説明

分離方法

本発明によれば、半固体の粘稠な塊から固体を分離する方法が提供される。この方法は、実質的に平らな目の詰まった表面および支持部材を含む分離部材を具備し、該分離部材は該固体に方向性をもった運動量を選択的に賦与するように適合しており、これによって該半固体の粘稠な塊から該固体を容易に分離できるような装置の中において、固体を含む半固体の粘稠な塊を処理することを特徴とする方法を含んで成っている。好ましくは該分離部材は振動運動を与えるのに適合した実質的に平らな目の詰まった表面を具備し、固体材料は該振動運動によって残りの半固体の粘稠な塊から追出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は廃棄材料の分離方法に関する。さらに特定的には本発明によれば湿った汚泥(sludge)から固体の砕片を分離する迅速にして便利な方法が提供される。
【背景技術】
【0002】
多くの産業においては液体から固体の材料および物体を分離することがしばしば必要であり、このような分離を行うための多くの技術は公知である。このような状況においては、分離が必要な固体および液体の性質およびその量に依存して、一般に沈降、遠心分離、および最も普通には濾過が適しており、固体と液体の成分を分離する効率的な方法になっている。
【0003】
しかし、今行なおうとしている仕事に対ししばしばこのような方法が不適切であることが多く、別の適切な方法を見つけねばならない。例えば、大規模な分離に対して遠心分離は必ずしも適用できず、他方濾過は、特に粘稠な液体を取り扱う際、しばしば問題が多い方法である。何故なら濾過速度が著しく遅くなり、この方法は不経済になるからである。事実、極端な状況の場合、濾過媒質が詰まり、液体が通過できなくなるために実施不可能であることが証明されている。実際に粘度が非常に高い混合物が含まれている場合、どのような種類の分離も濾過法を用いて行うことはできない。何故なら、液体成分を通しながら他方では固体材料をフィルターの中に残留させるような適切な間隙をもった濾過媒質を見つけることは不可能であり、濾液はすべての成分を含みフィルターの中には全く材料が保持されずに分離が全く行われないか、或いは濾過媒質が直ちに詰まってしまい最終的には同じような分離不可能な結果が得られるかのいずれかである。粗いスクリーンを通して媒体の濾過を行うことに基づいたスクリーニングとして知られている濾過の方法でも、このような困難を生じる傾向をもっている。このような媒体から固体成分を分離し得る分離方法を提供することにより本発明において解決しようとしているのは、このような粘稠な媒体に関する問題である。
【0004】
このような困難を取り扱うための典型的な従来法は、分離を試みる前にこれらの高度に粘稠な媒質の粘度を低下させることに基づいていた。この目的を達成する最も簡単な方法は媒質を希釈することである。勿論希釈には水を添加することが最も便利であり、これは簡単且つ比較的廉価な方法である。得られる粘度の低い媒質は一般に濾過のような処理を容易に行うことができるから、このような処理法は成分の分離を容易にする上でしばしば成功を収めている。しかしながら、この処理に伴う結果は極めて望ましくないものである。何故なら次の分離工程で夥しい量の流出液、通常は水性の流出液を取り扱わねばならないからである。従って本発明で次に考慮しなければならないことは、本発明方法において希釈法を避けることにより流出液の問題を最低限度に抑制することである。
【0005】
従って本発明においては、高度に粘稠な濾過不可能な汚泥を含む粘稠な媒質から固体の物体および成分を迅速且つ効率的に分離し除去する方法を提供することが探索される。また本発明においては、このような材料を分離し得る信頼性をもった再現可能な方法で、このような状況において従来法に通常伴う欠点をもつ傾向がない方法を提供することが探索される。
【0006】
本発明においては、必要な分離を達成する目的で該媒質の成分に選択的に運動量を付与する機械的な力を使用することが研究されてきたが、多少とも驚くべきことには、振動技術を適用することによってこのような分離を達成できることが見出された。何故なら、或る振動モードにおいては、適切に配置された表面は、粘稠な媒質から固体の物体および成
分を分離するのに必要な運動量を付与する点に関し選択性を示すことが見出されたからである。
【発明の開示】
【0007】
従って本発明に従えば、半固体の粘稠な塊から固体を分離する方法において、該方法は、実質的に平らな目の詰まった表面(substantially flat solid surface)および支持部材を含む分離部材を具備し、該分離部材は該固体に方向性をもった運動量を選択的に賦与するのに適合しており、これによって該半固体の粘稠な塊から該固体を容易に分離できる装置の中において、固体を含む半固体の粘稠な塊を処理することを特徴とする方法が提供される。
【0008】
該分離部材は好ましくは支持部材に取り付けられ且つそれによって支持され、該支持部材は水平に近いがそれより僅かにずらされた角度で配置されている。好ましくは該支持部材は水平から1〜10°、さらに好ましくは2〜5°、最も好ましくは約3°の角度でずらされて配置されている。
【0009】
該分離部材は実質的に平らな目の詰まった表面、好ましくはトレー(tray)またはプレート(plate)を具備し、その表面は好ましくは残りの半固体の塊の部分に比べて固体の部分に対して異なった程度の接着性を示し、これによって材料の分離を容易にしている。従って好ましくは分離部材の表面をつくる材料は、固体と残りの半固体の塊との接着性が異なっているために、問題としている材料の分離の程度をさらに増加させ得るような分離部材を提供するように選ばれる。該実質的に平らな目の詰まった表面はスクリーンまたは他の多孔性の表面を含んではいない。何故なら、本発明方法は半固体の粘稠な塊を含む該固体の成分を分離するために濾過に頼ってはいないからである。
【0010】
該分離部材は、半固体の粘稠な塊の中の固体に対し方向性をもった運動量を選択的に賦与するように適合した形をし、振動運動を与えるようにつくられた実質的に平らな目の詰まった表面を具備している。このように、該分離部材に振動運動を賦与するように該分離部材に力を加えると、該固体は残りの半固体の塊から迅速且つ効率的に分離することが見出された。
【0011】
好ましくは該振動運動は、該固体の粒子状の材料に方向性をもった運動量を賦与し、これによって該固体材料は該分離部材に沿って実質的に水平の方向に、また水平から上方へと遠ざかる方向に追出される。特に好適な具体化例においては、該振動運動は分離部材の面内における振動運動と該分離部材の面に垂直な方向における振動運動との組み合わせである。従って賦与される振動運動は水平振動運動と垂直振動運動との組み合わせである。
【0012】
該振動運動は任意の通常の方法で、典型的には例えば不均衡モーター駆動装置または電磁石を用いて機械的なおよび/または電磁的な力をかけることにより賦与することができる。好ましくは振動運動を賦与するために、特に小さいシステムに対しては良好な制御の程度が得られるから、電磁石を使用する。
【0013】
典型的には、かけられる振動運動の振動数は5〜50Hz、好ましくは10〜30Hz、最も好ましくは15〜20Hzの範囲であり、分離部材の面内における振幅は2〜30mm、好ましくは5〜20mm、最も好ましくは10〜15mmの範囲である。
【0014】
好ましくは該分離部材はトレーまたはプレートを備えた実質的に平らな目の詰まった表面を具備し、これはさらに該分離部材の縁に取り付けられ該実質的に平らな目の詰まった表面に垂直に配置された周辺部材(perimeter member)を具備しているが、但しこの場合該分離部材の一つの縁は周辺部材を具備していない。このようにして、
分離された固体は操作中分離部材から除去され、他方残りの半固体の粘稠な塊は該分離部材の上に保持される。好ましくは、操作中、分離部材は周辺部材を具備していない縁が水平面の上方に来るように配置されている。
【0015】
最も好適な具体化例においては、該分離部材は矩形の形のトレーまたはプレートを含んで成り、その四つの辺の三つは周辺部材を含んで成っているが、四番目の辺は周辺部材を含んでいない。操作を行う場合、分離部材は該第四の辺が水平面より上に来るように配置され、分離部材の表面は該第四の辺から水平面より下方に配置された該部材の相対する平行な辺へと傾いている。
【0016】
好ましくは、該分離部材は該第四の辺に垂直で且つ隣接した矩形の部材の残りの二つの辺により支持部材に取り付けられている。
【0017】
該支持部材は、該分離部材が水平に近いが水平から僅かにずれた角度で配置されるように該分離部材を支持するのに適した任意の部材であることができる。即ち、適切な程度の力および地面からの高さを与える任意の通常の形の支持物を使用することができる。
【0018】
好ましくは、該分離部材は該支持部材に動き得るように取り付けられている。最も好ましくは、水平から僅かにずれた角度で該分離部材を便利に配置できるように、該分離部材は回転し得るように該支持部材に取り付けられている。この具体化例においては、固体を除去した後、分離部材のずれた角度を水平から逆転させて周辺部材を含まない辺が水平より下方に配置されるようにし、残った半固体の粘稠な塊を都合よく該分離部材から取り除くことができることが便利である。
【0019】
本発明の文脈において、該固体を含む半固体の粘稠な塊は高い粘度をもった半固体の塊、典型的には汚泥を含み、該固体は固体の物体または物質、或いは粒子状の固体材料を含んでいる。従って本発明方法は、例えば産業汚泥物から機械の部品を、粘土状の土壌から小さい玉石(boulder)を、スレートの汚泥からスレートの分離した破片を、また廃棄汚泥物から分離した固体の物体を除去するのに特に適している。この種の分離の特定の応用は、例えばマグノックス(Magnox)燃料から腐蝕したクラッディング(cladding)を処理する場合、通常粘着性をもった汚泥から固体の破砕片を除去することが必要な原子核産業に見出される。
【0020】
本発明の具体化例の説明
本発明の好適具体化例においては、分離部材は振動運動に適合した実質的に平らな目の詰まった表面を具備している。特に好適な具体化例においては、該振動運動は分離部材の面内における振動運動と分離部材の面に垂直な方向の振動運動の組み合わせである。
【0021】
このような具体化例においては、分離部材は傾いた板バネを具備した支持部材の上に取り付けられたトレーを具備している。固体の材料が混入された半固体の粘稠な塊は該分離部材の上部表面に載せられる。操作の際には振動運動を賦与するために電磁石を使用し、上方の方向における垂直の成分および周辺部材を備えていない分離部材の縁の方向における水平成分の両方を有する振動運動を賦与するアークを通して分離部材を引き付けるように磁場をかける。振動数が18Hz、水平方向の振幅が10〜12mmで操作することによって良好な結果が得られる。
【0022】
このような振動運動の影響下において、分離部材の表面上の固体は該表面に接触した状態で留まり、周辺部材を備えていない部材の縁の方へ投げ出される。この過程が継続すると、固体はさらにその方向へ投げ出され、従って最終的には該部材の縁に達し、重力の影響の下でそこから除去される。
【0023】
このように板バネを傾けることによって方向性をもった振動運動がつくられ、板バネはトレー上の固体材料を垂直方向に十分に加速して固体材料を上方および前方に投げ出し、他方残った半固体の粘稠な塊は同じように上方に投げ出されるほど十分な剛性をもたないから分離効果が生じる。実際には、半固体の粘稠な材料の粘着性のために、分離部材の表面に対し固体材料の場合におけるよりも著しく大きな接着性が生じ、それによって分離過程がさらに増強されることも一般的に見出されている。
【0024】
本発明の方法は、半固体の粘稠な塊から固体を迅速且つ効率的に分離することができる点において従来法に優る大きな利点を示す。また本発明方法は、粘度を減少させ分離効率を改善するために、このような粘稠な塊を大量の水で希釈する必要を避けることができる。従来法においてもこのような方法で分離は満足に行われるが、流出液の容積が増加し、またこのような方法に対する資源およびエネルギーの必要量が多いことは極めて望ましくないことであり、本発明方法を用いることによってこのような欠点を避けることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半固体の粘稠な塊から固体を分離する方法において、該方法は、実質的に平らな目の詰まった表面および支持部材を含む分離部材を具備し、該分離部材は該固体に方向性をもった運動量を選択的に賦与するのに適合しており、これによって該半固体の粘稠な塊から該固体を容易に分離できる装置の中において、固体を含む半固体の粘稠な塊を処理することを特徴とする方法。
【請求項2】
該分離部材は、支持部材に取り付けられそれに支えられていることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
該分離部材は、水平に近いがそれから僅かにずれた角度をなして配置されるように、支持部材に取り付けられそれに支えられていることを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項4】
該分離部材は水平から1〜10°の角度をなして配置されていることを特徴とする請求項3記載の方法。
【請求項5】
該角度は水平から2〜5°ずれた角度であることを特徴とする請求項4記載の方法。
【請求項6】
該角度は水平から約3°ずれた角度であることを特徴とする請求項5記載の方法。
【請求項7】
該分離部材は実質的に平らな目の詰まった表面を具備し、その表面は固体に対して残りの半固体の塊に対する接着性とは異なった程度の接着性を示すことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載された方法。
【請求項8】
分離部材の表面をつくる材料は、固体に対して、残りの半固体の塊に対する接着性とは異なった程度の接着性を示すことを特徴とする上記請求項のいずれか一つに記載された方法。
【請求項9】
該分離部材は振動運動に適合した実質的に平らな目の詰まった表面を具備していることを特徴とする上記請求項のいずれか一つに記載された方法。
【請求項10】
該分離部材に沿った実質的に水平の方向および該水平から遠ざかる上方の方向に該固体の粒子状材料が追出されるように該振動運動が賦与されることを特徴とする請求項9記載の方法。
【請求項11】
該振動運動は分離部材の面内における振動運動および該分離部材の面に垂直な方向の振動運動の組み合わせを含んで成ることを特徴とする請求項9または10記載の方法。
【請求項12】
該振動運動は水平の振動運動および垂直の振動運動の組み合わせを含んで成ることを特徴とする請求項11記載の方法。
【請求項13】
該振動運動は機械的および/または電磁的な力をかけることにより賦与されることを特徴とする請求項9〜12のいずれか一つに記載された方法。
【請求項14】
該機械的な力は不均衡モーター駆動装置によって賦与されることを特徴とする請求項13記載の方法。
【請求項15】
該電磁的な力は電磁石によって賦与されることを特徴とする請求項13記載の方法。
【請求項16】
かけられる振動運動の振動数は5〜50Hzの範囲内にあることを特徴とする請求項9〜15のいずれか一つに記載された方法。
【請求項17】
該振動数は10〜30Hzの範囲内にあることを特徴とする請求項16記載の方法。
【請求項18】
該振動数は15〜20Hzの範囲内にあることを特徴とする請求項17記載の方法。
【請求項19】
分離部材の面内における振幅は2〜30mmの範囲にあることを特徴とする請求項9〜18のいずれか一つに記載された方法。
【請求項20】
該振幅は5〜20mmの範囲にあることを特徴とする請求項19記載の方法。
【請求項21】
該振幅は10〜15mmの範囲にあることを特徴とする請求項20記載の方法。
【請求項22】
該分離部材はトレーまたはプレートを備えた実質的に平らな目の詰まった表面を具備し、これはさらに該分離部材の縁に取り付けられ該実質的に平らな目の詰まった表面に垂直に配置された周辺部材を具備しているが、但しこの場合該分離部材の一つの縁は周辺部材を具備していないことを特徴とする請求項1〜21のいずれか一つに記載された方法。
【請求項23】
操作の際該分離部材は周辺部材を具備していない縁が水平面の上方に来るように配置されることを特徴とする請求項22記載の方法。
【請求項24】
該分離部材は矩形の形をしたトレーまたはプレートを具備し、その四つの辺の三つは周辺部材を具備しているが、第四の辺は周辺部材を含んでいないことを特徴とする請求項22または23記載の方法。
【請求項25】
該分離部材は、矩形の部材の該第四の辺に垂直で且つそれに隣接した残りの二つの辺により該支持部材に取り付けられていることを特徴とする請求項24記載の方法。
【請求項26】
該支持部材は、該分離部材が水平に近いがそれから僅かにずれている角度で配置されるように該支持部材を支持するのに適した任意の部材であることを特徴とする上記請求項のいずれか一つに記載された方法。
【請求項27】
該支持部材は傾いた板バネを具備していることを特徴とする請求項26記載の方法。
【請求項28】
該分離部材は動き得るように該支持部材に取り付けられていることを特徴とする上記請求項のいずれか一つに記載された方法。
【請求項29】
該分離部材は回転し得るように該支持部材に取り付けられていることを特徴とする請求項28の記載の方法。
【請求項30】
該半固体の粘稠な塊は汚泥を含んで成ることを特徴とする上記請求項のいずれか一つに記載された方法。
【請求項31】
該汚泥は産業汚泥を含んで成ることを特徴とする請求項30記載の方法。
【請求項32】
該産業汚泥は廃棄物汚泥またはスレートの汚泥を含んで成ることを特徴とする請求項31記載の方法。
【請求項33】
該廃棄物汚泥はマグノックス燃料廃棄物汚泥を含んで成ることを特徴とする請求項33
記載の方法。
【請求項34】
該固体は固体の物体または物質、或いは固体の粒子状材料であることを特徴とする上記請求項のいずれか一つに記載された方法。
【請求項35】
該固体の物体は機械の部材であることを特徴とする請求項34記載の方法。
【請求項36】
該固体の物体は小さい玉石であることを特徴とする請求項34記載の方法。
【請求項37】
該固体の物体はスレートの分離片であることを特徴とする請求項34記載の方法。
【請求項38】
該固体の物体は腐蝕したクラッディングを含んで成ることを特徴とする請求項34記載の方法。
【請求項39】
マグノックス燃料からの腐蝕したクラッディングの処理を含んで成ることを特徴とする請求項1〜35または38のいずれか一つに記載された方法。

【公表番号】特表2008−534262(P2008−534262A)
【公表日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−503586(P2008−503586)
【出願日】平成18年3月29日(2006.3.29)
【国際出願番号】PCT/GB2006/001154
【国際公開番号】WO2006/103433
【国際公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【出願人】(506316546)
【Fターム(参考)】