説明

切花延命用花器

【課題】特段の装置を組み込むことなく、花器自体に工夫を凝らして、花器内部の水温上昇を抑制して切花の延命を図る方法が望まれていた。
【解決手段】水分が浸透して微かに外部に漏れる花器の外周をケト土で覆い、当該被覆ケト土の表面から蒸発する水分の気化熱によりケト土内の温度上昇は抑えられ、結果として花器内の水分温度の上昇も抑えられる。係るケト土層は空気を内包するので、外部熱の流入に対しては、断熱効果を示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
特段の冷却装置を設定することなく、花器内の水温上昇を抑えて切花の延命を図る方法および容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
切花を延命させる技術は、いわゆる切花延命剤といわれる化学薬剤の添加による方法のほか、花器内の水温を低く抑えて延命を図る方法が知られている。例えば、ペルチェ素子を花器内底部に設置して目的を達する方法が知られている(特許文献1)。また、水温調節器を備えた冷却装置による花瓶用冷却装置も開示されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−52346号公報
【特許文献2】特開2002−45038号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電気エネルギーを利用した先行技術による冷却装置には電気供給用コードが不可欠で、花器のディスプレー場所が限定され、設置場所の雰囲気を害する恐れもあるし、維持費用も要する。従って、花器自体に工夫を凝らして、花器内部の水温上昇を抑制して切花の延命を図る方法が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
水分が浸透して微かに外部に漏れる花器の外周をケト土で覆い、当該被覆ケト土の表面から蒸発する水分の気化熱によりケト土内の温度上昇は抑えられ、結果として花器内の水分温度の上昇も抑えられる。係るケト土層は空気を内包するので、外部熱の流入に対しては、断熱効果を示す。
【0006】
花器側面からの1日の水分流出量は、花器の形状にも依存するが、0.1mLから10mLが好適であり、0.1mL未満では十分な気化熱による冷却効果が期待できず、10mLを超えると花器への水分補給を頻繁に行う必要が生じ、利便性に欠ける。ケト土の層は、5mmから25mmが好適であり、5mmより薄ければ断熱性を十分に発揮しにくいし、25mmを超えるとケト土の乾燥剥落が生じやすくなる。
【0007】
ケト土にコケやシダ類の植物体を植えることは、ケト土の剥落を阻止して安定な被覆層を得る上で好都合であり、植物体それ自体が有する熱の遮蔽効果も期待できる。
【発明の効果】
【0008】
日陰に置いた本発明に係る花器内の水温は、市販の花器に比べて3℃から8℃の差が認められ、実際に切花の延命効果が認められた。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の花器本体とケト土被覆層を示す断面図である。
【図2】本発明の実施例と比較例との水温変化を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
赤土を主原料とした多孔性の花器の周囲を、適度に湿したケト土で覆い、過剰な水分を乾燥させて、花器に被覆層を形成した。花器の形状は任意であるが、釉薬等を塗布していない素焼きのものが好適であり、外表面に凹凸を設けると、ケト土層との付着安定性を高める。
【実施例1】
【0011】
図1に本発明に係る花器の断面図を示すが、花器本体にケト土を花器の中心部での厚みが約15mmになるように被覆した。なお、ケト土層は、約20mm長に切断した棕櫚の繊維を1%添加し、補強した。
【0012】
花器内部に水500mLを注ぎ、周囲温度の変化に伴う水温の変化を1時間おきに測定した。その結果を図2示す。なお、類似した花器本体で、ケト土を被覆していないものに、水500mLを同様に注ぎ、上部の注水口をポリエチレンフィルムで覆い、1日経過後の重量変化から、花器側面からの水分散逸量を推量した。すなわち、重量減少量は3.1gであり、側面流出量は約3.1mLと推量された。
【比較例1】
【0013】
比較のために、信楽焼きの一輪挿しを横に並置して同じ条件での温度変化を測定した。その結果を、実施例と比較して図2示す。明らかに、本発明の花器に入れた水分温度が低く推移していることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0014】
本発明は、水分冷却装置を導入することなく花器内部の水温上昇を抑制するもので、照明の当たるテーブル上やショーウインド内での利用が可能であり、効果的である。
【符号の説明】
【0015】
1 多孔質花器本体
2 花器周囲を被覆したケト土層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
僅かに水分が浸透する土製花器にケト土を被覆し、当該被覆土からの水分気化熱によりケト土の温度上昇を抑制し、外部からの熱伝導をも抑制し、花器内部の水温上昇を抑制した切花延命用花器。
【請求項2】
請求項1に記載の花器被覆土にコケなどの植物を植えて被覆土を補強し、温度上昇を更に抑制した切花延命用花器。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−41616(P2011−41616A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−190543(P2009−190543)
【出願日】平成21年8月19日(2009.8.19)
【出願人】(509234054)