説明

分解輸送変圧器の鉄心輸送方法

【課題】作業工数が削減できて経済的に輸送ができる分解輸送変圧器の鉄心輸送方法を提供する。
【解決手段】分解輸送変圧器の鉄心輸送方法は、珪素鋼板を積層した主脚2と側脚3を有する鉄心脚と上下の継鉄部4,5とからなる鉄心1と、主脚2に巻回された内側巻線及び外側巻線とにより分解輸送変圧器を構成し、鉄心1は珪素鋼板の間に絶縁媒体を通過させる油道6を介在させた分解輸送変圧器の鉄心輸送方法において、主脚2は油道6を境として複数の主脚輸送単位に分割し、これら主脚輸送単位をそれぞれ輸送タンク内に収納して輸送する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分解輸送変圧器の鉄心輸送方法に係り、特に作業工数が削減できて経済的に輸送ができる分解輸送変圧器の鉄心輸送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、送変電用に使用される変圧器は、電力需要の増大に伴い高電圧化・大容量化してきており、また地価の高騰により輸送条件が一段と厳しい山間地や都心の地下等に据付けられる傾向にある。そのため、変圧器の輸送寸法や重量及び据付スペースの大幅な低減が必要となっている。
【0003】
通常三相変圧器は、図6に示す如く珪素鋼板(図示せず)を積層した主脚2や、側脚3等の鉄心脚及び上下の継鉄部4、5からなる三相5脚や三相3脚(図示せず)の鉄心1と、この鉄心1の主脚2に巻回された内側巻線及び外側巻線(図示せず)とにより変圧器本体が構成される。そして、変圧器本体は、製作工場において完全な乾燥処理を行い、絶縁強度の高い絶縁油又は絶縁ガスと共に変圧器収納タンクの内部に収納される構造となっている。
【0004】
また、鉄心1は、積層された珪素鋼板の間に、上記の絶縁油又は絶縁ガス等の絶縁媒体を通過させる油道と呼ばれる絶縁媒体を通過させる隙間(図示せず)が複数箇所に介在している。これにより、鉄心脚内部を冷却しつつ、鉄心脚と上下継鉄部との絶縁を保つので、良好な絶縁特性を維持することができる。
【0005】
しかし、変圧器が大型ともなると、輸送上の制約からある程度まで変圧器本体を各部分に分解する必要が生じる。変圧器本体の輸送時の分解の程度は、輸送方法による制限寸法と制限重量によって決まる。
【0006】
従来、上記の変圧器の分解輸送方式では、まず、輸送元の工場で組立てて試験を行った変圧器本体を、鉄心、巻線に分割する。次に、鉄心は更に鉄心脚、上下継鉄部等各部分に分割し、これらを支持部材及びバインド等で固定する。そして、それぞれ専用の輸送タンクに収納して現地まで輸送し、各輸送タンクを現地のクリーンルームに運び込んで開梱し、上記の各部分を取出してこれらを再組立した後、乾燥、試験等を行って変圧器を完成させる。
【0007】
尚、クリーンルームとは、室内の塵や湿気を除く等、室内雰囲気の状態を一定に保つ手段を有する部屋のことを言う。
【0008】
上記の分解輸送方式によれば、最重量の構成物となる鉄心は分解して輸送されるため、例えば総重量100トンの鉄心でも20トン程度の一般的なトレーラで輸送が可能となり、輸送上の制約を無くす事が出来ると共に、道路補強をせずに分解輸送変圧器を輸送できる。
【0009】
また、分解輸送変圧器では、分割された主脚の輸送方法(以下、鉄心輸送方法と言う。)は、容易且つ経済的に行うために種々の工夫がなされている。例えば、珪素鋼板が積層して形成された鉄心を各鉄心脚と上下の継鉄部とに分割すると共に、鉄心脚の中心付近の分割面で各鉄心脚を2分割し、分割された鉄心脚をそれぞれ別個に梱包して、珪素鋼板がほぼ水平な状態を保持して据付場所に輸送することで、容易に輸送ができる鉄心輸送方法が提供されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2008−147545号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、送変電用に使用される変圧器は、最近ではさらに大容量化して1000MVAを超える変圧器の設置が求められており、鉄心の総重量が200トンを超えるものとなっている。従って、従来の鉄心輸送方法では、変圧器から分解した鉄心においても25トンを超えるため輸送上の制約が生じてしまい、道路補強等の別途手段が必要になって経済的な鉄心輸送ができなくなるという問題があった。
【0012】
本発明の目的は、作業工数が削減できて経済的に輸送ができる分解輸送変圧器の鉄心輸送方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の分解輸送変圧器の鉄心輸送方法は、珪素鋼板を積層した主脚と上下の継鉄部を少なくとも有する鉄心と、前記主脚に巻回された内側巻線及び外側巻線とにより分解輸送変圧器を構成し、前記鉄心は前記珪素鋼板の間に絶縁媒体を通過させる油道を介在させた分解輸送変圧器の鉄心輸送方法において、前記主脚を前記油道を境として複数の主脚輸送単位に分割し、前記主脚輸送単位をそれぞれ輸送タンク内に収納して輸送することを特徴としている。
【0014】
好ましくは、前記主脚は3つの単位に分割したことを特徴としている。
【0015】
また好ましくは、前記主脚は4つの単位に分割したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
本発明の分解輸送変圧器の鉄心輸送方法によれば、主脚は油道を境として複数の主脚輸送単位に分割したことにより、作業工数が削減できて経済的に輸送ができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施例である3つの主脚輸送単位に分割された主脚を示す概略横断面図である。
【図2】図1の主脚輸送単位の輸送姿を示す概略正面図である。
【図3】図1の別の主脚輸送単位の輸送姿を示す概略正面図である。
【図4】図1の中心部又は端部の主脚輸送単位の輸送姿を示す概略平面図である。
【図5】本発明の別の実施例である4つの主脚輸送単位に分割された主脚を示す概略横断面図である。
【図6】従来の分解輸送変圧器の鉄心の構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、三相5脚鉄心に適用した例について図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0019】
本発明による分解輸送変圧器の鉄心輸送方法の実施例を図1ないし図4に示しており、従来と同様の部分は同符号を用いている。
【0020】
本実施例における分解輸送変圧器は、三相5脚の鉄心1と主脚2に巻回された内側巻線及び外側巻線(図示せず)とにより構成し、鉄心1は珪素鋼板の間に絶縁媒体を通過させる油道6を複数箇所に介在している。また、主脚2は、油道6を境として複数の主脚輸送単位2A、2Bに分割し、これら主脚輸送単位2A、2Bをそれぞれ輸送タンク12内に収納して現地へ輸送する。
【0021】
上記の主脚2は、分解輸送変圧器からの分解後の輸送時において、過大な重量にならないように複数の輸送単位に分割して輸送単位重量を軽量化する。三相5脚鉄心の場合、1000MVAクラスでは鉄心の総重量が200トン程度あるため、輸送重量が25トン以下になるように分割されなければならない。
【0022】
本実施例では、図1に示す如く主脚2は、油道6を境として3つの単位に分割する。即ち、中心部の主脚輸送単位2Aを1つの単位、及び端部の主脚輸送単位2Bを2つの単位に構成し、輸送単位重量を軽量化している。この際、油道6を境とするのは、主脚2の組立又は分解時において、油道6中は絶縁媒体が存在せず空洞となり、各主脚輸送単位2A、2Bへの分割又は接続が容易になるためである。また、主脚2は各主脚輸送単位2A、2Bの横断面面積をそれぞれ略均等にするように分割する。
【0023】
分割された各主脚輸送単位2A、2Bは、それぞれ専用の輸送タンク内に収納し、据付固定した後に現地へ輸送する。輸送時には、分割された各主脚輸送単位2A、2Bはそれぞれ横倒しした状態で、且つ主脚2を構成する積層された珪素鋼板が略水平になるように配置する。以下、各主脚輸送単位2A、2Bの輸送タンクへの収納及び据付固定の過程を図2ないし図4を用いて説明する。
【0024】
主脚2より分割された中心部の主脚輸送単位2A又は端部の主脚輸送単位2Bは、図2又は図3に示す如く主脚輸送単位2A又は2Bの上下に締付金具7が複数箇所に抱き合わせて取付ける。この際、主脚輸送単位2A又は2Bと締付金具7の間及び主脚輸送単位2A又は2Bの左右にはプレスボード8を介在させる。
【0025】
次に、締付ロッド9により上下の締付金具7を互いに締付けるよう固定する。そして、各締付金具7の上部に各締付金具7と直交する方向に締付固定金具10を取付け、各締付金具7の間隔を保つように各締付金具7を固定する。
【0026】
これら締付金具7、プレスボード8、締付ロッド9、締付固定金具10の固定により、主脚輸送単位2A又は2Bは輸送時発生する揺れや衝撃によるショックに耐え損傷が抑制されるようになり、輸送時においても主脚輸送単位2A又は2Bは高い品質を保持することができる。
【0027】
その後、この固定された主脚輸送単位2A又は2Bは、それぞれ輸送タンク12に収納して据付固定する。この際、図4に示す如く下部の締付金具7は、固定ボルト(図示せず)にて座11の複数箇所に固定する。また、座11を、輸送タンク12の底部に溶接にて固定する。これにより、主脚輸送単位2A又は2Bが輸送タンク12内で動くことが抑制される。
【0028】
以上のように、輸送タンク12内に据付固定された主脚輸送単位2A又は2Bは、別個に現地へ輸送され、現地においてそれぞれ順次組立てて主脚2を組立てて、最終的に分解輸送変圧器を構成する。
【0029】
上記の主脚2の分割において、各主脚輸送単位2A、2Bの横断面面積をそれぞれ略均等にすることにより、各主脚輸送単位2A、2Bの重量が均等になる。これにより、主脚2を3分割することで輸送重量を25トン以下に抑えることができ、各主脚輸送単位2A、2Bそれぞれ3つの単位を全て一般的なトレーラで輸送がすることができ、輸送上の制約を無くす事が出来ると共に、道路補強をせずに主脚輸送単位2A、2Bを輸送できるので、輸送費の大幅な低減ができる。
【0030】
また、主脚2の分割の境とする油道6は、上記した珪素鋼板の間に設けられるため、各主脚輸送単位2A、2Bの分割面は珪素鋼板の端面と平行となり、輸送タンク12の座11にも水平に容易に各主脚輸送単位2A、2Bの据付ができる。従って、従来よりも工数を低減することができる。
【0031】
以上の本実施例では、工数低減ができて経済的な主脚輸送単位の輸送ができる。
【実施例2】
【0032】
本発明による分解輸送変圧器の鉄心輸送方法の別の実施例を図5に示しており、従来と同様の部分は同符号を用いている。
【0033】
本実施例では、図5に示す如く主脚2は、油道6を境として4つの単位に分割して、中心部の主脚輸送単位2Cを2つの単位、及び端部の主脚輸送単位2Dを2つの単位に構成し、輸送単位重量を軽量化している。また、実施例1同様に、主脚2は各主脚輸送単位2C、2Dの横断面面積をそれぞれ略均等にするように分割する。
【0034】
これにより、実施例1同様に主脚2を分割することで輸送重量を25トン以下に抑えることができ、各主脚輸送単位2C、2Dそれぞれ4つの単位を全て一般的なトレーラで輸送がすることができ、輸送上の制約を無くす事が出来ると共に、道路補強をせずに主脚輸送単位2C、2Dを輸送できるので、輸送費の大幅な低減ができる。
【0035】
また、主脚2の分割の境とする油道6は、上記した珪素鋼板の間に設けられるため、各主脚輸送単位2C、2Dの分割面は珪素鋼板の端面と平行となり、輸送タンク12の座11にも水平に容易に各主脚輸送単位2C、2Dの据付ができる。従って、従来よりも工数を低減することができる。
【0036】
更に、本実施例では実施例1よりも主脚2の分割数を増やしたことにより、主脚2の分解及び組立の工数は増加するものの、主脚輸送単位2C、2Dの輸送重量が小さくなるので、これらの輸送及び組立をより安全に行うことができる。
【0037】
本実施例では、主脚の分割及び輸送について説明したが、側脚や上下の継鉄部についても、同様に複数の単位に分割して輸送することができる。また、本実施例では、三相5脚鉄心以外にも、三相3脚鉄心、単相3脚鉄心又は単相2脚鉄心についても適用することができる。三相3脚鉄心又は単相2脚鉄心に適用する場合は、これらの鉄心は主脚及び上下の継鉄部のみの構成になるが、これらは全て等しく重量物となるため、上下の継鉄部も複数の単位に分割して輸送することが好ましい。
【0038】
以上、本発明の分解輸送変圧器の鉄心輸送方法によれば、主脚は油道を境として複数単位に分割することにより、工場から現地まで一般トレーラで輸送することが可能となり、また、輸送時に特別な車両の使用や輸送経路における大掛かりな橋梁の補強を含めた道路補強工事が不要となるので、作業工数が削減できて経済的に輸送ができる。
【符号の説明】
【0039】
1…鉄心、2…主脚、2A、2B、2C、2D…主脚輸送単位、3…側脚、4…上継鉄部、5…下継鉄部、6…油道、12…輸送タンク。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
珪素鋼板を積層した主脚と上下の継鉄部を少なくとも有する鉄心と、前記主脚に巻回された内側巻線及び外側巻線とにより分解輸送変圧器を構成し、前記鉄心は前記珪素鋼板の間に絶縁媒体を通過させる油道を介在させた分解輸送変圧器の鉄心輸送方法において、前記主脚を前記油道を境として複数の主脚輸送単位に分割し、前記主脚輸送単位をそれぞれ輸送タンク内に収納して輸送することを特徴とする分解輸送変圧器の鉄心輸送方法。
【請求項2】
請求項1において、前記主脚は3つの単位に分割したことを特徴とする分解輸送変圧器の鉄心輸送方法。
【請求項3】
請求項1において、前記主脚は4つの単位に分割したことを特徴とする分解輸送変圧器の鉄心輸送方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−287775(P2010−287775A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−141194(P2009−141194)
【出願日】平成21年6月12日(2009.6.12)
【出願人】(501383635)株式会社日本AEパワーシステムズ (168)
【Fターム(参考)】