランキングする非相同性配列の欠損を有するヘテロ接合性の喪失に至る。FairheadおよびDujon、Mol.Gen.Genet.240: 170〜180(1993)。
【0116】
DNAフラグメントのプラスミドから染色体への部位特異的挿入のために、いくつかの試験計画を試みることができる。これにより骨の折れるスクリーニング工程を行わずに予め決定された部位に導入遺伝子を挿入することが可能になる。試験計画には:
−1− I−SpomI認識部位が染色体の独特な位置で挿入されているトランスジェニック細胞の構築。トランスジェニック細胞におけるI−SpomI酵素の発現、ならびに目的の遺伝子およびI−SpomI部位が挿入されている配列に相同なセグメントを含有する核酸分子の導入。
【0117】
活性酵素の直接導入(例えばマイクロインジェクション、エレクトロポレーション、タンパク質のスクレープローディング)および誘導または恒常性ウイルスまたはプラスミドベクター(例えばアデノウイルスまたはレトロウイルスベクター)からのタンパク質発現などの多くの技術によりI−SpomI酵素の発現を達成できる。
【0118】
−2− プラスミドに担持される目的の遺伝子に隣接してまたはその内部でのI−SpomI認識部位の挿入。合成I−SpomI遺伝子を担持する発現ベクターおよびI−SpomI認識部位を含有するプラスミドでの正常な細胞の同時形質転換。
【0119】
−3− 誘導または恒常性細胞プロモーターの調節下でI−SpomI遺伝子がゲノムに組み込まれている安定したトランスジェニック細胞株の構築。目的の遺伝子に隣接してまたはその内部でI−SpomI部位を含有するプラスミドによる細胞株の形質転換。
【0120】
部位指定相同組換え
1.部位特異的遺伝子挿入
方法により種々の遺伝子または特定の遺伝子の変異体が、I−SpomI部位の以前の組み込みにより定義される予め決定された位置で挿入され得る細胞および細胞株を無制限に生成することが可能になる。したがって、かかる細胞および細胞株は、表現型、リガンド、薬物のためのスクリーニング手段に、および細胞株がレトロウイルス生成に関してトランスに補完する細胞株である場合には、非常に高レベルでの組換えレトロウイルスの再生産発現に有用である。
【0121】
(2つの相同性染色体の1つにのみ存在する)ヘテロ接合性であるI−SpomI部位で、前記の細胞株を最初に作製する。これをそのように増殖させることができ、および/またはこれを用いてトランスジェニック動物を作成することができる。かかる場合、通常の方法、例えば交配によりホモ接合性トランスジェニック(2つの相同性染色体において同等の位置でI−SpomI部位を有する)を構築することができる。ホモ接合性細胞株を、かかる動物から単離することができる。または、適当なDNA構築物での2次形質転換によりホモ接合性細胞株をヘテロ接合性細胞系から構築することができる。同一遺伝子または近隣遺伝子の近くの部位で、代償性へテロ接合性I−SpomI挿入を含有する細胞株は、本発明の一部であることも理解されよう。
【0122】
前記のマウス細胞またはヒトなどの他脊椎動物からの同等物を用いることができる。無脊椎動物からの細胞を用いることもできる。培養物中で維持され得るいずれかの植物細胞を、それが再生する能力があるかないか、またはそれが繁殖可能な植物を生み出しているかどうかとは関係なく使用することもできる。トランスジェニック動物で方法を用いることもできる。
【0123】
2.部位特異的遺伝子発現
類似の細胞株を用いて導入遺伝子、種々のプロモーター、レギュレーターおよび/または構造遺伝子を用いる生物学的またはバイオテクノロジー目的のタンパク質、代謝物または他の化合物を生成することもできる。遺伝子は、いつも染色体の同一の局在性で挿入される。トランスジェニック動物では、組織特異的な様式で複数の薬物、リガンドまたは医薬用タンパク質を試験することが可能になる。
【0124】
3.例えばEP0419621B1に開示されるように、I−SpomI認識部位およびI−SpomI酵素を相同組換え技術と組み合わせて用いることもできる。例えば、CFTR座におけるI−SpomI認識部位の挿入を、ゲノムDNAのCFTR遺伝子をフランキングする相同配列を用いて行うことができる。二重交差による自然遺伝子置換によりI−SpomI部位を挿入することができる(Le Mouellicら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87: 4712〜4716(1990))。
【0125】
挿入された配列をヘテロ接合状態またはホモ接合状態で維持できることは理解されよう。ヘテロ接合状態で挿入された配列を有するトランスジェニック動物の場合、例えば組織特異的様式で、誘導プロモーターからのI−SpomI発現の誘導によりホモ接合を誘導することができる。
【0126】
標的細胞にI−SpomI認識部位および染色体配列と相同性を共有する配列を含有するプラスミド構築物を導入することにより、自然相同組換えによるI−SpomI認識部位のゲノムへの挿入を達成することができる。入力プラスミドを染色体標的で組換え的に構築する。この組換えにより少なくとも1つのI−SpomI認識部位が染色体に部位指定挿入されることになる。標的化構築物は、環状または直線状のいずれかでよく、そして標的細胞に含まれるいずれかの配列と1、2またはそれ以上の部分の相同性を含有し得る。プラスミド構築物の標的(O型ベクター)への挿入によるか、またはI−SpomI認識部位を含有する配列(^L型ベクター)による染色体の置換より標的化メカニズムを生じることができる。ValanciusおよびSmithies、Mol.Cell Biol.11: 4389〜4397(1991)参照。
【0127】
染色体標的化された座は、エクソン、イントロン、プロモーター領域、座調節領域、擬似遺伝子、レトロエレメント、反復エレメント、非機能的DNA、テロメアおよびミニサテライトでよい。1つの座または複数の座で標的化を生じることができ、結果的に1つまたはそれ以上のI−SpomI部位を細胞ゲノムに挿入することになる。
【0128】
ゲノムの正確な座にI−SpomI認識部位を導入するための胚幹細胞の使用により、これらの細胞の初期胚(桑実期または胚盤胞段階)への再移植により、正確な座でI−SpomI認識部位を含有する変異マウスの生成が可能になる。これらのマウスを用いてI−SpomI酵素の体細胞または生殖系列への発現においてゲノムを修飾することができる。
【0129】
4.生物医学的適用
本発明による配列、細胞、動物、染色体および方法で種々の適用を行うことができる。
【0130】
1つの適用は、遺伝子治療である。遺伝子治療の具体的な実例には、免疫変調(すなわちIL遺伝子の範囲または発現を変化させること);欠損遺伝子の置換;およびタンパク質の排泄(すなわちオルガネラにおける種々分泌性タンパク質の発現)などが挙げられる。
【0131】
本発明は、更にI−SpomI制限部位がゲノム配列の座に、または遺伝子のエクソンに対応するcDNAの一部に導入されているトランスジェニック生物、例えば動物を具現化する。I−SpomI部位が導入されているゲノム(動物、ヒト、昆虫、または植物等)のいずれかの遺伝子を、対応するエンドヌクレアーゼをコードする配列を含有するプラスミドにより標的化することができる。I−SpomI部位の導入を相同組換えにより達成することができる。このように、いずれかの遺伝子を発現のために特定の座に標的化することができる。
【0132】
トランスジェニック生物をスクリーニング法に用いることができる。
I−SpomIにより遺伝子活性化を調節することができる。例えばI−SpomI認識部位を、ニューロン特異的エノラーゼプロモーター(pNSE)(Forss-Petterら、Neuron 5: 187〜197(1990))の調節下で、タンデム反復でnlsLacZ遺伝子の一部(例えば62bp)の重複を含有するトランスジェニックマウス系統に導入し、したがってオープン・リーディグ・フレームへの停止コドンの導入により遺伝子機能を損失させることができる。これらのマウスにおけるI−SpomI酵素の発現は、2つのタンデム反復間の組換えを再活性化することができ、すべての中枢神経系(CNS)で遺伝子の再活性化に至る。全CNSの遺伝手術に至るジフテリア毒素のDT−Aフラグメントを用いて同一の実験を実現できる。組織特異的プロモーターによるかまたは遺伝子標的化により得られる天然の座におけるI−SpomI修飾DT−Aの発現により遺伝手術を実施することができる。
【0133】
インビボでI−SpomI誘導組換えにより特定の遺伝子を活性化することが可能である。I−SpomI切断部位をタンデム反復における遺伝子の重複の間に導入し、機能を喪失させる。エンドヌクレアーゼI−SpomIの発現により2つのコピー間で切断を誘導することができる。組換えによる回復が刺激され、そして機能的遺伝子に至る。
【0134】
染色体の特定の転座または欠失をI−SpomI切断により誘導できる。「古典的な遺伝子置換」により染色体の特定の位置で遺伝子を組み込むことにより座挿入を行うことができる。非致死的な転座によるか、または欠失続いて末端結合によりI−SpomIエンドヌクレアーゼによる認識配列の切断を修復することができる。座のフランキング領域における2つまたはそれ以上のI−SpomI部位の挿入により染色体のフラグメントの欠失を得ることもできる。組換えにより切断を修復でき、そして2つの部位の間の完全領域の欠失に至る。
【0135】
I−SpomIは、タンパク質の進化的に保存されたファミリーの一部であるので、その切断特異性が複合生物、例えば菌類、動物または植物のゲノムの独特な部位として認識できるほどに十分に高い場合、I−SpomIで開発されたすべての適用を他のエンドヌクレアーゼで行うこともできると解される。エンドヌクレアーゼをその天然の遺伝子から直接発現させることができる場合がある。またかかる酵素が天然にコードされる細胞区画における遺伝コードの可変性のために、人工遺伝子を構築する必要がある場合もある。構築物ならびにI−SpomIおよびその部位で実施される全系列の操作を他のエンドヌクレアーゼで容易に変換することができる。同様に、適用においてI−SpomIを他の酵素、例えばI−SceIと置き換えることができる。
【0136】
I−SpomIを他の酵素、例えばI−SceI、I−CreI、I−CeuIおよびI−DmoIと組み合わせて用いることができる。例えば、米国特許第5,474,896号を参照されたい。例えば、1つまたはそれ以上のI−SpomI制限部位および1つまたはそれ以上のグループIイントロンコード化エンドヌクレアーゼ部位(例えばI−SceI部位)を含有する組換え染色体または細胞を構築することができる。別の実施態様では、1つまたはそれ以上のI−SpomI制限部位および1つまたはそれ以上のグループIイントロンコード化エンドヌクレアーゼ部位(例えばI−SceI部位)を含有するトランスジェニックマウスを構築することができる。部位は、同一または異なる染色体座でよい。
【0137】
I−SpomIを他の酵素、例えばI−SceIと組み合わせて用いてインビボ組換えを促進することができる。例えばI−SpomIおよびI−SceIを発現する1つの発現ベクター、または酵素を発現する2つの別個の発現ベクターを用いて、これらの酵素の双方の発現を細胞に導入することができる。これらの酵素の発現により、2本鎖切断をゲノムの異なる部分に同時に、または連続的に導入することが可能になる。この研究法を用いて、例えばひと続きのDNAを欠失させるか、または複数の組換え事象を促進させることができる
【0138】
本明細書に引用したすべての参考文献のすべての開示は参照として本明細書に組み入れられる。
【0139】
生物の寄託
ORF I−SpomI酵素をコードするポリヌクレオチドを含有するプラスミドは、2001年3月6日、Collection Nationale de Cultures de Microorganismes(CNCM)、25、Rue du Docteur Roux75724、パリ、Cedex 15、フランスに受入番号I−2643のもとに寄託されている(参照同定:大腸菌(E.coli)BL21(DE3)pLysS/pSP003)。
本発明は以下の実施例を参照することで更に完全に理解されよう。
【実施例1】
【0140】
I−SpomIの発現のためのプラスミドの構築および活性アッセイ
大腸菌(E.coli)におけるI−SpomIの発現のために、分裂酵母(S.pomb)X39株ゲノムDNA(47)から増幅した種々のPCRフラグメントを、発現ベクターpET16b(Novagen、マジソン)にクローン化した。発現されたタンパク質をN末端10xHisタグと融合してさらなる精製を容易にした。3つの組換えプラスミドを構築した(図1);(i)プラスミドpSP001は、cox1E1のイニシエーターATGコドンからcox1I1b(プライマーSP001m:5′−GCACGCATGTCATATGGTCTTGAGTTTAATGAACTCTTG−3′[配列番号:1]、プライマーSP002m:5′−GCGTAGATGGATCCAAGTGATACTTGATAGTGGTGG−3′[配列番号:2])の配列内停止コドンまでのすべてのオープン・リーディグ・フレームに対応する520コドンのフラグメントを含有する。(ii)プラスミドpSP003は、2つのLAGLIDADGモチーフ(プライマーSP002mと一緒に、プライマーSP003 5′−GAGAGCGCATATACATATGAATAAATTTTTTAATAGACATCC−3′[配列番号:3])を含むイントロン2次構造のループ8(図1A)に位置する304コドンをカバーする最短のインサートを含有する。(iii)プライマーSP005をプライマーSP002と共に用いて第3のプラスミドpSP005を構築し、cox1I1b ORF(プライマーSP002mと一緒に、プライマーSP005:5′−GCATATTAGGATCCATGTTAAAGCCGCAGACAAAATTG−3′[配列番号:4])の全配列をカバーする386コドンの生成物を得た。各々のプラスミドを発現宿主大腸菌(E.coli)BL21(DE3)pLysS(Novagen、マジソン)に形質転換した。
【0141】
プラスミドpP3E5−2(48)をI−SpomI切断部位を決定するための鋳型として、および活性試験のために提供した。このpUC18の誘導体は、イントロン不含P3株(49)のcox1配列のクローン化mtDNAフラグメントを含有する。
【0142】
認識部位を特徴づけるために、オリゴヌクレオチドの合成によりイントロン不含遺伝子からのイントロン挿入部位をフランキングする領域の一連の変異体を作製した。各々の変異体は、イントロン挿入部位近くの−13〜+12ヌクレオチド位置までの単一の塩基転換に相当する。アニーリングされた相補的オリゴヌクレオチドを、BamHIおよびHindIII部位を用いてpUC19にクローン化した。別のEcoRV部位をオリゴヌクレオチド配列に組み込み、適切な組換え分子をスクリーニングした。各々のライゲーション実験の2つの別個のクローンを試験で用いて、2本鎖における切断反応を実施した。
【実施例2】
【0143】
エンドヌクレアーゼの発現および精製
Novagen,マジソンにより提供されるT7発現系を用いて組換えタンパク質を発現した。pSP003で形質転換した大腸菌(E.coli)BL21(DE3)pLysSの前培養を、LB培地50ml中アンピシリン(100μg/ml)およびクロラムフェニコール(34μg/ml)と共に37℃で一晩増殖させ、次いで新鮮な予め加温した同一組成の培地3l中100倍希釈した。細胞を37℃でOD600が0.6〜0.8になるまで成長させた後、イソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド(IPTG)を添加することにより発現を誘導した。誘導の後、細胞を更に3時間、OD600が2.3〜2.8になるまで増殖させ、収穫し、水で洗浄し、そして一定分量を−70℃で保存した。精製用に、主培養物1lから細胞を収穫した。細胞を使用する直前にペレットを氷上で解凍し、そしてプロテアーゼインヒビター(ペファブロック 1μg/ml、アプロチニン 2μg/ml、ロイペプチン 0.5μg/ml、ペプスタチン 1μg/ml)を含む溶解バッファー 30ml(HEPES 30mM pH8、NaCl 300mM、イミダゾール 20mM)に再懸濁した。後続の精製工程すべてを4℃で実施した。細胞破壊は、フレンチ・プレスを用いて実施し、そして続いて粗製ホモジネートをBeckman JA25.50ローター中40000xgで45分間遠心した。即座に上澄をデカンテーションし、Ni2+で荷電したHiTrapキレーティング・アフィニティ・カラム(Amersham Pharmacia Biotech、リトルチャルフォント)1mlに負荷した。アフィニティカラムを用いる精製工程をAkta Purifier(Amersham Pharmacia Biotech、リトルチャルフォント)で実施した(図2)。溶出工程の後に酵素が存在する溶出バッファーを、Micro Bio-Spinサイズ排除カラム(BioRad、ヘルクレス)を用いてジエタノールアミン 100mM、pH9.0に変えた。最終容量の50%までグリセロールを添加した後、タンパク質を−20℃で保存し、そしてBio-Rad Bradford(BioRad、ヘルクレス)タンパク質アッセイを用いてタンパク質濃度を決定した。
【0144】
精製を実証し、そして発現されたI−SpomIのバンドを同定するために、手順の様々な段階でサンプルを採取し、そしてSDS−12% ポリアクリルアミドゲルに流した。その後、(50)にしたがってセミドライトランスファーセル(BioRad、ヘルクレス)を用いて、それをニトロセルロース膜に移した。次いで膜を粉乳 2%を含有するTBST(Tris−HCl 10mM(pH8.0)、NaCl 150mM、Tween20 0.5%および脱脂粉乳2%)中37℃で1時間膜をインキュベートした。その後、セイヨウワサビペルオキシダーゼに結合させたHisタグに対する抗体をTBST乳溶液中1:4500で希釈し、そして膜を37℃で1時間インキュベートした。次いでこれをTBSTで2回およびPBSで1回洗浄した(50)。ECLキット(Amersham Pharmacia Biotech、リトルチャルフォント)のマニュアルにしたがって、HRP活性の検出を実施した。IPTGでの誘導(粗製ホモジネート、溶解細胞、遠心後の上澄、ピークおよびピーク以外の流動画分)の前または後に異なるサンプルを採取した。最初の15画分の各々のサンプルをSDS−12%ポリアクリルアミドゲルに負荷し、そしてCoomassieブリリアントブルーR250で染色して、他の存在するタンパク質に相対して最高の比率で発現した酵素を含む画分を同定した。
【0145】
交雑におけるイントロンcox1I1bのホーミングを示す以前の実験から(47、48)、イントロンcox1I1bの生成物は、エンドヌクレアーゼ活性を有していると推定された。エクソン部分を含むリーディグ・フレーム全体が機能的タンパク質に必須であるかどうかは不明であったので、イントロンおよびエクソン配列を含むORF全体、または単純にイントロン全体およびRNA2次構造のループ8に相当する領域を発現させた(図1)。ミトコンドリアイントロンのリーディグ・フレームがユニバーサルでないコードを用いて翻訳されるたいていのその他の場合と対照的に、このイントロンORFは、UGAコドンを全く含まない(45)。したがって遺伝子の配列におけるいずれかのヌクレオチドを変化させる必要はなかった。
【0146】
時間経過実験で大腸菌(E.coli)において発現を検定し、そして最も小さなORGの遺伝子産物の最高の発現が誘導後3時間であることが見出された(データは示していない)。したがって、pSP003と称される発現プラスミドで進めることに決定した。細胞溶解後の可溶性画分は、エンドヌクレアーゼ活性を含有する(後記で示すように)。この画分で、Hisタグ抗体を用いるウェスタンブロット実験においても検出可能な2つの主要なバンドを見出した。より強いバンドの大きさは融合遺伝子産物の推定される分子量(38.7kDa)に従い、可能な分解産物としておよそ30kDaの大きさの弱いバンドを伴う(図2B、C)。Niカラムでの単一の精製工程からの典型的な溶出プロファイルを図2Aに示す。タンパク質ピークは、いつも強い核酸シグナルと同時溶出される。Bradfordアッセイは、全タンパク質濃度0.3μg/μlを示した。全体の約3分の1に相当する38.7kDaの主要なタンパク質バンドで、I−SpomIの濃度がおよそ0.1μg/μlであると見積もられた。調製物をジエタノールアミン 100mM(pH9.0)/50% グリセロール中−20℃で保存し、そしてこれらの条件が数ヶ月間安定してエンドヌクレアーゼ活性を保持することが示された。
【実施例3】
【0147】
I−SpomI切断部位の決定
エクソンcox1E1およびcox1E2の配列の接合部での推定されるホーミング部位を含む短いPCR産物でI−SpomIでの切断パターンの決定を実施した。センス鎖SP009のプライマー(5′−CTAGAGTAAATAATTTCACATTC−3′[配列番号:5])は、イントロン挿入部位に相対して−100の位置でアニーリングした。相補鎖のプライマーSP008(5′−ATGCAAATAATGGCATTTGATAT−3′[配列番号:6])およびSP010(5′−AATTTACTGATCCTAATGTTGAT−3′[配列番号:7])は、各々下流の+173ヌクレオチド、+129ヌクレオチドにハイブリダイズした(図3A)。PstIで直線化したプラスミドpP3E5−2(48)は切断部位を決定するためのDNA材料を調製するためにPCRの鋳型として提供された。材料をシュリンプアルカリ性ホスファターゼおよびエクソヌクレアーゼIと反応させ、過剰のヌクレオチドおよびプライマーを除去し、次いで変性させた。このように調製したPCR産物を鋳型として用いてサイクルシークエンシング(Thermo Sequenaseサイクルシークエンシングキット、USB、マイルスロード)および5′−末端標識プライマーSP009またはSP008/SP010を用いてDNAシークエンシングラダーを作製した。また鋳型として5′−末端標識プライマーを用いて、プラスミドpP3E5−2(48)のPCR増幅によりI−SpomIのための単一の末端標識基質を生成した。切断の前にAmicon Microcon PCR遠心フィルター装置(Millipore、ベッドフォード)によりマニュアルにしたがって、DNAフラグメントを組み込まれていないデオキシヌクレオチドおよび放射性オリゴヌクレオチドから精製し、続いてフェノール抽出および沈殿を行った。最後にPCR産物を水15μlに再懸濁した。I−SpomIでの消化を全反応容量 25μl(エンドヌクレアーゼ調製物 6μl、ジエタノールアミン 100mM(pH9.0)、MgCl2 2.5mM、溶解したPCR産物1μl)中37℃で10分間実施した。10x停止溶液((51)にしたがって、Tris−HCl 0.1M(pH7.5)、EDTA 0.25M、SDS 5%、プロテイナーゼK 0.5mg/ml)0.1容量添加することにより反応を停止させ、そして50℃に15分間、そして95℃に上げて3分間インキュベートしてプロテイナーゼKを不活性化した。フェノール抽出によりプロテイナーゼKを除去し、そしてサンプルを沈殿させた。未消化サンプルを対照としてI−SpomIの不在下で処理した。エンドヌクレアーゼ消化の後、PCR産物をDNAシークエンシング反応と平行して実行した。Sequenazeキットと共に供給された停止溶液を添加した後75℃で2分間、すべてのサンプルを変性させ、そして6% ポリアクリルアミド/50% 尿素ゲル上で分離した。続いてゲルを乾燥させ、そしてオートラジオグラフィーフィルムまたはPhosphor Imagerスクリーン(Molecular Dynamics、サニーベール)にそれぞれ−70℃でまたは25℃で一晩焼き付けした。結果の評価をImage Quant 5.0ソフトウェアで実施した。
【0148】
材料および方法で記載されている分裂酵母(S.pombe)P3株(44)のcox1遺伝子の連続配列内のイントロン挿入部位をフランキングする領域に相当する5′末端標識PCR産物を用いてI−SpomIの切断パターンを決定した。DNAをI−SpomIで消化し、そしてシークエンシングゲル上で分離した(図3)。各々のDNA鎖は、I−SpomIでの消化の後、強いシグナルを示し、これは切断されていないDNAでは存在しない。同一DNAフラグメントのシークエンシングラダーと比較して、切断位置は、正確に局在した。これにより、切断は、センス鎖のイントロン挿入部位の2bp下流で生じ、下方の鎖の2bpが4ヌクレオチドの3′オーバーハングを作製する。この切断パターンは、他のホーミングエンドヌクレアーゼから周知である。I−Crel(17)、I−SceI(16)およびII(37)、I−CeuI(30)およびI−DmoI(20)のようなドデカペプチドファミリーのメンバーに関して、ならびにHis−Cys Box/ββα−Meタンパク質I−PpoI(53)に関して報告されている。
【実施例4】
【0149】
活性試験
プライマーSP009および前のパラグラフで記載した放射性標識プライマーSP008を用いるPCRにより、I−SpomIの基質が得られた。エンドヌクレアーゼ切断のための標準的な条件は全容量25μl中ジエタノールアミン 100mM(pH9.0)、MgCl2 0.5mM、NaCl 100mM、水 15μl中精製されたPCR産物1μlおよび最終的に調製されたエンドヌクレアーゼ5μlであった。反応物を37℃で20分間インキュベートした。MgCl2濃度は、1mM〜40mMまで変化し、NaClは、0mM〜200mMまで変化した。温度の影響を25℃〜65℃の間でモニター観察した。試験したpH値は、pH6.0(MES 30mM)、pH7.0、pH8.0(HEPES 100mM)およびpH9.0〜10.0(ジエタノールアミン 100mM)の範囲であった。前記したように反応を停止させた。これを5% ポリアクリルアミド/50% 尿素ゲル上で分離した。これを流した後、ゲルを10% 酢酸/20% エタノールの溶液に浸し、ワットマン 3MMペーパー(ワットマン、メイドストン)上に載せ、そして乾燥させた。Phosphor Imager スクリーン(Molecular Dynamics、サニーベール)に乾燥したゲルを25℃で2.5時間焼き付けし、結果を前記したソフトウェアで定量化した。
【0150】
他のホーミングエンドヌクレアーゼの活性に影響する公知のパラメーターは、溶液の1価(Na+およびK+)および2価カチオン(Mg2+およびMn2+)の濃度、温度およびプロトン濃度である。I−SpomIの活性のための最適条件を決定するために、I−SpomIエンドヌクレアーゼ活性アッセイのための基質として、イントロン挿入部位(図3A)に相対して−100bp(SP009)〜+173bp(SP008)位置にわたるPCR産物を使用する。アッセイに関しては、プライマーの1つを[γ−32P]−ATPで5′末端標識した。SpomIによる切断により173bpの長さのより小型の検出可能なバンドが作製されるはずである。その他のすべての公知のホーミングエンドヌクレアーゼに関して以前から報告されているように、I−SpomIの切断能力にMg2+が必須であることが見出された。Mg2+の不在下では、活性は検出されない(示していない)。最適Mg2+濃度は5mM〜7.5mMの範囲である(図4A)。より低いまたは高い濃度は、酵素活性には不利である。I−SpomIには、Na+が必要であるが、許容される濃度範囲は広くなる(図4B)。25℃〜65℃の異なる温度での基質の切断は、42℃で明らかに最適であった(図4C)。30℃およびそれより低い温度では、ほとんど活性が見出されなかった。I−SpomIは、65℃まで活性である。プロトン濃度の影響は、明らかにI−SpomIのアルカリ性pH条件への嗜好性を示した(図4D)。6.0〜8.0の間のpH値では、切断されたDNAの量は、約30%の低レベルに留まったが、pH9.0およびそれより高い値では、切断は、85%まで上昇した。
【0151】
I−ScaI(43)に関しては、最適切断条件は以下のように報告されている:Mg2+ 8mM、Na+ 約50mM、28℃〜40℃の間の温度、8.5〜9.0の間のpH。高温およびアルカリ性pH値の嗜好性は、I−SceI(29)およびIII(54)に非常に類似しており、双方共に細菌内で発現される。対照的に酵母ミトコンドリアから抽出されるI−SceII(19)は、中性pHおよびおよそ30℃の温度を好む。
【実施例5】
【0152】
認識配列の決定
前記したように、イントロンcox1I1bの挿入部位近くの−13〜+12位置までのヌクレオチド配列を含有するプラスミドを使用した(図5A参照)。混合物を95℃で3分間変性し、そして4℃までゆっくりと冷却した後、相補的オリゴヌクレオチドをNEBuffer2(New England Biolabs、ベバリー)中でアニーリングした。これをBamHI/HindIII消化pUC19にクローン化した。組換えプラスミドを大腸菌(E.coli)DH10B株内でエレクトロポレーションにより形質転換し、そしてその後、アルカリ性プラスミド調製物のEcoRV/XmnI消化により検査した(50)。QIAフィルターチップ100プロトコル(QLAGEN、ヒルデン)にしたがってLBA40mlの培養物から組換えプラスミドのDNAを調製した。調製したプラスミドの濃度を0.3μg/μlに調整した。プラスミドをI−SpomIに暴露する前に、NdeIおよびAlwNIで37℃で3時間消化し、続いて65℃で20分間処理し、沈殿させ、そして最終濃度0.1μg/mlになるまで水に溶解した。I−SpomI消化を容量50μl(DNA 250ng、ジエタノールアミン 100mM(pH9.6)、MgCl2 5mM、NaCl 100mM、I−SpomI 5μl)で実施した。停止溶液(Tris−HCl 0.1M(pH7.5)、EDTA 0.25M、SDS 5%)0.1容量を添加し、そして65℃で3分間インキュベートして消化を停止させ、続いてフェノール抽出および沈殿を行った。消化産物を水10μlに再懸濁し、そしてアガロースゲル 0.8%上で分離した。泳動後、ゲルを臭化エチジウム 0.5μg/μlで染色し、そしてDNAを真空ブロットによりHybond−N+ナイロン膜(Amersham Pharmcia Biotech、リトルチャルフォント)に移した。移した後、膜をハイブリダイゼーションバッファー(リン酸バッファー 0.25M、SDS 7%、EDTA 1mM、BSA 1%)中65℃で1.5時間プレハイブリダイズし、次いでプローブとしてランダム標識pUC19を用いて一晩ハイブリダイズした(52)。シンチレーションカウンターで最終プローブ調製物1μlアリコート中の標識の組み込みを決定した。ハイブリダイゼーションの後、プローブを含有するバッファーを除去し、膜をハイブリダイゼーションバッファーで65℃で洗浄し、そしてPhosphor Imager スクリーン(Molecular Dynamics、サニーベール)に25℃で2.5時間焼き付けし、そして結果を前記したように記述した。
【0153】
I−SpomIの認識部位の範囲を決定するために、イントロン挿入部位をフランキングする−13〜+12の領域に一度に1つの塩基転換を導入することにより変異された配列を合成した。材料および方法に記載するように変異アレルを合成することによりこれを行った。プラスミドのNdelおよびA1wNIでの消化の結果、それぞれ1652bpおよび1041bpの2つのバンドになり、最も小型のものは、I−SpomI切断部位を含有する。I−SpomIによるこのフラグメントの消化により801bpおよび240bpの2つのバンドを生じ、これを図5Aに示す。異なる変異体の切断実験の結果を図5Aの囲み「切断」および「%」にまとめる。−11、−10、−8〜−4、+2〜+6、+8および+9は、I−SpomIによる基質認識に必須である。−4および+2位置でのヌクレオチドの塩基転換は、ほぼ完全に切断を無効にする。中央の位置−3〜+1まで、および−9および+7の位置の配列の縁でのいくつかのヌクレオチドにおける変化は、認識事象に影響しない。このように部位の範囲は、全部で20bpである。これらの20bp内では、14個のみがI−SpomI特異性に必須である。
【0154】
【表1】
【図面の簡単な説明】
【0155】
【図1A】図1は、プラスミドインサートを表す。分裂酵母(Schizosaccharomyces pombe)のcox1IbイントロンのRNA2次構造である。2つのLAGLIDADGモチーフ(P1およびP2)から成るエンドヌクレアーゼのコアをコードするヌクレオチドは、ループ8(L8)に位置する。I−SpomIの生化学的特性に関して、L8の全コドンを含むPCRフラグメントを発現ベクターpET16bにクローニングした。*は、プライマーSP003における人工開始コドンを示す。ループの終末のボックスは、停止コドン示している。
【図1B】図1は、プラスミドインサートを表す。I−SpomIリーディグ・フレームのクローン化されたフラグメントである。最上の図式は、分裂酵母(Schizosaccharomyces pombe)の第1エクソン(cox1E1)の全配列およびcox1遺伝子におけるイントロンを表す。灰色:元来の出発コドンATGを有するエクソンcox1E1。暗灰色:全ORF1560ヌクレオチドのうちの912ヌクレオチドはRNAレベルでL8を構築する領域に位置する。黒色:LAGLIDADGモチーフのコード化配列。淡灰色:ループの配列に関しては、1から7は領域aに位置する。白色:TAA停止コドンに対して下流の配列非コード化領域はループ9に位置する。 エクソンで出発し、イントロンcox1I1bの停止コドンに及ぶ全リーディグ・フレーム1560ヌクレオチドにわたるPCRフラグメントをpET16bにクローニングし、プラスミドpSP001を得た。プラスミドpSP005は、ORFの全5′−エクソン部分を欠如するが、一方、pSP003は、配列のループ8部分に限定されるフラグメントを含有した。クローニングに用いられた制限酵素を示す。 図2は、I−SpomIの発現および精製を示す。
【図2A】精製クロマグラムである。Hisタグ化I−SpomIを、参考書にて説明されるように大腸菌(E.coli)に発現させた。大腸菌細胞破壊に続いて、上澄をNi2+で荷電したHiTrap キレーティング・アフィニティ・カラム 1ml(アメルシャム・ファルマシア・バイオテックAmercham Pharmacia Biotech、Little、リトルチャルフォント)に負荷し、溶解バッファー(HEPES 30mM、pH8、NaCl 300mM、イミダゾール 20mM)で流速1ml/分で平衡化した。I−SpomIエンドヌクレアーゼは、そのN末端Hisタグを介して結合し、一方、不純物は、溶解バッファーと共に洗い流される。伝導率により測定したバッファー中のイミダゾール濃度を増加させることによりタンパク質の溶出を実施した。イミダゾール濃度200mMでカラムから洗い流した画分にエンドヌクレアーゼバンドが見出された。λ=260nmおよびλ=280nmでの吸光度をモニター観察した。
【図2B】ピーク画分4〜11の12% SDS−PAGEである。画分6をアッセイに使用した。
【図2C】アフィニティクロマトグラフィー後のI−SpomI調製物のウェスタンブロットである。トランケートされたタンパク質のバンドは、未染色New England Biolabs Broad Rangeマーカー36.5kDaバンドより上に現れ、これは38.7kDaの推定された大きさとよく相関する。 図3は、I−SpomIの切断部位の決定を表す。
【図3A】5′−末端標識I−SpomI基質を作製するために用いられたプライマーである。各オリゴヌクレオチドの双方の末端は、イントロン挿入部位からの距離に応じて数字が付けられている。
【図3B】I−SpomIの切断部位である。2つの異なる末端標識DNA鋳型を、5′−γ32P末端標識プライマーSP009、SP008またはSP010を用いてPCR反応により調製した。次いでDNA基質を、I−SpomIと共にインキュベートした。切断後、DNAフラグメントを、同一DNA配列のシークエンシングラダーの隣のシークエンシングゲル上で電気泳動した。矢印は、センス鎖(左)およびアンチセンス鎖(右)のリン酸ジエステル結合の切断を示す。切断パターンを下部の図にまとめているが、これは、ねじれた線で表され、点線は、イントロン挿入部位の位置を示す。部位の配列は、部分的対称を示している。 図4は、I−SpomI切断の最適条件の決定を表す。切断生成物%は、173bpの長さの切断フラグメントからのシグナルと合計シグナル(このフラグメントのシグナルに未切断基質273bpの放射活性を加える)との間の比率により表される。
【図4A】Mg2+濃度である。PCR生成物SP009〜SP008 1μlを、I−SpomI溶液 5μlと共に全量25μlでインキュベートした。反応バッファーはpH9.0のジエタノールアミン/HCl 0.1M、NaCl 0.1Mおよび1mM〜40mMの種々濃度のMgCl2を含有した。37℃で20分間反応を実施した。
【図4B】Na+濃度である。反応容量およびPCR生成物の加えた容量は、Aの下に記載した。反応バッファーは、pH9.0のジエタノールアミン/HCl 0.1M、MgCl2 2.5mMおよび0M〜0.2Mの種々濃度のNaClを含有した。37℃で20分間反応を実施した。
【図4C】温度である。反応容量およびPCR生成物の加えた容量は、Aの下に記載した。反応バッファーは、pH9.0のジエタノールアミン/HCl 0.1M、MgCl2 2.5mMおよびNaCl 0.1Mを含有した。反応物を、25〜65℃で20分間インキュベートした。
【図4D】pHである。反応容量およびPCR生成物の加えた容量は、Aの下に記載した。反応バッファーは、pH6.0のMES 0.03M、pH7.0またはpH8.0のHEPES 0.1M、pH9.0、9.2、9.4、9.6、9.8または10のジエタノールアミン/HCl 0.1M、MgCl2 2.5mMおよびNaCl 0.1Mを含有した。37℃で20分間反応を実施した。 なお、MG2+、Na+および温度に関するアッセイを、同一の酵素調製物で実施したことに留意されたい。37℃で20分の消化の後、切断された生成物の最大値は、全DNAの約30%であった。異なるpH値でのアッセイを、別の酵素調製物で実施し、そして最適条件下での切断効率は約85%であった。 図5は、I−SpomI認識配列の決定を表す。
【図5A】I−SpomIと共にインキュベートした後のプラスミドpP3E5〜2のNdeI−AlwNIフラグメントの電気泳動分析である。サザンブロッティングおよびランダム標識pUC19でのハイブリダイゼーションによりDNAフラグメントを顕示した。1kbフラグメントは、I−SpomI部位を含有し、これはI−SpomIによる切断の後各々0.8kbおよび0.2kbの2つのフラグメントを生じる。一連のプラスミドをアッセイに用い、各々のプラスミドは、下に示す野生型エクソン−エクソン配列の単一のヌクレオチド変異を含有する。各々の変異は、野生型配列に比較して塩基転換に相当する。 ねじれた線は、切断部位を示す。「切断」と記されたボックスでは、各変異体の効果を示す:+=変異体は、野生型と同様に切断される;0=切断低下;−=切断なし。%値は、野生型配列に対する各変異配列におけるI−SpomIの相対切断効率を指している。値は、切断生成物と野生型配列に関する変異配列の間の比率を%で示す。0.8kbバンドを1.0kbおよび0.8kbバンドに存在する全DNAと比較する。
【図5B】DNA領域のらせん表示である。矢印は、鎖切断が導入される位置を示す。
【図6】グループIイントロンの末梢ループのORFを示す。グループIイントロン2次構造の概略図は、LAGLIDADG型タンパク質のORFの挿入部位を示す。Ce:クラミドモナス・ユーガメトス(Chlamydomonas eugametos)。Cr:クラミドモナス・レインハルディッティ(Chlamydomonas reinhardtii)。Cs:クラミドモナス・スミティ(Chlamydomonas smithii)。En:エメリセラ・ニデュランス(Emericella nidulans)。Kt:クルイベロミセス・サーモトレランス(Kluyveromyces thermolerans)。Ne:ニューロスポラ・クラッサ(Neurospora crassa)。Pa:ポドスポラ・アンセリナ(Podospora anserina)。Sc:パン酵母(Saccharomyces cerevisiae)。Sp:分裂酵母(Schizosaccharomyces pombe)。
【図7】cox1の第1のエクソンのヌクレオチド配列にI−SpomIをコードするイントロンを加えたものを示す(配列番号:8)。
【図8】I−SpomI酵素をコードするヌクレオチド配列を表す(配列番号:9)。
【図9】I−SpomI認識部位のヌクレオチド配列を表す(配列番号:10)。
【図10】天然I−SpomIタンパク質のアミノ酸配列を表す(配列番号:11)。
【図11】I−SpomIタンパク質のアミノ酸配列を表す(配列番号:12)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、制限エンドヌクレアーゼI−SpomIおよびI−SpomI制限部位に対応するヌクレオチド配列をコードするヌクレオチド配列に関する。本発明は、またヌクレオチド配列を含有するベクター、ベクターで形質転換された細胞、ベクターに基づくトランスジェニック動物、および生物の細胞に由来する細胞株にも関する。本発明は、また真核生物ゲノムのマッピングおよびインビボ部位指定遺伝子組換えに関するI−SpomIの使用にも関する。
【0002】
発明の背景
遺伝子を生物、例えば哺乳動物の生殖細胞系列に導入できることは、生物学において非常に興味深い。外来的に加えられたDNAを取り込み、そしてDNAに含まれた遺伝子を発現する哺乳動物細胞の性向は、何年も前から解っている。遺伝子操作の結果は、これらの動物の子孫に遺伝される。これらの子孫のすべての細胞は、その遺伝的構成の一部として導入遺伝子を受け継ぐ。かかる動物が、トランスジェニックであると称される。
【0003】
トランスジェニック哺乳動物は、胚形成期および分化における遺伝子制御の研究、遺伝子作用の研究、および免疫系における細胞の複雑な相互作用の研究に関する手段を提供してきた。まるごとの動物は複雑な生物学的過程を志向する、操作された遺伝子に関する究極のアッセイ系である。
【0004】
トランスジェニック動物は、種々の遺伝子の組織特異的な、または発達上の制御に寄与するDNA配列を機能的に分析するための一般的なアッセイを提供できる。加えて、トランスジェニック動物は、組換えタンパク質を発現するための、およびヒトの遺伝的障害の正確な動物モデルを作製するための有用な手段を提供する。
【0005】
遺伝子クローニングならびに動物および動物細胞における発現の一般的な議論に関しては、Sambrookら、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、第3版、Cold Spring Harbor Laboratory Press(2001)、およびGreenら、Genome Analysis: A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press(1977)を参照されたい。
【0006】
特定の疾患および遺伝的障害に対する素因を有するトランスジェニック系は、これらの状態に導く事象の研究において非常に価値がある。遺伝的障害の処置の有効性は、障害の1次的原因である遺伝子欠損の同定に依存し得るということは周知である。疾患または障害を導く動物モデルを提供することにより有効な処置の発見を促すことができ、これにより、例えば遺伝子組換え処置プロトコルの効率、安全性および作用様式の研究が可能になる。
【0007】
染色体と外来性DNAとの間の相同組換え(HR)は、ゲノムへの遺伝的変化を導入するための方法の基礎である(Capecchi、Science 244: 1288〜1292(1989)、Smithieら、Nature 317: 230〜234(1985))。組換えメカニズムのパラメーターは、細胞(Bernsteinら、Mol.Cell.Biol.12: 360〜367(1992); Brennerら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA.83: 1762〜1766(1986); Linら、Mol.Cell.Biol.10: 113〜119(1990); Linら、Mol.Cell.Biol.10: 103〜112(1990))およびインビトロ系(JessbergerおよびBerg、Mol.Cell.Biol.11: 445〜457(1991))に導入されたプラスミド配列を研究することにより決定されている。HRは、DNAにおける二本鎖切断により促進される。
【0008】
エンドヌクレアーゼの中でパン酵母(Saccharomyces cerevisiae)ミトコンドリアエンドヌクレアーゼI−SceI(JacquierおよびDujon、Cell 41: 383〜394(1985))は、特徴的であり、特定の染色体標的を切断するための、したがって生きた生物における染色体を操作するための手段として開発され得る(米国特許第5,474,896号)。I−SceIタンパク質は、予め決定された配列が予め決定された部位に挿入されるようになる非相互的メカニズムである、酵母のミトコンドリアにおけるイントロンホーミングに寄与するエンドヌクレアーゼである。エンドヌクレアーゼI−SceIは、2本鎖切断を開始することにより、酵母の核における組換えを触媒できるということが証明されている(Plessisら、Genetics 130: 451〜460(1992))。エンドヌクレアーゼI−SceIの認識部位は、18bpの長さであり、したがってI−SceIタンパク質は、非常に稀な、ゲノムにおける切断制限エンドヌクレアーゼである(Thierryら、Nucleic Acids Res.19: 189〜190(1991))。加えて、I−SceIタンパク質は、リコンビナーゼではないので、その染色体操作の可能性は、宿主およびドナー分子の双方に関する標的部位要件を有する系の可能性よりも大きい(Kilbyら、Reviews 9: 413〜421(1993))。
【0009】
酵母I−SceIエンドヌクレアーゼは、哺乳動物細胞における染色体標的で2本鎖切断を効率的に誘起でき、そして部位特異的組換え、遺伝子置換または挿入に至る切断をフランキングする領域と相同性を共有するドナー分子を用いて切断を修復できる(米国特許第5,474,896号)。酵素は、高い効率で組換えを触媒する。これは、2本鎖切断修復経路により染色体DNAと外来性DNA間の組換えが哺乳動物細胞において生じ得ることを明示している(Szostakら、Cell 33: 25〜35(1983))。
【0010】
I−SceIは、多くの異なる適用に用いられている。かかる適用は、2本鎖切断の研究、染色体構造の調査、哺乳動物および細菌細胞における遺伝子置換を含む遺伝子転移の研究、ショウジョウバエにおける相同組換えによる遺伝子標的化(gene targeting)、ならびに植物における染色体切断の生成に関連している。AnglanaおよびBacchetti、Nucl.Acids.Res.27: 4276〜4281(1999); Bellaicheら、Genetics 152: 1037〜1044(1999); Choulikaら、CR Acad.Sci.III317: 1013〜1019(1994); Choulikaら、Mol.Cell.Biol.15: 1968〜1973(1994); Cohen-Tannoudjiら、Mol.Cell.Biol.18: 1444〜1448(1998); Liangら、およびGarrard、Methods 17: 95〜103(1999); Machidaら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 94: 8675〜8680(1997); Melkerson-Watsonら、Infect.Immun.69: 5933〜5942(2000); Mogilaら、Methods Mol.Biol.113: 439〜445(1999); Monteilhetら、Nucl.Acids.Res.18: 1407〜1413; NahonおよびRaveh、Adv.Exp.Med.Biol.451: 411〜414(1998); Neuvegliseら、Gene 213: 37〜46(1998); Nicolasら、Virology 266: 211〜224(2000); Perrinら、Embo J.12: 2939〜2947(1993); Posfaiら、Nucl.Acids.Res.27: 4409〜4415; Puchta、Methods Mol.Biol.113: 447〜451(1999); Rongら、Science 288: 2013〜2018; Thierryら、Nucl.Acids.Res.19: 189〜190; ならびにA.Plessisら、Genetics 130: 451〜460(1992)。
【0011】
グループIイントロンは、その効率のよい増殖メカニズムのために多くの進化的門に広範に及んでいる。そのいくつかは、イントロンを含まない同族DNA配列においてイントロン挿入部位を認識し、そしてその部位近くのDNAにおいて2本鎖切断を導入するホーミングエンドヌクレアーゼをコードする。その後、遺伝子変換過程でイントロン含有遺伝子は、切断されたレシピエントアレルの修復のための鋳型として作用し、介在配列の複製を導く(1−4)。グループIイントロンホーミングと対照的に、グループIIイントロン可動性は、リボヌクレオタンパク質(RNP)粒子を形成する、イントロンラリアット(intron lariat)に結合するイントロンコード化タンパク質により促進されるレトロホーミングメカニズムに基づく。RNP粒子は、イントロンRNAの逆スプライシングおよび逆転写によるDNA標的部位へのイントロンの組み込みを導く(5)。これに加えて、タンパク質成分は、エンドヌクレオチド結合分解活性を有し、アンチセンス鎖を切断する。RNAは、DNA上に配置された後、アンチセンス鎖が、タンパク質部分により切断される前にセンス鎖に組み込まれる(6)。したがって、イントロンRNAおよびRNP粒子のタンパク質成分の双方が、イントロン標的部位の認識に関与する。後者のエレメントは、またDNA巻き戻しに必須である(7)。グループIのみならずグループIIイントロンもホーミングを行う。翻訳後除去されるポリペプチドであるインテインをコードするいくつかのDNA配列は、グループIイントロンで記載されたのと同一の様式で増殖する。インテインは、LAGLIDADGファミリーまたはH−N−Hファミリーのエンドヌクレアーゼを含有する(3、8−12)。これらの酵素は、タンパク質スプライシング活性を担持する既存のインテインへのエンドヌクレアーゼ遺伝子の侵入により進化してきた可能性がある(13)。インテインエンドヌクレアーゼPI−SceIおよびPI−PfuIの結晶に関する構造研究により、グループIイントロンエンドヌクレアーゼとは対照的に、これは別のDNA結合ドメインを用いてその特異性を増強していることが強く示されている。I−SceIでは、DNA認識領域(DRR)は、特異的基質が切断部位からおよそ2個のらせん回転離れて接触することを確立させるが(14)、PI−PfuIでは、スターラップドメイン(stirrup domain)が、同一の目的を満たしている(15)。
【0012】
LAGLIDADGホーミングエンドヌクレアーゼは、イントロン挿入部位の近くで4bpの3′−OHのオーバーハングを作る(16−18)。最適な活性の条件は、酵素に基づく。例えばミトコンドリアの外で調製されたI−SceII(19)は、およそ30℃の温度および中性のpHを好むが、一方、I−DomI(18、20)は、およそ70℃の温度およびアルカリ性のpH値を好む。細菌性II型制限酵素と異なって、同族の修飾系が存在しないので、ホーミングエンドヌクレアーゼは、宿主ゲノムに及ぼす有害な影響を排除するために非常に高度な認識配列特異性を有していなければならない。したがって、その認識部位は、更に長い(14〜30bp、ある種のインテインコード化エンドヌクレアーゼに関しては40bpまで)。結晶化酵素、I−CreI(21)、PI−SceI(22)、I−DmoI(23)およびHis−CysボックスホーミングエンドヌクレアーゼI−PpoI(24)に関して示されているように、イントロンコード化ホーミングエンドヌクレアーゼは、βシートに依存してDNAの主溝と接触する。それゆえにそのプロファイルは、非常に単調で、そしてDNA(23、25)の広い面積を覆うが、一方、球状の制限エンドヌクレアーゼ(26)は、通常、標的配列(4)とそのα−ヘリックスからの側鎖を介して相互作用する。公知のホーミングエンドヌクレアーゼは、コンセンサスモチーフの出現に依存して4つのファミリーに分類された(LAGLIDADG、GIY−YIG、H−N−HおよびHis−Cysボックス)。後者の2つの群は、今では構造に基づいて単一の群、ββα−Me群に分類されている(27)。これとは対照的に細菌性II型制限酵素のメンバーは、更に多岐にわたる。LAGLIDADGタンパク質ファミリーに属するエンドヌクレアーゼは、最も一般的な代表である。このクラスの主な特徴は、タンパク質において1または2回出現するドデカペプチドモチーフである。
【0013】
1つのモチーフを有するエンドヌクレアーゼは、ホモ2量体としてその基質と結合し、一方、2つのLAGLIDADGモチーフを有する酵素は、単量体として作用する傾向がある。例外は、パン酵母(S. cerevisiae)のcox1遺伝子のイントロンaI4αによりコードされるI−SceII、および同一生物のイントロンcox1I5αからのI−SceIVである。I−SceIIは、2つのドデカペプチドモチーフを有するが、ホモ2量体として活性である(19)。I−SceIVは、ヘテロ2量体として作用する(28)。I−SceI(29)またはI−DmoI(18)のような2ドメインの酵素は、遺伝子複製事象によりI−CreI(17)およびI−CeuI(30)のような1ドメインのホーミングエンドヌクレアーゼから生じると推測された。(3、4、21、23、31)。
【0014】
2つのLAGLIDADGモチーフを有するいくつかのタンパク質は、そのイントロンRNAのスプライシングに関与している。それらは、マチュラーゼと称される(32、33)。マチュラーゼは、コファクターとして作用し、そしてスプライシング事象のためのイントロンRNA構造の触媒性コアを安定化する(34、35)。いくつかのドデカペプチドエンドヌクレアーゼもまた潜在性のマチュラーゼ活性を有し、これは、いくつかのアミノ酸の変異により顕示され得る(36〜38)。そのうちのわずかなものだけが、I−AniI(39、40)およびI−ScaI(41〜43)に関して報告されたように、双方の活性を同時に顕示する。
【0015】
分裂酵母(Schizosaccharomyces pombe)のミトコンドリアcox1遺伝子では、4つまでのグループIイントロンが見出された(44)。そのうちの2つは、ドデカペプチドファミリーのタンパク質をコードするオープン・リーディグ・フレームを含有する(45、46)。
【0016】
要約すると、ヒト疾患および遺伝的障害のトランスジェニック動物モデルを提供するための試薬および方法に関する技術的な必要性が存在する。試薬は、特に高度な特異性を有する制限酵素、その対応する制限部位およびこの酵素をコードする遺伝子に基づくことができる。とりわけ天然遺伝子またはそのフラグメントを、疾患を緩解できる、または細胞もしくは動物を修飾することにより、かかる疾患の研究のための分子手段を提供できる別の遺伝子または遺伝子フラグメントと置換するための試薬および方法に関する必要性が存在する。
【0017】
発明の概要
したがって本発明は、技術的にこれらの必要性を満たすことを補助する。とりわけ本発明は、酵素I−SpomIをコードする単離されたDNAに関する。
【0018】
本発明の1つの実施態様では、酵素I−SpomIをコードする本発明のDNA配列に機能的に連結されたプロモーターを含むDNA配列が提供される。
【0019】
本発明は、更に酵素I−SpomIをコードする本発明のDNA配列および本明細書にて記載される別のDNA配列に相補的な単離されたRNAに関する。
【0020】
本発明の別の実施態様では、ベクターが提供される。ベクターは、酵素I−SpomIをコードする本発明のDNA配列を含有するプラスミド、バクテリオファージ、コスミド、またはウイルス、特にレトロウイルスベクターでよい。
【0021】
本発明の別の実施態様では、ベクターは、I−SpomI制限部位をコードする本発明のDNA配列を含有するプラスミド、バクテリオファージ、コスミド、またはウイルス、特にレトロウイルスベクターでよい。
【0022】
本発明は、またI−SpomI制限部位を含有する組換え染色体および細胞を作製するための方法にも関する。1つの実施態様では、I−SpomI制限部位は、組換えにより導入される。
【0023】
本発明は、更にI−SpomI酵素を発現する組換え染色体および細胞を作製するための方法に関する。1つの実施態様では、I−SpomI酵素をコードする配列は、組換えにより導入される。
【0024】
本発明は、更にI−SpomI部位または酵素I−SpomIをコードするDNA配列を含む組換え染色体にも関する。組換え染色体は、原核または真核生物に由来してよい。1つの実施態様では、本発明は、組換え哺乳動物、酵母、菌類、細菌、植物、線虫または昆虫染色体に関する。好ましい態様では、本発明は、組換えショウジョウバエ、線虫(C.elegans)、植物またはマウス染色体に関する。
【0025】
加えて、本発明は、本発明のベクターで形質転換された原核細胞、例えば大腸菌(E.coli)または真核細胞に関する。1つの実施態様では、本発明は、本発明のベクターで形質転換された哺乳動物、酵母、菌類、細菌、植物、線虫または昆虫細胞に関する。好ましい実施態様では、本発明は、本発明のベクターで形質転換された組換えショウジョウバエ、線虫(C.elegans)、植物またはマウス細胞に関する。別の実施態様では、細胞は、幹細胞、好ましくは哺乳動物幹細胞および最も好ましくはマウス幹細胞である。本発明は、更にこれらの細胞に由来する細胞株に関する。
【0026】
また、本発明は、酵素I−SpomIをコードするDNA配列を含有するトランスジェニック生物、およびトランスジェニック生物の細胞から培養された細胞株にも関する。
【0027】
加えて、本発明は、酵素I−SpomIに関する少なくとも1つの制限部位が生物の染色体に挿入されているトランスジェニック生物に関する。
【0028】
更に、本発明は、酵素I−SpomIを用いる真核生物ゲノムを遺伝子マッピングする方法に関する。
【0029】
本発明は、また酵素I−SpomIを用いる生物におけるインビボ部位指定組換えの方法にも関する。
【0030】
発明の詳細な説明
分裂酵母(Schizosaccharomyces pombe)のミトコンドリアcox1遺伝子における第1のグループIイントロンの遺伝子産物であるI−SpomIは、エンドヌクレアーゼ活性を有している。これは、イントロンを含まないcox1アレル内のイントロン挿入近くのフランキング配列を認識する。N末端で大幅に修飾したI−SpomIは、元来のリーディグ・フレームの遺伝子産物に比較して切断能力に影響がなく、またエンドヌクレアーゼの配列特異性にも影響がなかった。ホーミングエンドヌクレアーゼの開始コドンの位置は、可変性であり、そして宿主遺伝子の種々の部分に位置することができる。代表的なのは先行するエクソン配列を有するフレームにORFを有するもの、また別にイントロン配列に限定されるリーディグ・フレームを有するもの、またはイントロン内にイントロン性ORFを有するものさえもある。もう1つの基本的な問題は、エンドヌクレアーゼが活性化するために修飾またはプロセシングされる必要があるかどうかである。I−SceII(19)およびI−SceIII(55)に関しては、これらが前駆体タンパク質として合成され、そしてプロセシングされると報告されている。
【0031】
本発明者らは、分裂酵母(S.pombe)のcox1I1bのループ8イントロンの2次構造の配列が、インビトロで特異的エンドヌクレアーゼとして作用するタンパク質をコードすることを決定した。I−SpomIの配列は、ジーンバンク受入番号NC 001326 X00886 X02819 X15738(遺伝子=「cox1」;イントロンORF)またはX54421 X00886 X02819 X15738で見出すことができる。
【0032】
I−SpomIのインビトロ活性に関する最適条件は、I−SceI(29)にとって好ましい条件に非常に類似している。9.0と10.0の間の高pH値の嗜好は、むしろ異常である。例えば、I−ScaI(43)は、pH8.0〜9.0で、およびI−CreI(51)は7.0〜9.0の間で最高の活性を示す。他のLAGLIDADGエンドヌクレアーゼと共有する特徴的な様相は、2価カチオンMg2+への依存性であるが、切断活性に及ぼすMn2+またはZn2+のような他のコファクターの影響は調査されなかった。
【0033】
I−SpomIの切断パターンは、異なる分野のLAGLIDADG型の多くの他のエンドヌクレアーゼ、例えばI−AniI(39)、I−ScaI(43)、I−SceI(16)、II(37)およびIII(56)、I−CeuI(30)、I−ChuI(57)、I−CreI(17)、I−CpaII(58)、I−DmoI(20)、I−PorI(59)、PI−SceI(60)、PI−ThyI(61)、PI−TliI(62)およびPI−TfuII(63)、ならびにパン酵母(S.cerevisiae)のHOエンドヌクレアーゼ(64)に関して記載されているように、4ヌクレオチドの長さの典型的な3′オーバーハングを示す。I−SpomIは、イントロン挿入部位から2ヌクレオチド離れているセンス鎖およびアンチセンス鎖を切断する。I−SpomIの認識部位は、20ヌクレオチドの長さである。部位の中央の4つの塩基は、酵素のエンドヌクレオチド鎖切断の位置とほぼ一致し、I−CreIで報告されている(65)のと同様に基質認識を必要としない。これらは、各側の5つの必須ヌクレオチドによりフランキングされている。必要とされる配列の各々の縁には別の2つの塩基が存在し、これを変化させることはできない(図5A)。したがって、−11と+9位間の14個の単一変異は切断に影響する。イントロンコード化ホーミングエンドスクレアーゼと同様に、I−SpomIは、長いDNA配列を認識するが、タンパク質は、細菌性制限エンドヌクレアーゼと比較するとむしろ小型である。細菌性II型制限酵素は、DNAを取り込み、そして主溝の水素結合ドナーをほとんど飽和し、そしてそれに加えてしばしば認識部位の副溝に接触する(26)。イントロンコード化ホーミングエンドヌクレアーゼのプロファイルは、β−シートに基づいて単調であるので、さらなる鎖を用いることなくDNAの主溝上の認識部位の特異的塩基と相互作用し、亜飽和接触を行う(4)。認識パターンにしたがって、I−SpomIに関して本発明者らは、酵素の触媒ドメインがDNAの副溝に面するが、一方2つの認識ドメインは隣の主溝に面する一方の側からの基質DNAへの接触を仮説として取り上げる。これは、また必須塩基によりフランキングされた4つの中央の塩基における認識の独立性をも説明する。I−SpomI認識部位内の必須および非必須ヌクレオチドの順序は、対称的であるが、I−CreI(66)のようなホモ2量体LAGLIDADG酵素に関して存在するようなパリンドローム配列はない。一般に、単量体ドデカペプチドエンドヌクレアーゼのエンドヌクレアーゼドメインは、ホモ2量体酵素と比較して顕著な非対称性を有している。これが認識部位に関してゆるやかな対称性要件の原因となり、そして基質の拡張された範囲の獲得を可能にする(3、67)。ドデカペプチドホーミングエンドヌクレアーゼの認識および切断配列は、非常に多岐にわたっている。
【0034】
131LAGLIDADGタンパク質(10)のアラインメントによれば、I−AniI(39)は、I−SpomIに最もよく相対するが、切断部位も認識部位もI−SpomIには類似していない。
【0035】
ホーミングエンドヌクレアーゼORFsは、これらの露出されたループの侵入の後、グループIイントロンのRNA2次構造の異なる末梢ループに生じる(2、68−70)。したがって、イントロンおよびイントロンORFは、独立した遺伝子エレメントであると考えられる(71)。GIY−YIG酵素I−TevIIに対しての、ファージT4sunY遺伝子のエクソン接合部配列およびループL9.1のORFをフランキングするイントロン配列のアラインメントは、I−TevII認識配列にわたる高度な類似性を示した(72)。この知見および触媒コア配列をコードするDNA上のイントロン可動性の独立性は、トランスでエンドヌクレアーゼに適用する場合(73)、イントロン侵入の仮説を支持する。ドデカペプチドホーミングエンドヌクレアーゼのORFsは、ループL1(I−SceIII(56))、L2(I−SceIV(28)、I−SceVII(74)、I−ScaI(41))、L6(I−CeuI(30)、I−CreI(75))およびL8(I−AniI(39、74)、I−DdiI(71)(76)、I−SceI(16、74)、I−SceII(19、74))に挿入される(図6)。
【0036】
最近精製されたI−ScaIは、エンドヌクレアーゼおよびマチュラーゼの双方の活性を有していると報告された最初のタンパク質であったが、一方パン酵母(S.cerevisiae)のcyt b遺伝子のイントロンbi2におけるマチュラーゼ相同体が、エンドヌクレアーゼ活性を得るためには2つの非隣接アミノ酸の置換に依存する(38、41、42)。双方の活性を含有する別のタンパク質は、エメリセラ・ニデュランス(Emericella nidulans)(39)のミトコンドリア性グループIイントロンIによりコードされるI−AniIである。双方の活性を含有するタンパク質は、この進化の中間体であることを意味する。
【0037】
異なる界からのLAGLIDADG酵素の複数の配列アラインメントに基づいて、以前は、異なる遺伝子間および種々の宿主間のエンドヌクレアーゼの交換は、非常に起こりにくいことが示されてきた(10)。代わりに、これらの可動性エレメントの獲得は何度も独立して起こり、そして共通の始祖において一度だけとは限らない。元来のイントロンは、自己スプライシングするので、エンドヌクレアーゼORFは、本質的なリボザイム機能を維持するためにイントロン2次構造の末梢ループに挿入されなければならない(図6)。したがってこの侵入の位置は、宿主生物または遺伝子に依存するのではなく、各々のイントロンの2次構造に依存する。それにもかかわらず、ORFのイントロンへの挿入により自己スプライシングの損傷が引き起こされることがあり、この方法を改善するためにマチュラーゼタンパク質の必要性が生じる。分裂酵母(S.pombe)のcox1の4つのグループIイントロンで、インビトロで自己触媒的にスプライシングするものはないことが報告されているが、パン酵母(S.cerevisiae)rnlイントロンの自己触媒的スプライシングが観察されており(44)、これは恐らくインビボでのスプライシング過程におけるマチュラーゼタンパク質の関与のためであろう。この研究では、本発明者らは、分裂酵母(S.pombe)のイントロンcox1I1bにおける2つのLAGLIDADGモチーフを含む酵素コアがI−SpomIからエンドヌクレアーゼ活性を得るのに十分であることを示し、始祖ORFが、ループL8の挿入部位に依然存在するが、全遺伝子産物の開始コドンにより調節されると結論づけた。
【0038】
I−SpomI遺伝子配列
本発明は、酵素I−SpomIをコードする単離されたDNA配列に関する。酵素I−SpomIは、エンドヌクレアーゼ、とりわけDNAエンドヌクレアーゼである。
【0039】
分裂酵母(Schizosaccharomyces pombe)のミトコンドリアゲノムのcox1遺伝子の第1のグループIイントロン(cox1I1b)は、2つのコンセンサスモチーフを有するLAGLIDADGタンパク質ファミリーの典型的なメンバーであるポリペプチドをコードするオープン・リーディグ・フレームを含有する。
【0040】
大腸菌(E.coli)において人工的に発現されるこのタンパク質のエンドヌクレアーゼ活性の生化学的な特徴づけが行われ、そしてイントロンRNA2次構造のループ8に位置するcox1I1b ORFの304コドンの翻訳産物は、インビトロで特異的なエンドヌクレアーゼ活性を呈する。ヌクレオチド鎖切断の最適なインビトロ条件が特徴づけられ、そしてかかる条件を用いてタンパク質の切断および認識部位を決定した。他のLAGLIDADGタンパク質からの知見に合致して、I−SpomIは、イントロン挿入部位の近くで4ヌクレオチドの3′オーバーハングを有する2本鎖切断を生じ、そして20ヌクレオチドの新規な配列を認識する。
【0041】
酵素I−SpomIをコードするDNA配列は、精製された形態であることが好ましい。加えて、本発明のDNA配列は、外来性のタンパク質および脂質、ならびに外来性の微生物、例えば細菌およびウイルスを含まないことが好ましい。I−SpomIをコードする本質的に精製されそして単離されたDNA配列は、とりわけ発現ベクターを調製するのに有用である。
【0042】
従来の化学合成技術を用いて、ヌクレオシド単位間の3′――――>5′リン酸結合の形成により本発明の遺伝子を調製できる。例えば、周知のリン酸ジエステル、リン酸トリエステル、および亜リン酸トリエステル技術、ならびに公知のこれらの研究法を修飾した方法を用いることができる。ホスホロアミダイト研究法に基づくもののような自動合成機を用いてデオキシリボヌクレオチドを調製することができる。オリゴおよびポリリボヌクレオチドもまた、従来の技術を用いてRNAポリメラーゼおよびリガーゼの助けを借りて入手することができる。
【0043】
本発明は、勿論、本発明の配列と同一の特性を実質的に呈する本発明のDNA配列の変種を含む。これは、DNA配列が本明細書にて開示する配列と同一である必要はないことを意味している。例えば、1つ以上のコドンが同一アミノ酸をコードできる公知の遺伝子コードの縮重のために、DNA配列は、図7で示されるものから変化でき、そして依然として図7でコードされるのと同一のアミノ酸配列を有するタンパク質をコードする。変化は、酵素I−SpomIの切断特性を有する酵素をコードするようなDNA配列の特性を実質的に損なわない1つまたはそれ以上のヌクレオチドに関与する単一もしくは複数の塩基置換、欠失、または挿入もしくは局所変異に起因し得る。
【0044】
本発明は、酵素的に活性なI−SpomIをコードできる、精製された形態のDNA配列のフラグメントを包含することを意図する。実施例のように活性を決定することができる。したがって、「I−SpomI酵素」なる用語は、I−SpomI制限部位を切断する能力を維持している元来のタンパク質の変種およびフラグメントを含むことを意味する。
【0045】
本発明は、単離および精製された、すなわち均質な、組換えおよび非組換え双方のI−SpomIポリペプチドを提供する。望ましい生物学的活性を保持する元来のI−SpomIタンパク質の変種および誘導体を、元来のI−SpomIポリペプチドをコードするヌクレオチド配列の変異により入手することができる。多くの従来の方法のいずれかにより元来のアミノ酸配列を変化させることができる。元来の配列のフラグメントへのライゲーションを可能にする制限部位によりフランキングされた変異配列を含有するオリゴヌクレオチドを合成することにより、特定の座で変異を導入することができる。ライゲーションの後、得られた再構築された配列は、望ましいアミノ酸挿入、置換、または欠失を有するアナログをコードする。
【0046】
または、オリゴヌクレオチドを指定する部位特異的変異誘発手段を用いて、変化した遺伝子を提供することができる、この場合予め決定されたコドンを置換、欠失または挿入により変化させることができる。前記した変化させる方法の実例は、Walderら(Gene 42: 133(1986)); Bauerら(Gene 37: 73(1985)); Craik(BioTechniques,January 12〜19(1985)); Smithら(Genetic Engineering: Principles and Methods,Plenum Press(1981)); Kunkel(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82: 488(1985)); Kunkelら(Methods in Enzymol.154: 367(1987)); Sambrookら(Molecular Cloning: A Laboratory Manual、第3版、Cold Spring Harbor Laboratory Press(2001)、および米国特許第4,518,584号および第4,737,462号により開示されており、そのすべてを参照として本明細書に組み入れられる。
【0047】
酵素I−SpomIをコードする本発明のDNA配列を、遺伝子のすべてまたは特定の領域を増幅するのに有用な、周知のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)で増幅することができる。例えばS.Kwokら、J.Virol.,61: 1690〜1694(1987);米国特許第4,683,202号;および米国特許第4,683,195号を参照されたい。より具体的には、増幅すべきDNAのプラスおよびマイナス鎖に相補的である、10〜300塩基対離れて位置する公知の配列のDNAプライマーペアをオリゴヌクレオチドの合成のための周知の技術により調製することができる。プライマーがDNAにアニーリングするとき、各プライマーの1つの末端を伸長させ、そして修飾して制限エンドヌクレアーゼ部位を作ることができる。PCR反応混合物は、DNA、DNAプライマーペア、4つのデオキシリボヌクレオシド三リン酸、MgCl2、DNAポリメラーゼ、および従来のバッファーを含有できる。DNAを多くのサイクルで増幅することができる。一般に、各サイクルが短時間の高温でのDNAの変性、反応混合物の冷却、およびDNAポリメラーゼを用いる重合からなる、多くのサイクルを用いることにより検出の感度を上げることができる。増幅された配列を当業者に公知の技術を用いて検出することができる。
【0048】
2.本発明のI−SpomI遺伝子を含有するヌクレオチドプローブ
酵素I−SpomIをコードする本発明のDNA配列を、生物学的材料におけるヌクレオチド配列を検出するためのプローブとして用いることもできる。プローブを原子または無機ラジカルで、最も一般的には放射性核種を用いて、または分子生物学的実験で一般に用いられるいずれかの非放射性材料で標識することができる。放射性標識には32P、3H、14C等がある。適切なシグナルを提供し、そして十分な半減期を有するいずれかの放射性標識を用いることができる。他の標識には、標識抗体に対する特異的結合メンバーとして提供され得るリガンド、蛍光物質、化学発光物質、酵素、標識リガンドの特異的結合対メンバーとして機能できる抗体などが含まれる。標識の選択は、ハイブリダイゼーションの速度およびDNAまたはRNAに対するプローブの結合に及ぼす標識の影響により規定される。標識は、ハイブリダイゼーションに利用できるDNAまたはRNAの量を検出するのに十分な感度を提供することが必要であろう。
【0049】
本発明のヌクレオチド配列を遺伝子へのハイブリダイズするためのプローブとして用いる場合、プローブで試験されるヌクレオチド配列は、好ましくは水不溶性固体、多孔性支持体、例えばナイロン膜に添加される。本発明の標識ポリヌクレオチドおよび従来のハイブリダイゼーション試薬を用いてハイブリダイゼーションを実施できる。特別なハイブリダイゼーション技術は、本発明には必要でない。
【0050】
ハイブリダイゼーション溶液に存在する標識プローブの量は、標識の特性、支持体に合理的に結合できる標識プローブの量、およびハイブリダイゼーションのストリンジェンシーに依存して広範に変化する。一般に、実質的に化学量論よりも過剰なプローブを用いて、固定されたDNAまたはRNAへのプローブ結合率を高める。
【0051】
様々な程度のストリンジェンシーのハイブリダイゼーションを用いることができる。条件が厳密になるほど、2本鎖形成のためのプローブとポリヌクレオチドの間のハイブリダイゼーションに必要である相補性が大きくなる。温度、プローブ濃度、プローブの長さ、イオン強度、時間等により厳密性を調節できる。便宜的にはハイブリダイゼーションの厳密性は、反応溶液の極性の変化により変化する。用いる温度を経験的に決定できるか、またはこの目的に開発された周知の式から決定できる。
【0052】
好ましいハイブリダイゼーション条件には、標準的なハイブリダイゼーション条件、例えばChurchおよびGilbert、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81(7): 1991〜1995(1984年4月)、およびChurchおよびGilbert、Prog.Clin.Biol.Res.177(2): 17〜21(1985)に記載された条件などが挙げられ、双方共に参照として具体的に本明細書に組み入れられる。
【0053】
3.I−SpomIをコードするヌクレオチド配列を含有するヌクレオチド配列
本発明は、また酵素I−SpomIまたはI−SpomI制限部位をコードする本発明のDNA配列に関するもので、この場合ヌクレオチド配列は、他の核酸に連結されている。核酸はいずれかの供給源、例えばプラスミド、クローン化DNAもしくはRNA、または原核および真核生物を含むいずれかの供給源に由来する天然DNAもしくはRNAから入手することができる。核酸は、I−SpomI酵素をコードする核酸が導入されている組換え染色体でよい。同様に、核酸は、I−SpomI制限部位が導入されている組換え染色体でよい。Sambrookら、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory、ニューヨーク(2001)に記載される技術を含む種々の技術により、生物学的材料、例えば微生物の培養物、生物学的液体または組織からDNAまたはRNAを抽出することができる。一般に細菌、酵母、ウイルス、または高等生物、例えば植物または動物から核酸を入手する。核酸は、更に複雑な混合物のフラクション、例えばヒトの全DNAに含まれる遺伝子の一部、または特定の微生物の核酸配列の一部でよい。核酸は、巨大分子のフラクションでよいか、または核酸は、連続した遺伝子もしくは遺伝子の集合体からなってもよい。DNAは1本鎖または2本鎖形態でよい。フラグメントが1本鎖形態である場合、従来の技術にしたがって、DNAポリメラーゼを用いてこれを2本鎖形態に変換することができる。
【0054】
本発明のDNA配列を構造遺伝子に連結することができる。本明細書で用いる「構造遺伝子」なる用語は、その鋳型またはメッセンジャーmRNAにより具体的なタンパク質またはポリペプチドに特徴的なアミノ酸の配列をコードするDNA配列を意味する。本発明のヌクレオチド配列は、発現調節配列、すなわち遺伝子に機能的に連結されている場合、遺伝子の発現を調節および制御するDNA配列と共に機能できる。
【0055】
4.本発明のヌクレオチド配列を含有するベクター
本発明は、また酵素I−SpomIまたはI−SpomI制限部位をコードする本発明のDNA配列を含有するクローニングおよび発現ベクターにも関する。
【0056】
更にとりわけ、酵素をコードするDNA配列を、配列をクローニングするためのビークルにライゲートすることができる。遺伝子クローニングに関与する主要な工程は、原核生物または真核生物からの目的の遺伝子を含有するDNAを分離する、特定の部位で、得られたDNAフラグメントおよびクローニングビークルからのDNAを切断する、2つのDNAフラグメントを一緒に混合する、そしてフラグメントをライゲートして組換えDNA分子を得るための手段を含む。次いで組換え分子を宿主細胞に移すことができ、そして細胞を複製させて元来のDNA配列のクローンを含有する同一の細胞を生成させることが可能になる。
【0057】
本発明で用いるビークルは、本発明のヌクレオチド配列を宿主細胞に輸送することができるいずれかの1本鎖または2本鎖DNA分子でよい。ビークルが細胞内で複製することもできる場合、これは少なくとも1つの、宿主細胞内の複製起点として作用できるDNA配列を含有しなければならない。加えて、ビークルは、本発明の遺伝子をコードするDNA配列を挿入するための1つまたはそれ以上の部位を含有しなければならない。これらの部位は、通常付着末端を形成できる制限酵素部位に相当し、これは、ビークルにライゲートされるプロモーター配列における付着末端と相補的である。一般に、これらの特性を有するプラスミド、バクテリオファージ、コスミドビークル、細菌性人工染色体(BAC)、または酵母性人工染色体(YAC)を用いて本発明を実施できる。
【0058】
本発明のヌクレオチド配列は、ビークルの部位のいずれかの組み合わせに適合する付着末端を有することができる。または、配列は、ビークルのクローニング部位における対応する平滑末端にライゲートすることができる1つまたはそれ以上の平滑末端を有することができる。望む場合、例えば酵素Bal 31またはλ exoIIIを用いて連続的なエクソヌクレアーゼ欠失により、ライゲートされるヌクレオチド配列を更に加工することができる。本発明のヌクレオチド配列が付着末端の望ましい組み合わせを含有しない事象においては、リンカー、アダプター、またはホモ重合体テーリング(homopolymer tailing)を加えることにより配列を修飾することができる。
【0059】
本発明のヌクレオチド配列をクローニングするために用いられるビークル、例えばプラスミドは、宿主細胞により示される有用な特性に寄与する1つまたはそれ以上の遺伝子、例えば選択マーカーを担持することが好ましい。好ましい試験計画では、2つの異なる薬物に抵抗するための遺伝子を有するビークルを選択する。例えば抗生物質に関する遺伝子へのDNA配列の挿入により遺伝子を不活性化し、薬物抵抗性を破壊する。細胞が組換え体で形質転換されている場合、第2の薬物抵抗性遺伝子は影響を受けず、第2の薬物に対する抵抗性および第1の薬物に対する感受性により目的の遺伝子を含有するコロニーを選択することができる。好ましい抗生物質マーカーは、宿主細胞にクロラムフェニコール、アンピシリンまたはテトラサイクリン抵抗性を付与する遺伝子である。
【0060】
種々の制限酵素を用いてビークルを切断することができる。制限酵素の同一性は、一般に、ライゲートされるDNA配列の末端およびビークルの制限部位の同一性に依存する。制限酵素は、ビークルの制限部位に合致し、これが今度はライゲートされる核酸フラグメントの末端に合致する。
【0061】
ライゲーション反応を周知の技術および従来の試薬を用いて設定できる。DNA2本鎖の隣接する5′−リン酸および遊離の3′−ヒドロキシ基間のリン酸ジエステル結合の形成を触媒するDNAリガーゼを用いてライゲーションを実施する。DNAリガーゼは、種々の微生物に由来してよい。好ましいDNAリガーゼは、大腸菌(E.coli)およびバクテリオファージT4に由来する酵素である。T4 DNAリガーゼは、DNAフラグメントを平滑または粘着末端、例えば制限酵素消化により作製できる末端とライゲートすることができる。大腸菌(E.coli)DNAリガーゼを用いて、付着末端を含有する2本鎖DNA分子の末端の間のリン酸ジエステル結合の形成を触媒することができる。
【0062】
原核または真核細胞においてクローニングを実施できる。クローニングビークルを複製するための宿主は、勿論、ビークルと適合し、そしてビークルがそこで複製できるものである。プラスミドを用いる場合、プラスミドは、細菌もしくはその他の生物に由来してよいか、またはプラスミドを合成により調製することができる。プラスミドは、宿主細胞染色体とは独立して複製することができるか、または組み込みプラスミドを用いることができる。プラスミドは、宿主細胞のDNA複製酵素を利用して複製することができるか、またはプラスミドは、プラスミド複製に必要な酵素をコードする遺伝子を担持することができる。多くの異なるプラスミドを本発明の実施に用いることができる。
【0063】
酵素I−SpomIをコードする本発明のDNA配列をビークルにライゲートさせて発現ベクターを形成することもできる。この場合に用いるビークルは、適当な宿主細胞のプロモーターに機能的に連結された遺伝子を発現することができるものである。細菌、例えば大腸菌(E.coli)、酵母、昆虫、菌類、線虫、植物または哺乳動物細胞の遺伝子を発現するのに用いられることが知られているビークルを用いるのが好ましい。
【0064】
ビークルを修飾するのに当業者に公知のいずれか代替の技術を用いることができる。
【0065】
発現系
本発明は、また組換えクローニングおよびDNAを含有する発現ベクター、ならびに組換えベクターを含有する宿主細胞をも提供する。実験室手引書、例えばCurrent Protocols in Molecular Biology(Ausubelら、Wiley(1998))に手引きを見出すことができる。
【0066】
DNAを含む発現ベクターを用いてI−SpomI酵素を調製することができる。I−SpomI酵素を生成する方法には、酵素の発現を促進する条件下で、I−SpomI酵素をコードする組換え発現ベクターで形質転換された宿主細胞を培養することと、次いで培養物から発現された酵素を収集することとが含まれる。発現された酵素を精製するための手順が、用いられる宿主細胞のタイプのような因子により、およびペプチドが膜結合しているか、または宿主細胞から分泌される可溶性形態であるかどうかにより変化することは当業者に理解されよう。
【0067】
いずれか適当な発現系を用いることができる。ベクターは、例えば哺乳動物、微生物、ウイルスまたは昆虫遺伝子に由来する、適当な転写または翻訳制御ヌクレオチド配列に機能的に連結された本発明のポリペプチドまたはフラグメントをコードするDNAを含む。制御配列の実例としては、転写プロモーター、オペレーターまたはエンハンサー、mRNAリボソーム結合部位、ならびに転写および翻訳開始および終止を調節する適当な配列などが挙げられる。制御配列が機能的にDNA配列に関係している場合、ヌクレオチド配列は、動作可能なように連結されている。したがって、プロモーターヌクレオチド配列が、DNA配列の転写を調節する場合、プロモーターヌクレオチド配列は、DNA配列に動作可能なように連結されている。望ましい宿主細胞において複製する能力を付与する複製起点、および形質転換体が同定される選択遺伝子を一般に発現ベクターに組み込む。
【0068】
加えて、ペプチド、例えば(元来のまたは異種性の)適当なシグナルペプチドをコードする配列を発現ベクターに組み込むことができる。シグナルペプチド(分泌リーダー)に関するDNA配列をフレーム内で本発明の核酸配列に融合して、最初にDNAを転写し、そしてmRNAを、シグナルペプチドを含む融合タンパク質に翻訳することができる。目的の宿主細胞において機能的であるシグナルペプチドは、ポリペプチドの細胞外分泌を促進する。細胞からのポリペプチドの分泌時にポリペプチドペプチドからシグナルペプチドが切断される。
【0069】
シグナルペプチドが切断される(複数の)位置がコンピュータープログラムにより推定されるものとは異なることがあり、そして組換えポリペプチドを発現するのに用いられる宿主細胞のタイプのような因子にしたがって変化し得ることもまた当業者に理解されよう。タンパク質調製物は1つ以上の部位でのシグナルペプチドの切断により得られる、異なるN末端アミノ酸を有するタンパク質分子の混合物を含んでよい。
【0070】
ポリペプチドの発現のための適当な宿主細胞には、原核生物、酵母または高等真核生物細胞などが挙げられる。哺乳動物、線虫、植物、細菌、菌類、酵母または昆虫細胞が宿主細胞として用いられるのが一般的に好ましい。細菌、菌類、酵母および哺乳動物宿主細胞で用いるための適当なクローニングおよび発現ベクターは、例えばPouwelsら、Cloning Vectors: A Laboratory Manual,Elsevier、ニューヨーク(1985)に記載されている。細胞を含まない翻訳系を用いて、本明細書に開示されるDNA構築物に由来するRNAを用いてポリペプチドを生成することもできる。
【0071】
原核生物系
原核生物にはグラム陰性またはグラム陽性生物などが挙げられる。形質転換に適した原核生物宿主細胞には、例えば大腸菌(E.coli)、枯草菌(Bacillus subtilis)、ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)およびシュードモナス属(Pseudomonas)、ストレプトマイセス属(Streptomyces)およびブドウ球菌(Straphylococcus)属内のその他の様々な種などが挙げられる。原核生物宿主細胞、例えば大腸菌(E.coli)では、原核生物宿主細胞における組換えポリペプチドの発現を促進するために、ポリペプチドはN末端メチオニン残基を含んでよい。N末端Metを、発現された組換えポリペプチドから切断することができる。
【0072】
原核生物宿主細胞で使用するための発現ベクターは、一般に1つまたはそれ以上の表現型選択マーカー遺伝子を含む。表現型選択マーカー遺伝子は例えば抗生物質抵抗性を付与するか、または独立栄養性の要件を提供するタンパク質をコードする遺伝子である。原核生物宿主細胞のための有用な発現ベクターの実例としては、市販により入手可能なプラスミド、例えばクローニングベクターpBR322(ATCC37017)またはpBR322から誘導されるベクター、例えばpuCグループからのベクターなどが挙げられる。pBR322は、アンピシリンおよびテトラサイクリン抵抗性に関する遺伝子を含有し、したがって形質転換された細胞を同定するための単純な手段を提供する。適当なプロモーターおよびDNA配列を、pBR322ベクターに挿入する。他の市販により入手可能なベクターには、例えばpKK223〜3(Pharmacia Fine Chemicals、ウプサラ、スゥエーデン)およびpGEM1(Promega Biotec、マジソン、ウィスコンシン州、米国)などが挙げられる。
【0073】
組換え原核生物宿主細胞発現ベクターに通常用いられるプロモーター配列には、β−ラクタマーゼ(ペニシリナーゼ)、ラクトースプロモーター系(Changら、Nature 275: 615(1978); およびGoeddelら、Nature 281: 544(1979))、トリプトファン(trp)プロモーター系(Goeddelら、Nucl.Acids.Res.8: 4057(1980);およびEP−A−36776)、およびtacプロモーター(Maniatis、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory、412頁(1982))などが挙げられる。特に有用な原核生物宿主細胞発現系は、ファージλPLプロモーターおよびcI857ts熱不安定性レプレッサー配列を用いる。λPLプロモーターの誘導体を組み込む、American Type Culture Collectionから入手可能なプラスミドベクターには、プラスミドpHUB2(大腸菌(E.coli)JMB9株に常在する、ATCC37092)およびpPLc28(大腸菌(E.coli)RR1に常在する、ATCC53082)などが挙げられる。
【0074】
酵母系
または、酵母宿主細胞において、好ましくは酵母菌属(例えばパン酵母(S.cerevisiae))からポリペプチドを発現させることができる。酵母の他の属、例えばピチア(pichia)またはクルイベロマイセス(Kluyveromyces)を用いることもできる。酵母ベクターは、しばしば2μ酵母プラスミドからの複製配列の起点、自己複製配列(ARS)、プロモーター領域、ポリアデニル化のための配列、転写終止のための配列、および選択マーカー遺伝子を含有する。酵母ベクターのための適当なプロモーター配列には、とりわけガラクトース制御プロモーター、例えばGRAP1配列(Molecular Genetics of Yeast,John R.Johnston、Oxford University Press(1994))、メタロチオネインのためのプロモーター、3−ホスホグリセレートキナーゼ(Hitzemanら、J.Biol.Chem.255: 2073(1980))または他の糖分解酵素(Hessら、J.Adv.Enzyme Reg.7: 149(1968); およびHollandら、Biochem.17: 4900(1978))、例えばエノラーゼ、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ、ヘキソキナーゼ、ピルビン酸デカルボキシラーゼ、ホスホフルクトキナーゼ、グルコース−6−リン酸イソメラーゼ、3−ホスホグリセレートムターゼ、ピルビン酸キナーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、ホスホグルコースイソメラーゼおよびグルコキナーゼなどが挙げられる。他の酵母発現に適したベクターおよびプロモーターは、更にHitzeman、EPA−73,657に記載されている。別の代替は、Russellら(J.Biol.Chem.258: 2674(1982))およびBeierら(Nature 300: 724(1982))に記載されるグルコース抑制ADH2プロモーターである。酵母宿主細胞では、ベクターは、好ましくはシャトルベクターである。酵母および大腸菌(E.coli)の双方で複製可能なシャトルベクターを、大腸菌(E.coli)における選択および複製のためにpBR322からのDNA配列(Amp′遺伝子および複製起点)を前記した酵母ベクターに挿入することにより構築することができる。
【0075】
酵母α−因子リーダー配列を用いてポリペプチドの分泌を指示することができる。α−因子リーダー配列は、しばしばプロモーター配列および構造遺伝子配列の間に挿入される。例えばKurjanら、Cell 30: 933(1982)およびBitterら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81: 5330(1984)を参照されたい。酵母宿主からの組換えポリペプチドの分泌を促進するのに適した他のリーダー配列は、当業者に公知である。リーダー配列をその3′末端の近くで修飾して、1つまたはそれ以上の制限部位を含有させることができる。これはリーダー配列の構造遺伝子への融合を促進する。
【0076】
酵母形質転換プロトコルは当業者に公知である。かかるプロトコルの1つは、Hinnenら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 75: 1929(1978)に記載されている。Hinnenらのプロトコルは選択培地中でLeu+形質転換体を選択し、その場合、選択培地は、酵母窒素塩基 0.67%、グルコース 2%、アデニン 10mg/mlおよびウラシル 20mg/mlから成る。
【0077】
ADH2プロモーター配列を含有するベクターにより形質転換された酵母宿主細胞を、発現を誘導するために「富化」培地で増殖させることができる。富化培地の例としては、酵母抽出物 1%、ペプトン 1%およびグルコース 2%から成るものが挙げられる。グルコースが培地から枯渇した場合ADH2プロモーターの脱抑制が起こる。
【0078】
哺乳動物または昆虫系
哺乳動物または昆虫宿主細胞培養系用いて組換えポリペプチドを発現させることもできる。昆虫細胞内で異種性タンパク質を生成するためのバキュロウイルス系は、LuckowおよびSummers、Bio/Technology 6: 47(1988)により説明されている。哺乳動物起源の確立された細胞系を用いることもできる。適当な哺乳動物宿主細胞系の実例には、サル腎臓細胞のCOS−7系(ATCC CRL1651)(Gluzmanら、Cell 23: 175(1981))、L細胞、C127細胞、3T3細胞(ATCC CCL163)、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、HeLa細胞およびBHK(ATCC CRL10)細胞株、ならびにMcMahanら(EMBO J.10: 2821(1991))に記載されるアフリカミドリザル腎臓細胞株CV1(ATCC CCL70)から誘導されるCV1/EBNA細胞株などが挙げられる。
【0079】
哺乳動物細胞にDNAを導入するための確立された方法が記載されている(Kaufman,R.J.、Large Scale Mammalian Cell Culture 15〜69頁(1990))。市販により入手可能な試薬を用いる別のプロトコル、例えばリポフェクタミン脂質試薬(Gibco/BRL)またはリポフェクタミン・プラス脂質試薬を用いて細胞をトランスフェクトすることができる(Felgnerら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84: 7413〜7417(1987))。加えて、エレクトロポレーションを用いて従来の手段、例えばSambrookら(Molecular Cloning: A Laboratory Manual第3版、1〜3巻、Cold Spring Harbor Laboratory Press(2001))を用いて哺乳動物細胞をトランスフェクトすることができる。技術分野で公知の方法、例えば細胞毒性薬物に対する抵抗性を用いて安定した形質転換体の選択を実施することができる。Kaufmanら、Meth.in Enzymology 185: 487〜511(1990)は、いくつかの選択スキーム、例えばジヒドロ葉酸リダクターゼ(DHFR)抵抗性について記載している。DHFR選択に適した宿主株は、DHFRが欠損しているCHO DX−B11株でよい(UrlaubおよびChasin、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77: 4216〜4220(1980))。DHFR cDNAを発現するプラスミドをDX−B11株に導入することができ、プラスミドを含有する細胞のみが適当な選択培地中で増殖できる。発現ベクターに組み込むことができる選択マーカー他の実例としては、抗生物質に対して抵抗性を付与するcDNA、例えばG418およびヒグロマイシンBなどが挙げられる。これらの化合物に対する抵抗性に基づいてベクターを宿す細胞を選択することができる。
【0080】
哺乳動物宿主細胞発現ベクターの転写および翻訳調節配列をウイルスゲノムから切り出すことができる。通常用いられるプロモーター配列およびエンハンサー配列は、ポリオーマウイルス、アデノウイルス2、シミアンウイルス40(SV40)、およびヒトサイトメガロウイルスから誘導される。SV40ウイルスゲノムから誘導されるDNA配列、例えばSV40起源の初期および後期プロモーター、エンハンサー、スプライスおよびポリアデニル化部位を用いて哺乳動物宿主細胞において構造遺伝子配列の発現のための他の遺伝的エレメントを提供することができる。ウイルス性初期および後期プロモーターは、共にウイルスゲノムからフラグメントとして容易に得られるのでとりわけ有用であり、これは、ウイルス性の複製起点を含有することもできる(Fiersら、Nature 273: 113(1978); Kaufman、Meth.in Enzymology(1990))。複製部位のSV40ウイルス起点に位置する、HindIII部位からBglI部位に伸びるおよそ250bpの配列が含まれる場合、より小型のまたは大型のSV40フラグメントを用いることもできる。
【0081】
哺乳動物発現ベクターからの異種性遺伝子の発現を改善することが示されている別の調節配列には、CHO細胞から誘導される発現増強配列エレメント(EASE)(Morrisら、Animal Cell Technology、529〜534頁(1997);およびPCT出願WO97/25420)ならびにアデノウイルス2のトリパータイトリーダー(tripartite leader, TPL)およびVA遺伝子RNAs(Gingerasら、J.Biol.Chem.257: 13475〜13491(1982))のようなエレメントなどがある。ウイルス起源の配列内リボソーム進入部位(IRES)配列によりジシストロンのmRNAが効率的に翻訳されるようになる(OhおよびSarnow、Current Opinion in Genetics and Development 3: 295〜300(1993); Rameshら、Nucleic Acids Research 24: 2697〜2700(1996))。選択マーカーのための遺伝子(例えばDHFR)が続く、ジシストロンのmRNAの一部としての異種性cDNAの発現が、宿主のトランスフェクション能力および異種性cDNAの発現を改善することが示されている(Kaufman、Meth.in Enzymology(1990))。ジシストロンのmRNAを用いる発現ベクターの実例には、Mosserら、Biotechnique 22: 150〜161(1997)に記載されるpTR-DC/GFP、およびMorrisら、Animal Cell Technology 529〜534頁(1997)に記載されるp2A5Iである。
【0082】
有用な高発現ベクター、pCAVNOTは、Mosleyら、Cell 59: 335〜348(1989)に記載されている。哺乳動物宿主細胞において使用される他の発現ベクターを、例えばOkayamaおよびBerg(Mol.Cell.Biol.3: 280(1983))ならびにSambrookら(Molecular Cloning: A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory、ニューヨーク(2001))に開示されるように構築することができる。C127ネズミ乳腺上皮細胞における哺乳動物cDNAの安定した高レベル発現のための有用な系、を実質的にCosmanら(Mol.Immunol.23: 935(1986))に記載されるように構築することができる。別の有用な哺乳動物発現ベクターは、EP−A−0367566およびWO91/18982に記載されており、これは参照として本明細書に組み入れられる。
【0083】
別の有用な発現ベクター、pFLAG(登録商標)およびpDC311を使用することもできる。FLAG(登録商標)技術は、pFLAG(登録商標)発現ベクターにより発現された組換えタンパク質のN末端への低分子量(1kD)、親水性FLAG(登録商標)マーカーペプチドの融合を中心としている。pDC311は、CHO細胞におけるタンパク質の発現に用いられる別の特殊なベクターである。pDC311は、目的の遺伝子およびDHFR翻訳のための配列内リボソーム結合部位、発現増強配列エレメント(EASE)、ヒトCMVプロモーター、トリパータイトリーダー配列、およびポリアデニル化部位を有するジヒドロ葉酸リダクターゼ(DHFR)遺伝子を含有するバイシストロン配列により特徴づけられる。
【0084】
用いることができるシグナルペプチドに関しては、望む場合、元来のシグナルペプチドを異種性のシグナルペプチドまたはリーダー配列と置換することができる。シグナルペプチドまたはリーダー配列の選択は、組換えポリペプチドが生成される宿主細胞のタイプのような因子に依存し得る。説明のために、哺乳動物宿主細胞において機能的である異種性シグナルペプチドの実例としては、米国特許第4,965,195号に記載されるインターロイキン−7(IL−7)のシグナル配列;Cosmanら、Nature 312: 768(1984)に記載されるインターロイキン−2レセプターのシグナル配列;欧州特許第367,566号に記載されるインターロイキン−4レセプターシグナルペプチド;米国特許第4,968,607号に記載されるI型インターロイキン−1レセプターシグナルペプチド;および欧州特許第460,846号に記載されるII型インターロイキン−1レセプターシグナルペプチドなどが挙げられる。
【0085】
I−SpomIの発現は、恒常的または誘導的のいずれかでよい。誘導能が望ましい場合、誘導プロモーターを用いることができる。誘導系の実例にはBrown、米国特許第6,180,391号;Yeeら、米国特許第6,133,027号;Reeves、米国特許第5,965,440号;およびFilmusら、米国特許第5,877,018号が挙げられる。
【0086】
精製
本発明は、またポリペプチドおよびそのフラグメントを単離および精製する方法をも含む。
【0087】
単離および精製
1つの好ましい実施態様では、本発明のポリペプチドまたはフラグメントの、本発明のポリペプチドまたはフラグメントの精製を助ける別のポリペプチドへの融合を用いて組換えポリペプチドまたはフラグメントの精製を行うことができる。かかる融合パートナーには、ポリHis、HA−GST、またはその他の抗原同定ペプチド、およびFc部分などが含まれ得る。
【0088】
別の好ましい実施態様では、Tap−Tag技術により精製を行う(Rigautら、Nat.Biotechnol.17(10): 1030〜1032(1999年10月))。
【0089】
宿主細胞のいずれかのタイプに関しては、当業者に公知であるように、組換えポリペプチドまたはフラグメントを精製するための手段は、用いる宿主細胞のタイプのような因子、および組換えポリペプチドまたはフラグメントが培養培地に分泌されるか、またはされないかによって変わる。
【0090】
一般に、分泌されない場合は、組換えポリペプチドまたはフラグメントを宿主細胞から、または可溶性であり、そして分泌される場合は、培地もしくは上澄から単離し、続いて1回またはそれ以上の濃縮、塩析、イオン交換、疎水性相互作用、アフィニティ精製またはサイズ排除クロマトグラフィー工程を行うことができる。これらの工程を達成するための具体的な方法に関しては、最初に市販により入手可能なタンパク質濃縮フィルター、例えばAmiconまたはMillipore Pellicon限外濾過ユニットを用いて培養培地を濃縮することができる。濃縮工程に続いて、濃縮物を精製マトリックス、例えばゲル濾過媒体に適用することができる。また別に、アニオン交換樹脂、例えば吊り下がったジエチルアミノエチル(DEAE)基を有するマトリックスまたは基質を用いることができる。マトリックスは、アクリルアミド、アガロース、デキストラン、セルロースまたは通常タンパク質精製に用いられる他の型でよい。または、カチオン交換工程を用いることができる。適当なカチオン交換体は、スルホプロピルまたはカルボキシメチル基を含む種々の不溶性マトリックスを含む。加えて、クロマトフォーカシングステップを用いることができる。または、疎水性相互作用クロマトグラフィー工程を用いることができる。適当なマトリックスは、樹脂に結合したフェニルまたはオクチル基でよい。加えて、選択的に組換えタンパク質に結合するマトリックスを有するアフィニティクロマトグラフィーを用いることができる。用いられるかかる樹脂の実例は、レクチンカラム、色素カラムおよび金属キレートカラムである。最後に、1回またはそれ以上の疎水性RP−HPLC媒体(例えば吊り下がったメチル、オクチル、オクチルデシルまたは他の脂肪族基を有するシリカゲルまたは重合体樹脂)を用いて更にポリペプチドを精製することができる。前記の精製工程のいくつかまたはすべては種々の組み合わせで周知であり、これを用いて単離および精製された組換えタンパク質を提供することができる。
【0091】
本発明のポリペプチド結合タンパク質、例えば本発明のポリペプチドに対して生成されたモノクローナル抗体を含むアフィニティカラムを利用して発現されたポリペプチドをアフィニティ精製することも可能である。従来の技術を用いて、例えばこれらのポリペプチドを例えば高塩分溶出バッファー中で、次いで使用するための低塩分バッファーに透析するか、もしくは利用するアフィニティマトリックスに依存してpHまたは他の成分を変化させることにより、アフィニティマトリックスから除去するか、または例えば本発明から誘導されるポリペプチドのようなアフィニティ部分の天然に生じる基質を用いて競合的に除去することができる。
【0092】
本発明のこの実施態様では、ポリペプチド結合タンパク質、例えば抗ポリペプチド抗体または本発明のポリペプチドと相互作用する他のタンパク質を固相支持体、例えばカラムクロマトグラフィーマトリックスまたはその表面に本発明のポリペプチドを発現する細胞を同定、分離、もしくは精製するのに適した類似の基質に結合させることができる。本発明のポリペプチド結合タンパク質の、表面に接触する固相への粘着をいずれかの手段により達成できる、例えば磁性微粒子をこれらのポリペプチド結合タンパク質で被覆し、磁場を通るインキュベーション容器中に維持することができる。細胞混合物の懸濁液を、そこにかかるポリペプチド結合タンパク質を有している固相と接触させる。その表面に本発明のポリペプチドを有している細胞は、固定されたポリペプチド結合タンパク質に結合し、次いで未結合細胞は、洗い流される。このアフィニティ結合方法は、かかるポリペプチドを発現する細胞を溶液から精製、スクリーニング、または分離するのに有用である。固相から陽性として選択された細胞を放出する方法は、当業界で公知であり、そして例えば酵素の使用を包含する。かかる酵素は、好ましくは無毒であり、そして細胞に対して無害であり、ならびに細胞表面結合パートナーを切断するように志向させるのが好ましい。
【0093】
また別に、本発明のポリペプチド発現細胞を含有すると推定される細胞の混合物を最初に本発明のビオチン化ポリペプチド結合タンパク質と共にインキュベートすることができる。インキュベーション時間は、典型的には、本発明のポリペプチドに十分に結合することを確実にする時間である、少なくとも1時間である。次いで、得られた混合物を、アビジン被覆ビーズを充填したカラムを通過させ、それによりアビジンに関するビオチンの高親和性のためにポリペプチド結合細胞がビーズに結合する。アビジン被覆ビーズの仕様は、当業界で公知である。Berensonら、J.Cell.Biochem.10D: 239(1986)を参照されたい。未結合材料の洗浄および結合細胞の遊離は従来の方法を用いて実施する。
【0094】
精製の望ましい程度は、タンパク質の使用目的に依存する。例えば、ポリペプチドが、インビボで投与される場合、比較的高純度であるのが望ましい。かかる場合、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)により分析したときに、他のタンパク質に相当するタンパク質バンドが検出されないようにポリペプチドを精製する。異なったグリコシル化、異なった翻訳後プロセシング等のために、ポリペプチドに相当する複数のバンドがSDS−PAGEにより可視化され得ることは当業者には理解されよう。本発明のポリペプチドをSDS−PAGEにより分析したときに、単一のタンパク質バンドにより示されるように、実質的に均一になるまで精製するのが最も好ましい。銀染色、クーマシー青色染色または(タンパク質が放射性標識されている場合)オートラジオグラフィーによりタンパク質バンドを可視化することができる。
【0095】
5.本発明の核酸を含有する細胞および染色体
従来の技術を用いて本発明の核酸を宿主細胞に導入することができる。例えばリン酸カルシウム沈殿(GrahamおよびVan Der Eb、Virology 52: 456〜467(1973); ChenおよびOkayama、Mol.Cell.Biol.7: 2745〜2752(1987); Rippeら、Mol.Cell.Biol.10: 689〜695(1990))、DEAE−デキストラン(Gopal、Mol.Cell.Biol.5: 1188〜1190(1985))、エレクトロポレーション(Tur-Kaspaら、Mol.Cell.Biol.6: 716〜718(1986))、直接マイクロインジェクション(HarlandおよびWeintraub、J.Cell Biol.101: 1094〜1099(1985))、DNA充填リポソーム(NicolauおよびSene、Biochim.Biophys.Acta 721: 185〜190(1982); Fraleyら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 76: 3348〜3352(1979))およびリポフェクタミンDNA複合体、細胞ソニケーション(Fechheimerら、「スクレープローディングおよびソニケーションローディングによるプラスミドDNAでの哺乳動物細胞のトランスフェクション」Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84: 8463〜8467(1987))、高速マイクロプロジェクタイルを用いる遺伝子衝撃(Yangら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87: 9568〜9572(1990))、ならびにレセプター媒介トランスフェクション(WuおよびWu、Biochemistry、27: 887〜892(1988);WuおよびWu、J.Biol.Chem.262: 4429〜4432(1987))により核酸を導入することができる。以下で論じるように、ウイルスベクターを用いることもできる。
【0096】
好ましい細胞は、細菌、植物、線虫、酵母、昆虫および哺乳動物である。微生物純粋培養を用いることができる。とりわけ好ましいものは、ショウジョウバエおよびマウス細胞である。細胞は、1次細胞または細胞株でよい。細胞は、ゲノムに組み込まれた核酸を含有できる。または、核酸は、組み込まれていないままでもよい。好ましい実施態様では、組換え哺乳動物または昆虫染色体は、組み込まれたI−SpomI部位を含有する。とりわけ好ましいのは、ショウジョウバエ、線虫(C.elegans)またはマウス染色体である。
【0097】
別の好ましい態様では、組換え細胞、植物、線虫、酵母、哺乳動物、または昆虫染色体は、I−SpomI酵素を発現する核酸を含有する。とりわけ好ましいものは、ショウジョウバエ、線虫(C.elegans)、またはマウス染色体である。
【0098】
原核または真核細胞においてクローニングを実施することができる。クローニングビークルを複製するための宿主は、もちろんビークルに適合し、そしてそこでビークルが複製できる。好ましくはクローニングは、細菌または酵母細胞内で実施されるが、菌類、動物および植物起源の細胞を用いることもできる。クローニング作業を行うのに好ましい宿主細胞は、細菌細胞、例えば大腸菌(E.coli)である。大腸菌(E.coli)細胞の使用は、たいていのクローニングビークル、例えば細菌ブラスミドおよびバクテリオファージがこれらの細胞内で複製するので特に好ましい。
【0099】
本発明の好ましい実施態様では、従来の技術を用いて、動作可能なようにプロモーターに連結された本発明のヌクレオチド配列をコードするDNA配列を含有する発現ベクターを哺乳動物細胞に挿入する。
【0100】
6.ウイルスベクター
(a)アデノウイルスベクター
インビボ分配のための1つの方法は、アデノウイルス発現ベクターの使用に関連する。アデノウイルスを用いてI−SceIをヒト細胞に効率よく分配している(AnglanaおよびBacchetti、Nucleic Acids Research 27: 4276〜4281(1999))。またアデノウイルスをベクターとして用いてHOエンドヌクレアーゼを分配している(Nicolasら、Virology 266: 211〜244(2000))。アデノウイルスベクターを用いてI−SpomI酵素をコードする核酸を分配することができる。
【0101】
遺伝子構成、すなわち、36kB、直線状、2本鎖DNAウイルスであるアデノウイルスの知識によりアデノウイルスDNAの大きな切片の7kBまでの外来性配列との置換が可能になる(GrunhausおよびHorwitz、クローニングベクターとしてのアデノウイルス、Seminar in Virology 3: 237〜252(1992))。アデノウイルスDNAは、遺伝毒性の可能性なしにエピソームの様式で複製できるので、宿主細胞のアデノウイルス感染は、染色体組み込みには至らない。また、アデノウイルスは、構造的に安定であり、大規模な増幅の後のゲノムの再構成は、検出されていない。アデノウイルスは、その細胞サイクル段階にかかわらず、本質的にすべての上皮細胞に感染できる。アデノウイルスは、それが中程度の大きさのゲノムであり、操作が容易であり、高力価で、広範な標的細胞範囲を有し、そして感染性が高いために、遺伝子移入ベクターとして使用するのにとりわけ適している。複製欠損であるアデノウイルスベクターの作製および増殖は、ヘルパー細胞株に依存し、これは、恒常的にアデノウイルスタンパク質を発現する(例えばGrahamら、「ヒトアデノウイルス5型からのDNAにより形質転換されたヒト細胞株の特徴」J.Gen.Virol.36: 59〜79(1977))。
【0102】
アデノウイルスベクターは、真核生物遺伝子発現(Leveroら、「インビトロおよびインビボでの外来性遺伝子の発現のための欠損および非欠損アデノウイルスベクター」Gene 101: 195〜202(1991); Gomez-Foixら、「筋肉グリコーゲンホスホリラーゼ遺伝子の肝細胞へのアデノウイルス媒介移入が、グリコーゲンの制御変化に寄与する」J.Biol.Chem.267: 25129〜25134(1992))およびワクチン開発(GrunhausおよびHorwitz、Seminar in Virology 3: 237〜252(1992); GrahamおよびPrevec、「アデノウイルス基盤発現ベクターおよび組換えワクチン」Biotechnology 20: 363〜390(1992))に用いられている。組換えアデノウイルスを遺伝子治療に使用できることが動物実験により示唆されている(Stratford-PerricaudetおよびPerricaudet、Human Gene Transfer(Cohen-HaguenauerおよびBorion(編)、Editions John Libbey Eurotext、フランス(1991))、51〜61頁; Stratford-Perricaudetら、Hum.Gene Ther.1: 241-256(1990))。組換えアデノウイルスの異なる組織への投与における研究には、気管点滴注入(Rosenfeldら、「組換えアルファ1−アンチトリプシン遺伝子の肺上皮へのインビボアデノウイルス媒介移入」)Science 252: 431〜434(1991); Rosenfeldら、「ヒトシスチン繊維症膜コンダクタンスレギュレーター遺伝子の気道上皮へのインビボ移入」Cell 68: 143〜155(1992))筋肉注射(Ragotら、「ヒトミニジストロフィン遺伝子のmdxマウスの骨格筋への効率のよいアデノウイルス媒介移入」Nature 361: 647〜650(1993))、末梢静脈内注射(HerzおよびGerard、「低密度リポタンパク質レセプター遺伝子のアデノウイルス媒介移入は、正常マウスにおいてコレステロールクリアランスを急速に促進する」Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90: 2812〜2816(1993))および脳への定位的接種(Le Gal La Salleら、「脳のニューロンおよびグリアへの遺伝子移入のためのアデノウイルスベクター」Science 259: 988〜990(1993))などがある。
【0103】
(b)レトロウイルスベクター
レトロウイルスベクターを用いてI−SpomI酵素またはI−SpomI部位をコードする核酸を細胞に分配することができる。レトロウイルスベクターの使用により核酸の宿主染色体への組み込みが促進される。
【0104】
レトロウイルスは、逆転写の方法により感染された細胞内でそのRNAを2本鎖DNAに変換する能力により特徴づけられる1本鎖RNAウイルスの一群である(Coffin、「レトロウイルス科およびその複製」、Virology(Fieldsら(編)、ニューヨーク:Raven Press)1437〜1500頁(1990))。次いで得られたDNAをプロウイルスとして安定して細胞染色体に組み込み、ウイルスタンパク質の合成を志向させる。組み込みによりレシピエント細胞およびその子孫におけるウイルス遺伝子配列の保持に至る。レトロウイルスベクターを構築するために、特定のウイルス配列の代わりに目的の遺伝子をコードする核酸をウイルスゲノムに挿入して、複製欠損であるウイルスを生成する。ビリオンを生成するために、gag、polおよびenv遺伝子を含有するが、LTRを含有しないパッケージング細胞株およびパッケージング成分を構築する(Mannら、「レトロウイルスパッケージング変異体の構築およびヘルパー不含の欠損レトロウイルスを生成するためのその使用」、Cell 33: 153〜159(1983))。レトロウイルスLTRと一緒にヒトcDNAおよびパッケージング配列を含有する組換えプラスミドをこの細胞株に導入する場合、パッケージング配列により組換えプラスミドのRNA転写がウイルス粒子にパッケージングされ、次いでこれが培養培地に分泌される(NicolasおよびRubenstein、「レトロウイルス」、ベクター:分子クローニングベクターおよびその使用に関する調査、RodriguezおよびDenhardt(編)、Stoneham: Butterworth、493〜513頁(1988); Temin、Gene Transfer、(Kucherlapati(編)、ニューヨーク:Plenum Press)149〜188頁(1986); Mannら、Cell 33: 153〜159(1983))。次いで組換えレトロウイルスを含有する培地を収集し、場合によっては濃縮してもよく、そして遺伝子移入に用いる。レトロウイルスベクターは、広範な細胞タイプに感染できる。
【0105】
(c)発現構築物としてのその他のウイルスベクター
他のウイルスベクターを、本発明の発現または分配構築物として用いることができる。ウイルス、例えばワクシナウイルス(Ridgeway、「哺乳動物発現ベクター」、ベクター:分子クローニングベクター及びその使用に関する調査(RodriguezおよびDenhardt(編)、Stoneham: Butterworth)467〜492頁(1988);BaichwalおよびSugden、「動物DNAウイルスに由来する遺伝子移入のためのベクター:移入された遺伝子の一過性および安定した発現」、Gene transfer, (Kucherlapati(編)、ニューヨーク:Plenum Press)117〜148頁(1986); Couparら、「複数の外来性遺伝子を発現する組換えワクシニアウイルスの構築のための一般法」、Gene 68: 1〜10(1988))、アデノ随伴ウイルス(AAV)(Ridgeway、RodriguezおよびDenhardt(編)、Stoneham: Butterworth、467〜492頁(1988); BaichwalおよびSugden、Gene transfer (Kucherlapati(編)、ニューヨーク:Plenum Press)117〜148頁(1986))およびヘルペスウイルスに由来するベクターを用いることができる。
【0106】
他のベクターは、例えばアフリカツメガエル卵母細胞に関してはSegalら(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 92: 806-810(1995))、植物に関してはMachidaら(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 94: 8675〜8680(1997))およびKirikら(EMBO 19(20): 5562〜5566(2000))、ならびにショウジョウバエに関してはBellaicheら(Genetics 152: 1037〜1044(1999))に開示されている。
【0107】
7.幹細胞
1つの実施態様では、I−SpomI酵素またはI−SpomI部位をコードする核酸を含有する幹細胞を調製することができる。特定の遺伝子のマウスゲノムへの通常の挿入は、マウスES細胞の使用により達成することができる(例えばKusakabeら、米国特許第6,190,910号参照)。マウスES細胞は、インビトロで着床前胚(Evansら、Nature 292: 154〜159(1981); Martin、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 78: 7634〜7638(1981))または胎児生殖細胞(Matsuiら、Cell 70: 841〜847(1992))から誘導された未分化の多能性細胞である。マウスES細胞は、連続継代で未分化状態を維持する(Williamsら、Nature 336: 684〜687(1988))。
【0108】
通常の着床前胚と共にキメラに合体させ、そして子宮に戻したマウスES細胞は、通常の発生に参加する(Richardら、Cytogenet.Cell Genet.65: 169〜171(1994))。キメラにおいてマウスES細胞が、機能的生殖細胞に寄与する能力により、マウス系に部位特異的変異を導入する方法が提供される。適当なトランスフェクションおよび選択計画を用いれば、相同組換えを用いて特定遺伝子の計画的な変化を伴うES細胞株を誘導することができる(例えばJaisserら、米国特許第5,830,729号)。これらの遺伝的に操作された細胞を用いて正常な胚を有するキメラを形成することができ、キメラ動物が回収される。ES細胞が、キメラ動物の生殖系列に寄与する場合、次いで次世代で、計画された変異のためのマウス系統が確立される。好ましい実施態様では、マウスD3胚幹細胞株を用いる。他のES細胞、例えばウシ胎児幹細胞(Simsら、米国特許第6,107,543号)を同様に用いることができる。
【0109】
8.トランスジェニク動物
トランスジェニク動物を作製するために、従来の技術を用いることができる。1つの実施態様では、ES細胞を用いてトランスジェニク動物を作製することができる。別の実施態様では、I−SpomI酵素またはI−SpomI制限部位をコードするプラスミドを1−細胞期マウス受精卵の雄前核に注射できる。次いで注射した卵を偽妊娠代理母の雌に移すことができる。代理母の雌の卵を出産まで成長させる。
【0110】
トランスジェニク動物は、初期発達段階(通常1−細胞期)で、動物または動物の祖先の生殖系列に導入されている遺伝子を担持する。Wagnerら、P.N.A.S.USA 78: 5016(1981); およびStewartら、Science 217: 1046(1982)は、ヒトグロビン遺伝子を含有するトランスジェニクマウスについて記載している。Constantiniら、Nature 294: 92(1981); およびLacyら、Cell 34: 343(1983)は、ウサギグロビン遺伝子を含有するトランスジェニクマウスについて記載している。McKnightら、Cell 34: 335(1983)は、ニワトリトランスフェリン遺伝子を含有するトランスジェニクマウスについて記載している。Brinsterら、Nature 306: 332(1983)は、機能的に再構成された免疫グロブリン遺伝子を含有するトランスジェニクマウスについて記載している。Palmiterら、Nature 300: 611(1982)は、重金属誘導メタロチオネインプロモーター配列に融合されたラット成長ホルモン遺伝子を含有するトランスジェニクマウスについて記載している。Palmiterら、Cell 29: 701(1982)は、メタロチオネインプロモーター配列に融合されたチミジンキナーゼ遺伝子を含有するトランスジェニクマウスについて記載している。Palmiterら、Science 222: 809(1983)は、メタロチオネインプロモーター配列に融合されたヒト成長ホルモン遺伝子を含有するトランスジェニクマウスについて記載している。
【0111】
9.ネスト化染色体フラグメンテーション計画
真核生物ゲノムを遺伝子マッピングするためのネスト化染色体フラグメンテーション(the nested chromosomal fragmentation)計画は、制限エンドヌクレアーゼI−SpomIの独特な特性、例えば20bpの長さの認識部位を利用する。たいていの真核生物ゲノムにおける天然のI−SpomI認識部位の不在も、またこのマッピング計画に利用される。
【0112】
最初に、前記したように選択マーカーを含有する特定のカセットを用いる相同組換えによるか、または無作為挿入により1つまたはそれ以上のI−SpomI認識部位が、ゲノムの種々の位置で人工的に挿入される。次いでI−SpomI制限酵素と共にインキュベートしたときに、得られたトランスジェニック系統のゲノムを、人工的に挿入された(複数の)I−SpomI部位で完全に切断する。切断によりネスト化染色体フラグメントが生成される。
【0113】
次いで染色体フラグメントを精製し、そしてパルスフィールドゲル(PFG)電気泳動により分離して、染色体において挿入された部位の位置を「マッピング」することが可能になる。全DNAが、制限酵素で切断される場合、各々の人工的に導入されたI−SpomI部位が、ゲノムにおける独特な「分子道標」を提供する。したがって各々が、道標間の物理学的なゲノムの間隔を決定する単一のI−SpomI部位を担持する1組のトランスジェニック系統を作成できる。結果的に、人工的に導入されたI−SpomI制限部位を用いてゲノム全体、染色体またはいずれかの目的のセグメントをマッピングすることができる。
【0114】
ネスト化染色体フラグメントを固体膜に移し、フラグメントのDNAに相補的なDNAを含有する標識プローブをハイブリダイズすることができる。観察されるハイブリダイゼーションバンドパターンに基づいて、真核生物ゲノムをマッピングすることができる。適当な「道標」を有する1組のトランスジェニック系統を参照として用いて、直接ハイブリダイゼーションによりいずれかの新規遺伝子またはクローンをマッピングする。
【0115】
10.インビボ部位指定組換え
半数体細胞では、人工的なI−SpomI部位での染色体内の単一の切断の結果、死に至る細胞分割停止の結果を招く(生存率わずか数%)。切断部位に相同的な無傷配列の存在は、結果的に修復され、100%の細胞が生存する。2倍体細胞では、I−SpomI部位での染色体内の単一の切断の結果、染色体相同性を用いる修復に至り、100%の細胞が生存する。双方の場合、誘導された2本鎖切断の修復の結果、ドナーDNA分子からの非相同性配列の切断および挿入をフランキングする非相同性配列の欠損を有するヘテロ接合性の喪失に至る。FairheadおよびDujon、Mol.Gen.Genet.240: 170〜180(1993)。
【0116】
DNAフラグメントのプラスミドから染色体への部位特異的挿入のために、いくつかの試験計画を試みることができる。これにより骨の折れるスクリーニング工程を行わずに予め決定された部位に導入遺伝子を挿入することが可能になる。試験計画には:
−1− I−SpomI認識部位が染色体の独特な位置で挿入されているトランスジェニック細胞の構築。トランスジェニック細胞におけるI−SpomI酵素の発現、ならびに目的の遺伝子およびI−SpomI部位が挿入されている配列に相同なセグメントを含有する核酸分子の導入。
【0117】
活性酵素の直接導入(例えばマイクロインジェクション、エレクトロポレーション、タンパク質のスクレープローディング)および誘導または恒常性ウイルスまたはプラスミドベクター(例えばアデノウイルスまたはレトロウイルスベクター)からのタンパク質発現などの多くの技術によりI−SpomI酵素の発現を達成できる。
【0118】
−2− プラスミドに担持される目的の遺伝子に隣接してまたはその内部でのI−SpomI認識部位の挿入。合成I−SpomI遺伝子を担持する発現ベクターおよびI−SpomI認識部位を含有するプラスミドでの正常な細胞の同時形質転換。
【0119】
−3− 誘導または恒常性細胞プロモーターの調節下でI−SpomI遺伝子がゲノムに組み込まれている安定したトランスジェニック細胞株の構築。目的の遺伝子に隣接してまたはその内部でI−SpomI部位を含有するプラスミドによる細胞株の形質転換。
【0120】
部位指定相同組換え
1.部位特異的遺伝子挿入
方法により種々の遺伝子または特定の遺伝子の変異体が、I−SpomI部位の以前の組み込みにより定義される予め決定された位置で挿入され得る細胞および細胞株を無制限に生成することが可能になる。したがって、かかる細胞および細胞株は、表現型、リガンド、薬物のためのスクリーニング手段に、および細胞株がレトロウイルス生成に関してトランスに補完する細胞株である場合には、非常に高レベルでの組換えレトロウイルスの再生産発現に有用である。
【0121】
(2つの相同性染色体の1つにのみ存在する)ヘテロ接合性であるI−SpomI部位で、前記の細胞株を最初に作製する。これをそのように増殖させることができ、および/またはこれを用いてトランスジェニック動物を作成することができる。かかる場合、通常の方法、例えば交配によりホモ接合性トランスジェニック(2つの相同性染色体において同等の位置でI−SpomI部位を有する)を構築することができる。ホモ接合性細胞株を、かかる動物から単離することができる。または、適当なDNA構築物での2次形質転換によりホモ接合性細胞株をヘテロ接合性細胞系から構築することができる。同一遺伝子または近隣遺伝子の近くの部位で、代償性へテロ接合性I−SpomI挿入を含有する細胞株は、本発明の一部であることも理解されよう。
【0122】
前記のマウス細胞またはヒトなどの他脊椎動物からの同等物を用いることができる。無脊椎動物からの細胞を用いることもできる。培養物中で維持され得るいずれかの植物細胞を、それが再生する能力があるかないか、またはそれが繁殖可能な植物を生み出しているかどうかとは関係なく使用することもできる。トランスジェニック動物で方法を用いることもできる。
【0123】
2.部位特異的遺伝子発現
類似の細胞株を用いて導入遺伝子、種々のプロモーター、レギュレーターおよび/または構造遺伝子を用いる生物学的またはバイオテクノロジー目的のタンパク質、代謝物または他の化合物を生成することもできる。遺伝子は、いつも染色体の同一の局在性で挿入される。トランスジェニック動物では、組織特異的な様式で複数の薬物、リガンドまたは医薬用タンパク質を試験することが可能になる。
【0124】
3.例えばEP0419621B1に開示されるように、I−SpomI認識部位およびI−SpomI酵素を相同組換え技術と組み合わせて用いることもできる。例えば、CFTR座におけるI−SpomI認識部位の挿入を、ゲノムDNAのCFTR遺伝子をフランキングする相同配列を用いて行うことができる。二重交差による自然遺伝子置換によりI−SpomI部位を挿入することができる(Le Mouellicら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87: 4712〜4716(1990))。
【0125】
挿入された配列をヘテロ接合状態またはホモ接合状態で維持できることは理解されよう。ヘテロ接合状態で挿入された配列を有するトランスジェニック動物の場合、例えば組織特異的様式で、誘導プロモーターからのI−SpomI発現の誘導によりホモ接合を誘導することができる。
【0126】
標的細胞にI−SpomI認識部位および染色体配列と相同性を共有する配列を含有するプラスミド構築物を導入することにより、自然相同組換えによるI−SpomI認識部位のゲノムへの挿入を達成することができる。入力プラスミドを染色体標的で組換え的に構築する。この組換えにより少なくとも1つのI−SpomI認識部位が染色体に部位指定挿入されることになる。標的化構築物は、環状または直線状のいずれかでよく、そして標的細胞に含まれるいずれかの配列と1、2またはそれ以上の部分の相同性を含有し得る。プラスミド構築物の標的(O型ベクター)への挿入によるか、またはI−SpomI認識部位を含有する配列(^L型ベクター)による染色体の置換より標的化メカニズムを生じることができる。ValanciusおよびSmithies、Mol.Cell Biol.11: 4389〜4397(1991)参照。
【0127】
染色体標的化された座は、エクソン、イントロン、プロモーター領域、座調節領域、擬似遺伝子、レトロエレメント、反復エレメント、非機能的DNA、テロメアおよびミニサテライトでよい。1つの座または複数の座で標的化を生じることができ、結果的に1つまたはそれ以上のI−SpomI部位を細胞ゲノムに挿入することになる。
【0128】
ゲノムの正確な座にI−SpomI認識部位を導入するための胚幹細胞の使用により、これらの細胞の初期胚(桑実期または胚盤胞段階)への再移植により、正確な座でI−SpomI認識部位を含有する変異マウスの生成が可能になる。これらのマウスを用いてI−SpomI酵素の体細胞または生殖系列への発現においてゲノムを修飾することができる。
【0129】
4.生物医学的適用
本発明による配列、細胞、動物、染色体および方法で種々の適用を行うことができる。
【0130】
1つの適用は、遺伝子治療である。遺伝子治療の具体的な実例には、免疫変調(すなわちIL遺伝子の範囲または発現を変化させること);欠損遺伝子の置換;およびタンパク質の排泄(すなわちオルガネラにおける種々分泌性タンパク質の発現)などが挙げられる。
【0131】
本発明は、更にI−SpomI制限部位がゲノム配列の座に、または遺伝子のエクソンに対応するcDNAの一部に導入されているトランスジェニック生物、例えば動物を具現化する。I−SpomI部位が導入されているゲノム(動物、ヒト、昆虫、または植物等)のいずれかの遺伝子を、対応するエンドヌクレアーゼをコードする配列を含有するプラスミドにより標的化することができる。I−SpomI部位の導入を相同組換えにより達成することができる。このように、いずれかの遺伝子を発現のために特定の座に標的化することができる。
【0132】
トランスジェニック生物をスクリーニング法に用いることができる。
I−SpomIにより遺伝子活性化を調節することができる。例えばI−SpomI認識部位を、ニューロン特異的エノラーゼプロモーター(pNSE)(Forss-Petterら、Neuron 5: 187〜197(1990))の調節下で、タンデム反復でnlsLacZ遺伝子の一部(例えば62bp)の重複を含有するトランスジェニックマウス系統に導入し、したがってオープン・リーディグ・フレームへの停止コドンの導入により遺伝子機能を損失させることができる。これらのマウスにおけるI−SpomI酵素の発現は、2つのタンデム反復間の組換えを再活性化することができ、すべての中枢神経系(CNS)で遺伝子の再活性化に至る。全CNSの遺伝手術に至るジフテリア毒素のDT−Aフラグメントを用いて同一の実験を実現できる。組織特異的プロモーターによるかまたは遺伝子標的化により得られる天然の座におけるI−SpomI修飾DT−Aの発現により遺伝手術を実施することができる。
【0133】
インビボでI−SpomI誘導組換えにより特定の遺伝子を活性化することが可能である。I−SpomI切断部位をタンデム反復における遺伝子の重複の間に導入し、機能を喪失させる。エンドヌクレアーゼI−SpomIの発現により2つのコピー間で切断を誘導することができる。組換えによる回復が刺激され、そして機能的遺伝子に至る。
【0134】
染色体の特定の転座または欠失をI−SpomI切断により誘導できる。「古典的な遺伝子置換」により染色体の特定の位置で遺伝子を組み込むことにより座挿入を行うことができる。非致死的な転座によるか、または欠失続いて末端結合によりI−SpomIエンドヌクレアーゼによる認識配列の切断を修復することができる。座のフランキング領域における2つまたはそれ以上のI−SpomI部位の挿入により染色体のフラグメントの欠失を得ることもできる。組換えにより切断を修復でき、そして2つの部位の間の完全領域の欠失に至る。
【0135】
I−SpomIは、タンパク質の進化的に保存されたファミリーの一部であるので、その切断特異性が複合生物、例えば菌類、動物または植物のゲノムの独特な部位として認識できるほどに十分に高い場合、I−SpomIで開発されたすべての適用を他のエンドヌクレアーゼで行うこともできると解される。エンドヌクレアーゼをその天然の遺伝子から直接発現させることができる場合がある。またかかる酵素が天然にコードされる細胞区画における遺伝コードの可変性のために、人工遺伝子を構築する必要がある場合もある。構築物ならびにI−SpomIおよびその部位で実施される全系列の操作を他のエンドヌクレアーゼで容易に変換することができる。同様に、適用においてI−SpomIを他の酵素、例えばI−SceIと置き換えることができる。
【0136】
I−SpomIを他の酵素、例えばI−SceI、I−CreI、I−CeuIおよびI−DmoIと組み合わせて用いることができる。例えば、米国特許第5,474,896号を参照されたい。例えば、1つまたはそれ以上のI−SpomI制限部位および1つまたはそれ以上のグループIイントロンコード化エンドヌクレアーゼ部位(例えばI−SceI部位)を含有する組換え染色体または細胞を構築することができる。別の実施態様では、1つまたはそれ以上のI−SpomI制限部位および1つまたはそれ以上のグループIイントロンコード化エンドヌクレアーゼ部位(例えばI−SceI部位)を含有するトランスジェニックマウスを構築することができる。部位は、同一または異なる染色体座でよい。
【0137】
I−SpomIを他の酵素、例えばI−SceIと組み合わせて用いてインビボ組換えを促進することができる。例えばI−SpomIおよびI−SceIを発現する1つの発現ベクター、または酵素を発現する2つの別個の発現ベクターを用いて、これらの酵素の双方の発現を細胞に導入することができる。これらの酵素の発現により、2本鎖切断をゲノムの異なる部分に同時に、または連続的に導入することが可能になる。この研究法を用いて、例えばひと続きのDNAを欠失させるか、または複数の組換え事象を促進させることができる
【0138】
本明細書に引用したすべての参考文献のすべての開示は参照として本明細書に組み入れられる。
【0139】
生物の寄託
ORF I−SpomI酵素をコードするポリヌクレオチドを含有するプラスミドは、2001年3月6日、Collection Nationale de Cultures de Microorganismes(CNCM)、25、Rue du Docteur Roux75724、パリ、Cedex 15、フランスに受入番号I−2643のもとに寄託されている(参照同定:大腸菌(E.coli)BL21(DE3)pLysS/pSP003)。
本発明は以下の実施例を参照することで更に完全に理解されよう。
【実施例1】
【0140】
I−SpomIの発現のためのプラスミドの構築および活性アッセイ
大腸菌(E.coli)におけるI−SpomIの発現のために、分裂酵母(S.pomb)X39株ゲノムDNA(47)から増幅した種々のPCRフラグメントを、発現ベクターpET16b(Novagen、マジソン)にクローン化した。発現されたタンパク質をN末端10xHisタグと融合してさらなる精製を容易にした。3つの組換えプラスミドを構築した(図1);(i)プラスミドpSP001は、cox1E1のイニシエーターATGコドンからcox1I1b(プライマーSP001m:5′−GCACGCATGTCATATGGTCTTGAGTTTAATGAACTCTTG−3′[配列番号:1]、プライマーSP002m:5′−GCGTAGATGGATCCAAGTGATACTTGATAGTGGTGG−3′[配列番号:2])の配列内停止コドンまでのすべてのオープン・リーディグ・フレームに対応する520コドンのフラグメントを含有する。(ii)プラスミドpSP003は、2つのLAGLIDADGモチーフ(プライマーSP002mと一緒に、プライマーSP003 5′−GAGAGCGCATATACATATGAATAAATTTTTTAATAGACATCC−3′[配列番号:3])を含むイントロン2次構造のループ8(図1A)に位置する304コドンをカバーする最短のインサートを含有する。(iii)プライマーSP005をプライマーSP002と共に用いて第3のプラスミドpSP005を構築し、cox1I1b ORF(プライマーSP002mと一緒に、プライマーSP005:5′−GCATATTAGGATCCATGTTAAAGCCGCAGACAAAATTG−3′[配列番号:4])の全配列をカバーする386コドンの生成物を得た。各々のプラスミドを発現宿主大腸菌(E.coli)BL21(DE3)pLysS(Novagen、マジソン)に形質転換した。
【0141】
プラスミドpP3E5−2(48)をI−SpomI切断部位を決定するための鋳型として、および活性試験のために提供した。このpUC18の誘導体は、イントロン不含P3株(49)のcox1配列のクローン化mtDNAフラグメントを含有する。
【0142】
認識部位を特徴づけるために、オリゴヌクレオチドの合成によりイントロン不含遺伝子からのイントロン挿入部位をフランキングする領域の一連の変異体を作製した。各々の変異体は、イントロン挿入部位近くの−13〜+12ヌクレオチド位置までの単一の塩基転換に相当する。アニーリングされた相補的オリゴヌクレオチドを、BamHIおよびHindIII部位を用いてpUC19にクローン化した。別のEcoRV部位をオリゴヌクレオチド配列に組み込み、適切な組換え分子をスクリーニングした。各々のライゲーション実験の2つの別個のクローンを試験で用いて、2本鎖における切断反応を実施した。
【実施例2】
【0143】
エンドヌクレアーゼの発現および精製
Novagen,マジソンにより提供されるT7発現系を用いて組換えタンパク質を発現した。pSP003で形質転換した大腸菌(E.coli)BL21(DE3)pLysSの前培養を、LB培地50ml中アンピシリン(100μg/ml)およびクロラムフェニコール(34μg/ml)と共に37℃で一晩増殖させ、次いで新鮮な予め加温した同一組成の培地3l中100倍希釈した。細胞を37℃でOD600が0.6〜0.8になるまで成長させた後、イソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド(IPTG)を添加することにより発現を誘導した。誘導の後、細胞を更に3時間、OD600が2.3〜2.8になるまで増殖させ、収穫し、水で洗浄し、そして一定分量を−70℃で保存した。精製用に、主培養物1lから細胞を収穫した。細胞を使用する直前にペレットを氷上で解凍し、そしてプロテアーゼインヒビター(ペファブロック 1μg/ml、アプロチニン 2μg/ml、ロイペプチン 0.5μg/ml、ペプスタチン 1μg/ml)を含む溶解バッファー 30ml(HEPES 30mM pH8、NaCl 300mM、イミダゾール 20mM)に再懸濁した。後続の精製工程すべてを4℃で実施した。細胞破壊は、フレンチ・プレスを用いて実施し、そして続いて粗製ホモジネートをBeckman JA25.50ローター中40000xgで45分間遠心した。即座に上澄をデカンテーションし、Ni2+で荷電したHiTrapキレーティング・アフィニティ・カラム(Amersham Pharmacia Biotech、リトルチャルフォント)1mlに負荷した。アフィニティカラムを用いる精製工程をAkta Purifier(Amersham Pharmacia Biotech、リトルチャルフォント)で実施した(図2)。溶出工程の後に酵素が存在する溶出バッファーを、Micro Bio-Spinサイズ排除カラム(BioRad、ヘルクレス)を用いてジエタノールアミン 100mM、pH9.0に変えた。最終容量の50%までグリセロールを添加した後、タンパク質を−20℃で保存し、そしてBio-Rad Bradford(BioRad、ヘルクレス)タンパク質アッセイを用いてタンパク質濃度を決定した。
【0144】
精製を実証し、そして発現されたI−SpomIのバンドを同定するために、手順の様々な段階でサンプルを採取し、そしてSDS−12% ポリアクリルアミドゲルに流した。その後、(50)にしたがってセミドライトランスファーセル(BioRad、ヘルクレス)を用いて、それをニトロセルロース膜に移した。次いで膜を粉乳 2%を含有するTBST(Tris−HCl 10mM(pH8.0)、NaCl 150mM、Tween20 0.5%および脱脂粉乳2%)中37℃で1時間膜をインキュベートした。その後、セイヨウワサビペルオキシダーゼに結合させたHisタグに対する抗体をTBST乳溶液中1:4500で希釈し、そして膜を37℃で1時間インキュベートした。次いでこれをTBSTで2回およびPBSで1回洗浄した(50)。ECLキット(Amersham Pharmacia Biotech、リトルチャルフォント)のマニュアルにしたがって、HRP活性の検出を実施した。IPTGでの誘導(粗製ホモジネート、溶解細胞、遠心後の上澄、ピークおよびピーク以外の流動画分)の前または後に異なるサンプルを採取した。最初の15画分の各々のサンプルをSDS−12%ポリアクリルアミドゲルに負荷し、そしてCoomassieブリリアントブルーR250で染色して、他の存在するタンパク質に相対して最高の比率で発現した酵素を含む画分を同定した。
【0145】
交雑におけるイントロンcox1I1bのホーミングを示す以前の実験から(47、48)、イントロンcox1I1bの生成物は、エンドヌクレアーゼ活性を有していると推定された。エクソン部分を含むリーディグ・フレーム全体が機能的タンパク質に必須であるかどうかは不明であったので、イントロンおよびエクソン配列を含むORF全体、または単純にイントロン全体およびRNA2次構造のループ8に相当する領域を発現させた(図1)。ミトコンドリアイントロンのリーディグ・フレームがユニバーサルでないコードを用いて翻訳されるたいていのその他の場合と対照的に、このイントロンORFは、UGAコドンを全く含まない(45)。したがって遺伝子の配列におけるいずれかのヌクレオチドを変化させる必要はなかった。
【0146】
時間経過実験で大腸菌(E.coli)において発現を検定し、そして最も小さなORGの遺伝子産物の最高の発現が誘導後3時間であることが見出された(データは示していない)。したがって、pSP003と称される発現プラスミドで進めることに決定した。細胞溶解後の可溶性画分は、エンドヌクレアーゼ活性を含有する(後記で示すように)。この画分で、Hisタグ抗体を用いるウェスタンブロット実験においても検出可能な2つの主要なバンドを見出した。より強いバンドの大きさは融合遺伝子産物の推定される分子量(38.7kDa)に従い、可能な分解産物としておよそ30kDaの大きさの弱いバンドを伴う(図2B、C)。Niカラムでの単一の精製工程からの典型的な溶出プロファイルを図2Aに示す。タンパク質ピークは、いつも強い核酸シグナルと同時溶出される。Bradfordアッセイは、全タンパク質濃度0.3μg/μlを示した。全体の約3分の1に相当する38.7kDaの主要なタンパク質バンドで、I−SpomIの濃度がおよそ0.1μg/μlであると見積もられた。調製物をジエタノールアミン 100mM(pH9.0)/50% グリセロール中−20℃で保存し、そしてこれらの条件が数ヶ月間安定してエンドヌクレアーゼ活性を保持することが示された。
【実施例3】
【0147】
I−SpomI切断部位の決定
エクソンcox1E1およびcox1E2の配列の接合部での推定されるホーミング部位を含む短いPCR産物でI−SpomIでの切断パターンの決定を実施した。センス鎖SP009のプライマー(5′−CTAGAGTAAATAATTTCACATTC−3′[配列番号:5])は、イントロン挿入部位に相対して−100の位置でアニーリングした。相補鎖のプライマーSP008(5′−ATGCAAATAATGGCATTTGATAT−3′[配列番号:6])およびSP010(5′−AATTTACTGATCCTAATGTTGAT−3′[配列番号:7])は、各々下流の+173ヌクレオチド、+129ヌクレオチドにハイブリダイズした(図3A)。PstIで直線化したプラスミドpP3E5−2(48)は切断部位を決定するためのDNA材料を調製するためにPCRの鋳型として提供された。材料をシュリンプアルカリ性ホスファターゼおよびエクソヌクレアーゼIと反応させ、過剰のヌクレオチドおよびプライマーを除去し、次いで変性させた。このように調製したPCR産物を鋳型として用いてサイクルシークエンシング(Thermo Sequenaseサイクルシークエンシングキット、USB、マイルスロード)および5′−末端標識プライマーSP009またはSP008/SP010を用いてDNAシークエンシングラダーを作製した。また鋳型として5′−末端標識プライマーを用いて、プラスミドpP3E5−2(48)のPCR増幅によりI−SpomIのための単一の末端標識基質を生成した。切断の前にAmicon Microcon PCR遠心フィルター装置(Millipore、ベッドフォード)によりマニュアルにしたがって、DNAフラグメントを組み込まれていないデオキシヌクレオチドおよび放射性オリゴヌクレオチドから精製し、続いてフェノール抽出および沈殿を行った。最後にPCR産物を水15μlに再懸濁した。I−SpomIでの消化を全反応容量 25μl(エンドヌクレアーゼ調製物 6μl、ジエタノールアミン 100mM(pH9.0)、MgCl2 2.5mM、溶解したPCR産物1μl)中37℃で10分間実施した。10x停止溶液((51)にしたがって、Tris−HCl 0.1M(pH7.5)、EDTA 0.25M、SDS 5%、プロテイナーゼK 0.5mg/ml)0.1容量添加することにより反応を停止させ、そして50℃に15分間、そして95℃に上げて3分間インキュベートしてプロテイナーゼKを不活性化した。フェノール抽出によりプロテイナーゼKを除去し、そしてサンプルを沈殿させた。未消化サンプルを対照としてI−SpomIの不在下で処理した。エンドヌクレアーゼ消化の後、PCR産物をDNAシークエンシング反応と平行して実行した。Sequenazeキットと共に供給された停止溶液を添加した後75℃で2分間、すべてのサンプルを変性させ、そして6% ポリアクリルアミド/50% 尿素ゲル上で分離した。続いてゲルを乾燥させ、そしてオートラジオグラフィーフィルムまたはPhosphor Imagerスクリーン(Molecular Dynamics、サニーベール)にそれぞれ−70℃でまたは25℃で一晩焼き付けした。結果の評価をImage Quant 5.0ソフトウェアで実施した。
【0148】
材料および方法で記載されている分裂酵母(S.pombe)P3株(44)のcox1遺伝子の連続配列内のイントロン挿入部位をフランキングする領域に相当する5′末端標識PCR産物を用いてI−SpomIの切断パターンを決定した。DNAをI−SpomIで消化し、そしてシークエンシングゲル上で分離した(図3)。各々のDNA鎖は、I−SpomIでの消化の後、強いシグナルを示し、これは切断されていないDNAでは存在しない。同一DNAフラグメントのシークエンシングラダーと比較して、切断位置は、正確に局在した。これにより、切断は、センス鎖のイントロン挿入部位の2bp下流で生じ、下方の鎖の2bpが4ヌクレオチドの3′オーバーハングを作製する。この切断パターンは、他のホーミングエンドヌクレアーゼから周知である。I−Crel(17)、I−SceI(16)およびII(37)、I−CeuI(30)およびI−DmoI(20)のようなドデカペプチドファミリーのメンバーに関して、ならびにHis−Cys Box/ββα−Meタンパク質I−PpoI(53)に関して報告されている。
【実施例4】
【0149】
活性試験
プライマーSP009および前のパラグラフで記載した放射性標識プライマーSP008を用いるPCRにより、I−SpomIの基質が得られた。エンドヌクレアーゼ切断のための標準的な条件は全容量25μl中ジエタノールアミン 100mM(pH9.0)、MgCl2 0.5mM、NaCl 100mM、水 15μl中精製されたPCR産物1μlおよび最終的に調製されたエンドヌクレアーゼ5μlであった。反応物を37℃で20分間インキュベートした。MgCl2濃度は、1mM〜40mMまで変化し、NaClは、0mM〜200mMまで変化した。温度の影響を25℃〜65℃の間でモニター観察した。試験したpH値は、pH6.0(MES 30mM)、pH7.0、pH8.0(HEPES 100mM)およびpH9.0〜10.0(ジエタノールアミン 100mM)の範囲であった。前記したように反応を停止させた。これを5% ポリアクリルアミド/50% 尿素ゲル上で分離した。これを流した後、ゲルを10% 酢酸/20% エタノールの溶液に浸し、ワットマン 3MMペーパー(ワットマン、メイドストン)上に載せ、そして乾燥させた。Phosphor Imager スクリーン(Molecular Dynamics、サニーベール)に乾燥したゲルを25℃で2.5時間焼き付けし、結果を前記したソフトウェアで定量化した。
【0150】
他のホーミングエンドヌクレアーゼの活性に影響する公知のパラメーターは、溶液の1価(Na+およびK+)および2価カチオン(Mg2+およびMn2+)の濃度、温度およびプロトン濃度である。I−SpomIの活性のための最適条件を決定するために、I−SpomIエンドヌクレアーゼ活性アッセイのための基質として、イントロン挿入部位(図3A)に相対して−100bp(SP009)〜+173bp(SP008)位置にわたるPCR産物を使用する。アッセイに関しては、プライマーの1つを[γ−32P]−ATPで5′末端標識した。SpomIによる切断により173bpの長さのより小型の検出可能なバンドが作製されるはずである。その他のすべての公知のホーミングエンドヌクレアーゼに関して以前から報告されているように、I−SpomIの切断能力にMg2+が必須であることが見出された。Mg2+の不在下では、活性は検出されない(示していない)。最適Mg2+濃度は5mM〜7.5mMの範囲である(図4A)。より低いまたは高い濃度は、酵素活性には不利である。I−SpomIには、Na+が必要であるが、許容される濃度範囲は広くなる(図4B)。25℃〜65℃の異なる温度での基質の切断は、42℃で明らかに最適であった(図4C)。30℃およびそれより低い温度では、ほとんど活性が見出されなかった。I−SpomIは、65℃まで活性である。プロトン濃度の影響は、明らかにI−SpomIのアルカリ性pH条件への嗜好性を示した(図4D)。6.0〜8.0の間のpH値では、切断されたDNAの量は、約30%の低レベルに留まったが、pH9.0およびそれより高い値では、切断は、85%まで上昇した。
【0151】
I−ScaI(43)に関しては、最適切断条件は以下のように報告されている:Mg2+ 8mM、Na+ 約50mM、28℃〜40℃の間の温度、8.5〜9.0の間のpH。高温およびアルカリ性pH値の嗜好性は、I−SceI(29)およびIII(54)に非常に類似しており、双方共に細菌内で発現される。対照的に酵母ミトコンドリアから抽出されるI−SceII(19)は、中性pHおよびおよそ30℃の温度を好む。
【実施例5】
【0152】
認識配列の決定
前記したように、イントロンcox1I1bの挿入部位近くの−13〜+12位置までのヌクレオチド配列を含有するプラスミドを使用した(図5A参照)。混合物を95℃で3分間変性し、そして4℃までゆっくりと冷却した後、相補的オリゴヌクレオチドをNEBuffer2(New England Biolabs、ベバリー)中でアニーリングした。これをBamHI/HindIII消化pUC19にクローン化した。組換えプラスミドを大腸菌(E.coli)DH10B株内でエレクトロポレーションにより形質転換し、そしてその後、アルカリ性プラスミド調製物のEcoRV/XmnI消化により検査した(50)。QIAフィルターチップ100プロトコル(QLAGEN、ヒルデン)にしたがってLBA40mlの培養物から組換えプラスミドのDNAを調製した。調製したプラスミドの濃度を0.3μg/μlに調整した。プラスミドをI−SpomIに暴露する前に、NdeIおよびAlwNIで37℃で3時間消化し、続いて65℃で20分間処理し、沈殿させ、そして最終濃度0.1μg/mlになるまで水に溶解した。I−SpomI消化を容量50μl(DNA 250ng、ジエタノールアミン 100mM(pH9.6)、MgCl2 5mM、NaCl 100mM、I−SpomI 5μl)で実施した。停止溶液(Tris−HCl 0.1M(pH7.5)、EDTA 0.25M、SDS 5%)0.1容量を添加し、そして65℃で3分間インキュベートして消化を停止させ、続いてフェノール抽出および沈殿を行った。消化産物を水10μlに再懸濁し、そしてアガロースゲル 0.8%上で分離した。泳動後、ゲルを臭化エチジウム 0.5μg/μlで染色し、そしてDNAを真空ブロットによりHybond−N+ナイロン膜(Amersham Pharmcia Biotech、リトルチャルフォント)に移した。移した後、膜をハイブリダイゼーションバッファー(リン酸バッファー 0.25M、SDS 7%、EDTA 1mM、BSA 1%)中65℃で1.5時間プレハイブリダイズし、次いでプローブとしてランダム標識pUC19を用いて一晩ハイブリダイズした(52)。シンチレーションカウンターで最終プローブ調製物1μlアリコート中の標識の組み込みを決定した。ハイブリダイゼーションの後、プローブを含有するバッファーを除去し、膜をハイブリダイゼーションバッファーで65℃で洗浄し、そしてPhosphor Imager スクリーン(Molecular Dynamics、サニーベール)に25℃で2.5時間焼き付けし、そして結果を前記したように記述した。
【0153】
I−SpomIの認識部位の範囲を決定するために、イントロン挿入部位をフランキングする−13〜+12の領域に一度に1つの塩基転換を導入することにより変異された配列を合成した。材料および方法に記載するように変異アレルを合成することによりこれを行った。プラスミドのNdelおよびA1wNIでの消化の結果、それぞれ1652bpおよび1041bpの2つのバンドになり、最も小型のものは、I−SpomI切断部位を含有する。I−SpomIによるこのフラグメントの消化により801bpおよび240bpの2つのバンドを生じ、これを図5Aに示す。異なる変異体の切断実験の結果を図5Aの囲み「切断」および「%」にまとめる。−11、−10、−8〜−4、+2〜+6、+8および+9は、I−SpomIによる基質認識に必須である。−4および+2位置でのヌクレオチドの塩基転換は、ほぼ完全に切断を無効にする。中央の位置−3〜+1まで、および−9および+7の位置の配列の縁でのいくつかのヌクレオチドにおける変化は、認識事象に影響しない。このように部位の範囲は、全部で20bpである。これらの20bp内では、14個のみがI−SpomI特異性に必須である。
【0154】
【表1】
【図面の簡単な説明】
【0155】
【図1A】図1は、プラスミドインサートを表す。分裂酵母(Schizosaccharomyces pombe)のcox1IbイントロンのRNA2次構造である。2つのLAGLIDADGモチーフ(P1およびP2)から成るエンドヌクレアーゼのコアをコードするヌクレオチドは、ループ8(L8)に位置する。I−SpomIの生化学的特性に関して、L8の全コドンを含むPCRフラグメントを発現ベクターpET16bにクローニングした。*は、プライマーSP003における人工開始コドンを示す。ループの終末のボックスは、停止コドン示している。
【図1B】図1は、プラスミドインサートを表す。I−SpomIリーディグ・フレームのクローン化されたフラグメントである。最上の図式は、分裂酵母(Schizosaccharomyces pombe)の第1エクソン(cox1E1)の全配列およびcox1遺伝子におけるイントロンを表す。灰色:元来の出発コドンATGを有するエクソンcox1E1。暗灰色:全ORF1560ヌクレオチドのうちの912ヌクレオチドはRNAレベルでL8を構築する領域に位置する。黒色:LAGLIDADGモチーフのコード化配列。淡灰色:ループの配列に関しては、1から7は領域aに位置する。白色:TAA停止コドンに対して下流の配列非コード化領域はループ9に位置する。 エクソンで出発し、イントロンcox1I1bの停止コドンに及ぶ全リーディグ・フレーム1560ヌクレオチドにわたるPCRフラグメントをpET16bにクローニングし、プラスミドpSP001を得た。プラスミドpSP005は、ORFの全5′−エクソン部分を欠如するが、一方、pSP003は、配列のループ8部分に限定されるフラグメントを含有した。クローニングに用いられた制限酵素を示す。 図2は、I−SpomIの発現および精製を示す。
【図2A】精製クロマグラムである。Hisタグ化I−SpomIを、参考書にて説明されるように大腸菌(E.coli)に発現させた。大腸菌細胞破壊に続いて、上澄をNi2+で荷電したHiTrap キレーティング・アフィニティ・カラム 1ml(アメルシャム・ファルマシア・バイオテックAmercham Pharmacia Biotech、Little、リトルチャルフォント)に負荷し、溶解バッファー(HEPES 30mM、pH8、NaCl 300mM、イミダゾール 20mM)で流速1ml/分で平衡化した。I−SpomIエンドヌクレアーゼは、そのN末端Hisタグを介して結合し、一方、不純物は、溶解バッファーと共に洗い流される。伝導率により測定したバッファー中のイミダゾール濃度を増加させることによりタンパク質の溶出を実施した。イミダゾール濃度200mMでカラムから洗い流した画分にエンドヌクレアーゼバンドが見出された。λ=260nmおよびλ=280nmでの吸光度をモニター観察した。
【図2B】ピーク画分4〜11の12% SDS−PAGEである。画分6をアッセイに使用した。
【図2C】アフィニティクロマトグラフィー後のI−SpomI調製物のウェスタンブロットである。トランケートされたタンパク質のバンドは、未染色New England Biolabs Broad Rangeマーカー36.5kDaバンドより上に現れ、これは38.7kDaの推定された大きさとよく相関する。 図3は、I−SpomIの切断部位の決定を表す。
【図3A】5′−末端標識I−SpomI基質を作製するために用いられたプライマーである。各オリゴヌクレオチドの双方の末端は、イントロン挿入部位からの距離に応じて数字が付けられている。
【図3B】I−SpomIの切断部位である。2つの異なる末端標識DNA鋳型を、5′−γ32P末端標識プライマーSP009、SP008またはSP010を用いてPCR反応により調製した。次いでDNA基質を、I−SpomIと共にインキュベートした。切断後、DNAフラグメントを、同一DNA配列のシークエンシングラダーの隣のシークエンシングゲル上で電気泳動した。矢印は、センス鎖(左)およびアンチセンス鎖(右)のリン酸ジエステル結合の切断を示す。切断パターンを下部の図にまとめているが、これは、ねじれた線で表され、点線は、イントロン挿入部位の位置を示す。部位の配列は、部分的対称を示している。 図4は、I−SpomI切断の最適条件の決定を表す。切断生成物%は、173bpの長さの切断フラグメントからのシグナルと合計シグナル(このフラグメントのシグナルに未切断基質273bpの放射活性を加える)との間の比率により表される。
【図4A】Mg2+濃度である。PCR生成物SP009〜SP008 1μlを、I−SpomI溶液 5μlと共に全量25μlでインキュベートした。反応バッファーはpH9.0のジエタノールアミン/HCl 0.1M、NaCl 0.1Mおよび1mM〜40mMの種々濃度のMgCl2を含有した。37℃で20分間反応を実施した。
【図4B】Na+濃度である。反応容量およびPCR生成物の加えた容量は、Aの下に記載した。反応バッファーは、pH9.0のジエタノールアミン/HCl 0.1M、MgCl2 2.5mMおよび0M〜0.2Mの種々濃度のNaClを含有した。37℃で20分間反応を実施した。
【図4C】温度である。反応容量およびPCR生成物の加えた容量は、Aの下に記載した。反応バッファーは、pH9.0のジエタノールアミン/HCl 0.1M、MgCl2 2.5mMおよびNaCl 0.1Mを含有した。反応物を、25〜65℃で20分間インキュベートした。
【図4D】pHである。反応容量およびPCR生成物の加えた容量は、Aの下に記載した。反応バッファーは、pH6.0のMES 0.03M、pH7.0またはpH8.0のHEPES 0.1M、pH9.0、9.2、9.4、9.6、9.8または10のジエタノールアミン/HCl 0.1M、MgCl2 2.5mMおよびNaCl 0.1Mを含有した。37℃で20分間反応を実施した。 なお、MG2+、Na+および温度に関するアッセイを、同一の酵素調製物で実施したことに留意されたい。37℃で20分の消化の後、切断された生成物の最大値は、全DNAの約30%であった。異なるpH値でのアッセイを、別の酵素調製物で実施し、そして最適条件下での切断効率は約85%であった。 図5は、I−SpomI認識配列の決定を表す。
【図5A】I−SpomIと共にインキュベートした後のプラスミドpP3E5〜2のNdeI−AlwNIフラグメントの電気泳動分析である。サザンブロッティングおよびランダム標識pUC19でのハイブリダイゼーションによりDNAフラグメントを顕示した。1kbフラグメントは、I−SpomI部位を含有し、これはI−SpomIによる切断の後各々0.8kbおよび0.2kbの2つのフラグメントを生じる。一連のプラスミドをアッセイに用い、各々のプラスミドは、下に示す野生型エクソン−エクソン配列の単一のヌクレオチド変異を含有する。各々の変異は、野生型配列に比較して塩基転換に相当する。 ねじれた線は、切断部位を示す。「切断」と記されたボックスでは、各変異体の効果を示す:+=変異体は、野生型と同様に切断される;0=切断低下;−=切断なし。%値は、野生型配列に対する各変異配列におけるI−SpomIの相対切断効率を指している。値は、切断生成物と野生型配列に関する変異配列の間の比率を%で示す。0.8kbバンドを1.0kbおよび0.8kbバンドに存在する全DNAと比較する。
【図5B】DNA領域のらせん表示である。矢印は、鎖切断が導入される位置を示す。
【図6】グループIイントロンの末梢ループのORFを示す。グループIイントロン2次構造の概略図は、LAGLIDADG型タンパク質のORFの挿入部位を示す。Ce:クラミドモナス・ユーガメトス(Chlamydomonas eugametos)。Cr:クラミドモナス・レインハルディッティ(Chlamydomonas reinhardtii)。Cs:クラミドモナス・スミティ(Chlamydomonas smithii)。En:エメリセラ・ニデュランス(Emericella nidulans)。Kt:クルイベロミセス・サーモトレランス(Kluyveromyces thermolerans)。Ne:ニューロスポラ・クラッサ(Neurospora crassa)。Pa:ポドスポラ・アンセリナ(Podospora anserina)。Sc:パン酵母(Saccharomyces cerevisiae)。Sp:分裂酵母(Schizosaccharomyces pombe)。
【図7】cox1の第1のエクソンのヌクレオチド配列にI−SpomIをコードするイントロンを加えたものを示す(配列番号:8)。
【図8】I−SpomI酵素をコードするヌクレオチド配列を表す(配列番号:9)。
【図9】I−SpomI認識部位のヌクレオチド配列を表す(配列番号:10)。
【図10】天然I−SpomIタンパク質のアミノ酸配列を表す(配列番号:11)。
【図11】I−SpomIタンパク質のアミノ酸配列を表す(配列番号:12)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号:8のヌクレオチド配列またはそのフラグメントを含む単離されたDNA配列であって、SpomIエンドヌクレアーゼ活性を有するポリペプチドをコードするDNA配列。
【請求項2】
配列番号:9のヌクレオチド配列またはそのフラグメントを含む単離されたDNA配列であって、I−SpomIエンドヌクレアーゼ活性を有するポリペプチドをコードするDNA配列。
【請求項3】
請求項1または2のヌクレオチド配列に相補的な単離されたRNA。
【請求項4】
I−SpomI酵素の発現を指示する発現ベクター。
【請求項5】
上記ベクターが、哺乳動物細胞において上記酵素を発現する、請求項4記載のベクター。
【請求項6】
上記ベクターが、アデノウイルスベクターである、請求項5記載のベクター。
【請求項7】
上記ベクターが、昆虫細胞において上記酵素を発現する、請求項4記載のベクター。
【請求項8】
I−SpomI制限部位を含むベクター。
【請求項9】
I−SpomI部位を含む組換え染色体。
【請求項10】
I−SpomI部位を含む組換え細胞。
【請求項11】
上記染色体が、真核または原核生物に由来する、請求項9記載の組換え染色体。
【請求項12】
上記細胞が、真核または原核生物に由来する、請求項10記載の組換え細胞。
【請求項13】
更にグループIイントロンコード化エンドヌクレアーゼ部位を含む、請求項10記載の細胞。
【請求項14】
上記グループIイントロンコード化エンドヌクレアーゼ部位が、I−CeuI、I−CreI、I−DmoIおよびI−SceI部位から選択される、請求項13記載の細胞。
【請求項15】
I−SpomI酵素をコードする核酸を含む組換え染色体。
【請求項16】
I−SpomI酵素をコードする核酸を含む組換え細胞。
【請求項17】
上記染色体が、真核または原核生物に由来する、請求項15記載の組換え染色体。
【請求項18】
上記細胞が、真核または原核生物に由来する、請求項16記載の組換え細胞。
【請求項19】
上記染色体が、哺乳動物、昆虫、菌類、植物、酵母、細菌または線虫生物に由来する、請求項11または17記載の組換え染色体。
【請求項20】
上記細胞が、哺乳動物、昆虫、菌類、植物、酵母、細菌または線虫生物に由来する、請求項12または18記載の組換え細胞。
【請求項21】
I−SpomI部位を含む組換え染色体を含むトランスジェニック生物。
【請求項22】
I−SpomI酵素をコードする核酸を含むトランスジェニック生物。
【請求項23】
上記生物が、哺乳動物、昆虫、菌類、植物、酵母、細菌または線虫生物である、請求項21または22記載のトランスジェニック生物。
【請求項24】
(a)少なくとも1つのI−SpomI制限部位を含む2本鎖DNAを含有する細胞を提供すること;
(b)I−SpomIエンドヌクレアーゼを有する細胞を提供すること;および
(c)少なくとも1つの2本鎖切断が誘導されている細胞を選択すること;
を含む、細胞のDNAにおいて少なくとも1つの部位指定2本鎖切断を誘導する方法。
【請求項25】
上記細胞が、哺乳動物、昆虫、菌類、植物、酵母、細菌または線虫細胞である、請求項24記載の方法。
【請求項26】
(a)少なくとも1つのI−SpomI制限部位を含む染色体DNAを含有する細胞を提供すること;
(b)上記細胞にI−SpomI酵素および外来性DNAを提供すること;および
(c)上記外来性DNAが、上記染色体DNAに挿入されている細胞を選択すること;
を含む、細胞の染色体DNAおよび上記細胞に加えられた外来性DNA間で相同組換えを誘導する方法。
【請求項27】
上記細胞が、哺乳動物、昆虫、菌類、植物、酵母、細菌または線虫細胞である、請求項26記載の方法。
【請求項28】
(a)少なくとも1つのI−SpomI制限部位および少なくとも1つのさらなるグループIイントロンコード化エンドヌクレアーゼ部位を含むDNAを含有する細胞を提供すること;
(b)I−SpomIエンドヌクレアーゼおよびグループIイントロンコード化エンドヌクレアーゼを有する細胞を提供すること;および
(c)少なくとも2つの2本鎖切断が誘導されている細胞を選択すること;
を含む、細胞のDNAにおいて少なくとも1つの部位指定2本鎖切断を誘導する方法。
【請求項29】
上記グループIイントロンコード化エンドヌクレアーゼが、I−CeuI、I−CreI、I−DmoIおよびI−SceI部位から選択される、請求項28記載の方法。
【請求項30】
上記細胞が、哺乳動物、昆虫、菌類、植物、酵母、細菌または線虫細胞である、請求項28記載の方法。
【請求項31】
I−SpomIエンドヌクレアーゼ活性を有するポリペプチドをコードするDNA配列を含むベクター。
【請求項32】
上記ベクターが、受入番号I−2643のもとでCNCMに寄託されているプラスミドである、請求項32記載のベクター。
【請求項33】
配列番号:11のアミノ酸配列またはそのフラグメントを含む単離されたポリペプチドであって、I−SpomIエンドヌクレアーゼ活性を有するポリペプチド。
【請求項34】
配列番号:12のアミノ酸配列またはそのフラグメントを含む単離されたポリペプチドであって、I−SpomIエンドヌクレアーゼ活性を有するポリペプチド。
【請求項1】
配列番号:8のヌクレオチド配列またはそのフラグメントを含む単離されたDNA配列であって、SpomIエンドヌクレアーゼ活性を有するポリペプチドをコードするDNA配列。
【請求項2】
配列番号:9のヌクレオチド配列またはそのフラグメントを含む単離されたDNA配列であって、I−SpomIエンドヌクレアーゼ活性を有するポリペプチドをコードするDNA配列。
【請求項3】
請求項1または2のヌクレオチド配列に相補的な単離されたRNA。
【請求項4】
I−SpomI酵素の発現を指示する発現ベクター。
【請求項5】
上記ベクターが、哺乳動物細胞において上記酵素を発現する、請求項4記載のベクター。
【請求項6】
上記ベクターが、アデノウイルスベクターである、請求項5記載のベクター。
【請求項7】
上記ベクターが、昆虫細胞において上記酵素を発現する、請求項4記載のベクター。
【請求項8】
I−SpomI制限部位を含むベクター。
【請求項9】
I−SpomI部位を含む組換え染色体。
【請求項10】
I−SpomI部位を含む組換え細胞。
【請求項11】
上記染色体が、真核または原核生物に由来する、請求項9記載の組換え染色体。
【請求項12】
上記細胞が、真核または原核生物に由来する、請求項10記載の組換え細胞。
【請求項13】
更にグループIイントロンコード化エンドヌクレアーゼ部位を含む、請求項10記載の細胞。
【請求項14】
上記グループIイントロンコード化エンドヌクレアーゼ部位が、I−CeuI、I−CreI、I−DmoIおよびI−SceI部位から選択される、請求項13記載の細胞。
【請求項15】
I−SpomI酵素をコードする核酸を含む組換え染色体。
【請求項16】
I−SpomI酵素をコードする核酸を含む組換え細胞。
【請求項17】
上記染色体が、真核または原核生物に由来する、請求項15記載の組換え染色体。
【請求項18】
上記細胞が、真核または原核生物に由来する、請求項16記載の組換え細胞。
【請求項19】
上記染色体が、哺乳動物、昆虫、菌類、植物、酵母、細菌または線虫生物に由来する、請求項11または17記載の組換え染色体。
【請求項20】
上記細胞が、哺乳動物、昆虫、菌類、植物、酵母、細菌または線虫生物に由来する、請求項12または18記載の組換え細胞。
【請求項21】
I−SpomI部位を含む組換え染色体を含むトランスジェニック生物。
【請求項22】
I−SpomI酵素をコードする核酸を含むトランスジェニック生物。
【請求項23】
上記生物が、哺乳動物、昆虫、菌類、植物、酵母、細菌または線虫生物である、請求項21または22記載のトランスジェニック生物。
【請求項24】
(a)少なくとも1つのI−SpomI制限部位を含む2本鎖DNAを含有する細胞を提供すること;
(b)I−SpomIエンドヌクレアーゼを有する細胞を提供すること;および
(c)少なくとも1つの2本鎖切断が誘導されている細胞を選択すること;
を含む、細胞のDNAにおいて少なくとも1つの部位指定2本鎖切断を誘導する方法。
【請求項25】
上記細胞が、哺乳動物、昆虫、菌類、植物、酵母、細菌または線虫細胞である、請求項24記載の方法。
【請求項26】
(a)少なくとも1つのI−SpomI制限部位を含む染色体DNAを含有する細胞を提供すること;
(b)上記細胞にI−SpomI酵素および外来性DNAを提供すること;および
(c)上記外来性DNAが、上記染色体DNAに挿入されている細胞を選択すること;
を含む、細胞の染色体DNAおよび上記細胞に加えられた外来性DNA間で相同組換えを誘導する方法。
【請求項27】
上記細胞が、哺乳動物、昆虫、菌類、植物、酵母、細菌または線虫細胞である、請求項26記載の方法。
【請求項28】
(a)少なくとも1つのI−SpomI制限部位および少なくとも1つのさらなるグループIイントロンコード化エンドヌクレアーゼ部位を含むDNAを含有する細胞を提供すること;
(b)I−SpomIエンドヌクレアーゼおよびグループIイントロンコード化エンドヌクレアーゼを有する細胞を提供すること;および
(c)少なくとも2つの2本鎖切断が誘導されている細胞を選択すること;
を含む、細胞のDNAにおいて少なくとも1つの部位指定2本鎖切断を誘導する方法。
【請求項29】
上記グループIイントロンコード化エンドヌクレアーゼが、I−CeuI、I−CreI、I−DmoIおよびI−SceI部位から選択される、請求項28記載の方法。
【請求項30】
上記細胞が、哺乳動物、昆虫、菌類、植物、酵母、細菌または線虫細胞である、請求項28記載の方法。
【請求項31】
I−SpomIエンドヌクレアーゼ活性を有するポリペプチドをコードするDNA配列を含むベクター。
【請求項32】
上記ベクターが、受入番号I−2643のもとでCNCMに寄託されているプラスミドである、請求項32記載のベクター。
【請求項33】
配列番号:11のアミノ酸配列またはそのフラグメントを含む単離されたポリペプチドであって、I−SpomIエンドヌクレアーゼ活性を有するポリペプチド。
【請求項34】
配列番号:12のアミノ酸配列またはそのフラグメントを含む単離されたポリペプチドであって、I−SpomIエンドヌクレアーゼ活性を有するポリペプチド。
【図1A】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−253273(P2008−253273A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−131992(P2008−131992)
【出願日】平成20年5月20日(2008.5.20)
【分割の表示】特願2002−574355(P2002−574355)の分割
【原出願日】平成14年3月12日(2002.3.12)
【出願人】(593218462)インスティチュート・パスツール (19)
【氏名又は名称原語表記】INSTITUT PASTEUR
【出願人】(595040744)サントル・ナショナル・ドゥ・ラ・ルシェルシュ・シャンティフィク (88)
【氏名又は名称原語表記】CENTRE NATIONAL DE LA RECHERCHE SCIENTIFIQUE
【出願人】(596076573)
【復代理人】
【識別番号】100147533
【弁理士】
【氏名又は名称】岡崎 祐一
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−131992(P2008−131992)
【出願日】平成20年5月20日(2008.5.20)
【分割の表示】特願2002−574355(P2002−574355)の分割
【原出願日】平成14年3月12日(2002.3.12)
【出願人】(593218462)インスティチュート・パスツール (19)
【氏名又は名称原語表記】INSTITUT PASTEUR
【出願人】(595040744)サントル・ナショナル・ドゥ・ラ・ルシェルシュ・シャンティフィク (88)
【氏名又は名称原語表記】CENTRE NATIONAL DE LA RECHERCHE SCIENTIFIQUE
【出願人】(596076573)
【復代理人】
【識別番号】100147533
【弁理士】
【氏名又は名称】岡崎 祐一
【Fターム(参考)】
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