説明

切断装置

【課題】シート材に幅方向の曲がりがあっても切断されたシート材が形状不良とならずに切断する。
【解決手段】図(a)に示すように、コイル材Cの幅方向の曲がりにより端面と側面とがなす角度A0の直角度が損なわれているが、コイル材Cの送り方向と直交する上流側ガイド70により側面をガイドしながら送り量L2をもって送って端部を切り捨てる捨て切りを行うので(図(b)参照)、捨て切り後の端面は下刃62bと平行となり側面との角度A1も直角度が損なわれたものとはならない。次に、送り方向と直交する下流側ガイド80により捨て切り時と略同じ側面をガイドしながらコイル材Cの端面が切断刃62に対してほとんどズレることなく所定長さの送り量をもって送って切断する。この結果、幅方向の曲がりがあっても切断されたシート材が形状不良とならずに切断することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロール状に巻かれてなる金属製のシート材を送り出して所定長さ毎に切断する切断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ロール状に巻かれてなる鋼帯をその上下面を挟持する二組のピンチロールなどによって搬送し、所定長さの矩形状の鋼帯シートに剪断する剪断機が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この剪断機では、剪断直前に検出した鋼帯先端の端面と剪断機の刃面との平行度がズレているときや剪断された鋼帯シートから検出した剪断面と側面との直角度が許容範囲から外れているときには、二組のピンチロールのうち上流側のピンチロールの軸方向の押し込み力分布を変更し、ピンチロール間で鋼帯に生じる張力を幅方向(軸方向)で変化させることで鋼帯の搬送量が幅方向で異なるよう微調整する。これにより、鋼帯の蛇行を抑え、鋼帯先端の端面を剪断機の刃面と平行として、剪断された鋼帯シートの剪断面と側面との直角度を許容範囲内とすることができるとしている。
【特許文献1】特開平5−116021号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、このようなロール状の鋼帯は、製造される際に素材としての鋼片を所定厚みまで圧延し巻き取ってロール状とされるが、圧延したときに幅方向の弓なりの曲がりを伴う場合がある。こうしたロール状の鋼帯を送り出して剪断する場合、鋼帯が曲がった状態で送り出されるので、上述した剪断機では、鋼帯先端の端面を剪断機の刃面に対して平行にして送ることはできるが、曲がりによる鋼帯側面の湾曲により鋼帯の側面を剪断機の刃面に対して直角にすることはできない。このため、曲がりの度合いによっては、剪断面と側面との直角度が許容範囲から外れ、側面が曲がりの方向に大きくズレた略平行四辺形状に剪断されることになる。そうなると、剪断後の工程で使用することができず、剪断された鋼帯シートが一枚丸ごと廃却されることになり、歩留りが大幅に悪化してしまう。
【0004】
本発明の切断装置は、シート材に幅方向の曲がりがあっても切断されたシート材が形状不良とならずに切断することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の切断装置は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0006】
本発明の切断装置は、
ロール状に巻かれてなる金属製のシート材を送り所定長さ毎に切断する切断装置であって、
前記シート材を送る送り手段と、
該送り手段による前記シート材の送り方向に対して刃面が直交するよう配置され該シート材を切断する切断手段と、
前記送り手段により送られる前記シート材の側面を両側から挟むよう配置され該シート材を前記送り方向にガイドするガイド手段と、
前記ガイド手段によるガイドを伴って前記所定長さに相当する送り量をもって前記シート材が送られるよう前記送り手段を制御すると共に該送られたシート材が切断されるよう前記切断手段を制御する切断制御と、前記ガイド手段によるガイドを伴って前記シート材の端部を切り捨てる切り捨て量に相当する送り量をもって該シート材が送られるよう前記送り手段を制御すると共に該送られたシート材が切断されるよう前記切断手段を制御する捨て切り制御とを交互に実行する制御手段と
を備えることを要旨とする。
【0007】
この本発明の切断装置では、送られるシート材の側面を両側から挟むよう配置されシート材を送り方向にガイドするガイド手段によるガイドを伴って所定長さに相当する送り量をもってシート材が送られるよう送り手段を制御すると共に送られたシート材が切断されるようシート材の送り方向に対して刃面が直交するよう配置された切断手段を制御する切断制御と、ガイド手段によるガイドを伴ってシート材の端部を切り捨てる切り捨て量に相当する送り量をもってシート材が送られるよう送り手段を制御すると共に送られたシート材が切断されるよう切断手段を制御する捨て切り制御とを交互に実行する。これにより、シート材に幅方向の曲がりがあっても、ガイドされた側面を基準としてシート材を切断するので切断面と側面との直角度が損なわれるのを防止することができ、また、捨て切りによりシート材の端面と側面との直角度を修正するので切断されたシート材の先に切断された切断面(捨て切りされたシート材の端面)と後に切断された切断面との平行度が悪化するのを防止することができる。この結果、シート材に幅方向の曲がりがあっても切断されたシート材が形状不良とならずに切断することができる。
【0008】
こうした本発明の切断装置において、前記ガイド手段は、アクチュエータの駆動により前記シート材の両側面に向かってスライドし、前記切断手段の刃面より上流側に配置される上流側ガイドと該刃面より下流側に配置される下流側ガイドとからなる手段であり、前記制御手段は、前記切断制御を実行するときには前記下流側ガイドにより前記シート材をガイドすると共に前記上流側ガイドによっては該シート材をガイドしないよう前記アクチュエータを制御し、前記捨て切り制御を実行するときには前記上流側ガイドにより前記シート材をガイドすると共に前記下流側ガイドによっては該シート材をガイドしないよう前記アクチュエータを制御する手段であるものとすることもできる。こうすれば、切断制御する場合や捨て切り制御する場合に応じてシート材を適切にガイドして切断することができる。この態様の本発明の切断装置において、前記ガイド手段は、前記上流側ガイドおよび前記下流側ガイドが前記送り方向に所定間隔をもって少なくとも二組ずつ配置されてなる手段であるものとすることもできる。こうすれば、簡易な構成でシート材の側面を基準として切断することができる。
【0009】
また、本発明の切断装置において、前記ガイド手段は、回転可能なローラにより前記シート材をガイドする手段であるものとすることもできる。こうすれば、ガイドとの接触によりシート材の側面に発生する疵を防止することができる。
【0010】
さらに、本発明の切断装置において、前記シート材は、ベルトがエレメントとリングとによって構成されるベルト式のCVTの該リングの製造に用いられるものとすることもできる。ベルト式のCVTに用いられるリングの製造においては、切断後に筒状に曲げ加工して切断面同士を溶接することから、切断されたシート材の切断面同士の平行度や切断面と側面との直角度が厳しく要求されるから、本発明を適用する意義が大きい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
次に、本発明を実施するための最良の形態を実施例を用いて説明する。
【実施例】
【0012】
図1は、本発明の一実施例としての切断装置20の構成の概略を示す構成図であり、図2は、図1の切断装置20の上面図であり、図3は、図1のロールフィーダ40のA−A断面を示す断面図である。実施例の切断装置20は、例えばエレメントとリングとによって構成されるベルト式のCVTのリングの製造に用いる金属製のシートがロール状に巻かれてなるコイル材Cを送り出して所定長さ毎に切断する装置として構成されている。切断装置20は、図1に示すように、コイル材Cを送り出すアンコイラ30と、送り出されたコイル材Cを上下に配置されたロール43,53により挟持して送るロールフィーダ40と、ロールフィーダ40により送られるコイル材Cを上下に配置された切断刃62によりダウンカット方式で切断するシャー60と、シャー60の切断刃62よりも上流側に配置され送られるコイル材Cをガイドする上流側ガイド70と、シャー60の切断刃62よりも下流側に配置され送られるコイル材Cをガイドする下流側ガイド80と、電源をオンオフする電源ボタンスイッチ91などの各種ボタンスイッチからなる操作パネル90と、装置全体のコントロールを司るメインコントローラ100とを備える。
【0013】
アンコイラ30は、図1に示すように、図示しないステッピングモータの回転軸に接続されると共に図示しない油圧シリンダによりコイル材Cの内周面に当接するよう拡開してコイル材Cを回転させるマンドレル32と、コイル材Cを送り出すうちに徐々に小さくなる外径に追従してコイル材Cの外周面に当接するよう図示しないエアシリンダによりコイル材Cの径方向に向かって押圧されコイル材Cの回転に伴って回転する複数の押えローラ34と、略円弧状に形成され送り出されるコイル材Cを下側からガイドするループガイド36とを備える。
【0014】
ロールフィーダ40は、図1および図3に示すように、フレーム40aの上方に取り付けられたエアシリンダ41の駆動により支持軸42aを中心として弧を描くように上下に昇降するロールフレーム42と、ロールフレーム42にベアリングを介して回転自在に取り付けられロールフレーム42に連動する上ロール43と、本体フレーム40aにベアリングを介して回転自在に取り付けられる下ロール53と、下ロール53とカップリング59aを介して接続され下ロール53を回転駆動するステッピングモータ59とを備え、エアシリンダ41の駆動により、上ロール43が下端に位置するときにはエアシリンダ41の押圧力により上ロール43と下ロール53とでコイル材Cを挟持して送り、上ロール43が上端に位置するときにはコイル材Cの挟持を解除する。上ロール43は、略中央部に軸方向にスプライン溝が形成されたシャフト44と、シャフト44にフローティング機構46を介して軸方向にスライド可能に取り付けられるロール本体45と、シャフト44の図3中の右端に取り付けられるスプロケット48とを備える。下ロール53は、上ロール43と同一の構成であるため、説明を省略する。なお、フローティング機構46,56の説明については後述する。スプロケット48とスプロケット58とは、エアシリンダ41の駆動により上ロール43が下端に位置するときに噛み合ってステッピングモータ59の駆動力を上ロール43に伝達し、上ロール43を下ロール53の回転方向と逆方向に回転させることができる。このため、上ロール43が下端に位置するときに、コイル材Cを挟持してシャー60側に送ることができる。なお、上ロール43が上端に位置するときには、スプロケット48とスプロケット58との噛み合いが解除され上ロール43に駆動力は伝達されなくなる。また、ステッピングモータ59の回転量とその回転に伴うロールフィーダ40によるコイル材Cの送り量との関係が予め把握されてROM104に記憶されており、コイル材Cを送る際には、送り量に応じた必要な回転量がメインコントローラ100から駆動信号としてステッピングモータ59に出力される。
【0015】
ここで、フローティング機構46,56について説明する。なお、フローティング機構46,56は同一の構成であるため、フローティング機構46について説明し、フローティング機構56については説明を省略する。フローティング機構46は、シャフト44に形成されたスプライン溝内に配置される複数のボール46aと、ボール46aを保持すると共に外周にロール本体45が固定された円筒部材46bと、ロール本体45を挟むようにシャフト44に取り付けられるスプリング受け46cと、ロール本体45とスプリング受け46cとの間に設けられロール本体45をシャフト44の中央側に向かって付勢するスプリング46dとを備え、ボールスプライン嵌合により、ロール本体45をシャフト44と一体となって回転させると共にロール本体45をシャフト44に対して軸方向にスライドさせることができる。これにより、コイル材Cはロールフィーダ40によって挟持され送られているときでも幅方向(ロール本体45の軸方向)にスライドすることができる。また、ロールフィーダ40によるコイル材Cの挟持が解除されたときには、スプリング46dの付勢力により、ロール本体45は初期位置(図中中央位置)に戻る。
【0016】
シャー60は、図1に示すように、ダウンカット方式で切断するクランク型シャーとして構成されており、上刃62aが取り付けられ初期状態で上端位置で待機するシャー本体64と、上刃62aと向かい合って設置される下刃62bとを備え、図示しないモータおよびクランク機構の駆動によりシャー本体64をフレーム60aに沿って下降させることにより上刃62aと下刃62bとでコイル材Cを剪断する。このモータは、メインコントローラ100からの駆動信号によりシャー本体64が一往復の昇降動作を行うよう回転駆動する。また、切断済みのシートは、シャー60の下流側に設けられ図示しないモータにより駆動する搬出ロール25により搬出されると共に搬出台24に取り付けられたフリーローラ26上を自重により移動し搬出台24の先端に設けられた搬出ストッパ27に当接して停止する。
【0017】
上流側ガイド70,下流側ガイド80について説明する。この上流側ガイド70と下流側ガイド80とは、同一の構成であるため、上流側ガイド70について説明し、下流側ガイド80については説明を省略する。上流側ガイド70は、図2に示すように、クランクシャー60の切断刃62(図中は下刃62bを図示)の上流側に配置され、コイル材Cを両側面から対向して挟むよう対となって配置される一組のガイド72,73と一組のガイド74,75の計二組のガイドを備える。ここで、ガイド72,73とガイド74,75とのコイル材Cの送り方向の間隔は、コイル材Cが幅方向に曲がっているときでもコイル材Cの側面を切断刃62に対して略垂直に保ってガイドできるような間隔とされている。ガイド72〜75は、それぞれアクチュエータとしてのエアシリンダ72a〜75aと、エアシリンダ72a〜75aのロッドの先端に図示しないローラフレームを介して回転可能に取り付けられたローラ72b〜75bとを備えており、コイル材Cの送り方向に対して右側(図中下側)に配置されるガイド72,74は、位置決め用ストッパ72c,74cと、エアシリンダ72a,74aのロッドから位置決め用ストッパ72c,74cが設置された方向に突出した突出部72d,74dとを更に備えている。なお、ガイドの構成要素については、ガイド72と下流側ガイド80のガイド84についてのみ図中に符号を付した。このようにして構成された上流側ガイド70の各ガイド72〜75は、メインコントローラ100からのエアシリンダ72a〜75aに対する駆動信号により、コイル材Cに当接する方向にスライドしてコイル材Cをガイドしたり、コイル材Cから離間する方向にスライドしてコイル材Cのガイドを解除したりする。コイル材Cをガイドするときには、ガイド72,74は、突出部72d,74dが位置決め用ストッパ72c,74cに当接する位置で停止し、ガイド73,75は、ローラ73b,75bがコイル材Cに当接する位置で停止する。このとき、前述したようにロールフィーダ40はフローティング機構46,56を備え、コイル材Cは送られているときでも幅方向にスライド可能となっているから、コイル材Cの側面が送り方向に近付くようにガイドすることができる。
【0018】
操作パネル90は、図1に示すように、電源をオンオフするための電源ボタンスイッチ91や切断装置20を自動運転させる自動モード中に切断開始を指示するスタートボタンスイッチ92,自動モード中に切断終了を指示するストップボタンスイッチ93,切断についての各種設定を行う各種設定スイッチ94,切断装置20を自動モードにするか操作者による手動操作が可能な手動モードにするかを切り替えるモードセレクトスイッチ95,図示しない手動モード用の各種操作ボタンスイッチなどがあり、内部通信インターフェース108を介してメインコントローラ100に操作者の指示を入力できるようになっている。
【0019】
メインコントローラ100は、CPU102を中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、各種処理プログラムなどを記憶したROM104と、一時的に各種データを記憶するRAM106と、操作パネル90との通信を可能とする内部通信インタフェース108とを備え、これらは互いに信号のやり取りが可能なように接続されている。メインコントローラ100は、操作パネル90の操作に応じて発生する操作信号を入力する。また、コイル材Cの送り量に応じた駆動信号をロールフィーダ40のステッピングモータ59に出力したり、シャー60に駆動信号を出力したり、搬出ロール25に駆動信号を出力したりする。また、ロールフィーダ40のエアシリンダ41に駆動信号を出力して上ロール43を昇降させたり、上流側ガイド70のエアシリンダ72a〜75aや下流側ガイド80のエアシリンダ82a〜85aに駆動信号を出力して各ガイドによるコイル材Cのガイドとガイドの解除とを行う。なお、ロールフィーダ40のステッピングモータ59に駆動信号を出力したときには、アンコイラ30のステッピングモータに対してもコイル材Cの送りに伴う必要な回転を行うよう駆動信号が出力されているものとする。
【0020】
次に、こうして構成された本実施形態の切断装置20の動作について説明する。図4は、メインコントローラ100により実行される自動切断処理ルーチンの一例を示すフローチャートである。この処理は、コイル材Cがセットされモードセレクトスイッチ95により自動モードにされてスタートボタンスイッチ92が押下されたときに実行される。なお、通常は、コイル材Cをセットする際に手動モードでの段取り作業(例えば、巻き癖がきつく使用できないコイル材Cの先端部の切り捨て作業など)がなされるので、スタートボタンスイッチ92が押下されたときにコイル材Cの先端が下刃62b上の位置にある。
【0021】
自動切断処理ルーチンが実行されると、メインコントローラ100のCPU102は、まず、ロールフィーダ40の上ロール43が下降するようエアシリンダ41を駆動制御して、ロールフィーダ40でコイル材Cを挟持する(ステップS100)。次に、上流側ガイド70のエアシリンダ72a〜75aを駆動制御すると共に下流側ガイド80のエアシリンダ82a〜85aを駆動制御して、上流側ガイド70のガイドを解除すると共に下流側ガイド80でコイル材Cをガイドし(ステップS110)、ロールフィーダ40を駆動制御して、コイル材Cを送り量L1だけ送る(ステップS120)。ここで、送り量L1は、コイル材Cを所定長さ(例えば、300mm)で切断する際の送り量として定められたものである。コイル材Cが送られると、シャー60を駆動制御して、コイル材Cを切断する(ステップS130)。続いて、ロールフィーダ40の上ロール43が上昇するようエアシリンダ41を駆動制御して、ロールフィーダ40のコイル材Cの挟持を解除する(ステップS140)。挟持を解除するのは、コイル材Cの幅方向の曲がりなどによりロール本体45,55の軸方向へのスライドが限界位置に達しているとそれ以上同じ方向にスライドできないので、一旦初期位置に戻すためである。そして、下流側ガイド80のガイドを解除して(ステップS150)、搬出ロール25を駆動制御して切断されたシートSを搬出台24に搬出する(ステップS160)。ここで、コイル材Cが切断される様子を図5に示す。図5(a)がコイル材Cが送り量L1だけ送られた様子、図5(b)がコイル材Cが切断されシートSが切り出された様子、図5(c)がシートSが搬出台24に搬出された様子を示す。
【0022】
所定長さで切断すると、再びロールフィーダ40でコイル材Cを挟持し(ステップS170)、上流側ガイド70でコイル材Cをガイドする(ステップS180)。次に、コイル材Cを送り量L2だけ送る(ステップS190)。ここで、送り量L2は、コイル材Cの端部を所定の切り捨て長さで切り捨てる「捨て切り」に必要な送り量として定められたものであり、具体的には送り量L1の100分の1程度に定められている。続いて、シャー60を駆動制御して、捨て切りを行い(ステップS200)、ロールフィーダ40のコイル材Cの挟持を解除してから(ステップS210)、再びステップS100以降の処理を繰り返す。このように、自動切断処理ルーチンでは、所定長さでの切断と端部を切り捨てる捨て切りとを交互に行い、この処理は、操作者によりストップボタンスイッチ93が押下されるまで繰り返し行われる。ここで、コイル材Cが捨て切りされる様子を図6に示す。図6(a)がコイル材Cが送り量L2で送られた様子、図6(b)が捨て切りされた様子を示す。ここで、前述したように、捨て切りの送り量L2は、送り量L1の100分の1程度であるが、便宜上大きく図示した。また、捨て切りされた捨て切り材は、切断と同時に下刃62b近傍に設けられた図示しないクロップシュータを介して機外へ放出されるが、点線で図示した。
【0023】
ここで、幅方向に曲がりのあるコイル材Cを切断する場合について説明する。まずこの曲がりについて説明する。コイル材Cは,製造される際に素材としての鋼片を所定の厚みまで圧延し巻き取ってロール状とされるが、圧延したときに幅方向に弓なりの曲がりを伴う場合がある。その場合、一旦生じた曲がりは完全に解消されないので、コイル材Cは幅方向の曲がりを伴って送られることになる。このため、曲がりの大きさによっては、切断されたシートSの切断面と側面との直角度が損なわれる場合が生じる。ここで、ベルト式のCVTのリングの製造は、所定長さのシートSに切断した後に、筒状に曲げ加工し両切断面を溶接により接合してから更に輪切りにしてリング状にしたものをいわゆるリング圧延機で圧延してリングの径を拡大することにより行われる。そのため、切断されたシートSの形状が不良のときには、溶接時の作業性が悪化したり輪切りした際の径が一定とならず圧延時の寸法精度が低下したりするなどのトラブルが発生する。そのようなトラブルを防止すべく切断されたシートSの切断面同士の平行度や切断面と側面との直角度が厳しく要求されており、切断されたシートSの形状が曲がりにより形状不良となっているときには、切断されたシートSが一枚丸ごと廃却され歩留りが大幅に悪化するという問題が生じる。そこで、本実施例の切断装置20では、以下に説明するように、そのような曲がりのあるコイル材Cを切断しても切断されたシートSが形状不良とならないよう切断するのである。
【0024】
それでは、曲がりのあるコイル材Cを前述した自動切断処理ルーチンで切断する場合について説明する。ここで、自動切断処理ルーチンは、所定長さでの切断と端部の捨て切りとを交互に行うものであり、説明の便宜上捨て切りから説明する。図7は、曲がりのあるコイル材Cを捨て切りする様子を示す説明図である。図7(a)は、コイル材Cが切断され切断されたシートSが搬出された後の様子を示す。図示するように、コイル材Cの端面は、切断刃62に対して平行であるが、曲がりにより側面の向きが送り方向から大きくズレて端面と側面とがなす角度A0は直角度が損なわれたものとなっている。この状態で、単に送り量L1で送って切断すると略平行四辺形状に切断され形状不良となるが、本実施例では、上流側ガイド70でガイドしながらコイル材Cを送り量L2だけ送るので(図7(b)参照)、コイル材Cの姿勢を矯正し側面の向きを送り方向に近付けることができる。一方で、コイル材Cの端面は切断刃62に対してズレが生じ平行ではなくなるが、この状態で捨て切りするので、端部(図中斜線部)が切り捨てられ、捨て切り後の新たな端面は、切断刃62と平行となり、また、側面とのなす角度A1も修正され、完全な直角ではないものの直角度が損なわれたものとはならない。
【0025】
続いて、捨て切りされたコイル材Cを所定長さで切断する場合を説明する。図8は、捨て切りされた曲がりのあるコイル材Cを切断する様子を示す説明図である。図8(a)に示すように、図7(b)の状態から下流側ガイド80でガイドしながら送り量L1だけ送る。このとき、上流側ガイド70でガイドされていた側面と略同じ側面をガイドすることになるので、コイル材Cの端面が切断刃62に対してほとんどズレることなく送られる。そして、下流側ガイド80でガイドされた状態で切断するので(図8(b)参照)、シートSの後に切断された切断面と側面との直角度が損なわれたものとはならない。また、シートSの先に切断された切断面(捨て切りされたコイル材Cの端面)は、ほとんどズレなく送られているので、両切断面の平行度が悪化するのを防止することができる。そして、切断されたシートSを搬出し捨て切りから処理を繰り返す。このため、コイル材Cに曲がりがあっても、切断されたシートSの切断面と側面との直角度が損なわれるのを防止すると共にシートSの両切断面の平行度が悪化するのを防止するので、形状不良により切断されたシートSが一枚丸ごと廃却されるようなことが少なくなり、歩留りの悪化を防止することができる。なお、捨て切り長さは、前述したように切断処理時の100分の1程度とわずかであるから、一つのコイル材Cから取り出せるシートSの枚数が大きく減少することはない。
【0026】
以上説明した実施例の切断装置20によれば、コイル材Cの送り方向と直交する上流側ガイド70によりコイル材Cの側面をガイドしながら送り量L2をもって送って端部を切り捨てる捨て切りとコイル材Cの送り方向と直交する下流側ガイド80により捨て切りされたコイル材Cの側面と略同じ部分をガイドしながら送り量L1をもって送って切断する切断とを交互に行う。これにより、コイル材Cに幅方向の曲がりがあってもガイドされた側面を基準としてコイル材Cを切断するのでシートSの切断面と側面との直角度が大きく損なわれるのを防止することができ、また、捨て切りによりコイル材Cの端面と側面との直角度を修正するので切断されたシートの先に切断された切断面(捨て切りされたコイル材Cの端面)と後に切断された切断面との平行度が悪化するのを防止することができる。この結果、コイル材Cに幅方向の曲がりがあっても切断されたシートSが形状不良とならずに切断することができる。
【0027】
実施例の切断装置20では、上流側ガイド70と下流側ガイド80とを備えるものとしたが、下流側ガイド80を備えずに上流側ガイド70だけを備えるものとしてもよい。この場合、コイル材Cを送るときに常に上流側ガイド70でガイドするものとすればよい。
【0028】
実施例の切断装置20では、コイル材Cのガイドにローラーを用いるものとしたが、ローラに限られず平板などでガイドするものとしてもよい。
【0029】
実施例の切断装置20では、上流側ガイド70と下流側ガイド80とが対となって配置されるガイドをそれぞれ二組ずつ備えるものとしたが、これに限られず二組以上の複数組有するものとしてもよい。
【0030】
実施例の切断装置20では、ベルト式CVTのベルトに用いられる金属材料を切断するものとしたが、これに限られずロール状に巻かれてなる如何なる金属材料を切断するものとしてもよい。
【0031】
ここで、本実施形態の構成要素と本発明の構成要素との対応関係を明らかにする。本実施形態のロールフィーダ40が本発明の「送り手段」に相当し、シャー60が「切断手段」に相当し、上流側ガイド70と下流側ガイド80とが「ガイド手段」に相当し、図4の自動切断処理ルーチンを実行するメインコントローラ100が「制御手段」に相当する。なお、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための最良の形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0032】
以上、本発明を実施するための最良の形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、ベルト式CVTの製造産業やコイル状の金属材料の加工産業などに利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の一実施例としての切断装置20の構成の概略を示す構成図である。
【図2】切断装置20の上面図である。
【図3】図1のロールフィーダ40のA−A断面を示す断面図である。
【図4】自動切断処理ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図5】コイル材Cを切断する様子を示す説明図である。
【図6】コイル材Cを捨て切りする様子を示す説明図である。
【図7】曲がりのあるコイル材Cを捨て切りする様子を示す説明図である。
【図8】曲がりのあるコイル材Cを切断する様子を示す説明図である。
【符号の説明】
【0035】
20 切断装置、24 搬出台、25 搬出ロール、26 フリーローラ、27 搬出ストッパ、30 アンコイラ、32 マンドレル、34 押えローラ、36 ループガイド、40 ロールフィーダ、40a フレーム、41 エアシリンダ、42 ロールフレーム、42a 支持軸、43 上ロール、44 シャフト、45 ロール本体、46 フローティング機構、46a ボール、46b 円筒部材、46c スプリング受け、46d スプリング、48 スプロケット、53 下ロール、54 シャフト、55 ロール本体、56 フローティング機構、56a ボール、56b 円筒部材、56c スプリング受け、56d スプリング、58 スプロケット、59 ステッピングモータ、59a カップリング、60 シャー、60a フレーム、62 切断刃、62a 上刃、62b 下刃、64 シャー本体、70 上流側ガイド、72,73,74,75 ガイド、72a,73a,74a,75a エアシリンダ、72b,73b,74b,75b ローラ、72c,74c ストッパ、72d,74d 突出部、80 下流側ガイド、82,83,84,85 ガイド、82a,83a,84a,85a エアシリンダ、82b,83b,84b,85b ローラ、82c,84c ストッパ、82d,84d 突出部、90 操作パネル、91 電源ボタンスイッチ、92 スタートボタンスイッチ、93 ストップボタンスイッチ、94 各種設定スイッチ、95 モードセレクトスイッチ、100 メインコントローラ、102 CPU、104 ROM、106 RAM、108 インタフェース。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロール状に巻かれてなる金属製のシート材を送り所定長さ毎に切断する切断装置であって、
前記シート材を送る送り手段と、
該送り手段による前記シート材の送り方向に対して刃面が直交するよう配置され該シート材を切断する切断手段と、
前記送り手段により送られる前記シート材の側面を両側から挟むよう配置され該シート材を前記送り方向にガイドするガイド手段と、
前記ガイド手段によるガイドを伴って前記所定長さに相当する送り量をもって前記シート材が送られるよう前記送り手段を制御すると共に該送られたシート材が切断されるよう前記切断手段を制御する切断制御と、前記ガイド手段によるガイドを伴って前記シート材の端部を切り捨てる切り捨て量に相当する送り量をもって該シート材が送られるよう前記送り手段を制御すると共に該送られたシート材が切断されるよう前記切断手段を制御する捨て切り制御とを交互に実行する制御手段と
を備える切断装置。
【請求項2】
請求項1記載の切断装置であって、
前記ガイド手段は、アクチュエータの駆動により前記シート材の両側面に向かってスライドし、前記切断手段の刃面より上流側に配置される上流側ガイドと該刃面より下流側に配置される下流側ガイドとからなる手段であり、
前記制御手段は、前記切断制御を実行するときには前記下流側ガイドにより前記シート材をガイドすると共に前記上流側ガイドによっては該シート材をガイドしないよう前記アクチュエータを制御し、前記捨て切り制御を実行するときには前記上流側ガイドにより前記シート材をガイドすると共に前記下流側ガイドによっては該シート材をガイドしないよう前記アクチュエータを制御する手段である
切断装置。
【請求項3】
前記ガイド手段は、前記上流側ガイドおよび前記下流側ガイドが前記送り方向に所定間隔をもって少なくとも二組ずつ配置されてなる手段である請求項2記載の切断装置。
【請求項4】
前記ガイド手段は、回転可能なローラにより前記シート材をガイドする手段である請求項1ないし3いずれか1項に記載の切断装置。
【請求項5】
前記シート材は、ベルトがエレメントとリングとによって構成されるベルト式のCVTの該リングの製造に用いられる請求項1ないし4いずれか1項に記載の切断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−279685(P2009−279685A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−132336(P2008−132336)
【出願日】平成20年5月20日(2008.5.20)
【出願人】(503158017)株式会社シーヴイテック (11)
【Fターム(参考)】