説明

切りくず誘導機能付き切削工具およびその切削加工方法

【課題】 詰まりを生じることなく、切りくずのカールを矯正できて、さらに切りくずを所望の方向に矯正して誘導することができる切削工具、およびその切削加工方法を提供する。
【解決手段】 この切削工具1は、すくい面4に、切れ刃稜線5から延びて切りくず10を案内する誘導溝7を有する。この誘導溝7は、溝幅が切りくず10の幅よりも狭く、切りくず10のすくい面側の一部を入り込ませて切りくず10を案内する。すくい面4に、さらにカバー4を設けても良い。誘導溝7の代わりに、誘導突条を設けても良い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、旋削加工等を行う切りくず誘導機能付き切削工具およびその切削加工方法、特に、延性の高い材料に適した切削工具およびその切削加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、工業製品の大量生産、高性能化に伴い、切削加工においても高効率化、高精度化が求められている。これらの要求を実現するために、切りくずの適切な処理や、切削速度の増加が必要とされる。旋削加工において、切りくずの処理性、工具寿命、切削抵抗、加工精度は、被削性4項目と呼ばれ、それぞれを改善するための工夫がなされてきた。その中で、切りくずの処理性の悪さは、切りくずの絡みつき等のため、自動化を阻害する最大の要因である。
【0003】
切りくずの処理性の改善のために、一般的には、切りくずのカールを強めて破壊,分断させるチップブレーカが使用される(例えば、非特許文献1)。この他に、切削工具のすくい面にカバーやパイプ等で切りくずの中空誘導路を形成するものが提案されている(例えば特許文献1)。突き切りバイトにおいては、すくい面に、切りくずを全幅に渡って内部に通す誘導溝を設けたものも提案されている(上記非特許文献1)。また、座繰り加工用の切削工具においては、すくい面の中央に切れ刃稜線に至る稜線部を設け、切りくずのロール化を防止することが提案されている(特許文献2)。
【0004】
また、切削抵抗の減少のためには、切りくずを引っ張りながら旋削加工を行う手法が提案されている(非特許文献2)。切削加工の高能率化のために、切削速度を増加させた場合、切削熱が増大するため、工具寿命が減少し、仕上げ面性状の悪化を引き起こす。対策としては、切削油を使用することが挙げられるが、環境に対して悪影響を及ぼすことが問題となっている。上記の切りくずを引っ張りながら旋削加工を行う手法は、切削抵抗、切削熱を減少することによって工具摩耗を減少する手法として、効果的な手法と考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭52−142379号公報
【特許文献2】特開平7−237005号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】ツールエンジニア編集部編著「NC工作機械活用マニュアル」株式会社大河出版、1990年9月10日、p94〜95
【非特許文献2】中山一雄:切削中に切りくずに加える張力の影響, 精密機械, 30-1(1964) pp.46-52.
【非特許文献3】社本英二,他2 名:楕円振動切削加工法( 第1 報) −加工原理と基本特性, 精密工学会誌, 62-8 (1996) pp.1127-1131.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
チップブレーカを使用する場合、切りくずがある程度の脆弱性を持ち、切りくずが流出する力を利用して切りくずの曲げによる破壊、分断を生じさせる必要がある。このため、プレス鋼や耐熱合金などのような延性の高い材料に対しては機能しない場合が多く、切りくずの絡みつきや仕上げ面の損傷を引き起こしている。また、チップブレーカが機能する場合にも、周期的な切削抵抗の変動を生じるため、振動問題を引き起こしたり、加工精度を低下させる可能性がある。
【0008】
切削工具のすくい面に、カバーやパイプ等により中空誘導路を形成するものや、切りくずを内部に通す誘導溝を設けるものは、常に、切りくずが同じ幅で、同じ方向に、かつ強いカールを生じずに流出するとすれば、効果的な手法となる。しかし、切りくずの幅、方向、カールは切削条件によって変わる。その切りくず幅の変動を許容するために、中空誘導路や誘導溝の幅を広くした場合、切りくずが中でカールして中空誘導路や誘導溝の内壁面に角度を持って当たり、引っ掛かりを生じる。また、流出方向が中空誘導路や誘導溝の方向から大きくずれたり、強いカールを生じると、中空誘導路や誘導溝の入口付近において引っ掛かりを生じる。そのため、切りくずの詰まりが発生し、実用化が困難である。
【0009】
すくい面の中央に稜線部を設けるものは、座繰り加工という限られた加工において、切りくずのロール化防止に効果的となる手法であり、一般的な旋削においては適用できない。すなわち、もともとの切りくず流出方向と切りくず幅、さらに切りくずの発生位置が決まっている加工であって、その切りくずの中央に、その切りくず流出方向に沿って切れ刃稜線に至る稜線部を設ける形状であるため、加工条件によって切りくず流出方向と切りくず幅、さらに切りくずの発生位置が変化する一般的な旋削では機能しない。
【0010】
通常の切削において、切りくずは螺旋を描きながら流出して行く。これは切りくず生成時に横向きカール,上向きカールが発生するためである。上向きカールは、すくい面に垂直な向きのカールであり、切りくずと工具のすくい面との摩擦による,切りくずのすくい面付近の2次流れによって発生する。横向きカールは、すくい面と平行な向きのカールであり、切りくず生成時における切りくずの自由表面側の横流れが原因となって発生する。これら各方向のカールと流出方向とが組合わさって切りくずの流出経路が定まる。このように、それぞれのカールは異なる原因によって発生するため、切りくずのカールを矯正するためには、上向きカール、横向きカールのそれぞれについて対処しなければならない。また、切りくずの流出経路を規制するためには、各方向のカールと共に、流出方向を規制する必要がある。
【0011】
一方、切りくずを引っ張りながら加工を行う手法は、基礎研究としては、切削抵抗を減少する効果が示されているが、実用的に切りくずを引っ張る方法がないため、長年にわたって実用化されていない。
切りくずを引っ張る手段として、例えば切りくずを挟み付けて送るローラを設けたとしても、切りくずの発生初期に、切りくずの先端をローラに導くには、切りくずの流出経路を規制しなければ、ローラで切りくずの先端を捕らえることができず、実用化できない。切りくずは、カールを生じ、また流出方向も切削条件等によって変わるため、その流出経路の規制が困難である。
【0012】
高延性の切りくずを分断せずに所望の位置に導くことができれば,単に連続的な切りくず処理だけでなく、切りくずに張力を与えて切削する手法が実現でき、切削抵抗、動力、熱等を減少させ、被削性全般を向上させて、切削効率の向上や、工具寿命の延長を同時に実現することができる。
【0013】
この発明の目的は、詰まりを生じることなく、横向きカールを矯正できて、切りくずを所望の方向に誘導することができる切りくず誘導機能付き切削工具および切削方法を提供することである。
この発明の他の目的は、切削条件や切削部位が種々変わっても、誘導溝による切りくずの確実な案内を可能とすることである。
この発明のさらに他の目的は、切れ刃稜線から遠くまで所望の箇所に切りくずの確実な案内を可能とすることである。
この発明のさらに他の目的は、張力を付与しながら切削が行えて、切削抵抗、動力、熱等を減少させて、切削効率の向上や、工具寿命の延長が図れ、かつ引張力付与手段への切りくずの案内を容易とすることである。
この発明のさらに他の目的は、切りくずの上向きカールを矯正可能とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この発明の切りくず誘導機能付き切削工具は、すくい面に、このすくい面の縁の切れ刃稜線またはこの切れ刃稜線の近傍から切れ刃稜線に対して遠ざかる方向に線状に延びて切りくずを案内する誘導形状部を設け、この誘導形状部は、幅が切りくずの幅よりも狭くすくい面に対して凹または凸となる部分であって、すくい面上に流出する切りくずの一部を、この切りくずの生成過程で塑性変形させその塑性変形部分に嵌まり合って切りくずを案内するものとする。すなわち、上記誘導形状部は、幅が切りくずの幅よりも狭くすくい面に対して凹または凸となる部分であって、切れ刃稜線の近傍で塑性変形をうけてすくい面上に切りくずとして流出する材料の一部を、その凹または凸形状とは逆の凸または凹形状に塑性変形させその塑性変形部分に嵌まり合って切りくずを案内するものである。
上記誘導形状部は、溝であっても突条であっても良い。すなわち、誘導溝であっても誘導突条であっても良い。誘導溝の場合、切りくずのすくい面との接触面に生じさせた突形状の塑性変形部分を入り込ませて切りくずを案内する。誘導突条の場合、切りくずのすくい面との接触面に生じさせた溝状の塑性変形部分に嵌まり込んで切りくずを案内する。
【0015】
この構成の切削工具によると、切りくず幅よりも狭い凹または凸形状の誘導形状部を設けたため、切れ刃先端部(切れ刃稜線近傍)で切りくずが生成される際に、切りくずのすくい面との接触面の一部が、誘導形状部によって塑性変形させられる。この塑性変形部分が誘導形状部に嵌まり合うことにより、切りくずが案内されて、切りくずの流出方向が矯正され、かつ切りくずの横向きカールが矯正される。誘導形状部が溝の場合は、切りくずのすくい面との接触面に突形状の塑性変形部分を生じさせ、この突形状の塑性変形部分を入り込ませて切りくずを案内する。誘導形状部が突条の場合は、切りくずのすくい面との接触面に溝状の塑性変形部分を生じさせ、この溝状の塑性変形部分に嵌まり込んで切りくずを案内する。
上記誘導形状部は、切りくずのすくい面側に塑性変形部を生じさせ、互いに嵌まり合い状態として案内するものであるため、流出方向の矯正、およびカールの矯正が行われ、そのため、切りくずの幅が種々変わっても、円滑な案内が可能となる。
従来の孔やカバー等のような中に通す誘導路では、切りくずの流出方向を規制しないまま、切りくずの先端が誘導路内に進入しようとするため、誘導路の入口から外れて誘導されなかったり、また内壁面に角度を持って当たり、詰まりを生じ易いと考えられる。切削条件を変えると一般に流出方向が変化するため、目的の方向に導くことができず、上記の入口からの外れや角度を持った当たりが生じる。また、切りくずが誘導路内でカールして内壁面に当たることによっても、詰まりが生じる。
これに対して、上記誘導形状部によると、嵌まり合い状態で案内するため、単なる誘導ではなく、切りくずの流出方向の矯正とカールの矯正が行われ、そのため、詰まりのない円滑な案内が行える。なお、誘導形状部による切りくずの塑性変形は、切りくず生成のための塑性変形の一部として行われ、切りくずの流出を妨げるものではない。また、円滑な案内を行うにつき、切りくず幅と誘導形状部の幅(溝幅や突条幅)との適切な関係が限られるが、誘導形状部の幅に対して、円滑な案内が可能となる切りくずの許容幅が、中を通す誘導路に比べて広い。
このように流出方向が矯正され、かつ横向きカールが矯正されるため、切りくずを所望の方向に誘導することができる。このため、プレス鋼、耐熱合金、軟質アルミ等のような延性の高い材料のように、チップブレーカが機能しない材質の場合にも、連続的な切りくず処理が可能となる。切りくずの処理性が向上することで、上記延性材料に対する自動化が促進し、歩留りが向上し、さらに加工精度が向上する。また、切りくずに張力を与えて加工する方法が実現可能となる。
なお、上記誘導溝や誘導突条等の誘導形状部は、切れ刃稜線から形成しても良いが、切れ刃稜線には形成せず、切れ刃稜線の近傍から延びるように形成する方が、誘導形状部によってワークの仕上げ面を劣化させることが回避される点で好ましい。誘導溝の深さや、誘導突条の高さは、切れ刃稜線から遠ざかるに従って徐々に高くまたは深くなり、一定深さ,一定高さとなってさらに延びるようにすることが好ましい。
【0016】
この発明の切削工具において、上記誘導溝や誘導突条等の誘導形状部を、上記すくい面に複数条並べて設けても良い。なお、複数条並べて設けた場合、1条の誘導形状部の幅を切りくずの幅よりも狭くするが、複数条の誘導形状部が並んだ誘導形状部群の幅は、切りくずの幅よりも広くてもよい。
切れ刃稜線のどの箇所から切りくずが延びるかは、切削条件によってかわることがある。そのため、誘導溝等の誘導形状部が1条であると、切りくずが誘導形状部で案内できない場合があるが、誘導形状部が複数条並べて設けられていると、いずれかの誘導形状部が切りくずに対して適切な位置となって効果的に案内することになり、誘導形状部による切りくずの確実な案内が行える。
【0017】
この発明の切削工具において、上記すくい面を覆って上記すくい面との間に切りくずが通過する誘導路を形成するカバーを設けても良い。
ワークの各方向の面を連続して加工する場合などは、切削工具とワーク表面との角度の関係等が種々変わり、誘導溝だけでは確実には誘導できないときがある。このような場合に、上記カバーが設けられていると、より確実に誘導することができる。誘導溝による矯正のうえで、カバーにより規制するため、カバーのみで案内するものと異なり、切りくず流出方向の変化や誘導路内での切りくずのカールによる詰まりが防止される。
【0018】
この発明の切削工具において、上記誘導溝等の誘導形状部よりも切れ刃稜線から遠くに位置して、内部が切りくずの通る誘導路となる誘導路形成部材を設けても良い。
誘導溝等の誘導形状部による案内は、すくい面に沿った案内であるため、切れ刃稜線から遠くになると案内できないが、上記誘導路形成部材を設けることで、切れ刃稜線から遠くまで所望の箇所に切りくずを確実に案内することができる。
【0019】
この発明の切削工具において、シャンク部に、切れ刃稜線から延びて上記誘導溝等の誘導形状部で案内される切りくずを、切れ刃稜線から遠ざかる方向に引っ張る引張力付与手段を設けても良い。
引張力付与手段を設けて切りくずに張力を与えながら切削することにより、切削抵抗、動力、熱等を減少させ、被削性全般を向上させて、切削効率の向上や、工具寿命の延長を同時に実現することができる。この引張力付与手段を切削工具のシャンク部に設ければ、刃物台や工具ホルダに設ける場合に比べて、切れ刃稜線のより近くへ引張力付与手段を配置することが容易で、流出する切りくずを引張力付与手段へ案内し易く、特に、切りくずの先端を引張力付与手段で捕捉することが容易となる。
【0020】
この発明の切削工具において、上記すくい面を、切れ刃稜線に垂直な断面の形状が凸曲線となる凸曲面としても良い。この場合に、上記誘導溝や誘導突条等の誘導形状部を設けると共に上記凸曲面としても良く、また上記誘導形状部を設けずに、上記凸曲面としても良い。誘導形状部を設けずに上記凸曲面としたものが、請求項9記載の切りくずの上向きカール抑制機能付き切削工具となる。
すくい面を上記凸曲面とした場合、切りくずがすくい面の凸曲面にならい、上向きカールが抑制される。通常の工具では、すくい面を凹曲面として上向きカールを積極的に生じさせるが、これとは逆に、凸曲面として上向きカールをなくすものである。凸曲面とするため、稜線を設けるものと異なり、旋削一般に適用できる。なお、上向きカールは、切りくずの所望位置への誘導の上で比較的影響が小さいため、特に必要な場合に凸曲面とすれば良い。
【0021】
この発明の切削方法は、切削工具として、すくい面の縁の切れ刃稜線またはこの切れ刃稜線の近傍から延びる溝または突条からなる誘導形状部をすくい面に有する工具を用い、切りくずの幅が上記誘導形状部の幅よりも広くなり、すくい面上に流出する切りくずのすくい面との接触面に、この切りくずの生成時に前記誘導形状部で塑性変形部分を生じさせ、この塑性変形部分が前記誘導形状部と嵌まり合って案内させるように切削することを特徴とする。
この切削方法によると、この発明の切削工具につき説明したと同様に、詰まりを生じることなく、横向きカールが矯正され、さらに切りくずを所望の方向に矯正して誘導することができる。
この発明の切削方法は、回転するワークに切削工具を当てて切削する旋削に限らず、フライス等による切削や、ドリル等の回転工具による切削にも適用することができる。
【発明の効果】
【0022】
この発明の切りくず誘導機能付き切削工具は、すくい面に、このすくい面の縁の切れ刃稜線またはこの切れ刃稜線の近傍から切れ刃稜線に対して遠ざかる方向に線状に延びて切りくずを案内する誘導形状部を設け、この誘導形状部は、幅が切りくずの幅よりも狭くすくい面に対して凹または凹となる部分であって、すくい面上に流出する切りくずの一部を、この切りくずの生成時に塑性変形させその塑性変形部分に嵌まり合って切りくずを案内するものとしたため、詰まりを生じることなく、横向きカールを矯正できて、さらに切りくずを所望の方向に矯正して誘導することができる。
【0023】
上記誘導形状部を、上記すくい面に複数条並べて設けた場合は、誘導形状部による切りくずのより確実な案内が可能となる。
上記すくい面を覆って上記すくい面との間に切りくずが通過する誘導路を形成するカバーを設けた場合は、誘導溝等の誘導形状部による切りくずのより一層確実な案内が可能となる。
上記誘導溝等の誘導形状部よりも切れ刃稜線から遠くに位置して、内部が切りくずの通る誘導路となる誘導路形成部材を設けた場合は、切れ刃稜線からより遠くまで、所望の箇所に切りくずの確実な案内が可能となる。
シャンク部に、引張力付与手段を設けた場合は、張力を付与しながら切削が行えて、切削抵抗、動力、熱等を減少させて、切削効率の向上や、工具寿命の延長が図れ、かつ切りくず処理手段への切りくずの案内が容易となる。
上記すくい面を、切れ刃稜線に垂直な断面の形状が凸曲線となる凸曲面とした場合は、切りくずの上向きカールが矯正される。
【0024】
この発明の切削加工方法は、切削工具として、すくい面の縁の切れ刃稜線またはこの切れ刃稜線の近傍から延びる溝または突条からなる誘導形状部をすくい面に有する工具を用い、切りくずの幅が上記誘導形状部の幅よりも広くなり、すくい面上に流出する切りくずのすくい面との接触面に、この切りくずの生成時に前記誘導形状部で塑性変形部分を生じさせ、この塑性変形部分が前記誘導形状部と嵌まり合って案内させるように切削する方法であるため、詰まりを生じることなく、横向きカールを矯正できて、さらに切りくずを所望の方向に矯正して誘導することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】(A)はこの発明の一実施形態に係る切りくず誘導機能付き切削工具を用いた工作機械の概念構成を示す説明図、(B)はその切削工具の先端の斜視図、(C)は同切削工具のチップとカバーを示す正面図である。
【図2】同切削工具の斜視図である。
【図3】(A),(B)はそれぞれ同切削工具のチップの各例の平面図である。
【図4】(A),(B)はそれぞれ同切削工具の誘導溝を示す拡大断面図である。
【図5】同切削工具にカバーを設けた状態の斜視図である。
【図6】同カバーとチップを示す正面図および破断平面図である。
【図7】同切削工具に引張力付与手段を設けた状態の斜視図である。
【図8】同切削工具の誘導溝変形例となるチップとカバーの正面図である。
【図9】同切削工具に誘導路形成部材を設けた例の破断平面図である。
【図10】同切削工具の誘導溝に係る試験方法の説明図である。
【図11】同試験の各試験条件を示す図表である。
【図12】同切削工具の試験方法を示す他の説明図である。
【図13】同試験の試験結果を示す図表である。
【図14】同試験の試験結果を示す写真である。
【図15】同切削工具の上向きカールの試験における試験方法の説明図である。
【図16】同試験方法の他の説明図である。
【図17】同試験の試験結果を示すグラフである。
【図18】切りくず引っ張り切削に係るシミュレーション結果を示すグラフである。
【図19】すくい角を異ならせた同シミュレーションの結果を示すグラフである。
【図20】(A),(B)はそれぞれこの発明の他の実施形態に係る切りくず誘導機能付き切削工具におけるチップの各例の平面図である。
【図21】(A)は図10(A)の実施形態の切削工具の部分拡大断面図、(B)同切削工具における誘導突条とチップとの関係を断面で示す説明図である。
【図22】同切削工具を用いた他の工作機械の概念構成を示すブロック図である。
【図23】同工作機械の工作機械本体となる旋盤の正面図である。
【図24】同工作機械本体の平面図である。
【図25】同切削工具を用いたさらに他の工作機械の要部を示す概念構成の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
この発明の第1の実施形態を図1ないし図22と共に説明する。図1は、切りくず処理機能付き工作機械の概要を示す。この工作機械は、回転するワークWに切削工具1を当てて切削する工作機械であって、ワ−クWから続いて切削工具1の切れ刃稜線5から流出する切りくず10に引っ張り力を与える引張力付与手段11と、この引張力付与手段11に対して切りくず10を誘導する切りくず誘導手段6と、引張力付与手段11を通過した切りくず10を処理する切りくず処理手段12とを備える。また、引張力付与手段11と切りくず処理手段12との間に、内部に切りくず10を通して案内するパイプ等の誘導路(図示せず)が設けられている。切りくず処理手段12は、切りくず10を裁断するか、または巻き取る処理を行う装置である。
ワークWは、主軸14により回転させられ、切削工具1は、直交2軸方向に移動可能な刃物台15に取付けられる。引張力付与手段11は、切削工具1に設けられ、または切削工具1の近傍に設けられる。
【0027】
切削工具1は、上記切りくず誘導手段6が設けられた切りくず誘導機能付き切削工具とされる。切りくず誘導手段6は、すくい面4に設けた誘導形状部である誘導溝7と、すくい面7に被せたカバー8とでなる。なお、カバー8は、必ずしも設けなくても良い。
【0028】
この切削工具1は、シャンク部となるシャンク2と、このシャンク2の先端のチップ取付座部2aに取付けられたチップ3からなるスローアウェイバイトである。チップ取付座部2aは切欠状凹部として形成され、チップ3は中央の取付孔に挿通した固定ねじ等の止め具9でシャンク2に固定される。チップ3は切れ刃となる部品であり、平面形状が三角形状とされて、シャンク2への取付面と反対側の面がすくい面4となる。チップ3は、すくい面4の各角部が円弧状に形成され、すなわち円弧状のノーズ部が形成され、その円弧状部分が切れ刃稜線5に形成されている。チップ3は、シャンク2の最先端となる使用位置2bにある切れ刃稜線5が加工に使用されるが、使用位置の切れ刃稜線5が摩耗すると、取り外して別の切れ刃稜線5が使用位置2bに来るように固定し直して使用される。なお、切れ刃稜線5は、上記円弧状の角部の他に、チップ3の各辺に形成しても良い。また、チップ3は四角形状であっても良い。
【0029】
なお、切削工具1は、スローアウェイバイトに限らず、他の形式の差し込みバイトや、全体が同一材質で造られたむくバイト(完成バイトとも言う)であっても良いが、以下は上記スローアウェイバイトを例に説明する。
【0030】
誘導溝7は、切れ刃稜線5の近傍から延びて切りくず10を案内する溝であり、チップ3の角部の近傍から反対側の辺まで延びている。この実施形態では、誘導溝7は、切れ刃稜線5の至近位置から徐々に深くなるように設けられているため、図では切れ刃稜線5から続いて見えるように図示したが、切れ刃稜線5には誘導溝7は設けられていない。誘導溝7は切れ刃稜線5の近傍から徐々に深くなって一定深さで延びるように形成されている。誘導溝7は、必ずしも反対側の辺まで続いていなくても良く、途中で次第に浅くなってすくい面4に至る形状であっても良い。なお、誘導溝7は、切れ刃稜線5から延びて設けても良いが、切れ刃稜線5には設けず、切れ刃稜線5の近傍から延びて形成する方が、誘導溝7で仕上げ面を劣化させず、仕上げ面の面粗さに有利である。
誘導溝7は、溝幅が切りくず10の幅よりも狭く、切りくず10のすくい面側の一部10aを入り込ませて切りくず10を案内する溝である。切りくず10の幅は、切込み量等によって変わるが、切削工具1は、切削荷重や加工精度から使用可能な条件が定まっており、したがって切りくず10の幅も、切削工具1を適正な使用条件で使用すると、その範囲が定まる。この適正な使用条件で生じる切りくず10の幅に対して、誘導溝7の溝幅を狭くする。この例では、誘導溝7は、平面形状円弧状を成す切れ刃稜線5の中央から延びている。
【0031】
図1および図2では、簡明のために、使用位置にある切れ刃稜線5から延びる誘導溝7のみを図示したが、実際には、図3(A)に示すように、チップ3の全ての角の切れ刃稜線5から延びて設けられる。このため、各誘導溝7は、チップ3の中央で互いに交差する。チップ3を止めている止め具9は、この例ではすくい面4を構成しており、その箇所に誘導溝7の一部が形成される。
【0032】
誘導溝7の断面形状は、例えば図4(A)のように円弧状の断面形状とされるが、この他に、図11のCの例のように、両側の溝内両側が平行で底面が円弧状断面とされた形状や矩形等であっても良い。誘導溝7の形成は、例えば放電加工等で行われる。
誘導溝7は、1条に限らず、例えば図3(B),図4(B)に示すように、複数条を平行に並べて設けても良い。例えば、2条または3条であっても、3条以上であっても良い。すくい面4のこれら複数条の誘導溝7の形成箇所は、波形の断面形状となる。すくい面4の全面を上記のような波形の断面形状としても良い。なお、図3(B),図4(B)においても、簡明のために、一つの角部の切れ刃稜線5から延びる誘導溝7のみを図示したが、図示部分と同様に、他の各角部の切れ刃稜線5からも複数条の誘導溝7が延びている。また、誘導溝7を複数条並べて設けた場合、1条の誘導溝7の幅を切りくず10の幅よりも狭くするが、複数条の誘導溝7が並んだ誘導溝群の幅は、切りくず10の幅よりも広くてもよい。
【0033】
図5および図6に示すように、カバー8は、すくい面4を覆ってすくい面4との間に、切りくず10が通過するトンネル状の誘導路16を形成する部品である。例えばカバー8の裏面に溝8aを形成し、その溝8a内とすくい面4との間で誘導路16を形成する。誘導路16は、チップ3の使用位置2bの誘導溝7に沿って設けられ、チップ3が余裕を持って通過可能な幅とされる。誘導路16の断面形状は、矩形状であっても、半円状等であっても良い。
カバー8は、例えばチップ3と略同じ平面形状とされ、止め具(図示せず)でシャンク2に固定される。カバー8には、チップ3と略同じ平面形状とする場合、切削の妨げとなることを回避するため、チップ3の使用位置2bとなる角部(すなわちノーズ部分)付近を切り落とした逃がし部8bを有する形状とされる。
なお、カバー8は、平らに形成し、チップ3のすくい面4に、切りくず幅よりも幅広の幅広溝(図示せず)を形成してその溝底に誘導溝7を設けても良い。または、カバー8とチップ3の両方に上記のような幅広溝を形成し、両側の幅広溝が組み合わされることで、内部に切りくず10の通過可能な断面寸法の誘導路が形成されるようにしても良い。
また、カバー8は、チップ3を超えてシャンク2の表面上まで延びるものであっても良い。
【0034】
図8に示すように、すくい面4に複数の誘導溝7を並べて設けた場合、カバー8で構成される誘導溝16は、いずれの誘導溝7で案内される切りくず10であっても、余裕を持って通過可能な断面形状とする。
【0035】
図7に示すように、引張力付与手段11は、切りくず10を挟み込んで回転可能な一対の平行なローラ17,18と、いずれか一方または両方のローラ17,18を回転させるサーボモータ19とで構成される。この例では図の下側のローラ18がサーボモータ19に直結して回転させられる。ローラ17,18は、支持枠20に軸受(図示せず)を介して回転自在に支持され、上記支持枠20にサーボモータ19が取付けられる。この引張力付与手段11は、支持枠20を介して切削工具1のシャンク2に取付けられている。ローラ17,18の軸方向は、上記誘導溝7の延長方向と直交する方向である。
なお、引張力付与手段11は、切削工具11に取付ける代わりに、刃物台15(図1)や、この刃物台15に取付けられて切削工具1を保持する工具ホルダなどに取付けても良い。
【0036】
図9に示すように、誘導溝7と引張力付与手段11のローラ17,18との間に、内部が切りくず10の通る誘導路21aとなる誘導路形成部材21を設けても良い。誘導路21aは、切りくず10を一対のローラ17,18の間に導くように設ける。誘導路形成部材21は、この例ではパイプからなり、シャンク2に固定されている。この誘導路形成部材21を設ける場合、図5のカバー8を省略しても良く、またカバー8を設けてさらに誘導路形成部材21を設けても良い。
誘導路形成部材21は、引張力付与手段11の支持枠20に設けるなどして、引張力付与手段11の構成部品としても良い。また、誘導路形成部材21は、図示の例では誘導溝7の近傍から延びているが、ローラ17,18の近傍のみに設けて、ローラ17,18の入口ガイドとしても良い。すなわち、引張力付与手段11の切りくず入口を誘導路形成部材21で構成してもよい。なお、入口ガイドとして誘導路形成部材21を設けない場合、引張力付与手段11の切りくず入口は、一対のローラ17,18における、切りくず10の挟み込みが可能な幅部分である。
【0037】
図1において、切削工具1のすくい面4の断面形状は、図16(B)に示すように、切れ刃稜線5に垂直な断面が凸曲線となる凸曲面としてある。このすくい面4は、平面であっても、また切れ刃稜線5に垂直な断面が凹曲線となる凹曲面としても良い。
【0038】
上記構成の切削工具1によると、切りくず10の幅よりも狭い誘導溝7を設けたため、図10のように、切削時に切りくず10がすくい面4に押し当てられながら生成される際に、切りくず10のすくい面4側の一部に、誘導溝7に入る塑性変形部10aが突条として形成され、この突条となった塑性変形部10aが誘導溝7に嵌まり込み状態となって案内される。これより切りくず10の流出方向が矯正され、横向きカールが矯正される。誘導溝7は、切りくず7のすくい面4側の一部に生じた塑性変形部10aを入り込ませるものであるため、切りくず10の幅が種々変わっても、円滑な案内が可能となる。
従来の孔やカバー等のような中に通す誘導路では、切りくずの流出方向を規制しないまま、切りくずの先端が路内に進入しようとするため、誘導路の入口から外れて誘導されなかったり、また内壁面に角度を持って当たり、詰まりを生じ易いと考えられる。切削条件を変えると一般に流出方向が変化するため、目的に方向に導くことができず、上記の入口からの外れや角度を持った当たりが生じる。また、切りくずが誘導路内でカールして内壁面に当たることによっても、詰まりが生じる。
これに対して、上記誘導溝7によると、嵌まり合い状態で案内するため、単なる誘導ではなく、切りくずの流出方向の矯正とカールの矯正が行われる。そのため、詰まりのない円滑な案内が行える。なお、誘導溝7による切りくず10の塑性変形部10aの形成は、切りくず生成のための塑性変形の一部として行われ、切りくずの流出を妨げるものではない。
なお、円滑な案内を行うにつき、切りくず10の幅と誘導溝7の溝幅との適切な関係が限られるが、溝幅に対して、円滑な案内が可能となる切りくず10の許容幅が、中を通す誘導路に比べて広い。適切な溝幅の例は、後に試験例を示す。
【0039】
このように切りくず10の横向きカールが矯正されるため、切りくず10を所望の方向に誘導することができる。このため、プレス鋼や耐熱合金などのような延性の高い材料のように、チップブレーカが機能しない材質の場合にも、連続的な切りくず処理が可能となる。また、引張力付与手段11によって切りくず10に張力を与えて加工する方法が実現可能となる。
【0040】
誘導溝7を、図3(B)、図4(B)のように、すくい面4に複数条並べて設けた場合は、切削条件が変わっても、いずれかの誘導溝7が切りくず10に対して適切な位置となって案内することになり、誘導溝7による切りくずの確実な案内が行える。すなわち、切れ刃稜線5のどの箇所から切りくず10が延びるかは、切削条件によって変わることがある。そのため、誘導溝が1条であると、切りくず10が誘導溝7で案内できない場合があるが、誘導溝7が複数条並べて設けられていると、いずれかの誘導溝7が切りくず10に対して適切な位置となって効果的に案内することができる。
【0041】
上記カバー8を設けた場合は、より確実な切りくず10の案内が行える。ワークWの各方向の面を連続して加工する場合など、広範囲を切削する場合、切削工具1とワーク表面との角度の関係等が種々変わり、誘導溝7だけでは確実には誘導できない場合がある。このような場合に、上記カバー8が設けられていると、より確実に誘導することができる。誘導溝7による矯正のうえで、カバー8により規制するため、カバー8のみで案内するものと異なり、誘導路16内での切りくずのカールによる詰まりが防止される。
【0042】
図9の誘導路形成部材21を設けた場合は、より確実な誘導が行える。誘導溝7による案内は、すくい面4に沿った案内であるため、切れ刃稜線5から遠くになると案内できないが、上記誘導路形成部材21を設けることで、切れ刃稜線5から遠くまで所望の箇所に切りくず10を確実に案内することができる。
【0043】
図16(B)のように、すくい面4を凸曲面とした場合は、切りくず10がすくい面4の凸曲面にならい、上向きカールが抑制される。通常の工具では、すくい面を凹曲面として上向きカールを積極的に生じさせるが、これとは逆に、凸曲面として上向きカールをなくすものである。凸曲面とするため、従来の稜線を設けるものと異なり、旋削一般に適用できる。なお、上向きカールは、切りくず10の所望位置への誘導の上で比較的影響が小さいため、特に必要な場合に凸曲面とすれば良い。
【0044】
なお、上記各実施形態では、切削工具1のすくい面4に設ける誘導形状部を誘導溝7とした場合につき説明したが、例えば、図20,21に示すように、誘導形状部として誘導突条7Aを設けても良い。図20(A),(B)は、それぞれ図3(A),(B)に示すチップ3において、誘導溝7の代わりに誘導突条7Aを設けた例を示す。図20(A)は、一つの角の切れ刃稜線5に対して誘導突条7Aを1本ずつ設けた例、図20(B)は、一つの角の切れ刃稜線5に対して誘導突条7Aを複数本平行に並べた例である。いずれも、誘導突条7Aは、誘導溝7を設ける場合と同じく、切れ刃稜線5またはこの切れ刃稜線5の近傍から反対側の辺まで延びて形成されている。誘導突条7Aの高さは、切れ刃稜線5の近傍から次第に高くなり、一定高さで続く形状とされる。誘導突条7Aは、必ずしも反対の辺まで延びていなくても良く、また反対の辺側へ次第に低くなってすくい面4に続く形状としても良い。誘導突条7Aの横断面形状は、例えば図21(A)のように半円状とされる。また、誘導突条7Aの突条幅は、切りくず10の幅よりも狭く形成される。この誘導突条7Aを設けたチップ3Aは、図2のシャンク3に取付けられて切りくず誘導機能付き切削工具を構成する。この誘導突条7Aを設けたチップ3Aは、前述の各図の例の切削工具1において、誘導溝7を設けたチップの代わりに用いることができる。
【0045】
図21(B)示すように、誘導突条7Aを有する切削工具を用いて切削した場合、切りくず10がすくい面4に押し付けられながら生成される際に、切りくず10のすくい面との接触面に溝状の塑性変形部分10aAが生じる。この溝状の塑性変形部分10aAに誘導突条7Aが嵌まり込んで切りくずを案内する。このため、誘導溝7を設けた場合と同様に、切りくず10の流出方向の矯正、カールの矯正が行われ、切りくず10を所望の方向へ円滑に案内することができる。
【0046】
つぎに、誘導溝7を設けた効果の確認試験例を説明する。供試体には、図3(A)に示すチップ3を有する切削工具1において、誘導溝7の溝幅や断面形状を種々変えたものにつき行った。図1のカバー8は設けない。
【0047】
ノーズ半径0.8 mm,刃先角60度の切削工具1を使用し、生成される切りくず10の幅と厚さを考慮して,図11の図表に示す4種類の案内溝7を、ノーズの中心位置にワイヤカット放電加工によって付与した。切削条件は、図13の図表に示す4種類で、切削速度をいずれも200 m/min とし、図12に示すようにアプローチ角αを15度として加工実験を行なった。
図13に示す元来の切りくず流出角( 図10(A)参照) は、コルウェル(Colwell )の経験則に基づいて算出した推定値である.本実験では案内溝7によって制御する切りくず流出角の目標値は全て45度( 図12参照) であることから、例えば切込み0.2 mm,送り0.08 mm/rev の条件では,元来の流出角19度からおよそ26度の角度変化を強要することになると推測される。
【0048】
実験結果を図13に示す。まず、溝断面の小さいA,Bの場合について考察する。切込み 0.2 mm の2条件においては、フラットな通常工具に比べると横向きカールが抑制され,切りくず流出方向も概ね誘導溝7の方向に制御されたが、誘導溝7に沿って完全に真直ぐな切りくずを排出するには至らなかった。これは,切削に関与する切れ刃稜線5の位置と誘導溝7の位置が若干ずれているためと考えられ、誘導溝7の位置を切削位置に合わせるか、または誘導溝7を複数にする等によって解決するものと予想される。切込み0.5 mm,送り0.3 mm/revにおいては、切削位置と溝位置が一致し、図14に写真で示すように誘導溝7に案内されて真直ぐに切りくずが流出した。一方、切込み1 mm,送り0.2 mm/revでは、誘導溝7に沿うことなく横向きカールを伴う切りくずが流出した。これは,溝断面が小さいために切りくず流出を矯正する力が小さかったためと考えられる。次に溝Cの場合,切込み 0.2 mm の2条件においては、誘導溝7に沿って真直ぐに切りくず10が流出した.一方、切込みが大きい他の2条件では、強度不足のために工具先端に欠損を生じた。溝Dの場合、切込み 0.2 mm の2条件では、不完全な切りくず流出となった。これは、切りくず10に対して溝幅が大きすぎたためと考えられる。一方、切込みが大きい他の2条件では、誘導溝7に沿って真直ぐに切りくず10が流出した。
【0049】
誘導溝7に沿って真直ぐに流出した切りくず10は、すくい面4側に溝形状と反対の凸形状が確認された。従って、意図したメカニズムにより、少なくとも適切な条件範囲では,切りくず10の流出方向と横向きカールを制御可能であることが確認された。
【0050】
上向きカールの抑制の試験結果を説明する。図16(B)に示すように、すくい面4が上向きカールと逆向きの曲率を持つ切削工具を作成した。なお誘導溝7は設けていない。図15に示す近似二次元切削を行って、曲率半径の違いによる上向きカールの変化を実測した。曲率0(通常の工具),0.035 ,0.065 ,0.17 mm -1のすくい面を持つ工具を製作し:切削幅1mm,切込み0.1 mm,切削速度200 m/min で5回ずつ加工実験を行った。なお、すくい角は切れ刃稜線先端で0度となるように調整した。
【0051】
各工具によって生成された切りくず10の上向きカールの曲率を実測した結果を図17に示す。すくい面の曲率によって上向きカールの曲率が小さくなり、すくい面の曲率が0.1 mm-1(すくい面の半径が10 mm )程度で上向きカールが発生しなくなること、さらに大きなすくい面の曲率では逆向きにカールすることがわかった。
以上のように、工具のすくい面に凸の曲率を持たせることで、上向きカールを抑制し得ることが確認された。
【0052】
引張力付与手段11を設けたことによる作用を説明する。引張力付与手段10を設けて切りくず10に張力を与えながら切削することにより、切削抵抗、動力、熱等を減少させ、被削性全般を向上させて、切削効率の向上や、工具寿命の延長を同時に実現することができる。また、加工精度も向上する。切削抵抗の減少によって工具寿命が延長されることは、逆に、同じ工具寿命であれば、高速度の切削や、重切削が可能であることを意味し、従来よりも高能率化を実現することができる。この引張力付与手段11を切削工具1のシャンク2に設ければ、刃物台15や工具ホルダに設ける場合に比べて、切れ刃稜線5のより近くへ引張力付与手段11を配置することが容易で、流出する切りくず10を引張力付与手段11へ案内し易く、特に、切りくず10の先端を引張力付与手段で捕捉することが容易となる。
引張力付与手段11は、切りくず10を挟む一対のローラ17,18で構成したが、そのため、切りくず10に連続的に送りを行いながら、張力を与えることができる。また、サーボモータ19を用いたため、速度制御やトルク制御が可能となり、適切な張力を与えることができる。
【0053】
引っ張り切削のシミュレーション結果を説明する。切りくずの引っ張り切削において、切りくずを引っ張ることによる見かけの摩擦角減少と加工動力の関係を、簡単なせん断角モデルを利用して解析した。その結果を図18,図19に示す。図18は、すくい角が0度の場合を、図19はすくい角が−20度の場合をそれぞれ示す。摩擦角はいずれも30度である。加工動力は、簡便な切削シミュレーションによく使用される考え方となる「最大せん断応力説」に基づく結果と、「最小エネルギー説」に基づく結果を示した。いずれの説においても、図18,19に示すように、見かけの摩擦角が0度付近の時に、加工動力が最小になることを確認した。これは、切りくずと切削工具のすくい面の間の摩擦力をキャンセルする力で切りくずを引っ張ることになる。
したがって、見かけの摩擦角が0度となるように引っ張り力を与えながら切削することで、引っ張り力も含めた加工動力が最小となり、摩擦発熱が減るので、切削工具の劣化、加工精度の低下も減ることになる。
【0054】
この見かけの摩擦角が0度となるように、引張力付与手段11を制御する機能を備えた工作機械の例を、図22〜図24に示す。
図22において、この工作機械は、工作機械本体30と、加工機制御装置50とで構成される。なお、ここで言う工作機械本体30は、工作機械の機械部分、つまり制御系を除く部分を言う。
【0055】
図23および図24において、工作機械本体30はタレット型の旋盤からなる。ベッド31上に主軸台32を介して主軸14が支持され、主軸14の主軸頭に、ワークWを把持する主軸チャック14aが設けられている。主軸14は、サーボモータ等からなる主軸モータ33により回転駆動される。
【0056】
刃物台15は、正面形状が多角形状のタレット刃物台からなり、その多角形の各辺部分を構成するいずれかの外周面部分15aに、切削工具1が工具ホルダ43を介して取付けられている。この切削工具1は、図1,図7に示す、誘導溝7および引張力付与手段11を有する切りくず誘導機能付きの切削工具1とされる。刃物台15の外周面部分15aに取付けられる工具は、バイト等の切削工具の他に、ドリルやミリングヘッド等の回転工具(図示せず)であっても良いが、少なくとも一つが、上記切りくず誘導機能付きの切削工具1とされる。
【0057】
このタレット形の刃物台15は、送り台34の上側送り台部34bに、タレット軸35を介して割出回転可能に搭載されている。送り台34は、送り台ベース34aと上側送り台部34bとからなり、送り台ベース34aは、ベッド31上に案内36を介して、主軸軸方向(Z軸方向)と直交する水平方向(X軸方向)に進退自在に設置されている。上側送り台部34bは、送り台ベース34a上に主軸軸方向(Z)に進退自在に搭載されている。送り台ベース34aはX軸サーボモータ37により、送りねじ機構38を介して進退駆動される。上側送り台部34bは、Z軸サーボモータ39により、送りねじ機構40を介して進退駆動される。これら送り台ベース34aおよび上側送り台部34bの進退移動により、刃物台15が直交2軸方向に移動する。また、上側送り台部34bに搭載された割出用モータ41により、刃物台15の旋回割出が行われる。
【0058】
この工作機械本体30は、図1の切りくず処理手段12を有するものとされる。なお、図示の例では、刃物台15を主軸14と平行に配置したが、刃物台15は主軸14と直交する方向や、対面する方向に配置しても良い。刃物台15は、タレット型に限らず、櫛歯状のものや、一つの切削工具1のみを支持するものであっても良い。また、この切りくず処理機能付き工作機械は、旋盤に限らず、切削工具1を用いる各種の工作機械に適用することができる。
【0059】
図22は、制御系の概念構成を示す。加工機制御装置50は、コンピュータ式の数値制御装置およびプログラマブルコントローラからなる。加工機制御装置50は、CPU(中央処理装置)およびメモリ等で構成される演算制御部51と、加工情報記憶手段52とを有し、加工プログラム53を演算制御部51で実行して工作機械本体30の各部の制御を行う。加工情報記憶手段52は、加工プログラム53の記憶部とパラメータ記憶部54を有し、パラメータ記憶部54には各種の制御動作の情報がパラメータとして記憶される。加工プログラム53には、刃物台15の各軸(X軸,Z軸)方向の軸移動命令や、主軸14の回転命令となる軸移動命令等が記述され、また切削工具1の形状(ノーズ半径、アプローチ角、すくい角、誘導溝を設けた場合にはその角度)等の工具に関する情報と、ワークWの材質や種類等のワークWに関する情報が、非実行命令の記述部分に記述される。
【0060】
演算制御部51は、基本制御部55、軸移動制御部56、およびシーケンス制御部57を有している。基本制御部55は、加工プログラム53の命令を記述順に読み出して、軸移動命令を軸移動制御部56に実行させ、加工プログラム53のシーケンス命令をシーケンス制御部57に転送する。シーケンス制御部57は、工作機械本体30の、例えばタレット刃物台15の回転割出や機体カバー(図示せず)の開閉等の各種のシーケンス動作の制御を、内蔵のシーケンスプログラム(図示せず)に従って行う。
軸移動制御部56は、工作機械本体30のX軸サーボモータ37,Z軸サーボモータ39,および主軸モータ30等の軸移動の制御を行う手段である。軸移動制御部56は、サーボ制御手段(図示せず)を有しており、加工プログラム53から基本制御部55を介して送られる軸移動命令の指令値(例えば、移動量や移動速度)に応じて、上記各軸サーボモータ37,39,30の閉ループ制御を行う。閉ループ制御には、各軸サーボモータ37,39,30に設けられたパルスコーダやエンコーダ等の位置検出器(図示せず)の情報を用いる。
【0061】
このような基本構成の加工機制御装置50において、次の切削速度計算手段58、および切削同期回転制御手段59が設けられている。切削速度計算手段58は、切削の開始時から終了時に渡り、現在の切削速度を計算する手段であり、加工情報記憶手段52に記憶された加工プログラム53等の各種の情報と、軸移動制御部56が認識している現在の位置情報等から切削速度を計算する。切削速度は、切削工具1が接する箇所のワークWの周速であるため、切削の進行に伴うワーク径の減少等により変化するが、閉ループ制御を行う軸移動制御部56の各軸の現在値と主軸回転数、あるいはそれらに対する加工プログラム53の指令値、および加工情報記憶手段52に記憶されている工具寸法に関するデータから、現在の周速が計算でき、切削速度が計算できる。例えば、工具長データLが加工情報記憶手段52に記憶されていて、X軸位置xと主軸回転数nが軸移動制御部56から得られれば、切削速度計算手段58は、上記X軸位置xと工具長データLとから刃先位置を計算し、さらにその位置の回転半径を算出し、主軸回転数nとから周速を計算する。
【0062】
切削同期回転制御手段59は、引張力付与手段11のローラ17,18の回転により切りくず10を引っ張る速度(すなわち、ローラ17,18のうちの駆動側ローラの周速)が、ワークWの回転で切削工具1により切削する切削速度と一致するように、ローラ回転駆動用のサーボモータ19の回転速度を制御する手段である。サーボモータ19には速度検出器(図示せず)を設け、切削同期回転制御手段59は閉ループ制御を行う。
なお、ここで言う「同期回転制御」は、厳密な同期制御に限らず、切りくず10を引っ張る速度と切削速度とを概ね一致させる制御を意味し、切削同期回転制御手段59は、このような概ね一致させる制御を行うもので良い。サーボモータ19の上記速度検出器には、例えばタコジェネレータが用いられる。また、サーボモータ19は、インクリメンタル式のパルスコーダを持つものが一般的であるため、このようなパルスコーダやエンコーダ等の位置検出器から速度情報を得るものとしても良い。
【0063】
このように、切削速度計算手段58および切削同期回転制御手段59を設け、引張力付与手段11のローラ17,18による引っ張り速度を切削速度と一致するように制御することで、見かけの摩擦角が概ね0度となるように引っ張り力を与えながら切削することができる。これにより、引っ張り力も含めた加工動力が概ね最小となり、摩擦発熱が減るので、切削工具の劣化、加工精度の低下も減ることになる。また、加工プログラム53等の情報や、軸移動制御部56の現在位置情報等から周速を計算するので、専用のセンサを追加することなく、引っ張り速度と切削速度の同期制御が行え、簡単な構成で済む。
【0064】
なお、引張力付与手段11が上記ローラ17,18とサーボモータ19とで構成される場合、切りくず10のローラ17,18間への噛み込みの有無が、サーボモータ19の電流フィードバック値(切りくずを引っ張り始めると、速度の同期を保つための負荷がかかり、モータトルクすなわち電流を増すことになる)によって確認できる。このため、噛み込みの確認手段(図示せず)を設け、切削開始後の設定時間までに噛み込みが確認できなかった場合にアラームを発生させる手段(図示せず)を設けても良い。
【0065】
図25は、見かけの摩擦角が0度となるように、引張力付与手段11を制御する機能を備えた工作機械の他の例を示す。この例は、切削工具1の切れ刃稜線5の付近等に、切削工具1に作用する力を検出する力センサ61を設け、この力センサ61の検出値に応じて、引張力付与手段11のローラ17,18の回転により切りくず10を引っ張る力(モータトルク)を制御する作用力対応回転制御手段62を設けたものである。力センサ61は、例えば、切削力の背分力を検出するものであり、シャンク2(切削工具1と引張力付与手段11の間)に埋め込んで設置する。作用力対応回転制御手段62は、力センサ61の出力をキャンセルするようにサーボモータにトルク指令を与える。上記力センサ61の出力とサーボモータへのトルク指令値の対応は、予め校正することができる。上記センサ61により検出される力は、例えば、切りくず10とすくい面4との摩擦により生じる力であり、したがって、この力を相殺することで、見かけの摩擦角が0度となるように、切りくず10を引っ張る制御が行える。
上記の力センサ61は、切削工具1に加えられる切削力のみを検出するように配置された例であるが、このセンサは切削工具1とさらに引張力付与手段11の両方に加えられる力を検出するように、切削工具1と引張力付与手段11の両方を支える工具シャンクと刃物台等との間に配置することもできる。この場合、力センサが支える部分の質量が大きいために検出の応答性が悪くなるが、その代わりに切削工具1と引張力付与手段11の両方に加えられる力の合力を検出することができるため、この検出値がゼロになるようにサーボモータへのトルク指令値を増減することによって正確に見かけの摩擦角をゼロにすることができる。
この実施形態の場合、力センサ61が必要となるが、加工機制御装置の記憶情報から現在の切削速度が計算不可能な場合にも適用することができる。
【0066】
なお、上記各実施形態では、旋削に用いる切削工具に適用した場合につき説明したが、この発明の切りくず誘導機能付き切削工具は、例えばプレーナのように並進運動するワークに対して切削する切削工具にも適用できる。また、切りくず10に張力を付与することは困難であるが、フライス、ドリル、ミリングヘッドのような回転工具にも適用することができる。フライスの場合、切りくずの飛散のために機械の熱変形が生じたり、必要以上に切削油を使用したり、コンベヤーのような機械を動かし続けたりする必要があるが、この発明の切りくず誘導機能付き切削工具の切りくず誘導機能を用いれば、切りくずの回収が容易となる。また、ドリルの場合、切りくずの詰まりが頻繁に問題になるため、その切りくずの流出の制御に、この発明の切りくず誘導機能が効果的である。
【符号の説明】
【0067】
1…切削工具
2…シャンク
3…チップ
3A…チップ
4…すくい面
5…切れ刃稜線
6…切りくず誘導手段
7…誘導溝(誘導形状部)
7A…誘導突条(誘導形状部)
8…カバー
10…切りくず
11…引張力付与手段
12…切りくず処理手段
14…主軸
15…刃物台16…誘導路
17,18…ローラ
19…サーボモータ
21a…誘導路
21…誘導路形成部材
30…工作機械本体
50…加工機制御装置
51…演算制御部
52…加工情報記憶手段
53…加工プログラム
58…切削速度計算手段
59…切削同期回転制御手段
61…力センサ
62…作用力対応回転制御手段
W…ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
すくい面に、このすくい面の縁の切れ刃稜線またはこの切れ刃稜線の近傍から切れ刃稜線に対して遠ざかる方向に線状に延びて切りくずを案内する誘導形状部を設け、この誘導形状部は、幅が切りくずの幅よりも狭くすくい面に対して凹または凸となる部分であって、すくい面上に流出する切りくずの一部を、この切りくずの生成過程で塑性変形させその塑性変形部分に嵌まり合って切りくずを案内するものとした切りくず誘導機能付き切削工具。
【請求項2】
上記誘導形状部が誘導溝であって、この誘導溝は、切りくずのすくい面との接触面に生じさせた突形状の塑性変形部分を入り込ませて切りくずを案内するものとした請求項1記載の切りくず誘導機能付き切削工具。
【請求項3】
前記誘導形状部が誘導突条であって、この誘導突条は、切りくずのすくい面との接触面に生じさせた溝状の塑性変形部分に嵌まり込んで切りくずを案内するものとした請求項1記載の切りくず誘導機能付き切削工具。
【請求項4】
上記誘導形状部を、上記すくい面に複数条並べて設けた請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の切りくず誘導機能付き切削工具。
【請求項5】
上記すくい面を覆って上記すくい面との間に切りくずが通過する誘導路を形成するカバーを設けた請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の切りくず誘導機能付き切削工具。
【請求項6】
上記誘導形状部よりも切れ刃稜線から遠くに位置して、内部が切りくずの通る誘導路となる誘導路形成部材を設けた請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の切りくず誘導機能付き切削工具。
【請求項7】
シャンク部に、切れ刃稜線から延びて上記誘導形状部で案内される切りくずを、切れ刃稜線から遠ざかる方向に引っ張る引張力付与手段を設けた請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の切りくず誘導機能付き切削工具。
【請求項8】
上記すくい面を、切れ刃稜線に垂直な断面の形状が凸曲線となる凸曲面とした請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の切りくず誘導機能付き切削工具。
【請求項9】
すくい面を、このすくい面の縁の切れ刃稜線に垂直な断面の形状が凸曲線となる凸曲面とした切りくずの上向きカール抑制機能付き切削工具。
【請求項10】
切削工具として、すくい面の縁の切れ刃稜線またはこの切れ刃稜線の近傍から延びる溝または突条からなる誘導形状部をすくい面に有する工具を用い、切りくずの幅が上記誘導形状部の幅よりも広くなり、すくい面上に流出する切りくずのすくい面との接触面に、この切りくずの生成時に前記誘導形状部で塑性変形部分を生じさせ、この塑性変形部分が前記誘導形状部と嵌まり合って案内させるように切削することを特徴とする切削加工方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate


【公開番号】特開2013−59859(P2013−59859A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−258784(P2012−258784)
【出願日】平成24年11月27日(2012.11.27)
【分割の表示】特願2008−50697(P2008−50697)の分割
【原出願日】平成20年2月29日(2008.2.29)
【出願人】(504139662)国立大学法人名古屋大学 (996)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】