説明

刺激応答開繊性不織布の処理方法

【解決手段】本発明の刺激応答開繊性不織布の処理方法は、−N+13・Cl-


よりなる群から選ばれる少なくとも一種類のカチオン性基(上記式中、R1は、それぞれ
独立に、水素原子または炭素数1〜3の炭化水素基である)を有する多数の繊維と、−COO-・H+、−SO3-・H+、−SO4-・H+および−PO4-・H+よりなる群から選ばれ
る少なくとも一種類のアニオン性基を有する多数の繊維とを含有する刺激応答開繊性不織布を、pH値が8以上の水性媒体に浸漬して開繊することを特徴としている。
【効果】本発明によれば、酸性乃至中性領域では安定である刺激応答開繊性不織布を、アルカリ性にすれば、アルカリ性を感知してこれに応答して開繊する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性処理媒体のpH値等によって開繊して水性媒体に分散させることができる不織布の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、介護用品、生理用品、おむつ、清拭布等(以下これらを総称して、「衛生用品」と記載することもある)は布等が使用されていたが、近時、布に代わって紙、不織布が使用されることが多くなってきている。こうした紙、不織布からなる上記衛生用品は一回使い切りであり、非常に便利であることから、今後益々その需要の増大が予想される。
【0003】
こうした衛生用品には、例えば尿等の水分を良好に吸収することが必要であり、従って、こうした衛生用品として使用される紙、不織布類は、水分を含有しても、紙、不織布類の形態が維持されることが必要である。このため実際にこうした衛生用品は耐水性を有する紙、不織布類を用いて形成されている。従って、こうした衛生用品は水に不溶であることから、これらを使用した後に水洗トイレ等に流して処理することはできず、一般ゴミとして処理されていた。
【0004】
しかしながら、一度使用された衛生用品は汚物を含んでおり、使用後はできるだけ速やかに処理することが望まれる。こうした使用後の衛生用品を処理する方法として、水洗トイレに流して処理することができれば非常に好適である。
【0005】
ところが、上述のように衛生用品は使用する段階では耐水性が必要であることから、使用された後の衛生用品も当然に優れた耐水性があり、こうした優れた耐水性を有する衛生用品を水洗トイレに流して処理することはできなかった。このように衛生用品において、使用時に必要となる耐水性と使用後に望まれる開繊性とは相反する特性であり、両特性を有する衛生用品の製造は非常に困難であるとされていた。
【0006】
これに対して、特開平4-216889号公報には、上水及び体液に対して溶解しにく
く、下水に対して溶解しやすい水崩壊性の不織布およびバインダーが開示されている。
この公報には、具体的に以下のような組成のバインダーが開示されている。「エチレン性不飽和カルボン酸あるいはその無水物と、架橋性単量体と、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとを必須成分とする平均分子量5000〜10000の共重合体であって、カルボキシル基を一価のアルカリで中和したバインダー。」ここで架橋性不飽和単量体は、N-メチロール(メタ)アクリルアミドまたはそのエーテル化合物であることが示されている。
【0007】
しかしながら、このバインダーは、カルボキシル基が一価のアルカリで中和されているために、含水するとこの一価のアルカリ成分が解離し、この解離した一価のアルカリ成分は皮膚に対する刺激性を有している。また、下水に対して崩壊可能にするためには、上記の重合体の塩を用いる場合には、形成される架橋構造の量および構造が極めて重要な要素となり、こうした樹脂の溶解性を制御するための架橋構造の形成は著しく難しい。
【特許文献1】特開平4-216889号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、使用済みの刺激応答開繊性不織布を開繊処理する方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の刺激応答開繊性不織布の処理方法は、
−N+13・Cl-
【0010】
【化2】

【0011】
よりなる群から選ばれる少なくとも一種類のカチオン性基(上記式中、R1は、それぞれ
独立に、水素原子または炭素数1〜3の炭化水素基である)を有する多数の繊維と、−COO-・H+、−SO3-・H+、−SO4-・H+および−PO4-・H+よりなる群から選ばれ
る少なくとも一種類のアニオン性基を有する多数の繊維とを含有する刺激応答開繊性不織布を、pH値が8以上の水性媒体に浸漬して開繊することを特徴としている。
【0012】
また、本発明の方法で使用される刺激応答開繊性不織布は、カチオン性基を有する多数の繊維と、アニオン性基を有する多数の繊維とを含有する。ここで使用される刺激応答開繊性不織布は、カチオン性基を有する多数の繊維と、アニオン性基を有する多数の繊維とが分散されている繊維分散水性媒体を用いて抄紙した後、乾燥させることにより製造することができる。
【0013】
または、カチオン繊維とアニオン繊維とを高圧ウォータージェットを用いて交絡させるか、または、繊維を機械的に交絡させた後、水に浸漬することで製造することができる。
本発明の刺激応答開繊性不織布の処理方法は、カチオン性基を有する多数の繊維と、アニオン性基を有する多数の繊維とを、含有する刺激応答開繊性不織布を、pH値が8以上の水性媒体に浸漬して開繊することを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
本発明の方法で使用される刺激応答開繊性不織布は、−N+13・Cl-
【0015】
【化3】

【0016】
よりなる群から選ばれる少なくとも一種類のカチオン性基(上記式中、R1は、それぞれ
独立に、水素原子または炭素数1〜3の炭化水素基である)を有する多数の繊維と、−COO-・H+、−SO3-・H+、−SO4-・H+および−PO4-・H+よりなる群から選ばれ
る少なくとも一種類のアニオン性基を有する多数の繊維とを含有する繊維とからなり、こうした繊維に導入されている基は、酸性領域および中性領域では、繊維に導入されたカチオン性基とアニオン性基とがイオン的に安定に結合しており、繊維の結合が崩壊することはない。しかしながら、アルカリ性領域においては、この第2の刺激応答開繊性不織布を形成しているカチオン性基とアニオン性基とのイオン的な結合が崩壊するために不織布の接合力がなくなり、不織布は崩壊し、開繊される。
【0017】
このように本発明の刺激応答開繊性不織布は、一定値以上のアルカリ性水溶液で開繊するので、この不織布から形成されている衛生用品をアルカリ性水性媒体で処理することにより、水洗トイレに流して処理することが可能になる。
【0018】
なお、本発明において、酸性領域とはpH値6未満の領域を表し、中性領域とはpH値6以上8未満の範囲を表し、アルカリ領域とはpH値が8以上の領域を表すものとする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
次の本発明の刺激応答開繊性不織布の処理方法について実施例を示して具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
本発明の実施例に係る刺激応答開繊性不織布は、繊維自体がカチオン性基またはアニオン性基を有しており、カチオン性基を有する繊維とアニオン性基を有する繊維とがイオン的に接合することにより形成された不織布である。
【0020】
本実施例に係る刺激応答開繊性不織布は、カチオン性基またはアニオン性基が導入された多数の繊維から形成されており、これらのイオン性基が導入される前の繊維の例としては、木材パルプ等の植物性セルロース繊維、綿繊維、麻繊維、ジュート、大麻繊維およびコットンリンター等の植物繊維、羊毛、シルク等の動物性繊維、ビスコースレーヨンおよび銅アンモニウムレーヨン等の再生セルロース繊維、ポリオレフィン繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アクリル繊維等の合成繊維、並びに、これらの繊維を組み合わせた複合繊維を挙げることができる。また、予めイオン性基を分子内に有する天然繊維、合成繊維であってもよい。
【0021】
これらの繊維の平均長さは、通常0.1〜60mm、好ましくは20〜50mmの範囲内に
あり、そして、本発明では通常は0.1〜20デニール、好ましくは0.5〜1.5デニー
ルの範囲内の繊維が使用される。
【0022】
本実施例に係る刺激応答開繊性不織布を構成する繊維に導入されているカチオン性基の例としては、−N+13・Cl-
【0023】
【化4】

【0024】
を挙げることができ、これらのカチオン性基は単独であるいは組み合わされて繊維に導入されていてもよい。上記式中、R1は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜3
の炭化水素基または−CH2CH2OHである。また、これらのカチオン性基は、−(CH2CH2O)n−基、糖鎖、アルキル基などのスペーサーを介して繊維に導入されていても
よい。第2の刺激応答開繊性不織布を構成する繊維に導入されているアニオン性基の例としては、−COO-・H+、−SO3-・H+、−SO4-・H+、−PO4-・H+を挙げること
ができ、これらのカチオン性基は単独であるいは組み合わされて繊維に導入されていてもよい。また、−(CH2CH2O)n−基、糖鎖、アルキル基などを介して繊維に導入され
ていてもよい。
【0025】
特に本実施例では、カチオン性基として上記−N+13・Cl-基が導入されたセルロース系繊維と、アニオン性基として、−COO-・H+基が導入されたセルロース系繊維とを組み合わせて使用することが好ましい。
【0026】
上記のような極性基は、繊維の有する反応性基に対して反応可能な基と、上記アニオン性基またはカチオン性基を有する極性基導入化合物を用いることにより導入することができる。例えば、セルロース系繊維に、−N+13・Cl-基を導入するには、極性基導入化合物として
【0027】
【化5】

【0028】
を使用して、繊維の主鎖中に存在するOH基に、この極性基導入化合物を反応させる方法を採用することができる。なお、上記式中、R1は、それぞれ独立に、前記と同義であ
る。また、例えば、セルロース系繊維に、−COO-・H+基を導入するには、極性基導入化合物としてClCH2COONaを使用して、繊維の主鎖中に存在するOH基に、この
極性基導入化合物を反応させる方法を採用することができる。これらのカチオン性基を有する繊維とアニオン性を有する繊維とは、別々に製造される。
【0029】
本実施例に係る刺激応答開繊性不織布において、このカチオン性基を有する繊維とアニオン性基を有する繊維とが分散された水性分散液のpH値は、通常は2〜8、好ましくは2〜4の範囲内に調整される。このように弱酸性になるように水性分散液のpH値を調整することにより、繊維が相互に接合して酸性領域および中性領域で安定になる。
【0030】
本実施例に係る刺激応答開繊性不織布は、上記のようにカチオン性基を有する繊維とアニオン性基を有する繊維とから形成されており、カチオン性基あるいはアニオン性基を有していない繊維を使用することを必要とするものではないが、本実施例に係る刺激応答開繊性不織布の特性、即ち、アルカリ性水溶液を応答して開繊するという特性が損なわれない範囲内で、イオン性を有しない繊維を単独であるいは組み合わせて配合することもできる。このようなイオン性を有しない繊維の例としては、木材パルプ等の植物性セルロース繊維、綿繊維、麻繊維、ジュート、大麻繊維およびコットンリンター等の植物繊維、羊毛、シルク等の動物性繊維、ビスコースレーヨンおよび銅アンモニウムレーヨン等の再生セルロース繊維、ポリオレフィン繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アクリル繊維等の合成繊維を挙げることができる。
【0031】
このようなカチオン性基およびアニオン性基を有していない繊維の配合量は、得られる不織布100重量部に対して通常は0〜50重量部、好ましくは0〜20重量部である。
本実施例に係る刺激応答開繊性不織布は、まず、上記のようなカチオン性基を有する繊維とアニオン性基を有する繊維とを別々に製造し、これらのカチオン性基を有する繊維とアニオン性基を有する繊維とを計量して水性媒体に投入して分散させる。さらに必要によりイオン性基を有しない繊維を水性媒体に分散させる。このときの水性媒体中における繊維の合計の含有率は、通常は0.01〜1重量%、好ましくは0.01〜0.1重量%の範
囲内に設定される。
【0032】
本実施例に係る刺激応答開繊性不織布は、繊維自体が自己接合性を有しているので、バインダーを用いる必要性はないが、繊維が分散している水性媒体中に、通常の水性バインダーを添加することもできる。このようなバインダーを使用する場合、第2の刺激応答開繊性不織布中におけるこれらのバインダーの含有率が、通常は0〜20重量%、好ましくは0〜10重量%の範囲内になるように配合される。
【0033】
本実施例に係る刺激応答開繊性不織布を製造する際に、カチオン性基を有する繊維、アニオン性基を有する樹脂繊維、必要により水性バインダーを分散させる水性媒体としては、一般に水が使用されるが、さらに水に、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどの低級アルコール、エチルセルソルブなどのセルソルブ系溶剤等を併用することができる。
【0034】
このような水性媒体中に配合される繊維の水性媒体中における濃度は、通常は0.01
〜1重量%、好ましくは0.01〜0.1重量%の範囲内に調整される。また、必要により水性媒体中に配合されるアルカリ応答性バインダーおよび/または水性バインダーの濃度は、通常は0〜0.05重量%、好ましくは0〜0.01重量%の範囲内に調整される。そして、この水性媒体中に分散されるカチオン性基を有する繊維とアニオン性基を有する繊維との配合重量比は、通常は1:9〜9:1の範囲内、好ましくは1:9〜6:4の範囲内になるようにそれぞれの繊維の配合量が設定される。
【0035】
なお、本発明で使用することがある水性バインダーの例としては、CMC−Na、デンプン、ポリビニルアルコールおよびポリ酢酸ビニル等を挙げることができる。
この水性分散液は、通常はpH値が2〜8、好ましくは2〜4の範囲内になるように調整される。即ち、この水性分散液を僅かに酸性にすることによりカチオン性基を有する繊維とアニオン性基を有する繊維とがイオン的に複合して酸性領域および中性領域では、この不織布は、安定である。従って、このように水性分散液のpH値を酸性領域にすることにより、繊維が有している極性基がイオン的に複合して全体として安定した不織布を得ることができる。水性分散液のpH値の調整には、カチオン性基を有する繊維とアニオン性基を有する繊維との配合量によって調整する方法、および、塩酸、硝酸、硫酸などを用いる方法を採用することができる。
【0036】
上記のような水性分散液を用いて、通常の方法に従って抄紙し、乾燥することにより本発明の刺激応答開繊性不織布を製造することができる。また、カチオン性繊維とアニオン性繊維とを、通常の方法により乾式にて賦形する。これを高圧ウォータージェットを用いて交絡させる。または、機械的に賦形交絡した繊維に水を散布、または、水に浸漬させた後乾燥することにより、刺激応答開繊性不織布を作成することができる。こうして抄紙することにより得られる第2の刺激応答開繊性不織布の目付は、通常は10〜60g/m2
、好ましくは15〜30g/m2である。また、抄紙する際に、この第2の刺激応答開繊
性不織布の乾燥後の平均厚さが、通常は100〜800μm、好ましくは200〜500μmの範囲内になるように抄紙する。
【0037】
このような目付および厚さを有する刺激応答開繊性不織布は、良好な吸水性を示す。こうして得られた本実施例に係る刺激応答開繊性不織布は、多数の繊維が、繊維自体の有する接合力によって相互に接合して酸性領域および中性領域で安定な不織布を形成する。しかしながら、この刺激応答開繊性不織布は、アルカリ性雰囲気では、繊維間に作用していたイオン的な結合がなくなり、アルカリ性溶液と接触することにより開繊して繊維状になり分散する。
【0038】
本実施例に係る刺激応答開繊性不織布においては、カチオン性基を有する繊維およびアニオン性基を有する繊維における極性基がイオン的に結合しており(即ち、両極性の基が中和された状態になり)、酸性領域および中性領域では、繊維が相互に接合しているため開繊しにくいが、アルカリ性雰囲気、特にpH値が8以上のアルカリ性雰囲気では、繊維の間に形成されたイオン的結合状態が維持できなくなり、繊維は開繊して、水に分散する。
【0039】
次に、本発明の刺激応答開繊性不織布の処理方法について説明する。
上記の刺激応答開繊性不織布は、この不織布を構成する繊維自体が、カチオン性基、および、アニオン性基を有している。このようにカチオン性基を有する繊維とアニオン性基を有する樹脂とは、酸性領域および中性領域では、イオン的に相互に接合して、安定な不織布を構成する。
【0040】
本発明の刺激応答開繊性不織布の処理方法は、上記のような刺激応答開繊性不織布が酸性領域および中性領域では安定で開繊することがなく、アルカリ性雰囲気では、繊維の結合力が減失することを利用して、使用後の不織布をアルカリ性溶液に浸漬して開繊する方法である。即ち、本発明における刺激応答開繊性不織布は、上記のように酸性雰囲気および中性雰囲気では、イオン的に結合した複合繊維は解離することがなく、酸性雰囲気あるいは中性雰囲気において、刺激応答開繊性不織布は開繊・崩壊することがない。
【0041】
また、刺激応答開繊性不織布は、上記のような特別なバインダーを基本的には含有していないにも拘わらず、繊維自体がアルカリ応答開繊性を有しているので、酸性領域および中性領域では安定であるが、アルカリ性領域におくと繊維間に作用しているイオン的結合力がなくなり、開繊して繊維状になりアルカリ性の水性媒体に分散する。
【0042】
即ち、この刺激応答開繊性不織布は、置かれた環境の中で酸性雰囲気および中性雰囲気という刺激に対しては応答することなく、アルカリ性雰囲気を選択的に感知して、このアルカリ性刺激に対して応答して開繊して、繊維を水性媒体に分散可能な状態になるのである。
【0043】
体液、人の分泌物あるいは人の排泄物は通常弱酸性であり、一般にそのpH値は、4.
7〜7.8の範囲内にある。従って、本発明の第1および第2の刺激応答開繊性不織布を
、例えば、清拭布、紙、生理用品、使い捨ておむつ、尿取りパット等の衛生用品に使用しても、使用中にこれらの刺激応答開繊性不織布が開繊して崩壊することはない。
【0044】
他方、刺激応答開繊性不織布は、アルカリ雰囲気に置くと、このアルカリ雰囲気を感知し、水に分散可能な繊維の状態にまで開繊する。即ち、本発明における刺激応答開繊性不織布は、酸性領域および中性領域、具体的にはpH値が8未満では開繊することがないのに対して、pH値8以上、好ましくは9以上では個々の繊維にまで開繊するので、予め水洗トイレの水槽をアルカリ性にしておけば水洗トイレに流したとしても水洗トイレの管詰まりを起こすことがない。
【0045】
従って、従来は一般ゴミとして処理されていた衛生用品を、家庭で簡単に開繊して下水に流して処理することが可能になる。なお、上述した実施例で示した刺激応答開繊性不織布は、上述のように酸性領域では極めて安定であるが、中性領域では、酸性領域よりも安定性は低く、通常は開繊しないが、ある種のイオンが溶存する中性領域では、この刺激応答開繊性不織布は開繊することがある。例えば、リン酸水素一ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、水酸化ナトリウム、ホウ酸ナトリウム等が溶解して、かつpH値が中性領域(例:pH6.96)にある水性媒体には、用いるカチオン性繊維およびアニオン性繊維の種類によっては、開繊することがある。しかしながら、こうした刺激応答開繊性不織布であっても、酸性領域では開繊することはなく、アルカリ領域では速やかに開繊する。
【産業上の利用可能性】
【0046】
上述した実施例に示すような刺激応答開繊性不織布は、アルカリ性を感知してこれに応答して開繊するが、酸性領域および中性領域では安定であり開繊することがない。
即ち、人体からの分泌物、排泄物等は弱酸性であり、本発明の刺激応答開繊性不織布を使用している状態では、繊維が強固に接合されており、開繊・崩壊することはないが、一旦使用し終わって、これを廃棄する場合には、アルカリ性水溶液に接触させることにより、速やかに開繊し、このアルカリ性水溶液中に繊維の状態で分散する。こうして繊維の分散水溶液は、水洗トイレに流して処理することができるので、従来水に溶解しないために水洗トイレでは処理できずに一般ゴミとして廃棄されていた衛生用品を家庭で開繊し水洗トイレに流して処理することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
−N+13・Cl-
【化1】

よりなる群から選ばれる少なくとも一種類のカチオン性基(上記式中、R1は、それぞれ
独立に、水素原子または炭素数1〜3の炭化水素基である)を有する多数の繊維と、−COO-・H+、−SO3-・H+、−SO4-・H+および−PO4-・H+よりなる群から選ばれ
る少なくとも一種類のアニオン性基を有する多数の繊維とを含有する刺激応答開繊性不織布を、pH値が8以上の水性媒体に浸漬して開繊することを特徴とする刺激応答開繊性不織布の処理方法。

【公開番号】特開2006−112027(P2006−112027A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−15077(P2006−15077)
【出願日】平成18年1月24日(2006.1.24)
【分割の表示】特願平8−345227の分割
【原出願日】平成8年12月25日(1996.12.25)
【出願人】(000112288)ピジョン株式会社 (144)
【Fターム(参考)】