説明

分離型液体調味料

【課題】トマトの風味及び旨味が増強された液体調味料を提供する。
【解決手段】水、増粘剤、グルタミン酸ナトリウム、にんにく、ホワイトペッパー、砂糖、食塩、チキンブイヨン、醸造酢、たまねぎ、トマト原料を所定量配合し、撹拌混合して溶解し、調味液(水相部)を調製した。該水相部を80℃で4分間保持することにより殺菌処理を行った後、冷却し、常温とした後に容器に充填し、次いでジアシルグリセロール高含有油脂を充填することにより液体調味料を調製した。該液体調味料は、ジアシルグリセロールを4質量%以上含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油相部と水相部が分離した液体調味料に関する。
【背景技術】
【0002】
トマトは世界中で食されている代表的な緑黄色野菜の一種である。トマトは生でも加熱調理しても食される。トマトを用いた原料としては、トマトジュース、トマトケチャップ、トマトソース、トマトピューレ、乾燥トマトなどがある。
【0003】
トマトの味の特徴の一つとして、その酸味とフレッシュ感があるが、生のトマト果実の香気を出す目的で、低温で予備加熱する方法(特許文献1)、トマトの香味を増強するためにエステラーゼ処理する技術(特許文献2)、トマトの酸味を抑えるために開放系で加熱した後にソース原料とする技術(特許文献3)が報告されている。
【特許文献1】特開2003−179号公報
【特許文献2】特開2006−187233号公報
【特許文献3】特開2004−166589号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、トマトの風味及び旨味が増強された液体調味料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、トマト原料を液体調味料に配合し、その風味及び旨味の変化について種々検討してきたところ、油相部と水相部が分離した液体調味料において、油相部中にジアシルグリセロールを配合し、かつ予め加熱処理されたトマト原料を水相部に配合すれば、トマトの風味及び旨味が増強した油相部と水相部が分離した液体調味料が得られることを見出した。
【0006】
すなわち、本発明は、ジアシルグリセロールを調味料中の4質量%以上含有し、加熱処理されたトマト原料を配合した水相部を含有する、油相部と水相部が分離した液体調味料を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の調味料は、トマトの風味と旨味が増強された液体調味料として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の液体調味料は、油相部と水相部とを有し、それらが分離して存在する、分離型液体調味料である。当該水相部には、加熱処理されたトマト原料が配合されている。トマト原料としては、特に限定されず、例えば冷凍トマト、乾燥トマト、トマトパウダー、トマトジュース、トマトピューレ、トマトペースト、ダイストマト、トマトケチャップ、トマトエキス等が挙げられる。これらは1種でも、また2種以上を混合して用いてもよい。
【0009】
本発明においては、これらのトマト原料を生のまま配合するのではなく、加熱処理したものを配合することによって、トマトの風味と旨味が増強される。本発明における加熱処理としては、生のトマトを50〜125℃で1秒〜7時間程度の加熱処理を行うのが好ましい。より具体的には、トマトジュース、トマトピューレ、トマトペースト、トマトケチャップ等の場合は、70〜125℃で5〜50分の加熱処理、乾燥トマト・パウダー等の場合は、50〜80℃で5〜10時間程度の加熱処理を行うのが好ましい。また、前記トマト原料を容器充填後に80〜100℃の熱湯に5〜30分前後浸漬を行ったり、30〜50℃で20分以内の加熱を行う等の低温加熱処理を行ってもよい。
【0010】
加熱処理されたトマト原料の含有量は、トマトの風味及び旨味を生かす点から、水相部中に(すなわち、水相部の全質量を基準として)乾燥質量で0.1質量%(以下、単に%で示す)以上、更に0.1〜10%、特に1〜10%が好ましい。
【0011】
本発明の液体調味料には、油相部原料としてジアシルグリセロールを調味料中に(すなわち、調味料の全質量を基準として)4%以上含有する。油相部原料としてジアシルグリセロールを含有させることにより、加熱処理されたトマト原料の風味と旨味が増強される。好ましいジアシルグリセロールの含有量は、液体調味料中に10%以上、更に10〜60%、特に10〜30%が好ましい。
【0012】
また油相部中のジアシルグリセロールの含有量は、トマト原料の風味及び旨味を増強させる点、生理効果、油脂の生産性の点から、15%以上、更に15〜95%、更に35〜95%、特に50〜95%、特に70〜93%、特に75〜93%、殊更80〜90%とするのが好ましい。
【0013】
また、本発明の液体調味料中の加熱処理されたトマト原料(乾燥重量)とジアシルグリセロールとの比率(質量比)は、トマトの風味及び旨味増強効果の点から、2.5:1〜1:600、更に1:1〜1:100、特に1:1〜1:10が好ましい。
【0014】
本発明において、油相部として使用するジアシルグリセロールを含む食用油脂は、動物性、植物性のいずれを原料とするものでも良く、例えば、動物油としては牛脂、豚脂、魚油等、植物油としては大豆油、パーム油、パーム核油、綿実油、落花生油、ナタネ油、コーン油、サフラワー油、サンフラワー油、米油等が挙げられるが、液体調味料製造直後の具材の風味を良好に維持する点から、大豆油、綿実油、落花生油、ナタネ油、コーン油、サフラワー油、サンフラワー油等の植物油を用いることが好ましい。
【0015】
ジアシルグリセロールの起源としては、植物性、動物性油脂のいずれでもよい。具体的な原料としては、菜種油、ひまわり油、とうもろこし油、大豆油、あまに油、米油、紅花油、綿実油、牛脂、魚油等を挙げることができる。またこれらの油脂を分別、混合したもの、水素添加や、エステル交換反応などにより脂肪酸組成を調整したものも原料として利用できるが、水素添加していないものであることが、食用油脂を構成する全脂肪酸中のトランス不飽和脂肪酸含量を低減させる点から好ましい。また、生理効果、製品が白濁せず外観が良好となる点から、不飽和脂肪酸含有量が高い植物油が好ましく、中でも菜種油、大豆油がより好ましい。
【0016】
本発明において使用される食用油脂は、トリアシルグリセロールを油相部中に4.9〜84.9%含有することが好ましく、より好ましくは4.9〜64.9%、更に6.9〜39.9%、特に6.9〜29.9%、殊更9.8〜19.8%含有するのが生理効果、油脂の工業的生産性、外観の点で好ましい。
【0017】
本発明において使用される食用油脂に含まれるトリアシルグリセロールの構成脂肪酸は、ジアシルグリセロールと同じ構成脂肪酸であることが、生理効果、油脂の工業的生産性の点で好ましい。
【0018】
本発明において使用される食用油脂は、モノアシルグリセロールを油相部中に0.1〜5%含有することが好ましく、より好ましくは0.1〜2%、更に0.1〜1.5%、特に0.1〜1.3%、殊更0.2〜1%含有するのが風味、外観、油脂の工業的生産性等の点で好ましい。電子レンジ調理により加熱されやすいという点でモノアシルグリセロールは0.1%以上含有するのが好ましく、風味の点から5%以下が好ましい。モノアシルグリセロールの構成脂肪酸はジアシルグリセロールと同じ構成脂肪酸であることが、油脂の工業的生産性の点で好ましい。
【0019】
また、本発明において使用される食用油脂に含まれる遊離脂肪酸(塩)含量は、油相部中5%以下に低減されるのが好ましく、より好ましくは0〜3.5%、更に0〜2%、特に0.01〜1%、特に0.05〜0.5%とするのが風味、油脂の工業的生産性の点で好ましい。
【0020】
本発明の液体調味料における、トマト加工品以外の水相部の成分としては、トマト以外の野菜類、果実類、水、食酢、塩、醤油、香辛料、糖、蛋白質素材、有機酸、アミノ酸系調味料、核酸系調味料、動植物エキス、発酵調味料、酒類、デンプン、増粘剤、安定剤、着色料等の各種添加剤等が挙げられる。
【0021】
トマト以外の野菜類、果実類としては例えば、アブラナ科の野菜、ユリ科の野菜、セリ科の野菜、トマト以外のナス科の野菜、ウリ科の野菜等が挙げられる。更に、調味液に一般に使用される香辛料植物等も挙げられる。果実類としては、例えば、ウリ科の果実、ミカン科果実、バラ科果実、バショウ科の果実、パイナップル科の果実、マタタビ科の果実、クスノキ科の果実、パパイア科の果実等が挙げられる。
【0022】
また、水相部のpHは5.5以下であることが保存性の点から好ましく、更に2〜5、特に2.5〜4、殊更3.2〜3.9の範囲が好ましい。この範囲にpHを低下させるためには、食酢、クエン酸、リンゴ酸等の有機酸、リン酸等の無機酸、レモン果汁等の酸味料を使用することができるが、保存性を良くする点、液体調味料製造直後の具材の風味を維持する点から食酢を用いることが好ましい。食酢は穀物酢、りんご酢、ビネガー類など様々な種類を用いることができ、その配合量は、液体調味料中に3〜50%、更に5〜30%、特に6〜26%とすることが好ましい。また、水相部中の酸度は0.15〜10%、更に0.25〜6、特に0.3〜3とすることが風味の点から好ましい。塩としては、並塩、天日塩、岩塩等、様々な種類のものを用いることができ、その一部を塩化カリウムや硫酸マグネシウム等に置き換えたものも用いることができる。塩の配合量は、液体調味料中に1〜20%、更に2〜15%、特に2〜11%とすることが風味の点から好ましい。
【0023】
本発明における液体調味料は、水相部中の塩化ナトリウム濃度は10%以下であることが、風味の点から好ましく、更に7〜2%、特に6〜2%であることが好ましい。
【0024】
本発明における液体調味料の水相部の調製は、成形加工した具材を水相成分に添加した後に他の水相成分を順次加えるか、成形加工した具材に予め調製した水相成分を加えることができる。水相部は、安全性の面から加熱殺菌することが好ましい。殺菌方法としては、一般に用いられている方法が使用可能である。具体的には、ヒーター加熱方式、高周波電磁誘導加熱方式、チューブ式高温加熱方式などの方法が利用可能である。その後容器に充填等し、油相部を積層して製品とすることが好ましい。
【0025】
油相部成分としては、食用油脂の他に植物ステロール、レシチン、乳化剤等が挙げられる。植物ステロールとしては、例えばα−シトステロール、β−シトステロール、スチグマステロール、カンペステロール、α−シトスタノール、β−シトスタノール、スチグマスタノール、カンペスタノール、シクロアルテノール等のフリー体、及びこれらの脂肪酸エステル、フェルラ酸エステル、桂皮酸エステル等のエステル体が挙げられる。植物ステロールは、液体調味料の油相部中に0.05〜4.7%、更に0.05〜4%含有することが、血中コレステロール低下効果の点から好ましい。レシチンは、卵黄レシチン、大豆レシチン、卵黄リゾレシチンなどが用いることができ、これらの液体調味料の油相部中に0.01〜5.0%、更に0.05%から4%含有することが、使用時に攪拌混合された場合の液体調味料の均一性と風味の点から好ましい。乳化剤としては、グリセリン脂肪酸エステル,ショ糖脂肪酸エステルなど食品添加物として認められている乳化剤が使用でき、含有量としては、0.01%〜1%、更に0.1〜0.6%含有することが、使用時に攪拌混合された場合の液体調味料の均一性と風味の点から好ましい。
【0026】
本発明における液体調味料は、食用油脂を含む油相部と水相部の質量比率は、液体調味料製造直後の具材の風味を維持する点、栄養及び官能の点から5/95〜60/40、更に10/90〜45/55、特に15/85〜35/55であるのが好ましい。
【0027】
本発明における液体調味料には、抗酸化剤を添加することが好ましい。抗酸化剤は、通常、食品に使用されるものであればいずれでもよいが、天然抗酸化剤、トコフェロール、カテキン、リン脂質、アスコルビン酸脂肪酸エステル、BHT、BHA、TBHQから選ばれる1種以上が好ましく、天然抗酸化剤、トコフェロールから選ばれる1種以上が特に好ましい。抗酸化剤は、油相部、水相部どちらにも配合できるが、油相部への添加が好ましい。特に好ましい抗酸化剤の含有量は、油相部中50〜5000μg/mL、更に200〜2000μg/mLである。
【0028】
本発明の液体調味料は、トマトの風味と旨味が増強されており、ドレッシングとして有用である。本発明でいうドレッシングとは、油脂及び食酢若しくはかんきつ類の果汁に、必要に応じて食塩、砂糖類、香辛料又はピクルスの細片等を加え調製した液状の調味料であって、主としてサラダに使用するものをいう。
【実施例】
【0029】
実施例1〜4、比較例1及び2
表1に示した原材料を用い、次に示す製造法に従って液体調味料を製造した。
〔液体調味料の調製〕
水、増粘剤、グルタミン酸ナトリウム、にんにく、ホワイトペッパー、砂糖、食塩、チキンブイヨン、醸造酢、たまねぎ、トマト原料を表1に示した量を配合し、撹拌混合して溶解し、調味液(水相部)を調製した。次に、常温から加熱して80℃に到達してから4分間保持することにより殺菌処理を行った後、冷却し、常温とした後に容器に充填し、次いでDAG高含有油脂を充填することにより液体調味料を調製した。用いたDAG高含有油脂は、TAG:19.3%、DAG:80%、MAG:0.7%、サラダ油は、TAG:94.3%、DAG:1.5%、MAG:0.2%を含有するものであった(ここで、DAGとはジアシルグリセロール、TAGとはトリアシルグリセロール、MAGとはモノアシルグリセロールのことをいう。以下同じ。)なお、トマト原料のうち加熱処理品の加熱条件は、トマトペーストについては、1cm角に刻んだトマトを80〜90℃にて20分攪拌しながら加熱処理、トマトジュースについては、皮をむいたトマトをコマーシャルブレンダーFMI(ワーニングプロダクツ社)でミキサーにかけた後、80〜90℃にて10分加熱処理、トマトパウダーについては、1cm角に刻んだトマトを60〜70℃にて8時間加熱乾燥した後に粉砕した。
【0030】
【表1】

【0031】
〔官能評価〕
市販レタスを20〜30mmの大きさに切断した。試食直前に調味液をよく攪拌し、速やかに本レタス約100g当たり液体調味料15gを均一に分散するようにかけ、試食することにより風味の評価を行った。評価は、専門パネル5名により、各液体調味料の「トマトの濃厚感」の観点について、下記基準に従って行った。結果を表1に示す。
【0032】
〔トマトの濃厚感の評価基準〕
5:トマトの濃厚感を強く感じる
4:トマトの濃厚感を感じる
3:トマトの濃厚感をやや感じる
2:トマトの濃厚感をあまり感じない
1:トマトの濃厚感を感じない
なお、ここでいうトマトの濃厚感とは、トマトを煮込んだ時などに発現する風味に代表される、重厚な風味・旨味のことをいう。
【0033】
表1に示したように、実施例1〜4の液体調味料はトマトの濃厚感が強く発現していた。一方、比較例1及び2の液体調味料は、実施例1〜4の液体調味料に比べ、明らかにトマトの濃厚感が弱かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジアシルグリセロールを調味料中の4質量%以上含有し、加熱処理されたトマト原料を配合した水相部を含有する、油相部と水相部が分離した液体調味料。
【請求項2】
水相部中の加熱調理されたトマト原料の含有量が乾燥質量で0.1質量%以上である請求項1記載の液体調味料。
【請求項3】
トマト原料が、冷凍トマト、乾燥トマト、トマトパウダー、トマトジュース、トマトピューレ、トマトペースト及びダイストマトから選ばれる1種又は2種以上である請求項1又は2記載の液体調味料。