説明

前掛眼鏡

【課題】形状が異なる複数の主眼鏡に取り付けることが可能な前掛眼鏡を提供する。
【解決手段】前掛眼鏡1は、テンプル107を有する主眼鏡101のレンズ102を覆うカバーレンズ2と、カバーレンズ2の間に設けられたブリッジ部3と、ブリッジ部3の両端のそれぞれに結合されてカバーレンズ2の周縁の内の少なくともブリッジ部3側の周縁に接するリム部4と、リム部4の両端に止着されリム部4と共に環状空間を形成する線材5と、リム部4に設けられ主眼鏡101に係合する係合部6とを備えている。カバーレンズ2は、周縁端面に周縁方向に沿って溝を有し、該溝にリム部4と線材5とが嵌合することによって環状空間に嵌め込まれる。ブリッジ部3及びリム部4は、可撓性部材から形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、形状が異なる複数の眼鏡に取り付けることが可能な前掛眼鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、通常使用する眼鏡(テンプルを具備する眼鏡。以下、主眼鏡という)の前面に重ね合わせて着脱自在に取り付けられテンプルを具備しない前掛眼鏡が種々提案されており(例えば、特許文献1乃至5参照)、一部実用化されている。
一方、昨今では、主眼鏡はファッションの一部としてアクセサリ的な地位を確立しているため、一人の使用者が形状の異なる複数の主眼鏡を所有し、その日の気分に応じて主眼鏡を取り替えることも多い。
しかしながら、実用化されている従来の前掛眼鏡は、そのフレームが金属製或いは硬質の樹脂製であり可撓性を有しないので、レンズの位置を変えられない。このため、主眼鏡のレンズの前面に、前掛眼鏡のレンズ(以下、前掛眼鏡のレンズをカバーレンズという)が適切に重なるように、形状の異なる主眼鏡毎に(或いは形状が近似していない主眼鏡毎に)、複数の前掛眼鏡を用意しなければならないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−171234号公報
【特許文献2】特開2006−251629号公報
【特許文献3】特開2007−86260号公報
【特許文献4】特開2007−156354号公報
【特許文献5】特開2008−3155号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、斯かる従来技術の問題を解決するためになされたものであり、形状が異なる複数の主眼鏡に取り付けることが可能な前掛眼鏡を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するため、本発明は、テンプルを具備する主眼鏡の前面に重ね合わせて着脱自在に取り付けられ、該主眼鏡の2つのそれぞれのレンズを覆う2つのカバーレンズを備え、テンプルを具備しない前掛眼鏡であって、前記2つのカバーレンズの間に設けられたブリッジ部と、該ブリッジ部の両端のそれぞれに結合されて前記カバーレンズの周縁の内の少なくともブリッジ側の周縁に接するリム部と、該リム部の両端に止着され該リム部と共に環状空間を形成する線材と、該リム部に設けられ前記主眼鏡に係合する係合部とを備え、前記カバーレンズは周縁端面に周縁方向に沿って溝を有し、該溝に前記リム部と線材とが嵌合することによって前記環状空間に嵌め込まれ、前記ブリッジ部及びリム部は、可撓性部材から形成されていることを特徴とする前掛眼鏡を提供する。
【0006】
本発明によれば、ブリッジ部が可撓性部材から形成されているため、取り付けるべき主眼鏡の形状に合わせてブリッジ部を撓ませることにより、主眼鏡に対するカバーレンズの取り付け角度(カバーレンズの法線方向周りの角度)や両カバーレンズ間距離を高い自由度で調整することが可能である。
また、カバーレンズがリム部と線材とによって形成される環状空間に嵌め込まれる構成であり、リム部が可撓性部材から形成されているので、リム部及び線材によって形成される環状空間内でカバーレンズを回動させることにより、リム部に対するカバーレンズの取り付け角度(カバーレンズの法線方向周りの角度)をどのような角度にも調整することができる。また、調整後のカバーレンズ周縁にリム部がフィットするので、カバーレンズが抜け落ちる虞も少ない。
このように、ブリッジ部を撓ませることと、リム部及び線材によって形成される環状空間内でカバーレンズを回動させることとにより、取り付けるべき主眼鏡の形状に合わせて、主眼鏡に対するカバーレンズの取り付け角度と両カバーレンズ間距離とを高い自由度で調整することが可能である。
従って、本発明に係る単一の前掛眼鏡を、異なる形状の複数の主眼鏡に取り付けることが可能である。
【0007】
好ましくは、前記リム部は、前記溝に嵌合する複数の凸部を該リム部の長手方向に間隔を開けて有する。
【0008】
斯かる好ましい構成によれば、リム部は、カバーレンズの溝に嵌合する複数の凸部を該リム部の長手方向に間隔を開けて有するので、リム部の可撓性が高まり、リム部がカバーレンズ周縁にフィットし易くなる。
また、複数の凸部がリム部の長手方向に間隔を開けてカバーレンズの溝に嵌合しているので、凸部がカバーレンズの溝にリム部の長手方向に連続して嵌合するよりも、リム部とカバーレンズとの間の摩擦力が強くなり、リム部及び線材によって形成される環状空間内でカバーレンズが回動し難くなる。これにより、リム部に対するカバーレンズの取り付け角度を調整した後は、前掛眼鏡の使用中にリム部に対するカバーレンズの取り付け角度が変動しないので、使用中に角度を調整し直す必要がない。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、単一の前掛眼鏡を、異なる形状の複数の主眼鏡に取り付けることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1(a)は、本実施形態に係る前掛眼鏡と前掛眼鏡が取り付けられる主眼鏡との斜視図であり、図1(b)は、主眼鏡に前掛眼鏡が取り付けられたときの斜視図である。
【図2】図2は、同前掛眼鏡の構成図である。
【図3】図3は、同前掛眼鏡におけるリム部の構成図である。
【図4】図4(a)は、同前掛眼鏡の正面図であり、図4(b)は、ブリッジ部を撓めることによってカバーレンズの取り付け角度を変化させた同前掛眼鏡の正面図である。
【図5】図5(a)は、同前掛眼鏡の正面図であり、図5(b)は、リム部及び線材によって形成される環状空間内でカバーレンズを回動させることによってカバーレンズの取り付け角度を変化させた同前掛眼鏡の正面図である。
【図6】図6は、実施形態の変形例に係る前掛眼鏡におけるリム部の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態について、添付図面を適宜参照しつつ説明する。図1及び図2は、本実施形態に係る前掛眼鏡と、前掛眼鏡が取り付けられる主眼鏡との構成を示し、図3は、前掛眼鏡が有するリム部の構成を示す。
前掛眼鏡1は、テンプル107を有する主眼鏡101のレンズ102を覆うカバーレンズ2と、カバーレンズ2の間に設けられたブリッジ部3と、ブリッジ部3の両端のそれぞれに結合されてカバーレンズ2の周縁の内の少なくともブリッジ部3側の周縁に接するリム部4と、リム部4の両端に止着されリム部4と共に環状空間を形成する線材5と、リム部4に設けられ主眼鏡101に係合する係合部6とを備えている。
【0012】
カバーレンズ2は、周縁端面21に周縁方向に沿って溝22を有している。溝の大きさは、例えば幅1mmで深さ0.5mmである。
リム部4は、可撓性部材から形成されており、カバーレンズ2の形状に合わせて撓むことができる。リム部4を形成する可撓性部材としては、例えばゴムが用いられる。リム部4のカバーレンズ2側の面には、溝22に嵌合する凸部41がリム部4の長手方向に沿って途切れずに連続した形状で設けられている。
線材5は、屈曲自在であり、例えば樹脂から形成されている。
線材5のリム部4両端への止着は、例えば、リム部4の両端に線材5を貫通させる貫通穴を設けてその貫通穴に線材5を貫通させ、貫通した線材5の先端を貫通穴よりも大きな形状に形成して抜け留めにすることにして行ってもよい。
凸部41と線材5とが、溝22に嵌合することによって、カバーレンズ2はリム部4と線材5とによって形成される環状空間に嵌め込まれる。
ブリッジ部3は、可撓性部材から形成されており、屈曲自在である。ブリッジ部3を形成する可撓性部材としては、例えばゴムが用いられる。また、ブリッジ部3は、U字型に湾曲した形状に形成されている。
ブリッジ部3は、湾曲した形状が閉じられるように屈曲された状態で主眼鏡101に取り付けられる。
溝22は、周縁端面21の全周に亘って形成されていてもよいが、カバーレンズ2が環状空間に嵌め込まれるのであれば、周縁端面21の全周の内の一部だけに形成されていてもよい。
【0013】
係合部6は、それぞれのリム部4の上下の両端付近に2個設けられており、主眼鏡101のリム部104の周縁を、主眼鏡101のブリッジ部103側からレンズ102側に向けて押圧する位置に設けられている。
係合部6は、前掛眼鏡1の後方に延出して設けられ、カバーレンズ2の中心側に屈曲しており、主眼鏡101のリム部104に周囲から係合する。主眼鏡101が、リム部を有さない所謂リムレス眼鏡の場合には、係合部6は、主眼鏡101のレンズ102に周囲から係合する。
係合部6は、可撓性部材から形成されており、屈曲自在である。係合部6を形成する可撓性部材としては、例えばゴムが用いられる。
ブリッジ部3、リム部4、及び係合部6は、一体として形成されていてもよいし、それぞれが個別に形成されてから、例えば接着によって一体とされてもよい。
【0014】
前掛眼鏡1を主眼鏡101に装着するときは、両カバーレンズ2の間の距離が縮まるようにブリッジ部3を曲げ、係合部6を主眼鏡101の両レンズ102の間に入れてブリッジ部3の曲げを解放する。ブリッジ部3が有する弾性によって係合部6が、主眼鏡101のリム部104を主眼鏡101のブリッジ部側からレンズ102側に向けて押圧し、係合部6が主眼鏡101のリム部104に周囲から係合する。このように、前掛眼鏡1を主眼鏡101の前面に重ね合わせて着脱自在に取り付けることができる。
また、ブリッジ部3が可撓性を有しているので、主眼鏡101のレンズ102のレンズ間距離に合わせてブリッジ部3を撓ませ、両カバーレンズ2間距離を調整することができる。
【0015】
両レンズ102間距離が広い主眼鏡101にでも、ブリッジ部3が有する弾性によって係合部6が主眼鏡101のブリッジ部103側からレンズ102側に向けてリム部104を押圧するように、ブリッジ部3がそれぞれのリム部4と結合する箇所の間の間隔を広くすることが望ましい。しかしながら、主眼鏡101の両レンズ102間距離が広すぎて、ブリッジ部3が有する弾性によって係合部6が主眼鏡101のリム部4を押圧できなくても、係合部6の有する弾性によって主眼鏡101のリム部104に係合することができる。
【0016】
次に、主眼鏡101に対するカバーレンズ2の取り付け角度(カバーレンズの法線方向周りの角度)を調整する方法について説明する。
図4(a)(b)は、カバーレンズ2の取り付け角度を変化させた前掛眼鏡1の正面視を示す。ここで、点Oをカバーレンズの法線が貫通する位置とし、線Lを取り付け角度の基準線とする。
ブリッジ部3が可撓性を有するので、ブリッジ部3を撓ませてリム部4の位置をカバーレンズの法線方向周りに回すことによりカバーレンズ2の取り付け角度を変化させることができる。
図4(a)におけるカバーレンズ2の主眼鏡101に対する取り付け角度を0°とすると、図4(b)におけるカバーレンズ2の主眼鏡101に対する取り付け角度はα°傾いている。
このように、ブリッジ部3が可撓性を有しているので、主眼鏡101の形状に合わせてブリッジ部3を撓ませることにより、主眼鏡101に対するカバーレンズ2の取り付け角度を調整することができる。
【0017】
次に、リム部4に対するカバーレンズ2の取り付け角度(カバーレンズの法線方向周りの角度)を調整する方法について説明する。
図5(a)(b)は、カバーレンズ2の取り付け角度を変化させた前掛眼鏡1の正面視を示す。図4と同様に、点Oをカバーレンズの法線が貫通する位置とし、線Lを取り付け角度の基準線とする。
カバーレンズ2がリム部4と線材5とによって形成される環状空間に嵌め込まれる構成であり、リム部4が可撓性部材から形成されており、リム部4及び線材5によって形成される環状空間内でカバーレンズ2を回動させようとするとリム部4がカバーレンズ2の形状に合わせて撓むので、カバーレンズ2を回動させることができる。従って、リム部4に対するカバーレンズ2の取り付け角度を変化させることができる。
図5(a)におけるカバーレンズ2のリム部4に対する取り付け角度を0°とすると、図5(b)におけるカバーレンズ2のリム部4に対する取り付け角度はβ°傾いている。
このように、リム部4が可撓性を有しているので、リム部4及び線材5によって形成される環状空間内でカバーレンズ2を回動させることにより、リム部4に対するカバーレンズの取り付け角度を調整することができる。
【0018】
このように、ブリッジ部3を撓ませることと、リム部4及び線材5によって形成される環状空間内でカバーレンズ2を回動させることとにより、取り付けるべき主眼鏡101の形状に合わせて、主眼鏡101に対するカバーレンズ2の取り付け角度と両カバーレンズ2間距離とを高い自由度で調整することが可能である。
従って、本発明に係る単一の前掛眼鏡1を、異なる形状の複数の主眼鏡101に取り付けることが可能である。
【0019】
ブリッジ部3の形状は、U字型に限られず、V字型やW字型や直線の形状でもよい。
また、係合部6をそれぞれのカバーレンズ2について2個設けているが、3個以上でも構わない。また、係合部6が主眼鏡101に係合する形状であれば、係合部6は1個でもよい。
【0020】
(変形例)
次に、本実施形態に係る前掛眼鏡の変形例について、図6を参照して説明する。
上述した実施形態では、凸部41は、リム部4の長手方向に沿って凸形状が途切れずに連続した形状で設けられているが、本変形例において、リム部4は、溝22に嵌合する複数の凸部41をリム部4の長手方向に間隔を開けて有している。すなわち、上述した実施形態での凸部41が、リム部4の長手方向に沿って凸形状が所々で途切れた形状になっている。
このように、複数の凸部41がリム部4の長手方向に間隔を開けて形成されているので、凸部41の間隔が開けたところでリム部4の可撓性が高まり、リム部4がカバーレンズ2の周縁にフィットし易くなる。
また、複数の凸部41がリム部4の長手方向に間隔を開けてカバーレンズ2の溝22に嵌合しているので、凸部41がカバーレンズ2の溝22にリム部4の長手方向に連続して嵌合するよりも、リム部4とカバーレンズ2との間の摩擦力が強くなり、リム部4及び線材5によって形成される環状空間内でカバーレンズ2が回動し難くなる。これにより、リム部4に対するカバーレンズ2の取り付け角度を調整した後は、前掛眼鏡1の使用中にリム部4に対するカバーレンズ2の取り付け角度が変動しないので、使用中に取り付け角度を調整し直す必要がない。
【符号の説明】
【0021】
1・・・前掛眼鏡
2・・・カバーレンズ
22・・・溝
3・・・ブリッジ部
4・・・リム部
41・・・凸部
5・・・線材
6・・・係合部
101・・・主眼鏡
102・・・レンズ
107・・・テンプル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
テンプルを具備する主眼鏡の前面に重ね合わせて着脱自在に取り付けられ、該主眼鏡の2つのそれぞれのレンズを覆う2つのカバーレンズを備え、テンプルを具備しない前掛眼鏡であって、
前記2つのカバーレンズの間に設けられたブリッジ部と、
該ブリッジ部の両端のそれぞれに結合されて前記カバーレンズの周縁の内の少なくともブリッジ側の周縁に接するリム部と、
該リム部の両端に止着され該リム部と共に環状空間を形成する線材と、
該リム部に設けられ前記主眼鏡に係合する係合部とを備え、
前記カバーレンズは周縁端面に周縁方向に沿って溝を有し、該溝に前記リム部と線材とが嵌合することによって前記環状空間に嵌め込まれ、
前記ブリッジ部及びリム部は、可撓性部材から形成されていることを特徴とする前掛眼鏡。
【請求項2】
前記リム部は、前記溝に嵌合する複数の凸部を該リム部の長手方向に間隔を開けて有することを特徴とする請求項1に記載の前掛眼鏡。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−227376(P2011−227376A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−98790(P2010−98790)
【出願日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(308006689)株式会社プラネット・ビジョン60 (5)