刈払機用刃物
【課題】 草等の刈払対象物を弾き飛ばすことなく確実に切断することができ、且つ、異物や衝撃で破損した破片等を飛び散らせることがなく、安全性の高い刈払機用刃物を提供すること。
【解決手段】 板状をなす刈払機用刃物本体と、上記刈払機用刃物本体の外周に設けられた複数の刈払部と、を具備し、上記刈払部は放射方向を基準にして回転方向後方側に傾斜し刃を有していて刈払対象物を切断する切断部と、該切断部の回転方向前方側に設けられ回転方向後方側に向かってその半径を徐々に小さくし上記刈払対象物を上記切断部に追い込む追込部と、からなる刈払機用刃物。
【解決手段】 板状をなす刈払機用刃物本体と、上記刈払機用刃物本体の外周に設けられた複数の刈払部と、を具備し、上記刈払部は放射方向を基準にして回転方向後方側に傾斜し刃を有していて刈払対象物を切断する切断部と、該切断部の回転方向前方側に設けられ回転方向後方側に向かってその半径を徐々に小さくし上記刈払対象物を上記切断部に追い込む追込部と、からなる刈払機用刃物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、刈払機に使用される刈払機用刃物に係り、特に、外周に複数の刈払部が設けられていて、この刈払部は回転方向後方側に傾斜しそこに刃が形成された切断部と、該切断部の回転方向前方側に設けられ回転方向後方側に向かってその半径を徐々に小さくし草等の刈払対象物を上記切断部に追い込む追込部とを有し、追込部によって草等の刈払対象物を切断部へと追い込み、その追い込まれた草等の刈払対象物を切断部によって効率良く切断することができるように工夫したものに関する。
【背景技術】
【0002】
刈払機に使用される刈払機用刃物としては、例えば、図9〜図12に示されるようなものがある。
まず、図9に示されている刈払機用刃物(チップソー)101は、円板状部材103の中心に取付用孔105が穿孔されるとともに、その外周縁部に多数の(例えば、40個〜70個)の突起107が形成された構成になっている。その個々の突起107の回転方向前方側(図9中反時計回り方向側)側面には切断用チップ109が固着されている。
【0003】
次に、図10に示す刈払機用刃物(ロープ式カッター)111は、本体113に複数(例えば、2個)の切断用ロープ(例えば、ナイロン製のもの)115、115が取り付けられた構成になっている。この刈払機用刃物111を刈払機に取り付けて回転させると、上記切断用ロープ115、115がその回転力により草等の刈払対象物に衝突し、これにより上記草等の刈払対象物が切断されるものである。
【0004】
次に、図11に示す刈払機用刃物129は、例えば、2.0mm〜3.0mmの鋼板を切り抜いて形成されたものであり、円板状部材131の中心に取付用孔133が穿孔されるとともに、その外周縁部に複数(例えば、4個)の切刃部135が形成された構成になっている。上記切刃部135は略長方形形状をなしており、その回転方向前方側の一辺は刃が形成された切断部137となっている。
【0005】
さらに、図12に示す刈払機用刃物139は、円板状部材141に取付用孔143が穿孔されるとともに、その外周側に複数(例えば4個)の刃145が軸部材147を介して回動可能に取り付けられた構成になっている。この刃145は、使用時に上記円板状部材139が回転されると、遠心力により先端側が外周側に向けて飛び出すようになる。そして、この飛び出した刃145によって草等の刈払対象物を切断するものである。また、上記刃145は、例えば、プラスチック製であり、破損した場合等は交換できるようになっている。
【0006】
また、刈払機用刃物としては、そのほかに、特許文献1に記載されたようなものもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開平1−118619号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、従来の構成では、次のような問題があった。
例えば、図9に示すような刈払機用刃物101では、多数のチップ109が取り付けられているため、回転すると上記チップ109が草等の刈払対象物に頻繁に衝突することになり、これにより草等の刈払対象物は上記刈払機用刃物101の外周側に弾き飛ばされてしまう。その為、刈払機用刃物101を草等の刈払対象物に素早く押し込まないとこれを切断することができず、その結果、作業に多くの労力を要してしまうという問題があった。
また、上記刈払機用刃物101を草等の刈払対象物に押し込むと、切断された草等の刈払対象物が上記刈払機用刃物101側に倒れ込んで刈払機の回転軸に巻き込まれ、上記刈払機用刃物101の回転が停止してしまうことも懸念される。
このような問題は、図10、図11、図12に示すような刈払機用刃物においても同様である。
また、上記刈払機用刃物101は多数のチップ109が固着された構成となっているが、このチップ109が石等に衝突した際、その衝撃によって破損したり突起107から外れたりすることによって飛び散り、事故の原因となっていた。
【0009】
また、特許文献1に開示されている刈払機用刃物(皿型草刈刃)の場合には、外周側に突出・形成された切刃部が設けられている。しかし、上記切刃部には放射方向先端部分のみに切断用の刃が形成されているため、草等の刈払対象物を効率良く切断することはできなかった。
【0010】
本願発明は、このような点に基づいてなされたもので、その目的とするところは、草等の刈払対象物を切断部に効率良く追い込み、この追い込んだ草等の刈払対象物を弾き飛ばすことなく効率良く切断することができ、且つ、異物や衝撃で破損した破片等を飛び散らせることがなく、安全性の高い刈払機用刃物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するべく請求項1に記載された刈払機用刃物は、板状をなす刈払機用刃物本体と、上記刈払機用刃物本体の外周に設けられた複数の刈払部と、を具備し、上記刈払部は放射方向を基準にして回転方向後方側に傾斜し刃を有していて刈払対象物を切断する切断部と、該切断部の回転方向前方側に設けられ回転方向後方側に向かってその半径を徐々に小さくし上記刈払対象物を上記切断部に追い込む追込部と、からなることを特徴とするものである。
また、請求項2に記載された刈払機用刃物は、請求項1記載の刈払機用刃物において、上記追込部の上記切断部との境界部付近には上記切断部の刃と連続した刃が形成されていることを特徴とするものである。
また、請求項3に記載された刈払機用刃物は、請求項2記載の刈払機用刃物において、上記刃は下面側のみに傾斜面が形成されたものであることを特徴とするものである。
また、請求項4に記載された刈払機用刃物は、請求項3記載の刈払機用刃物において、上記切断部の刃は上記追込部の刃より鋭利に形成されていること特徴とするものである。
また、請求項5に記載された刈払機用刃物は、請求項4記載の刈払機用刃物において、上記追込部の回転方向前方側端部には刃保護部が突出・形成されていることを特徴とするものである。
また、請求項6に記載された刈払機用刃物は、請求項5記載の刈払機用刃物において、上記刈払部の数が3つであることを特徴とするものである。
また、請求項7に記載された刈払機用刃物は、請求項6記載の刈払機用刃物において、上記切断部の回転方向後方側への傾斜角度α°が10°〜30°であることを特徴とするものである。
また、請求項8に記載された刈払機用刃物は、軽量化のための抜き孔が形成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
以上述べたように、請求項1記載の刈払機用刃物によると、板状をなす刈払機用刃物本体と、上記刈払機用刃物本体の外周に設けられた複数の刈払部と、を具備し、上記刈払部は放射方向を基準にして回転方向後方側に傾斜し刃を有していて刈払対象物を切断する切断部と、該切断部の回転方向前方側に設けられ回転方向後方側に向かってその半径を徐々に小さくし上記刈払対象物を上記切断部に追い込む追込部と、からなるため、上記追込部によって上記刈払対象物を切断部へ追込んで、その追い込んだ刈払対象物を弾き飛ばすことなく、切断部によって回転方向後方側へと受け流すように外周側へと移動させつつ効率よく切断することができる。これによって刈払対象物が切断されて生じた切断片は外周側へと移動され、上記刈払機用刃物を取り付けた回転軸に絡まるのを防止することもできる。また、このような効果によって、上記刈払対象物へと上記刈払機用刃物を押し付ける必要がなくなり、作業者の負担が軽減されることとなる。また、切断用のチップを取り付ける構成とする必要がなく、石等に衝突した衝撃でチップが外れたり破損したりして飛び散ることによる事故が起きない構成とすることができ、これによって作業時の安全性を高めることができる。
また、請求項2記載の刈払機用刃物は、上記追込部の上記切断部との境界部付近には上記切断部の刃と連続した刃が形成されているため、刃の領域を十分に確保することができ、これによって比較的太い刈払対象物であっても確実に切断することができる。
また、請求項3記載の刈払機用刃物は、上記刃は下面側のみに傾斜面が形成されたものであるため、切断された刈払対象物が上記刈払機用刃物の上面側に移動するのを防ぎ、上記刈払機用刃物を取り付けた回転軸に絡まるのを防止するとともに、異物が上記刈払機用刃物の上面側、すなわち、作業者の側に飛ばされることも防止することができる。
また、請求項4記載の刈払機用刃物は、上記切断部の刃は上記追込部の刃より鋭利に形成されているため、上記追込部においては刈払対象物を完全に切断せず、上記切断部によって完全に上記刈払対象物を切断するようにし、これによって、上記刈払対象物を確実に切断できるとともに上記切断部による効果を確実に得ることができるようにしている。
また、請求項5記載の刈払機用刃物は、上記追込部の回転方向前方側端部には刃保護部が突出・形成されているため、異物から上記刃を保護することができる。
また、請求項6記載の刈払機用刃物は、上記刈払部の数が3つであるため、上記刈払部を重心のバランスが取れた位置に配置することができ、上記刈払機用刃物の回転中の安定性を高いものとすることができる。また、上記刈払部の数が少ないため、上記追込部の長さを十分に確保することができ、草等の刈払対象物を効果的に上記切断部へと追い込むことができる。
また、請求項7記載の刈払機用刃物は、上記切断部の回転方向後方側への傾斜角度α°が10°〜30°であるため、上記刈払対象物の種類に応じて上記角度を適宜設定することで、上記切断部による前述の効果を確実に得ることができる。
また、請求項8記載の刈払機用刃物は、軽量化のための抜き孔が形成されているため、上記刈払機用刃物を軽量化し、作業者の負担を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本願発明の一実施の形態を示す図で、本実施の形態による刈払機用刃物を取り付けた刈払機を示す斜視図である。
【図2】本願発明の一実施の形態を示す図で、本実施の形態による刈払機用刃物を刈払機のシャフトに取り付ける様子を示す分解斜視図である。
【図3】本願発明の一実施の形態を示す図で、本実施の形態による刈払機用刃物を上面側から見た状態を示す平面図である。
【図4】本願発明の一実施の形態を示す図で、本実施の形態による刈払機用刃物を上面側から視た斜視図である。
【図5】本願発明の一実施の形態を示す図で、図3におけるV−V断面拡大図である。
【図6】本願発明の一実施の形態を示す図で、図3におけるVI−VI断面拡大図である。
【図7】本願発明の一実施の形態を示す図で、図3におけるVII−VII断面拡大図である。
【図8】本願発明の一実施の形態を示す図で、図8(a)は刈払機用刃物を回転させた際の刈払対象物の切断される様子を説明する図で、刈払機用刃物を上面側から視た状態の一部拡大平面図、図8(b)は図8(a)におけるb−b断面拡大図である。
【図9】従来例を示す図で、刈払機用刃物を示す平面図である。
【図10】従来例を示す図で、刈払機用刃物を示す平面図である。
【図11】従来例を示す図で、刈払機用刃物を示す平面図である。
【図12】従来例を示す図で、刈払機用刃物を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図1乃至図8を参照して、本願発明の一実施の形態について説明する。
【0015】
図1は、本実施の形態による刈払機用刃物1を取り付けた刈払機3の全体構成を示す斜視図である。以下、詳細に説明する。まず、シャフト5があり、このシャフト5の先端にはヘッド7が設けられており、このヘッド7に刈払機用刃物1が回転可能に取り付けられている。上記シャフト5の後端にはエンジン9が取り付けられており、このエンジン9の駆動力が上記シャフト5内の図示しない駆動軸を介して上記ヘッド7に伝達され、それによって、上記刈払機用刃物1を回転させる。また、上記シャフト5の長手方向の中央付近には操作ハンドル11が設けられており、使用時には作業者はこの操作ハンドル11を把持して上記刈払機3を取り扱う。また、上記操作ハンドル11にはスロットルレバー13が取り付けられている。また、上記シャフト5にはストラップ15が取り付けられており、作業者はこのストラップ15を装着することによって上記刈払機3を保持することができる。
【0016】
また、図2に示すように、上記ヘッド7の下面側(図2中下側)には出力軸17が突出・配置されている。この出力軸17はエンジン9によって回転されるものである。上記出力軸17の先端側(図2中下側)には雄ねじ部19が形成されているとともに、この雄ねじ部19の基端側(図2中上側)には段付部21が設けられている。
【0017】
上記刈払機用刃物1は、図2に示すように、上記刈払機3のヘッド7に取り付けられる。すなわち、上記刈払機用刃物1の取付用孔(図3中符号28で示す)を上記出力軸の雄ねじ部19に貫通させ、且つ、上記刈払機用刃物1の上面(図2中上側の面)を上記出力軸17の段付部21に当接させた状態とし、上記刈払機用刃物1の下面側(図2中下側)から上記雄ねじ部19にナット23を螺合させ、それによって、上記刈払機用刃物1を上記出力軸17に固定する。
以上が上記刈払機3の全体の説明である。
【0018】
次に、刈払機用刃物1の構成について詳細に説明する。
この刈払機用刃物1は、本実施例においては、例えば、炭素工具鋼鋼材(SK材)からなり、その厚さは、例えば、1.0mmである。
上記刈払機用刃物1には、図3に示すように、まず、外周側に複数の刈払部27が周方向等間隔に設けられている。本実施の形態においては、3個の刈払部27が、刈払機用刃物1の重心バランスのとれる位置に設けられている。すなわち、上記3個の刈払部27が、上記刈払機用刃物1の外周側において120°毎に配置されている。また、上記刈払機用刃物1には、その中心に取付用孔28が穿孔されている。この取付用孔28は、前述したように、上記刈払機用刃物1を刈払機3のヘッド7に取り付ける際、出力軸17が貫通されるものである。
【0019】
上記刈払部27は、図3に示すように、その回転方向後方側(図3中矢印Aで示す方向の反対側)に直線状の切断部29を備えている。この切断部29は、放射方向を基準にして回転方向後方側に所定の角度α°(本実施の形態においては20°)だけ傾斜した状態で設けられている。
また、上記切断部29には、草等の刈払対象物(図8中符号45で示す)を切断するための刃31が形成されている。この刃31は、図5に示すように、刈払機用刃物1の上面側(図5中上側の面)の水平面32と下面側(図5中下側)の傾斜面33によって形成されている。
【0020】
また、上記刈払部27の、上記切断部29より回転方向前方側(図3中矢印Aで示す方向側)は追込部35となっている。この追込部35は回転方向後方側に向かってその半径Rが徐々に小さなっていく曲線状の形状に形成されている。例えば、本実施の形態の場合は、上記追込部35の回転方向前方側における半径R1(後述する刃保護部41部分は除く)は、例えは、125mmであり、回転方向後方側端における半径R2は、例えば、105mmとなっている。
なお、本実施の形態においては、上記追込部35の最大部分の半径R1(後述する刃保護部41部分は除く)を基準とすると、上記刈払機用刃物1の回転時の直径は250mmとなる。
また、上記追込部35と上記切断部29との境界部付近にも刃37が形成されている。この刃37は、図3に示すように、既に説明した切断部29の刃31と連続して形成されている。また、上記刃37も、上記刃31と同様に、図6に示すように、上面側(図5中上側の面)の水平面38と下面側(図5中下側)の傾斜面39によって形成されている。
【0021】
上記刃31の傾斜面33の水平面32(図5中上側の水平な面)に対する傾斜角度β°は、上記刃37の傾斜面39の水平面38(図6中上側の水平な面)に対する傾斜角度γ°よりも小さくなっている。すなわち、上記刃31は上記刃37よりも刃先の角度が鋭く鋭利な形状となっている。
また、上記刃31の傾斜面33の水平面32(図5中上側の水平な面)に対する傾斜角度β°は上記切断部29の全体にわたって一定なものとなっている。これに対して、上記刃37は、その傾斜面39の水平面38(図6中上側の水平な面)に対する傾斜角度γ°が、回転方向後方側から回転方向前方側に向かって徐々に大きくなるように構成されている。
なお、上記刃31及び上記刃37は、図3において斜線で示す領域に形成されている。
【0022】
また、上記追込部35の回転方向前方側端付近には刃保護部41が形成されている。この刃保護部41は、図3に示すように、略台形状の部位である。上記刃保護部41の断面形状は、図7に示すように、上面(図7中上側の面)も下面(図7中下側の面)も水平となっており、外周縁の端面は上面及び下面に対して垂直となっている。すなわち、切断機能を有する刃は形成されていない。そして、上記刃保護部41によって、石等の異物から上記刃31や上記刃37を保護している。
なお、上記追込部35の上記刃37以外の部分も、上記刃保護部41と同様の断面形状であり、切断機能を有する刃は形成されていない。
【0023】
また、上記刈払機用刃物1には、その重量を減らすために、複数(本実施の形態の場合は6個)の抜き孔43が回転中心から等距離であって周方向等間隔(本実施の形態の場合には60°毎に)に穿孔されている。
以上が、上記刈払機用刃物1の説明である。
【0024】
次に、刈払機用刃物1の作用について説明する。
前述したように、上記刈払機用刃物1は、刈払機3に取り付けられて使用される。その際、上記刈払機用刃物1は、図3、図8(a)に記載された矢印Aの指す向き(反時計回り方向)へと回転する。図8(a)は、上記刈払機用刃物1が矢印A方向に回転した場合の、上記刈払機用刃物1の外周縁部における草等の刈払対象物45の切断される様子を表した図である。
尚、図8(a)においては、草等の刈払対象物を模式的に示している。
【0025】
まず、草等の刈払対象物45は、追込部35の回転方向前方側(図8(a)の左方向)から追込部35へと導入される。このときの草等の刈払対象物45を図8(a)中左端に示す。上記追込部35に導入された草等の刈払対象物45は、上記追込部35の外周縁部に沿って回転方向後方側(図8(a)中右方向)に相対的に移動していく。そして、草等の刈払対象物45は、上記追込部35の刃37の位置に達すると、徐々に切断されながら、さらに追込部35の外周縁部に沿って回転方向後方側(図8(a)中右方向)に移動していく。
【0026】
そして、切断部29に達すると、草等の刈払対象物45は、上記切断部29に沿って、弾き飛ばされることなく、受け流されるように刈払機用刃物1の外周側へと移動していく。その際、切断部29の刃31によって完全に切断されることになる。切断された草等の刈払対象物45は、残された基部45aと切断された切断片45bとに分離される。そして、図8に示すように、切断された切断片45bは上記刈払機用刃物1の外周側に飛ばされ、その際、上に跳ね上げられることはない。
【0027】
本実施の形態において、刈払対象物45が弾き飛ばされずに回転方向後方側へ受け流されるように刈払機用刃物1の外周側へ移動され、切断片45bが刈払機用刃物1の外周側に飛ばされるのは、例えば、図3に示すように、上記切断部29が回転方向後方側に傾斜していることによる。また、上記切断片45bが上に跳ね上げられないのは、上記刃31の下面のみが傾斜面33となっているからである。
【0028】
また、図5、図6に示すように、刃31の下面のみが傾斜面33となっており、また、刃37の下面のみが傾斜面39となっているため、図8(b)に示すように、砂や小石等の異物47が存在していても、上記刈払機用刃物1の下側へと弾かれるが、上記刈払機用刃物1の上側へと弾かれることはない。そのため、上記異物47が作業者側に飛散することはない。
【0029】
また、上記刈払機用刃物1が回転する際、外周方向側に石などの異物が存在していると、上記異物は、まず、刃保護部41に衝突し、上記刃31や刃37には衝突しにくくなっている。また、前述したように、上記切断部29は回転方向後方側に傾斜しているため、万が一、上記切断部29に石などの異物が衝突しても、回転方向後方側へ受け流されるように移動され、弾き飛ばされたり砕けて飛び散ったりすることはない。
以上が、本実施の形態による刈払機用刃物1の作用である。
【0030】
以上、本実施の形態によると次のような効果を奏することができる。
まず、本実施の形態における刈払部27は、追込部35と切断部29とから構成されているので、追込部35に導入された草等の刈払対象物45を効率良く切断部29に追い込むことができる。
また、切断部29は放射方向を基準に回転方向後方側に所定の角度α°(本実施の形態においては20°)だけ傾斜した状態で設けられているので、草等の刈払対象物45は、切断部29によって弾き飛ばされることなく、回転方向後方側へと受け流されるように移動し、さらに、切断部29に沿って刈払機用刃物1の外周側へと移動していき、その際、切断部29によって効率良く切断されることになる。また、万一、上記切断部19に石などの異物が衝突したとしても回転方向後方側へ受け流され、弾き飛ばされたり砕けて飛び散ったりすることはなく、作業者等の安全が確保される。
更に、上記刈払機用刃物1は刃37等の構成要素が一体として形成されたものであり、切断用のチップ等を固着させた構成とはなっていないため、使用中にチップ等が欠けたり外れたりして飛び散ることによる事故が起きないようになっている。
【0031】
また、草等の刈払対象物45側に刈払機用刃物1を素早く押し付ける必要がないので、作業者への負担も軽減される。
また、切断された切断片45bは刈払機用刃物1の外周側へと移動していくので、上記刈払機用刃物1の回転中心である刈払機3の出力軸17に切断片45bが絡まることもない。
また、上記刃31の下面のみが傾斜面33となっているので、切断された切断片45bが刃31によって刈払機用刃物1の上面側へ跳ね上げられることはない。このことによっても、上記刈払機用刃物1の回転中心である刈払機3の出力軸17に切断片45bが絡まることが防止される。
【0032】
また、上記刈払機用刃物1には複数の上記刈払部27が形成されているが、本実施の形態においては上記刈払部27の数は3個と少ないものとなっており、これによって上記刈払部27の追込部35を大きいものとすることができる。そのため、効果的に刈払対象物45を上記切断部29側へと追い込み、効率的に草等の刈払対象物45を切断することができることができる。
また、上記刈払部27の数が少ないために、上記刈払対象物45に対して上記切断部29が接触する回数が少なくなり、これによっても上記刈払機用刃物1が上記刈払対象物45を外周方向に弾き飛ばしてしまうことを抑制している。
また、上記刈払部27の数は3個であり、且つ、重心のバランスのとれた箇所に配置されているため、上記刈払機用刃物1の回転時における安定性が高く、このことによっても作業者への負担を軽くすることができる。
【0033】
また、上記切断部29に刃31が形成されるとともに上記追込部35の回転方向後方側の部分にも上記刃31と連続した刃37が形成されており、それによって、切断可能な刃の長さを十分に確保することができる。そのため、草等の刈払対象物45が比較的太い場合であっても、確実に切断することができる。
また、上記刃31は上記刃37よりも鋭利であり、且つ、上記刃37は回転方向後方側に向かうほどが鋭利になっている。そのため、草等の刈払対象物45は上記刈払機用刃物1の回転によって回転方向後方側へ移動するにしたがって徐々に切断されていき、上記切断部29において完全に切断されることになる。よって、草等の刈払対象物45は、上記切断部29の回転方向後方側への傾斜によって外周方向へと確実に移動されるとともに、切断片45bも、外周方向へ飛ばされることとなる。このことにより、前述した出力軸17への上記切断片45bの絡み付き防止を確実なものとしている。
【0034】
また、刃31の上記刈払機用刃物1の下面側(図5中下側)のみが傾斜面33になっているとともに、刃37の上記刈払機用刃物1の下面側(図6中下側)のみが傾斜面39となっているため、異物47を上記刈払機用刃物1の下側(図5及び図6の下側)へ弾くが、上記刈払機用刃物1の上側(図5及び図6の下側)へ弾くことはない。そのため、作業者の安全を確保することができる。
【0035】
また、上記追込部35の回転方向前方側端部には刃保護部41が形成されている。そのため、石等の異物から上記刃31や上記刃37を保護することができる。
【0036】
なお、本願発明は前記一の実施の形態に限定されない。
まず、刈払対象物の種類に応じて、刈払部27の形状や数は様々な場合が考えられる。
例えば、前記一実施の形態においては、刈払部27を周方向等間隔に3個設けた構成を例に挙げて説明したが、それに限定するものではなく、2個、4個以上の場合も想定される。
また、切断部29の放射方向を基準にした回転方向後方側の傾斜角度α°としては様々な場合が考えられ、例えば、10°〜30°の範囲で任意に設定することが考えられる。
また、追込部35の最大部分の半径(刃保護部41部分は除く)を基準とした上記刈払機用刃物1の直径は、様々な場合が考えられ、例えば、200mm〜300mmの範囲で任意に設定することが考えられる。
また、上記刈払機用刃物1の厚みは、様々な場合が考えられ、例えば、0.8mm〜1.8mmの範囲で任意に設定することが考えられる。
前記一実施の形態の場合には、切断部29以外に、追込部35にも刃を設けたが、切断部29のみに刃を設ける構成も想定される。
また、抜き孔43の形状や数も様々な場合が考えられる。
また、上記刈払機用刃物1の材質は、様々なものが考えられる。
その他、図示した構成あくまで一例である。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、例えば、刈払機に取り付けて使用される刈払機用刃物に係り、特に、草等の刈払対象物を弾き飛ばすことなく、確実に切断することができ、且つ、異物や衝撃で破損した破片等を飛び散らせることがなく、安全性が高くなるように工夫したものに係り、例えば、草刈機用に好適である。
【符号の説明】
【0038】
1 刈払機用刃物
3 刈払機
27 刈払部
29 切断部
31 刃
33 傾斜面
35 追込部
37 刃
39 傾斜面
41 刃保護部
43 抜き孔
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、刈払機に使用される刈払機用刃物に係り、特に、外周に複数の刈払部が設けられていて、この刈払部は回転方向後方側に傾斜しそこに刃が形成された切断部と、該切断部の回転方向前方側に設けられ回転方向後方側に向かってその半径を徐々に小さくし草等の刈払対象物を上記切断部に追い込む追込部とを有し、追込部によって草等の刈払対象物を切断部へと追い込み、その追い込まれた草等の刈払対象物を切断部によって効率良く切断することができるように工夫したものに関する。
【背景技術】
【0002】
刈払機に使用される刈払機用刃物としては、例えば、図9〜図12に示されるようなものがある。
まず、図9に示されている刈払機用刃物(チップソー)101は、円板状部材103の中心に取付用孔105が穿孔されるとともに、その外周縁部に多数の(例えば、40個〜70個)の突起107が形成された構成になっている。その個々の突起107の回転方向前方側(図9中反時計回り方向側)側面には切断用チップ109が固着されている。
【0003】
次に、図10に示す刈払機用刃物(ロープ式カッター)111は、本体113に複数(例えば、2個)の切断用ロープ(例えば、ナイロン製のもの)115、115が取り付けられた構成になっている。この刈払機用刃物111を刈払機に取り付けて回転させると、上記切断用ロープ115、115がその回転力により草等の刈払対象物に衝突し、これにより上記草等の刈払対象物が切断されるものである。
【0004】
次に、図11に示す刈払機用刃物129は、例えば、2.0mm〜3.0mmの鋼板を切り抜いて形成されたものであり、円板状部材131の中心に取付用孔133が穿孔されるとともに、その外周縁部に複数(例えば、4個)の切刃部135が形成された構成になっている。上記切刃部135は略長方形形状をなしており、その回転方向前方側の一辺は刃が形成された切断部137となっている。
【0005】
さらに、図12に示す刈払機用刃物139は、円板状部材141に取付用孔143が穿孔されるとともに、その外周側に複数(例えば4個)の刃145が軸部材147を介して回動可能に取り付けられた構成になっている。この刃145は、使用時に上記円板状部材139が回転されると、遠心力により先端側が外周側に向けて飛び出すようになる。そして、この飛び出した刃145によって草等の刈払対象物を切断するものである。また、上記刃145は、例えば、プラスチック製であり、破損した場合等は交換できるようになっている。
【0006】
また、刈払機用刃物としては、そのほかに、特許文献1に記載されたようなものもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開平1−118619号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、従来の構成では、次のような問題があった。
例えば、図9に示すような刈払機用刃物101では、多数のチップ109が取り付けられているため、回転すると上記チップ109が草等の刈払対象物に頻繁に衝突することになり、これにより草等の刈払対象物は上記刈払機用刃物101の外周側に弾き飛ばされてしまう。その為、刈払機用刃物101を草等の刈払対象物に素早く押し込まないとこれを切断することができず、その結果、作業に多くの労力を要してしまうという問題があった。
また、上記刈払機用刃物101を草等の刈払対象物に押し込むと、切断された草等の刈払対象物が上記刈払機用刃物101側に倒れ込んで刈払機の回転軸に巻き込まれ、上記刈払機用刃物101の回転が停止してしまうことも懸念される。
このような問題は、図10、図11、図12に示すような刈払機用刃物においても同様である。
また、上記刈払機用刃物101は多数のチップ109が固着された構成となっているが、このチップ109が石等に衝突した際、その衝撃によって破損したり突起107から外れたりすることによって飛び散り、事故の原因となっていた。
【0009】
また、特許文献1に開示されている刈払機用刃物(皿型草刈刃)の場合には、外周側に突出・形成された切刃部が設けられている。しかし、上記切刃部には放射方向先端部分のみに切断用の刃が形成されているため、草等の刈払対象物を効率良く切断することはできなかった。
【0010】
本願発明は、このような点に基づいてなされたもので、その目的とするところは、草等の刈払対象物を切断部に効率良く追い込み、この追い込んだ草等の刈払対象物を弾き飛ばすことなく効率良く切断することができ、且つ、異物や衝撃で破損した破片等を飛び散らせることがなく、安全性の高い刈払機用刃物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するべく請求項1に記載された刈払機用刃物は、板状をなす刈払機用刃物本体と、上記刈払機用刃物本体の外周に設けられた複数の刈払部と、を具備し、上記刈払部は放射方向を基準にして回転方向後方側に傾斜し刃を有していて刈払対象物を切断する切断部と、該切断部の回転方向前方側に設けられ回転方向後方側に向かってその半径を徐々に小さくし上記刈払対象物を上記切断部に追い込む追込部と、からなることを特徴とするものである。
また、請求項2に記載された刈払機用刃物は、請求項1記載の刈払機用刃物において、上記追込部の上記切断部との境界部付近には上記切断部の刃と連続した刃が形成されていることを特徴とするものである。
また、請求項3に記載された刈払機用刃物は、請求項2記載の刈払機用刃物において、上記刃は下面側のみに傾斜面が形成されたものであることを特徴とするものである。
また、請求項4に記載された刈払機用刃物は、請求項3記載の刈払機用刃物において、上記切断部の刃は上記追込部の刃より鋭利に形成されていること特徴とするものである。
また、請求項5に記載された刈払機用刃物は、請求項4記載の刈払機用刃物において、上記追込部の回転方向前方側端部には刃保護部が突出・形成されていることを特徴とするものである。
また、請求項6に記載された刈払機用刃物は、請求項5記載の刈払機用刃物において、上記刈払部の数が3つであることを特徴とするものである。
また、請求項7に記載された刈払機用刃物は、請求項6記載の刈払機用刃物において、上記切断部の回転方向後方側への傾斜角度α°が10°〜30°であることを特徴とするものである。
また、請求項8に記載された刈払機用刃物は、軽量化のための抜き孔が形成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
以上述べたように、請求項1記載の刈払機用刃物によると、板状をなす刈払機用刃物本体と、上記刈払機用刃物本体の外周に設けられた複数の刈払部と、を具備し、上記刈払部は放射方向を基準にして回転方向後方側に傾斜し刃を有していて刈払対象物を切断する切断部と、該切断部の回転方向前方側に設けられ回転方向後方側に向かってその半径を徐々に小さくし上記刈払対象物を上記切断部に追い込む追込部と、からなるため、上記追込部によって上記刈払対象物を切断部へ追込んで、その追い込んだ刈払対象物を弾き飛ばすことなく、切断部によって回転方向後方側へと受け流すように外周側へと移動させつつ効率よく切断することができる。これによって刈払対象物が切断されて生じた切断片は外周側へと移動され、上記刈払機用刃物を取り付けた回転軸に絡まるのを防止することもできる。また、このような効果によって、上記刈払対象物へと上記刈払機用刃物を押し付ける必要がなくなり、作業者の負担が軽減されることとなる。また、切断用のチップを取り付ける構成とする必要がなく、石等に衝突した衝撃でチップが外れたり破損したりして飛び散ることによる事故が起きない構成とすることができ、これによって作業時の安全性を高めることができる。
また、請求項2記載の刈払機用刃物は、上記追込部の上記切断部との境界部付近には上記切断部の刃と連続した刃が形成されているため、刃の領域を十分に確保することができ、これによって比較的太い刈払対象物であっても確実に切断することができる。
また、請求項3記載の刈払機用刃物は、上記刃は下面側のみに傾斜面が形成されたものであるため、切断された刈払対象物が上記刈払機用刃物の上面側に移動するのを防ぎ、上記刈払機用刃物を取り付けた回転軸に絡まるのを防止するとともに、異物が上記刈払機用刃物の上面側、すなわち、作業者の側に飛ばされることも防止することができる。
また、請求項4記載の刈払機用刃物は、上記切断部の刃は上記追込部の刃より鋭利に形成されているため、上記追込部においては刈払対象物を完全に切断せず、上記切断部によって完全に上記刈払対象物を切断するようにし、これによって、上記刈払対象物を確実に切断できるとともに上記切断部による効果を確実に得ることができるようにしている。
また、請求項5記載の刈払機用刃物は、上記追込部の回転方向前方側端部には刃保護部が突出・形成されているため、異物から上記刃を保護することができる。
また、請求項6記載の刈払機用刃物は、上記刈払部の数が3つであるため、上記刈払部を重心のバランスが取れた位置に配置することができ、上記刈払機用刃物の回転中の安定性を高いものとすることができる。また、上記刈払部の数が少ないため、上記追込部の長さを十分に確保することができ、草等の刈払対象物を効果的に上記切断部へと追い込むことができる。
また、請求項7記載の刈払機用刃物は、上記切断部の回転方向後方側への傾斜角度α°が10°〜30°であるため、上記刈払対象物の種類に応じて上記角度を適宜設定することで、上記切断部による前述の効果を確実に得ることができる。
また、請求項8記載の刈払機用刃物は、軽量化のための抜き孔が形成されているため、上記刈払機用刃物を軽量化し、作業者の負担を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本願発明の一実施の形態を示す図で、本実施の形態による刈払機用刃物を取り付けた刈払機を示す斜視図である。
【図2】本願発明の一実施の形態を示す図で、本実施の形態による刈払機用刃物を刈払機のシャフトに取り付ける様子を示す分解斜視図である。
【図3】本願発明の一実施の形態を示す図で、本実施の形態による刈払機用刃物を上面側から見た状態を示す平面図である。
【図4】本願発明の一実施の形態を示す図で、本実施の形態による刈払機用刃物を上面側から視た斜視図である。
【図5】本願発明の一実施の形態を示す図で、図3におけるV−V断面拡大図である。
【図6】本願発明の一実施の形態を示す図で、図3におけるVI−VI断面拡大図である。
【図7】本願発明の一実施の形態を示す図で、図3におけるVII−VII断面拡大図である。
【図8】本願発明の一実施の形態を示す図で、図8(a)は刈払機用刃物を回転させた際の刈払対象物の切断される様子を説明する図で、刈払機用刃物を上面側から視た状態の一部拡大平面図、図8(b)は図8(a)におけるb−b断面拡大図である。
【図9】従来例を示す図で、刈払機用刃物を示す平面図である。
【図10】従来例を示す図で、刈払機用刃物を示す平面図である。
【図11】従来例を示す図で、刈払機用刃物を示す平面図である。
【図12】従来例を示す図で、刈払機用刃物を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図1乃至図8を参照して、本願発明の一実施の形態について説明する。
【0015】
図1は、本実施の形態による刈払機用刃物1を取り付けた刈払機3の全体構成を示す斜視図である。以下、詳細に説明する。まず、シャフト5があり、このシャフト5の先端にはヘッド7が設けられており、このヘッド7に刈払機用刃物1が回転可能に取り付けられている。上記シャフト5の後端にはエンジン9が取り付けられており、このエンジン9の駆動力が上記シャフト5内の図示しない駆動軸を介して上記ヘッド7に伝達され、それによって、上記刈払機用刃物1を回転させる。また、上記シャフト5の長手方向の中央付近には操作ハンドル11が設けられており、使用時には作業者はこの操作ハンドル11を把持して上記刈払機3を取り扱う。また、上記操作ハンドル11にはスロットルレバー13が取り付けられている。また、上記シャフト5にはストラップ15が取り付けられており、作業者はこのストラップ15を装着することによって上記刈払機3を保持することができる。
【0016】
また、図2に示すように、上記ヘッド7の下面側(図2中下側)には出力軸17が突出・配置されている。この出力軸17はエンジン9によって回転されるものである。上記出力軸17の先端側(図2中下側)には雄ねじ部19が形成されているとともに、この雄ねじ部19の基端側(図2中上側)には段付部21が設けられている。
【0017】
上記刈払機用刃物1は、図2に示すように、上記刈払機3のヘッド7に取り付けられる。すなわち、上記刈払機用刃物1の取付用孔(図3中符号28で示す)を上記出力軸の雄ねじ部19に貫通させ、且つ、上記刈払機用刃物1の上面(図2中上側の面)を上記出力軸17の段付部21に当接させた状態とし、上記刈払機用刃物1の下面側(図2中下側)から上記雄ねじ部19にナット23を螺合させ、それによって、上記刈払機用刃物1を上記出力軸17に固定する。
以上が上記刈払機3の全体の説明である。
【0018】
次に、刈払機用刃物1の構成について詳細に説明する。
この刈払機用刃物1は、本実施例においては、例えば、炭素工具鋼鋼材(SK材)からなり、その厚さは、例えば、1.0mmである。
上記刈払機用刃物1には、図3に示すように、まず、外周側に複数の刈払部27が周方向等間隔に設けられている。本実施の形態においては、3個の刈払部27が、刈払機用刃物1の重心バランスのとれる位置に設けられている。すなわち、上記3個の刈払部27が、上記刈払機用刃物1の外周側において120°毎に配置されている。また、上記刈払機用刃物1には、その中心に取付用孔28が穿孔されている。この取付用孔28は、前述したように、上記刈払機用刃物1を刈払機3のヘッド7に取り付ける際、出力軸17が貫通されるものである。
【0019】
上記刈払部27は、図3に示すように、その回転方向後方側(図3中矢印Aで示す方向の反対側)に直線状の切断部29を備えている。この切断部29は、放射方向を基準にして回転方向後方側に所定の角度α°(本実施の形態においては20°)だけ傾斜した状態で設けられている。
また、上記切断部29には、草等の刈払対象物(図8中符号45で示す)を切断するための刃31が形成されている。この刃31は、図5に示すように、刈払機用刃物1の上面側(図5中上側の面)の水平面32と下面側(図5中下側)の傾斜面33によって形成されている。
【0020】
また、上記刈払部27の、上記切断部29より回転方向前方側(図3中矢印Aで示す方向側)は追込部35となっている。この追込部35は回転方向後方側に向かってその半径Rが徐々に小さなっていく曲線状の形状に形成されている。例えば、本実施の形態の場合は、上記追込部35の回転方向前方側における半径R1(後述する刃保護部41部分は除く)は、例えは、125mmであり、回転方向後方側端における半径R2は、例えば、105mmとなっている。
なお、本実施の形態においては、上記追込部35の最大部分の半径R1(後述する刃保護部41部分は除く)を基準とすると、上記刈払機用刃物1の回転時の直径は250mmとなる。
また、上記追込部35と上記切断部29との境界部付近にも刃37が形成されている。この刃37は、図3に示すように、既に説明した切断部29の刃31と連続して形成されている。また、上記刃37も、上記刃31と同様に、図6に示すように、上面側(図5中上側の面)の水平面38と下面側(図5中下側)の傾斜面39によって形成されている。
【0021】
上記刃31の傾斜面33の水平面32(図5中上側の水平な面)に対する傾斜角度β°は、上記刃37の傾斜面39の水平面38(図6中上側の水平な面)に対する傾斜角度γ°よりも小さくなっている。すなわち、上記刃31は上記刃37よりも刃先の角度が鋭く鋭利な形状となっている。
また、上記刃31の傾斜面33の水平面32(図5中上側の水平な面)に対する傾斜角度β°は上記切断部29の全体にわたって一定なものとなっている。これに対して、上記刃37は、その傾斜面39の水平面38(図6中上側の水平な面)に対する傾斜角度γ°が、回転方向後方側から回転方向前方側に向かって徐々に大きくなるように構成されている。
なお、上記刃31及び上記刃37は、図3において斜線で示す領域に形成されている。
【0022】
また、上記追込部35の回転方向前方側端付近には刃保護部41が形成されている。この刃保護部41は、図3に示すように、略台形状の部位である。上記刃保護部41の断面形状は、図7に示すように、上面(図7中上側の面)も下面(図7中下側の面)も水平となっており、外周縁の端面は上面及び下面に対して垂直となっている。すなわち、切断機能を有する刃は形成されていない。そして、上記刃保護部41によって、石等の異物から上記刃31や上記刃37を保護している。
なお、上記追込部35の上記刃37以外の部分も、上記刃保護部41と同様の断面形状であり、切断機能を有する刃は形成されていない。
【0023】
また、上記刈払機用刃物1には、その重量を減らすために、複数(本実施の形態の場合は6個)の抜き孔43が回転中心から等距離であって周方向等間隔(本実施の形態の場合には60°毎に)に穿孔されている。
以上が、上記刈払機用刃物1の説明である。
【0024】
次に、刈払機用刃物1の作用について説明する。
前述したように、上記刈払機用刃物1は、刈払機3に取り付けられて使用される。その際、上記刈払機用刃物1は、図3、図8(a)に記載された矢印Aの指す向き(反時計回り方向)へと回転する。図8(a)は、上記刈払機用刃物1が矢印A方向に回転した場合の、上記刈払機用刃物1の外周縁部における草等の刈払対象物45の切断される様子を表した図である。
尚、図8(a)においては、草等の刈払対象物を模式的に示している。
【0025】
まず、草等の刈払対象物45は、追込部35の回転方向前方側(図8(a)の左方向)から追込部35へと導入される。このときの草等の刈払対象物45を図8(a)中左端に示す。上記追込部35に導入された草等の刈払対象物45は、上記追込部35の外周縁部に沿って回転方向後方側(図8(a)中右方向)に相対的に移動していく。そして、草等の刈払対象物45は、上記追込部35の刃37の位置に達すると、徐々に切断されながら、さらに追込部35の外周縁部に沿って回転方向後方側(図8(a)中右方向)に移動していく。
【0026】
そして、切断部29に達すると、草等の刈払対象物45は、上記切断部29に沿って、弾き飛ばされることなく、受け流されるように刈払機用刃物1の外周側へと移動していく。その際、切断部29の刃31によって完全に切断されることになる。切断された草等の刈払対象物45は、残された基部45aと切断された切断片45bとに分離される。そして、図8に示すように、切断された切断片45bは上記刈払機用刃物1の外周側に飛ばされ、その際、上に跳ね上げられることはない。
【0027】
本実施の形態において、刈払対象物45が弾き飛ばされずに回転方向後方側へ受け流されるように刈払機用刃物1の外周側へ移動され、切断片45bが刈払機用刃物1の外周側に飛ばされるのは、例えば、図3に示すように、上記切断部29が回転方向後方側に傾斜していることによる。また、上記切断片45bが上に跳ね上げられないのは、上記刃31の下面のみが傾斜面33となっているからである。
【0028】
また、図5、図6に示すように、刃31の下面のみが傾斜面33となっており、また、刃37の下面のみが傾斜面39となっているため、図8(b)に示すように、砂や小石等の異物47が存在していても、上記刈払機用刃物1の下側へと弾かれるが、上記刈払機用刃物1の上側へと弾かれることはない。そのため、上記異物47が作業者側に飛散することはない。
【0029】
また、上記刈払機用刃物1が回転する際、外周方向側に石などの異物が存在していると、上記異物は、まず、刃保護部41に衝突し、上記刃31や刃37には衝突しにくくなっている。また、前述したように、上記切断部29は回転方向後方側に傾斜しているため、万が一、上記切断部29に石などの異物が衝突しても、回転方向後方側へ受け流されるように移動され、弾き飛ばされたり砕けて飛び散ったりすることはない。
以上が、本実施の形態による刈払機用刃物1の作用である。
【0030】
以上、本実施の形態によると次のような効果を奏することができる。
まず、本実施の形態における刈払部27は、追込部35と切断部29とから構成されているので、追込部35に導入された草等の刈払対象物45を効率良く切断部29に追い込むことができる。
また、切断部29は放射方向を基準に回転方向後方側に所定の角度α°(本実施の形態においては20°)だけ傾斜した状態で設けられているので、草等の刈払対象物45は、切断部29によって弾き飛ばされることなく、回転方向後方側へと受け流されるように移動し、さらに、切断部29に沿って刈払機用刃物1の外周側へと移動していき、その際、切断部29によって効率良く切断されることになる。また、万一、上記切断部19に石などの異物が衝突したとしても回転方向後方側へ受け流され、弾き飛ばされたり砕けて飛び散ったりすることはなく、作業者等の安全が確保される。
更に、上記刈払機用刃物1は刃37等の構成要素が一体として形成されたものであり、切断用のチップ等を固着させた構成とはなっていないため、使用中にチップ等が欠けたり外れたりして飛び散ることによる事故が起きないようになっている。
【0031】
また、草等の刈払対象物45側に刈払機用刃物1を素早く押し付ける必要がないので、作業者への負担も軽減される。
また、切断された切断片45bは刈払機用刃物1の外周側へと移動していくので、上記刈払機用刃物1の回転中心である刈払機3の出力軸17に切断片45bが絡まることもない。
また、上記刃31の下面のみが傾斜面33となっているので、切断された切断片45bが刃31によって刈払機用刃物1の上面側へ跳ね上げられることはない。このことによっても、上記刈払機用刃物1の回転中心である刈払機3の出力軸17に切断片45bが絡まることが防止される。
【0032】
また、上記刈払機用刃物1には複数の上記刈払部27が形成されているが、本実施の形態においては上記刈払部27の数は3個と少ないものとなっており、これによって上記刈払部27の追込部35を大きいものとすることができる。そのため、効果的に刈払対象物45を上記切断部29側へと追い込み、効率的に草等の刈払対象物45を切断することができることができる。
また、上記刈払部27の数が少ないために、上記刈払対象物45に対して上記切断部29が接触する回数が少なくなり、これによっても上記刈払機用刃物1が上記刈払対象物45を外周方向に弾き飛ばしてしまうことを抑制している。
また、上記刈払部27の数は3個であり、且つ、重心のバランスのとれた箇所に配置されているため、上記刈払機用刃物1の回転時における安定性が高く、このことによっても作業者への負担を軽くすることができる。
【0033】
また、上記切断部29に刃31が形成されるとともに上記追込部35の回転方向後方側の部分にも上記刃31と連続した刃37が形成されており、それによって、切断可能な刃の長さを十分に確保することができる。そのため、草等の刈払対象物45が比較的太い場合であっても、確実に切断することができる。
また、上記刃31は上記刃37よりも鋭利であり、且つ、上記刃37は回転方向後方側に向かうほどが鋭利になっている。そのため、草等の刈払対象物45は上記刈払機用刃物1の回転によって回転方向後方側へ移動するにしたがって徐々に切断されていき、上記切断部29において完全に切断されることになる。よって、草等の刈払対象物45は、上記切断部29の回転方向後方側への傾斜によって外周方向へと確実に移動されるとともに、切断片45bも、外周方向へ飛ばされることとなる。このことにより、前述した出力軸17への上記切断片45bの絡み付き防止を確実なものとしている。
【0034】
また、刃31の上記刈払機用刃物1の下面側(図5中下側)のみが傾斜面33になっているとともに、刃37の上記刈払機用刃物1の下面側(図6中下側)のみが傾斜面39となっているため、異物47を上記刈払機用刃物1の下側(図5及び図6の下側)へ弾くが、上記刈払機用刃物1の上側(図5及び図6の下側)へ弾くことはない。そのため、作業者の安全を確保することができる。
【0035】
また、上記追込部35の回転方向前方側端部には刃保護部41が形成されている。そのため、石等の異物から上記刃31や上記刃37を保護することができる。
【0036】
なお、本願発明は前記一の実施の形態に限定されない。
まず、刈払対象物の種類に応じて、刈払部27の形状や数は様々な場合が考えられる。
例えば、前記一実施の形態においては、刈払部27を周方向等間隔に3個設けた構成を例に挙げて説明したが、それに限定するものではなく、2個、4個以上の場合も想定される。
また、切断部29の放射方向を基準にした回転方向後方側の傾斜角度α°としては様々な場合が考えられ、例えば、10°〜30°の範囲で任意に設定することが考えられる。
また、追込部35の最大部分の半径(刃保護部41部分は除く)を基準とした上記刈払機用刃物1の直径は、様々な場合が考えられ、例えば、200mm〜300mmの範囲で任意に設定することが考えられる。
また、上記刈払機用刃物1の厚みは、様々な場合が考えられ、例えば、0.8mm〜1.8mmの範囲で任意に設定することが考えられる。
前記一実施の形態の場合には、切断部29以外に、追込部35にも刃を設けたが、切断部29のみに刃を設ける構成も想定される。
また、抜き孔43の形状や数も様々な場合が考えられる。
また、上記刈払機用刃物1の材質は、様々なものが考えられる。
その他、図示した構成あくまで一例である。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、例えば、刈払機に取り付けて使用される刈払機用刃物に係り、特に、草等の刈払対象物を弾き飛ばすことなく、確実に切断することができ、且つ、異物や衝撃で破損した破片等を飛び散らせることがなく、安全性が高くなるように工夫したものに係り、例えば、草刈機用に好適である。
【符号の説明】
【0038】
1 刈払機用刃物
3 刈払機
27 刈払部
29 切断部
31 刃
33 傾斜面
35 追込部
37 刃
39 傾斜面
41 刃保護部
43 抜き孔
【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状をなす刈払機用刃物本体と、
上記刈払機用刃物本体の外周に設けられた複数の刈払部と、
を具備し、
上記刈払部は放射方向を基準にして回転方向後方側に傾斜し刃を有していて刈払対象物を切断する切断部と、該切断部の回転方向前方側に設けられ回転方向後方側に向かってその半径を徐々に小さくし上記刈払対象物を上記切断部に追い込む追込部と、からなることを特徴とする刈払機用刃物。
【請求項2】
請求項1記載の刈払機用刃物において、
上記追込部の上記切断部との境界部付近には上記切断部の刃と連続した刃が形成されていることを特徴とする刈払機用刃物。
【請求項3】
請求項2記載の刈払機用刃物において、
上記刃は下面側のみに傾斜面が形成されたものであることを特徴とする刈払機用刃物。
【請求項4】
請求項3記載の刈払機用刃物において、
上記切断部の刃は上記追込部の刃より鋭利に形成されていること特徴とする刈払機用刃物。
【請求項5】
請求項4記載の刈払機用刃物において、
上記追込部の回転方向前方側端部には刃保護部が突出・形成されていることを特徴とする刈払機用刃物。
【請求項6】
請求項5記載の刈払機用刃物において、
上記刈払部の数が3つであることを特徴とする刈払機用刃物。
【請求項7】
請求項6記載の刈払機用刃物において、
上記切断部の回転方向後方側への傾斜角度α°が10°〜30°であることを特徴とする刈払機用刃物。
【請求項8】
請求項7記載の刈払機用刃物において、
軽量化のための抜き孔が形成されていることを特徴とする刈払機用刃物。
【請求項1】
板状をなす刈払機用刃物本体と、
上記刈払機用刃物本体の外周に設けられた複数の刈払部と、
を具備し、
上記刈払部は放射方向を基準にして回転方向後方側に傾斜し刃を有していて刈払対象物を切断する切断部と、該切断部の回転方向前方側に設けられ回転方向後方側に向かってその半径を徐々に小さくし上記刈払対象物を上記切断部に追い込む追込部と、からなることを特徴とする刈払機用刃物。
【請求項2】
請求項1記載の刈払機用刃物において、
上記追込部の上記切断部との境界部付近には上記切断部の刃と連続した刃が形成されていることを特徴とする刈払機用刃物。
【請求項3】
請求項2記載の刈払機用刃物において、
上記刃は下面側のみに傾斜面が形成されたものであることを特徴とする刈払機用刃物。
【請求項4】
請求項3記載の刈払機用刃物において、
上記切断部の刃は上記追込部の刃より鋭利に形成されていること特徴とする刈払機用刃物。
【請求項5】
請求項4記載の刈払機用刃物において、
上記追込部の回転方向前方側端部には刃保護部が突出・形成されていることを特徴とする刈払機用刃物。
【請求項6】
請求項5記載の刈払機用刃物において、
上記刈払部の数が3つであることを特徴とする刈払機用刃物。
【請求項7】
請求項6記載の刈払機用刃物において、
上記切断部の回転方向後方側への傾斜角度α°が10°〜30°であることを特徴とする刈払機用刃物。
【請求項8】
請求項7記載の刈払機用刃物において、
軽量化のための抜き孔が形成されていることを特徴とする刈払機用刃物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−78280(P2013−78280A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−219880(P2011−219880)
【出願日】平成23年10月4日(2011.10.4)
【出願人】(511240058)有限会社 エコファースト (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月4日(2011.10.4)
【出願人】(511240058)有限会社 エコファースト (1)
【Fターム(参考)】
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