説明

制生物フィルター

【課題】低労力かつ低コストで、胞子の発芽や空気浄化装置内での微生物の生存を防ぎ、病気の危険および過敏性反応を低下させる。
【解決手段】エアーコンディショニングシステムのエアフィルターに、静菌特性および/または静真菌特性を有した殺生物剤、および、場合により湿潤剤、界面活性剤またはレオロジー添加物を含んだ組成物をコーティングし、フィルターの使用時に蓄積する粒子を通って殺生物剤が移動するのに適したものとして、フィルターの静菌特性および/または静真菌特性を持続させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、エアーコンディショニングシステムに関し、特にこのシステム内のフィルターに関連する病原体を減らす方法およびそのための組成物に関する。本発明は、主に、(空気冷却および空気加熱を含む)エアーコンディショニングシステムでの使用のために開発されたものであり、この使用分野に関して以降に説明する。しかし、本発明は、この特定の使用に限定されるものではない。
【背景技術】
【0002】
背景技術
通常、オフィス、住居、ヘルスケアおよびその他の建物に供給されているエアーコンディショニングシステムは、エアーフィルターを組み込んでいる。このようなフィルターは、例えば、媒体として不織性ポリエステル繊維を用いて、空気から寸法が約10μmを超える風媒性粒子をフィルターするが、このフィルターは、広範な材料から、多数の違った構造や等級で作製されている。フィルターの機能は、風塵や粒状の汚染物質を捕集することである。この捕集された物質(「濾過物」)は、真菌、バクテリア、ウィルス、アレルゲン、イーストおよびカビなどの病原体の成長のための安息所(haven)を提供する。これら生物の成長条件は、例えば、夜などのようにシステムをオフする時のみならず、通常の作動中にも生じ得る高湿の期間中が特に好都合である。生物の存在は非常に望ましくない。というのも、これら生物は、ヒトや動物に病気または死をもたらし、臭気を発し、しかも広範な物質に損傷を与えるかまたは破壊することがあるためである。
【0003】
ヒトの健康と安全に特に関係するのは、真菌およびバクテリアの細胞膜の分解成分でありかつ公知のヒトの呼吸アレルゲンであるエンドトキシンとマイコトキシンである。これらは、ある個体では喘息発作の引き金になることがあり、そして全ての場合において免疫応答を生じる事が分かっている。曝露されている全期間に亙って、これは、免疫系の拮抗薬へのに応答能力を低下させ、対象をバクテリアやウィルスなどにより感染し易くさせる。菌類胞子、バクテリア胞子およびバクテリアも関係している。
【0004】
胞子の発芽や空気浄化装置内での微生物の生存を防ぐことは、病気の危険および過敏性反応を低下させるのに役立つ。このことは、空気浄化装置の有用な寿命も高める。微生物活性は、エアーフィルター上およびその内部でのバイオマスの増加が穴を詰まらせて、空気流を低下させ、そしてシステム内の背圧を高めることから、エアーフィルター自体の寿命も縮める。場合により、エアーフィルターは、セルロースなどの天然物質から調製されるかまたはこれを含んでおり、その場合、前記フィルターは特定の真菌によって湿潤条件下で急に劣化される。
【0005】
病院や養護ホームなどのヘルスケア施設において、危険な感染病が広く様々な微生物によって広まるかもしれないということは重大な関心事である。多数の患者が本来のヘルスケア問題によって弱った条件に在るため、このような施設では前記問題が悪化する。健康なヒトには大きな脅威ではない微生物が、感染から自分自信を守る能力が低下した患者には致命的であることがある。
【0006】
公共の建物などの他の環境にも十分な注意が払われる。というのも、病原性微生物は、コンディショニングされた空気または換気シャフトを通じて建物への道筋を見つけ、建物全体を迅速に循環し、それによって感染と疾病の広まる見込みを非常に高めるためである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この問題に対して提案される一つの解決策は、殺菌性組成物でフィルター材料をコーティングすることであった。殺生物剤は、例えば、フィルター繊維として押出し成形前にポリマー内に包含させることによって、フィルター繊維上またはその内部に結合されている。本発明者らは、このいわゆる「抗菌性」フィルターが、未使用の「抗菌性」フィルター材料の表面に研究所内でのバクテリアおよび/または真菌汚染が植え付けられた場合には生物流体静力学的に有効であるが、エアーコンディショニングシステム内での実際の使用時には時間の経過に従って段々無効になることを発見した。その結果、前記フィルターは、清浄や再処理のためにしばしば取り外すか、または取替えなければならなかった。取り外しは、必要とされる労力とダウンタイムの点で高くついて不便であり、また潜在的に有害であると同時に、再処理または取替えは費用がかかる。通常、前記フィルターは、空気流抵抗が容認できなくなると取り外すだけである。
【0008】
本明細書全体を通じて、先行技術についての説明は、そのような先行技術が周知であるかまたは当該分野において周知の事柄の一部を形成する事実と考えるべきでは決してない。
【0009】
先行技術の欠点のうち少なくとも一つを克服するかまたは改良すること、または有用な代替物を提供することが、本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の態様によれば、本発明は、制生物剤または殺生物剤を含有する組成物を含むエアーフィルターであって、前記薬剤がこのエアーフィルターでの使用時に蓄積する粒子を通って移動するのに適しているエアーフィルターを提供する。
【発明の効果】
【0011】
世界の多数の地域では、建物内にセントラルヒーティングの手段として加熱して浄化した空気を用いている。このようなシステムの炉(furnace)およびその他のフィルターは、エアーコンディショニングフィルターに関する上述と同様の危険をもたらすと考えられるが、本発明は、特定の種類のフィルターまたは気流システムに限定されない。本発明は、異なる種類および等級のフィルター、例えば、HEPAフィルター(hepafilters)と同等に利用可能であるとも考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】使用前の、未使用の新規なエアーコンディショニング粉塵フィルターの光学顕微鏡写真(×100)である。
【図2】図1のフィルターと同様の未処理フィルターであって、建物のエアーコンディショニングシステムにおいて11ヶ月使用した後のものを示す光学顕微鏡写真(×100)である。
【図3】図1のフィルターと同様の処理されたフィルターであって、建物のエアーコンディショニングシステムにおいて11ヶ月使用した後のものを示す光学顕微鏡写真(×100)である。
【図4】本発明により処理したフィルターと未処理フィルターを11ヶ月に亙って使用したときの時間の関数としての1グラム当たりのコロニー形成単位数(「cfu/g」)の比較を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
発明の簡単な説明
第1の態様によれば、本発明は、制生物剤または殺生物剤を含有する組成物を含むエアーフィルターであって、前記薬剤がこのエアーフィルターでの使用時に蓄積(堆積(accumulating))する粒子を通って移動するのに適しているエアーフィルターを提供する。
【0014】
好ましくは、前記制生物剤または殺生物剤は、静菌特性および/または静真菌特性を有するように選択される。前記粒子は、通常、層状に蓄積し、そして本発明の制生物剤または殺生物剤は、この層を通って、前記薬剤が移動されなければ生物が繁殖するであろう外側表面(空気/粒子界面)へ移動する。
【0015】
本発明のフィルターにおいて、殺生物剤は、フィルター表面に結合されていないが、フィルター上に蓄積する粉塵および粒状物質の中を移動するのに適している。前記層中の粒子は、殺生物剤または制生物剤でコーティングされている。
【0016】
前記処理は、静菌性または静真菌性であるのに十分であると考えられる。すなわち、処理剤は、コロニー形成されたフィルター中で生物を殺すよりもむしろフィルター上でのコロニー形成を抑えるのに十分である。しかし、殺菌性組成物を使用してもよい。
【0017】
第2の態様によれば、本発明は、
水溶性の殺生物剤または制生物剤、および
湿潤剤
を含有する、エアーフィルターに利用するための組成物であって、それによって、殺生物剤または制生物剤が、エアーフィルターの使用時にその表面上に蓄積(堆積)(accumulating)する濾過物(filtrate)の中を通って移動するのに適している組成物を提供する。
【0018】
前記組成物は、さらに、界面活性剤、望ましくはフルオロ界面活性剤を包含するのが非常に好ましい。
非常に好ましい態様において、前記組成物は、例えば、増粘剤、ゲル化剤または粘度調整剤などの1種以上のレオロジー添加物(rheological additives)を含有する。
【0019】
第3の態様によれば、本発明は、フィルター内を通って移動するのに適した殺生物剤または制生物剤をフィルターまたは濾過物(filtrate)に添加する工程を含む、フィルター上の濾過物を処理する方法を提供する。
【0020】
第4の態様によれば、本発明は、
フィルターを第2の態様に記載の薬剤で処理する工程、
フィルターを通して空気を通過させて、それによって、フィルター上に濾過物(filtrate)としての汚染物質(contaminants)を蓄積する(堆積させる)(accumulate)工程、および
前記殺生物剤を前記濾過物中に移動させる工程
を含む、空気中の風媒性汚染(airborne contaminants)を減らす方法を提供する。
【0021】
図面の詳細な説明
図1は、使用前の、未処理の新規なエアーコンディショニング粉塵フィルターの光学顕微鏡写真(×100)であり、
図2は、図1と同様の未処理のフィルターであって、建物のエアーコンディショニングシステムにおいて11ヶ月使用した後のものを示す光学顕微鏡写真(×100)であり、
図3は、図1と同様の処理されたフィルターであって、建物のエアーコンディショニングシステムにおいて11ヶ月使用した後のものを示す光学顕微鏡写真(×100)であり、および
図4は、本発明により処理したフィルターと未処理フィルターを11ヶ月に亙って使用したときの時間の関数としての1グラム当たりのコロニー形成単位数(「cfu」)の比較を表すグラフである。
【0022】
発明を実施する最良の形態
本発明の種々の態様を、実施例のみにより、図を参照して、より詳細に説明する。
【0023】
本発明者は、殺生物剤をフィルター繊維にペースト状態で適用することが比較的効果がないことを発見した。というのも、この処理は、フィルター繊維のすぐ上の細菌や殺菌活性を阻害し得るが、粉塵がフィルター上に蓄積するにつれ、粉塵の外側表面がフィルター繊維と結合した殺生物剤から離れてきて、病原体がこの粉塵残渣の外表面で(すなわち、殺菌処理された繊維から離れて)成長するためである。そのため、フィルターが詰まるにつれて殺菌活性が低下していく。これは、研究室において先行技術のフィルターに細菌接種(innoculum)を行う試験では良好な結果が得られるが、実際に設置された連続使用時には良好な結果が得られない理由を説明している。これとは異なって、本発明は、フィルターの有用な寿命を超えないのであれば、フィルター上の蓄積濾過物の層を通って、微生物がコロニーを形成し易い表面(空気/粒子界面)に向かって移動するのに適した殺菌性調合剤を提供することによって非常に長期間に亙って効力を保持する殺生物剤を提供する。驚くことに、このことは、前記残渣の表面でより高速の空気にもかかわらず達成できる。
【0024】
理論によって拘束されたくはないが、本発明の組成物は、溶液および制生物剤または殺生物剤(または制生物剤および/または殺生物剤の組み合わせ)の輸送のためのビヒクルとして作用する湿潤剤が水に引きつけられるため、有効であると考えられる。本発明の好ましい態様において、ビヒクルの表面張力は、1種以上の界面活性剤によって効率よく低下する。濾過物がフィルター上に蓄積して湿潤剤が水中に引きつけられると、殺菌性組成物は、水性ビヒクルによって最も外側の表面に移動して、病原体生物に対するその有効性を維持することが可能になる。そうでなければ、病原体生物は粒状層の表面や粒状残渣中の隙間で成長するであろう。
【0025】
好ましくは、殺生物剤は、個々の粒子の外面のみならず、粒状層の外面も濡らす。
【実施例】
【0026】
実施例1
本発明の好ましい態様において、エアーフィルターは、溶媒中の殺生物剤と湿潤剤の分散体または溶液を含有する溶液でコーティングされる。本実施例では、オーストラリア国の等級「F5」に準拠してエアーコンディショニングフィルターを処理した。フィルターは、ニードルド不織(needled non-woven)ポリエステル繊維ファブリックから製造し、その合計表面積は約3.5mであった。フィルター厚は10〜12mmであり、その密度は約280〜300g/m(gsm)であった。通常の繊維径は6〜15デニールである。繊維は、実施例2で示すような組成を有する溶液をスプレーして処理した。
【0027】
実施例2
処理溶液の基本組成は以下の通りである。
【0028】
【表1】

【0029】
注:
Kathon886MWは、ローム・アンド・ハッシュ・コーポレイション製の防腐剤である。
FluoradFC129は、スリーエム・コーポレイション製のフルオロ界面活性剤である。
【0030】
実施例3
処理溶液の好ましい組成は以下の通りである。
【0031】
【表2】

【0032】
アイエスピー・コーポレイション製Gantrez
1種以上のレオロジー添加物(例えば、粘度調整剤、ゲル化剤、チキソトロピー剤など)を処理液に組み込むことが望ましい。これらは、ビヒクル粘度を制御して、強い空気の通過によって溶解した処理剤の微小な液滴がフィルターから吹き飛ばされるのを防ぎ、そしてフィルター上に溶液を保持するのを助ける。使用条件を考慮して、レオロジー添加物の種類と量を選択することができる。
【0033】
好ましい処理液は、非常に強いハイドロスコーピック性(hydroscopic)であり、フィルターを通過する空気からの水分を受け取って液体になる。蓄積濾過物層中へのこの液体の浸透は、低い表面張力によって気流への侵入を確実にする界面活性剤の処理液中への混入により、さらに高まる。組成中の殺生物剤は、水溶性であるかまたは部分的に水溶性であることから、処理液の一部として濾過物の内部へ濾過物を通って移動する。
その他の活性成分を濾過物を通じて浸透する組成物に混入してもよく、例えば、難燃剤、気流促進剤または粘度低下剤、脱臭剤などが挙げられる。
【0034】
実施例4
実施例1のフィルターを、実施例3に従って溶液を1m当たりの処理液量230mlまでスプレーして処理した。次いで、処理したフィルターを乾燥空気を用いて乾燥させた。フィルターは、ディッピング法またはそれ以外のどのような常套法でコーティングされてもよく、熱または真空、あるいはそれら以外の好適な手段または手段の組み合わせを用いて乾燥されてよいと考えられる。次に、乾燥させたフィルターを、密閉プラスチック袋などの密閉容器内に使用準備に付するまで置いておいた。
【0035】
フィルターは、使用しようとする際に密閉容器から取り出して、エアーコンディショニングシステム内の操作位置に配置した。使用時に、本発明に準拠して調製したフィルター中の湿潤剤が周囲から水を吸収し始める。この吸収は、殺生物剤の飽和溶液が形成される段階まで続けるが、その濃度は大気の相対湿度に依存する。液化プロセス中、殺菌成分は、界面活性剤と共に湿潤溶液中に部分的にまたは完全に溶解させる。
【0036】
得られた液体処理溶液は、非常に低い海面張力と、理想的な浸透を可能にする高いモル浸透圧を示す。フィルターが、濾過物層として蓄積する風媒性汚染物質を累進的に除去すると、この処理液が段々浸透して、汚染粒子を包み込む。有効濃度の殺生物剤を含有する包み込み用の浸透処理液は、風媒性汚染物に担持された微生物を殺すだけでなく、微生物活性が濾過物自体の層中に生じないことも保証する。
【0037】
湿潤空気中では、バクテリアと病原体の成長が乾燥空気中よりも本来は高い。従って、本発明は、最も必要とされる場合、すなわち高い湿度の期間中、優れた殺菌活性を提供する。低い殺菌活性は乾燥空気の結果であり得るが、このような乾燥条件中での病原体の数や成長はそれほど高くないと予想される。この条件はフィルターの殺菌寿命を伸ばす。
【0038】
本発明は、バイオマスの成長を防ぐことによってフィルターの詰まりを防止することを目的とするものではなく、むしろ、フィルター上および蓄積残渣中で有機物がコロニー形成するのを制御して、最後に病原体が低減した空気を生成することを目的としている。
【0039】
実施例5
実施例4に従って処理したフィルターを配置して運転した。処理したフィルターは、6ヶ月以上の使用期間において有効であることが分かった。6ヶ月の使用終了時に、フィルターを取り外して、清浄して、実施例1に準拠した新しい組成で再処理した。この実験中、胞子形成物質は、フィルター上で乾くと容易に風媒性になる傾向があり、気流中に再分配されて、乾燥するとより優れた殺菌耐性を示す傾向もあることが分かった。胞子形成物質は、前記空気を吸うヒトの免疫系に負荷をかける。死細胞は、風媒性になれば喘息を引き起こし易い。本発明の更なる長所は、湿潤剤が、濾過物表面である程度の湿度を保持して、胞子や細胞の再流動化を低減することである。
【0040】
図1〜3には、使用前(図1)および11ヶ月使用後(図2)の未処理のフィルター材料と比較した、11ヶ月使用後の処理の有効性を示す(図3)、倍率100倍の光学顕微鏡写真を示す。図2の使用した未処理試料と図1の未使用試料との比較によれば、使用によって、より大きな直径のフィルター繊維の周りで(微細な糸に見える)真菌フィラメントが顕著に成長したことが分かる。捕捉された汚れと粉塵粒子が使用後には目に見える。対照して、図3の処理したフィルターは、微生物の成長が11ヶ月晒した後でもほとんど分からないが、捕捉された汚れと粉塵粒子も当然はっきりと見える。
【0041】
実施例6
全く同一の新規フィルター一式を取りだし、そのうちの20%を実施例3の組成物を用いて実施例4と同様に処理した。前記フィルターの残りの80%は未処理のままとした。処理したフィルターと未処理のフィルターを、処理したフィルターと未処理のフィルターが交互になるように同一の空調システム(air handling system)に設置した。1ヶ月毎に、処理したフィルターとそれと隣接する未処理のフィルターの両方から試料を採取し、生存している真菌およびバクテリア種の数を数えた。結果(フィルター1グラム当たりのコロニー形成単位数(「cfu/g」)で表す)を、使用月数の時間関数として図4に示す。処理したフィルターのコロニー形成速度は、最初の1ヶ月間は未処理のフィルターとあまり差がなかった。しかし、その後、きれいな(未使用の)フィルター材料1グラム当たりの生物コロニー形成単位数(cfu/g)は、Log6超に達したが、処理したフィルターについては、対応の図から、きれいなフィルター材料1g当たりのコロニー形成単位数(cfu/g)が、約Log2であり、2ヶ月間実質上安定しており、顕著に結果が向上した。
【0042】
本発明で使用するのに好適な殺生物剤としては、限定されないが、2-ブロモ-2-ニトロプロパン-1,3-ジオール(ブロノポル(Bronopol))、メチル-またはクロロメチル-イソチアゾリノン(Kathon886MW)などのイソチアゾリン、メチル-、プロピル-またはブチル-パラヒドロキシベンゾエート、ソルビン酸、安息香酸およびこれら酸の塩、フェノキシエタノール、トリクロサン(triclosan)、ジクロサン(diclosan)、ジクロロフェン、グルコン酸クロロヘキシジン、オルト-フェニルフェノール、ベンズアルコニウムハライド、およびその他の4級殺生物剤オルト-ベンジルパラクロロフェノール、置換ジフェニルエーテルが挙げられる。
【0043】
本発明で使用される好ましい湿潤剤は、塩化カルシウムである。これ以外の湿潤剤の例は、グリセロール、ソルビトール、エチレングリコール、PEG、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、PCA(2-ピロリドン-5-カルボン酸)、硫酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、乳酸およびその誘導体、塩化ナトリウムなどである。当業者がシステム中の構造材料や前述の記載に基づくフィルターの組成を考慮して好適な湿潤剤を選択することは難しいことではない。幾つかの湿潤剤は界面活性剤としても作用する。その一例は、ジオクチルスルホスクシネートである。
【0044】
本発明での使用に好ましい界面活性剤は、フルオロ界面活性剤であり、例えば、FluoradFC129が挙げられる。これは、表面張力を大いに低下する能力を有しているので好ましい。しかし、これ以外の界面活性剤を使用してもよい。例として、界面活性剤は、非イオン界面活性剤(例えば、エトキシレート、プロポキシレートおよびこれら2種のブロックコポリマー)、アニオン界面活性剤(例えば、ナトリウムドデシルベンゼンスルホネート、ナトリウムジオクチルスルホスクシネート、スルホン化またはスルフェート化有機エトキシレートまたはプロポキシレートのナトリウム塩)、カチオン界面活性剤(例えば、セトリモニウムクロライド(Cetrimonium Chloride)または2級、3級および4級オルガノアミン)、または両性界面活性剤(例えば、コカミドプロピレンベタイン(Cocamidopuropylene Betaine))であり得る。
【0045】
包含され得るレオロジー剤の例は、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルピロリドン、およびこれらのコポリマー、ヒドロキシプロピルグアー、キサンタンガム、キトサン、アクリル化コポリマー、ポリアクリルポリマー(カルボポル(carbopols))などである。しかし、多数の他の水溶性ポリマーも同様に有益であり得る。
【0046】
実施例では、組成物を水溶液または懸濁液からフィルターに適用したが、湿潤剤と制生物剤を固体としてまたは非水性溶媒からフィルターに適用することも可能でありかつ有利であって、しかもこの組成物は、本発明の範疇にある。
【0047】
本発明の組成物は、あらゆる材料のフィルターに適用できるものと考えられる。試験は、ポリプロピレン、ビスコース、レーヨン、セルロース誘導体およびガラス繊維のフィルターを用いて行ったが、前述の操作原理は、他の材料のフィルターやこれら以外の構造のフィルター(例えば、布、不織布、スパンボンド(spunbond)、溶融吹出し成形品、積層物など)にも採用される。
【0048】
処理剤は1種以上の殺生物剤を用いてよく、しかも前述の原理に基づいて種々の組成で配合されてよいと考えられる。前処理したフィルターの方が好ましいが、フィルターは、本発明の組成物をフィルターのダウンストリームにスプレーとして入れるか、あるいは使用中または取り出す前にフィルターの濾過物層上に制生物剤を直接(連続してまたは間欠的に)適用することによりin situで処理されてもよい。前記処理は、設備から取り出したフィルターに、濾過物を除去してまたは除去せずに、再度適用されてもよい。
【0049】
本発明は、具体的な実施例を参照して説明しているが、本発明が他の形態でも提供され得ることが当業者には自明である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
制生物剤または殺生物剤を含有する組成物を含むエアーフィルターであって、前記薬剤が該フィルターでの使用時に蓄積する粒子を通って移動するのに適しているエアーフィルター。
【請求項2】
制生物剤または殺生物剤が静菌特性および/または静真菌特性を有するように選択される請求項1記載のエアーフィルター。
【請求項3】
通常の使用において3ヶ月後に、同一条件下で未処理のフィルターと比較して、きれいなフィルター材料1グラム当たりのコロニー形成単位数(cfu/g)が、少なくともlog 1 低下する請求項1または2記載のエアーフィルター。
【請求項4】
水溶性の殺生物剤または制生物剤、および
湿潤剤
を含有する、エアーフィルターに利用するための組成物であって、殺生物剤または制生物剤が、エアーフィルターの使用時にその表面上に蓄積する濾過物(filtrate)を通って移動するのに適している、組成物。
【請求項5】
界面活性剤を更に含有する請求項4記載の組成物。
【請求項6】
フルオロ界面活性剤を更に含有する請求項4記載の組成物。
【請求項7】
1種以上のレオロジー添加物を更に含有する請求項4〜6のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
レオロジー添加物が、増粘剤、ゲル化剤または粘度調整剤である請求項7記載の組成物。
【請求項9】
殺生物剤または制生物剤が、2-ブロモ-2-ニトロプロパン-1,3-ジオール、イソチアゾリン、メチル、プロピルまたはブチル-パラ-ヒドロキシベンゾエート、ソルビン酸、安息香酸およびこれら酸の塩、フェノキシエタノール、トリクロサン(triclosan)、ジクロサン(diclosan)、ジクロロフェン、グルコン酸クロロヘキシジン、オルト-フェニルフェノール、4級殺生物剤、オルト-ベンジル-パラ-クロロフェノール、および置換ジフェニルエーテルから選択される請求項4〜8のいずれかに記載の組成物。
【請求項10】
前記薬剤が、2-ブロモ-2-ニトロプロパン-1,3-ジオールである請求項4〜9のいずれかに記載の組成物。
【請求項11】
湿潤剤が、塩化カルシウム、グリセロール、ソルビトール、エチレングリコール、PEG、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、PCA(2-ピロリドン-5-カルボン酸)、硫酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、乳酸およびその誘導体、塩化ナトリウムおよびナトリウムジオクチルスルホスクシネートから選択される請求項4〜10のいずれかに記載の組成物。
【請求項12】
湿潤剤が塩化カルシウムである請求項4〜11のいずれかに記載の組成物。
【請求項13】
レオロジー添加物が、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルピロリドン、およびこれらのコポリマー、ヒドロキシプロピルグアー、キサンタンガム、キトサン、アクリル化コポリマー、ポリアクリルポリマー(カルボポル(carbopols))および水溶性ポリマーから選択される1種以上の化合物である請求項7記載の組成物。
【請求項14】
レオロジー添加物がビニルエーテル/無水マレイン酸コポリマーである請求項4〜13のいずれかに記載の組成物。
【請求項15】
前述に実質上記載されている請求項4〜14のいずれかに記載の組成物。
【請求項16】
請求項4〜15のいずれかに記載の組成物で処理されるフィルター。
【請求項17】
フィルターまたは濾過物(filtrate)に、濾過物を通って移動するのに適した殺生物剤または制生物剤を添加する工程を含む、フィルター上の濾過物を処理する方法。
【請求項18】
フィルターを請求項4〜15のいずれかに記載の組成物で処理する工程、
フィルターを通して空気を通過させることにより、フィルター上に濾過物(filtrate)として汚染物質を蓄積する工程、および
殺生物剤を濾過物中へ移動させる工程
を含む、空気中の風媒性汚染物質を減らす方法。
【請求項19】
フィルターを殺生物剤または制生物剤で処理する工程、
フィルターを通して空気を通過させることにより、フィルター上の濾過物(filtrate)として汚染物質を蓄積する工程、および
殺生物剤を濾過物を通じて移動させる工程
を含む、空気中の風媒性汚染物質を減らす方法。
【請求項20】
実施例のうちいずれか一つを参照して前述に実質上記載されている、請求項17〜19のいずれかに記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−218355(P2011−218355A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−122995(P2011−122995)
【出願日】平成23年6月1日(2011.6.1)
【分割の表示】特願2001−571036(P2001−571036)の分割
【原出願日】平成13年3月27日(2001.3.27)
【出願人】(500247091)
【Fターム(参考)】