説明

分電盤

【課題】分岐ユニットの必要個数に対して過不足の無い分岐取付箇所を備えた分電盤を提供する。
【解決手段】本発明の分電盤は、一端に差込部22、他端に差込受部23を備えた母線バー21と、この母線バー21に接続される分岐ブレーカ35とを備えた分岐ユニット4を、母線バーに対して平行に配置される取付レール1に順次取付けて母線バー21どうしを接続することにより分岐ブレーカ数を連結可能としたものである。
本発明では取付レール1をユニット化し、母線バーの接続方向に連結可能としたことにより、取付レール1の無駄をなくした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分岐ブレーカの数を必要に応じて増設可能とした分電盤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
分電盤はキャビネットの内部に母線バー及びブレーカを収納した構造が一般的であるが、分岐ブレーカの必要個数が増加する可能性のある場合には、増設用スペースを設けた大きさに余裕のあるキャビネットとするとともに、母線バーの長さも増設を考慮して余長を持たせて長めに設定されていた。しかし分岐ブレーカの増設を必要としない場合にはスペースの無駄が生じるとともに、製造コストの増加を招くこととなる。
【0003】
そこで本発明者は先に、左右に支柱を備えた縦長の筐体の上部に主幹ブレーカを備えた主幹ユニットを配置するとともに、分岐ブレーカと母線バーとを備えた分岐ユニットを必要数だけ連結可能とした分電盤を開発し、特許文献1,2として特許出願済みである。この構造とすれば母線バーを接続構造としたので、母線バーの余長が不要となり、また従来のような大型キャビネットも不要となる。
【0004】
しかし、これらの特許文献1,2の分電盤は、分岐ユニット数が少ない場合には支柱下部の分岐ユニットの取付箇所が無駄となり、また分岐ユニットの必要個数が当初の予定よりも多くなった場合には別の大型支柱に交換しなければ、分岐ユニットの取付ができないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−300706号公報
【特許文献2】特開2008−154364号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って本発明の目的は上記した従来の問題点を解決し、分岐ユニットの必要個数に対して過不足の無い分岐取付箇所を備え、母線バーの余長や、大型キャビネットや、無駄な分岐ユニットの取付箇所をなくすることができる分電盤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するためになされた本発明は、一端に差込部、他端に差込受部を備えた母線バーと、この母線バーに接続される分岐ブレーカとを備えた分岐ユニットを、母線バーに対して平行に配置される取付レールに順次取付けて母線バーどうしを接続することにより分岐ブレーカ数を増設可能とした分電盤において、取付レールをユニット化し、母線バーの接続方向に連結可能としたことを特徴とするものである。
【0008】
なお請求項2のように、取付レールを分岐ユニットの母線バー接続方向の長さに対応させてユニット化したものであることが好ましく、請求項3のように、取付レールはその側面に配線カバーを備えたものであることが好ましい。また請求項4のように、取付レールを取付金具によって柱に固定される構造とすることができる。
【発明の効果】
【0009】
本願の請求項1の発明によれば、取付レールをユニット化し、母線バーの接続方向に連結可能としたので、必要とする分岐ユニットの数に応じて取付レールも増減させることができる。このため分岐ユニットが少ない場合には分電盤を小型化することができ、分岐ユニットの数を増加させたい場合にも分岐ユニットの取付箇所を別に設ける必要がない。
【0010】
請求項2の発明によれば、取付レールを分岐ユニットの母線バー接続方向の長さに対応させてユニット化したので、分岐ユニットの一個単位で取付レールも増減させることができる。このため分岐ユニットが少ない場合でも余分な取付けスペースが生じることがない。
【0011】
また請求項3の発明によれば、取付レールの増減に合わせて配線カバーも増減されることとなり、分岐ユニットから引き出される分岐配線を収納することができる。さらに請求項4の発明によれば、取付レールが取付金具によって柱に固定される構造としたので、簡便に取付レールを増減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態を示す斜視図である。
【図2】分岐ユニットを省略した斜視図である。
【図3】分岐ユニットの取付状態を示す斜視図である。
【図4】分岐ユニットの取付状態を示す下方斜視図である。
【図5】分岐ユニット用の取付レールの分解斜視図である。
【図6】分岐ユニットの構造を示す下方斜視図である。
【図7】分岐ユニットの構造を示す上方斜視図である。
【図8】分岐ユニットの母線バーを示す斜視図である。
【図9】ブレーカベースの下方斜視図である。
【図10】ブレーカベースの基板の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明の好ましい実施形態を説明する。
図1〜図4において、1は工場建屋の柱、2はこの柱1に取付けられた取付レール、3は取付レール2の上部に取付けられた主幹ユニット、4は主幹ユニット3の下部の取付レール2に取付けられた母線バー21を内蔵する分岐ユニットである。
【0014】
柱1はこの実施形態ではH型鋼であり、この柱1に適宜の固定部材5によって取付レール2が固定されている。固定部材5の構造は本発明においては特に限定されるものではないが、H型鋼に固定部材5を取り付けるための孔を明けると強度が低下するおそれがあるため、H型鋼の前後両面に棒状部材を配置し、それらの間を長尺ボルトやターンバックルのような部材で締め付けて固定する構造が好ましい。
【0015】
後述するように、主幹ユニット3及び分岐ユニット4は内蔵する母線バーどうしを接続可能とすると共に、取付レール2に固定されている。取付レール2は、分岐ユニット4の母線バー21に対して平行に配置されて、それ自体がユニット化されている。主幹ユニット3は分岐ユニット4よりも大型であるから、主幹ユニット3用の取付レール2は上下方向の長さが長くなっている。一方、分岐ユニット4用の取付レール2は母線バー接続方向である上下方向の長さが短い。しかし何れの取付レール2も主幹ユニット3、分岐ユニット4の上下方向の長さに対応させてユニット化され、長さの他はほぼ同一構造である。なお、分岐ユニット4用の取付レール2を複数個連結して主幹ユニット3用の取付レール2とすることもできる。また取付レール2は、複数個の分岐ユニット4を取付け可能な長さに形成し、上下方向に連結可能なものとしてもよい。
【0016】
図5は分岐ユニット4用の取付レール2の分解斜視図である。図示されるように、取付レール2は金属板を水平断面が略コの字に折曲成形したもので、左右両端部を内向きに直角に折り曲げて取付面6とし、その先端をさらに背面側に直角に折り曲げてガイド面7を構成している。主幹ユニット3や分岐ユニット4はこれらの取付面6にねじで固定される。なお取付面6とガイド面7とにわたるガイド溝8が形成されており、分岐ユニット4の側面に突設したガイド突起9をはめ込むことにより、取付レール2への取付を容易にしている。なお主幹ユニット3や分岐ユニット4の構造は後述する。
【0017】
取付レール2の左右の側面上方には連結片10が形成されている。また取付レール2の左右の側面下方には、ねじ孔を備えた連結部11が形成されている。このため、連結片10を上側の取付レール2の連結部11にねじで固定することによって、取付レール2は上下方向に連結可能となっている。なお主幹ユニット3用の取付レール2は最上段に位置するため、連結片10は不要である。
【0018】
図3〜図5に示されるように、各取付レール2の片側の側面には、L字状の金具12によって配線カバー13が取付けられている。この配線カバー13は金属板をL字状に折り曲げたもので、その上下方向の長さも取付レール2の長さとほぼ同じである。このため取付レール2を上下方向に連結すると、配線カバー13も上下方向に連なった配線ダクトを構成することとなる。なお、配線カバー13は複数の取付レール2の上下方向の長さに対応するように一体的に形成してもよい。
【0019】
分岐ユニット4の構造を図6〜図10に示す。分岐ユニット4はこれらの図面において下部(図1〜図5においては奥側)の母線バーケース20と、その上部(手前側)のブレーカケース30とからなる。母線バーケース20は図8に示されるようにその内部に3相分の母線バー21を備えている。これらの母線バー21は分岐ユニット4の高さ方向に延びるもので、その一端(本実施形態では上端)は図6、図8に示すような差込部22となっている。また母線バー21の中央部及びその他端(本実施形態では下端)には差込受部23,24が設けられている。
【0020】
下端部の差込受部24は下方に位置する分岐ユニット4の差込部22を受けるためのものである。図7に示すように、これらの差込受部24の部分では母線バーケース20の上面がスリット状になっており、下側に位置する分岐ユニット4の差込部22を差し込めるようになっている。このように下側に位置する分岐ユニット4の差込部22を上側に位置する分岐ユニット4の差込受部24に差し込むことにより、分岐ユニット4は上下方向に順次連結されるとともに、母線バー21も上下方向に接続されることとなる。
【0021】
図9に示されるように、ブレーカケース30に組み込まれる分岐ブレーカ35は、ブレーカベース33に固定されていて、ブレーカベース33の基板31の裏面には3相分の差込部32が突設されている。これらの差込部32は図8に示される母線バー21の中央部の差込受部23に差し込まれるものである。各差込部32はブレーカベース33内に配置した接続バーに接続されており、接続バーの端部34は図10に示すように、基板31から立ち上がっている。基板31の表面には分岐ブレーカ35が搭載されており、接続バーの端部34が分岐ブレーカ35の電源側端子に接続される。このようにして3相の母線バー21から分岐ブレーカ35への接続がなされている。
【0022】
なお図6に示すように母線バーケース20の左右両側に板状のガイド突起9が突設されており、前記したようにガイド突起9を取付レール2のガイド溝8に差し込むことにより、分岐ユニット4の取り付けが容易に行えるようになっている。またブレーカケース30には図7に示すように開閉可能な蓋36が設けられている。
【0023】
主幹ユニット3には分岐ブレーカ35の代わりに主幹ブレーカ40が搭載されている。この実施形態では主幹ユニット3は扉41を備えた筐体42の内部に収納されているが、主幹ユニット3用の取付レール2に固定されることは、分岐ユニット4と同様である。主幹ユニット3の母線バーは主幹ブレーカ40の負荷側に接続され、その差込受部に下側の分岐ユニット4の差込部22を差し込むことによって、母線バーが分岐ユニット4の母線バー21に接続される。
【0024】
なおこの実施形態では、主幹ユニット3は筐体42の側面にアースバー43を備えており、各ユニットの側面から引出したアース配線が容易に行えるようにしてある。しかし主幹ユニット3を筐体42の内部に収納することや、アースバー43を設けることは本発明の必須要件ではない。
【0025】
このように構成された本発明の分電盤は、天井から主幹ユニット3に電源線を引き込んで使用されるもので、主幹ユニット3に搭載された主幹ブレーカ40の負荷側に接続された母線バーに分岐ユニット4の母線バー21が接続され、さらに差込部32、接続バー33、その端部34を介して分岐ブレーカ35に接続される。分岐ブレーカ35の負荷側配線は分岐ユニット4から側方に引き出され、配線カバー13により構成された配線ダクトの内部を通じて天井に戻され、各負荷に接続される。
【0026】
分岐ブレーカ数を増設する場合には、先ず図2に示すように必要数の取付レール2を柱1に取付け、次に分岐ブレーカ35を取付レール2に取り付けるとともに、下側の分岐ユニット4の差込部22を上側に位置する分岐ユニット4の差込受部24に差し込めば、母線バー21が上下方向に順次接続され、分岐ブレーカ35の数を増加させることができる。また分岐ブレーカ数を減らしたい場合には、逆の手順で分岐ユニット4と取付レール2とを取り外せばよい。
【0027】
以上に説明したように、本発明の分電盤は分岐ユニット4の必要個数に対して取付レール2を増減可能な構造としたので、過不足の無い分岐取付箇所を形成することができ、随時分岐ユニット4及び取付レール2の数を増減することができるので、従来のように分岐ユニット数が少ない場合には支柱下部の分岐ユニットの取付箇所が無駄となることがなく、また分岐ユニットの必要個数が当初の予定よりも多くなった場合には別の大型支柱に交換する必要ない。
【0028】
なおこの実施形態では取付レール2を柱1に取付けたが、取付レール2の支持方法は任意であり、取付レール2自体が自立型の支柱を形成するようにしてもよい。さらに取付レール2は壁面等に水平に固定されていて、主幹ユニット3及び分岐ユニット4は水平方向に連結するものであってもよい。またこの実施形態では取付レール2に主幹ユニット3と分岐ユニット4のみを取付けたが、分岐ユニット4と同様の構造のコンセントユニットやトランスユニットを組み込むことも可能である。
【符号の説明】
【0029】
1 柱
2 取付レール
3 主幹ユニット
4 分岐ユニット
5 固定部材
6 取付面
7 ガイド面
8 ガイド溝
9 ガイド突起
10 連結片
11 連結部
12 L字状の金具
13 配線カバー
20 母線バーケース
21 母線バー
22 差込部
23 差込受部
24 差込受部
30 ブレーカケース
31 基板
32 差込部
33 ブレーカベース
34 接続バーの端部
35 分岐ブレーカ
36 蓋
40 主幹ブレーカ
41 扉
42 筐体
43 アースバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端に差込部、他端に差込受部を備えた母線バーと、この母線バーに接続される分岐ブレーカとを備えた分岐ユニットを、母線バーに対して平行に配置される取付レールに順次取付けて母線バーどうしを接続することにより分岐ブレーカ数を増設可能とした分電盤において、取付レールをユニット化し、母線バーの接続方向に連結可能としたことを特徴とする分電盤。
【請求項2】
取付レールを分岐ユニットの母線バー接続方向の長さに対応させてユニット化したことを特徴とする請求項1に記載の分電盤。
【請求項3】
取付レールはその側面に配線カバーを備えたものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の分電盤。
【請求項4】
取付レールが取付金具によって柱に固定されるものであることを特徴とする請求項1〜3に記載の分電盤。

【図5】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−244560(P2011−244560A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−112930(P2010−112930)
【出願日】平成22年5月17日(2010.5.17)
【出願人】(000227401)日東工業株式会社 (374)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】