説明

券媒体処理装置及び券媒体処理方法

【課題】利用者に対するサービス性を向上することが可能な券媒体処理装置及び券媒体処理方法を提供することを目的とする。
【解決手段】券媒体から定期券情報を読み取るとともに、当該券媒体の改札記録を読み取る読取手段27と、読取手段により読み取られた定期券情報及び改札記録に基づいて、定期券情報を更新する継続発行処理を実行しない方が有益であるか否かを判断する判断手段21と、判断手段により有益であると判断されたのに基づいて、継続発行処理を実行するか否かの選択を受け付ける選択手段25と、を備えたことを特徴とする券媒体処理装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、券媒体処理装置及び券媒体処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、利用者が駅構内などの施設内に入場する場合や、施設内から出場する場合などに利用する券媒体として、無線通信が可能な券媒体(ICチップを内蔵したICカードや携帯端末機器などを含む)が実用化されている。このような券媒体には、定期券として利用可能な機能が備わったもの(以下、IC定期券とも称する)や、ストアードフェアカードとして利用可能な機能が備わったもの、さらには、これらの両方の機能を兼ね備えたものなどがある。
【0003】
このような券媒体のうち、定期券としての機能を備えたものは、定期券発行機によって発行される。例えば、特許文献1によれば、2つの磁気定期券からそれぞれ定期券情報を読み取り、それら2つの磁気定期券における有効区間が連続する場合、それぞれの磁気定期券の定期券情報を1つのIC定期券に記録し、発券するようにした定期券処理装置と定期券処理システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−100252号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明の目的は、利用者に対するサービス性を向上することが可能な券媒体処理装置及び券媒体処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の態様によれば、
券媒体から定期券情報を読み取るとともに、当該券媒体の改札記録を読み取る読取手段と、前記読取手段により読み取られた定期券情報及び改札記録に基づいて、定期券情報を更新する継続発行処理を実行しない方が有益であるか否かを判断する判断手段と、前記判断手段により有益であると判断されたのに基づいて、継続発行処理を実行するか否かの選択を受け付ける選択手段と、を備えたことを特徴とする券媒体処理装置が提供される。
【0007】
この発明の他の態様によれば、
券媒体処理装置に挿入された券媒体から定期券情報を読み取るとともに、当該券媒体の改札記録を読み取り、読み取った定期券情報及び改札記録に基づいて、定期券情報を更新する継続発行処理を実行しない方が有益であるか否かを判断し、有益であると判断したのに基づいて、継続発行処理を実行するか否かの選択を受け付け、継続発行処理を実行することが選択されたのに基づいて、当該券媒体に対して更新済みの定期券情報を書き込み、定期券情報の書込が完了した当該券媒体、あるいは、継続発行処理を実行しないことが選択されたのに基づいて定期券情報の書込が行われなかった当該券媒体を排出する、ことを特徴とする券媒体処理方法が提供される。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、利用者に対するサービス性を向上することが可能な券媒体処理装置及び券媒体処理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、本実施形態における駅務システムの一構成例を概略的に示すブロック図である。
【図2】図2は、図1に示した駅務システムの改札機の一構成例を概略的に示すブロック図である。
【図3】図3は、図1に示した駅務システムの券売機の一構成例を概略的に示すブロック図である。
【図4】図4は、本実施形態において処理対象であるIC定期券の券情報の一構成例を示す図である。
【図5】図5は、本実施形態におけるIC定期券の継続発行処理を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、一実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において、同一又は類似した機能を発揮する構成要素には同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0011】
特に、本実施形態においては、券媒体処理装置の一例としていわゆるIC定期券の継続発行機能を備えた券売機について説明するとともに、券媒体処理方法の一例としてこの券売機に適用可能なIC定期券の継続発行処理について説明する。
【0012】
図1は、本実施形態における駅務システムの構成を概略的に示すブロック図である。
【0013】
この駅務システムは、改札機1や券売機2などの駅務機器と、これらの駅務機器に対する上位機器(あるいは外部機器)として機能するホストコンピュータ4と、を有している。図示した例の駅務システムにおいて、各駅務機器(すなわち改札機1や券売機2など)には、1つの駅に設置された駅務機器のみならず、他の駅に設置された駅務機器も含まれている。つまり、本実施形態の駅務システムは、同一駅に複数台の駅務機器を設置したシステムに限られるものではなく、複数の駅にそれぞれ駅務機器を設置したシステムも含まれる。
【0014】
改札機1は、駅の改札口などにおいて利用者が通行可能な改札通路に沿って配置されている。この改札機1は、利用者が所持している券媒体の券情報に基づいて、改札口での利用者に対する改札業務、つまり駅構内に入場する際の入場処理や駅構内から出場する際の出場処理などの処理を行う。より具体的には、改札機1は、券媒体から読み取った券情報に基づいて改札通路の通行の可否を判定し、必要に応じて券媒体に入場記録または出場記録を書き込む。
【0015】
券売機2は、利用者の操作に応じて券媒体を発行する発行業務を行う。より具体的には、券売機2は、普通乗車券、定期券、特急券、回数券、入場券、ストアードフェアカードなどの機能を単独で有する券媒体あるいはこれらの複数の機能を兼ね備えている券媒体を発行する。また、券売機2は、発行業務として、利用者が所持する定期券を受け取り、継続定期券を発行する継続発行処理も行う。
【0016】
このような券売機2によって発行・処理された券媒体は、いずれも上記した改札機1で利用可能となる。また、券売機2によって発行される券媒体の形態としては、無線式の券媒体及び磁気式の券媒体があるが、いずれも改札機1で利用可能である。なお、無線式の券媒体とは、改札機1あるいは券売機2の側との無線通信が可能なICチップを内蔵した携帯電話などの携帯端末機器、ICチップを内蔵したICカードなどである。
【0017】
これらの券媒体のうち、少なくとも定期券の機能を備えた無線式の券媒体(すなわち、本実施形態におけるIC定期券に相当する)は、券情報として、券媒体固有の識別情報(あるいはシリアル番号)、利用者の氏名などの個人情報、利用可能な金額に対応した残額情報、定期券として利用するのに必要な定期券情報、改札記録(あるいは改札ログ)などを有している。このような各種券情報は、IC定期券の図示しないメモリ部に所定形式で記憶されている。
【0018】
定期券情報としては、例えば、利用可能な定期区間(あるいは発駅、経由駅、着駅)、定期券として利用可能な利用開始日、定期券として利用可能な有効期限日、定期券額面などの各種情報が含まれる。
【0019】
改札記録としては、改札機1を利用した際に券媒体に書き込まれた入場記録や出場記録などが含まれる。入場記録は、入場駅の改札機1による入場処理の際に書き込まれた情報であり、入場処理が行われた入場駅や、入場処理を行った入場日時などの各種情報が含まれる。出場記録は、出場駅の改札機1による出場処理の際に書き込まれた情報であり、出場処理が行われた出場駅や、出場処理を行った出場日時などの各種情報が含まれる。
【0020】
ホストコンピュータ4は、図示した駅務システム上の各駅務機器を監視し、各駅務機器における処理データを集計したり、各駅務機器の動作状況を管理したりする。このホストコンピュータ4は、制御部41、通信部42、メモリ43などを有している。制御部41は、ホストコンピュータ4の制御のみならず、駅務システム全体の制御を行う。通信部42は、改札機1や券売機2などの下位の駅務機器との間で種々の情報の送受信を行うインターフェースである。
【0021】
制御部41は、通信部42を介して駅務機器から送信された各種情報をメモリ43に記憶する。メモリ43は、ホストコンピュータ4を制御するための制御データなどの各種データを記憶している。また、このメモリ43は、駅務機器から送信された各種情報を記憶している。
【0022】
次に、上述した駅務システムに適用可能な改札機1の構成について説明する。
【0023】
図2は、改札機1の構成を概略的に示すブロック図である。
【0024】
すなわち、改札機1は、制御部11、通信部12、メモリ13、表示部14、ドア制御部15、磁気券処理部16、カードリーダライタ17などを有している。
【0025】
制御部11は、改札機1全体の制御を行うものである。また、この制御部11は、券媒体の券情報に基づいて券媒体の有効性、つまり、利用者の改札通路の通行を許可するか否かを判定する機能を備えている。通信部12は、上位のホストコンピュータ4との通信を行うインターフェースである。メモリ13は、改札機1を制御するための制御データや、改札業務を行うのに必要な運賃データなどが記憶されている。
【0026】
表示部14は、液晶表示器などで構成され、改札機1を利用する利用者に対して操作を案内する画面や有効性の判定結果などに対応した案内画面を表示する。ドア制御部15は、改札機1に設けられている図示しないドアを開閉制御するものであり、有効性の判定結果に対応して改札通路を開放したり閉鎖したりする。
【0027】
磁気券処理部16は、乗車券や定期券などとして利用される磁気式の券媒体を処理するものである。この磁気券処理部16は、磁気式の券媒体を機体内に取り込んで搬送する搬送機構、券媒体から磁気情報を読取る読取ヘッド、券媒体に磁気情報を書き込む書込ヘッド、券媒体の券面に印刷を施す印刷機構、券媒体を選択的に回収する回収機構などを有している。
【0028】
カードリーダライタ17は、乗車券や定期券として利用される無線式の券媒体を処理するものである。このカードリーダライタ17は、無線式の券媒体との間で無線通信を行う無線通信機能を有しており、券媒体に記憶されている情報を読み取る機能と、券媒体に情報を書き込む機能とを有している。無線通信機能を有する無線式の券媒体が所定の通信エリア(あるいは読取エリア)に翳された場合、カードリーダライタ17は、券媒体に対して無線通信により情報の読み取り及び書き込みを行う。
【0029】
次に、上述した駅務システムに適用可能な券売機2の構成について説明する。
【0030】
図3は、券売機2の構成を概略的に示すブロック図である。
【0031】
すなわち、券売機2は、判断手段として機能する制御部21、通信部22、メモリ23、案内手段として機能する表示部24、選択手段として機能する操作部25、磁気券処理部26、読取手段及び書込手段として機能するカードリーダライタ27、排出手段として機能する搬送部28、金額処理部29、発行機構部30、案内手段として機能する音声出力部31などを有している。
【0032】
制御部21は、券売機2全体の制御を行うものである。また、この制御部21は、IC定期券の継続発行処理が要求された際に、継続発行処理を実行しない方が利用者にとって有益であるか否かなどを判断する機能を備えている。より具体的には、制御部21は、IC定期券の定期券情報に含まれる利用開始日と改札記録のうちの最新の改札記録の日付とを比較して、定期券としての利用状況に応じた利用金額の総額が、当該IC定期券の継続発行処理を実行した場合に要する定期券金額より少ないか否かを判断する。あるいは、制御部21は、IC定期券の定期券情報に含まれる利用開始日と改札記録のうちの最新の改札記録の日付とが同一であるか否かを判断する。
【0033】
通信部22は、上位のホストコンピュータ4との通信を行うインターフェースである。メモリ23は、券売機2を制御するための制御データや、定期券などの各種券媒体を発行する発行業務を行うのに必要な運賃データなどが記憶されている。この運賃データには、定期券金額を算出するためのデータや、所定区間の利用金額のデータなども含まれている。
【0034】
表示部24は、液晶表示器などで構成されている。この表示部24は、制御部21による制御に基づいて、券売機2を利用する利用者に対して発行業務に必要な各種操作を案内する画面や、発行する券媒体の内容などの種々の情報を案内する画面などを表示する。また、この表示部24は、IC定期券の継続発行処理が要求された場合に、IC定期券の継続発行処理を実行しない方が利用者にとって有益である場合にはその旨を案内する画面を表示する。
【0035】
操作部25は、各種ボタンや、接触を検知したのに基づいて対応する情報を出力するタッチパネルなどで構成されている。この操作部25は、制御部21による制御に基づいて、利用者による各種操作指示の入力を受け付ける。より具体的には、この操作部25は、継続発行処理の実行の選択あるいは継続発行処理のキャンセルの選択などを受け付ける。表示部24及び操作部25の少なくとも一部は、例えば、タッチパネル内蔵の液晶表示器などで構成される。
【0036】
磁気券処理部26は、制御部21による制御に基づいて、磁気式の券媒体を処理するものであり、券媒体に記録されている磁気情報を読み取る読取ヘッド、券媒体に磁気情報を書き込む書込ヘッドなどを有している。
【0037】
カードリーダライタ27は、制御部21による制御に基づいて、無線式の券媒体を処理するものであり、券媒体との間で無線通信を行い、券媒体に記憶されている券情報を読み取る機能と、券媒体に券情報を書き込む機能とを有している。より具体的には、このカードリーダライタ27は、IC定期券の継続発行処理が要求された場合に、このIC定期券から券情報として少なくとも定期券情報及び改札記録を読み取り、継続発行処理の実行が選択された場合に、更新済みの定期券情報、例えば新規の利用開始日及び新規の有効期限日などをIC定期券に書き込む。
【0038】
搬送部28は、制御部21による制御に基づいて、挿入部28Aから挿入された券媒体を受け取り、機体内に取り込み、磁気券処理部26またはカードリーダライタ27に搬送し、必要に応じて排出部28Bから券媒体を排出する。挿入部28Aには、券媒体の有無を検知するセンサが設けられている。なお、挿入部28Aと排出部28Bとは、単一の挿入兼排出部によって構成されても良い。
【0039】
金額処理部29は、制御部21による制御に基づいて、利用者によって投入された現金あるいは金額カード(すなわちストアードフェアカードやクレジットカードなど)の金額を処理する。発行機構部30は、制御部21による制御に基づいて、各種券媒体を発行するものであり、券売機2の機体内に予め用意されている券紙や初期状態のICカードなどに必要な券情報を書き込んで発行する機能を有している。
【0040】
音声出力部31は、制御部21による制御に基づいて、券売機2を利用する利用者に対して発行業務に必要な各種操作を案内する音声や、発行する券媒体の内容などの種々の情報を案内する音声などを図示しないスピーカーから出力する。また、この音声出力部31は、IC定期券の継続発行処理が要求された場合に、IC定期券の継続発行処理を実行しない方が利用者にとって有益である場合にはその旨を案内する音声を図示しないスピーカーから出力する。
【0041】
次に、上述した券売機2に適用可能なIC定期券の継続発行処理について券売機2の各部の動作とともに説明する。
【0042】
図4は、本実施形態において処理対象であるIC定期券の券情報の一構成例を示す図である。
【0043】
券情報には、券媒体固有の識別情報、利用者の個人情報、残額情報、定期券情報、改札記録などが含まれる。定期券情報には、定期区間である発駅(A駅)及び着駅(B駅)、利用開始日(2010年02月01日)、有効期限日(2010年02月28日)、定期券額面(4730円)などの各種情報が含まれる。
【0044】
改札記録としては、例えば、最新の改札記録を含めて過去3件分の改札記録が保存されている。ここに示した例では、改札記録として、時系列で古い順に、1)2010年02月01日にB駅を出場した出場記録、2)2010年02月01日にB駅から入場した入場記録、3)2010年02月01日にA駅を出場した出場記録が含まれる。つまり、ここでは、最新の改札記録(あるいは、最終の利用履歴)は、3)の出場記録である。
【0045】
図5は、本実施形態におけるIC定期券の継続発行処理を説明するためのフローチャートである。
【0046】
まず、制御部21は、挿入部28Aに券媒体が挿入されたか否かを判断する(ST11)。すなわち、制御部21は、挿入部28Aに設けられたセンサからの出力によって、挿入部28Aに券媒体が挿入されたことを検知したのに基づいて(ST11、YES)、搬送部28を制御して挿入された券媒体を受け取り、機体内に取り込む。そして、制御部21は、取り込んだ券媒体がIC定期券であると判断したのに基づき搬送部28を制御してIC定期券をカードリーダライタ27まで搬送する。
【0047】
カードリーダライタ27は、制御部21による制御に基づき、搬送部28によって搬送されたIC定期券との間で無線通信を行い、IC定期券から券情報を読み取る(ST12)。読み取った券情報には、利用開始日や有効期限日などの定期券情報、及び、当該IC定期券の改札記録が含まれる。
【0048】
続いて、制御部21は、カードリーダライタ27により読み取られた定期券情報及び改札記録に基づいて、定期券情報を更新する継続発行処理を実行しない方が有益であるか否かを判断する。なお、本実施形態での『有益』とは、利用者が支払う対価つまり利用額の低額化を意味する。
【0049】
より具体的には、まず、制御部21は、定期券情報に含まれる利用開始日と、改札記録に含まれる最新の改札記録の日付とを比較する(ST13)。そして、制御部21は、利用開始日が最新の改札記録の日付と同一であるか否かを判断する(ST14)。図4に示した例では、利用開始日は2010年02月01日であり、最新の改札記録の日付は3)の出場記録の日付である2010年02月01日であり、制御部21は、利用開始日と最新の改札記録の日付とが同一であると判断する。一方で、制御部21は、例えば、利用開始日が2010年02月01日であり、最新の改札記録の日付が2010年02月05日であった場合には、利用開始日と最新の改札記録の日付とが同一ではないと判断する。
【0050】
続いて、制御部21は、利用開始日が最新の改札記録の日付と同一ではないと判断したのに基づいて(ST14、NO)、カードリーダライタ27を制御して継続発行処理を実行する(ST15)。カードリーダライタ27は、ステップST12において券情報を読み取ったIC定期券に対して、定期区間を変更することなく、更新済みの定期券情報、例えば新規の利用開始日及び新規の有効期限日を書き込む。そして、カードリーダライタ27は、IC定期券に書き込んだ定期券情報が正確であるか否かを確認する。
【0051】
そして、制御部21は、IC定期券に書き込まれた定期券情報が正確であることが確認された後、搬送部28を制御してIC定期券を搬送し、継続発行処理済のIC定期券として排出部28Bから排出する(ST16)。
【0052】
一方、制御部21は、利用開始日が最新の改札記録の日付と同一であると判断したのに基づいて(ST14、YES)、定期券としての利用状況に応じた利用金額の総額(推定金額)が、継続発行処理を実行した場合に要する定期券金額より少ないと判断し、表示部24及び音声出力部31を制御して継続発行処理を実行しない方が利用者にとって有益である旨を案内する(ST17)。
【0053】
つまり、図4に示した例のように、利用開始日が最新の改札記録の日付と同一である場合、定期券として利用したのは利用開始日のみであり、その利用金額の総額は、A駅とB駅との間の一往復分の運賃相当額であると推定される。このため、利用金額の総額は定期券金額よりも少ないと判断される。
【0054】
このような場合における案内手法の一例としては、表示部24及び音声出力部31の少なくとも一方を用いる手法が挙げられる。例えば、表示部24は、更新前の定期券情報の利用開始日(2010年02月01日)から有効期限日(2010年02月28日)までの定期券としての利用状況あるいは利用頻度から判断して継続発行処理を行わない方が利用額を低額化できる旨の案内画面を表示する。また、音声出力部31は、表示部24に表示したのと同様の継続発行処理を行わない方が利用額を低額化できる旨の音声案内を出力する。
【0055】
そして、制御部21は、表示部24及び操作部25を制御して継続発行処理を実行するか否かの選択を受け付ける(ST18)。このとき、例えば、操作部25としてタッチパネルを内蔵した表示部24には、選択ボタンとして、「継続発行処理を実行する−YES」ボタンと、「継続発行処理を実行しない−NO」ボタンと、を表示する。
【0056】
そして、制御部21は、操作部25を介して「継続発行処理を実行する−YES」ボタンの押下(あるいは接触)を検知したのに基づいて継続発行処理を実行する旨の選択を受け付けたと判断し(ST18、YES)、先に説明したように、カードリーダライタ27を制御して定期券情報を更新する継続発行処理を実行し(ST15)、その後、IC定期券を継続発行処理済のIC定期券として排出部28Bから排出する(ST16)。
【0057】
一方で、制御部21は、操作部25を介して「継続発行処理を実行しない−NO」ボタンの押下あるいは接触を検知したのに基づいて継続発行処理を実行しない旨の選択を受け付けたと判断し(ST18、NO)、カードリーダライタ27によるIC定期券への定期券情報の書き込みを行うこと無しに、搬送部28を制御してIC定期券を排出部28Bから排出する(ST16)。
【0058】
以上のようなステップを経てIC定期券の継続発行処理を終了する。
【0059】
IC定期券を所持する利用者にとって、定期券としての利用頻度が少ない場合、定期券を購入しない方が経済的である。しかしながら、ストアードフェアカードなどを利用して所定区間を利用するたびに運賃相当額などを引き去った場合の利用金額の総額と、当該所定区間を定期区間とする定期券の継続発行処理を実行した場合の定期券金額とのどちらが利用者にとって有益、つまり利用額の低額化が可能になるかの計算は、利用者が行う必要があり、その手間は大変なものである。
【0060】
本実施形態によれば、券売機2において挿入されたIC定期券から定期券情報及び改札記録を読み取り、これらの読み取った券情報に基づいて継続発行処理を実行しない方が利用者にとって有益であるか否かを判断し、有益であると推測される際には、その旨を利用者に案内し、継続発行処理を実行するか否かの選択を受け付ける。
【0061】
あるいは、本実施形態によれば、券売機2において挿入されたIC定期券から定期券情報及び改札記録を読み取り、これらの読み取った券情報に基づいて利用開始日と最新の改札記録の日付とを比較し、定期券としての利用状況に応じた利用金額の総額が継続発行処理を実行した場合に要する定期券金額より少ないか否かを判断し、利用金額の総額が定期券金額よりも少ないと判断した際には、その旨を利用者に案内し、継続発行処理を実行するか否かの選択を受け付ける。
【0062】
あるいは、本実施形態によれば、券売機2において挿入されたIC定期券から定期券情報及び改札記録を読み取り、これらの読み取った券情報に基づいて利用開始日が最新の改札記録の日付と同一であるか否かを判断し、利用開始日が最新の改札記録の日付と同一であると判断した際には、定期券情報を更新する継続発行処理を実行しない方が有益である旨を案内し、継続発行処理を実行するか否かの選択を受け付ける。
【0063】
このため、利用者は、定期券としての利用状況に応じて自ら手間をかけて利用金額の総額を計算したり、計算した利用金額の総額と定期券金額と比較するといった煩雑な作業をしたりする必要がなくなる。そして、IC定期券の継続発行処理を行わない方が利用者にとって有益である場合には、継続発行処理を実行するか否かの選択が受け付けられる。
【0064】
したがって、利用者に負担をかけることなく、鉄道利用額の低額化が可能となり、利用者に対するサービス性を向上することが可能となる。
【0065】
なお、この発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、その実施の段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【0066】
本実施形態においては、利用者にとって有益である場合として、利用開始日が最新の改札記録の日付と同一である場合について説明したが、この例に限らない。
【符号の説明】
【0067】
2…券売機
21…制御部(判断手段)
22…通信部
23…メモリ
24…表示部(案内手段)
25…操作部(選択手段)
26…磁気券処理部
27…カードリーダライタ(読取手段、書込手段)
28…搬送部 28A…挿入部 28B…排出部(排出手段)
29…金額処理部
30…発行機構部
31…音声出力部(案内手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
券媒体から定期券情報を読み取るとともに、当該券媒体の改札記録を読み取る読取手段と、
前記読取手段により読み取られた定期券情報及び改札記録に基づいて、定期券情報を更新する継続発行処理を実行しない方が有益であるか否かを判断する判断手段と、
前記判断手段により有益であると判断されたのに基づいて、継続発行処理を実行するか否かの選択を受け付ける選択手段と、
を備えたことを特徴とする券媒体処理装置。
【請求項2】
券媒体から利用開始日を含む定期券情報を読み取るとともに、当該券媒体の改札記録を読み取る読取手段と、
前記読取手段により読み取られた定期券情報及び改札記録に基づいて、利用開始日と最新の改札記録の日付とを比較し、定期券としての利用状況に応じた利用金額の総額が、継続発行処理を実行した場合に要する定期券金額より少ないか否かを判断する判断手段と、
前記判断手段により利用金額の総額が定期券金額よりも少ないと判断されたのに基づいて、継続発行処理を実行するか否かの選択を受け付ける選択手段と、
を備えたことを特徴とする券媒体処理装置。
【請求項3】
券媒体から利用開始日を含む定期券情報を読み取るとともに、当該券媒体の改札記録を読み取る読取手段と、
前記読取手段により読み取られた定期券情報及び改札記録に基づいて、利用開始日が最新の改札記録の日付と同一であるか否かを判断する判断手段と、
前記判断手段により利用開始日が最新の改札記録の日付と同一であると判断されたのに基づいて、定期券情報を更新する継続発行処理を実行しない方が有益である旨を案内する案内手段と、
継続発行処理を実行するか否かの選択を受け付ける選択手段と、
を備えたことを特徴とする券媒体処理装置。
【請求項4】
さらに、前記選択手段により継続発行処理を実行することが選択されたのに基づいて当該券媒体に対して更新済みの定期券情報を書き込む書込手段と、
前記書込手段による定期券情報の書込が完了した当該券媒体、あるいは、前記選択手段により継続発行処理を実行しないことが選択されたのに基づいて前記書込手段による定期券情報の書込が行われなかった当該券媒体を排出する排出手段と、
を備えたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の券媒体処理装置。
【請求項5】
券媒体処理装置に挿入された券媒体から定期券情報を読み取るとともに、当該券媒体の改札記録を読み取り、
読み取った定期券情報及び改札記録に基づいて、定期券情報を更新する継続発行処理を実行しない方が有益であるか否かを判断し、
有益であると判断したのに基づいて、継続発行処理を実行するか否かの選択を受け付け、
継続発行処理を実行することが選択されたのに基づいて、当該券媒体に対して更新済みの定期券情報を書き込み、
定期券情報の書込が完了した当該券媒体、あるいは、継続発行処理を実行しないことが選択されたのに基づいて定期券情報の書込が行われなかった当該券媒体を排出する、
ことを特徴とする券媒体処理方法。
【請求項6】
券媒体処理装置に挿入された券媒体から利用開始日を含む定期券情報を読み取るとともに、当該券媒体の改札記録を読み取り、
読み取った定期券情報及び改札記録に基づいて、利用開始日と最新の改札記録の日付とを比較し、定期券としての利用状況に応じた利用金額の総額が、継続発行処理を実行した場合に要する定期券金額より少ないか否かを判断し、
利用金額の総額が定期券金額よりも少ないと判断したのに基づいて、継続発行処理を実行するか否かの選択を受け付け、
継続発行処理を実行することが選択されたのに基づいて、当該券媒体に対して更新済みの定期券情報を書き込み、
定期券情報の書込が完了した当該券媒体、あるいは、継続発行処理を実行しないことが選択されたのに基づいて定期券情報の書込が行われなかった当該券媒体を排出する、
ことを特徴とする券媒体処理方法。
【請求項7】
券媒体処理装置に挿入された券媒体から利用開始日を含む定期券情報を読み取るとともに、当該券媒体の改札記録を読み取り、
読み取った定期券情報及び改札記録に基づいて、利用開始日が最新の改札記録の日付である否かを判断し、
利用開始日が最新の改札記録の日付と同一であると判断したのに基づいて、定期券情報を更新する継続発行処理を実行しない方が有益である旨を案内し、
継続発行処理を実行するか否かの選択を受け付け、
継続発行処理を実行することが選択されたのに基づいて、当該券媒体に対して更新済みの定期券情報を書き込み、
定期券情報の書込が完了した当該券媒体、あるいは、継続発行処理を実行しないことが選択されたのに基づいて定期券情報の書込が行われなかった当該券媒体を排出する、
ことを特徴とする券媒体処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−175475(P2011−175475A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−39190(P2010−39190)
【出願日】平成22年2月24日(2010.2.24)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】