説明

切断装置、切断データ処理装置、切断データ処理プログラム及び記録媒体

【課題】切断動作の無駄を省き、切断作業時間を短縮することができる切断装置、切断データ処理装置、切断データ処理プログラム及び記録媒体を提供する。
【解決手段】切断装置において、複数の模様を、当該模様の切断ラインであって連続した複数の線分を含む切断ラインの少なくとも一部が互いに接触して隣り合うように並べて配置する配置処理(ステップS1)と、前記配置処理により配置した複数の模様において前記切断ラインの接触部を抽出する抽出処理と、前記抽出処理で抽出した接触部で複数の模様の切断ラインを相互に繋げる又は共通化するように前記切断ラインを接続する接続処理(ステップS2)と、前記接続処理で接続した切断ラインを含む複数の模様の切断ラインに基づいて、切断データを作成する切断データ作成処理とを実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切断刃と被切断物とを相対的に移動させることにより、複数の模様を被切断物から切断する切断装置、切断データ処理装置、切断データ処理プログラム及び記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば紙等のシートを自動的に切断するカッティングプロッタが知られている。前記シートは、表面に粘着層を有する保持部材としての基材に貼り付けられる。そして、カッティングプロッタは、切断刃を前記シートに圧接又は離間するよう上下移動させる機構を含むキャリッジを備え、基材の両端部分を駆動機構の駆動ローラ及びピンチローラで上下方向から挟んで第1方向へ移動させると共に、前記キャリッジを前記第1方向と直交する第2方向へ移動させて前記シートを切断する。(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−205541号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のカッティングプロッタでは、基材上のシートから複数の模様を切り抜く場合、1つの模様の切断を終える度に、切断刃の刃先をシートから離間させて次の模様の切断開始点に対応する位置へ移動させる必要がある。つまり、複数の模様を切断するには、模様を切断する動作に加え、切断刃が模様間を移動する動作、即ち、切断を伴わない基材の移動(シートの移動)及び切断刃の上下移動を含むキャリッジの移動が行われる。このため、全ての模様を切り抜くにはかなりの時間がかかる。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、複数の模様を切断する際、切断刃が模様間を移動する動作の無駄を省き、切断に要する作業時間を短縮することができる切断装置、切断データ処理装置、切断データ処理プログラム及び記録媒体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した目的を達成するために、本発明の請求項1の切断装置は、切断刃と被切断物とを相対的に移動させることにより、複数の模様を前記被切断物から切断する切断装置において、前記複数の模様を、当該模様の切断ラインであって連続した複数の線分を含む切断ラインの少なくとも一部が互いに接触して隣り合うように並べて配置する配置手段と、前記配置手段により配置した前記複数の模様において前記切断ラインの接触部を抽出する抽出手段と、前記抽出手段で抽出した接触部で前記複数の模様の切断ラインを相互に繋げる又は共通化するように前記切断ラインを接続する接続手段と、前記接続手段で接続した切断ラインを含む前記複数の模様の切断ラインに基づいて、切断データを作成する切断データ作成手段とを備え、前記切断データ作成手段で作成した切断データに基づいて、前記複数の模様を前記被切断物から切断することを特徴とする。
【0007】
上記構成によれば、切断データ作成手段によって、複数の模様の切断ラインについて当該模様相互間で繋げる又は共通化するように接続した切断データを作成することができる。従って、作成した切断データに基づいて、複数の模様を、それらの接触部を利用して連続的に切断する、又は共通化した切断ラインを一度に切断することができる。これにより、切断刃の相対移動における無駄を省いて効率的に切断することができ、切断作業時間を短縮することができる。
【0008】
請求項2の切断装置では、請求項1の発明において、前記配置手段は、前記複数の模様を、隣り合う前記模様相互間で前記線分同士が重複するように配置することを特徴とする。
【0009】
請求項3の切断装置では、請求項1または2の発明において、前記接続手段は、隣り合う前記模様のうち一方の模様の切断ラインと他方の模様の切断ラインとを、連続的に切断する切断ラインとして接続することを特徴とする。
【0010】
請求項4の切断装置は、請求項1から3の何れかの発明において、前記接続手段は、隣り合う前記模様のうち一方の模様の切断ラインにおける線分と他方の模様の切断ラインにおける線分とが直線状に連なる場合、これら双方の線分を1つの線分として切断する切断ラインとして接続することを特徴とする。
【0011】
請求項5の切断装置は、請求項1から3の何れかの発明において、前記切断刃は、前記被切断物との相対的な移動によって、前記被切断物から抵抗力を受けて当該切断刃の刃部の向きを変更するように構成され、前記切断データ作成手段は、前記複数の模様に共通する同じ方向の切断ラインの線分がある場合、これら切断ラインの線分を、前記刃部の向きを変更することなく順次切断する切断データを作成することを特徴とする。
【0012】
請求項6の切断装置は、請求項1から5の何れかの発明において、前記切断データ作成手段は、前記複数の模様を1つにまとめた模様群とみなし、当該模様群全体の輪郭の切断ラインを連続的に切断する切断データを作成することを特徴とする。
【0013】
請求項7の切断データ処理装置は、切断刃と被切断物とを相対的に移動させることにより、複数の模様を前記被切断物から切断する切断装置のための切断データを処理する切断データ処理装置において、前記複数の模様を、当該模様の切断ラインであって連続した複数の線分を含む切断ラインの少なくとも一部が互いに接触して隣り合うように並べて配置する配置手段と、前記配置手段により配置した前記複数の模様において前記切断ラインの接触部を抽出する抽出手段と、前記抽出手段で抽出した接触部で前記複数の模様の切断ラインを相互に繋げる又は共通化するように前記切断ラインを接続する接続手段と、前記接続手段で接続した切断ラインを含む前記複数の模様の切断ラインに基づいて、切断データを作成する切断データ作成手段とを備えることを特徴とする。
【0014】
上記切断データ処理装置において、切断データ作成手段により、複数の模様の切断ラインについて当該模様相互間で繋げ又は共通化するように接続した切断データを作成することができる。従って、作成した切断データに基づいて切断装置で被切断物を切断した時、複数の模様を、それらの接触部を利用して連続的に切断する、又は共通化した切断ラインを一度に切断することができる。これにより、切断刃の相対移動における無駄を省いて効率的に切断することができ、切断作業時間を短縮することができる。
【0015】
請求項8記載の切断データ処理装置は、請求項7の発明において、前記配置手段は、前記複数の模様を、隣り合う前記模様相互間で前記線分同士が重複するように配置することを特徴とする。
【0016】
請求項9記載の切断データ処理装置は、請求項7または8の発明において、前記接続手段は、隣り合う前記模様のうち一方の模様の切断ラインと他方の模様の切断ラインとを、連続的に切断する切断ラインとして接続することを特徴とする。
【0017】
請求項10記載の切断データ処理装置は、請求項7から9の何れかの発明において、前記接続手段は、隣り合う前記模様のうち一方の模様の切断ラインにおける線分と他方の模様の切断ラインにおける線分とが直線状に連なる場合、これら双方の線分を1つの線分として切断する切断ラインとして接続することを特徴とする。
【0018】
請求項11記載の切断データ処理装置は、請求項7から9の何れかの発明において、前記切断装置の前記切断刃は、前記被切断物との相対的な移動によって、前記被切断物から抵抗力を受けて当該切断刃の刃部の向きを変更するように構成され、前記切断データ作成手段は、前記複数の模様に共通する同じ方向の切断ラインの線分がある場合、これら切断ラインの線分を、前記刃部の向きを変更することなく順次切断する切断データを作成することを特徴とする。
【0019】
請求項12記載の切断データ処理装置は、請求項7から11の何れかの発明において、前記切断データ作成手段は、前記複数の模様を1つにまとめた模様群とみなし、当該模様群全体の輪郭の切断ラインを連続的に切断する切断データを作成することを特徴とする。
【0020】
請求項13の切断データ処理プログラムは、切断刃と被切断物とを相対的に移動させることにより、複数の模様を前記被切断物から切断する切断装置のコンピュータに実行させるプログラムであって、前記コンピュータに、前記複数の模様を、当該模様の切断ラインであって連続した複数の線分を含む切断ラインの少なくとも一部が互いに接触して隣り合うように並べて配置する配置処理と、前記配置処理により配置した前記複数の模様において前記切断ラインの接触部を抽出する抽出処理と、前記抽出処理で抽出した接触部で前記複数の模様の切断ラインを相互に繋げる又は共通化するように前記切断ラインを接続する接続処理と、記接続処理で接続した切断ラインを含む前記複数の模様の切断ラインに基づいて、切断データを作成する切断データ作成処理とを実行させる。
【0021】
上記切断データ処理プログラムをコンピュータに実行させることによって、複数の模様の切断ラインについて当該模様相互間で繋げ又は共通化するように接続した切断データを作成することができる。従って、作成した切断データに基づいて切断装置で被切断物を切断した時、複数の模様を、それらの接触部を利用して連続的に切断する、又は共通化した切断ラインを一度に切断することができる。これにより、切断刃の相対移動における無駄を省いて効率的に切断することができ、切断作業時間を短縮することができる。
【0022】
請求項14の記録媒体は、請求項13に記載の切断データ処理プログラムを切断装置のコンピュータに読取り可能に記録したものである。
【発明の効果】
【0023】
請求項1の切断装置によれば、切断データ作成手段によって、複数の模様の切断ラインについて当該模様相互間で繋げ又は共通化するように接続した切断データを作成することができる。従って、作成した切断データに基づいて、複数の模様を、それらの接触部を利用して連続的に切断する、又は共通化した切断ラインを一度に切断することができる。これにより、切断刃の相対移動における無駄を省いて効率的に切断することができ、切断作業時間を短縮することができる。
【0024】
請求項2の切断装置によれば、請求項1に記載の発明の効果に加え、切断データ作成手段によって、複数の模様の切断ラインについて、隣り合う模様相互間で線分同士が重複した切断データを作成することができる。これにより、隣り合う模様の切断ラインを線分に沿ってまとめて切断することができる。従って、複数の模様の切断に必要な切断ラインの全長を短くして、切断作業時間をより短縮することができる。
【0025】
請求項3の切断装置によれば、請求項1または2に記載の発明の効果に加え、切断データ作成手段によって、隣り合う模様のうち一方の模様の切断ラインと他方の模様の切断ラインとを連続的に切断する切断データを作成することができる。従って、隣り合う模様を連続して切断することができる。
【0026】
請求項4の切断装置によれば、請求項1から3の何れかに記載の発明の効果に加え、一方の模様の切断ラインにおける線分と他方の模様の切断ラインにおける線分とが直線状に連なる場合、これら双方の線分を、1つの線分として切断する切断データを作成する。このため、当該切断データに基づき、複数の線分を1つの線分として、複数の模様にわたって効率的に切断することができる。また、被切断物において複数の模様が形成される領域を当該直線状の線分で区画するように切断することができ、被切断物の歩留りを向上させることが可能となる。
【0027】
請求項5の切断装置によれば、請求項1から3の何れかに記載の発明の効果に加え、切断データ作成手段によって、複数の模様に共通する同じ方向の切断ラインの線分を、切断刃の刃部の向きを変更することなく順次切断する切断データを作成することができる。従って、刃部の向きの変更が可能に構成された切断刃にあっても、刃部の向きを変更する動作を要することなく、同じ方向の切断ラインを順次切断することができる。従って、切断時において刃部の向きを変更する時間を省略することができる。
【0028】
請求項6の切断装置によれば、請求項1から5の何れかに記載の発明の効果に加え、切断データ作成手段により、複数の模様を1つにまとめた模様群における輪郭、つまり一続きの切断ラインを形成する切断データを作成することができる。従って、複数の模様の切断作業時間を大幅に短縮することができる。
【0029】
請求項7の切断データ処理装置によれば、切断データ作成手段により、複数の模様の切断ラインについて当該模様相互間で繋げる又は共通化するように接続した切断データを作成することができる。従って、当該切断データに基づいて切断装置で被切断物を切断した時、複数の模様を、それらの接触部を利用して連続的に切断する、又は共通化した切断ラインを一度に切断することができる。これにより、切断刃の相対移動における無駄を省いて効率的に切断することができ、切断作業時間を短縮することができる。
【0030】
請求項8の切断データ処理装置によれば、請求項7に記載の発明の効果に加え、請求項2の発明の効果と同様の効果を奏する。
請求項9記載の切断データ処理装置によれば、請求項7または8に記載の発明の効果に加え、請求項3の発明の効果と同様の効果を奏する。
請求項10記載の切断データ処理装置によれば、請求項7から9の何れかに記載の発明の効果に加え、請求項4の発明の効果と同様の効果を奏する。
請求項11記載の切断データ処理装置によれば、請求項7から9の何れかに記載の発明の効果に加え、請求項5の発明の効果と同様の効果を奏する。
請求項12記載の切断データ処理装置によれば、請求項7から11の何れかに記載の発明の効果に加え、請求項6の発明の効果と同様の効果を奏する。
【0031】
請求項13記載の切断データ処理プログラムを切断装置のコンピュータに実行させることによって、複数の模様の切断ラインについて当該模様相互間で繋げる又は共通化するように接続した切断データを作成することができる。従って、当該切断データに基づいて切断装置で被切断物を切断した時、複数の模様を、それらの接触部を利用して連続的に切断する、又は共通化した切断ラインを一度に切断することができる。これにより、切断刃の相対移動における無駄を省いて効率的に切断することができ、切断作業時間を短縮することができる。
【0032】
請求項14の記録媒体は、請求項13に記載の切断データ処理プログラムを切断装置のコンピュータに読取り可能に記録したものである。よって、上記した請求項13の発明と同様の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の第1実施形態における切断装置の内部構造を示す斜視図
【図2】切断装置の平面図
【図3】カッタホルダの斜視図
【図4】カッタを上昇させた状態で示すカッタホルダの断面図
【図5】カッタを下降させた切断時の状態で示すカッタホルダ近傍部の側面図
【図6】ギヤ部を拡大して示す正面図
【図7】切断時におけるカッタ先端の近傍部の拡大図
【図8】電気的構成を示すブロック図
【図9】(a)は既存の切断データにより形成される複数の模様を説明するための図、(b)は(a)の模様の1つを拡大して示す図
【図10】複数の模様の切断データを有する既存の全体データの構造を説明するための図
【図11】(a)は複数の模様を切断ラインの一部が互いに接触して隣り合うように並べて配置した状態を示す図、(b)は(a)の切断ラインを相互に繋げ又は共通化するように接続した状態を示す図、(c)は(b)の切断ラインの線分のうち平行な線分の切断方向を揃えた状態を示す図、(d)は(c)の切断ラインの線分のうち平行な線分のグループごとに切断を行うように変更した状態を示す図、(e)は(d)の切断ラインの線分のうち輪郭を構成する線分を一続きの線分としてまとめて切断を行うように変更した状態を示す図
【図12】新たに作成された全体データであって図11(e)の切断ラインに対応する図
【図13】新たに切断データを作成する場合における処理の流れを示すフローチャート
【図14】本発明の第2実施形態を示すものであり、(a)は既存の全体データに基づき形成された種々の模様を示す図、(b)は新たな全体データに基づき模様群として形成された複数の模様を示す図
【図15】本発明の第3実施形態を示すものであり、1つの既存の模様の切断データを利用して作成される、複数の模様の新たな全体データを説明するための図
【図16】本発明の第4実施形態を示す図8相当図
【発明を実施するための形態】
【0034】
<第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態について、図1〜図13を参照しながら説明する。
図1に示すように、切断装置1は、筐体としての本体カバー2と、本体カバー2内に配設されたプラテン3と、カッタホルダ5とを備えると共に、カッタホルダ5のカッタ4(図4参照)と被切断物6とを相対的に移動させるための第1及び第2移動手段7,8を備えている。本体カバー2は横長な矩形箱状をなしており、前面部には、プラテン3上面部に被切断物6を保持した保持シート10をセットするための横長な開口部2aが形成されている。尚、以下の説明では、切断装置1に対しユーザが位置する側を前方とし、その反対側を後方とする。そして、前後方向をY方向とし、Y方向と直交する左右方向をX方向とする。
【0035】
本体カバー2の右側には、ユーザに対して必要なメッセージ等の表示を行う表示手段としての液晶ディスプレイ(LCD)9が設けられると共に、ユーザが各種の指示や選択、入力の操作を行うための複数の操作スイッチ65(図8参照)が設けられている。
前記プラテン3は、前後一対の板材3a,3bからなり、上面部が水平面たるXY平面をなすように構成されている。プラテン3には、被切断物6を保持する保持シート10が載置されるようにセットされ、被切断物6の切断の際、保持シート10をプラテン3で受ける。詳しくは後述するが、保持シート10の上面には、左右両方の縁部10bを除いた部分に粘着剤が塗布された粘着層10a(図7参照)が形成されており、粘着層10aに被切断物6が貼り付けられて保持される。
【0036】
前記第1移動手段7は、プラテン3の上面側で保持シート10をY方向(第1方向)へ移動させるものである。即ち、切断装置1における左右の側壁部11a,11bには、プラテン3の板材3a,3bの間に位置させて、駆動ローラ12とピンチローラ13が設けられている。駆動ローラ12とピンチローラ13は、X方向に延びて、側壁部11a,11bに対して回動可能に支持されている。また、駆動ローラ12とピンチローラ13は、前記XY平面に対して平行で、且つ上下方向に並ぶように配置されている。下側が駆動ローラ12で、上側がピンチローラ13である。図2に示すように、右側壁部11bには、駆動ローラ12の右側に位置させて、クランク状の第1取付フレーム14が設けられている。取付フレーム14の外側には、Y軸モータ15が固定されている。
【0037】
Y軸モータ15は例えばステッピングモータからなり、回転軸15aは第1取付フレーム14を貫通しており、先端部にギヤ部16aを有する。駆動ローラ12の右端部には、ギヤ部16aと噛合するギヤ部16bが固着されており、これらギヤ部16a、16bにより第1減速ギヤ機構16が構成されている。前記ピンチローラ13は、左右の側壁部11a,11bに形成されたガイド溝17b(図1に右側の溝17bのみ図示)により上下方向へ移動可能にガイドされている。左右の側壁部11a,11bには、ガイド溝17bを外側から囲うバネ収容部18a,18bが夫々設けられている。ピンチローラ13は、バネ収容部18a,18bに収容された図示しない圧縮コイルバネにより下方へ付勢されている。ピンチローラ13には、保持シート10の左右両方の縁部10bに接触して押圧する押圧部13aが設けられている。押圧部13aは、ピンチローラ13の他の部分よりも外径が少し大きく形成されている。
【0038】
ここで、駆動ローラ12とピンチローラ13は、前記圧縮コイルバネの付勢力により、保持シート10を上下方向から押圧挟持する(図5参照)。そして、Y軸モータ15を正転駆動、或は逆転駆動させると、その回転運動が第1減速ギヤ機構16を介して駆動ローラ12に伝わることで、保持シート10を被切断物6と共に後方或いは前方へ移動させる。これら駆動ローラ12、ピンチローラ13、Y軸モータ15、第1減速ギヤ機構16、前記圧縮コイルバネ等は、第1移動手段7を構成する。
【0039】
前記第2移動手段8は、カッタホルダ5を支持するキャリッジ19を、X方向(第2方向)へ移動させるものである。詳細には、図1、図2に示すように、左右の側壁部11a,11b間には、後端部に位置させて、左右方向に延びるガイド軸20とガイドフレーム21が配設されている。ガイド軸20は、駆動ローラ12及びピンチローラ13と平行に配設されている。ガイド軸20は、プラテン3の直ぐ上側で、キャリッジ19下部(後述の貫通孔部22)を貫通している。ガイドフレーム21は、前縁部21aと後縁部21bが下方へ折り返された断面コ字状をなしている。前縁部21aはガイド軸20と平行に配設されている。ガイドフレーム21は、前縁部21aでキャリッジ19上部(後述の被ガイド体23,23)をガイドするようになっており、側壁部11a,11bの上端部で螺子21cにより固定されている。
【0040】
図2に示すように、切断装置1の後部には、右側壁部11bに第2取付フレーム24が設けられると共に、左側壁部11aに補助フレーム25が設けられている。第2取付フレーム24には、X軸モータ26及び第2減速ギヤ機構27が配設されている。X軸モータ26は、例えばステッピングモータからなり、第2取付フレーム24における前側の取付片24aの前面部に固定されている。X軸モータ26の回転軸26aは取付片24aを貫通しており、先端部に、第2減速ギヤ機構27と噛合するギヤ部26bを有する。第2減速ギヤ機構27にはプーリ28が設けられており、図2において左側の補助フレーム25にプーリ29が回転自在に取付けられている。これらプーリ28とプーリ29との間には、キャリッジ19の後端部(後述の取付部30)に連結された無端状のタイミングベルト31が掛装されている。
【0041】
ここで、X軸モータ26を正転駆動、或は逆転駆動させると、その回転運動が第2減速ギヤ機構27及びプーリ28を介してタイミングベルト31に伝わることで、キャリッジ19をカッタホルダ5ごと左方或いは右方へ移動させる。こうして、キャリッジ19とカッタホルダ5は、被切断物6の移動方向であるY方向と直交するX方向に移動する。上記のガイド軸20、ガイドフレーム21、X軸モータ26、第2減速ギヤ機構27、プーリ28,29、タイミングベルト31、キャリッジ19等は、第2移動手段8を構成する。
【0042】
前記カッタホルダ5は、キャリッジ19に対して前面側に配置され、Z方向たる上下方向(第3方向)への移動が可能に支持されている。これらキャリッジ19及びカッタホルダ5の構成について、図3〜図7も参照しながら説明する。
【0043】
図2、図3に示すように、キャリッジ19は、後面側が開放された略矩形箱状をなす。キャリッジ19の上壁部19aには、平面視にて円弧状をなすリブであって、上方へ突出する前後一対の被ガイド体23,23が一体に設けられている。被ガイド体23,23は、ガイドフレーム21の前縁部21aを挟むよう対称的に配置されている。キャリッジ19における底壁部19bの下側には、ガイド軸20に挿通される左右一対の貫通孔部22,22が下方へ張出すように形成されている。また、キャリッジ19の底壁部19bには、前記タイミングベルト31に連結される取付部30(図4、図5参照)が後方へ突出するように設けられている。こうして、キャリッジ19は、貫通孔部22,22に挿通されるガイド軸20によって左右方向へ摺動可能に支持されると共に、被ガイド体23,23で挟まれるガイドフレーム21によってガイド軸20の回りに回転しないように支持される。
【0044】
図3、図4、図5等に示すように、キャリッジ19の前壁部19cには、前方へ延出する上下一対の支持部32a,32bが一体に設けられている。キャリッジ19には、支持部32a,32bを夫々貫通する左右一対の支持軸33a,33bが上下動自在に支持されている。キャリッジ19内には、例えばステッピングモータからなるZ軸モータ34が、後方から収容されるように配置されている。Z軸モータ34の回転軸34aは(図3、図5参照)、キャリッジ19の前壁部19cを貫通しており、先端部にギヤ部35を有する。また、図4に示すように、キャリッジ19には、その前壁部19c中央からやや下寄りの部位を前後に貫通するギヤ軸37が設けられている。ギヤ軸37には、前壁部19cの前側で前記ギヤ部35に噛合するギヤ部38が回転可能に装着されると共に、ギヤ軸37前端部の止め輪(図示略)により抜け止めされている。ギヤ部38とギヤ部35で第3減速機構41を構成する(図3、図5参照)。
【0045】
ギヤ部38には、図6に示すように、渦巻き溝42が形成されている。渦巻き溝42は、第1端部42aから第2端部42bへ向って右方向に旋回するにつれ中心に近づく渦巻き状をなすカム溝である。渦巻き溝42には、詳しくは後述するが、カッタホルダ5と一体的に上下移動する係合ピン43が係合する(図4参照)。ここで、Z軸モータ34を正転駆動、或は逆転駆動させると、ギヤ部35を介してギヤ部38が回転する。ギヤ部38が回転することにより、渦巻き溝42に係合する係合ピン43が上下方向に摺動する。これに伴い、カッタホルダ5を支持軸33a,33bごと上方或いは下方へ昇降させる。この場合、カッタホルダ5は、係合ピン43が渦巻き溝42の第1端部42aに位置した上昇位置(図4、図6参照)と、係合ピン43が第2端部42bに位置した下降位置(図5、図6参照)との間で移動する。上記の渦巻き溝42を有する第3減速機構41、Z軸モータ34、係合ピン43、支持部32a,32b、支持軸33a,33b等は、カッタホルダ5を上下方向へ移動させる第3移動手段44を構成する。
【0046】
カッタホルダ5は、前記支持軸33a,33bに設けられるホルダ本体45と、カッタ4(切断刃)を有してホルダ本体45に上下動可能に保持される可動筒部46とを備えると共に、被切断物6を押圧するための押圧装置47を備えている。
即ち、図3、図4、図5等に示すように、ホルダ本体45は、上端部45aと下端部45bが後方へ折り返され全体としてコ字状をなしている。ホルダ本体45の上端部45aと下端部45bは、支持軸33a,33bの上下両端部に夫々固定された止め輪48により、支持軸33a,33bに対し移動不能に固定されている。図4、図5に示すように、支持軸33bの中間部には、前記係合ピン43が後向きに設けられた連結部材49が固着されている。こうして、ホルダ本体45、支持軸33a,33b、係合ピン43、及び連結部材49は一体的に構成され、カッタホルダ5は、前記第3移動手段44により係合ピン43に連動して上下方向へ移動する。また、支持軸33a,33bには、支持部32a上面とホルダ本体45の上端部45aとの間に、付勢部材たる圧縮コイルバネ50が夫々外装されている。圧縮コイルバネ50の付勢力により、カッタホルダ5全体がキャリッジ19側に対して上方へ弾性付勢されている。
【0047】
図3に示すように、ホルダ本体45における中間部には、可動筒部46や押圧装置47等を取付けるための取付部材51,52が螺子54a,54bにより夫々固定されている。下側の取付部材52には、可動筒部46を上下動可能に支持する筒状部52a(図4参照)が設けられている。可動筒部46は、筒状部52aの内周面に摺接する径寸法に設定され、上端部には、筒状部52aの上端で支持されるフランジ部46aが径方向外側へ張出すように形成されている。フランジ部46aの上端面にはバネ受け部46bが設けられている。図4に示すように、上側の取付部材51と可動筒部46のバネ受け部46bとの間には、圧縮コイルバネ53が配設されている。圧縮コイルバネ53は、可動筒部46(カッタ4)を下方の被切断物6側に付勢する一方、カッタ4に被切断物6側から上方への力が作用すると、当該付勢力に抗して可動筒部46の上方への移動を許容する。
【0048】
可動筒部46には、その軸線方向に延びるカッタ4が貫通するように配設されている。詳細には、カッタ4は、可動筒部46よりも長尺な丸棒状のカッタ軸4bと、そのカッタ軸4bの下端部に形成された刃部4aとを一体に有する。図7に示すように、刃部4aは略三角形状をなし、最下端の刃先4cが、カッタ軸4bの中心軸線4zから距離dだけ偏心した位置に形成されている。カッタ4は、可動筒部46内部の上下両端部に配設された軸受55(図4参照)により、上下方向の中心軸線4z(Z軸)を中心に回動自在に保持されている。こうして、カッタ4は、被切断物6の表面たるXY平面に対して直交するZ方向から刃先4cが圧接する。また、カッタ4は、カッタホルダ5が下降位置へ移動された時に、図7に示すように刃先4cが保持シート10上の被切断物6を貫通し、且つプラテン3の板材3b上面に到達しない高さに設定してある。一方、カッタ4は、カッタホルダ5が上昇位置へ移動されることに伴い、刃先4cも上方へ移動して被切断物6から離間する(図4参照)。
【0049】
前記取付部材52には、筒状部52aの下端部周縁に、3つのガイド孔部52b〜52d(図2〜図5参照)が等間隔で形成されている。そして、筒状部52aの下側には、ガイド孔部52b〜52dに挿通される3つのガイド棒56b〜56dを有する押圧部材56が配置されている。押圧部材56の下面側は、浅底な鉢(ボウル)状(或は緩やかな円形椀状)をなす押圧部本体56aとされており、周縁上部には、等間隔をなす前記ガイド棒56b〜56dが一体に設けられている。押圧部材56は、ガイド孔部52b〜52dにてガイド棒56b〜56dがガイドされることにより、上下方向への移動が可能である。押圧部本体56aの中央部には、上下方向に延びて前記刃部4aを下方へ突出させるための貫通孔56eが形成されている。そして、押圧部本体56aの下端面は、刃部4aの周囲で被切断物6に接触する接触面56fとされている。接触面56fは、円環上をなす水平な平坦面であって、被切断物6に対して面接触する。接触面56fは、例えばテフロン(登録商標)等のフッ素樹脂で構成されることで、比較的摩擦係数が低く、被切断物6に対して滑り易くなっている。
【0050】
図3、図4、図5等に示すように、押圧部本体56aの周縁上部には、前方へ延出する接続部56gが一体に設けられている。
他方、前記取付部材52には、筒状部52aの前側であって接続部56gの上方に位置してソレノイド57用の前側取付部52eが一体に設けられている。ソレノイド57は、押圧部材56を上下動させて被切断物6を押圧するためのアクチュエータであり、押圧部材56並びに後述の制御回路61と共に押圧装置47を構成する。ソレノイド57は、前側取付部52eに下向きに取付けられており、プランジャ57aの先端部は接続部56g上面に固定されている。詳しくは後述するように、カッタホルダ5の下降位置でソレノイド57が駆動されると、プランジャ57aと共に押圧部材56が下方へ移動して被切断物6を所定の押圧力で押圧する(図5参照)。これに対して、ソレノイド57の非駆動時には、プランジャ57aが上方に位置して押圧部材56が被切断物6に対する押圧力を解除する。ソレノイド57の非駆動状態でカッタホルダ5が上昇位置へ移動されると(図4の2点鎖線参照)、押圧部材56が被切断物6から完全に離間する。
【0051】
前記保持シート10は、被切断物6を保持するための粘着層10a(図7参照)を有する。被切断物6は、切断装置1にて切断する際、粘着層10aの粘着力と前記押圧装置47の押圧力とによって、保持シート10に対して移動不能に保持される。保持部材としての保持シート10は、例えば、合成樹脂材料からなり、平板矩形状(図1参照)に形成されている。図7に示すように、保持シート10の上側の面(カッタ4との対向面)に、粘着剤が塗布された粘着層10aが形成されている。粘着層10aは、例えば紙、布、樹脂フィルム等のシート状の被切断物6を剥離可能に保持する。粘着層10aの粘着力は、被切断物6を粘着層10aから剥がす際、当該被切断物6が破れることがなく且つ簡単に剥がせるよう比較的小さい値に設定されている。
【0052】
次に、切断装置1の制御系の構成について図8のブロック図を参照しながら説明する。
切断装置1全体の制御を司る制御回路(制御手段)61は、コンピュータ(CPU)を主体に構成されており、ROM62、RAM63、外部メモリ64が接続されている。ROM62には、切断動作を制御するための切断制御プログラム、後述する切断データ処理プログラム等が記憶されている。RAM63には、各種処理に必要なデータやプログラムが一時的に記憶される。外部メモリ64には、複数種類の模様の切断データや、後述する全体データ及び切断可能領域を表わす領域データ等が記憶されている。
【0053】
制御回路61には、各種の操作スイッチ65の操作信号が入力されると共に、液晶ディスプレイ9の表示を制御する。このとき、ユーザは、液晶ディスプレイ9の表示を見ながら、各種操作スイッチ65を操作することによって、所望する模様の切断データを選択指定する。また、各種操作スイッチ65は、後述する高速切断処理を、ユーザの入力操作により設定するための入力手段とされている。
制御回路61には、切断装置1の開口部2aからセットされた保持シート10を検出するための検出センサ等、各種検出センサ66の検出信号が入力される。また、制御回路61には、Y軸モータ15、X軸モータ26、Z軸モータ34、ソレノイド57を夫々駆動する駆動回路67,68,69,70が接続されている。制御回路61は、切断データに基づいて、Y軸モータ15、X軸モータ26、Z軸モータ34、ソレノイド57を制御し、保持シート10上の被切断物6に対する切断動作を自動で実行させる。
【0054】
前記切断データについて、保持シート10に保持された被切断物6から複数(例えば8つ)の模様を切断する場合を例に説明する。ここで、被切断物6は紙であるとする。また、図9(b)に示すように、模様は、「台形」形状の模様であり、これを、図9(a)に示すように、8つ並べて切り抜くものとする。ここで、説明の都合上、8つの模様を模様A〜Hとする。この場合の全体データは、図10に示すように、模様の総数の情報である「模様数」、「模様A」〜「模様H」の切断データ、「区切りデータ」等を含む。「模様数」は8であり、各模様の切断データは、複数の線分からなる切断ラインの頂点を夫々XY座標によって示した座標データからなる。
【0055】
具体的には、模様Aの切断ラインは、図9(b)に示すように4つの線分A1〜A4からなり、切断開始点Pと切断終了点Pが一致する閉じた台形である。台形は、角の大きさが90度に設定された頂点P2、P3をもち、当該切断データとして、切断開始点P、頂点P1、頂点P2、頂点P3、切断終了点Pの夫々に対応する第1座標データ、第2座標データ、第3座標データ、第4座標データ、第5座標データを有する(図10参照)。
図9(a)に示すように、他の模様B〜Hも模様Aと同じ台形であり、模様B〜Hの切断ラインについても夫々模様Aと同様に、線分B1〜B4、線分C1〜C4、…、線分H1〜H4からなる。また、模様B〜Hに係る夫々の座標値(第1座標データ〜第5座標データ)は、各模様A〜Hが相互に離間して形成されるように設定されている。
【0056】
図10に示すように、模様A〜Hの切断データには、「マスク情報」が夫々含まれる。マスク情報とは、各模様A〜Hの輪郭たる周縁を囲う最小の矩形枠Lを示すデータである。例えば図9(b)に示す矩形枠Lは、模様Aを包含する長方形をなす。矩形枠Lの線分L1〜L4のうち、2つの線分L3,L4が模様Aの線分A3,A4に一致し、他の線分L1,L2も模様Aの線分A1,A2の一部と重複する。他の模様B〜Hについても、夫々の輪郭を囲う最小の矩形枠Lのマスク情報が記憶されている。尚、マスク情報は、模様の輪郭に対応して設定されるものであり、枠の形状は長方形でなくてもよく、模様を囲う枠形状であればよい。
【0057】
切断装置1では、図10の全体データに基づいて模様A〜Hを切断する場合、模様Aから順次切断が実行される。即ち、先ず第1移動手段7による保持シート10(被切断物6)のY方向への移動と、第2移動手段8によるカッタホルダ5のX方向への移動とにより、模様Aの切断開始点PのXY座標へカッタ4を相対的に移動させる。次いで、第3移動手段44によりカッタ4の刃先4cを被切断物6の切断開始点Pに貫通させて、第1移動手段7及び第2移動手段8により線分A1の終点Pの座標へ向けて相対的に移動させ、線分A1に沿って被切断物6を切断する。続く線分A2は、先の線分A1の終点Pを始点として、線分A1と同様の切断が連続的に実行される。こうして、線分A2〜A4についても、図9(a)に矢印で示す向きにカッタ4を相対移動させることで、模様A、即ち「台形」の切断ラインを切断する。
これと同様に、模様B〜Hについても、夫々の切断データに基づいて模様Bの切断ライン、模様Cの切断ライン、…、模様Hの切断ラインの順に切断される。
【0058】
前記全体データにおいて、模様A〜Hの切断データの末尾には、「区切りデータ」が付されている。区切りデータに基づいて、各切断ラインの切断を終える度に、第3移動手段44によりカッタ4の刃先4cを被切断物6から離間させて次の切断開始点Pに対応する位置へ相対移動させる。当該相対移動は、被切断物6の切断を伴わない所謂空送りであり、直線的に移動する。説明の都合上、図9(a)では、模様Aの切断ラインから模様Bの切断ラインへの空送りについて、符号Iで模式的に示している。
このように、切断する模様の数が多くなる程、切断を伴わない駆動ローラ12とピンチローラ13による保持シート10の移動(送り戻し)の時間、カッタ4の上下移動の時間、及びキャリッジ19の移動の時間が多くなる。よって、全ての模様A〜Hを切り抜くまで相当の時間を要する。
【0059】
そこで、本実施形態では、上記した既存の全体データに基づいて、切断作業時間の短縮が可能な切断データを新たに作成する。即ち、切断装置1では、そのソフトウェア的構成(切断データ処理プログラムの実行)により、例えば図11に示すように模様A〜Hを左右方向(X方向)と上下方向(Y方向)とに隣接するように並べた切断ラインを形成する。この場合、模様A〜Hは、当該切断ラインの少なくとも一部が互いに接触して隣り合うように配置され、1つにまとめた模様群とみなされる。そして、当該模様群全体の輪郭の切断ラインを連続的に切断する切断データを作成する。
また、前記外部メモリ64には、シート状をなす被切断物6の大きさに基づき設定された、切断可能領域71(図9参照)を表わすデータとして、領域データが記憶されている。詳しくは以下の作用説明で述べるように、模様群は、当該領域データと既存の全体データとに基づいて、切断可能領域71に収まるように配置される。
【0060】
図11に示す模様群の新たな切断データ(全体データ)を作成する際の具体的な処理手順について、図12、図13も参照しながら説明する。ここで、図12は、模様群の全体データを示し、図13のフローチャートは、制御回路61が実行する切断データ処理プログラムの処理の流れを示している。
【0061】
先ず、ユーザは、被切断物6を保持した保持シート10を、切断装置1の開口部2aからセットして、操作スイッチ65の操作により「給紙」を指示する。そして、例えば外部メモリ64に記憶されている切断データの中から所望の模様の切断データ(例えば図10の全体データ)を選択する。これにより、外部メモリ64から全体データ読み出されると共に保持シート10に対応する領域データが読み出されてRAM63のメモリに展開される。読み出された全体データは、図9(a)に示すように相互に離間した8つの模様A〜Hを切断するためのデータである。
【0062】
そこで、制御回路61は、模様A〜Hのマスク情報と領域データに基づき、8つの模様A〜Hを、切断可能領域71内に夫々の矩形枠Lを隙間なく並べるように配置する。これにより、模様A〜Hについて、各切断ラインの少なくとも一部が互いに接触して隣り合うように並べた座標に変更される(ステップS1)。詳細には、図11(a)に示すように、模様A〜D及び模様E〜Hは、夫々の矩形枠Lの線分L1,L3(図9(b)参照)がX方向に直線状に連なるように、X座標を変更する。また、模様A,Eは、夫々の矩形枠Lの線分L2,L4がY方向に直線状に連なるように、Y座標を変更する。同様に、模様B,Fと、模様C,Gと、模様D,Hの夫々について、夫々の矩形枠Lの線分L2,L4がY方向に直線状に連なるように、Y座標を変更する。こうして、模様A〜Hは、隣り合う模様相互間で線分同士が重複する、又は線分同士がX方向若しくはY方向に連なるように配置した座標に変更される。尚、各模様A〜Hの矩形枠Lは、図11では(a)にのみ示しており、図11(b)〜(e)では図示を省略する。
【0063】
ここで、模様A〜Hは、位置変更後においても、図11(a)に示すように、最初の切断方向(矢印で示す)と切断順序(数字で示す、以下、切断番号と称す)が依然として維持されている。そこで、制御回路61は抽出手段として、位置変更後の模様A〜Hにおける各線分の始点及び終点の座標データ(線分データ)に基づき、夫々の切断ラインの接触部を抽出する。そして、制御回路61は、抽出した接触部において、位置変更後の模様A〜Hの切断ラインを相互に繋げる又は共通化するように接続する(ステップS2)。
【0064】
例えば、図11(a)に示す模様Aの線分A3のX方向の延長上に、模様B〜Dの各線分B3〜D3が存在する。つまり、各線分A3〜D3は、隣り合う線分間で夫々の端部が互いに接触し、その端部の座標データが一致するため、1つの線分としてまとめられる(図11(b)の切断番号3の線分参照)。これにより、模様A〜DのA3〜D3の線分は、1つの線分データ、つまり当該切断番号3の線分における始点及び終点の座標データで表わされる。同様に、図11(a)に示す模模様E〜HのE3〜H3の線分は、図11(b)に示す切断番号13の線分として1つにまとめられる。
また、図11(a)に示す模様Aの線分A4は、当該線分A4のY方向の延長上にある模様Eの線分E4、及び当該A4の一部と重複する模様Bの線分B2と、1つの線分としてまとめられる(図11(b)の切断番号4の線分参照)。同様に、図11(a)に示す模様Bの線分B4は、模様Fの線分F4及び模様Cの線分C2とまとめられる(図11(b)の切断番号6の線分参照)。また、図11(a)に示す模様Cの線分C4は、模様Gの線分G4及び模様Dの線分D2とまとめられ、模様Dの線分D4は、模様Hの線分H4とまとめられる(図11(b)の切断番号8,10の線分参照)。
【0065】
こうして、隣り合う模様のうち双方の切断ラインで同一方向へ直線状に連なる又は重複する線分がある場合、それら線分は1つの線分としてまとめて接続される(図11(b)にて実線で示す切断番号3,4,6,8,10,13の線分参照)。つまり、制御回路61は、当該線分を接続する接続手段として構成され、図11(b)に示すように8つの模様A〜Hを1つの模様群とみなして接続処理を行う。これにより、模様群の全体を構成する線分の数を当初の32から16に半減させる。
【0066】
図11(b)に示す状態において、制御回路61は、ステップS3にて、前記模様群において夫々の線分データに基づき平行な線分を抽出する。具体的には、X方向と平行な線分として、切断番号3,13の線分を抽出する。Y方向と平行な線分として、切断番号2,4,6,8,10,12の線分を抽出する。斜め方向である切断番号1の線分と平行な線分として、切断番号5,7,9,11,14,15,16の線分を抽出する。このうち、切断番号2,12の線分と切断番号4,6,8,10の線分とでは切断方向が逆向きである。このため、切断番号4,6,8,10の線分について、夫々の線分データの始点と終点の座標データを相互に入れ替えることで、図11(c)に示すように何れも切断方向が下向きに揃うように変更する。こうして、模様群に平行な線分が存在する場合、該当する平行な線分は、何れも切断方向が一致するように変更される。
【0067】
図11(c)では、切断方向によって、切断番号1,5,7,9,11,14,15,16の線分のグループ、切断番号2,4,6,8,10,12の線分のグループ、及び切断番号3,13の線分のグループに分けることができる。そこで、制御回路61は、夫々のグループごとに夫々の線分を順次切断する切断データを作成する(ステップS4)。具体的には、図11(c)の切断番号1,5,7,9,11,14,15,16の順に切断される斜めの線分の線分データは、その切断順を変更するデータの並び替え処理が行われることで、図11(d)の切断番号1,2,3,4,5,6,7,8の順に切断されるデータに変更する。同様に、図11(c)に切断番号2,4,6,8,10,12で示すY方向の線分の線分データは、データの並び替え処理により、図11(d)の切断番号9,10,11,12,13,14の順に切断されるデータに変更する。また、図11(c)にて切断番号3,13で示すX方向の線分の線分データは、データの並び替え処理により、図11(d)の切断番号15,16の順に切断されるデータに変更する。こうして、全体データは、図11(d)に示すように平行な線分を夫々のグループで順次切断される切断データとして新たに作成する。このため、当該切断データに基づいて、模様A〜Hを切断するときに、夫々の線分グループ内ではカッタ4の刃部4aの向きは変更しなくてもよい。従って、短時間で切断することができる。
【0068】
即ち、前述したように、カッタ4の刃先4cは、カッタ軸4bの中心軸線4zから距離dだけオフセットしている(図7参照)。このため、カッタ4と被切断物6との相対移動に伴い、被切断物6から抵抗力を受ける。これにより、カッタ4は中心軸線4zを中心に回動して、刃先4cがその相対移動の方向に沿って自動的に向きを変更する。従って、例えば一方の線分(切断線分)と他方の線分(切断線分)がL字状をなしている場合、一方の線分の切断終了点でカッタ4の刃先4cは一方の線分の方向を向いており、その後、他方の線分の切断開始時に(L字の頂点で)、当該刃先4cが他方の線分の方向に向きを変えることとなる。この時、中心軸線4zは前記L字の頂点から距離dだけ離れた位置にある。それ故、刃先4cの向きを他方の線分に沿う方向に変えるには、カッタ4を、中心軸線4zが平面視にて円弧を描くように移動させる動作が必要となる。これに対し、本実施形態では上記のように平行な線分を順次切断するため、カッタ4の向きを変更する動作を省くことができ、総じて切断作業時間を短縮することができる。
【0069】
制御回路61は、ステップS5で、ユーザの入力操作により高速切断処理に設定されているか否かを判断する。ここで、制御回路61は、高速切断処理が設定されていると判断した場合(YES)、上記ステップS1〜S4で作成した新たな全体データよりも、更に切断作業時間の短縮が可能な全体データを作成する。
【0070】
即ち、制御回路61は、上記した模様群の線分データに基づいて、図11(d)の模様群の輪郭を構成する線分を抽出する。即ち、切断番号1〜5,9,13,14,16の線分と、切断番号10〜12,15の線分の一部を抽出する。抽出した線分は、図11(e)に実線(切断番号1)で示すように一続きに連なるアウトラインを形成する。当該線分の線分データを構成する各頂点P〜P12の座標データに基づいて、頂点Pを切断開始点及び切断終了点P13とする切断データを作成する(ステップS6)。作成された切断データは、図12に示すように、切断開始点P、頂点P1、頂点P2、…、切断終了点P13の夫々に対応する第1座標データ、第2座標データ、第3座標データ、…、第14座標データを有する。
【0071】
また、制御回路61は、模様群の線分データに基づいて、模様群における輪郭以外の線分の切断データを作成する(ステップS7)。具体的には、模様群を構成する全ての線分から輪郭を除いた線分(図11(e)の破線で示す線分)を抽出する。当該線分の線分データを構成する始点及び終点の座標データに基づいて、新たにデータの並び替え処理を行い、図11(e)の切断番号2〜8の順に切断する切断データを作成する。こうして、図12の上から順に、切断番号1の輪郭、切断番号2〜4の傾斜方向の各線分、切断番号5〜7のY方向の各線分、切断番号8のX方向の線分を夫々表わす座標データと、切断番号ごとに付された区切りデータとを有する新たな切断データ(全体データ)が作成される。尚、同図で上側に示すマスク情報は、模様A〜Hを1つにまとめた模様群とみなすことから、その輪郭を囲う最小の矩形枠(図示略)で表わされる。
【0072】
そして、制御回路61は、RAM63のメモリに、新たに作成した全体データを書き込んで更新し、処理を終了する。前記ステップS5において、高速切断処理に設定されていないと判断し場合(NO)、前記ステップS1〜S4で作成した全体データを、RAM63のメモリに書き込んで更新し、処理を終了する。
その後、切断装置1において、高速切断処理が行われる場合、新たに作成した全体データ(図12参照)に基づいて保持シート10上の被切断物6の切断が実行される。これにより、カッタ4は、図11(e)の実線で示す模様A〜Hを1つにまとめた模様群の輪郭を一続きにまとめて切断するように相対移動する。よって、カッタ4を被切断物6から離間させることなく一気に効率よく切断できる。
【0073】
また、前記高速切断処理では、図11(e)の切断番号5〜7の線分は、隣り合う模様間でその一部が重複するため、重複部分につき切断作業時間が半減される。更に、同図に破線で示す切断番号2〜4の線分及び切断番号5〜7の線分は夫々、カッタ4の刃部4aの向きを変更することなく順次切断することができる。
【0074】
また、図9と、図11(e)又は図11(d)との対比から明らかなように、高速切断処理の設定の有無に係らず、新たな全体データに基づき切断が行われることで、複数の模様A〜Hを切断する切断ラインの全長を短縮することができる。換言すれば、切断時におけるカッタ4の相対移動、或は保持シート10の送り戻しの回数を低減することができる。このため、切断作業時間を短縮しつつ、当該保持シート10の送り戻しによる切断位置のずれの発生も極力抑制することができる。
尚、切断時において、ソレノイド57の駆動により被切断物6を接触面56fで押圧すると共に、保持シート10における粘着層10aの粘着力で被切断物6をずれないよう保持することができる。また、切断の際、押圧部材56は被切断物6に対して相対移動するが、押圧部材56の接触面56fが低摩擦係数の材料で構成されているため、接触面56fと被切断物6との間で生じる摩擦力を極力低減させることができる。よって、当該摩擦力に起因する被切断物6のずれをも防止することができる。従って、被切断物6をより確実に保持することができ、正確な切断ラインを形成することができる。
【0075】
以上のように本実施形態の制御回路61は、複数の模様A〜Hを、当該模様A〜Hの切断ラインであって連続した複数の線分A1〜A4、…、H1〜H4を含む切断ラインの少なくとも一部が互いに接触して隣り合うように並べて配置する配置処理を実行する(ステップS1)。また、配置処理により配置した模様A〜Hにおいて切断ラインの接触部を抽出する抽出処理と、前記抽出処理で抽出した接触部で模様A〜Hの切断ラインを相互に繋げる又は共通化するように切断ラインを接続する接続処理(ステップS2)と、前記接続処理で接続した模様A〜Hの切断ラインに基づいて、切断データを作成する切断データ作成処理とを実行する(ステップS3、S4参照)。
【0076】
これによれば、制御回路61は、切断データ作成手段として、複数の模様A〜Hの切断ラインについて当該模様相互間で繋げ又は共通化するように接続した切断データを作成することができる。従って、作成した切断データに基づいて、複数の模様A〜Hを、それらの接触部を利用して連続的に切断することができる。これにより、カッタ4の相対移動における無駄を省くことができ、切断作業時間を短縮することができる。
【0077】
制御回路61は、配置手段として、複数の模様A〜Hを、隣り合う模様相互間で線分同士が重複するように配置する。
これによれば、模様A〜Hの切断ラインについて、隣り合う模様相互間で線分同士が重複した切断データを作成することができる。これにより、隣り合う模様の切断ラインを線分に沿ってまとめて切断することができる。従って、複数の模様A〜Hの切断に必要な切断ラインの全長を短くして、切断作業時間をより短縮することができる。
【0078】
制御回路61は、隣り合う模様のうち一方の模様の切断ラインと他方の模様の切断ラインとを、連続的に切断する切断ラインとして接続する。これによれば、隣り合う模様を連続的に切断する切断データが作成されるため、当該切断データに基づき、隣り合う模様を連続して切断することができる。
【0079】
制御回路61は、隣り合う模様のうち一方の模様の切断ラインにおける線分と他方の模様の切断ラインにおける線分とが直線状に連なる場合、これら双方の線分を1つの線分として切断する切断ラインとして接続する。これによれば、複数の線分を1つの線分として、複数の模様にわたって効率的に切断する切断データが作成することができる。また、図11(d)の切断番号13,16の線分や、図11(e)で輪郭を構成する線分の一部は、被切断物6において模様A〜Hが形成される領域を直線状の線分で区画するように切断する。従って、被切断物6の歩留りを向上させることが可能となる。
【0080】
前記カッタ4は、被切断物6との相対的な移動によって、被切断物6から抵抗力を受けて当該カッタ4の刃部4aの向きを変更するように構成され、前記切断データ作成手段は、複数の模様A〜Hに共通する同じ方向の切断ラインの線分がある場合、これら切断ラインの線分を、前記刃部4aの向きを変更することなく順次切断する切断データを作成する。
これによれば、刃部4aの向きの変更が可能に構成されたカッタ4にあっても、刃部4aの向きを変更する動作を要することなく、同じ方向の切断ラインを順次切断することができる。従って、切断時において刃部4aの向きを変更する時間を省略することができる。
【0081】
制御回路61は、複数の模様A〜Hを1つにまとめた模様群とみなし、当該模様群全体の輪郭の切断ラインを連続的に切断する切断データを作成する。これによれば、複数の模様A〜Hを1つにまとめた模様群における輪郭、つまり一続きの切断ラインを形成する切断データを作成することができる(ステップS6、S7、図11(e)参照)。従って、複数の模様A〜Hの切断に要する時間を大幅に短縮することができる。
【0082】
<第2実施形態>
図14は、本発明の第2実施形態を示すものであり、第1実施形態と異なるところを説明する。尚、第1実施形態と同一部分には同一符号を付している。
切断装置1においては、上記したように、複数の模様A〜Hを切断するための既存の切断データ(図10の全体データ)を元に、切断作業時間の大幅な短縮が可能な新しい切断データ(図12参照)を作成してRAM63等の記憶手段に登録することができる。また、切断装置1では、前記模様A〜Hの他、様々な形状・個数の模様を切断するための既存の切断データについて、前記切断データ処理プログラムを実行することで、新たな切断データを作成することができる。
【0083】
具体的には、図14(a)に示す、被切断物6の上段部における6つの正方形の模様O〜Tと、中段部における3つの台形の模様U〜Wと、下段部における3つの台形の模様X〜Zは、既存の切断データに基づいて切断される。
このうち、模様Oの切断ラインは、4つの線分O1〜O4からなり、切断開始点と切断終了点が一致する閉じた正方形である。当該切断ラインの直ぐ内側に示す2点鎖線の矢印は、模様Oにおける線分O1〜O4の切断方向と順序を示している。模様Oの切断データは、各頂点に対応する第1座標データ〜第5座標データで構成される(図示略)。他の模様P〜Tも夫々模様Oと同様に4つの線分からなる正方形であり、夫々の座標値(第1座標データ〜第5座標データ)は、各模様O〜Tが互いに離間するように設定されている。尚、模様O〜Tの切断データにおける「マスク情報」は、各矩形枠Lが、模様O〜Tと夫々一致する正方形である(図示略)。
【0084】
切断装置1では、前記模様O〜Tを切断するための既存の全体データを元に、切断データ処理プログラムの実行により、新たな切断データが作成される。この場合、制御回路61は、前記ステップS2〜S4に代えて、模様O〜Tの順に模様毎に切断し、且つ重複する線分について先に切断される線分を除いた切断ラインの切断データを作成する処理を実行する。これにより、図14(b)の上段部に示すように、新たな切断データに基づいて、模様Oの4つの線分O1〜O4と、模様P〜Rの3つの線分(切断番号2〜4のコ字状をなす線分)と、模様S,Tの2つの線分(切断番号5,6の逆L字状の線分)とが模様毎に切断される。
【0085】
図14(a)の中段部に示す模様Uの切断ラインは、4つの線分U1〜U4からなり、互いに平行な一組の対辺U1,U3を両側部に有する。当該切断ラインの直ぐ内側に示す2点鎖線の矢印は、模様Uにおける線分U1〜U4の切断方向と順序を示している。模様Uの切断データとしては、各頂点に対応する第1座標データ〜第5座標データを有する(図示略)。他の模様V,Wも夫々模様Uと同様に4つの線分からなる台形であり、夫々の座標値は、各模様U〜Wが互いに離間するように設定されている。
【0086】
前記模様U〜Wを切断するための既存の全体データを元に、切断データ処理プログラムの実行により、新たな切断データが作成される。この場合、前記ステップS1〜S7を経て、図14(b)の中段部に示すように、模様U〜Wにおいて平行な線分(前記対辺)が重複するように配置された切断ラインの切断データが作成される。これにより、作成された切断データに基づいて、模様U〜Wを1つにまとめた輪郭(同図の切断番号1参照)と、残りの重複した線分(切断番号2,3参照)とが切断される。
【0087】
図14(a)の下段部に示す模様Xの切断ラインは、4つの線分X1〜X4からなり、互いに平行な所謂上底X4及び下底X2を有する。当該切断ラインの直ぐ内側に示す2点鎖線の矢印は、模様Xにおける線分X1〜X4の切断方向と順序を示している。模様Xの切断データとしては、各頂点に対応する第1座標データ〜第5座標データを有する(図示略)。他の模様Y,Zも夫々模様Xと同様に4つの線分からなる台形であり、夫々の座標値は、各模様X〜Zが互いに離間するように設定されている。
前記模様X〜Zを切断するための既存の全体データを元に、切断データ処理プログラムの実行により、新たな切断データが作成される。この場合、前記ステップS1〜S7を経て、図14(b)の下段部に示すように、各模様X〜Zにおける下側の頂点で相互に点接触するように配置された切断ラインの切断データが作成される。これにより、作成された切断データに基づいて、模様X〜Zを1つにまとめた輪郭(同図の切断番号1参照)を切断するだけで、全部の模様X〜Zを切断することができる。
【0088】
以上のように、図14(b)の上段部に示すように、模様がO〜Tの如く正方形の場合には、その模様群の輪郭以外の線分を全て重複するように配置する切断データを作成することができる。従って、第1実施形態と異なり、模様毎に切断した場合でも、模様S,Tについて切断ラインを半減させる等、模様O〜Tの切断に必要な切断ラインの全長を短縮することができ、効率的な切断を行うことができる。
【0089】
図14(b)の中段部に示すように、所定の一方向(例えばX方向)に模様U〜Wを並べて、その模様群の輪郭以外の線分を全て重複するように配置する切断データを作成することができる。従って、第1実施形態と同様、高速切断処理に設定して、模様U〜Wを1つにまとめた輪郭(同図の切断番号1参照)と、残りの重複した線分(切断番号2,3参照)とを切断するだけで、模様U〜Wを切り抜くことができる。
図14(b)の下段部に示すように、隣り合う模様X〜Zを、その切断ラインが全て連続して(一筆書き状に)接続されるように配置する切断データを作成することで、模様X〜Z間の「区切りデータ」を省くことができる。よって、模様X〜Zの切断ラインを終える度に、カッタ4の刃先4cを被切断物6から離間させて、次の模様の切断開始点に対応する位置へ相対移動させる必要がないので、切断作業時間を極力短縮することができる。
【0090】
<第3実施形態>
図15は、本発明の第3実施形態を示すものであり、第2実施形態と異なるところを説明する。尚、第2実施形態と同一部分には同一符号を付している。
第2実施形態の切断装置1では、既存の全体データに基づいて本来各別に切断される複数の模様X〜Zの配置を変更したが、本第3実施形態の切断装置1では、1つの既存の模様Xの切断データを利用して、複数の模様X〜Zを並べて配置する。即ち、図15(a)に示すように、1つの模様Xの切断データに基づいて、所定の方向(X方向又はY方向)に、同じ模様X〜Zを並べて配置した新たな切断データを作成する。この場合、模様Xの矩形枠Lの線分と新たに作成する模様Y,Zの矩形枠Lの線分とが、X方向(又はY方向)に直線状に連なる。
【0091】
従って、図15(b)に示すように、模様X〜Zを、Y方向に並べて配置した場合には、図14(b)の模様U〜Wと同様に、切断番号1の輪郭と切断番号2,3の線分とを切断するだけで、模様X〜Zを切り抜くことができる。一方、模様X〜Zを、X方向に並べて配置した場合には、図14(b)の模様X〜Zと同様に、切断ラインが隣り合う模様相互間で一筆書き状に接続される切断データを作成することができる。
尚、1つの既存の模様Xから3個以上の模様の切断データを作成してもよいし、当該複数の模様を配置する方向は、ユーザにより操作スイッチ65等を介して指定できるように構成してもよい。
【0092】
<第4実施形態>
図16は、本発明の第4実施形態を示すものであり、第1実施形態と異なるところを説明する。尚、第1実施形態と同一部分には同一符号を付している。
図16に示すパーソナルコンピュータ(PC80と称す)は、上記した切断データを処理する切断データ処理装置として構成されている。即ち、PC80の制御回路81は、コンピュータ(CPU)を主体に構成されており、ROM82、RAM83、EEPROM84が接続されている。また、PC80には、ユーザが各種の指示や選択、入力の操作を行うためのキーボードやマウス等からなる入力部85が接続されると共に、ユーザに対して必要なメッセージ等の表示を行う表示部(例えばLCD)86が設けられる。
【0093】
PC80は、切断装置1に対して有線接続するための通信部87を備えている。一方、切断装置1は通信部79を備えている。通信部87と通信部79は、ケーブル87aを介して接続されている。これにより、PC80と切断装置1との間で、上記切断データ及び領域データを含むデータの送受信が可能である。また、PC80と切断装置1とは、無線接続される構成であってもよい。制御回路(制御手段)81は、PC80全体の制御を司り、前記切断データ処理プログラム等を実行する。ROM82には、切断データ処理プログラム等が記憶されている。RAM83は、各種処理に必要なデータやプログラムが一時的に記憶されるもので、第1実施形態と同様に、切断データ等が記憶される記憶領域を有する。EEPROM84には、各種の切断データ(全体データを含む)が記憶されている。
【0094】
そして、制御回路81は、EEPROM84の切断データを読み込んで、切断データ処理プログラムの処理、つまり図13で示したフローチャートの処理を実行する。そして、第1実施形態と同様に、複数の模様を切断するための既存の切断データを元に、切断作業時間の大幅な短縮が可能な新しい切断データを作成する。作成後の切断データはEEPROM84に上書きされる。切断装置1は、PC80から送信される模様切断データ及び境界線切断データに応じて、被切断物6を切断する。
【0095】
以上のように、制御回路81は、第1実施形態の制御回路61と同様、配置手段、抽出手段、接続手段、切断データ作成手段として構成されている。従って、既存の切断データを元に、複数の模様の切断ラインについて当該模様相互間で繋げる又は共通化するように接続した新たな切断データを作成することができる等、第1〜第3実施形態と同様の効果を奏する。
【0096】
尚、本発明は上記しかつ図面に示す実施形態にのみ限定されるものではなく、次のように変形または拡張することができる。本発明は、上記したカッティングプロッタとしての切断装置1に限られず、切断機能を備えた各種の装置に適用できるものである。
切断装置1やPC80における記憶手段に記憶した切断データ処理プログラムを、USBメモリ、CD−ROM、フレキシブルディスク、DVD、フラッシュメモリ等、コンピュータで読取り可能な記録媒体に記録してもよい。この場合、前記記録媒体を、種々のデータ処理装置のコンピュータにより読み込んで実行させることにより、上記実施形態と同様の作用及び効果を奏する。
【符号の説明】
【0097】
1 切断装置
4 切断刃(カッタ)
4a 刃部
6 被切断物
61,81 配置手段、抽出手段、接続手段、切断データ作成手段
80 切断データ処理装置
A〜H,O〜T,U〜W,X〜Z 模様

【特許請求の範囲】
【請求項1】
切断刃と被切断物とを相対的に移動させることにより、複数の模様を前記被切断物から切断する切断装置において、
前記複数の模様を、当該模様の切断ラインであって連続した複数の線分を含む切断ラインの少なくとも一部が互いに接触して隣り合うように並べて配置する配置手段と、
前記配置手段により配置した前記複数の模様において前記切断ラインの接触部を抽出する抽出手段と、
前記抽出手段で抽出した接触部で前記複数の模様の切断ラインを相互に繋げる又は共通化するように前記切断ラインを接続する接続手段と、
前記接続手段で接続した切断ラインを含む前記複数の模様の切断ラインに基づいて、切断データを作成する切断データ作成手段とを備え、
前記切断データ作成手段で作成した切断データに基づいて、前記複数の模様を前記被切断物から切断することを特徴とする切断装置。
【請求項2】
前記配置手段は、前記複数の模様を、隣り合う前記模様相互間で前記線分同士が重複するように配置することを特徴とする請求項1記載の切断装置。
【請求項3】
前記接続手段は、隣り合う前記模様のうち一方の模様の切断ラインと他方の模様の切断ラインとを、連続的に切断する切断ラインとして接続することを特徴とする請求項1または2記載の切断装置。
【請求項4】
前記接続手段は、隣り合う前記模様のうち一方の模様の切断ラインにおける線分と他方の模様の切断ラインにおける線分とが直線状に連なる場合、これら双方の線分を1つの線分として切断する切断ラインとして接続することを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の切断装置。
【請求項5】
前記切断刃は、前記被切断物との相対的な移動によって、前記被切断物から抵抗力を受けて当該切断刃の刃部の向きを変更するように構成され、
前記切断データ作成手段は、前記複数の模様に共通する同じ方向の切断ラインの線分がある場合、これら切断ラインの線分を、前記刃部の向きを変更することなく順次切断する切断データを作成することを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の切断装置。
【請求項6】
前記切断データ作成手段は、前記複数の模様を1つにまとめた模様群とみなし、当該模様群全体の輪郭の切断ラインを連続的に切断する切断データを作成することを特徴とする請求項1から5の何れかに記載の切断装置。
【請求項7】
切断刃と被切断物とを相対的に移動させることにより、複数の模様を前記被切断物から切断する切断装置のための切断データを処理する切断データ処理装置において、
前記複数の模様を、当該模様の切断ラインであって連続した複数の線分を含む切断ラインの少なくとも一部が互いに接触して隣り合うように並べて配置する配置手段と、
前記配置手段により配置した前記複数の模様において前記切断ラインの接触部を抽出する抽出手段と、
前記抽出手段で抽出した接触部で前記複数の模様の切断ラインを相互に繋げる又は共通化するように前記切断ラインを接続する接続手段と、
前記接続手段で接続した切断ラインを含む前記複数の模様の切断ラインに基づいて、切断データを作成する切断データ作成手段と
を備えることを特徴とする切断データ処理装置。
【請求項8】
前記配置手段は、前記複数の模様を、隣り合う前記模様相互間で前記線分同士が重複するように配置することを特徴とする請求項7記載の切断データ処理装置。
【請求項9】
前記接続手段は、隣り合う前記模様のうち一方の模様の切断ラインと他方の模様の切断ラインとを、連続的に切断する切断ラインとして接続することを特徴とする請求項7または8記載の切断データ処理装置。
【請求項10】
前記接続手段は、隣り合う前記模様のうち一方の模様の切断ラインにおける線分と他方の模様の切断ラインにおける線分とが直線状に連なる場合、これら双方の線分を1つの線分として切断する切断ラインとして接続することを特徴とする請求項7から9の何れかに記載の切断データ処理装置。
【請求項11】
前記切断装置の前記切断刃は、前記被切断物との相対的な移動によって、前記被切断物から抵抗力を受けて当該切断刃の刃部の向きを変更するように構成され、
前記切断データ作成手段は、前記複数の模様に共通する同じ方向の切断ラインの線分がある場合、これら切断ラインの線分を、前記刃部の向きを変更することなく順次切断する切断データを作成することを特徴とする請求項7から9の何れかに記載の切断データ処理装置。
【請求項12】
前記切断データ作成手段は、前記複数の模様を1つにまとめた模様群とみなし、当該模様群全体の輪郭の切断ラインを連続的に切断する切断データを作成することを特徴とする請求項7から11の何れかに記載の切断データ処理装置。
【請求項13】
切断刃と被切断物とを相対的に移動させることにより、複数の模様を前記被切断物から切断する切断装置のコンピュータに実行させるプログラムであって、
前記コンピュータに、
前記複数の模様を、当該模様の切断ラインであって連続した複数の線分を含む切断ラインの少なくとも一部が互いに接触して隣り合うように並べて配置する配置処理と、
前記配置処理により配置した前記複数の模様において前記切断ラインの接触部を抽出する抽出処理と、
前記抽出処理で抽出した接触部で前記複数の模様の切断ラインを相互に繋げる又は共通化するように前記切断ラインを接続する接続処理と、
前記接続処理で接続した切断ラインを含む前記複数の模様の切断ラインに基づいて、切断データを作成する切断データ作成処理と
を実行させるための切断データ処理プログラム。
【請求項14】
請求項13に記載の切断データ処理プログラムを切断装置のコンピュータに読取り可能に記録した記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−13976(P2013−13976A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−149128(P2011−149128)
【出願日】平成23年7月5日(2011.7.5)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】