説明

制振、遮音シート組成物

【目的】 本発明は、成形性、成形後の保形性が良好で、かつ耐屈曲性、形状回復性が良好な制振、遮音シート組成物の提供を目的とする。
【構成】 (A)エチレンーブテン系ランダム共重合体1〜100重量%と、(B)天然ゴム、合成ゴム、熱可塑性樹脂から選ばれる少なくとも一種0〜99重量%とからなる混合物{(A)+(B)}100重量部に対し、(C)高比重充填剤150重量部以上を含有してなる制振、遮音シート組成物。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は制振、遮音シート組成物に関し、特に成形性、耐屈曲性が良好で装着対象物の形状に適合しうる制振、遮音シート組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】天然ゴム、各種合成ゴム、各種合成樹脂を基材としてこれに各種の高比重の充填剤を配合した制振、遮音性配合組成物は公知である。例えば特開平成6年第299005号公報および特開平成6年第299010号公報の記載には、ポリオレフィン系樹脂を主成分とする組成物が高剛性および耐衝撃性が良い制振組成物に用いられている。これらの組成物をその装着対象物との装着に際して、いずれも煩雑な作業が必要であった。これを解決するため、予め所定の形状に成形して、これを装着対象物に貼着または熱融着することも考えられるが、従来では成形後の保形性が不良であるといった問題があった。
【0003】また、従来では制振、遮音性を十分に発揮させるため、高比重充填剤を高充填すると、成形品の耐屈曲性が不足し運搬、装着時に割れたり、また成形品の形状回復性が不足するため運搬時の歪みが残り装着対象物に適合しないといった問題があった。また、成形型に打ち抜いた際、生じるロス分のリサイクル性にも問題があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、前記従来技術の課題を解決すべく鋭意検討なされたものであり、熱成形性、成形後の保形性が良好で、かつ耐屈曲性、形状回復性が良好な制振、遮音シートを得ることのできる制振、遮音シート組成物を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、上記目的を解決するために種々検討の結果、(A)エチレンーブテン系ランダム共重合体(以下、(A)成分という)1〜100重量%と、(B)天然ゴム、合成ゴム、熱可塑性樹脂から選ばれる少なくとも一種(以下(B)成分という)0〜99重量%とからなる混合物{(A)+(B)}100重量部に対し、(C)高比重充填剤(以下(C)成分という)150重量部以上を含有してなる制振、遮音シート組成物にすることにより解決した。
【0006】また、本発明は(A)エチレンーブテン系ランダム共重合体1〜100重量%と、(B)天然ゴム、合成ゴム、熱可塑性樹脂から選ばれる少なくとも一種0〜99重量%とからなる混合物{(A)+(B)}100重量部に対し、(C)比重2以上の充填剤150〜1500重量部を含有してなる制振、遮音シート組成物である。
【0007】以下、本発明を詳細に説明する。本発明の(A)成分のエチレンーブテン系ランダム共重合体は、例えばチーグラー系触媒を用いて、エチレンおよびブテンー1またはエチレン、ブテンー1および非共役ジエンを共重合することによって得られる。この(A)成分は、非晶性であることが好ましく、ブテンー1の含量は、通常10〜40重量%、好ましくは10〜30重量%、さらに好ましくは15〜20重量%である。
【0008】また、ランダム共重合体に共重合される非共役ジエンの具体例としては、ジシクロペンタジエン、トリシクロペンタジエン、5ーメチルー2,5ーノルボルナジエン、5ーメチレンー2ーノルボルネン、5ーエチリデンー2ーノルボルネン、シクロオクタジエン、ビニルシクロヘキセン、1,5,9ーシクロドデカトリエン、1,4ーヘキサジエン、1,6ーオクタジエン、1,7ーオクタジエン、1,8ーノナジエン、1,9ーデカジエン、3,6ージメチルー1,7ーオクタジエンなどが挙げられ、好ましくは5ーエチリデンー2ーノルボネン、ジシクロペンタジエンである。
【0009】ランダム共重合体は、炭化水素溶媒中でバナジウム化合物および/またはチタン化合物と周期律表1〜4族の有機金属化合物との組合せからなる触媒を用いて製造することができる。このうち、バナジウム化合物としては、不活性有機溶媒に可溶な3〜5価のバナジウム化合物が好んで用いられ、バナジウムのハライド、オキシハライド、含酸素化合物とのキレート錯体、バナジン酸エステルなどが好ましい。より具体的には、四塩化バナジウム、オキシ三塩化バナジウム、バナジウムトリスアセチルアセテート、バナジン酸トリスエトキシド、バナジン酸トリーnーブトキシド、バナジン酸ジーnーブトキシモノクロライド、四塩化バナジウムおよび/またはオキシ三塩化バナジウムとアルコールとの反応組成物などが挙げられる。これらは、単独であるいは2種以上の混合物として用いられる。
【0010】また、チタン化合物としては、固体または溶剤に溶解した三塩化チタン触媒、塩化マグネシウムなどに坦持した三塩化チタンまたは四塩化チタン化合物が用いられる。これらの化合物は、電子供与体などの第三成分を組み合せて用いることも可能である。周期律表第1〜4族の有機金属化合物としては、有機リチウム化合物、有機亜鉛化合物、有機マグネシウム化合物、有機アルミニウム化合物などが挙げられる。より具体的な例としては、トリエチルアルミニウム、トリー1ーブチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロライド、エチルアルミニウムセスキクロライド、エチルアルミニウムジクロライドなどである。
【0011】なお、本発明に用いられるランダム共重合体のムーニー粘度(ML1+4、100℃)は、3〜120、好ましくは5〜90である。また、本発明に用いられるランダム共重合体の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比で表される分子量分布(Mw/Mn)は、1.3〜10、好ましくは1.3〜6、さらに好ましくは1.5〜4である。Mw/Mnが1.3未満の場合にはランダム共重合体をチーグラー系触媒を用いて製造するのが困難である。
【0012】本発明の(B)成分は、天然ゴム、合成ゴム、熱可塑性樹脂であり、例えば、天然ゴム(NR)、ポリイソプレンゴム(IR)、スチレンーブタジエンゴム(SBR)、ポリブタジエンゴム(BR)、アクリロニトリルーブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム、芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物との共重合体およびこれらの水添物、1,2ポリブタジエン(RB)、エチレンー酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー(TPU)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)などである。これらの中で芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物との共重合体およびこれらの水添物が好ましく、さらにこれらのブロック共重合体が好ましい。
【0013】本発明の(C)成分の高比重充填剤としては、例えば、ガラス繊維、表面化学処理ガラス繊維、カーボン繊維、グラファイト、金属繊維、酸化チタンのような繊維状充填剤、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、種々の表面処理炭酸カルシウムほか、タルク、水酸化マグネシウム、マイカ、クレー、硫酸バリウム、天然ケイ素、合成ケイ素およびカーボンブラックなどが使用できる。特に比重2以上の充填剤が好ましい。
【0014】本発明の(A)成分の使用量は1〜100重量%、好ましくは50〜100重量%、さらに好ましくは70〜100重量%である。1重量%未満では得られる制振、遮音シート組成物の成形性、耐屈曲性が十分でない。本発明の(B)成分の使用量は0〜99重量%、好ましくは0〜50重量%、さらに好ましくは0〜30重量%である。99重量%を超えると得られる制振、遮音シート組成物の成形性、耐屈曲性が十分でない。本発明の(C)成分の使用量は{(A)+(B)}成分100重量部に対しては150重量部以上、150〜1500重量部、好ましくは300〜1000重量部である。150重量部未満では得られる制振、遮音シートの比重が小さく、制振、遮音性が十分ではない。1500重量部を超えると加工性が劣る。また必要に応じて上記添加剤の他、軟化剤、可塑剤、滑剤、粘着付与剤、活性剤、老化防止剤、加工助剤、瀝青物質などの各種添加物を適宜添加しても差し支えない。
【0015】前記(A)〜(C)成分、さらに、それらに他の配合剤を混合する方法は特に制限はなく、バンバリー型ミキサー、加圧ニーダー、オープンロールなど一般のゴム配合物に対して使用される混合方法で可能である。
【0016】こうして得られる配合物は、ロール、カレンダーロール、押出機などを利用して、シート状に成形した後、装着対象物の表面の凹凸に適合する表面状態を有するように予熱下に成形する。具体的には、シート状の組成物を予熱して、真空成形または冷却した雌雄金型間でプレスして成形し、あるいはウレタンの発泡圧力を利用して成形し、脱型冷却する。あるいは押出機などを利用してペレットにした後、成形型で射出成形する。本発明による組成物の用途としては、自動車、建材、家電機器など制振、遮音材の使用される殆ど全ての用途に利用することができる。
【0017】
【実施例】実施例および比較例を示して本発明を更に具体的に説明するが、実施例によって本発明の範囲が制限されるものではない。尚、実施例および比較例において各物性は次の方法で測定した。
1)加工性混練時のコンパウンドの纏まりおよびロール加工時の加工難易性の評価を行った。「○」は良好、「△」はやや良、「×」は不良を表す。
2)制振性JIS M329ー83 5・10防振性に準拠した。すなわち、200×20mmの試験板の上に、170×20mmの試料シートの縦方向、横方向をそれぞれ合わせ、鋼板からなる試験片の一端より30mmあけて乗せて焼き付けた後、室温まで放冷したものを試験片とする。ここで、前記試料シートは、2mm厚本発明組成物シートとし、0.8mm鋼板に貼り合わせ焼き付けたものである。次に、試料を焼き付けていない方の試験板の端を試験器にしっかり固定し、電磁加振器に130〜140Hzの電流を流して板を共振させ、板の振幅が最大となるときの周波数を測定する。次に、その両側で振幅が1/√2になる点の周波数を測定し、次式により防振係数を算出したものである。
d=(f2−f1)/f0ここで、dは防振係数、f0は共振点の周波数(Hz)、f1、f2は共振点の両側で振幅が共振点のピーク値の1/√2となる周波数(Hz)(f2>f1)である。「O」はdが0.1以上の値、「×」はdが0.1未満の値を表す。
【0018】3)熱成形性80℃、100秒間予熱後、50%伸ばした所で30秒間静置させ破断するかどうかを調べた。「○」は破断無し、「×」は破断発生を表す。
4)耐屈曲性180度折曲げ試験を行った。「○」は10回以上で割れ無し、「×」は10回未満で割れ発生を表す。
【0019】(実施例1〜8)表1に示す配合割合で混練りを行った後、ロールにてシーティングを行った。得られた制振、遮音シート組成物の特性結果を表1に示す。本発明の目的とする制振、遮音シートが得られている。
【0020】
【表1】


【0021】(比較例1〜6)表1に示した配合処方を用い、実施例で示した方法で配合、成形および評価を行った。制振、遮音シート組成物の特性を表1に示す。比較例1、2は(A)成分が範囲を超えた例であり、熱成形性、耐屈曲性が劣る。比較例3、4は(A)成分が範囲を超えた例であり、耐屈曲性が劣る。比較例5は(C)成分が範囲未満の例であり、比重が小さく、制振、遮音性が劣る。比較例6は(C)成分が高比重充填剤ではない例であり、比重が小さく、制振、遮音性が劣る。
【0022】
【発明の効果】本発明の制振、遮音シート組成物は、成形性、耐屈曲性が良好で、装着対象物の形状に適合しうる制振、遮音シート組成物である。本発明の制振、遮音シート組成物は、このように優れた性能を有することから、自動車車、建材、家電機器など制振材の使用される殆ど全ての用途に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 (A)エチレンーブテン系ランダム共重合体1〜100重量%と、(B)天然ゴム、合成ゴム、熱可塑性樹脂から選ばれる少なくとも一種0〜99重量%とからなる混合物{(A)+(B)}100重量部に対し、(C)高比重充填剤150重量部以上を含有してなる制振、遮音シート組成物。