説明

制振鋼板を用いた空調ダクト

【課題】
制振鋼板をハゼ内に打ち込む際、打ち込み側の制振鋼板は剛性が弱いため曲がってしまってハゼに入らない場合がある。またハゼに入ったとしてもハゼ側の制振鋼板が開いてしまい、ハゼが形成できないという問題がある。
【解決手段】
空気調和装置で空調された空気を各部屋へ供給するための制振鋼板を用いた空調ダクトにおいて、4本のL字状アングルと2個のアングルフランジで矩形状の骨格を形成し、形成された前記骨格の4面に制振鋼板を貼り付けてなり、前記制振鋼板は前記アングルに対してリベットで固定するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は制振鋼板を用いた空調ダクトに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、原子力発電所内等の空気調和装置では、空調された空気をダクトで発電所内の各部屋へ供給している。この空調ダクトは換気や空調後の空気を回収することも行われており、言わば風洞となっている。このような空気調和装置は、各空調システムに応じて発電所内全域に設置される。
【0003】
この種の空調ダクトは、ダクト内圧による種類、寸法、板厚、継目の構造、継手の種類、補強に至るまでがJISに定められており、経済的で合理的な構造となっている。
【0004】
しかしながら、ダクト本体の板厚は0.5mm〜1.2mmの薄板が適用されており、合理的な構造であるが故に結果としてダクト内空気流や圧力変動による振動が原因で騒音が発生し易い構造となっている。
【0005】
このような騒音の問題を解決する一手段として、例えば特許文献1と2に開示されているようにダクト板の板材として制振鋼板を採用したものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−141966号公報
【特許文献2】実開昭62−80142号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一般的に騒音を低減するには遮音材における音の透過損失を上げることが有効とされている。具体的には遮音材の重量を上げる(厚板鋼板を適用)か、遮音材の材料自体が振動しないものへ変更する必要があるが、前者は製作及び工事費用が多大となる問題がある。
【0008】
そのため、後者の特許文献1,2のようにダクト材料に制振鋼板材を適用したものがある。
【0009】
特許文献1は騒音を低減する騒音低減型ダクトを空調・換気装置の送風路として設けたものであり、その構造は発砲アルミ材で形成された内側ダクトとこの内側ダクトに外装され、制振鋼板によって形成された外側ダクトが設けられたものである。このように空調用ダクトに制振鋼板を用いるたものがあるが、制振鋼板を用いたダクトの剛性を高める構造については開示されていない。
【0010】
また特許文献2はダクトを構成する上下左右の板材の表面全域に制振板を接着剤で貼り合わせたものであるが、やはりダクトの剛性を高めることについては開示されていない。
【0011】
本発明の目的は、剛性が高く、容易に組み立てることが可能な制振鋼板を用いた空調ダクトを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的は、空気調和装置で空調された空気を各部屋へ供給するための制振鋼板を用いた空調ダクトにおいて、4本のL字状アングルと2個のアングルフランジで矩形状の骨格を形成し、形成された前記骨格の4面に制振鋼板を固定してなり、前記制振鋼板は前記アングルに対してリベットで固定されていることにより達成される。
【0013】
また上記目的は、隣り合う前記制振鋼板間にシール材を介在させたことにより達成される。
【0014】
また上記目的は、前記アングルと前記制振鋼板との間に緩衝部材を介在させてリベットで固定したことにより達成される。
【0015】
また上記目的は、前記骨格の2面を覆うようにL字状に折り曲げられた前記制振鋼板を2枚備えてなり、
また上記目的は、前記制振鋼板は前記アングルに対してリベットで固定されていることにより達成される。
【0016】
また上記目的は、前記制振鋼板は少なくとも2本のアングルにリベットで固定したことにより達成される。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、剛性が高く、容易に組み立てることが可能な制振鋼板を用いた空調ダクトを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施例を備えたダクトの斜視図である。
【図2】本発明の一実施例を備えたダクトの組立て工程を説明する斜視図である。
【図3】図2のA部拡大部で第2の実施例を示す断面図である。
【図4】第3の実施例を備えたダクトの組立て工程を説明する斜視図である。
【図5】制振鋼板を一般的な組立て工法で形成した場合のハゼ部の拡大断面図である。
【図6】制振鋼板を一般的な組立て工法で形成した場合のハゼ部の拡大断面図である。
【図7】一般的なダクトの斜視図である。
【図8】一般的なダクトとして制振鋼板を用いた場合の接合部分の断面図である。
【図9】一般的なダクトのハゼ部分を拡大した部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
さて、制振鋼板材は2枚の鉄材に樹脂を挟み込んだ構造となっており、同じ板厚の一般鋼板と比較すると剛性が低く、加工中に塑性変形が生じやすいという問題がある。そのため制振鋼板をJISで定められた工法でダクトを作成すると以下のような作成上の難点がある。
【0020】
そこで、この難点について図3〜図7を用いて説明する。
【0021】
図5は制振鋼板を一般的な組立て工法で形成した場合のハゼ部の拡大断面図である。
図6は制振鋼板を一般的な組立て工法で形成した場合のハゼ部の拡大断面図である。
図7は一般的なダクトの斜視図である。
図8は一般的なダクトとして制振鋼板を用いた場合の接合部分の断面図である。
図9は一般的なダクトのハゼ部分を拡大した部分断面図である。
図5、図6において、ダクト本体100は4面を亜鉛引き鉄板105で覆われている。このダクト本体100は4枚の亜鉛引き鉄板105の四隅がハゼ折構造で継ぎ合わされてダクト本体の4辺が形成されている。フランジ部にはアングル材102にてロ字状を形成されたアングルフランジ106が形成されている。アングルフランジ106は4辺の亜鉛引き鉄板105に丸リベット107によって固定されている。一方のダクト本体100を形成する亜鉛引き鉄板105にもアングルフランジ106が固定されている。
【0022】
両者のアングルフランジ106同士は図4に示すようにガスケット108を挟み込むようにして付き合わせられてボルト103とナット104によって締結される。
【0023】
図7において、亜鉛引き鉄板105の四隅は上述したようにハゼ折構造となっており、図5(a)はピッツバーグハゼの構造であり、図5(b)はボタンパンチハゼ構造である。本図のように亜鉛引き鉄板105の端部を折り曲げて溝(以下、ハゼという)を作り、このハゼに亜鉛引き鉄板105の一端を圧入して固定するものである。
【0024】
図8において、制振鋼板109は上述したように樹脂板と金属板の積層構造となっているため剛性が弱く、折り曲げ加工を行った場合、樹脂を挟んでいる金属板がずれてしまい仕上がり面が汚くなってしまう。
【0025】
図9において、本図は制振鋼板109でダクトの継目であるハゼを折る場合の問題点を示したものである。制振鋼板109をハゼ内に打ち込む際、打ち込み側の制振鋼板109は剛性が弱いため曲がってしまってハゼに入らない場合がある。またハゼに入ったとしてもハゼ側の制振鋼板109が開いてしまい、ハゼが形成できないという問題がある。
【0026】
このように、制振鋼板でダクトを形成する場合、四隅をハゼ方式で組み立てるJISの製作方法を用いた場合、上述のような加工性の問題があって製作できない。そのため他の組み立て構造を検討する必要があった。
【0027】
そこで本発明の発明者らはハゼ方式を止め、アングルの使用を検討した結果、以下のごとき実施例を得た。
【実施例1】
【0028】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
本発明のダクト製作工程を図1及び図2に示す。
図1はダクトの骨組み部の構成を示す図である。
【0029】
図1において、アングルフランジ1にダクト長手方向の骨組みとなる辺の部分にアングル2が適用されている。アングルフランジ1とアングル2の重なり部(4箇所の太枠部分)は溶接によって固定されている。
【0030】
図2は図1で形成した骨組みに制振鋼板6を取付ける形成を示す図である。
【0031】
図2において、制振鋼板6は上下左右の4面にアングル2の面に丸リベット3を用いて定ピッチ(150mm〜200mm)で固定してダクトを形成している。ダクトの四隅に形成される制振鋼板6の合わせ目部分は騒音のリークを低減させるためにシール材9が充填されている。
【実施例2】
【0032】
図3は図2のA部拡大部で第2の実施例を示す断面図である。
図3において、アングル2と制振鋼板6との間にゴム材等の緩衝部材7が介在されている。この緩衝部座7が介在されたまま制振鋼板6はアングル2に丸リベット3で固定されている。
【0033】
このように、緩衝部材7を介在させることで制振鋼板6とアングル2との間に隙間が発生せず、振動を大幅に低減させることができる。
【0034】
なお、ダクト同士の接合は例えば図6に示したような従来技術と同様とする。
【実施例3】
【0035】
図4は第3の実施例を備えたダクトの組立て工程を説明する斜視図である。
【0036】
図4において、実施例1ではダクトの4面それぞれについて制振鋼板を取付けたが本実施例では制振鋼板を折り曲げて2面一体とするとともに、実施例1では4本のアングルに対して本実施例では2本のみとしたものである。
【0037】
アングルフランジ1にダクト長手方向の骨組みとなる辺の部分にアングル2を溶接等で組合せられている。制振鋼板6は2面分を1枚で形成されるようにL字状に折り曲げられている。この制振鋼板6が2枚準備され、実施例1と同じようにアングル2の面に丸リベット3を用いて定ピッチ(150mm〜200mm)で固定してダクトを形成している。ダクトの二隅に形成される制振鋼板6の合わせ目部分は騒音のリークを低減させるためにシール材9が充填されている。
【0038】
本実施例によれば丸リベット3による固定作業を大幅に削減できる。またアングル2の本数を2本低減したので材料を低減することが可能である。
【0039】
以上のごとく本発明によれば、アングルを使用したことにより剛性が弱い制振鋼板であっても気密性、耐久性、施工性に優れたダクトを提供できる。またアングルによって振動が抑制されるので騒音を大幅に低減でき、原子力発電所に従事する作業者に身体的負担を大幅に軽減することができる。
【符号の説明】
【0040】
1・・・アングルフランジ、2・・・アングル、3・・・丸リベット、4・・・ナット、6・・・制振動鋼板、7・・・緩衝部材、9・・・シール材、100・・・ダクト本体、102・・・アングル材、103・・・ボルト、104・・・ナット、105・・・鉄板、106・・・アングルフランジ、107・・・丸リベット、108・・・ガスケット、109・・・制振鋼板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気調和装置で空調された空気を各部屋へ供給するための制振鋼板を用いた空調ダクトにおいて、
4本のL字状アングルと2個のアングルフランジで矩形状の骨格を形成し、形成された前記骨格の4面に制振鋼板を固定してなり、
前記制振鋼板は前記アングルに対してリベットで固定されていることを特徴とする制振鋼板を用いた空調ダクト。
【請求項2】
請求項1記載の制振鋼板を用いた空調ダクトにおいて、
隣り合う前記制振鋼板間にシール材を介在させたことを特徴とする制振鋼板を用いた空調ダクト。
【請求項3】
請求項1記載の制振鋼板を用いた空調ダクトにおいて、
前記アングルと前記制振鋼板との間に緩衝部材を介在させてリベットで固定したことを特徴とする制振鋼板を用いた空調ダクト。
【請求項4】
請求項1記載の制振鋼板を用いた空調ダクトにおいて、
前記骨格の2面を覆うようにL字状に折り曲げられた前記制振鋼板を2枚備えてなり、
前記制振鋼板は前記アングルに対してリベットで固定されていることを特徴とする制振鋼板を用いた空調ダクト。
【請求項5】
請求項1記載の制振鋼板を用いた空調ダクトにおいて、
前記制振鋼板は少なくとも2本のアングルにリベットで固定したことを特徴とする制振鋼板を用いた空調ダクト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−172864(P2012−172864A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−32888(P2011−32888)
【出願日】平成23年2月18日(2011.2.18)
【出願人】(507250427)日立GEニュークリア・エナジー株式会社 (858)
【Fターム(参考)】