説明

列車在線情報表示装置

【課題】列車位置情報を把握し、その接近を知らせることができる列車在線情報表示装置を提供することを目的とする。
【解決手段】列車在線情報表示装置において、GPS電波を受信するGPSアンテナと、GPSアンテナで受信した信号を処理して現在位置を測位する測位手段とを備え自身の位置を測位する。また、中央側においてTIDから取得した情報に基づいて列車の位置情報を得た後に送信される位置情報を受信する列車位置情報取得手段とを備えている。そして測位手段により測位された現在位置と列車位置情報取得手段とにより得られた列車の位置との距離が所定値以下になった場合に列車の接近を通知する警報を発生する列車接近警報手段とを備えた列車在線情報表示装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、GPS電波を受信して現在位置を測位すると共に、列車の位置情報を求め、その接近を知らせる列車在線情報表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、列車の位置情報を取得するために、列車自体にGPS受信機を搭載し、そのGPS受信機で測位した位置情報を用いる方式のものが、例えば特許文献1に開示されている。
【0003】
また、列車の在線情報を取得して、鉄道線路内での作業を行う作業員に対して列車が接近したことを知らせる手段として、例えば特許文献2に開示された技術がある。この特許文献2においては、例えば段落(0015)に記載されているようにCTC(列車集中制御装置:Centralized Traffic Control)の閉塞区間情報と、作業員の持つGPS受信装置を備えた携帯端末による作業員位置情報とから、列車が作業員に接近していることを通知することについて開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−202833号公報
【特許文献2】特開2005−041284号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら特許文献1の方式により列車の位置情報を把握するには、決まった区間上のすべての列車位置を把握するために、全ての列車にGPS受信機を搭載する必要がある。しかし実際には、一つの軌道区間には異なる鉄道会社の車両が走行する場合があり、その異なる鉄道会社の車両にGPS受信機を搭載してその情報を取得することは、ビジネス上一般には非常に困難である。
【0006】
また特許文献2に用いられているCTCが保有する閉塞区間情報とは、列車運行制御のために用いられる制御情報であり、ネットワーク技術的にもシステム運用技術的にも、CTC情報を取得するには相当に厳密な考慮が必要であり、一般には容易に取得できるものではない。
【0007】
本発明は、列車位置情報を把握し、その接近を知らせることができる列車在線情報表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために望ましい一実施形態は、列車在線情報表示装置において、GPS電波を受信するGPSアンテナと、GPSアンテナで受信した信号を処理して現在位置を測位する測位手段とを備え、自身の位置を測位する。また、中央側においてTIDから取得した情報に基づいて列車の位置情報を得た後に中央側から送信される位置情報を受信する列車位置情報取得手段とを備えている。そして測位手段により測位された現在位置と列車位置情報取得手段とにより得られた列車の位置との距離が所定値以下になった場合に、列車の接近を通知する警報を発生する列車接近警報手段とを備えた列車在線情報表示装置である。
【0009】
上記列車在線情報表示装置において、さらに好適な実施形態は以下の通りである。
(1)列車接近警報手段は、TIDの保有する窓情報に基づいて求められる列車の在線情報と、前記測位手段により取得される測位結果が線路上のキロ程に換算されることで求められる現在位置との距離が所定値以下になった場合に列車の接近を通知する警報を発生すること。
(2)単線区間に存在している場合に前記列車接近警報手段により発生される警報の時間は、複線区間に存在している場合に発生される警報の時間よりも長く設定されること。
(3)単線区間に存在している場合に前記列車在線情報表示装置により発生される警報は、列車が列車在線情報表示装置を通過後、所定の距離を走行した後に停止すること。
(4)列車位置情報取得手段により取得された列車の位置情報を表示する列車位置情報表示手段を備えたこと。
(5)列車位置情報表示手段は、列車位置情報取得手段により取得された列車の位置情報に応じて予め定められた画面を選択して表示すること。
(6)列車位置情報表示手段により表示される画面を任意に選択できる画面選択手段を備えたこと。
(7)列車位置情報表示手段により表示される画面を固定して表示する画面固定手段を備えたこと。
(8)列車位置情報表示手段はタッチパネルにより構成され、画面固定手段は該タッチパネルにタッチされることにより表示される画面が固定されること。
(9)画面固定手段により画面が固定された後、所定の距離を移動すると画面の固定が解除されること。
【発明の効果】
【0010】
上記実施形態によれば、列車位置情報を把握し、その接近を知らせる列車在線情報表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明実施例の列車在線情報表示装置の機器構成図である。
【図2】同じく列車在線情報表示装置とセンタ側装置を含めたシステム構成図である。
【図3】図2のシステム構成でのデータの流れと処理内容を示す説明図である。
【図4】PDAの外観とLCDタッチパネルのイメージを示す説明図である。
【図5】本発明の列車在線情報となる窓と、キロ程との対応の考え方を示す概念図である。
【図6】同じく列車在線情報表示装置の位置と列車と間の距離算出の概念図である。
【図7】同じく列車在線情報表示装置の複線区間および単線区間での接近警報鳴動継続範囲の例を示す説明図である。
【図8】同じく列車在線情報表示装置のGPS測位誤差による表示ばたつきの例の説明図である。
【図9】同じく列車在線情報表示装置GPS測位誤差により表示がばたついている際に任意に表示を固定させる場合の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態について図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0013】
本発明の第1の実施形態について説明する。
図1は、列車在線情報表示装置10の機器構成を示している。この列車在線情報表示装置10は、例えば線路の工事を行う作業員が持つものであり、後に詳述するように列車の接近を知らせるものである。これにより、安全に作業を行うことができると共に、必要最小な時間だけ作業中断すればよいので、中断時間が短くより効率良く作業を行うことが可能となる。
【0014】
そして、GPS測位情報の通信制御や在線情報表示制御、列車の接近アラーム鳴動、TIDの列車番号に対応した窓番号とキロ程情報との紐つけ処理などの各種の処理を行うアプリケーションソフトや、動作ログ情報を格納するためのメモリ11と、センタ側とパケット通信網を介してデータ通信を行うためのパケット通信モデムカード12を、LCDタッチパネル画面41を装備したPDA(携帯情報端末、Personal Digital Assistant)13に装着している。
【0015】
また、列車在線情報受信装置10の位置を測位して位置を特定するためのGPS受信機15(測位手段)と、そのGPS衛星からの電波信号を受信するGPSアンテナ16を装備しており、PDA13とはGPS I/F基板14を介して接続されている。GPS I/F基板14は、GPS受信機16で保持しなければならない衛星軌道情報などのデータをメモリにバックアップするためのバックアップ電池と、列車在線情報表示装置10の主電源となる外部バッテリ17からの入力電圧を変換するための電源変換回路や保護回路、GPS受信機15の通信ラインのレベル変換を行う通信レベル変換回路を装備している。また、これらの機器や基板は、一体型の耐環境筐体内に収納されている。
【0016】
PDA13は、アプリケーションソフトに従って各処理を行うべく、前記中央側においてTIDから取得した情報に基づいて得られ、中央側から送信される列車の位置情報を受信する列車位置情報取得手段18と、前記測位手段により測位された現在位置と前記列車位置情報取得手段とにより得られた列車の位置との距離が所定値以下になった場合に列車の接近を通知する警報を発生する列車接近警報手段19とを備えている。また、前記列車位置情報取得手段18により取得された列車の位置情報を表示する列車位置情報表示手段41を備えている。
【0017】
このように本実施例においては、GPSアンテナ16と、GPSアンテナで受信した信号を解析処理するGPS受信機15と、在線情報を取得するための携帯電話網と通信する通信モデムカード12と、列車の在線状況を表示する液晶表示機41を有するコンピュータ13と、持続的に連続動作させるための電源用バッテリ装置を小形省スペース構造にまとめ、屋外でも使用できるように塵埃や雨天に耐えられる耐環境筐体内に収納した一体型の表示装置10を構築する。なお、バッテリについては、使用中においてもソフトウェアの終了操作などせずに表示装置の機能を継続しながら、単純にバッテリのみ交換できる工夫をしている。また、バッテリに容量は、1本で満充電状態において充分4時間以上持続使用できるものを使用する。したがって、本実施例の列車在線情報表示装置10は、屋外環境にて半日以上の長時間連続で、表示装置10の位置をリアルタイムで測位しながら、列車の在線情報を把握しかつ列車の在線情報を表示することができ、さらに一体型の装置となっていることでコンパクト化が図られている。
【0018】
図2に、列車在線情報表示装置10(26〜28)とセンタ側装置(中央側)30を含めたシステム構成を示す。センタ側装置は後に説明するが、列車の在線情報を列車番号に対応した窓番号で提供をするTID情報21を受信する。このTID(列車運行情報表示装置:Traffic Information Display)とは、列車番号毎の走行位置を列番窓情報として提供する表示専用装置であり、指令所や駅への在線情報画面表示用のデータを提供するものである。この情報は、CTCのような制御情報ではないので、容易に取得することが可能であり、かつ軌道上の全ての列車在線情報が、列車の所属会社に関係なく、漏れなく得られることになる。
【0019】
しかしながら、このTIDの保有する窓情報は上記したCTCの閉塞区間と比べて、非常に粗いものであるため、列車制御に用いることはできない。つまり、単に列車の大まかな位置を把握するために用いられるものであるからこそ容易に取得することができるのであり、本実施例においてはこのTID情報を用いることに着目したのである。なお、TID情報を利用するための考慮事項としては、列車の在線情報は、列車番号窓情報というもので参照されるため、列車位置と窓情報の関連付け、窓情報とキロ程情報の関連付けなどのソフトウェア制御処理を実施して実現する。
【0020】
そしてセンタ側装置は、列車在線情報表示装置の位置座標をキロ程に紐付けて、そのキロ程周辺のTID情報を切り出して列車在線情報表示装置10に配信制御を行うTID在線情報受信・表示管理装置22を配備する。また公衆パケット通信網25との出入り口となるルータ装置24と、公衆パケット網とのセキュリティを考慮してファイアウォール装置23を備える。ルータ装置24と公衆パケット網25の間は専用線29で接続される。公衆パケット通信網25を介して、複数台の列車在線情報表示装置10が接続される構成となる。図面上は、100台の列車在線情報表示装置10が接続される構成としており、1台目の列車在線情報表示装置−1 26、2台目の列車在線情報表示装置−2 27、100台目の列車在線情報表示装置−100 28が接続される構成を示している。
【0021】
図3に、図2で説明したシステム構成でのデータの流れと処理内容を示す。
列車在線情報表示装置−1 26に装備されたGPS受信機15にて、列車在線情報表示装置−1 26の位置を特定する。この時の位置情報は、緯度・経度の絶対座標データである。この列車在線情報表示装置を作業員が持っている場合には、このデータが作業員の位置情報を示すことになる。そして、この絶対座標データを公衆パケット通信網25を介してTID在線情報受信・表示装置管理装置22に伝送する。このデータ伝送ラインは34の矢印ラインに示す。列車在線情報表示装置−1 26の位置情報を絶対座標データで受け取ったTID在線情報受信・表示装置管理装置22では、座標値に対応したキロ程に紐つける処理を行い、そのキロ程周辺の在線情報(窓番号)を切り出して列車在線情報表示装置−1 26に配信制御処理31を行う。この列車在線情報表示装置−1 26のキロ程周辺の在線情報(窓番号)を切り出して列車在線情報字表示装置10に配信するデータ伝送ラインは、35の矢印ラインに示す。列車在線情報表示装置−1 26では、受信した在線情報(窓番号)と列車在線情報表示装置−1 26自身の位置情報(キロ程)に基づいてPDA13のLCDタッチパネル41上に在線情報を表示する処理32を行う。
【0022】
図4に、PDA13の外観とLCDタッチパネル41のイメージを示す。
図5に、列車の在線情報となる窓とキロ程の対応の考え方の概念図を示す。
この概念図は、複線区間においてA駅57、B駅58、C駅59の3つの駅が存在するケースとしている。下り線501、上り線502上には、概念として10m分解能のキロ程情報が割り付けられている。列車在線情報表示装置10の位置情報は、図3で説明したTID在線情報受信・表示装置管理装置22からキロ程情報として列車在線情報表示装置10に配信される。よって、列車在線情報表示装置10では、配信されたキロ程情報が、複数の駅構内を示す窓または複数の駅間を示す窓のどこの窓に割り付けられるかを処理してシステム上把握しておく。例えば、下り線501上の在線列車504の位置は、その在線列車504の列車番号に紐付いたTID窓に対応したキロ程の位置にいるものと紐付ける。同様に、上り線502上の在線列車503の位置は、その在線列車503の列車番号に紐付いたTID窓に対応したキロ程の位置にいるものと紐付ける。
【0023】
ここで、TID窓とそれに対応したキロ程の紐付けルールは以下のとおりとする。例えば、下り在線列車504の場合、列車504の位置を示すTID窓は、B駅58の下り出発信号機52と、C駅59の下り場内信号機53との間の区間を示すTID窓(駅間窓)である。この時のTID窓(駅間窓)の位置は、下り方向側の信号機(下場内)53のキロ程情報をその位置と定義する。同様に、下り在線列車505がB駅58にいる場合、列車505の位置はB駅58の下り場内信号機(下場内)60と下り出発信号機(下出発)52の間の区間を示すTID窓(駅構内)である。この時のTID窓(駅構内)の位置は、B駅の下り出発信号機(下出発)52のキロ程情報をその位置と定義する。上り線502の列車についても下り線501と同様のルールにて、TID窓とそのキロ程を紐付けるものとする。
【0024】
図6に、列車在線情報表示装置10の位置と列車との間のPDA13内で実行される距離算出の概念を示す。これは、列車在線情報表示装置10に対して接近する列車がある場合に、前記列車接近警報手段19での接近アラーム鳴動判定を行う場合に用いる、列車との距離算出方式を示している。図6では、A線区複線区間において区間1〜区間7の7個の在線情報(窓番号)に区分されているものとしている。列車在線情報表示装置10の位置キロ程は区間4における300m地点にあるとする。列車番号1234Mは区間2にあるものと紐付けられているとする。この場合、1234Mは下り線の列車であるため、その進行方向側の窓区切り(区間区切り)のキロ程にいるものとする。即ち、1234Mキロ程位置は、B駅下り場内信号機の位置となる。下り場内信号機の位置は、区間3の0m地点とする。
【0025】
列車番号567Mは区間7にあるものと紐付けられているとする。この場合、567Mは上り線の列車であるため、その進行方向側の窓区切り(区間区切り)のキロ程にいるものとする。即ち、567Mキロ程位置は、D駅上り出発信号機の位置となる。上り出発信号機の位置は、区間7の50m地点とする。これらの前提位置から、列車在線情報表示装置10位置と1234Mおよび567Mとの間の距離算出をすると次の計算式となる。列車在線情報表示装置10位置と1234Mとの間の距離=区間3(500m)+区間4(300m)=800m と算出できる。また、列車在線情報表示装置10位置と567Mとの間の距離=区間4(2700m)+区間5(500m)+区間6(2000m)+区間7(50m)=5250m と算出できる。このようにして算出した列車との距離を鳴動判定距離と比較演算を行い、接近アラーム鳴動の制御を行う。
【0026】
前記列車接近警報手段19での接近アラーム鳴動の制御は次のように行う。この制御は、複線区間と単線区間では異なる制御を行う。基本的には、TID情報の上りと下りの属性情報と列車の在線位置情報(前述の窓区切りのキロ程)、列車在線情報表示装置位置キロ程、接近アラーム鳴動判定距離の4種類の情報から接近アラーム鳴動の制御処理を行う。
【0027】
図7は、複線区間と単線区間での接近アラーム鳴動が継続する範囲を示すものである。即ち、接近アラーム鳴動制御での鳴動させる区間を示すのものである。複線区間については、軌道が上り線、下り線と明確に分かれているため、上り線のみまたは下り線のみの接近アラーム鳴動制御などの指定が可能である。例えば、上り線においては上り線列車にのみ接近アラーム鳴動制御を行う、あるいは、下り線においては下り線列車にのみ接近アラーム制御を行うというように個別の指定が可能である。接近アラーム鳴動の停止は、接近する列車が列車在線情報表示装置の在る窓の区間71を通過したら接近アラーム鳴動は自動停止させる。これは、仮に、列車在線情報表示装置の在る窓の区間71区切り位置が接近アラーム鳴動判定距離範囲内にあっても、列車は通過した同一軌道を逆走してくることは無いことから、接近アラーム鳴動は停止させても問題ないという判断によるものである。複線区間での警報鳴動継続範囲72は列車在線情報表示装置の在る窓の区間71に対して、上り側の範囲のみとなる。これにより、安全性を確保しながらアラーム鳴動時間は短くなるため、より早く作業を再開することができる。
【0028】
一方、単線区間においては、上り下りが同一軌道ということから、上り列車と下り列車の両方が接近するということを考慮に入れる必要がある。また、TID情報の上りと下りの属性情報は不定となる可能性もあることから、単線区間においてこの情報に頼った制御を行うことはできない。このことから本実施例においては、単線区間では、常に上り方向および下り方向の両方向から接近する列車在線位置を確認し、接近アラームを鳴動させる制御を行う。つまり、単線区間での警報鳴動継続範囲73は列車在線情報表示装置の在る窓の区間71に対して、上り下りの両範囲となる。このようにアラーム鳴動時間を調整することにより、単線区間においても安全性の確保を行うこととしている。
【0029】
以上の通り本実施例においては、TID情報の中の、窓情報に紐付いた上り列車、下り列車の属性情報は、不定となる場合もあることから、特に単線区間ではその上り、下りの情報に依存しない列車接近の鳴動判定を行う。つまり、単線区間では、本列車在線表示装置位置に上り方向および下り方向の両方から接近する列車に対しては、この列車在線表示装置位置から一定距離範囲内に接近したことを契機として列車在線表示装置は接近アラームを鳴動させる。
【実施例2】
【0030】
本発明の第2の実施形態について説明する。
【0031】
図8は、列車在線情報表示装置10の列車位置情報表示手段41のGPS測位誤差による表示ばたつきの例を説明するための図である。列車在線情報表示手段41の表示内容は、列車在線情報表示装置10に搭載したGPS受信機15で測位した位置を元に、表示する画面を選択表示している。しかし、そのGPS受信機15で測位した位置情報が、GPS測位誤差によりばらつくことがある。すなわち、GPS測位誤差よるばらつきが、表示画面選択判断しきい値付近で発生した場合は、選択される画面が小刻みに変わってしまい、結果的に表示画面が小刻みに変わってしまう事態が発生する。
【0032】
例えば、表示画面選択判断しきい値付近である駅構内と駅間の境目エリア83において、このばらつきが頻発することが予想される。例としてB駅構内81に列車在線情報表示装置10の位置84が紐付いた場合の表示画面87を示す。この場合は、B駅構内81が中心で表示される。もう一方の例として、B駅−C駅間82に列車在線情報表示装置10の位置86が紐付いた場合の表示画面88を示す。この場合は、B駅−C駅間82が中心で表示される。
【0033】
図9は、列車在線情報表示装置10のGPS測位誤差により表示がばたついている際に任意に表示を固定させる場合の例を示す。列車在線情報表示装置10の位置をGPS受信機による測位情報に基づいて表示する場合は、GPS追従表示と呼ぶこととする。これは、いいかえれば、通常の表示方式である。このGPS追従表示方式での表示例93では、GPSの測位誤差により、実際には「B駅−C駅間」91にいるにも関わらずB駅中心92の表示となっているものとする。GPSの測位誤差の推移によっては、「B駅−C駅間」91とB駅中心92の画面表示がばたばたと切り替わる可能性がある。これは、表示内容を見ている作業者にとっては不便であり不都合な状況であるといえる。
【0034】
そこで本実施例においては、作業者は実際に自身が存在している場所である「B駅−C駅間」91を中心の表示するよう任意に固定できるようにしている。具体的には、「B駅−C駅間」91のエリアをLCDタッチパネル画面上で3s(3秒)間以上長押し操作を行うことで、表示中心位置を登録するメモリ内容をB駅中心92から「B駅−C駅間」91に切り替える処理をPDA13に実装しているアプリケーションソフトにて行う。この画面固定した結果は、画面94に示すとおりである。画面固定した場合の表示方法は、GPS追従表示に対して、画面固定表示と呼ぶものとする。画面固定表示では、画面固定表示になっていることを識別するために、駅名を反転表示するなどして視認できるように工夫している。画面固定表示からGPS追従表示に戻すためには、現在中心位置となっている「B駅−C駅間」91エリアをタッチ操作で3s間以上長押し操作するとGPS追従表示に戻るようにしている。
【0035】
また、画面固定表示をした後に、画面固定表示をしたままの状態で、実際に表示装置を画面固定した場所から移動した別の場所で使用した場合には、画面固定を自動的に解除する処理を実現している。これは、通常表示の区間と画面固定表示の区間において、通常表示の区間の中心位置95または画面固定表示の区間の中心位置96を越えて表示装置が移動したことを表示装置のGPS測位結果から判断した場合に、画面固定表示を自動的に解除してGPS追従表示に自動的に戻す処理を行う。これにより、移動した場所での画面固定解除し忘れによる画面表示の不整合発生を解決する。
【符号の説明】
【0036】
10…列車在線情報表示装置、11…メモリ、12…パケット通信モデムカード、13…PDA、14…GPS I/F基板、15…GPS受信機(測位手段)、16…GPSアンテナ、17…外部バッテリ、18…列車位置情報取得手段、19…列車接近警報手段、30…中央側、41…列車位置情報表示手段、画面固定手段(LCDタッチパネル)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
GPS電波を受信するGPSアンテナと、
該GPSアンテナで受信した信号を処理して現在位置を測位する測位手段と、
中央側においてTIDから取得した情報に基づいて得られた列車の位置情報を受信する列車位置情報取得手段と、
前記測位手段により測位された現在位置と前記列車位置情報取得手段とにより得られた列車の位置との距離が所定値以下になった場合に列車の接近を通知する警報を発生する列車接近警報手段とを備えたことを特徴とする列車在線情報表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の列車在線情報表示装置において、前記列車接近警報手段は、前記TIDの保有する窓情報に基づいて求められる列車の在線情報と、前記測位手段により取得される測位結果が線路上のキロ程に換算されることで求められる現在位置との距離が所定値以下になった場合に列車の接近を通知する警報を発生することを特徴とする列車在線情報表示装置。
【請求項3】
請求項1に記載の列車在線情報表示装置において、単線区間に存在している場合に前記列車接近警報手段により発生される警報の時間は、複線区間に存在している場合に発生される警報の時間よりも長く設定されることを特徴とする列車在線情報表示装置。
【請求項4】
請求項1に記載の列車在線情報表示装置において、単線区間に存在している場合に前記列車接近警報手段により発生される警報は、列車が列車在線情報表示装置を通過後、所定の距離を走行した後に停止することを特徴とする列車在線情報表示装置。
【請求項5】
請求項1〜4の何れかに記載の列車在線情報表示装置において、前記列車位置情報取得手段により取得された列車の位置情報を表示する列車位置情報表示手段を備えたことを特徴とする列車在線情報表示装置。
【請求項6】
請求項5に記載の列車在線情報表示装置において、前記列車位置情報表示手段は、前記列車位置情報取得手段により取得された列車の位置情報に応じて予め定められた画面を選択して表示することを特徴とする列車在線情報表示装置。
【請求項7】
請求項6に記載の列車在線情報表示装置において、前記列車位置情報表示手段により表示される画面を任意に選択できる画面選択手段を備えたことを特徴とする列車在線情報表示装置。
【請求項8】
請求項5〜7の何れかに記載の列車在線情報表示装置において、前記列車位置情報表示手段により表示される画面を固定して表示する画面固定手段を備えたことを特徴とする列車在線情報表示装置。
【請求項9】
請求項8に記載の列車在線情報表示装置において、前記列車位置情報表示手段はタッチパネルにより構成され、前記画面固定手段は該タッチパネルにタッチされることにより表示される画面が固定されることを特徴とする列車在線情報表示装置。
【請求項10】
請求項8又は9に記載の列車在線情報表示装置において、前記画面固定手段により画面が固定された後、所定の距離を移動すると画面の固定が解除されることを特徴とする列車在線情報表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−73579(P2011−73579A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−227245(P2009−227245)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成21年6月1日 株式会社交通新聞社発行の「JR gazette(vol.267)」に発表
【出願人】(502129933)株式会社日立産機システム (1,140)
【出願人】(390021577)東海旅客鉄道株式会社 (413)