説明

刈払機の飛散防止装置

【課題】
刈払機で作業中、刈刃の回転により作業者や周辺に飛来する小石などの飛散を防止する飛散防止装置を提供し草刈り作業の安全を図る。
【解決手段】
刈払機1のメインパイプ3に、刈刃2の回転方向に対面して傾斜する受け面aを有する飛散防護シート12の一端をメインパイプ3に交差して揺動可能に垂下し、刈り取り状態に於いて少なくとも飛散防護シート12の刈刃近傍側が接地すると共に、飛散防護シート12の遊端側が刈刃2の回転中心方向に湾曲可能とした飛散防止カバー4を設けたこと特徴とする刈払機の飛散防止装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雑草などを刈り取る刈払機の刈刃の回転により跳ね飛ばされる小石などが作業者や周辺に飛散するのを防止する刈払機の飛散防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に刈払機は、メインパイプの前端側に回転刈刃などからなる刈取部と、後端側に小型のエンジンなどからなる駆動源が設けられており、作業者はその中間部にある操作部を把持し、左右に振りながら刈取作業を行うものである。この時、回転する刈刃により飛来する小石などが作業者や周辺に跳ね飛ばされ飛散する。一般にこれらを防止して作業者や周辺への安全を確保する飛散防止装置を備えているものである。
【0003】
従来の刈払機の飛散防止装置は、刈刃の後面、側面及び上面を覆うよう刈刃後方に設けたものがある。例えば特許文献1には、この刈払機1の回転刃4の後方に飛散防止カバー6がメインパイプ3に取り付けられており、回転刃4の回転により飛来する小石などの周辺への飛散を防止したものである。この飛散防止カバー6は、透視性を有する略扇形の上面カバー6a、透視性を有し地面に向けて回転刃に凹面状に向かう垂幕カバー6bからなるものがある。この構成は、作業者の周辺に飛び散る飛散物を刈刃の後方上面と側面に透明性を有するカバーで防止しようとするものである。
【0004】
しかしながら、この防止カバーは回転刃により刈り取られた刈草が防止カバーに衝突すると同時に、順次地面に放置されて行くものである。カバー内は土埃や刈草が舞っており透明性が損なわれ、更に上面と側面にも大型の飛散防止カバーが装着されており、刈り取り状況の把握がしにくく、障害物への近接が損なわれて作業性を低下させるものである。
【0005】
また、特許文献2には、カッターコード13の後方に設けられた上壁板17と、上壁板から垂下する透明の防護シート18を設けたものがある。
【0006】
このような飛散防護カバーは、刈刃の回転による草刈り作業に伴い跳ね飛ばされる小石などを、飛散防止カバーの上面、後面及び側面で直接受けて反射しようとするものであるため飛散防止カバーが大型化する。更に上面にも飛散防止カバーが延設されているため、刈刃部に対する作業者の視界を妨げ作業状態の目視がしにくく作業能率を阻害する。
【0007】
また、このような草刈り作業は住宅の周辺などで作業することが多く、このような場所ではコンクリートブロックなどの障害物が多く存在する。飛散防止カバーが大型化することで障害物への刈刃の近接を妨げるので刈り残しが発生し作業精度を阻害する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−296311号公報
【特許文献2】特開平10−94314号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、これらの不都合を解消すべくなされたものである。作業者が携帯して使用する刈払機にあっては、飛来物から作業者を保護する飛散防止装置が小形で軽量化されていることが望ましい。さらに、安全性を高める飛散防止装置の装着にもかかわらず、作業者から刈り取り部分がよく見えて作業がしやすく、作業精度を向上することができる刈払機が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するためにこの発明は、刈払機のメインパイプに、刈刃の回転方向に対面して傾斜する刈草受け面aを有する飛散防護シートをメインパイプの長さ方向に交差して揺動可能とすると共に、刈り取り状態に於いて少なくとも飛散防護シートの刈刃近傍側が接地する飛散防止カバーを設けたことを特徴としている。
【0011】
より具体的には、刈払機のメインパイプに、刈刃の回転方向に対面して傾斜する受け面aを有する飛散防護シートをメインパイプの長さ方向に交差して前後方向に揺動可能とすると共に、飛散防護シートは、刈刃の回転軸芯方向に近づくよう湾曲可能に垂下した飛散防止カバーを設けたことを特徴とする刈払機の飛散防止装置を特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
上記のように構成された本発明は、刈り取り作業によって刈り取られた刈草が、飛散防護シートの受け面aに順次集積し、刈草と共に飛来する小石などの飛散物の緩衝材となるので、飛散防止カバーが刈刃後方の一面のみであるにも関わらず、作業者や周辺への飛散が良く防止される。
【0013】
また、飛散防止カバーは刈刃後方の一面のみであるため上面が解放されている。作業者は刈り取り状況を直接目視できるので、作業がしやすく刈り取り精度の向上を図ることが出来る。
【0014】
更に、草刈り作業は回転する刈刃を右側から左方向に振りながら行われる。刈り取られた刈草は飛散防護シート上に集積される。刈刃が左端に来た時、右側に戻るため刈り取り部を持ち上げる。この時、飛散防止カバー上に集積した刈草は1ストローク毎に一定位置に列状に放擲することが出来、刈り取り作業後の集草なども極めて効率的である。
【0015】
更に、飛散防止カバーの遊端側は刈刃の回転軸芯方向に湾曲可能に垂下している。コンクリートブロックなどの障害物のある狭隘部での作業時、刈刃を左方向に振り飛散防止カバーが障害物に接触した時、飛散防止カバーは刈刃の回転方向に湾曲することにより、刈刃は障害物に近接して刈り取りできるので、制約が最小限となり刈り残しなどを少なくすることが可能となった。
【0016】
障害物のない通常の刈り取り作業時には、飛散防止カバー上面は弾性部材の復元力により直線状態になっているので、飛散物に対する防護範囲が広く確保されている。
【0017】
また、飛散防止カバーと同期して揺動する刈刃浮かし脚を設けたので、柔軟性を有する飛散防止カバーにもかかわらず、エンジンスタート時に必要となる刈刃浮かしを確実にして安全性の確保が出来る。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の飛散防止装置の実施形態を示す刈刃との関係を示す上面斜視図
【図2】飛散防止装置の実施形態を示す刈刃との関係を示す正面図
【図3】飛散防止装置の実施形態を示す刈刃との関係を示す側面図
【図4】飛散防止カバーの屈曲状態を示す斜視図
【図5】刈刃浮かし脚の説明図
【図6】飛散防止装置の取付部平面図
【図7】飛散防止装置の取付部側面図
【図8】別の実施形態を示す取付部の説明図
【図9】従来技術の斜視図
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0019】
以下、本発明の飛散防止装置の実施の形態を図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の実施形態で、刈刃と飛散防止カバーとの関係を示す上面斜視図、図2は、刈刃と飛散防止装置の関係を示す正面図、図3は、刈刃と飛散防止装置の関係を示す側面図、図4は飛散防止カバーが障害物に接触した時の屈曲状態を示す斜視図、図5は、刈刃浮かし脚の移動範囲と刈刃を浮かせた状態を示す説明図、図6は、メインパイプと飛散防止装置の取付位置を示す平面図、図7はメインパイプと飛散防止装置の取付位置を示す側面図である。図8は、別の実施形態を示す取付部の説明図、図9は、従来技術の斜視図。
【0020】
図1に示すように、メインパイプ3の先端部に回転自在に軸支された刈刃2の後方に、飛散防止カバー4をカバー取付台5とパイプ用サドルバンド6により前記メインパイプ3を挟み込むようボルト・ナット13で固定する。
【0021】
図7に示すように、カバー取付台5には、横長の長方形で柔軟性を有するシート状の飛散防護シート12を揺動自在に垂下するための軸支部7を設ける。前記飛散防護シート12の長手方向上端には一端に回動部9を有するカバー取付部材8を設ける。前記カバー取付台5に設けた前記軸支部7と、前記カバー取付部材8に設けた前記回動部9を軸10で揺動自在に軸支する。
【0022】
この軸10の軸芯は、前記飛散防止カバー4の遊端側が前記刈刃2に近接するよう前記メインパイプ3と約45度〜60度位で交差するよう取り付ける。
【0023】
図3に示すように、前記飛散防止カバー4の下端は、下端先端側で刈り取り作業状態の時、前記刈刃2の近傍側で接地させる構成としている。刈り取り状態ではハンドル形状や身長差によって異なるが、前記メインパイプ3を地面に対して略35度に保持するので前記飛散防護シート12の形状は略長方形でもよいが、前記飛散防護シート12の前記刈刃2近傍側の寸法を遠方側の寸法より長くしてもよい。
【0024】
図4に示すように、前記カバー取付部材8は前記飛散防護シート12の長手方向1/3を残して前記飛散防護シート12の上端に取り付けられるが、その残余部は前記刈刃2の回転軸芯方向に弾性的に撓むことのできるバネ帯鋼などからなる弾性部材11で支持する。
【0025】
図7に示すように、前記飛散防止カバー4の揺動範囲は、垂下状態で前後略45度位がよい。このため前記カバー取付台5と前記パイプ用サドルバンド6を取り付けた前記ボルト・ナット13の前記カバー取付台5の下端に突出した部分で揺動制限具15としている。別途揺動範囲制限具を設けても良い。
【0026】
図7に示すように、刈刃浮かし脚14は飛散防護シート12と軸10を軸芯として揺動自在に回動するよう、ボルト・ナット13によって共締めされ取着されている。尚、揺動範囲は前記飛散防止カバー4と同様に揺動制限具15に規制されると共に、図5に示すようにAの刈取作業位置Bの格納位置の刈刃浮かし位置を取ることができる。
【0027】
次に上記構成の刈払機1の作用について説明する。刈り取り作業時は刈刃2を略水平にすると、メインパイプ3は35度位の前下がりに傾斜する。
【0028】
この時飛散防護シート12の先端側は左回転する刈刃2の左側近傍にあり、刈り取り作業時は下端部の一部は地面に接し、刈草受け部aは刈草を掬い受ける状態にある。この状態で刈刃2を右側から左側に振ると(図1の矢印F)刈り取られた草は前記刈草受け部aから防護シート12の後方スペースに流れる。(図1の矢印S)、刈り取りに伴いはね飛ばされる小石などは集積された刈草が緩衝作用をして作業者や周辺への飛散を防止する。
【0029】
このように飛散防止カバー4は、メインパイプ3より上方に大きく突出することなく、作業者の視線を遮ることがないので刈り取り部を直視しながら刈り取り作業が出来るので、作業能率が上がるものである。
【0030】
図4に示すように、住宅周辺などでの作業では障害物が多く、飛散防止カバー4により刈刃2の障害物への近接が制限されるが、飛散防護シート12の上端を刈刃2の回転軸芯方向に撓む弾性部材11としたので、カバー取付部材8から延出する弾性部材11は刈刃2を左方向に振れば、図4のK1のように飛散防止カバー4の約1/3以降で刈刃2の回転軸芯方向に湾曲するので、刈刃2は障害物に近接して刈り取りできるので刈り残しなどを最小限にすることができる。この時、飛散防護シート12は刈刃2に近接するが、バネ帯鋼の縦・横の断面係数差が大きいので、抵抗を逃げようと回動部9の揺動で飛散防護シート12は上向きになり、刈刃2から遠ざかりシートの切断が防げる。
【0031】
図8に示すように、揺動可能な別の実施形態の取付部で、回動部に無注油ブッシュを使用した。又、図示しないが、ポリプロピレンのヒンジを使用して、ダブルアクションスプリング方式で揺動してもよい。
【0032】
刈り取り作業の開始時、エンジンを始動するが、この時刈刃2を空間に浮かせて始動索を引く必要がある。刈払機1のメインパイプ3を介して刈刃2の他端にあるエンジン下部(図示しない)や燃料タンク底部(図示しない)と、飛散防止カバー4と同期して揺動する刈刃浮かし脚14を略垂直に垂下して刈払機1の刈刃2を地面から離間させるものである。メインパイプ3持ち上げると、飛散防止カバー4と刈刃浮かし脚14は重力により垂直となり、そのまま地面に置くと図5のように先端の刈刃2が地面と空間を開けて維持される。
【産業上の利用可能性】
【0033】
以上のように、本発明の飛散防止装置を備えた刈払機は、小型軽量の飛散防止カバーを設けたので、回転する刈刃によって刈草と共に跳ね飛ぶ小石などの飛来を刈草の緩衝作用により防止し、安全で効率のよい刈払機として利用することが出来る。
【符号の説明】
【0034】
1 刈払機
2 刈刃
3 メインパイプ
4 飛散防止カバー
5 カバー取付台
51 カバー取付台兼軸支部
6 パイプ用サドルバンド
7 軸支部
8 カバー取付部材
81 カバー取付部材
9 回動部
10 軸
11 弾性部材
12 飛散防護シート
13 ボルト・ナット
131 ボルト・ナット
14 刈刃浮かし脚
15 刈刃浮かし脚揺動制限具
151 刈刃浮かし脚揺動制限具
a 集積部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
刈払機1のメインパイプ3に、刈刃2の回転方向に対面して傾斜する受け面aを有する飛散防護シート12を前記メインパイプ3の長さ方向に交差する方向に設けると共に、前記飛散防護シート12の上端部を揺動可能に垂下し、刈り取り状態において前記飛散防護シート12の刈刃近傍側が接地する飛散防止カバー4を取着したことを特徴とする刈払機の飛散防止装置。
【請求項2】
特許請求範囲1記載の飛散防止カバー4は、前記刈刃2の回転中心方向に近づくよう湾曲可能に垂下したことを特徴とする刈払機の飛散防止装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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