説明

制御棒操作監視装置

【課題】試験を行う際の安全性を高めることが可能となり、加えて使い勝手が改善された制御棒操作監視装置(ロッドワースミニマイザ)を提供する。
【解決手段】本発明にかかる制御棒操作監視装置210の代表的な構成は、制御棒130の選択情報および引抜または挿入の操作の組み合わせからなるシーケンスを予め入力するためのシーケンス入力部310と、シーケンスに基づいて次の操作を表示する表示部230と、任意の制御棒130を選択するための選択入力部222と、選択された制御棒130に対して引抜または挿入を操作するための操作入力部226と、シーケンスと異なる操作をした場合に制御棒130の動作を阻止する操作監視部300と、を備えた制御棒操作監視装置210において、シーケンス入力部310は、試験モードとして、引抜と挿入が混在したシーケンスを入力可能であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御棒の操作手順を監視し、あらかじめ入力されたシーケンスと異なる場合に警告もしくは動作阻止を行う制御棒操作監視装置(ロッドワースミニマイザ:RWM:Rod Worth Minimizer)に関する。
【背景技術】
【0002】
沸騰水型原子炉(BWR:Boiling Water Reactor)や改良型沸騰水型原子炉(ABWR:Advanced Boiling Water Reactor)などの原子炉においては、ウラン等からなる燃料が収容された燃料集合体の間に制御棒を挿抜して、反応度を調整している。原子炉を停止する際には、制御棒を全挿入して核分裂を未臨界状態に維持する。原子炉を稼働させる際には、制御棒を引抜操作するとともに、軽水の流量によって出力調整を行う。
【0003】
制御棒の操作は、手順書に従い、複数人の運転員によって指差呼称、復唱、確認などを行いながら行う。手順書は、制御棒を引抜または挿入した場合の反応度を計算して、予め作成される。反応度は原子炉内の燃料の配置、濃縮度、燃焼度等考慮して計算される。このように制御棒の操作は慎重に行われるものであるが、さらに安全を期して、通常はロッドワースミニマイザ(制御棒価値ミニマイザ)と呼ばれる制御棒操作監視装置を使用して操作を行う。
【0004】
ロッドワースミニマイザとは、制御棒の反応度価値が規定以下となるようにするため、あらかじめ制御棒の操作手順をシーケンスとして入力しておき、実際の制御棒の操作手順を監視し、制御棒パターンが所定の許容範囲を外れると引抜阻止や挿入阻止を行うものである。制御棒の位置は、例えば00pos−48posの位置を取り、1ノッチ移動させるごとに2posずつ移動する。したがってシーケンスとしては、制御棒の選択情報(XY座標)および引抜または挿入の操作(挿入位置と引抜位置)の組み合わせから構成される。
【0005】
特許文献1には、CRTディスプレイに次の操作をガイダンスするようにしたロッドワースミニマイザ(原子炉制御装置)が記載されている。特許文献2には、制御棒を複数のグループに分け、グループごとに引抜ルールを設定し、反応度の大きい制御棒が局所に集中しないようにしたロッドワースミニマイザ(制御棒引抜監視装置)が記載されている。なお特許文献2では、さらに複数本の制御棒について同時に引抜操作を行った場合でも反応度の上昇を小さくする構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭49−089094号公報
【特許文献2】特開平11−295463号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のような原子炉(原子力発電プラント)では、安全に運用を行うために、所定の期間ごとに定期点検が義務付けられている。点検の際には、サイクル運転中にはできない様々な検査、試験が行われる。そのような試験の中でもあらかじめ制御棒の反応度を計算して制御棒の操作を行うものとして、原子炉停止余裕検査と、冷温臨界試験がある。
【0008】
原子炉停止余裕検査は、燃料取替後の原子炉で実際に制御棒を引き抜き、次の定期点検までのサイクル運転中に最大価値を有する制御棒1本が挿入されなかった場合(全引抜を想定)でも、原子炉を臨界未満にできることを確認する検査である。具体的には、燃料取替が終了した後、全制御棒が全挿入の状態から最大価値を有する制御棒1本を全引き抜き状態とし、サイクル運転中の反応度変化、検査時の原子炉水温度、解析誤差等の補正のために必要な反応度を加えるため、隣接制御棒1本を必要な位置まで引き抜き、臨界未満であることを確認する。
【0009】
冷温臨界試験は、原子炉の燃料配置の決定、運転計画等の管理をしている計算機とプラントの実機(計算機)との計算誤差を把握するため、サイクル初期およびサイクル末期等のプラント停止中に、制御棒を複数本引き抜いて、原子炉を短時間局所的に臨界にする試験である。
【0010】
上記のような試験においても、誤った制御棒操作を行うと意図しない反応度の投入を招いてしまうことから、ロッドワースミニマイザを使用することが望ましい。しかし通常ロッドワースミニマイザが監視すべき制御棒の操作は、原子炉起動時または停止時に全制御棒について一斉に引き抜くか、一斉に挿入するかのいずれかである。そのため、上記のような試験に使用するためには必ずしも適していない。
【0011】
詳細には、原子炉停止余裕検査については、従来から「停止余裕テストシーケンス」が備えられていた。従来の停止余裕テストシーケンスは、任意の2本の制御棒を引き抜くことを許容し、3本目の制御棒を1ノッチ引き抜いたところで引抜阻止がかかるものであった。
【0012】
しかし、2本の制御棒の位置についての指定がないため、対象でない制御棒でも2本以内であれば引き抜くことが可能な状態にあった。また指定がない(シーケンスが入力されていない)ことから、次に操作すべき制御棒のガイド表示は存在しなかった。また、従来のロッドワースミニマイザでは、誤った制御棒を1ノッチ引き抜いたところで、引抜阻止がかかるように構成されている。このため、仮に3本目の制御棒を誤って選択し、引抜操作を行うと、1ノッチは引き抜けてしまう状態にあった。
【0013】
冷温臨界試験については、従来のロッドワースミニマイザには、専用のモードは存在しなかった。ここでロッドワースミニマイザの基本機能を利用して冷温臨界試験を監視しようとしたとき、1つのグループに引き抜く制御棒の全数を入力することになる(対象となる各制御棒について00pos−48posとする)。基本機能では、同一グループ(制御棒複数本を配置によりまとめたグループ)内の制御棒は任意の順序で操作することが許容されており、順序が異なっていても「選択エラー」や「引抜阻止機能」は働かない。この基本機能は、原子炉の起動時においては、あらかじめ同一グループ内で順番を誤った場合でも適切な反応度価値となるよう評価されているため問題はないが、冷温臨界試験では順番を誤った場合は、想定外の反応度を投入する可能性があるため、好ましくない。
【0014】
仮に「選択エラー」及び「引抜阻止機能」が働くようにしようとすると、シーケンス入力を1グループ1本として入力する必要があるが、この場合においても、現状のロッドワースミニマイザでは、誤った制御棒2本目について、引き抜きを許容する。
【0015】
冷温臨界試験においては、制御棒の1ノッチ引き抜き時(例えば02pos→04pos)の反応度投入量が制限されており、これを超える場合は、この1ノッチ引き抜き前に分散操作が行われる。分散操作とは、反応度価値の大きい制御棒を引抜操作する前に、他の制御棒を引き抜いて小さい価値を印加して確認した上で、問題がなければ当該他の制御棒を挿入した後に、反応度価値の大きい制御棒を引き抜く操作である。したがって1グループ1本としてシーケンスを入力すると、操作対象となる制御棒(反応度価値の大きい制御棒)と異なる制御棒(反応度価値の小さい制御棒)を操作することになるため、この分散操作を行っている間は、分散操作前の制御棒が挿入エラーとして表示される。
【0016】
また、分散操作では、引抜操作と挿入操作が両方行われることになる。しかしロッドワースミニマイザの基本機能としては、複数グループからなる一連のシーケンスは引抜モードまたは挿入モードとして一括されており、従来のロッドワースミニマイザで冷温臨界試験を実施する場合は1つのグループに引き抜く制御棒の全数を入力せざるを得ない。しかし、引抜操作の中に挿入操作は入力できない(逆も同様である)ため、分散操作を実施している間はシーケンスと異なる操作になってしまい、阻止はかからないものの、ガイド表示が消灯してしまう。
【0017】
そこで本発明は、試験を行う際の安全性を高めることが可能となり、加えて使い勝手が改善された制御棒操作監視装置(ロッドワースミニマイザ)を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決するために、本発明にかかる制御棒操作監視装置の代表的な構成は、制御棒の選択情報および引抜または挿入の操作の組み合わせからなるシーケンスを予め入力するためのシーケンス入力部と、シーケンスに基づいて次の操作を表示する表示部と、任意の制御棒を選択するための選択入力部と、選択された制御棒に対して引抜または挿入を操作するための操作入力部と、シーケンスと異なる操作をした場合に制御棒の動作を阻止する操作監視部と、を備えた制御棒操作監視装置において、シーケンス入力部は、試験モードとして、引抜と挿入が混在したシーケンスを入力可能であることを特徴とする。
【0019】
上記構成によれば、分散操作をもシーケンスとして入力することが可能となる。すなわち、あらかじめ入力されたシーケンスに沿った制御棒操作(分散操作を含む)を行っている場合は、制御棒を挿抜する際に選択エラーが発生することがなく、またいずれの方向に操作しても阻止がかかることがない。また、分散操作中にもガイド表示を継続して行うことが可能となる。
【0020】
また本発明にかかる制御棒操作監視装置の他の代表的な構成は、制御棒の選択情報および引抜または挿入の操作の組み合わせからなるシーケンスを予め入力するためのシーケンス入力部と、シーケンスに基づいて次の操作を表示する表示部と、任意の制御棒を選択するための選択入力部と、選択された制御棒に対して引抜または挿入を操作するための操作入力部と、シーケンスと異なる操作をした場合に制御棒の動作を阻止する操作監視部と、を備えた制御棒操作監視装置において、操作監視部は、選択入力部から制御棒が選択された段階で、選択がシーケンスと異なっている場合にはその制御棒の動作を阻止することを特徴とする。
【0021】
上記構成によれば、1ノッチの引き抜きを待つまでもなく、選択した段階で選択エラーを生じさせて、その制御棒の動作を阻止することができる。したがって、万が一にも予定外の制御棒をたとえ1ノッチであっても引き抜くおそれがなくなり、さらに安全を期することができる。
【0022】
上記制御棒操作監視装置において、シーケンス入力部は、2本以上の制御棒についてシーケンスを入力可能であって、操作監視部は、選択される制御棒の順序を1本単位で判断してもよい。具体的には、1グループにつき1本の制御棒を登録してもよいし、グループ管理を行わないようにしてもよい。
【0023】
これにより、操作する制御棒の順序もロッドワースミニマイザによって管理されることになる。したがって誤った順序で制御棒を引抜または挿入してしまうおそれがなくなり、さらに安全かつ確実に試験を行うことが可能となる。
【0024】
上記制御棒操作監視装置において、試験モードとは原子炉停止余裕検査または冷温臨界試験を行うためのモードとして使用することができる。
【0025】
原子炉において定期点検の際に行うこれらの検査、試験は特に慎重な制御棒の操作を伴うものである。また、少数の制御棒の挿抜によって原子炉の試験を行うものであって、制御棒の操作の順序も重要な事項である。したがって、ロッドワースミニマイザに本発明を適用することによって、これらの試験をより安全かつ確実に行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、制御棒操作監視装置(ロッドワースミニマイザ)の試験を行う際の安全性を高めることが可能となり、加えて使い勝手が改善される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本実施形態にかかる制御棒操作監視装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】表示部について説明する図である。
【図3】操作部について説明する図である。
【図4】分散操作のシーケンスを例に用いて説明する図である。
【図5】選択エラーの判定ロジックを説明する図である。
【図6】制御棒操作監視装置の動作を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0029】
図1は本実施形態にかかる制御棒操作監視装置の概略構成を示すブロック図である。原子炉圧力容器110には燃料集合体120が装荷され、その隙間を制御棒130が上下方向に挿入または引抜されることによって反応度が調整される。例えば110万kw級の原子炉では180個程度のセルごとに4つの燃料集合体120が装荷され、その中央に十字型をした1つの制御棒130が設置される。制御棒130は制御棒駆動系140によって水圧で駆動される。制御棒130は、その下端に設けられたカップリングソケットによって制御棒駆動系140のシャフトと嵌合している。制御棒130の駆動は制御棒駆動系140の内部に等間隔に設けられたノッチ(切り込み)単位で行われる。
【0030】
制御棒130の位置は、制御棒駆動系140内に設けられたセンサよって検知される。また、制御棒130の位置はノッチ間隔の倍の刻みで検知される。一例として、全挿入を00pos、全引抜を48posとする。
【0031】
また制御棒駆動系140は、全引抜(48pos)の状態から、さらに1ノッチ分の引抜動作を行うことにより、カップリングチェックができるようになっている。カップリングチェックとは、引抜動作を行って、引き抜けてしまったら制御棒駆動系140のシャフトとカップリングが外れている、引き抜けなかったらカップリングが外れていないと判断する確認操作である。ここで、カップリングが外れている場合は、当該制御棒駆動系140に属する制御棒の現在位置が不明となる。仮に引き抜き途中でカップリングが外れ、制御棒130が何らの原因により中間位置(一例として02pos)で止まっており、当該制御棒駆動系140が全引抜後に制御棒130が2posより48posまで自重にて落下してきた場合は、原子炉へ急激な反応度が加えられることとなる。よって、カップリングチェックは重要な確認操作である。
【0032】
制御部200は、次に述べる制御棒操作監視装置210の操作部220からの信号を受けて、制御棒駆動系140に対して挿入または引抜情報を送信する。また後述する操作監視部300は、制御部200に対して引抜阻止または挿入阻止の信号を発信する。
【0033】
制御棒操作監視装置210は、運転員からの操作を受け取る操作部220、表示部230を備えている。操作部220は、任意の制御棒130を選択するための選択入力部222と、選択された制御棒130に対して引抜または挿入を操作するための操作入力部226とを含んでいる。
【0034】
図2は表示部230について説明する図である。表示部230には、制御棒130の位置を表すx座標およびy座標と、制御棒130の位置に応じたマトリクスとが表示され、マトリクスの各マス目には、それぞれの制御棒130の現在の位置(挿入高さ)を示す数値が表示される。また表示部230には、現在選択されている制御棒130とその位置を表示する操作表示領域230aが設けられている。
【0035】
図3は、操作部220について説明する図である。選択入力部222は、制御棒130の位置を表すx座標およびy座標と、制御棒130の位置に応じたマトリクス状に配列された複数のスイッチとなっており、押下することにより制御棒130が選択される。
【0036】
操作入力部226としては、挿入スイッチ226aと、引抜スイッチ226bと、連続引抜スイッチ226cが表示部230の近傍に配置されている。挿入スイッチ226aを押下すると、選択された制御棒130が挿入される。なお挿入スイッチ226aを長押しすると、制御棒130は連続的に挿入方向に移動する。引抜スイッチ226bと連続引抜スイッチ226cは表示部230を挟んで両側に配置されている。引抜スイッチ226bは押下すると制御棒130は引き抜かれるが、短時間押下されても、長時間押下されても2posのみが引き抜かれる。なお、引抜スイッチ226bと連続引抜スイッチ226cの両方のスイッチを同時に押すことによって連続的に制御棒130の引抜操作が行われる。
【0037】
また図1に示すように、制御棒操作監視装置210は、シーケンスと異なる操作をした場合に制御棒駆動系140の動作を阻止する操作監視部300を備えている。操作監視部300には、シーケンス入力部310からシーケンスが予め入力される。シーケンスとは、制御棒の選択情報(座標情報)および引抜または挿入の操作(挿入位置と引抜位置)の組み合わせからなり、操作が予定される順に複数の制御棒130について設定される操作手順情報である。シーケンスは、あらかじめ制御棒130の反応度価値を考慮して作成された操作手順書(運転員が使用するもの)と同じ手順をシーケンス入力部310から入力し、記憶部320に記憶され、操作監視部300が適宜参照する。
【0038】
操作監視部300は、運転員が制御棒130を操作する際に、その進捗に合わせて表示部230のガイド表示領域230b(図2参照)に、次に操作すべき制御棒130と、その操作について表示する。また操作監視部300は、制御部200からの選択情報および位置情報(pos)を受け取り、記憶部320から読み出したシーケンスと比較して、シーケンスと異なっていた場合には制御棒駆動系140に対して引抜阻止または挿入阻止の信号を発信する。
【0039】
ここで本実施形態の第1の特徴的な点として、シーケンス入力部310には、試験モードとして、引抜と挿入が混在したシーケンスを入力可能である。
【0040】
図4は分散操作のシーケンスを例に用いて説明する図である。ここでは、14−43引き抜き時に、18−39を用いて分散操作する場合について説明する(図2にハッチングにて示す)。図4に示すシーケンスにおいて、まず14−43が12posの位置まで引き抜かれていたとする(STEP02)。次に、14−43の制御棒130が12posから14pos(1ノッチ)引き抜き時の反応度投入量が制限と比較して大きい場合において、先にこれよりも反応度価値の小さい18−39を全挿入(00pos)から2posまで操作する(STEP03)。ここで過度に反応度が投入されてしまうような事態がなければ、18−39の制御棒130を(2pos)から全挿入(00pos)まで挿入し(STEP04)、ここで初めて14−43の制御棒130を12posから14posまで引き抜く(STEP05)。
【0041】
上記分散操作を行うことにより、例えばSTEP05を行う前に、STEP03を実施した場合に、反応度投入量(厳密には臨界からの超過反応度投入量)が試験要求上,適切に確保された場合には、そのSTEP05を実行しないことができ、過度な反応度投入を避けることができる。このように、実際の炉心において反応度の変化を確かめながら試験を行うことにより、より安全に試験を行うことができる。
【0042】
なお繰り返しになるが、上記のような分散操作自体は従来から行われていた操作である。本実施形態の特徴的な点は、図4に示すようなシーケンスをシーケンス入力部310から入力することを許容した点である。従来のロッドワースミニマイザの基本機能、すなわち通常モードでは、複数グループからなる一連のシーケンスは引抜モードまたは挿入モードとして一括されており、いずれか一方向の操作しか許容されない。これに対して本実施形態では、試験モードとして、引抜と挿入が混在したシーケンスを入力可能にしたことにより、分散操作をもシーケンスとして入力することが可能となる。なお、グループの概念と動作については特許文献2(特開平11−295463号公報)に詳しく記載されているため、ここでは説明を省略する。
【0043】
すなわち上記構成によれば、分散操作のためのシーケンスが全て入力されているのであるから、分散操作がシーケンスに則った正規の操作となる。したがって制御棒130を挿抜する際に選択エラーが発生することがない。また、分散操作中にも通常のロジックに従ってガイド表示を継続して行うことが可能となる。
【0044】
次に本実施形態の第2の特徴的な点として、操作監視部300は、選択入力部222から制御棒130が選択された段階で、選択がシーケンスと異なっている場合にはその制御棒130の動作を阻止する。
【0045】
図5は選択エラーの判定ロジックを説明する図である。まず図5(b)に示すように、従来の停止余裕テストシーケンスモードでは、停止余裕テスト中であって、引抜阻止が既にかかっていて、かつ引抜エラー以外の制御棒を選択した場合にのみ選択エラーが発生していた。
【0046】
なお通常モードでは、誤った制御棒130を操作した場合であっても、1ノッチ引き抜くまでは引抜阻止がかからない。上記したカップリングチェックを行うためには、1ノッチの引抜を許容していることが簡便である。原子炉停止余裕検査や冷温臨界試験モードなどの試験を行うときにおいてもカップリングチェックを実施するため、カップリングチェック時については1ノッチの引抜を許容する必要がある。
【0047】
本実施形態では、図5(a)に示すように、1ノッチの引抜(引抜エラーの発生)を待つまでもなく、誤った制御棒130を選択した段階で選択エラーを生じさせて、その制御棒130の動作を阻止する。これにより、万が一にも予定外の制御棒130を、たとえ1ノッチであっても引き抜くおそれがなくなり、さらに安全を期することができる。
【0048】
なお、引抜は阻止すべきであるが、挿入に関してはエラーを出すのみにして、操作は可能としてもよい。原子炉は全ての制御棒130を挿入することにより、原子炉の反応をとめることができるため、安全上はシーケンスで予期しない事態の発生により挿入したい場合も想定する必要がある。よって、安全側の操作については操作監視部300のラッチを解除するまでもなく実行可能とすることにより、さらに高い安全性を確保することができる。
【0049】
また、本実施形態の第3の特徴的な点として、操作監視部300は、試験モードにおいては選択される制御棒130の順序を1本単位で判断する。通常モードでは、制御棒130をグループごとに分けて管理するとき、同一グループ内の制御棒は任意の順序で操作することが許容されているため、誤った順序でも操作することが可能である。しかし、上記のように選択される制御棒130の順序を1本単位で判断することにより、操作する制御棒130の順序もロッドワースミニマイザによって管理されることになる。したがって誤った順序で制御棒130を引抜または挿入してしまうおそれがなくなり、さらに安全かつ確実に試験を行うことが可能となる。
【0050】
具体的には、シーケンス入力部310に2本以上の制御棒130についてシーケンスを入力するとき、グループで制御棒130を管理する場合には、1グループにつき1本の制御棒130を登録することを許容する。これにより、1本ごとにグループが異なるのであるから、その順序が判定される。なお、シーケンスをグループ管理せずに、単に選択と操作を順番に登録してシーケンスを構成してもよい。また、試験モードの場合に限り、同一グループ内であっても順序を判断するようにしてもよい。
【0051】
図6は制御棒操作監視装置の動作を説明するフローチャートである。ステップ402において、運転員が選択入力部222から制御棒130を選択する。ステップ404で操作監視部300はその選択がシーケンスに一致しているか否かを判断し、一致していない場合にはステップ405で選択エラーを表示部230に表示する。またステップ405では、操作監視部300から制御部200に対して引抜阻止の信号を発信する。ステップ405では、その選択がシーケンスと一致しているが、ステップ406でシーケンスが挿入であるか否かを判定し、挿入である場合には、ステップ407で引抜阻止の信号を発信する。いずれの場合も操作監視部300から制御部200に対して引抜阻止の信号を発信する。選択エラーの場合はこの時点で運転員は選択入力(ステップ402)からやり直すこともできる。また、いかなる場合でも挿入操作の場合はそのまま次のステップに進むこともできる。
【0052】
ステップ408において操作員は、操作部220から引抜または挿入の操作を行う。ステップ408で操作が「挿入」だった場合、ステップ410で制御部200は挿入操作を実行する。ステップ412で操作監視部300は制御棒130の位置(pos)がシーケンスと一致しているか否かを判断し、一致していなければステップ414で挿入エラーを表示部230に表示する。ただし挿入阻止はかけない。
【0053】
ステップ408で操作が「引抜」だった場合、ステップ418で操作監視部300は選択エラーが発生しているか否かを判断する。選択エラーが発生していれば、既にステップ405で操作監視部300は選択エラーを表示部230に表示している状態であり、制御部200に対して引抜阻止の信号も発信しているため、そのまま終了する。
【0054】
ステップ418で選択エラーが発生していなかった場合、ステップ420で制御部200が引抜操作を実行する。次にステップ422で操作監視部300は制御棒130の位置(pos)がシーケンスと一致しているか否かを判断する。シーケンスと一致していない場合はステップ424に移行し、操作監視部300は引抜エラーと引抜阻止を発信する。
【0055】
上記のような試験モードは、特に原子炉停止余裕検査または冷温臨界試験を行うためのモードとして好適に使用することができる。この検査、試験は原子炉において定期点検の際に行う試験の中でも、特に慎重に制御棒の操作を行う必要がある。また、少数の制御棒の挿抜によって原子炉の試験を行うものであって、制御棒の操作の順序も重要な事項である。したがって、ロッドワースミニマイザに本発明を適用することによって、これらの試験をより安全かつ確実に行うことが可能となる。
【0056】
例えば原子炉停止余裕検査においては、2本の制御棒130をシーケンスに入力することにより、正しい引抜と挿入の混在した順序をガイド表示することができ、また誤った順序で制御棒130を選択した場合には1ノッチの引抜を待たずに引抜阻止をかけることができる。またシーケンスに3本の制御棒130を入力することにより、3本の制御棒130にて原子炉停止余裕検査を行うことも可能となる。これにより、原子炉停止余裕検査をより安全かつ確実に行うことが可能となる。
【0057】
また冷温臨界試験においては、引抜と挿入が混在したシーケンスを入力することにより、分散操作も含めたシーケンスにすることができる。これにより分散操作についてもガイド表示を行うことができ、誤った制御棒130によって分散操作することも防止することができる。また原子炉停止余裕検査の場合と同様に、誤った順序で制御棒130を選択した場合には1ノッチの引抜を待たずに引抜阻止をかけることができる。これにより、冷温臨界試験をより安全かつ確実に行うことが可能となる。
【0058】
なお、本実施形態にかかる制御棒操作監視装置210は、これらの試験に共通して利用可能である。また、制御棒の操作を伴う他の試験についても同様に適用可能であり、本発明の利益を享受することができる。
【0059】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0060】
例えば、上記実施形態においては表示部230と選択入力部224を別に設けるように説明した。しかし本発明はこれに限定するものではなく、表示部を選択入力部と兼ねさせてもよい。具体例としては、表示部はタッチパネルとし、表示されたマトリクスに触れることによって任意の制御棒を選択させることができる。なお、表示部は必ずしもタッチパネルである必要はなく、マウスなどのポインティングデバイスによって制御棒を選択してもよいし、ライトペンなどによって画面上のマトリクスを接触させて選択させてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、制御棒の操作手順を監視し、あらかじめ入力されたシーケンスと異なる場合に警告もしくは動作阻止を行う制御棒操作監視装置(ロッドワースミニマイザ)として利用することができる。
【符号の説明】
【0062】
110…原子炉圧力容器、120…燃料集合体、130…制御棒、140…制御棒駆動系、200…制御部、210…制御棒操作監視装置、220…操作部、222…選択入力部、226…操作入力部、226a…挿入スイッチ、226b…引抜スイッチ、226c…連続引抜スイッチ、230…表示部、230a…操作表示領域、230b…ガイド表示領域、300…操作監視部、310…シーケンス入力部、320…記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御棒の選択情報および引抜または挿入の操作の組み合わせからなるシーケンスを予め入力するためのシーケンス入力部と、
前記シーケンスに基づいて次の操作を表示する表示部と、
任意の制御棒を選択するための選択入力部と、
選択された制御棒に対して引抜または挿入を操作するための操作入力部と、
前記シーケンスと異なる操作をした場合に前記制御棒の動作を阻止する操作監視部と、
を備えた制御棒操作監視装置において、
前記シーケンス入力部は、試験モードとして、引抜と挿入が混在したシーケンスを入力可能であることを特徴とする制御棒操作監視装置。
【請求項2】
制御棒の選択情報および引抜または挿入の操作の組み合わせからなるシーケンスを予め入力するためのシーケンス入力部と、
前記シーケンスに基づいて次の操作を表示する表示部と、
任意の制御棒を選択するための選択入力部と、
選択された制御棒に対して引抜または挿入を操作するための操作入力部と、
前記シーケンスと異なる操作をした場合に前記制御棒の動作を阻止する操作監視部と、
を備えた制御棒操作監視装置において、
前記操作監視部は、前記選択入力部から制御棒が選択された段階で、該選択が前記シーケンスと異なっている場合にはその制御棒の動作を阻止することを特徴とする制御棒操作監視装置。
【請求項3】
前記シーケンス入力部は、2本以上の制御棒についてシーケンスを入力可能であって、
前記操作監視部は、選択される制御棒の順序を1本単位で判断することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の制御棒操作監視装置。
【請求項4】
前記試験モードとは原子炉停止余裕検査または冷温臨界試験を行うためのモードであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の制御棒操作監視装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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