説明

分電盤

【課題】取付固定・解除手段であるロックレバーが取付固定位置にない場合において、最終的に分電盤のカバーをボックスに取り付けた後であっても、ロックレバーの取付状態の確認が容易に行え、また、取付固定位置に変位せしめ、回路遮断器を中底に確実に取付固定できる分電盤を提供する。
【解決手段】前方が開口したボックスと、該ボックスに取り付けされボックス前方側を覆うカバー212とからなるキャビネット内部に、中底に取付けられた分岐開閉器1が配設される分電盤であって、前記分岐開閉器には、前記中底に設けられた係止部に係止されることにより分岐開閉器を取付固定する一方、前記係止部との係止が解かれることにより取付を解除するロックレバー104が設けられるとともに、前記カバー212には、前記ロックレバー104が貫通する孔2121aを設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分電盤に組み込まれる回路遮断器が有する中底への取付手段の視認性及び操作性に関し、特に、中底への回路遮断器の取付固定忘れを極力防止することができる構造を備えた分電盤に関する。
【背景技術】
【0002】
分電盤は、キャビネットの内部に、主開閉器、該主開閉器の二次側に接続される母線、該母線と各々接続される分岐開閉器などの内部機器を組み込んだもので、住宅等における電路の引込口装置として用いられている。住宅の場合、適用される電路は、通常、交流50Hz又は60Hzの単相2線式電路(100V)、もしくは単相3線式電路(100/200V)、又は直流電路である。
【0003】
前記キャビネットは、分電盤の外郭を構成するもので、一般的に、前記内部機器を取付ける中底を取付け固定し、分電盤の上下左右の側面及び背面を覆う壁を形成するボックスと、内部機器の操作面側に臨む前面側を覆うよう前記ボックス前面側に設けられるカバーとを備えて構成される。なお、内部機器の操作部は予め開口されて操作の妨げにならないように構成されている。
【0004】
斯様な分電盤に組み込まれる主開閉器や分岐開閉器など回路遮断器等の内部機器は、該内部機器本体を中底に取り付けた状態で用いられ、回路遮断器に、取付固定、又は取付解除を行う取付固定解除手段が設けられている。特許文献1の図1には、回路遮断器を中底である取付板に対して取り付け、取り外しする構造が示されている。
【0005】
この構造によれば、次のように取付板に対して回路遮断器の取り付け取り外しを行う。回路遮断器1の中底への取付固定解除手段であるロックレバー7の係止部703が回路遮断器底面より突出しない状態にしておき、取付板の突出部a9、突出部b10の間に遮断器がくるように、また4の爪部bが遮断器の6の凹部bの開口部にくるように取付板の上に載置する。この時点では爪部3、4と遮断器の凹部5、6はかみ合っていない。次に回路遮断器1を母線11、12の方向にスライドさせていくと母線11、12がプラグイン端子金具15、16に差し込まれていき、取付板に設けられた爪部3及び爪部4がそれぞれ回路遮断器の凹部5、凹部6と嵌合する。なお、ロックレバー7は枠部701内を図の上端部と下端部に選択的に指掛部702をもって操作でき、それにより係止部703が底面から突出したり突出しなかったりするものである。
【0006】
この状態では、回路遮断器は特許文献1の図1の上方向(取付板に対する鉛直方向)と側面方向の動きが規制されるが、回路遮断器は母線11,12から遠い方向(遮断器の負荷側方向)へは取り外し可能である。
【0007】
次にロックレバー7の指掛部702を指で取付板の方向に押圧すると、係止部703が回路遮断器の底面より突出し、取付板の嵌合部8に嵌合する。これにより母線から回路遮断器を取り外す方向の動きを規制することができ、取付板2に回路遮断器1が取り付けが完了した状態となる。
【0008】
回路遮断器1を取付板2から取り外す場合は、ロックレバー7の指掛部702を取付板と反対の方向に指で引き上げ、嵌合部8とロックレバー7の係止部703との嵌合を解除する。次に回路遮断器1を母線11、12と反対の方向に引き抜くように移動させることにより、爪部3、及び爪部4と凹部5及び凹部6との嵌合が外れる。この状態で回路遮断器1を取付板から持ち上げると取付板2から取り外すことができる。
【0009】
このような回路遮断器の取り付け構造においては、プラグインタイプの回路遮断器1を分電盤に設けられた取付板2に取り付けるために、取付板2と鉛直な方向の動きを規制する爪部3及び爪部4を取付板2に設けるとともに前記爪部3、4とそれぞれ対応する凹部5、及び凹部6を回路遮断器1に設け、取付板2に設けられた母線11、12から回路遮断器1を取り外す方向の動きを規制するロックレバー7を回路遮断器1に設けるとともに取付板2には前記ロックレバー7の係止部703が嵌合する嵌合部8を設けたものである。プラグインタイプの回路遮断器を取付板と平行にスライドさせながら取り付けることが可能となり、分電盤内に電線を引き回す場合にもロックレバー7の指掛部は回路遮断器の負荷側側面からわずかしか突出していないため電線被覆を傷付ける恐れがないものである。また、回路遮断器の取り外しに工具を用いる必要がなく、工具を携帯しておく必要性もない取付構造を提供するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2002−150911号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、昨今では、製品安全に対する取り組みが従来に増して重要視されてきている。回路遮断器並びに回路遮断器を組み込む分電盤にあっては、電力会社から供給される電気を各分岐回路に供給する役割を持っている一方、回路遮断器は配線を電気事故から保護する保安の役割も持っており、これらの役割を果たすための機能を充分に発揮するためには、使用に当たり回路遮断器が分電盤に正しく取り付けられた状態で使用されることが前提である。
【0012】
分電盤における取付板に回路遮断器が正しく取り付けられているか否かを確認する場合、分電盤を構成する前面側のカバーを開き、回路遮断器と母線との接触状態を確認する。回路遮断器の並び具合が適正に配置されているか否かを目視確認することに加え、前述のロックレバーが取付板の方向に適正に押下げられた状態であるか否かを目視確認する。
【0013】
しかしながら、ロックレバーは回路遮断器の底面近く中底近傍に位置し、回路遮断器における電線差込孔よりも底面側に位置するものであるから、ロックレバーの押し下げ状態を確認する場合には、工場出荷前にあっては、分電盤において取付板が載置されるケース内部を覗き込むようにして順次目視確認していく必要があり確認作業に時間を要していた。
【0014】
また、分電盤を施工する現場にあっては、回路遮断器に電線を配線する前に確認する場合には同じくケース内部を覗き込むようにして目視確認していくが、電線を配線した後に再び確認する場合には、配線した電線が、ロックレバーの押し下げ状態を目視確認するための妨げとなり、電線を避けながら確認作業を行うこととなり、確認作業が行いにくく、ロックレバーの状態が適正でない場合、即ち回路遮断器の使用状態が適正でない場合には、電線を掻き分けたうえでロックレバーにアクセスし、ロックレバーを取付板に押下げる操作が必要となる。このため、取り付け確認作業や修正作業に時間を要するものとなっていた。
【0015】
分電盤の施工現場などにおいて、回路遮断器を増設したり、定格電圧が異なるものに取り替えたりしたときに、万一ロックレバーを押下げし忘れた場合、回路遮断器は、取付板と鉛直な方向の位置の規制は行われるが、電源側端子から負荷側端子方向への抜け止めの規制が行われず、回路遮断器は母線からの抜け止めが解除された状態となり、母線から外れるおそれがある。
【0016】
取替工事を行った後は確認作業を行うが、万一ロックレバーが押下げられない状態で、そのまま負荷側端子に電線を接続して使用を開始してしまうと、経年的な使用や振動等に伴い、回路遮断器が母線から外れて、若しくは外れかけて、母線と端子の接触不良や端子部の異常発熱の発生、また、停電の発生など、種々の電気的な不良が発生するおそれがある。
【0017】
そこで、本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、分電盤の施工時や回路遮断器の交換などを行った場合に、万一取付固定解除手段であるロックレバーの位置が取付固定位置にない場合においても、最終的に分電盤のカバーをボックスに取り付けた後であっても、ロックレバーの取付状態の確認が容易に行え、また、ロックレバーを取付解除位置から取付固定位置に変位せしめ、回路遮断器を中底に確実に取付固定できる分電盤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明に係る分電盤は、上述の課題を解決すべく構成されたもので、前方が開口したボックスと、該ボックスに取り付けされボックス前方側を覆うカバーとからなるキャビネット内部に、中底に取付けられた分岐開閉器が配設される分電盤であって、
前記分岐開閉器には、前記中底に設けられた係止部に係止されることにより分岐開閉器を取付固定する一方、前記係止部との係止が解かれることにより取付を解除するロックレバーが設けられるとともに、前記カバーには、前記ロックレバーが貫通する孔が設けられたことを特徴として分電盤を構成するとよい。
【0019】
かかる構成によれば、分電盤のカバーに設けられたロックレバーが貫通する孔から分岐開閉器のロックレバーが貫通して配設されることにより、ロックレバーが係止位置にあるのか、もしくは取付解除位置にあるのかを識別することができるから、分電盤のキャビネット外部から、分岐開閉器の中底への取付状態を識別することができる。
【0020】
また、本発明に係る分電盤は、前記ロックレバーが貫通する孔は、個々の分岐開閉器の配設位置と対応して設けられ、前記ロックレバーは、前記カバーから前方側に露出することを特徴として構成するとよい。
【0021】
かかる構成によれば、分電盤に配設される個々の分岐開閉器ごとにロックレバーの係止状態を識別できるから、多数の分岐開閉器が並設された状態における分電盤においても、ロックレバーの取付状態をキャビネット外部から視認できるとともに、ロックレバーが正しく取付けられていない場合には、該当する回路遮断器を容易に特定することができる。
【0022】
また、本発明に係る分電盤は、前記ロックレバーは、分岐開閉器の取付固定位置と取付解除位置との間を摺動自在に設けられ、該取付固定位置と取付解除位置において、前記カバーから前方側に露出するロックレバーの高さが異なることにより、前記ロックレバーが取付固定位置にあること、もしくは取付解除位置にあることを前記カバーの外部から識別できることを特徴として構成するとよい。
【0023】
かかる構成によれば、ロックレバーが取付固定位置にあること、もしくは取付解除位置にあることの違いが、キャビネットを構成するカバー表面からの高さの違いにより識別できるから、複数の分岐開閉器におけるロックレバーの取付状態の把握を行うにあたり、容易にロックレバーが取付固定位置にあること、もしくは取付解除位置にあることの違いが識別できる。
【0024】
また、本発明に係る分電盤は、前記ロックレバーが前記取付解除位置にあるときにおいて、
前記カバーの前面側からロックレバーを押圧することにより、前記取付固定位置にロックレバーを変位させることができることを特徴として構成するとよい。
【0025】
かかる構成によれば、キャビネットを構成するカバーの前面側からロックレバーの取付状態を視認・識別するのみならず、取付固定状態にないロックレバーを、取付固定位置に変位させることができるから、ロックレバーをカバーを開けずとも簡単に正規の取付状態に修正することができる。
【発明の効果】
【0026】
以上の如く、本発明によれば、分電盤の施工時や回路遮断器の交換などを行った場合に、万一取付固定解除手段であるロックレバーの位置が取付固定位置にない場合においても、分電盤のカバーをボックスに取り付けることにより、ロックレバーを取付固定位置に変位せしめ、回路遮断器を中底に確実に取付固定できる分電盤を提供することができる。また、分電盤の使用にあたり、取付固定位置に変位せしめた状態を継続的に維持することができる分電盤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施形態を示す分電盤の外観斜視図を示す。
【図2】分電盤における中底への分岐開閉器の取付図を示す。
【図3】分岐開閉器を背面側からみた図を示す。
【図4】分岐開閉器を底面側からみた図を示す。
【図5】分岐開閉器のロックレバー周辺の要部断面図を示す。
【図6】分電盤に分岐開閉器が取付けられた状態における要部状態図を示す。
【図7】分電盤に分岐開閉器が取付けられた状態における外観斜視図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
次に本発明の好ましい実施形態を、分岐開閉器が中底に取付けられた状態で配設される分電盤により詳細に説明する。
【0029】
(第一の実施形態)
第1の実施形態に係る分電盤を図1に示した。該分電盤10は、単相3線式の商用電路に用いられるものである。キャビネットの内部に、電流制限器、主開閉器、該主開閉器の二次側において接続部材を介して接続される母線、該母線と各々接続される分岐開閉器等の内部機器を収納するものであり、これら内部機器は中底に取付けられて、キャビネットに固定取付けされる。
【0030】
前記キャビネット11は、分電盤10の外郭を構成する。前記キャビネット11は、前記内部機器を取付ける中底が取付け固定され分電盤の上下左右の側面及び背面を覆う壁を形成するボックス211と、内部機器の操作面側に臨む前面側を覆うよう前記ボックス211前面側に設けられるカバー212とを備えて構成される。また、前記カバー212の前面側に、ドア213が閉まった状態で前記カバー212の前面を覆うように、ヒンジ構造を有して開閉できるよう設けられたドアが備えられている。
【0031】
図2は、分岐開閉器としての回路遮断器1と、該回路遮断器1が取り付けられる取付板2と各相の母線、絶縁壁などを備えた内器ユニットとを示した図である。
【0032】
回路遮断器1の電源側端子側を正面側、負荷側端子側を背面側、操作ハンドル103が設けられた側を前面側、後述する取付板に取り付けられる側を底面側として図2乃至図5を用いて説明を行う。
【0033】
回路遮断器1は、本体外殻が長手方向に分割構成される筐体101、102により形成される。該回路遮断器1は、電源と接続される電源側接続端子、該電源接続端子と接続される接点、該接点を開閉する接点開閉機構、異常電流が発生したときには接点開閉機構に作用して回路を切動作させる自動遮断機構、負荷側回路に電源を供給する負荷側接続端子等が筐体の内部に設けられ、前記接点開閉機構を筐体の外部から入切操作する操作ハンドル103が筐体の前面側に設けられている。負荷側には負荷側端子に電線を接続するための電線挿入孔105、106が設けられている。電源側接続端子はプラグインタイプの端子を用い、負荷側接続端子は鎖錠接続端子を用いて構成している。また負荷側には、中底である取付板に設けられた係止部206に係止されるロックレバー104が設けられている。
【0034】
前記ロックレバー104は、外部つまみ1042により回路遮断器1の底面から突出する、しないを択一的に選択できるよう設けられており、回路遮断器1の底面側から前面側にかけて連なる略棒状に形成されている。
【0035】
また、中底である取付板は、回路遮断器等の内部機器や該内部機器に電力を供給する母線201、202、203が取り付けられるものである。
【0036】
取付板2には、回路遮断器1を取り付けたときに回路遮断器と作用し合い、回路遮断器の前面側−底面側の中底方向の動きを規制する第一の規制部204、205と、正面側−背面側の方向の動きを規制する第二の規制部206とが設けられている。
【0037】
第一の規制部204は、取付板2の一部を切り起こして形成したものであり、端部が係合片となっている。回路遮断器1側には、図2に示したように回路遮断器1の底面に前記第一の規制部が嵌り込む凹部107と、凹部の底面側に設けられて前記係合片と作用し合う係合片108が設けられている。回路遮断器1の取付板2への取り付け時に、夫々の係合片が係合することにより、回路遮断器の背面側において前面側−底面側の方向の動きが規制される。
【0038】
また、第一の規制部205は、取付板に突出形成したものであり、回路遮断器1の正面側に形成された前記第二の規制部205の突出部が嵌り込む凹部(図示しない)と嵌合しあう。これら突出部と凹部が係合することにより、回路遮断器の正面側において前面側−底面側の方向の動きが規制される。このように回路遮断器の正面側と背面側の両方において前面側−底面側の方向の動きを規制するため、より確実に取付板に固定することができる。
【0039】
次に、第二の規制部206は、取付板2の一部を凹状に曲げ加工して凹部により係止部を形成したものである。回路遮断器1の背面側には、回路遮断器1の底面から突出する、しないを外部つまみ1042により択一的に選択するロックレバー104が設けられており、回路遮断器1の底面から突出したロックレバーの係止部1041が前記第二の規制部206の凹部に嵌り込み、互いに嵌合することにより、回路遮断器の正面側−背面側の方向の動きが規制される。
【0040】
取付板2に回路遮断器1を取り付けるときには、回路遮断器1を取付板2の上で母線の方向にスライドさせていくことにより、母線が電源側端子に差し込まれていくと同時に、前記第一の規制部204、205が回路遮断器1の係合片108、前記凹部と係合することにより、取付板2上の適正な位置に回路遮断器1が載置される。そして、前記ロックレバー104の外部つまみ1042を取付板2の方向に押下げることにより、回路遮断器1の底面からロックレバーの係止部1041が突出して取付板2の凹部206と嵌合し、取り付けが完了する。
【0041】
取付板2から回路遮断器1を取り外すときには、前記ロックレバー104の外部つまみ1042を取付板と反対の方向(回路遮断器1の前面側)に引き上げて、ロックレバーの係止部1041を底面から突出しない状態にし、回路遮断器1を背面側に引き抜くように移動させることにより、前記第一の規制部104、205と回路遮断器との係合が外れると同時に母線と接続端子の接続が解かれ、取り外しが完了する。
【0042】
また、図4に示されたように、ロックレバー104には、該ロックレバー104の回路遮断器1の底面から突出する位置、しない位置が択一的に決まるよう、弾性的に形成された弾性腕部1046が形成されており、筐体101、102の背面−底面側の内部に前記弾性腕部と摺動する乗り越え突起1011、1021が形成されている。ロックレバーの外部つまみ1042を操作して、ロックレバーを取付板の方向に押下げ/前面側に引き上げる場合に、前記弾性腕部が撓みながら乗り越え突起1011、1021を乗り越えることにより、ロックレバーの位置が択一的に決まり、位置が保持される。
【0043】
このような構成であるため、ロックレバーを取付板の方向に押下げるときに、弾性腕部1046の端部が乗り越え突起1011、1021の頂点に達した後ははずみをつけて所定の固定位置に変位する。また、ロックレバー104を引き上げるときも弾性腕部1046の端部が乗り越え突起1012、1022の頂点に達した後ははずみをつけて所定の解除位置に変位する。
【0044】
また、ロックレバーの係止部1041には、底面側が取付板に対して斜面となった台形状乗り越え突起1047が形成されている。回路遮断器を取付板2に載置しようとした場合に、例えばロックレバー1041が回路遮断器の底面から突出したままで回路遮断器を母線の方向にスライドさせていくと、前記斜面が取付板2に押し付けられる力がロックレバー104を前面側に押し上げる力に変換されてロックレバー104が前面側に押し上げられる。このとき、弾性腕部1046が前記乗り越え突起1011、1021を乗り越えてしまわない程度の位置関係になっていれば、回路遮断器1のスライドが進み、取付板2の凹部嵌合部にロックレバー1041が差し掛かったときには、前面側に押し上げられる力がなくなるとともに、弾性腕部1046が元の突出状態に戻ろうとする力が働き、ロックレバーの係止部1041は回路遮断器1の底面から突出し、外部つまみを押下げる必要なく、取り付けが完了する。
【0045】
ロックレバー104の前面側の延出部1043には、該延出部の一部の肉が掘り込まれることにより摺動部が形成されている。該摺動部はガイドの役割を果たすものである。
【0046】
前記摺動部は、筐体に設けられた筒状の支持部1012、1022により該支持部の内側を摺動自在に支持される。
【0047】
次に、前記キャビネット11を構成するカバー212と、ロックレバー104の関係について説明する。前記カバー212には分岐開閉器の操作ハンドル103を避けて開口されたと同様に、前記ロックレバー104の延出部1043が貫通する孔が設けられている。
より詳しくは、各々の分岐開閉器の取付位置におけるロックレバー104の位置と対応して、ロックレバー104の延出部1043が貫通する孔2121a,2121b,2121cが設けられている。
【0048】
カバー212をボックス211に取付けた場合、ロックレバー104の端部(1044a,1044b,1044c)が、前記孔(2121a,2121b,2121c)を貫通し、カバーの前面側に露出する。即ち分岐開閉器の操作ハンドル103と、ロックレバーの端部(1044a,1044b,1044c)が、カバー前面側から視認できる。
【0049】
図6、図7に示したように、特定の分岐開閉器におけるロックレバー104が取付解除位置にある場合、そのロックレバーの端部はカバー前面側に突出(1044a)することになるため、該特定の分岐開閉器におけるロックレバーは、取付固定位置にないことが視認できる。
【0050】
このような場合、カバー211の前面側から取付固定位置にないロックレバーの端部1044aを押圧すると、ロックレバー104は摺動自在に構成されているから、押圧した力が前記延出部に伝わり、ロックレバー104が下方に変位しはじめ、前記弾性腕部1046が撓みながら乗り越え突起1011、1021の頂点を乗り越えるまで変位した後は、はずみをつけて所定の取付固定位置にセットされ、分岐開閉器の固定が行われる。
【0051】
このようにロックレバー104が取付解除位置にある分岐開閉器が存在する場合、カバーを閉じた後からでも、その分岐開閉器をキャビネットの外部から容易に視認・識別することができる。
また、ロックレバー104を取付解除位置から取付固定位置にするよう修正する場合においても、カバー211をボックス212から取り外すことなく、カバーの前面側からロックレバーの端部を押圧することにより、容易に取付固定操作を行うことができる。
【0052】
次に、取付板2への回路遮断器1の取付時においては、次のようなステップで取り付ける。
回路遮断器1を取付板2に載置して、母線側にスライドさせ、前記第一の規制部204、205と係合片108とが係合する(ステップ1)。この状態では、取付板に対して回路遮断器の取り付け位置は適正な位置になっている。
【0053】
続いて、ロックレバー1041の外部つまみ1042、もしくはロックレバー104の延出部1043を取付板の方向に押下げて、ロックレバー1041を底面から突出させる(ステップ2)。以上により、取付板に対する回路遮断器の取り付けが完了する。
【0054】
取付板1に回路遮断器1を複数並設配置させていく場合に万が一、前記ステップ1のままで取付作業を終えてしまったものがある場合、出荷前の点検時や施工時の点検時に分電盤のカバー前面側からの目視確認を行うことにより、ロックレバー104が前面側に延出しているから適正に取り付けられていない回路遮断器があることを容易に気付くことができる。即ち、前記表示部1044がカバー212の外部前面側に突出している場合には、ロックレバーが押下げられていないことを容易に気付くことができる。
【0055】
一方で、前記ステップ2を実施すべくロックレバーを押下げる場合には、ロックレバーの端部1044を押圧することにより、ロックレバー104に力を伝達することができ、ロックレバーを押下げることができる。特に、現場での配線作業を完了した後において、ステップ1のままで取付作業を終えてしまったものがある場合には、配線を掻き分けて、ロックレバー104の外部つまみ1042を押下げる必要がなく、安全性を担保できることに加えて施工時の利便性の向上が期待できる。
【0056】
なお、実施形態においては、単相3線式電路に用いられる分電盤の形態を示したが、単相2線式電路に用いられる分電盤や、直流電路に用いられる分電盤の中底に取付けられる操作ハンドル及びロックレバーを備える分岐開閉器に本願発明における取付固定忘れを極力防止することができる構造を適用して分電盤を構成してもよい。

【符号の説明】
【0057】
1 回路遮断器
101 筐体
102 筐体
103 操作ハンドル
1011 乗り越え突起
1021 乗り越え突起
1012 支持部
1022 支持部
104 ロックレバー
1041 ロックレバーの係止部
1042 外部つまみ
1043 延出部
1044 端部
1046 弾性腕部
1047 台形状乗り越え突起
105 電線挿入孔
106 電線挿入孔
107 凹部
108 係合部
2 取付板
201 母線
202 母線
203 母線
204 第一の規制部
205 第一の規制部
206 第二の規制部
10 分電盤
11 キャビネット
211 カバー
212 ボックス
213 ドア
2121 孔


【特許請求の範囲】
【請求項1】
前方が開口したボックスと、該ボックスに取り付けされボックス前方側を覆うカバーとからなるキャビネット内部に、中底に取付けられた分岐開閉器が配設される分電盤であって、
前記分岐開閉器には、前記中底に設けられた係止部に係止されることにより分岐開閉器を取付固定する一方、前記係止部との係止が解かれることにより取付を解除するロックレバーが設けられるとともに、
前記カバーには、前記ロックレバーが貫通する孔が設けられたことを特徴とする分電盤。

【請求項2】
前記ロックレバーが貫通する孔は、個々の分岐開閉器の配設位置と対応して設けられ、
前記ロックレバーは、前記カバーから前方側に露出することを特徴とする請求項1記載の分電盤。

【請求項3】
前記ロックレバーは、
分岐開閉器の取付固定位置と取付解除位置との間を摺動自在に設けられ、
該取付固定位置と取付解除位置において、前記カバーから前方側に露出するロックレバーの高さが異なることにより、
前記ロックレバーが取付固定位置にあること、もしくは取付解除位置にあることを前記カバーの外部から識別できることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の分電盤。

【請求項4】
前記ロックレバーが前記取付解除位置にあるときにおいて、
前記カバーの前面側からロックレバーを押圧することにより、
前記取付固定位置にロックレバーを変位させることができることを特徴とする請求項1乃至請求項3記載の内何れか1項に記載の分電盤。




【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2013−110898(P2013−110898A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−255591(P2011−255591)
【出願日】平成23年11月22日(2011.11.22)
【出願人】(000109598)テンパール工業株式会社 (217)