説明

別々の2部品にマウントされる空力フェアリング接合部を備える航空機エンジン組立品

本発明は、エンジン及びエンジンマウント構造体(4)、前記エンジンを取り囲み吸気口(32)及びファンカウルを有するナセルを備える航空機エンジン組立品に関し、このエンジン組立品は、ファンカウルを支持し、エンジンマウント構造体又はファンケース及びファンケースに結合される吸気口を備える構成要素に固定して搭載されるクレードル(40)を備える。本発明によると、エンジン組立品はまた、前記クレードル(40)に搭載させる第一搭載手段を備え、そして前記マウント構造体(4)及び前記構成要素の中からその他の部品を搭載させる第二搭載手段も備える空力フェアリング接合部(33)を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して航空機エンジン組立品に関し、該航空機エンジン組立品は、エンジン、エンジンマウント、及びエンジンを取り囲むナセルを備え、ナセルは吸気口及びファンカウルを備え、上述のエンジンマウントは場合によっては可動式ファンカウルを搭載する前空力構造体を含む。
【0002】
またこのタイプのエンジンマウントは、パイロン、又はエンジンマウント構造体に対して「EMS」と呼ばれ、ターボジェットのようなエンジンを、航空機主翼下部、又は上部に取り付けることを可能にし、航空機胴体後部に同エンジンを取り付けることでさえ可能にする。
【背景技術】
【0003】
上述のマウント構造体は、エンジンと航空機主翼との間に連結接触面を形成するように効果的に設計されている。マウント構造体は、関連するエンジンによって生み出された力を機体に伝達することを可能にし、またエンジンと航空機との間に、燃料、電気、液圧、及び空気の供給経路を提供する。
【0004】
負荷の伝達を確実にする為に、マウント構造体は、主要構造体と呼ばれるしばしば「箱」型である剛構造体を備え、例えばこの箱型の剛構造体は、上下部スパーと、横断リブを介して一体結合されるサイドパネルとの組立品によって形成される。
【0005】
また、マウント構造体は、エンジンと剛構造体との間に位置付けられる搭載手段を備え、これら搭載手段は、2ヶ所のエンジン結合部と、エンジンによって生み出された推進力を伝達する推力荷重装置とを全体的に備える。従来技術において、この推力荷重装置は通常、最初にファンケース、又は中間ケースのようなエンジンケースに結合される推力リンクを両側に、そして二番目にセントラルケーシング又は排気ケースに取り付けられるエンジン結合部を後部に備える。
【0006】
また、同様にマウント構造体は別シリーズの結合部を備え、この結合部は剛構造体と航空機主翼との間に位置付けられるマウントシステムを形成し、このシステムは通常、2ヶ所又は3ヶ所の結合部から成る。
【0007】
さらにパイロンは複数の二次構造体を備え、特にこの二次構造体は供給ラインの分離及び支持を確実にし、さらに二次構造体は空力カウルを備え、これら構造体は概してこれら構造体と一体化したパネルやカウルの形状で存在する。当業者に既知とされる方法において、二次構造体は、エンジンによって生み出され、主翼方向へ伝わる力の伝達を確実にするという点で、剛構造体すなわち主要構造体とは異なる。
【0008】
これら二次構造体の中には通常、パイロンから成る剛構造体の前部に位置付けられる前空力構造体が存在し、この前空力構造体は空力カウルのように振舞うだけでなく、異なる供給ライン(空気、電気、液圧、燃料)の架設、分離、及び運搬も可能にする。さらにこの前空力構造体は通常、エンジンに結合されるファンカウルを備え、さらに逆推力カウルは通常、パイロンから成る剛構造体によって担持される。
【0009】
従来技術の解決策において、前空力構造体は通常、空力カウルを有するクレードルクラッドを備え、そしてクレードルクラッドはクレードルに固定して搭載される。それ故、空力カウルパネル又は空力カウル部品と呼ばれるクレードル空力カウルはクレードルを取り囲み、クレードルはファンカウルを構造的に支持するように振舞う。
【0010】
上述のクレードルは通常、好適な搭載手段を使って剛構造体にマウントされる。しかしながら、エンジン組立品が、例えば離陸又は着陸時に直面するような強い応力を受けているときや、強い乱気流の中を飛行しているとき、及びより単純には、エンジントルク、エンジン推力、熱膨張の影響下にあるとき、エンジン構造体に前空力構造体から成るクレードルを固定することは、組立品全体のジオメトリー、より具体的にはナセルのジオメトリーに多くの変化を引き起こす。詳細には、ナセルの吸気口と、パイロンから成る剛構造体に結合されるクレードルに固定して備わるクレードル空力カウルとの間に、エンジン変形に伴う誤差が生じる可能性がある。
【0011】
明白に観察される現象は抗力を引き起こし、抗力は航空機の全体的な性能に対して不利益となる。
【0012】
また類似の現象として、空力カウルに固定して備わるクレードルがもはやパイロンから成る剛構造体に搭載されず、ナセルの吸気口に結合されるエンジンファンケースにのみ搭載されるということも生じている。上述の事例において、ファンケースに結合されるクレードル空力カウルと、具体的にはフィレットフェアリングと呼ばれるパイロンから成るその他空力カウルとの間に、誤差が生じる可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
それゆえ本発明の目的は、従来技術に関連する上述の不利益を打開する航空機エンジン組立品を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
このため本発明の主題は航空機エンジン組立品についてであり、航空機エンジン組立品は、エンジン、エンジンマウント構造体、及びエンジンを取り囲み、吸気口及びファンカウルを含むナセルを備え、組立品はファンカウルが可動式に搭載され、エンジンマウント構造体及び、エンジンファンケースとこのファンケースに取り付けられる吸気口とを備える構成要素の中から1つに固定して搭載されるクレードルを備る。また本発明によると、エンジン組立品は、クレードルに搭載される第一搭載手段を設けられるとともに、エンジンマウント構造体及び上述の構成要素の中から選択される、その他部品に搭載される第二搭載手段も設けられた、空力フェアリング接合部を備える。
【0015】
それゆえ提案された構成とともに、上述の誤差による弊害を抑制することは概して可能であり、なぜなら、組立品に強烈な要求がなされるとき、これからは空力フェアリング接合部における特定の固定が、エンジン変形に対してより良い応答を可能にするからである。これは、従来技術の実施形態において直面していた、抗力損失を限定させることを有益に可能にする。
【0016】
代表的な指摘の通り、もしパイロンから成る前空力構造体の一部を形成するために、クレードルがパイロンから成る剛構造体上に固定して搭載されるのなら、ナセルの吸気口と空力フェアリング接合部との間にある同一平面状の接合部は、空力フェアリング接合部を、エンジンファンケースと、それに固定されるナセル吸気口とを一体化させる構成要素に結合させる第二搭載手段を介して支持することができ、さらに、空力フェアリング接合部とパイロンから成るその他空力カウルとの間にある同一平面状の接合部は、この空力カウルを、好ましくは自身がパイロンから成る剛構造体に固定して結合されるクレードルに結合する第一搭載手段によって明らかに確実にされる。
【0017】
さらなる実例として、それどころかクレードルをファンケース上に固定して搭載するとき、空力フェアリング接合部とパイロンから成るその他空力カウルとの間にある同一平面状の接合部は、空力フェアリング接合部をパイロンに結合させる第二搭載手段を介して支持されることができ、さらに、空力フェアリング接合部とクレードル空力カウルとの間にある同一平面状の接合部は、この空力フェアリング接合部を、自身がエンジンファンケースに固定して結合されるクレードルに結合する第一搭載手段によって明らかに確実にされる。
【0018】
言葉を変えると、全構成における本発明に係る構成は、空力フェアリング接合部は、クレードルがパイロンから成る剛構造体に固定されるときに、その上流に配置される吸気口とクレードル空力カウルとの間、又は、このクレードルがファンケースに固定されるときに、空力フェアリング接合部の上流に配置される同じクレードル空力カウルとパイロンから成るフィレットフェアリングとの間のどちらかで、「往復台」のように振舞うのを可能にし、またこの特異性は、誤差の有効な限定を可能にし、抗力損失と同じ意味である。指摘の通り、上述の第一及び第二搭載手段は全くの特定な配置に過ぎず、これら搭載手段の設計方法に関わらず、この「往復台」現象を成立させることができる。それゆえこの現象は、十分に独立した第一及び第二搭載手段を形成する結合部設計方法となり、本発明の隠れた一般観念は、まずファンカウルから成るクレードルに第一搭載手段によって搭載させ、次に上述構成要素から成るマウント構造体の中の一部品を第二搭載手段によって搭載させる空力カウルを備える事によって効率的に誤差を限定し、これらその他部品は、ファンカウルから成る同じクレードルに固定して搭載される。
【0019】
下記詳述の通り、二つの好適な実施形態が示される。本事例に対して、ファンカウルから成るクレードルは、パイロンに固定して搭載され、後部から前部へ向かって、パイロン、クレードル、空力カウル、及び吸気口を備える構成部品の順で部品が搭載される。別の事例では、クレードルは上述の構成部品に固定して結合され、後部から前部へ向かって、パイロン、空力カウル、クレードル、及び上述の構成部品の順で搭載される。
【0020】
また、空力フェアリング接合部を備える第一及び第二搭載手段が、それぞれこの空力フェアリング接合部の前端及び後端近傍又はその逆に配置されるとき、有益な「往復台」現象はなおさら強められる。
【0021】
本発明に係る上述の第一好適実施形態によると、クレードルはエンジンマウント構造体から成る剛構造体上に固定して搭載され、好ましくは上述の構成要素には固定されず、それからクレードルは、マウント構造体の前空力構造体の一体部品を形成する。また、空力フェアリング接合部を備える第二搭載手段は、吸気口に搭載される。
【0022】
この事例において好ましくは、空力フェアリング接合部は、吸気口とクレードルを取り囲むクレードル空力カウルとの間に空力接合部を据え付ける。より詳細には、空力フェアリング接合部が、吸気口の空力突起とクレードル空力カウルとの間に位置付けられるように、設備が形成される。
【0023】
それでもなお、吸気口が本発明の適用範囲から逸脱しない限り、クレードルを越えて前方に延在する単一空力カウルを形成するように、空力フェアリング接合部がクレードル空力カウルを一体化する構成において、設備を形成する事は明らかに可能である。言葉を変えると、パイロンから成るフィレットフェアリングに関する限りは、この単一空力カウルは吸気口から成る空力突起の後方へ延在する。
【0024】
この第一実施形態において、第二搭載手段は、エンジンから縦方向、横方向、及び垂直方向に掛けられる力を伝達するように設計される結合部を備える。
【0025】
本発明に係る第二好適実施形態によると、クレードルはファンケースに固定してマウントされ、好ましくはマウント構造体には固定されない。さらに、空力フェアリング接合部を備える第二搭載手段は、フィレットフェアリングと呼ばれるパイロンから成るフェアリングに搭載される。
【0026】
この第二好適実施形態において、空力フェアリング接合部は、パイロンから成る上述のフェアリングとクレードルを取り囲むクレードル空力カウルとの間に空力接合部を据え付ける。
【0027】
それでもなお、パイロンから成るフィレットフェアリングが本発明の適用範囲から逸脱しない限り、クレードルを越えて後方に延在する単一空力カウルを形成するように、空力フェアリング接合部がクレードル空力カウルを一体化する構成において、設備を形成する事は明らかに可能である。言葉を変えると、この事例において、パイロンから成るフィレットフェアリングに関する限りは、この単一空力カウルは吸気口の空力突起から縦方向へ延在する。
【0028】
この第二実施形態において、第一搭載手段は、エンジンから縦方向、横方向、及び垂直方向に掛けられる力を伝達するように設計される結合部を備える。
【0029】
このエンジン組立品において、ナセルは従来どおり、ファンカウルを有する同一平面状の吸気口を備え、好ましくは設備が、クレードルがファンカウルに対して構造的に支持する役割を担うように形成され、なぜなら組立品が好ましくは、少なくとも幾つかは同じクレードルに固定させる複数のファンカウルヒンジを備えるからである。
【0030】
また好ましくは、エンジンマウント構造体は、複数のエンジン結合部を備え、エンジン結合部は、最初に剛構造体に固定され、次にエンジンファンケースに固定される前エンジン結合部を含む。
【0031】
最後に、本発明のさらなる主題は、例えば上述されているように主翼又は航空機胴体後部に取り付けられる、少なくとも1つのエンジン組立品を備える航空機についてとなる。
【0032】
本発明に係るその他の利点と特徴が、下記における詳細な説明に限定されないことは明白だろう。
【0033】
図面の説明は、下記参考図と共に行われる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明に係る第一好適実施形態による、航空機エンジン組立品の部分斜視図である。
【図2】図1に記載されるエンジン組立品の部分側面図である。
【図3】図1に記載されるエンジン組立品の詳細な部分斜視図であり、より詳細には、ナセルファンカウルに対するクレードルが図示されている。
【図4】エンジン組立品への搭載手段を有する空力フェアリング接合部の概略斜視図である。
【図5】図1に示されるエンジン組立品の一部を、二つの異なる角度で捉えた、詳細斜視図及び部分分解組立図である。
【図6】図1に示されるエンジン組立品の一部を、二つの異なる角度で捉えた、詳細斜視図及び部分分解組立図である。
【図7】図1と類似した図であり、本発明に係る第二好適実施形態における、エンジン組立品が図示されている。
【図8】図7に示されるエンジン組立品の一部を、二つの異なる角度で捉えた、詳細斜視図及び部分分解組立図である。
【図9】図7に示されるエンジン組立品の一部を、二つの異なる角度で捉えた、詳細斜視図及び部分分解組立図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
まず図1及び2を参照すると、航空機エンジン組立品1が、本航空機主翼(図示されず)下部に装着されることを理解でき、本組立品1は、エンジンマウント構造体4及びエンジン6を備えている。例えばエンジンとは、本マウント構造体4から吊り下げられるターボジェットエンジンや、図1にはフロント部のみが示されるナセル3のことである。
【0036】
下記残りの説明においては、慣例により、Xはマウント構造体4の縦方向を指定するのに使われ、ターボジェットエンジン6の縦方向に相当する。そして、この方向Xは、本ターボジェットエンジン6の縦軸5と平行に配置される。またYはマウント構造体4に対して横方向を指定するのに使われ、ターボジェットエンジン6の横方向に相当し、Zは垂直方向又は高さを指定し、これら3方向X、Y、Zはお互いに直角な配置となる。
【0037】
また、「前部」及び「後部」という術語は、航空機の進行方向に対して用いられ、この進行方向はターボジェットエンジン6によって生み出される推進力の結果生じ、略図が矢印7で図示されている。
【0038】
マウント構造体4は全体的に、エンジン6を搭載する支持手段として、主要構造体と呼ばれる剛構造体8を備え、これら搭載手段は、複数のエンジン結合部10及び12と、エンジン6により生み出される推進力を伝達する推力荷重装置14とを有する。
【0039】
実例として、マウント構造体4は、別シリーズの結合部(図示されず)を備えることが指摘され、この結合部は、剛構造体8に結合させ、そしてエンジン組立品1を航空機の主翼下部にマウントさせることを可能にする。
【0040】
さらにマウント構造体4は、剛構造体8に結合される複数の二次構造体を備える。これら二次構造体は、供給ラインの分離及び支持を確実にし、さらに下記に記載される空力フェアリング部品を備える。
【0041】
ターボジェットエンジン6は前方に、溝付きファンダクト20の境界を定める大型ファンケース18を備え、そして後方には、ターボジェットエンジンのコア部を覆う小型のセントラルケーシング22を備える。ファンケース18及びセントラルケーシング22は、明確にお互いに固定されており、通常、中間ケーシングと呼ばれる接合部を備える。最後に、セントラルケーシング22は排気ケース(図示されず)を通って後方へ延在すると特徴付けられる。
【0042】
図1で明確に理解できるように、マウント構造体4のエンジン結合部10及び12は、合計で2ヶ所になるように設計され、そしてそれぞれ、前エンジン結合部、後エンジン結合部と呼ばれている。前エンジン結合部10は、好ましくは、剛構造体8の前部と、放射端部と呼ばれるファンケース18の上部との間に挿入される。この前エンジン結合部10は当業者に既知とされる従来通りに設計され、例えば、X、Y、Zの3方向に掛けられた力を伝達するように設計されている。
【0043】
また、後エンジン結合部12も、当業者に既知とされる従来通りに設計されており、Y、Z方向に掛けられた力を伝達するように出来るだけ設計されている。そして、剛構造体8のさらに後部とセントラルケーシング22又は排気ケースとの間に挿入される。
【0044】
エンジンによって生み出される推進力を伝達する推力荷重装置14は、エンジン6の片側に各々配置される二つの従来型推力連結器具とすることができ、各推力連結器具の前端部は、ファンケース又は中間ケースの後部に搭載され、後端部は、エンジン結合部12後方又は、その近傍にある剛構造体8に結合される。
【0045】
本発明に係るこの好適な実施形態において、剛構造体8は箱形状であり、実質的にX方向前部から後部へ延在している。
【0046】
図1に最も良く図示されている箱8は、ターボジェットエンジン用パイロンの通常設計法と同じようにして設計されたパイロンの形状をしており、詳細には、箱8はYZ平面に沿って配置される矩形をそれぞれ有する横断リブ9を備える。
【0047】
より具体的な図2を参照すると、パイロン4から成る二次構造体は、前空力構造体24と、後空力構造体26と、前後空力構造体に対するフィレットフェアリング28と、下後部パイロンフェアリング30とを含む。
【0048】
全体的にこれら二次構造体は、従来技術に見受けられ当業者に既知とされる、従来部品と同一又は同類である。より正確には、明瞭にする理由で図1にたった一つ示される前空力構造体24は通常、主翼の前部に位置付けられ、それが装着される主要構造体8に対して僅かに吊り上げられる。前空力構造体24は、ヒンジで動くファンカウル上部と主翼前縁との間で、空力形状機能を有する。この前空力構造体24は、ファンカウル及び空力フェアリングの支持機能を有するだけでなく、供給ライン(空気、電気、液圧、燃料)の架設、分離、及び運搬を可能にする。
【0049】
この構造体24が真っ直ぐ後方へ延在し、剛構造体8の上部にマウントされるのが、「カルマン」フェアリングと呼ばれる、フィレットフェアリング28である。次に、フィレットフェアリング28は後空力構造体26によって、さらに後方に延在させられ、後空力構造体26は、液圧機器の大部分を備える。この構造体26は、好ましくは、剛構造体8に対して完全に後方に配置され、それゆえ、航空機の主翼下部に装着される。
【0050】
最後に、剛構造体8及び後空力構造体26の下部に、下後部パイロンフェアリング30が存在する。その本質的な機能は、エンジン排気管とパイロンとの間に、防火壁と空力的連続形状を形成することである。
【0051】
さらに図1及び2を参照すると、ナセル3の一部がその前端部に、ファンケース18の前部に装着される吸気口32を備えることを理解でき、この吸気口32は二つのファンカウル34(斜視図なので、一つのみが可視化されている)によって直接後方へ延在しており、各ファンカウルは可動式で、上述の二次空力構造体に搭載される。図示されていないが、従来通り設計されたナセル3は、当業者に既知とされるその他部品を後方に備えることは理解され、例えばその他部品とは、剛構造体8に搭載される逆推力カウルなどである。
【0052】
また吸気口32はその上後方に、空力突起31を備え、空力突起31は、パイロンから成る前空力構造体24の連続した前方に配置される。より正確に本図で理解でき、本発明に係る特定の特徴の一つとして下記詳述されるように、吸気口32は突起31と前空力構造体24との間の空力フェアリング接合部33の下に配置してある。上述の接合部品31及び33、24の間に最良の空力的連続性を得ようとしていることは明らかであり、そしてこれら接合部品は、エンジン組立品1の上部で実質的にX方向に延在している。図1で理解できるように、同一平面状の部品33及び24は、それらが位置するファンカウル34上部の範囲に対応する縦方向距離に亘って共に延在する。
【0053】
図3を参照すると具体的に、前空力構造体24に関して詳述されている。
【0054】
前空力構造体24は、本部品の構造的要素を形成するクレードル40を備える。前空力構造体24は、ファンケース18上部に全体的に広がり、当業者に既知とされる従来通りの設計がなされている。すなわち、図3で明白に理解できるように、例えば実質的にX方向に延在するスパー組立品や、実質的に半円筒形状をした下向きの横断アーチで設計されている。同じ図において、パイロン4から成る剛構造体8の前部が、少なくとも最初のアーチを貫通してクレードル内に進入していることが理解できる。また、上述の前エンジン結合部10が剛構造体8の前端部に搭載されるので、この事はこの前エンジン結合部10が、クレードルのアーチによって範囲を定められる内部空間に部分的に配置されることを意味している。
【0055】
剛構造体8にクレードル40を確実に搭載させるため、剛構造体8は前部において片持ち梁とすることができ、後部搭載手段は好ましくは、剛構造体8の片側前部に構成される二つの後半結合部の形で備える。図3で理解できるように、略式図示されるこれら二つの半結合部44a及び44bは好ましくは、前エンジン結合部10に対して後部に位置付けられる。また、これら二つの半結合部は、エンジンの縦軸5を貫通する垂直正中面Pを通って対照的に構成され、この平面Pは航空機の主翼下部に装着されるエンジン組立品に対して全体的に左右対称平面を形成している。実例として、クレードル40がパイロン4とのみ装着され、それ故それから分離するのは不可能であり、そしてファンケース18及びこのファンケースに固定して結合される吸気口32を備えるような、設備が作成される。
【0056】
好ましくはもっぱらクレードル40に装着され組立品の他のどんな要素でもない空力カウル46を備える従来のクラッドである、クレードル40は、複数のヒンジ固定されるファンカウル34を備える。これらヒンジ固定は好ましくは、クレードルの両側スパー及び正中面Pの片側にて構成される。それ故に、これら二つのスパー50各々は、ナセルファンカウル34の一つに結合される複数の固定ヒンジ48を有し、各スパー50に備わるこれら固定ヒンジ48は、ファンカウルへの搭載手段の全て又は一部を形成する。図3に示される実施形態において、スパー50に備わる固定ヒンジ48(ここでは合計3つ記載されている)は、他の3つから連続して前方に位置する4番目の固定ヒンジ(図示されず)と関連がある。二つのファンカウル34の各々にとって明らかに、クレードル40を備える固定ヒンジ48及び前方に位置付けられる固定ヒンジ48は、ファンカウル34の同一ヒンジ軸に沿って構成されるように設計されている。
【0057】
図4を参照すると、空力フェアリング接合部33が、その後端部でクレードル40に、そして前端部で吸気口32に、より正確には突起31に結合されることを理解できる。
【0058】
このため、フェアリング33は第一搭載手段52又はクレードル40の前端部と連携する後方搭載手段、及び第二搭載手段54又は吸気口32と連携する前方搭載手段で装着される。
【0059】
より正確に、第一搭載手段52は、YZ方向に掛かるがX方向には掛からない力を伝達するよう設計される結合部56を基本的に備え、図4において矢印により略図記載される。第一搭載手段52は、フェアリング33の後端上中点に配置され、それ故、上述の平面Pと交差している。またその手段52は、「アジャスタブル」と呼ばれる二つの付加的な半結合部58a及び58bを備えても良く、各々の半結合部はZ方向に掛かる力の伝達のみを担うことができる。また、これら二つの半結合部58a及び58bは、エンジンの縦軸5を貫通した垂直正中面Pに対して対称に構成され、それぞれフェアリング33後端部の両側端に備わる。
【0060】
また第二搭載手段54は、XYZ方向に掛かる力を伝達するように設計された結合部60を基本的に備え、図4において矢印により略図記載される。第二搭載手段54は、フェアリング33の前端上中点に配置され、それ故、上述の平面Pと交差している。また、その手段54は、一方が固定されもう一方が「アジャスタブル」と呼ばれる、二つの付加的な半結合部62a及び62bを備えても良く、各々の半結合部は、Z方向に掛かる力の伝達のみを担うことができる。また、これら二つの半結合部62a及び62bは、エンジンの縦軸5を貫通した垂直正中面Pに対して対称に構成され、それぞれフェアリング33前端部の両側端に備わる。
【0061】
それゆえ、搭載手段52及び54は、3つがアジャスタブルである4種類の垂直結合部58a、58b、62a、62bを備え、フェアリング33をエンジン組立品1の上に容易に搭載させる。
【0062】
図5及び図6は、上述の結合部に関する代表的な実施形態を異なる角度で図示している。例えば、結合部56はフェアリング33の後端からさらに後部X方向へ延在し、クレードル40の最前部に位置するアーチによって備わるブラケット66を貫通する、ピン64の形状とすることができる。二つの半結合部58a及び58bは、フェアリング33の後端部に下向きに面する垂直取り付け部68a及び68bと、クレードル40の最前部に位置するアーチの両側端に上向きに面し、それぞれが取り付け部68a及び68bと面して配置される垂直取り付け部70a及び70bとを備えることで成り立っている。ボルトタイプによる組立手段が、二つずつの取り付け部を固定するように用意されるのは明白である。
【0063】
また、結合部60は突起31と接近して、フェアリング33の前端部からXZ平面に沿って下向きに延在し、吸気口32の後端部に備わるU字金具74の二つの先端の間に収容されるブラケット72の形状とすることができる。ピン(図示されず)結合は、U字金具74の二つの先端とブラケット72との間をX方向に貫通する。
【0064】
二つの半結合部62a及び62bは、フェアリング33の前端部に下向きに配置される垂直取り付け部76a及び76bと、吸気口32の後端部に、より詳細には突起31の底部に、上向きに配置される垂直取り付け部78a及び78bとを備えることで成り立っている。これら垂直取り付け部78a及び78bは、それぞれ取り付け部76a及び76bに面して位置付けられ、そしてボルトタイプによる組立手段が二つずつの取り付け部を固定するように用意されるのは明白である。
【0065】
それゆえ上述の結合部は、空力フェアリング連結部33が、吸気口32の空力突起31とクレードル空力カウリング46との間で、「往復台」として振舞うのを可能にし、それゆえ、これらの部品間での過大な誤差が生じるのを回避する。実例として、このフェアリング33は空力機能のみを有し、このことはこの種の適用に関し当業者に既知とされるパネル又は類似物から製造され得ることを意味する。それにも関わらず、上述の結合部に対して支持する目的だけで補強材が取り付けられても良い。上述の事例において、フェアリング33が補強材と一体化する点において、その補強材の役割は、例えばファンカウル34を備える近接したクレードル40によって交わるように、構造的な機能を請け負うものではなく、パネルとこれら補強材とは、任意に一体成型で製造され得る。
【0066】
図7において、本発明に係る第二実施形態による、エンジン組立品の一部を参照することができ、この実施形態は、ファンカウルを支持するクレードルがもはやパイロンに固定して搭載されず、上述の構成要素、より詳細にはファンケースに搭載されるという点で基本的に第一実施形態と異なる。
【0067】
この事例において、ファンカウルを備える前空力構造体に対してパイロンを搭載することがもはや好適な設備ではなく、同じ参照番号24として図1で理解できるように、この構造体又は類似の空力構造体は、吸気口32から成る突起31の後方へ延在して配置される。
【0068】
全体的にこの構造体24は、ファンケースに固定して結合されるクレードル40と、突起31の空力的連続後方に位置し、クレードルを取り囲むクレードル空力カウル46とを有効に備える。
【0069】
この第二実施形態の具体的な特徴の1つは、空力構造体24とパイロン4、より正確にはフィレットフェアリング28との間に、空力フェアリング接合部33が位置することである。上述の接合部品24及び33、28の間における最良の空力的連続性を得ようとしていることは明らかであり、そしてこれら接合部品は、エンジン組立品1の上部で実質的にX方向に延在している。図7で理解できるように、同一平面状の部品24及び33は、それらが位置するファンカウル34上部の範囲に対応する縦方向距離に亘って共に延在する。
【0070】
第一実施形態におけるクレードルカウル46とフィレットフェアリング28との間の同一平面状の接合部と同じように、第二実施形態における突起31とカウル46との間の同一平面状の接合部は、これら二つの部品がエンジンファンケースに固定されるので、全く制約を伴わない。
【0071】
空力フェアリング接合部33は、好ましくは、図4にて参照される前上述の一組と同じように設計される。さらに、類似の搭載手段で取り付けられることができ、後方手段52はフェアリング28に連結する第二搭載手段を形成し、前部手段54はクレードル40に連結する第一搭載手段を形成する。
【0072】
図8及び図9は、搭載手段52及び54を形成する異なる結合部に対する代表的な実施形態を図示している。それゆえ、結合部56は、フェアリング33の後端からさらにX方向後端へ延在し、フィレットフェアリング28の最前部に位置するアーチによって備わるブラケット82を貫通するピン80の形状とすることができる。二つの半結合部58a及び58bは、フェアリング33の後端に下向きに面した垂直取り付け面84a及び84bと、フィレットフェアリング28最前部に位置するアーチの両端に上向きに面し、それぞれが取り付け面84a及び84bに面して位置付けられる取り付け面86a及び86bとを備えることで成り立っている。ボルトタイプによる組立手段が、二つずつの取り付け部を固定するように用意されるのは明白である。
【0073】
また結合部60は、フェアリング33の前端部からXZ平面に沿って下向きに延在し、クレードル40と一体化する空力構造体24の後端部に備わるU字金具90の二つの先端の間に収容されるブラケット88の形状とすることができる。ピン(図示されず)結合は、U字金具90の二つの先端とブラケット88とをX方向に貫通する。
【0074】
二つの半結合部62a及び62bは、フェアリング33の前端部に下向きに配置される垂直取り付け部92a及び92bと、クレードル40と一体化する空力構造体24後端部に上向きに配置される垂直取り付け部94a及び94bとを備えることで成り立っている。これら垂直取り付け部94a及び94bが、それぞれ取り付け部92a及び92bに面して位置付けられ、そしてボルトタイプによる組立手段が二つずつの取り付け部を固定するように用意されるのは明白である。
【0075】
それゆえ上述の結合部は、空力フェアリング連結部33が、クレードル空力カウル46とフィレットフェアリング28の前部との間で、「往復台」として振舞うのを可能にし、これらの部品間での過大な誤差が生じるのを回避する。
【0076】
ここに記載の実施形態のみに限定されないので、本発明に係る当業者は、明白に様々な修正をおこなうことができる。この点において、エンジン組立品1は主翼下部に搭載するように適合される構成として記載されているが、このエンジン組立品1は同主翼上部又は本航空機胴体後部に搭載するような異なる構成を有することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン(6)と、
エンジンマウント構造体(4)と、
前記エンジン(6)を取り囲み、吸気口(32)及びファンカウル(34)を備えるナセル(3)と、を備える航空機エンジン組立品(1)であって、
前記組立品は、前記ファンカウルが可動式に搭載され、前記エンジンマウント構造体(4)及び、前記エンジン(6)に対するファンケース(18)と前記ファンケース(18)に取り付けられる前記吸気口(32)とを備える構成要素の中から選択された部品の1つに固定して搭載されるクレードル(40)を備える航空機エンジン組立品(1)において、
前記エンジン組立品(1)が、前記クレードル(40)に搭載される第一搭載手段(52,54)を設けられるとともに、また前記エンジンマウント構造体(4)及び前記構成要素の中から、その他部品に搭載される第二搭載手段(54,52)も設けられた、空力フェアリング接合部(33)を有することを特徴とする航空機エンジン組立品(1)。
【請求項2】
前記空力フェアリング接合部(33)を備える前記第一及び第二搭載手段(52、54)が、それぞれこの空力フェアリング接合部の前端及び後端近傍又はその逆に配置されることを特徴とする、請求項1に記載のエンジン組立品(1)。
【請求項3】
前記クレードル(40)が前記エンジンマウント構造体(4)の剛構造体(8)に固定して搭載され、前記クレードルが前記エンジンマウント構造体(4)の前空力構造体(24)の一体部品を形成し、前記空力フェアリング接合部を備える前記第二搭載手段(54)が前記吸気口(32)に搭載されることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載のエンジン組立品(1)。
【請求項4】
前記空力フェアリング接合部(33)が、前記吸気口(32)と前記クレードル(40)を取り囲むクレードル空力カウル(46)との間に空力接合部を据え付けることを特徴とする、請求項3に記載のエンジン組立品(1)。
【請求項5】
前記空力フェアリング(33)が、前記吸気口(32)と前記クレードル空力カウル(46)との間に位置付けられることを特徴とする、請求項4に記載のエンジン組立品(1)。
【請求項6】
前記第二搭載手段(54)が、前記エンジン(6)から縦方向(X)及び横方向(Y)、垂直方向(Z)にかけられた負荷を伝達するように設計された結合部(60)を備えることを特徴とする、請求項3〜5のいずれかに記載のエンジン組立品(1)。
【請求項7】
前記クレードル(40)が前記ファンケース(18)に固定して搭載され、前記空力フェアリング接合部(33)を備える前記第二搭載手段(52)が前記パイロン(4)から成るフィレットフェアリング(28)に搭載されることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載のエンジン組立品(1)。
【請求項8】
前記空力フェアリング接合部(33)が、前記フェアリング(28)と前記クレードル(40)を取り囲むクレードル空力カウル(46)との間に、空力接合部を据え付けることを特徴とする、請求項7に記載のエンジン組立品(1)。
【請求項9】
前記第一搭載手段(52)が、前記エンジン(6)から縦方向(X)及び横方向(Y)、垂直方向(Z)にかけられた負荷を伝達するように設計された結合部(60)を備えることを特徴とする、請求項7又は請求項8に記載のエンジン組立品(1)。
【請求項10】
主翼又は、航空機胴体後部に取り付けられる、請求項1〜9のいずれかに記載のエンジン組立品(1)を少なくとも1つ備える航空機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2009−542518(P2009−542518A)
【公表日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−518875(P2009−518875)
【出願日】平成19年7月10日(2007.7.10)
【国際出願番号】PCT/EP2007/057022
【国際公開番号】WO2008/006826
【国際公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願人】(501446228)エアバス・フランス (93)