説明

切替操作装置

【課題】本体部材の操作方向における寸法の増長を抑えて、コンパクトな構成にし易くした切替操作装置を提供する。
【解決手段】本発明は、部品の位置を切り替えて二つ以上の変速モードに切替可能な変速機構の前記変速モード切替操作用の切替操作装置5であって、所定の操作方向Xに沿って二つの位置の間を往復移動する本体部材10と、前記二つの位置の各々で前記本体部材10を弾性的に位置決めするクリックばね13と、前記部品の移動を行う切替ばね15とを備え、前記切替ばね15を保持する保持部を、操作方向Xに交差した向きにおいて、前記本体部材10の前記クリックばね13を取り付ける取付位置の一部に重ねて設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二つ以上の変速モードを備えた変速機構部の変速モード切替用の切替操作装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からインパクト工具やドリル工具等の電動工具用の変速機構として、特許文献1に示すように、滑動輪を移動させて位置を切り換えることで出力する回転速度を三段階に切替可能な三段変速機構がある。この三段変速機構では、前端極限位置と後端極限位置と両極限位置の間とに移動する押しボタンを備える。そして、この押しボタンの移動は、嵌め輪を介して滑動輪に伝達されており、滑動輪は押しボタンの移動に伴って位置が切り替わり、三段変速機構から出力する回転速度が三段階に変更される。そのため、押しボタンは回転速度を切り替えるための操作部材となっている。そして、押しボタンにはフランジが一体に設けてあり、このフランジは、押しボタンの操作時に、外殻を形成するケースの上記三つの位置に対応して各々設けた凹部のいずれかに嵌入して、押しボタンを上記位置に位置決め保持する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3095407号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
また、図3に示す電動工具では、変速機構の切替操作用の操作部材として、スライド移動自在のハンドル40が設けてあり、ハンドル40は二つの位置を往復移動する。このハンドル40にはハンドル40の移動時の位置決め用として、クリック突起43が設けてあり、ハウジング1の移動をガイドする両側面にはクリック突起43に係止自在な突部又は凹部(図示せず)が、ハンドル40の移動先の位置に夫々設けてある。クリック突起43は、スライド移動時に上記突部等に係止されることで、所定の移動先の位置に位置決め保持される。
【0005】
更に、ハンドル40は電動工具の内部側を向く面(内面)に、弾性を有したクリックばね41と、変速切替用の部品を移動させる変速ばね42とが取り付けてある。変速ばね42はハンドル40の移動に伴って、変速機構部の変速用の部品を移動させて、変速機構部の動作モードを切り替える(変速させる)。また、クリックばね41は、クリック突起43をハウジング1の突部等に対して弾性的に係止させるよう、クリック突起43をハウジング1の上記ガイド用の側面に向けて押圧して、ハンドル40にクリック性を付与している。そのため、この電動工具は、特許文献1のものに比べて切替操作を行い易く、また操作の繰り返しによるクリック突起43(フランジ)の摩耗等の、ハンドル40の消耗が抑制されている。
【0006】
ところで、図3等の従来の構成では、変速ばね42及びクリックばね41が各々、ハンドル40の内面のスライド方向(操作方向X)において所定の距離離れた位置に取り付けてある。そのため、図3等の従来の構成では、ハンドル40の操作方向Xにおける寸法を短い構成(コンパクトな構成)にし難いものである。
【0007】
本発明では、本体部材の操作方向における寸法の増長を抑えて、コンパクトな構成にし易くした切替操作装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために本発明は、部品の位置を切り替えて二つ以上の変速モードに切替可能な変速機構の前記変速モード切替操作用の切替操作装置であって、所定の操作方向に沿って二つの位置の間を往復移動する本体部材と、前記二つの位置の各々で前記本体部材を弾性的に位置決めするクリックばねと、前記部品の移動を行う切替ばねとを備え、前記切替ばねを保持する保持部を、操作方向に交差した向きにおいて、前記本体部材の前記クリックばねを取り付ける取付位置の一部に重ねて設けたことを特徴とする。
【0009】
この切替操作装置として、前記保持部が、操作方向に交差した前記向きにおいて、前記本体部材と前記クリックばねとの間に前記切替ばねを位置した状態で保持するものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、コンパクトな構成にし易くすることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施形態1の電動工具の外殻の一部を透過した駆動部周辺の側面図である。
【図2】切替操作装置の第1操作部であって、(a)は斜視図であり、(b)は側面図である。
【図3】従来の電動工具であって、(a)は外殻の一部を透過した駆動部周辺の側面図であり、(b)はハンドルの斜視図であり、(c)はハンドルの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明を、添付図面に示す実施形態に基づいて説明する。
【0013】
図1には、実施形態1の電動工具を示してある。この電動工具は、回転動力を出力する駆動部と、使用者が把持するための把持部(図示せず)と、駆動部に給電する給電部(図示せず)とを備える。そして、この駆動部は、駆動源であるモータ2と、変速機構部3と、出力部4とを備え、モータ2の回転動力は変速機構部3を介して出力部4に伝達され、出力部4から出力される。
【0014】
また、電動工具はハウジング1と出力部4とで外殻を形成されており、モータ2及び変速機構部3はハウジング1に収納される。そして、ハウジング1は変速機構部3の外面を覆う部位に開口1aを有しており、この開口1aに一部を露出して切替操作装置5(詳細は後述する)が設けてある。
【0015】
変速機構部3は二つの位置を往復動可能な部品(図示せず)を二つ備え、この二つの部品各々の往復動する二つ位置を組み合わせることで、三つの変速モードに切替自在となっており、この部品が変速モード切替用の部品となっている。例えば、この変速モードとして、回転動力を低速高トルクで出力する低速モードと、低速モードに比べて高速低トルクで出力する高速モードと、高速モード及び低速モードの間の速度及びトルクで出力する中速モードとに切替自在となっている。更に、この部品の位置は、切替操作装置5によって切替操作可能となっており、切替操作装置5は変速機構部3の変速モードの切替操作用となっている。
【0016】
切替操作装置5は、変速用の部品のうちの一方を移動させるための第1操作部5aと、残りの一方を移動させるための第2操作部5bとを有する。そして、第1操作部5aは、図2に示すように、本体部材10と、クリックばね13と、切替ばね15とを備える。
【0017】
本体部材10は板状で、図1に示すように、モータ2の軸方向にスライド自在でハウジング1に取り付けてあり、この方向に沿って二つの位置の間を往復移動する。そして、本体部材10は、一方の板面(外面10a)が開口1aを介して外部に露出しており、反対側の板面(内面10b)が変速機構部3側を向く。以下、このスライドする方向を操作方向Xとし、本体部材10がスライド時に停止する上記二つの位置を切替位置とする。
【0018】
また、本体部材10は外面10aに、操作時に指を掛けるための操作片11が突出して設けてあり、本体部材10は操作片11を介してスライド操作可能となっている。そして、本体部材10は、図2に示すように、板の板面の操作方向Xに直交した端部に位置する二つの面(側面10c)に、各々クリック突起12が設けてある。
【0019】
クリック突起12は側面10cから略直交して本体部材10から突出して形成されており、スライド時に、ハウジング1の切替位置毎に設けた凹部(図示せず)に嵌まり込み、本体部材10を切替位置に位置決めする。以下、板面に対して側面10cが位置し且つ操作方向Xに直交した向きを幅方向Yとし、操作方向X及び幅方向Yに直交する向き(板面に直交する向き)を厚さ方向Zとする。
【0020】
本体部材10は内面10bに、クリックばね13を保持する第1保持部14と、切替ばね15を保持する第2保持部16とが設けてあり、クリックばね13は第1保持部14を介して、切替ばね15は第2保持部16を介して、本体部材10に取り付けてある。
【0021】
クリックばね13は、U字状に屈曲させた線状のばねで主体が構成されており、平面視U字で対向する二辺にくびれ13bを有した形状(所謂π字形状)となっている。そして、クリックばね13はU字の端部13aが側面10c内部に嵌まり込んでおり、クリック突起12を側面10cの内側から外側に向けて押圧している。そのため、クリック突起12は、クリックばね13の付勢によって、凹部に弾性的に嵌り合い、且つ切替位置の切替時にクリック性が付与される。
【0022】
第1保持部14は、クリックばね13の形状に沿った平面視H字形状で、外面10a側に凹んで本体部材10の内面10bに形成してあり、このH字形状の凹み内にクリップばね13が配置してある。そして、第1保持部14は、H字の対向する二辺の間である突出部14aにくびれ13bを当接することで、クリップばね13を側面10c側から幅方向Y及び操作方向Xに位置決め(抜け止め)保持する。
【0023】
更に、第1保持部14は、側面10cのクリック突起12を設けた部位のクリック突起12の裏側に凹みを有しており、この凹みにU字の端部13aが嵌まり込んでいる。そのため、クリック突起12はクリックばね13によって側面10cの裏側から弾性的に押圧される。
【0024】
また、突出部14aには、U字の二辺を連結した底辺13cを内面10b側(変速機構部3側)から保持する保持片14bが設けてある。そのため、クリックばね13は、保持片14b、及び側面10cのクリック突起12の裏側に設けた凹みによって、厚さ方向Zにおいて本体部材10から抜け止め保持される。
【0025】
切替ばね15は変速用の部品の移動及び与圧を行っており、操作方向Xに視て円弧状となっており、円弧の径内方向側に変速機構部3が位置する。そして、切替ばね15は円弧の端部15a(図1では図示せず)が変速用の部品に取り付けてあり、本体部材10が切替位置にスライド移動することで、変速用の部品を移動させる。なお、上記与圧とは、上記部品を移動後の所定位置に弾性的に保持して所定位置からずれ難くしたり、移動時に移動先の所定位置に向けて弾性的に付勢して所定位置に移動し易くしたり等と、操作方向Xにおいて変速用の部品に圧力を付与することを指す。
【0026】
第2保持部16は両突出部14a及び幅方向Yにおける突出部14aの間に設けてある。そして、第2保持部16は操作方向Xに視て円弧状で、径外方向(本体部材10の外面10a側)に向けて凹んでおり、この凹み16a内に切替ばね15が取り付けてあり、切替ばね15は円弧の円周方向及び操作方向Xに位置決め保持される。
【0027】
また、第2保持部16はくびれ13bの位置する部位に各々切欠き16bを有しており、この切欠き16b内にクリックばね13のくびれ13bが位置し、且つこの切欠き16bの位置において凹み16aが第1保持部14より外面10a側に設けてある。そして、切替ばね15は切欠き16bに位置する部位が、径外方向に屈曲形成した凸部となっている。そのため、切替ばね15は、切欠き16bの位置において、第1保持部より外面10a側で第2保持部16(凹み16a)に保持されており、本体部材10とクリックばね13のくびれ13bとの間に取り付けられる。
【0028】
言い換えると、切替ばね15を取り付ける取付位置である第2保持部16は一部が、クリックばね13を取り付ける取付位置である第1保持部14の一部に重なって位置する。そして、第2保持部16は、厚さ方向Zにおいて、切替ばね15を本体部材10とクリックばね13との間に位置した状態で保持する。
【0029】
このように、第2保持部16と第1保持部14とを一部重ねて配置したことで、第2保持部16を第1保持部14から操作方向Xに離して設けたものに比べて、本体部材10の操作方向Xにおける寸法(長さ寸法)の増長を抑え易くすることができる。そして、この長さ寸法の増長を抑え易くしたことで、操作方向Xにおいて、本体部材10(第1操作部5a)をコンパクトな構成にし易くすることができる。
【0030】
更に、厚さ方向Zにおいて、第2保持部16が本体部材10とクリックばね13との間に切替ばね15を位置した状態で保持するため、第2保持部16による厚さ方向Zにおける寸法(厚さ)の増大を抑え易くすることができる。そのため、操作方向Xに加えて、厚さ方向Zにおいても、第1操作部5aをコンパクトな構成にし易くすることができる。
【0031】
そして、厚さ方向Zにおいて、切替ばね15を本体部材10とクリックばね13との間に保持したことで、クリックばね13で切替ばね15を抜け止めすることができ、切替ばね15を厚さ方向Zにおいて抜け止めする爪等の係止部を、第2保持部16の構成から省くことができる。そのため、係止部形成に伴う形状や設置位置の制限等による第2保持部16の大型化や構成の複雑化を抑制し易くすることができ、第1操作部5aをコンパクトな構成にし易くすることができる。
【0032】
また、第2操作部5bは、図1に示すように、第2本体部材20、第2クリックばね23、第2切替ばね25、第2クリックばね23用の第3保持部(図示せず)、第2切替ばね25用の第4保持部(図示せず)を備える。
【0033】
第2本体部材20はスライド自在でハウジング1に取り付けてあり、操作方向Xに沿って二つの切替位置の間を往復移動する。そして、第2本体部材20は内面に第3保持部が設けてあり、第3保持部を介して第2クリックばね23が取り付けてある。以下、第1操作部5aの本体部材10を、第1本体部材10と記載し、第1操作部5aと第2操作部5bとを特に区別しない場合、単に、本体部材10,20と記載する。
【0034】
更に、本実施形態において、第1操作部5aと第2操作部5bとは、操作方向Xにおいてスライド範囲が重なっている。そして、二つの本体部材10,20のうち、一方が他方(残りの一方)のスライド範囲内に位置した近接状態では、上記スライド範囲内に位置した方が操作可能で、残りの一方が操作不可能となる。また、二つの本体部材10,20が互いに離間した離間状態では、いずれか一方を選択的に操作可能となっており、選択的に一方を操作することで、上記近接状態に切り替わる。
【0035】
そのため、本体部材10,20は一つの離間状態と、この離間状態から一方が他方に向けてスライドして近接させた二つの近接状態との三つの状態に切替自在となっている。そして、変速機構部3は三つの変速モードが、上記三つの状態のうちのいずれか一つに各々対応している。
【0036】
また、第1操作部5a及び第2操作部5bは、本体部材10,20の互いに対向する端部に、他方の(対向する相手の)本体部材20,10に向かって延長して設けたオーバーラップ部30を各々有する。以下、第1操作部5aと第2操作部5bとで区別する場合、第1操作部5a側のオーバーラップ部30を、第1オーバーラップ部31とし、第2操作部5b側のオーバーラップ部30を、第2オーバーラップ部32とする。
【0037】
オーバーラップ部30は、本体部材10,20を近接させた近接状態で、第1オーバーラップ部31の内側に第2オーバーラップ部32が位置して、第2オーバーラップ部32の外面の略全体が第1オーバーラップ部31に覆われる。そして、本体部材10,20を離間させた離間状態では、第2オーバーラップ部32の外面のうち、先端側の一部が第1オーバーラップ部31に覆われて、残りの外面が露出する。
【0038】
そのため、厚さ方向Zにおいて第1オーバーラップ部31より内側に位置する第2オーバーラップ部32には第4保持部を設けることができるが、第1オーバーラップ部31には第2保持部16を設けることができない構成になっている。
【0039】
そして、本実施形態において、第2操作部5bは、第2オーバーラップ部32に第4保持部が設けてあり、第2切替ばね25は第2オーバーラップ部32を介して第2本体部材20に取り付けてある。そのため、第2操作部5bは、第2本体部材20に第4保持部設置用のスペースを確保せずに済み、第2本体部材20の長さ寸法を小さく抑え易くなっている。更に、本実施形態の電動工具は、第1操作部5a及び第2操作部5bのスライド範囲を重ね且つオーバーラップ部30を設けたことで、開口1aの長さ寸法を小さく抑え易くなっている。
【0040】
なお、本発明は実施形態1の構成のみに限定されるものではなく、本発明の意図する範囲内であれば、実施形態1において適宜の設計変更を行うことが可能である。例えば、クリックばね13が、対向する二辺を繋ぐ辺をくびれ13bとしたH字形状であってもよい。また、例えば、変速機構部3が二つの変速モードに切替自在で、切替操作装置5が第2操作部5bを備えず第1操作部5aのみを備えたものであってもよい。
【0041】
また、電動工具は、打撃動作を介して出力を伝達するインパクト機構を変速機構部3の一部に有したインパクト工具であってもよい。この工具の場合、切替操作装置5は、例えば、第1操作部5aを操作することで、インパクト機構での打撃動作を可能としたインパクトモードと、打撃動作を不能としたドリルドライバーモードとに、変速機構部3を切り替える。そして、このドリルドライバーモードにおいて、第2操作部5bが操作可能となり、第2操作部5bを操作することで、低速高トルクの低速モードと、高速低トルクの高速モードとに変速機構部3を切り替える構成となる。
【符号の説明】
【0042】
3 変速機構部
5 切替操作装置
10 本体部材(第1本体部材)
13 クリックばね
14 第1保持部
15 切替ばね
16 第2保持部
Y 幅方向
Z 厚さ方向
X 操作方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品の位置を切り替えて二つ以上の変速モードに切替可能な変速機構の前記変速モード切替操作用の切替操作装置であって、
所定の操作方向に沿って二つの位置の間を往復移動する本体部材と、前記二つの位置の各々で前記本体部材を弾性的に位置決めするクリックばねと、前記部品の移動を行う切替ばねとを備え、
前記切替ばねを保持する保持部を、操作方向に交差した向きにおいて、前記本体部材の前記クリックばねを取り付ける取付位置の一部に重ねて設けた
ことを特徴とする切替操作装置。
【請求項2】
前記保持部が、操作方向に交差した前記向きにおいて、前記本体部材と前記クリックばねとの間に前記切替ばねを位置した状態で保持するものである
ことを特徴とする請求項1に記載の切替操作装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−103295(P2013−103295A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−248410(P2011−248410)
【出願日】平成23年11月14日(2011.11.14)
【出願人】(509119153)パナソニックESパワーツール株式会社 (107)