前照灯ユニット及び自動二輪車
【課題】コンパクト化を実現することが可能な前照灯ユニットを提供する。
【解決手段】前照灯ユニットにおいて、車体のバンク角に応じて点灯する第2補助光源3は、ウインカースイッチの操作に連動して点灯する第1補助光源2より上方に配置され、保持部材には、第1補助光源2からの光を所定方向に向けて反射する反射面34Aと、第2補助光源3からの光を当該所定方向より上方に向けて反射する反射面35Aとが形成され、反射面34A,35Aの一部同士が正面視において重なる。
【解決手段】前照灯ユニットにおいて、車体のバンク角に応じて点灯する第2補助光源3は、ウインカースイッチの操作に連動して点灯する第1補助光源2より上方に配置され、保持部材には、第1補助光源2からの光を所定方向に向けて反射する反射面34Aと、第2補助光源3からの光を当該所定方向より上方に向けて反射する反射面35Aとが形成され、反射面34A,35Aの一部同士が正面視において重なる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前照灯ユニット及び自動二輪車に関し、特には、補助用照明灯の配置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動二輪車は、コーナリング時や交差点を曲がるときには、車両に作用する遠心力に対抗するために、車両を傾斜させて走行する。このとき、車両の傾斜に伴ってヘッドライトも同じ方向に傾斜するのでヘッドライトの照射領域も傾く。すると、より手前の地点を照射することになるため、進行方向の照射領域が減少する。この照射領域の減少を補うために、ヘッドライトの左右に補助用の照明灯を追加して配置するようにしたものが知られている(下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−131212号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来技術では、特許文献1の段落0077及び図6,図7に記載されているように、ウインカースイッチの操作に連動して点灯する第1の照明灯20a,20bは上方側に配置され、車体のバンク角に応じて点灯する第2の照明灯21a,21bは下方側に配置されている。
【0005】
ところが、特許文献1の段落0078及び図2に記載されているように、下方側に配置された第2の照明灯21a,21bの照射領域15a,15bは、上方側に配置された第1の照明灯20a,20bの照射領域14a,14bよりも上方に位置している。すなわち、下方側に配置された第2の照明灯21a,21bの照射方向は、上方側に配置された第1の照明灯20a,20bの照射方向よりも上方を向いており、両者は側面視において交差している。このため、第1の照明灯20a,20bと第2の照明灯21a,21bとを近づけて配置することが困難である。
【0006】
本発明者らは、ヘッドライトと補助用照明灯とを一体的に設けた前照灯ユニットの開発を検討している。しかしながら、上記従来技術に記載された配置態様では、ウインカースイッチの操作に連動して点灯する補助用照明灯と、車体のバンク角に応じて点灯する補助用照明灯とを離して配置しなければならず、前照灯ユニットのコンパクト化が困難という問題がある。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みて為されたものであり、コンパクト化を図ることが可能な前照灯ユニット及び自動二輪車を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の前照灯ユニットは、第1の装着部に装着され、前記第1の装着部から所定方向に向けて光を照射する第1の光源と、前記第1の光源よりも後方かつ上方に配置され、第2の装着部に装着され、前記第2の装着部から前記所定方向よりも上方かつ車幅方向の外方に向けて光を照射する、車体のバンク角に応じて点灯する第2の光源と、を備え、正面視において前記第2の装着部の一部が前記第1の装着部の後方に隠れる。
【0009】
また、本発明の自動二輪車は、上記本発明の前照灯ユニットを備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、第1の光源からの光が第1の装着部から所定方向に向けて照射され、第1の光源よりも後方かつ上方に配置された第2の光源からの光が第2の装着部から当該所定方向よりも上方かつ車幅方向の外方に向けて照射されるので、正面視において第2の装着部の一部が第1の装着部の後方に隠れるまでこれらを近づけることができる。その結果、前照灯ユニットのコンパクト化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】自動二輪車の正面図である。
【図2】前照灯ユニット部分を拡大して示す正断面図である。
【図3】同じく側断面図である。
【図4】図3を拡大して示す断面図である。
【図5】同じく平断面図である。
【図6】第2及び第3補助光源を有する第2補助バルブの拡大断面図である。
【図7】点灯制御系のブロック図である。
【図8】第1補助光源の点灯動作を説明するためのフローチャートである。
【図9A】第2補助光源の点灯動作を説明するためのフローチャートである。
【図9B】第3補助光源の点灯動作を説明するためのフローチャートである。
【図10】各補助光源の点灯及び消灯時期とバンク角との関係を示す説明図である。
【図11】コーナリング時における照明領域の変化を示す説明図である。
【図12】交差点を左折する際の前半時期における照明領域の変化を示す説明図である。
【図13】同じく後半時期における照明領域の変化を示す説明図である。
【図14】実施形態2における前照灯ユニットの正断面図である。
【図15】実施形態3における点灯制御系を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を図乃至図13によって説明する。以下の説明中、「前後」に関する方向は車両の進行方向を基準とし、「左右」に関する方向は運転者を基準とするものとする。
【0013】
自動二輪車の正面を示す図1において、車両前部の中央には車両前方及び左右方向を照射する前照灯ユニットUが装着されている。この前照灯ユニットUには、車両の前方を照射するヘッドライト光源1A,1Bと車両の左右両方向を照射する補助光源2〜4とが設けられている。図2に示すように、ヘッドライト光源1A,1Bは前照灯ユニットU内において中央に配置され、上下のバルブ5,6内にそれぞれ収容されたフィラメントによって構成されている。上側に配置されたバルブはロービーム用バルブ5であり、下側に配置されたバルブはハイビーム用バルブ6である。
【0014】
ハイビーム用バルブ6を挟んだ左右両側には、第1補助バルブ7が対をなして配置されている。第1補助バルブ7内のフィラメントがウインカースイッチ9のオンによって点灯する第1補助光源2である。ロービーム用バルブ5を挟んだ左右両側には、第2補助バルブ8が対をなして配置されている。第2補助バルブ8は、図6に示すように、内部に2つのフィラメントを上下に離間して配置した、いわゆるダブルフィラメントと呼ばれる形式である。このうち上側のフィラメントは小さいバンク角で点灯する第2補助光源3であり、下側のフィラメントはより大きいバンク角で点灯する第3補助光源4である。これら全てのバルブ5〜8は、一つの保持部材10によって保持され、さらにこの保持部材10はリヤカバー11を介して車両フレームへ固定されるようになっている。
【0015】
次に、前照灯ユニットUを支持するための車両側の構造を説明する。ハンドル12のステアリング軸を挿通するヘッドパイプ13には後方へ向けてメインフレーム14が延びている。ヘッドパイプ13の前面には上下にブラケット15,16が取り付けられ、上側のブラケット15には平面視でループ状をなすアッパフレーム17が取り付けられている。アッパフレーム17は前下がりの姿勢で支持されている。下側のブラケット16からは支持アーム18が前方へ向けて上向き勾配となる姿勢で取り付けられている。支持アーム18の前端はアッパフレーム17の前端中央部に連結されている。
【0016】
メインフレーム14は、ヘッドパイプ13から二股に分岐してそれぞれ斜め下後方へ向けて延出している。分岐したメインフレーム14において、ヘッドパイプ13寄りの位置の外面にからはそれぞれ左右方向へ向けてブラケット20が張り出すようにして取り付けられている。この両ブラケット20には平面視で略U字状をなすロアフレーム19が前方へ向けて延出した状態で取り付けられている。ロアフレーム19はブラケット20側から略中央部までは斜め上向きの姿勢で延び、そこから前端部までは略水平姿勢となるように屈曲して形成されている。ロアフレーム19は、前端の位置がアッパフレーム17の前端位置よりさらに前方へ延出している。ロアフレーム19のうち略水平姿勢をなす部分の中央には、連結アーム21が左右で対をなして立ち上がっている。両連結アーム21は後述する保持部材10との干渉を避けつつ斜め後方へ屈曲した状態で立ち上がり、その上端部にはブラケット22を介してアッパフレーム17の前端部に連結されている。
【0017】
前照灯ユニットUは、前述したように、各バルブ5〜8、各バルブ5〜8を保持する保持部材10及び保持部材10を後方から覆うリヤカバー11を備え、さらにリヤカバー11の前面に嵌着され、各バルブ5〜8を内部に一括して収容するレンズ部材23を有している。
【0018】
リヤカバー11は合成樹脂製であり、保持部材10の後面部及び下面部を覆うことができるような大きさをもって前方へ開放した形状となっている。リヤカバー11はアッパフレーム17、ロアフレーム19及び両連結アーム21に対してボルトによる取付けがなされている。詳細には図示しないが、取り付け箇所のうちのいくつかの箇所においては、振動吸収用のクッションゴムが介在されている。各取付け箇所は次のような配置となっている。
【0019】
すなわち、図2に示すように、リヤカバー11における後面の上部には左右で対をなす上部接続片24が上方へ一体に突出し、アッパフレーム17の対応箇所へ取付けられている。また、リヤカバー11における後面で左右両側縁の上部寄りの位置からは、斜め後方へ向けかつ左右方向へ張り出すようにして左右一対の中間接続片25が形成され、それぞれの先端部は対応する連結アームの上端部にブラケット26を介して連結されている。さらに、リヤカバー11における下面の左右両側部でかつ前後方向の中央部には一対の下部接続片27が、下方及び左右方向へ張り出すようにして突出形成されている。そして、それぞれの先端部はロアフレーム19の先端部寄りにブラケット28を介して連結されている。
【0020】
また、リヤカバー11の後面で各バルブ5〜8と同軸上に対応する部位には、バルブ交換等のメンテナンスを行うための窓孔29がそれぞれ開口している。各窓孔29にはシールリング30を介してサービスカバー31が取り外し可能に取付けられている。なお、各サービスカバー31には電線挿通孔がそれぞれ開口し、バルブに接続された電線をシール状態で後方へ引き出すようにしている。
【0021】
保持部材10は、合成樹脂材にて一体に形成されている。全体は、後に説明する構造により、リヤカバー11に対する取付角度が調整可能となっている。保持部材10には各バルブ5〜8毎に装着部32〜35が設けられている。装着部32〜35はいずれもその前面壁が後方へ向けて突出する湾曲面をなしており、各光源1A,1B、2〜4から照射された光を前方へ向けて反射させる反射面32A〜35Aが形成されている。各バルブ5〜8は、各装着部32〜35の反射面32A〜35Aの中心部(最も後方へ引っ込んだ部分)において後方から突っ込まれて取付けがなされている。
【0022】
各装着部32〜35のうち左右方向の中央部でかつ上部側に配されたものは、ロービームバルブ用装着部32となっている。ロービーム用バルブ5は車両の左右方向に関する中心軸上に配置されている。ロービームバルブ用装着部32は各補助バルブ7,8に対する装着部34,35に比べて軸方向に長いフード状に形成されている。また、ロービームバルブ用装着部32の前面の開口縁は、下縁の左右方向の中心部が最も前方に張り出すようにして形成されている。
【0023】
上記ロービームバルブ用装着部32の下部にはハイビーム用バルブ6を装着するための装着部33が配置されている。ハイビームバルブ用装着部33は、図4、図5に示すように、ロービームバルブ用装着部32から前方へ突出するようにして形成されている。このハイビームバルブ用装着部33は、車両前面視においてロービームバルブ用装着部32とほぼ同形状に形成されている。ハイビーム用バルブ6が装着されている位置は、ロービーム用バルブ5と同様、車両の左右方向に関する中心軸上に配置されている。
【0024】
保持部材10においてハイビームバルブ用装着部33を挟んだ左右両側には、第1補助バルブ7を装着するための装着部34が左右対称に配されている。この両第1補助バルブ用装着部34は、ハイビームバルブ用装着部33よりも後方へ後退した位置に配置されている。第1補助バルブ7が取付けられる高さ位置は、ハイビーム用バルブ6の取り付け高さ位置よりも若干高い位置に設定されている。但し、第1補助バルブ7の中心軸線は、車両平面視で、ロービーム用バルブ5やハイビーム用バルブ6の両中心軸線に対しそれぞれ等角度ずつ斜め外方へ傾斜して設定されている。
【0025】
保持部材10においてロービームバルブ用装着部32を挟んだ左右両側には、第2補助バルブ8を装着するための装着部35が対称に配されている。この両第2補助バルブ用装着部35は、第1補助バルブ装着部34よりも後方でかつ上位に形成されている。左右方向に関して、第2補助バルブ8が取付けられる位置は第1補助バルブ7よりも外方となるように設定されている。第2補助バルブ8が取付けられる高さ位置は、ロービーム用バルブ5の取り付け高さ位置とほぼ同じである。但し、第2補助バルブ8の中心軸は同じ側にある第1補助バルブ7の中心軸よりも上向きとなるようにしてある。
【0026】
第2補助バルブ8内には、前述したように、第2及び第3の補助光源3,4としての2つのフィラメントが収容され、高さ方向に離間して位置している。このうち、下側に配置されたフィラメントである第3補助光源4は、第2補助バルブ用装着部35の反射面35Aの頂点部を通過する軸線O上に位置し、第2補助光源3はその上位に配置されている。したがって、第2補助光源3の照射領域は、第3補助光源4を点灯可能とするよう設定されたバンク角域内において、第3補助光源4の照射領域に比べて手前側(車両に近い側)となる。
【0027】
次に、リヤカバー11に対する保持部材10の取付け角度を調整して、各バルブの照明方向を調整可能とするための構造を説明する。保持部材10の後面において、車両前面視でハイビームバルブ用装着部33の右上コーナ部(図2では左上コーナ部)には、保持部材10全体を三次元的に変位可能に支持するための支点部36が配されている。保持部材10の後面には、図5に示すように、支点部36の一部を構成するボス部37が、後方へ向けて一体に突出している。一方、リヤカバー11からはねじ軸38がシールリング39を介して貫通し、その前端にはボール部40が一体に形成されている。ボール部40はボス部37の後端面において、抜け止めされた状態で遊動可能に支持されている。ねじ軸38はその途中に形成されたフランジ板41と、ねじ軸38の後端部にねじ込まれたナット42とでリヤカバー11を挟み付けている。
【0028】
また、保持部材10の後面において、ロービームバルブ用装着部32に対応する部位でかつ車両前面視で支点部36の上方及び左方(図2では右方)には、保持部材10の取付け姿勢を高さ方向と左右方向へ調整可能な姿勢調整部が配置されている。両姿勢調整部のうち、支点部36の上方に配された側は、保持部材10を上下方向に傾斜変位させるための上下姿勢調整部43であり、上記した支点部36と左右方向及び前後方向に関してほぼ同じ位置に配置されている。
【0029】
さらに、保持部材10の後面において、ハイビームバルブ用装着部33に対応する部位で、かつ図2において支点部36の右方に位置する姿勢調整部は、保持部材10を左右方向に変位させるための左右姿勢調整部44である。左右姿勢調整部44は高さ方向に関しては支点部36とほぼ同じ位置であるが、支点部36から左方(図2では右方)に離間している。両姿勢調整部43,44は配置が異なるだけで、基本構造は共通である(図5では、左右姿勢調整部44のみが示されている。)。すなわち、両姿勢調整部43,44に関し、保持部材10の後面からは中空の筒部45が後方へ向けて一体に突出している。一方、リヤカバー11における対応位置からは段付きボルト46が貫通し、筒部45の後端面にねじ込まれている。段付きボルト45のねじ部には段差部46Aに当接した状態でナット部材47がねじ込まれている。ナット部材47とリヤカバー11の内面との間には皿ばね48が介在されていて、段付きボルト46の頭部をリヤカバー11に密着させるように付勢している。かくして、リヤカバー11の後面において段付きボルト46の頭部を回転させることで、保持部材10を段付きボルトの軸方向に沿って変位させることができる。このことにより、保持部材10の全体は選択された側の姿勢調整部43,44の操作により支点部36を中心として上下方向あるいは左右方向への変位がなされる。このため、各バルブ5〜8の照射方向を一括して調整することができる。
【0030】
図7は、前照灯ユニットUの制御回路のブロック図である。本実施形態の自動二輪車にはコントロールユニット49が搭載されており、ウインカースイッチ9、車速センサ51及び傾斜角センサ52からの信号を演算処理して左右の第1乃至第3補助光源2〜4の点灯動作を制御するようになっている。なお、左右の第1補助光源2はヘッドライト用光源1A,1Bの点灯・消灯に連動して点灯・消灯するようになっている。また、ウインカースイッチ9がオフの状態でかつヘッドライト光源1A,1Bの点灯中のときには、左右の第1補助光源2に対しては共に低い電力が供給されるようになっていて、ポジションランプとして機能するようにしてある。そして、ウインカースイッチ9がオン操作されると、対応する側の第1補助光源2に対しては、コントロールユニット49からの指令に基づき、供給される電力が高い状態へと切換えがなされるようになっている。
【0031】
車速センサ51はエンジンから後輪への動力伝達系に設けられ、自動二輪車の車速を検出する。傾斜角センサ52は車両のハンドル12を操作したときに変位する部分を除いた車両部分の適所に配置され、車体の左右方向への傾斜角度(バンク角)を検出する。
【0032】
第1補助光源2の点灯を制御する工程を、図8に示すフローチャート及び点灯・消灯時期とバンク角との関係を示す図10を参照しながら説明する。なお、図10中、A,Bは車両の傾斜方向を示しており、Aは鉛直軸から車両を傾斜させてゆく方向であり、Bは傾斜状態にある車両を鉛直軸へ向けて起立させてゆく方向を示している。
【0033】
第1補助光源2には、通常時においてポジションランプとして機能する状態と、コーナリング時に点灯して補助照明としても機能する状態との二つの点灯形態が設定されている。最初に、第1補助光源2がポジションランプとして機能する場合について説明する。
【0034】
まず、ステップS1において、ウインカースイッチ9が作動(ON)しているか否かが検出される。作動していない(OFF)場合にはステップS8に進んで、左右の第1補助光源2を共に低い供給電力で点灯させ、ポジションランプとして機能させる。作動している場合には、ステップS2においてそれが左右いずれのウインカースイッチ9であるのかが確認される。右側であれば、ステップS3において右側の第1補助光源2が点灯中(高い供給電力での点灯中)であるか否かが判断される。高い供給電力にて点灯していないと判断される場合(ポジションランプとして機能している場合)には、傾斜角センサ52からの入力値に基づいてバンク角が所定値θ1に達しているかどうかを判断し(ステップS4)、この所定値を下回っている間は第1補助光源2の点灯がなされる(ステップS5)。つまり、第1補助光源2に対して高い電力が供給され、ポジションランプとして機能していた状態からコーナランプとして機能するように発光状況の切り替えがなされる。
【0035】
ステップS3において右側の第1補助光源2が点灯中(高い供給電力での点灯中)であると判断される場合には、ステップS6に進んでバンク角がθ3以上になったか否が判断され、バンク角がθ3以上である場合には、右側の第1補助光源2が減灯する(ステップS7)。つまり、第1補助光源2は低い値の供給電力に切り替えられ、再度ポジションランプとして機能するようになる。
【0036】
ところで、本実施形態ではθ1<θ3であり、その角度差として例えば3度が設定されている。このような角度差を設定しておく理由は、車体を傾斜させてゆく過程で微小な角度範囲で戻し動作があったときに、これを鋭敏に感知して第1補助光源2が点灯・消灯(減灯)を繰り返すことがないように配慮したものである。また、ステップS7において右側第1補助光源2が減灯するまでの間には、第1補助光源2に対する供給電力を徐々に減少させ、その間に所定の時間(例えば1秒程度)を要するようにしてある。このようにする理由は、瞬間的にポジションランプとしての照度にまで落とすと右側第1補助光源2による照明範囲が急激に消滅し、ライダーが戸惑いを覚えることを懸念するためである。
【0037】
次に、第2の補助光源3の点灯動作を制御する工程を図9Aによって説明する。まず、ステップS1において、傾斜角センサ52からの入力値に基づいて車両が左右いずれかに傾斜したか否かが検出される。右方へ傾いている場合には、ステップS2において右側の第2補助光源3が点灯中か否かの判断がなされる。点灯していない場合には、バンク角が所定値θ2以上になったかどうかの判断がなされる(ステップS3)。そして、バンク角が所定値θ2以上である場合には、右側の第2補助光源3が消灯する(ステップS4)。また、ステップS2において右側の第2補助光源3が点灯していると判断された場合には、ステップS5に進んでバンク角が所定値θ6を下回ったか否かの判断がなされる。バンク角がこの値を下回っていると判断された場合には、右側の第2補助光源3が消灯する(ステップS6)。第2補助光源3の消灯動作も、前述した第1補助光源2と同様、所定時間をかけて徐々になされる。
【0038】
また、第3の補助光源4の点灯動作を制御する工程を図9Bによって説明する。まず、ステップS1において、傾斜角センサ52からの入力値に基づいて車両が左右いずれかに傾斜したか否かが検出される。右方へ傾いている場合には、ステップS2において右側の第3補助光源4が点灯中か否かの判断がなされる。点灯していない場合には、バンク角が所定値θ5以上になったかどうかの判断がなされる(ステップS3)。そして、バンク角が所定値θ5以上である場合には、右側の第3補助光源4が点灯する(ステップS4)。また、ステップS2において右側の第3補助光源4が点灯していると判断された場合には、ステップS5に進んでバンク角が所定値θ4を下回ったか否かの判断がなされる。バンク角がこの値を下回っていると判断された場合には、右側の第3補助光源4が消灯する(ステップS6)。第3補助光源4の消灯動作も、前述した第1補助光源2と同様、所定時間をかけて徐々になされる。
【0039】
本実施形態では、このθ2はθ1<θ2<θ3となる設定としてあり、θ2とθ3との角度差は例えば1度程度の設定としてある。また、本実施形態では、θ6、θ4及びθ1との関係はθ6<θ1<θ4としてあり、例えばθ6とθ1との角度差は1度に設定されている。
【0040】
図11は、コーナリングの際の前照灯ユニットUによる照明領域の変化を示したものである。自動二輪車が左カーブのコーナに進入する前の地点Aでは、車両は徐々に傾斜が開始されるものの、ほぼ直立した姿勢にあるため、ロービームあるいはハイビームのヘッドライト光源1A,1Bのみが点灯し照射領域H1を形成している。
【0041】
コーナに近づいた地点Bで、車両の傾斜状況が進んでバンク角がθ2以上になると、第2補助光源3が点灯する。このときには、ヘッドライト光源1A,1Bによる照射領域H2は照射幅がやや減少しているが、第2補助光源3の点灯によって形成される照射領域X1が、照射領域H2の左側(進行方向内側)において互いの照射領域を重複させた状態で形成される。但し、このとき第2補助光源3はヘッドライト光源1A,1Bよりも車両の走行予定軌跡の内側でかつやや手前側を明るく照らしている。
【0042】
車両がコーナの中間部に差し掛かった地点Cでは、車両が最も傾斜姿勢をとるため、ヘッドライト光源1A,1Bによる照射領域H3はさらにスポット化し最も幅狭となる。第2補助光源3の照射領域X2も同様に幅狭化するため、ヘッドライト光源の1A,1B照射領域と重なっていた照射領域はほぼ消失する。しかし、バンク角がθ5以上になると、この時点で第3補助光源4も点灯する。この第3補助光源4の点灯に伴って生じる照射領域Y1は、ヘッドライト光源1A,1Bによる照射領域H3の進行方向内側に生じている第2補助光源3の照射領域X2よりさらに内側において同領域X2と部分的に重複して位置する。なお、第3補助光源4によって形成される照射領域Y1は、第2補助光源3の照射領域X2よりも車両走行予定軌跡の内側に明領域を形成する。
【0043】
車両がコーナの中間部を越えた地点Dでは、車両は傾斜姿勢から徐々に起立した姿勢へと移行している。この間に、バンク角がθ4以下になると、第3補助光源4は所定時間をかけて徐々に消灯する。すなわち、第3補助光源4による照射領域は徐々に暗くなって所定時間経過後に完全に消失する。これにより、急激に照射範囲が減少することが回避されるため、安全な走行に寄与することができる。また、車両が徐々に起立してくることに伴い、ヘッドライト光源1A,1B及び第2補助光源3による照射領域H4,X3も次第に広幅となり、第2補助光源3は再び車両の走行予定軌跡の内側に明領域を形成するようになる。
【0044】
車両がコーナを通過した後の地点Eにおいて、バンク角がθ6になると、その時点から第2補助光源3は所定時間をかけて徐々に消灯する。これにより、以後は車両前方はヘッドライト光源1A,1Bの照射領域H5のみによって照明される。
【0045】
次に、交差点を通過する際の前照灯ユニットUによる照明領域の変化について説明する。
【0046】
図12及び図13に示すように、車両が左右いずれかのウインカーを点滅させながら交差点を左折する場合、交差点の手前の地点Aで、左側のウインカースイッチ9がオン操作される(図12(a)参照)。これにより、第1補助光源2に対しては、ポジションランプとして機能するに必要な供給電力より高い供給電力に高められる。これにより、ヘッドライト光源1A,1Bによる照射領域H1の左側、つまり車両が進行する方向に第1補助光源2による照射領域P1が形成される。第1補助光源2による照射領域P1はヘッドライト光源1A,1Bの照射領域H1の内側に明領域を有しており、かつヘッドライト光源1A,1Bによる照射領域H1との間で重複した領域を形成し、両照射領域H1,P1との境界域に暗領域が生じないようにしてある。
【0047】
車両が交差点の直前地点Bまで進入し、車両を傾斜させて左折の体勢になり、バンク角がθ2になると、第2補助光源3が点灯する((b)参照)。そして、この点灯を行わせた傾斜角度から僅かではあるがさらに傾いてバンク角がθ3になると、第1補助光源2は徐々に明るさを減じてゆき、再びポジションランプとしての機能を発揮する状態に戻る。図12(b)では第1補助光源2による照射領域が消えてゆく過程の状態を破線で示している。同図に示されるように、第2補助光源3による照射領域X1は第1補助光源2による照射領域P2の左方に生じ、ヘッドライト光源1A,1Bによる照射領域H2と重複するように生じる。
【0048】
図12(c)は地点Cにおいて、第1補助光源2の照射領域が完全に消失した状態を示している。ヘッドライト光源1A,1B及び第2補助光源2による照射領域H3,X2は重複範囲を有しつつ徐々に左方へ傾斜してゆく。このように、第1補助光源2が消灯しても、照射領域に隙間が生じてしまうことがなく、車両の進行方向を広く連続した状態で照らすことができる。
【0049】
車両が交差点に最も深く入り込んだ地点D(同図(d)参照)では、車両が最も傾斜しバンク角がθ5になると、第3補助光源4が点灯する。この間、ヘッドライト光源1A,1Bと第2補助光源3の照射領域は徐々に幅が狭くなり、車両の走行予定軌跡の内側の照射領域の面積が減ってくる。この照射範囲が減る前に、第3補助光源4が点灯する。その照射領域Y1は、ヘッドライト光源1A,1Bの照射領域H4の内側に生じている第2補助光源3の照射領域X3のさらに内側に生じ、かつ第2補助光源3の照射領域X3との境界部分に暗領域が生じないよう、部分的に重複するように形成される。かくして、コーナリングの際に最も車体を傾斜させた際においても、車両の進行方向の照射領域が狭くなってしまうことがなく、広範囲に連続する照射領域を確保することができる。
【0050】
そして、交差点の出口地点E(同図(e)参照)では、車両が徐々に起立し、バンク角がθ4になると、第3補助光源4が所定時間をかけて徐々に消灯する。バンク角がθ1以下になると、第1補助光源2に対してはポジションランプとして機能するに必要な供給電力より高い供給電力に高められる。これにより、ヘッドライト光源1A,1Bによる照射領域H1の左側、つまり車両が進行する方向に第1補助光源2による照射領域P3が形成される。このときには、ヘッドライト光源1A,1Bと第2補助光源3の両照射領域H5,X4とは、僅かに重複する程度であり、この重複範囲に重ねて第1補助光源2の照射領域P3が形成される(同図(e)では破線で示されている)。
【0051】
交差点を通過してさらに車両の起立が進んだ地点F(同図(f)参照)においては、バンク角がθ1を僅かに下回りθ6以下になると、第2補助光源3が所定時間をかけて徐々に消灯する。つまり、この第2補助光源3による照射範囲の消失に先立って第1補助光源2が点灯するため、車両の進行方向において照射範囲が狭くなってしまうことがない。第2補助光源3の照射領域が消失する時点では、第1補助光源2の照射領域P4の幅が広がり、ヘッドライト光源の照射領域H6に重複した状態となる。
【0052】
そして、車両が完全に交差点を通過した地点Gにおいて、ライダーによってウインカースイッチ9がオフ操作されると、第1補助光源2に対する供給電力は低められ、再びポジションランプとしての機能に切り替えられる。したがって、車両進行方向はヘッドライト光源1A,1Bの照射領域H7のみが形成される。
【0053】
以上の説明から明らかなように、本実施形態では2つのヘッドライト光源1A,1B、左右の第1から第3補助光源2〜4に対する各装着部32〜35を、一つの保持部材10に一体的に設けてユニット化した。したがって、保持部材10の後面側に装着されたリヤカバー11との間で取付け姿勢を調整すれば、各光源の光軸を一括して調整することができる。したがって、各光源のエイミング作業を簡単に行うことができる。また、前照灯ユニットUとして車両への取り付けも簡単に行うことができる。
【0054】
また、本実施形態では、図3に示されるように、第2補助バルブ8の照射方向、すなわち第2補助光源3及び第3補助光源4(図2を参照)からの光が反射面(第2の反射面)35Aにより反射される方向は、第1補助バルブ7の照射方向、すなわち第1補助光源(図2を参照)からの光が反射面(第1の反射面)34Aにより反射される方向よりも上方を向いている。このため、図2に示されるように、2つの反射面34A,35Aの一部同士が正面視において重なる程度までこれらを近づけても、後方側の反射面35Aから前方に向けて反射される光の一部が、前方側の反射面34Aを有する装着部34に阻まれることがない。これにより、前照灯ユニットUのコンパクト化を実現することができる。
【0055】
また、本実施形態では、図6に示されるように、第2補助バルブ8内の上方側に第2補助光源3が配置され、下方側に第3補助光源4が配置されており、第3補助光源4からの光が反射面35Aにより反射される方向は、第2補助光源3からの光が反射面35Aにより反射される方向よりも上方を向いている。そして、図10に示されるように、車体のバンク角がθ2(第1の値)を上回るときに第2補助光源3が点灯し、車体のバンク角がθ2よりも大きいθ5(第2の値)を上回るときに第3補助光源4が点灯する。これにより、図11に示されるように、車体が比較的大きく傾いた地点Cにおいて、第2補助光源3による照射領域X2よりも上方に、第3補助光源4による照射領域Y1が形成される。
【0056】
また、本実施形態では、図6に示されるように、第2補助光源3及び第3補助光源4は、いわゆるダブルフィラメントとして、1つの第2補助バルブ8内に収容され、1つの反射面35Aに囲まれており、こうした構成によって上記のように照射領域を調整可能にしている。このため、第2補助光源3及び第3補助光源4に個別のバルブ及び反射面を設ける必要がなく、前照灯ユニットUのコンパクト化を実現することができる。
【0057】
<実施形態2>
図14は、本発明の実施形態2の前照灯ユニットU1を示している。実施形態2では、各光源の配置を変更している。すなわち、ヘッドライト光源1A−1,1B−1を左右に並べて配置すると共に、各補助光源2−1〜4−1をヘッドライト光源1A−1,1B−1の下側に並べて配置している。例えば、図14における右側のヘッドライト光源1B−1がハイビーム用であり、左側がロービーム用である。また、補助光源のうち外側に配されたものが第1補助光源2−1であり、内側に配されたものが第2及び第3補助光源3−1,4−1である。
【0058】
実施形態2では、保持部材10A,10Bを左右に一対設けて、それぞれに各光源の対を備えさせるようにしている。但し、リヤカバー11は両保持部材10A,10Bに共用されていて、支点部36−1及び上下及び左右の各調整部43−1,44−1も保持部材10毎に別個に設定されている。
【0059】
他の構成は実施形態1と同様であり、同様の作用効果を奏することができる。
【0060】
<実施形態3>
図15は、本発明の実施形態3に係るブロック図を示している。実施形態1では、バンク角の検出に傾斜角センサ52を用いたが、実施形態3では傾斜角速度センサ53を用いている。すなわち、コントロールユニット49−1内にはA/Dコンバータ54、積分回路55、点灯制御回路56が設けられている。A/Dコンバータ54は傾斜角速度センサ53で検出した傾斜角速度のアナログ値をデジタル値に変換する。積分回路55は、A/Dコンバータ54が出力する傾斜角速度信号を積分することで傾斜角度信号を出力する。点灯制御回路56では、各補助光源2〜4が点灯中であるときに車両が所定のバンク角に達して消灯する際に、傾斜角速度に応じて消灯速度を制御することができるようになっている。
【0061】
すなわち、実施形態1では傾斜姿勢にある車両を起立させるときの速度とは無関係に一定時間をかけて消灯させていた。しかし、実施形態3では車両を起立させるときの速度が速いときには、各補助光源2〜4に対する供給電力の減少速度を速めて短時間で完全消灯に至らしめ、車両を起立させるときの速度が遅いときには、各補助光源2〜4に対する供給電力の減少速度を遅め、ゆっくりと完全消灯に至らしめる。このようにすれば、車両の起立動作に対し補助光源の消灯動作を鋭敏に対応させることができる。
【0062】
各実施形態からは以下のような技術思想を抽出することができる。
【0063】
(1)さらにウインカースイッチ9を備え、補助光源は、ウインカースイッチ9の操作に連動して左右いずれかの側が点灯する第1補助光源2と、車両のバンク角が所定値以上になったときに車両の傾斜方向に応じて左右いずれかの側が点灯する第2補助光源3とを備え、補助光源用装着部は、第1補助光源2を装着する第1装着部34と、第2補助光源3を装着する第2装着部35とからなっている構成である。
【0064】
この構成によれば、車両がコーナに進入するにあたり、ウインカースイッチ9の操作がなされると、左右いずれかの第1補助光源2が点灯する。車両がコーナに進入した後、車両が所定のバンク角になるまで傾斜すると、その傾斜方向に応じて左右いずれかの側の第2補助光源3が点灯する。この構成によれば、補助光源が複数種に増加しても、照明領域の調整作業数を何ら増加させずに済む。
【0065】
(2)(1)において、第2補助光源3とこの第2補助光源3が点灯するときのバンク角を上回るバンク角以上になったときに車両の傾斜方向に応じて左右いずれかの側が点灯する第3補助光源4とが収容されたバルブ8をさらに備え、バルブ8は、第2装着部35に装着されている構成である。
【0066】
この構成によれば、第2装着部に第2・第3の補助光源3,4を一つのバルブ内に共存させたため、前照灯ユニットU全体の大型化を回避しかつ光源の増加によっても照明領域の調整作業数を増加させずに済む。
【0067】
(3)(1)において、第1補助光源2は、ヘッドライト光源1A,1Bが点灯しておりかつウインカースイッチ9が操作されていないときには、左右いずれもが所定の供給電力により点灯し、ヘッドライト光源1A,1Bが点灯しておりかつウインカースイッチ9が操作されたときには、操作された側に対応する側は、第1補助光源2のいずれもが点灯しているときの供給電力より高い供給電力により点灯するように構成されている。すなわち、第1補助光源2は、ウインカースイッチ9がオフのときに第1の量の電力により点灯され、ウインカースイッチ9がオンのときに第1の量より大きい第2の量の電力により点灯される。
【0068】
この構成によれば、例えば夜間において直進走行をしているときには、第1補助光源2には低い供給電力により弱く点灯するため、ポジションランプとして機能させることができる。そして、カーブを曲がるときには高い供給電力により明るく点灯し、コーナランプとして機能させることができる。こうして、第1補助光源2をポジションランプとコーナランプの2つの機能を併せて持たせることができる。したがって、これらランプを別個に設ける場合に比べて部品点数の増加もなく、各ランプ毎の照明領域の調整もせずに済む。
【0069】
(4)(1)乃至(3)のいずれかにおいて、保持部材10は、ヘッドライト光源用装着部32,33及び補助光源用装着部34,35毎に形成された反射面32A〜35Aを有する構成である。
【0070】
この構成によれば、各光源に対する反射面32A〜35Aも保持部材10に一体に形成されているため、保持部材10への取り付けも手間が無く作業性に優れる。また、各光源毎に反射面が確保されるため、各光源が他の光源の照明時に影を形成することがない。したがって、各光源の照明領域を確保することができる。
【0071】
(5)車両本体はフレームを含み、保持部材10の後面側に取り付けられたリヤカバー11をさらに備え、リヤカバー11はフレームに固定されている構成である。すなわち、前照灯ユニットUは、保持部材10の後方側に設けられるリヤカバー11を備え、リヤカバー11が車体のフレームに取り付けられる。
【0072】
この構成によれば、保持部材10はリヤカバー11を介して剛性の高い車両フレームに取り付けられるため、樹脂部分に取り付ける場合に比較して車両振動の影響による照明領域のずれを緩和することができる。
【0073】
(6)(5)において、リヤカバー11には、保持部材10を変位可能に支持する支点部36,36−1と、保持部材10の取り付け姿勢を車両の高さ方向及び車幅方向に関して調整するための姿勢調整部43,43−1、44,44−1とが設けられている構成である。すなわち、リヤカバー11には、保持部材10を揺動可能に支承する支点部36,36−1と、支点部36,36−1から離れた位置で、保持部材10とリヤカバー11との距離を調整可能な姿勢調整部43,43−1、44,44−1と、が設けられる。
【0074】
この構成によれば、リヤカバー11に設けられた姿勢調整部43,43−1、44,44−に対する調整操作を行うことにより、保持部材10全体は支点部を中心として取付け姿勢の調整がなされる。
【0075】
(7)(5)又は(6)において、レンズ部材23をさらに備え、リヤカバー11の前部には、保持部材10を収容した状態でレンズ部材23が装着されている構成である。すなわち、前照灯ユニットUは、ヘッドライト光源1A,1B、第1補助光源2、第2補助光源3及び第3補助光源4の前方側を覆う透光カバーとしてのレンズ部材23を備える。
【0076】
この構成によれば、一つのレンズ部材23内に全光源を一括して収容することができるため、組付け作業性に優れる。
【0077】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0078】
(1)本実施形態ではヘッドランプ用光源としてロービーム用とハイビーム用の二種類を備え、しかもこれらに対する装着部を保持部材10に共に一体化したが、いずれか一方のみは別体化してもよい。
【0079】
(2)本実施形態では、第2補助バルブをダブルフィラメントとして第2及び第3の補助光源を一つのバルブ内に共存させたが、第3補助バルブを設けて別個に設定するようにしてもよい。
【0080】
(3)本実施形態では、第1補助光源2をポジションランプと兼用させるようにしたが、ポジションランプは別個に設けてもよく、さらに前照灯ユニットUとは別個に設けても良い。さらには、ポジションランプは省略してもよい。
【0081】
(4)補助光源の数は特に限定されるべきものではなく、一以上であればよい。
【0082】
(5)実施形態1においては、第1補助光源2をポジションランプとコーナリングランプとしての機能を兼備させたものとして説明した。しかし、第1補助光源2を単にコーナリングランプとしてのみ機能させるようにしてもよい。つまり、第1補助光源2に対し所定条件が成立したときに、完全消灯状態(供給電力がゼロの状態)からコーナリングランプとして必要な照度が得られる完全点灯状態(ポジションランプとして機能するのに必要な供給電力より高い電力が供給されている状態)へと切り替えたり、逆に所定条件が成立したときに完全点灯状態から完全消灯状態へと切り替えるようにするのである。
【0083】
(6)実施形態2においては、左右に並列させたヘッドライト光源のうち一方をハイビーム用、他方をロービーム用としたが、左右のいずれもがロービーム及びハイビームのフィラメントを備える同一の仕様とし、これらフィラメントに対する電力の供給先を左右で連動して切り換えるようにしてもよい。
【技術分野】
【0001】
本発明は、前照灯ユニット及び自動二輪車に関し、特には、補助用照明灯の配置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動二輪車は、コーナリング時や交差点を曲がるときには、車両に作用する遠心力に対抗するために、車両を傾斜させて走行する。このとき、車両の傾斜に伴ってヘッドライトも同じ方向に傾斜するのでヘッドライトの照射領域も傾く。すると、より手前の地点を照射することになるため、進行方向の照射領域が減少する。この照射領域の減少を補うために、ヘッドライトの左右に補助用の照明灯を追加して配置するようにしたものが知られている(下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−131212号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来技術では、特許文献1の段落0077及び図6,図7に記載されているように、ウインカースイッチの操作に連動して点灯する第1の照明灯20a,20bは上方側に配置され、車体のバンク角に応じて点灯する第2の照明灯21a,21bは下方側に配置されている。
【0005】
ところが、特許文献1の段落0078及び図2に記載されているように、下方側に配置された第2の照明灯21a,21bの照射領域15a,15bは、上方側に配置された第1の照明灯20a,20bの照射領域14a,14bよりも上方に位置している。すなわち、下方側に配置された第2の照明灯21a,21bの照射方向は、上方側に配置された第1の照明灯20a,20bの照射方向よりも上方を向いており、両者は側面視において交差している。このため、第1の照明灯20a,20bと第2の照明灯21a,21bとを近づけて配置することが困難である。
【0006】
本発明者らは、ヘッドライトと補助用照明灯とを一体的に設けた前照灯ユニットの開発を検討している。しかしながら、上記従来技術に記載された配置態様では、ウインカースイッチの操作に連動して点灯する補助用照明灯と、車体のバンク角に応じて点灯する補助用照明灯とを離して配置しなければならず、前照灯ユニットのコンパクト化が困難という問題がある。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みて為されたものであり、コンパクト化を図ることが可能な前照灯ユニット及び自動二輪車を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の前照灯ユニットは、第1の装着部に装着され、前記第1の装着部から所定方向に向けて光を照射する第1の光源と、前記第1の光源よりも後方かつ上方に配置され、第2の装着部に装着され、前記第2の装着部から前記所定方向よりも上方かつ車幅方向の外方に向けて光を照射する、車体のバンク角に応じて点灯する第2の光源と、を備え、正面視において前記第2の装着部の一部が前記第1の装着部の後方に隠れる。
【0009】
また、本発明の自動二輪車は、上記本発明の前照灯ユニットを備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、第1の光源からの光が第1の装着部から所定方向に向けて照射され、第1の光源よりも後方かつ上方に配置された第2の光源からの光が第2の装着部から当該所定方向よりも上方かつ車幅方向の外方に向けて照射されるので、正面視において第2の装着部の一部が第1の装着部の後方に隠れるまでこれらを近づけることができる。その結果、前照灯ユニットのコンパクト化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】自動二輪車の正面図である。
【図2】前照灯ユニット部分を拡大して示す正断面図である。
【図3】同じく側断面図である。
【図4】図3を拡大して示す断面図である。
【図5】同じく平断面図である。
【図6】第2及び第3補助光源を有する第2補助バルブの拡大断面図である。
【図7】点灯制御系のブロック図である。
【図8】第1補助光源の点灯動作を説明するためのフローチャートである。
【図9A】第2補助光源の点灯動作を説明するためのフローチャートである。
【図9B】第3補助光源の点灯動作を説明するためのフローチャートである。
【図10】各補助光源の点灯及び消灯時期とバンク角との関係を示す説明図である。
【図11】コーナリング時における照明領域の変化を示す説明図である。
【図12】交差点を左折する際の前半時期における照明領域の変化を示す説明図である。
【図13】同じく後半時期における照明領域の変化を示す説明図である。
【図14】実施形態2における前照灯ユニットの正断面図である。
【図15】実施形態3における点灯制御系を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を図乃至図13によって説明する。以下の説明中、「前後」に関する方向は車両の進行方向を基準とし、「左右」に関する方向は運転者を基準とするものとする。
【0013】
自動二輪車の正面を示す図1において、車両前部の中央には車両前方及び左右方向を照射する前照灯ユニットUが装着されている。この前照灯ユニットUには、車両の前方を照射するヘッドライト光源1A,1Bと車両の左右両方向を照射する補助光源2〜4とが設けられている。図2に示すように、ヘッドライト光源1A,1Bは前照灯ユニットU内において中央に配置され、上下のバルブ5,6内にそれぞれ収容されたフィラメントによって構成されている。上側に配置されたバルブはロービーム用バルブ5であり、下側に配置されたバルブはハイビーム用バルブ6である。
【0014】
ハイビーム用バルブ6を挟んだ左右両側には、第1補助バルブ7が対をなして配置されている。第1補助バルブ7内のフィラメントがウインカースイッチ9のオンによって点灯する第1補助光源2である。ロービーム用バルブ5を挟んだ左右両側には、第2補助バルブ8が対をなして配置されている。第2補助バルブ8は、図6に示すように、内部に2つのフィラメントを上下に離間して配置した、いわゆるダブルフィラメントと呼ばれる形式である。このうち上側のフィラメントは小さいバンク角で点灯する第2補助光源3であり、下側のフィラメントはより大きいバンク角で点灯する第3補助光源4である。これら全てのバルブ5〜8は、一つの保持部材10によって保持され、さらにこの保持部材10はリヤカバー11を介して車両フレームへ固定されるようになっている。
【0015】
次に、前照灯ユニットUを支持するための車両側の構造を説明する。ハンドル12のステアリング軸を挿通するヘッドパイプ13には後方へ向けてメインフレーム14が延びている。ヘッドパイプ13の前面には上下にブラケット15,16が取り付けられ、上側のブラケット15には平面視でループ状をなすアッパフレーム17が取り付けられている。アッパフレーム17は前下がりの姿勢で支持されている。下側のブラケット16からは支持アーム18が前方へ向けて上向き勾配となる姿勢で取り付けられている。支持アーム18の前端はアッパフレーム17の前端中央部に連結されている。
【0016】
メインフレーム14は、ヘッドパイプ13から二股に分岐してそれぞれ斜め下後方へ向けて延出している。分岐したメインフレーム14において、ヘッドパイプ13寄りの位置の外面にからはそれぞれ左右方向へ向けてブラケット20が張り出すようにして取り付けられている。この両ブラケット20には平面視で略U字状をなすロアフレーム19が前方へ向けて延出した状態で取り付けられている。ロアフレーム19はブラケット20側から略中央部までは斜め上向きの姿勢で延び、そこから前端部までは略水平姿勢となるように屈曲して形成されている。ロアフレーム19は、前端の位置がアッパフレーム17の前端位置よりさらに前方へ延出している。ロアフレーム19のうち略水平姿勢をなす部分の中央には、連結アーム21が左右で対をなして立ち上がっている。両連結アーム21は後述する保持部材10との干渉を避けつつ斜め後方へ屈曲した状態で立ち上がり、その上端部にはブラケット22を介してアッパフレーム17の前端部に連結されている。
【0017】
前照灯ユニットUは、前述したように、各バルブ5〜8、各バルブ5〜8を保持する保持部材10及び保持部材10を後方から覆うリヤカバー11を備え、さらにリヤカバー11の前面に嵌着され、各バルブ5〜8を内部に一括して収容するレンズ部材23を有している。
【0018】
リヤカバー11は合成樹脂製であり、保持部材10の後面部及び下面部を覆うことができるような大きさをもって前方へ開放した形状となっている。リヤカバー11はアッパフレーム17、ロアフレーム19及び両連結アーム21に対してボルトによる取付けがなされている。詳細には図示しないが、取り付け箇所のうちのいくつかの箇所においては、振動吸収用のクッションゴムが介在されている。各取付け箇所は次のような配置となっている。
【0019】
すなわち、図2に示すように、リヤカバー11における後面の上部には左右で対をなす上部接続片24が上方へ一体に突出し、アッパフレーム17の対応箇所へ取付けられている。また、リヤカバー11における後面で左右両側縁の上部寄りの位置からは、斜め後方へ向けかつ左右方向へ張り出すようにして左右一対の中間接続片25が形成され、それぞれの先端部は対応する連結アームの上端部にブラケット26を介して連結されている。さらに、リヤカバー11における下面の左右両側部でかつ前後方向の中央部には一対の下部接続片27が、下方及び左右方向へ張り出すようにして突出形成されている。そして、それぞれの先端部はロアフレーム19の先端部寄りにブラケット28を介して連結されている。
【0020】
また、リヤカバー11の後面で各バルブ5〜8と同軸上に対応する部位には、バルブ交換等のメンテナンスを行うための窓孔29がそれぞれ開口している。各窓孔29にはシールリング30を介してサービスカバー31が取り外し可能に取付けられている。なお、各サービスカバー31には電線挿通孔がそれぞれ開口し、バルブに接続された電線をシール状態で後方へ引き出すようにしている。
【0021】
保持部材10は、合成樹脂材にて一体に形成されている。全体は、後に説明する構造により、リヤカバー11に対する取付角度が調整可能となっている。保持部材10には各バルブ5〜8毎に装着部32〜35が設けられている。装着部32〜35はいずれもその前面壁が後方へ向けて突出する湾曲面をなしており、各光源1A,1B、2〜4から照射された光を前方へ向けて反射させる反射面32A〜35Aが形成されている。各バルブ5〜8は、各装着部32〜35の反射面32A〜35Aの中心部(最も後方へ引っ込んだ部分)において後方から突っ込まれて取付けがなされている。
【0022】
各装着部32〜35のうち左右方向の中央部でかつ上部側に配されたものは、ロービームバルブ用装着部32となっている。ロービーム用バルブ5は車両の左右方向に関する中心軸上に配置されている。ロービームバルブ用装着部32は各補助バルブ7,8に対する装着部34,35に比べて軸方向に長いフード状に形成されている。また、ロービームバルブ用装着部32の前面の開口縁は、下縁の左右方向の中心部が最も前方に張り出すようにして形成されている。
【0023】
上記ロービームバルブ用装着部32の下部にはハイビーム用バルブ6を装着するための装着部33が配置されている。ハイビームバルブ用装着部33は、図4、図5に示すように、ロービームバルブ用装着部32から前方へ突出するようにして形成されている。このハイビームバルブ用装着部33は、車両前面視においてロービームバルブ用装着部32とほぼ同形状に形成されている。ハイビーム用バルブ6が装着されている位置は、ロービーム用バルブ5と同様、車両の左右方向に関する中心軸上に配置されている。
【0024】
保持部材10においてハイビームバルブ用装着部33を挟んだ左右両側には、第1補助バルブ7を装着するための装着部34が左右対称に配されている。この両第1補助バルブ用装着部34は、ハイビームバルブ用装着部33よりも後方へ後退した位置に配置されている。第1補助バルブ7が取付けられる高さ位置は、ハイビーム用バルブ6の取り付け高さ位置よりも若干高い位置に設定されている。但し、第1補助バルブ7の中心軸線は、車両平面視で、ロービーム用バルブ5やハイビーム用バルブ6の両中心軸線に対しそれぞれ等角度ずつ斜め外方へ傾斜して設定されている。
【0025】
保持部材10においてロービームバルブ用装着部32を挟んだ左右両側には、第2補助バルブ8を装着するための装着部35が対称に配されている。この両第2補助バルブ用装着部35は、第1補助バルブ装着部34よりも後方でかつ上位に形成されている。左右方向に関して、第2補助バルブ8が取付けられる位置は第1補助バルブ7よりも外方となるように設定されている。第2補助バルブ8が取付けられる高さ位置は、ロービーム用バルブ5の取り付け高さ位置とほぼ同じである。但し、第2補助バルブ8の中心軸は同じ側にある第1補助バルブ7の中心軸よりも上向きとなるようにしてある。
【0026】
第2補助バルブ8内には、前述したように、第2及び第3の補助光源3,4としての2つのフィラメントが収容され、高さ方向に離間して位置している。このうち、下側に配置されたフィラメントである第3補助光源4は、第2補助バルブ用装着部35の反射面35Aの頂点部を通過する軸線O上に位置し、第2補助光源3はその上位に配置されている。したがって、第2補助光源3の照射領域は、第3補助光源4を点灯可能とするよう設定されたバンク角域内において、第3補助光源4の照射領域に比べて手前側(車両に近い側)となる。
【0027】
次に、リヤカバー11に対する保持部材10の取付け角度を調整して、各バルブの照明方向を調整可能とするための構造を説明する。保持部材10の後面において、車両前面視でハイビームバルブ用装着部33の右上コーナ部(図2では左上コーナ部)には、保持部材10全体を三次元的に変位可能に支持するための支点部36が配されている。保持部材10の後面には、図5に示すように、支点部36の一部を構成するボス部37が、後方へ向けて一体に突出している。一方、リヤカバー11からはねじ軸38がシールリング39を介して貫通し、その前端にはボール部40が一体に形成されている。ボール部40はボス部37の後端面において、抜け止めされた状態で遊動可能に支持されている。ねじ軸38はその途中に形成されたフランジ板41と、ねじ軸38の後端部にねじ込まれたナット42とでリヤカバー11を挟み付けている。
【0028】
また、保持部材10の後面において、ロービームバルブ用装着部32に対応する部位でかつ車両前面視で支点部36の上方及び左方(図2では右方)には、保持部材10の取付け姿勢を高さ方向と左右方向へ調整可能な姿勢調整部が配置されている。両姿勢調整部のうち、支点部36の上方に配された側は、保持部材10を上下方向に傾斜変位させるための上下姿勢調整部43であり、上記した支点部36と左右方向及び前後方向に関してほぼ同じ位置に配置されている。
【0029】
さらに、保持部材10の後面において、ハイビームバルブ用装着部33に対応する部位で、かつ図2において支点部36の右方に位置する姿勢調整部は、保持部材10を左右方向に変位させるための左右姿勢調整部44である。左右姿勢調整部44は高さ方向に関しては支点部36とほぼ同じ位置であるが、支点部36から左方(図2では右方)に離間している。両姿勢調整部43,44は配置が異なるだけで、基本構造は共通である(図5では、左右姿勢調整部44のみが示されている。)。すなわち、両姿勢調整部43,44に関し、保持部材10の後面からは中空の筒部45が後方へ向けて一体に突出している。一方、リヤカバー11における対応位置からは段付きボルト46が貫通し、筒部45の後端面にねじ込まれている。段付きボルト45のねじ部には段差部46Aに当接した状態でナット部材47がねじ込まれている。ナット部材47とリヤカバー11の内面との間には皿ばね48が介在されていて、段付きボルト46の頭部をリヤカバー11に密着させるように付勢している。かくして、リヤカバー11の後面において段付きボルト46の頭部を回転させることで、保持部材10を段付きボルトの軸方向に沿って変位させることができる。このことにより、保持部材10の全体は選択された側の姿勢調整部43,44の操作により支点部36を中心として上下方向あるいは左右方向への変位がなされる。このため、各バルブ5〜8の照射方向を一括して調整することができる。
【0030】
図7は、前照灯ユニットUの制御回路のブロック図である。本実施形態の自動二輪車にはコントロールユニット49が搭載されており、ウインカースイッチ9、車速センサ51及び傾斜角センサ52からの信号を演算処理して左右の第1乃至第3補助光源2〜4の点灯動作を制御するようになっている。なお、左右の第1補助光源2はヘッドライト用光源1A,1Bの点灯・消灯に連動して点灯・消灯するようになっている。また、ウインカースイッチ9がオフの状態でかつヘッドライト光源1A,1Bの点灯中のときには、左右の第1補助光源2に対しては共に低い電力が供給されるようになっていて、ポジションランプとして機能するようにしてある。そして、ウインカースイッチ9がオン操作されると、対応する側の第1補助光源2に対しては、コントロールユニット49からの指令に基づき、供給される電力が高い状態へと切換えがなされるようになっている。
【0031】
車速センサ51はエンジンから後輪への動力伝達系に設けられ、自動二輪車の車速を検出する。傾斜角センサ52は車両のハンドル12を操作したときに変位する部分を除いた車両部分の適所に配置され、車体の左右方向への傾斜角度(バンク角)を検出する。
【0032】
第1補助光源2の点灯を制御する工程を、図8に示すフローチャート及び点灯・消灯時期とバンク角との関係を示す図10を参照しながら説明する。なお、図10中、A,Bは車両の傾斜方向を示しており、Aは鉛直軸から車両を傾斜させてゆく方向であり、Bは傾斜状態にある車両を鉛直軸へ向けて起立させてゆく方向を示している。
【0033】
第1補助光源2には、通常時においてポジションランプとして機能する状態と、コーナリング時に点灯して補助照明としても機能する状態との二つの点灯形態が設定されている。最初に、第1補助光源2がポジションランプとして機能する場合について説明する。
【0034】
まず、ステップS1において、ウインカースイッチ9が作動(ON)しているか否かが検出される。作動していない(OFF)場合にはステップS8に進んで、左右の第1補助光源2を共に低い供給電力で点灯させ、ポジションランプとして機能させる。作動している場合には、ステップS2においてそれが左右いずれのウインカースイッチ9であるのかが確認される。右側であれば、ステップS3において右側の第1補助光源2が点灯中(高い供給電力での点灯中)であるか否かが判断される。高い供給電力にて点灯していないと判断される場合(ポジションランプとして機能している場合)には、傾斜角センサ52からの入力値に基づいてバンク角が所定値θ1に達しているかどうかを判断し(ステップS4)、この所定値を下回っている間は第1補助光源2の点灯がなされる(ステップS5)。つまり、第1補助光源2に対して高い電力が供給され、ポジションランプとして機能していた状態からコーナランプとして機能するように発光状況の切り替えがなされる。
【0035】
ステップS3において右側の第1補助光源2が点灯中(高い供給電力での点灯中)であると判断される場合には、ステップS6に進んでバンク角がθ3以上になったか否が判断され、バンク角がθ3以上である場合には、右側の第1補助光源2が減灯する(ステップS7)。つまり、第1補助光源2は低い値の供給電力に切り替えられ、再度ポジションランプとして機能するようになる。
【0036】
ところで、本実施形態ではθ1<θ3であり、その角度差として例えば3度が設定されている。このような角度差を設定しておく理由は、車体を傾斜させてゆく過程で微小な角度範囲で戻し動作があったときに、これを鋭敏に感知して第1補助光源2が点灯・消灯(減灯)を繰り返すことがないように配慮したものである。また、ステップS7において右側第1補助光源2が減灯するまでの間には、第1補助光源2に対する供給電力を徐々に減少させ、その間に所定の時間(例えば1秒程度)を要するようにしてある。このようにする理由は、瞬間的にポジションランプとしての照度にまで落とすと右側第1補助光源2による照明範囲が急激に消滅し、ライダーが戸惑いを覚えることを懸念するためである。
【0037】
次に、第2の補助光源3の点灯動作を制御する工程を図9Aによって説明する。まず、ステップS1において、傾斜角センサ52からの入力値に基づいて車両が左右いずれかに傾斜したか否かが検出される。右方へ傾いている場合には、ステップS2において右側の第2補助光源3が点灯中か否かの判断がなされる。点灯していない場合には、バンク角が所定値θ2以上になったかどうかの判断がなされる(ステップS3)。そして、バンク角が所定値θ2以上である場合には、右側の第2補助光源3が消灯する(ステップS4)。また、ステップS2において右側の第2補助光源3が点灯していると判断された場合には、ステップS5に進んでバンク角が所定値θ6を下回ったか否かの判断がなされる。バンク角がこの値を下回っていると判断された場合には、右側の第2補助光源3が消灯する(ステップS6)。第2補助光源3の消灯動作も、前述した第1補助光源2と同様、所定時間をかけて徐々になされる。
【0038】
また、第3の補助光源4の点灯動作を制御する工程を図9Bによって説明する。まず、ステップS1において、傾斜角センサ52からの入力値に基づいて車両が左右いずれかに傾斜したか否かが検出される。右方へ傾いている場合には、ステップS2において右側の第3補助光源4が点灯中か否かの判断がなされる。点灯していない場合には、バンク角が所定値θ5以上になったかどうかの判断がなされる(ステップS3)。そして、バンク角が所定値θ5以上である場合には、右側の第3補助光源4が点灯する(ステップS4)。また、ステップS2において右側の第3補助光源4が点灯していると判断された場合には、ステップS5に進んでバンク角が所定値θ4を下回ったか否かの判断がなされる。バンク角がこの値を下回っていると判断された場合には、右側の第3補助光源4が消灯する(ステップS6)。第3補助光源4の消灯動作も、前述した第1補助光源2と同様、所定時間をかけて徐々になされる。
【0039】
本実施形態では、このθ2はθ1<θ2<θ3となる設定としてあり、θ2とθ3との角度差は例えば1度程度の設定としてある。また、本実施形態では、θ6、θ4及びθ1との関係はθ6<θ1<θ4としてあり、例えばθ6とθ1との角度差は1度に設定されている。
【0040】
図11は、コーナリングの際の前照灯ユニットUによる照明領域の変化を示したものである。自動二輪車が左カーブのコーナに進入する前の地点Aでは、車両は徐々に傾斜が開始されるものの、ほぼ直立した姿勢にあるため、ロービームあるいはハイビームのヘッドライト光源1A,1Bのみが点灯し照射領域H1を形成している。
【0041】
コーナに近づいた地点Bで、車両の傾斜状況が進んでバンク角がθ2以上になると、第2補助光源3が点灯する。このときには、ヘッドライト光源1A,1Bによる照射領域H2は照射幅がやや減少しているが、第2補助光源3の点灯によって形成される照射領域X1が、照射領域H2の左側(進行方向内側)において互いの照射領域を重複させた状態で形成される。但し、このとき第2補助光源3はヘッドライト光源1A,1Bよりも車両の走行予定軌跡の内側でかつやや手前側を明るく照らしている。
【0042】
車両がコーナの中間部に差し掛かった地点Cでは、車両が最も傾斜姿勢をとるため、ヘッドライト光源1A,1Bによる照射領域H3はさらにスポット化し最も幅狭となる。第2補助光源3の照射領域X2も同様に幅狭化するため、ヘッドライト光源の1A,1B照射領域と重なっていた照射領域はほぼ消失する。しかし、バンク角がθ5以上になると、この時点で第3補助光源4も点灯する。この第3補助光源4の点灯に伴って生じる照射領域Y1は、ヘッドライト光源1A,1Bによる照射領域H3の進行方向内側に生じている第2補助光源3の照射領域X2よりさらに内側において同領域X2と部分的に重複して位置する。なお、第3補助光源4によって形成される照射領域Y1は、第2補助光源3の照射領域X2よりも車両走行予定軌跡の内側に明領域を形成する。
【0043】
車両がコーナの中間部を越えた地点Dでは、車両は傾斜姿勢から徐々に起立した姿勢へと移行している。この間に、バンク角がθ4以下になると、第3補助光源4は所定時間をかけて徐々に消灯する。すなわち、第3補助光源4による照射領域は徐々に暗くなって所定時間経過後に完全に消失する。これにより、急激に照射範囲が減少することが回避されるため、安全な走行に寄与することができる。また、車両が徐々に起立してくることに伴い、ヘッドライト光源1A,1B及び第2補助光源3による照射領域H4,X3も次第に広幅となり、第2補助光源3は再び車両の走行予定軌跡の内側に明領域を形成するようになる。
【0044】
車両がコーナを通過した後の地点Eにおいて、バンク角がθ6になると、その時点から第2補助光源3は所定時間をかけて徐々に消灯する。これにより、以後は車両前方はヘッドライト光源1A,1Bの照射領域H5のみによって照明される。
【0045】
次に、交差点を通過する際の前照灯ユニットUによる照明領域の変化について説明する。
【0046】
図12及び図13に示すように、車両が左右いずれかのウインカーを点滅させながら交差点を左折する場合、交差点の手前の地点Aで、左側のウインカースイッチ9がオン操作される(図12(a)参照)。これにより、第1補助光源2に対しては、ポジションランプとして機能するに必要な供給電力より高い供給電力に高められる。これにより、ヘッドライト光源1A,1Bによる照射領域H1の左側、つまり車両が進行する方向に第1補助光源2による照射領域P1が形成される。第1補助光源2による照射領域P1はヘッドライト光源1A,1Bの照射領域H1の内側に明領域を有しており、かつヘッドライト光源1A,1Bによる照射領域H1との間で重複した領域を形成し、両照射領域H1,P1との境界域に暗領域が生じないようにしてある。
【0047】
車両が交差点の直前地点Bまで進入し、車両を傾斜させて左折の体勢になり、バンク角がθ2になると、第2補助光源3が点灯する((b)参照)。そして、この点灯を行わせた傾斜角度から僅かではあるがさらに傾いてバンク角がθ3になると、第1補助光源2は徐々に明るさを減じてゆき、再びポジションランプとしての機能を発揮する状態に戻る。図12(b)では第1補助光源2による照射領域が消えてゆく過程の状態を破線で示している。同図に示されるように、第2補助光源3による照射領域X1は第1補助光源2による照射領域P2の左方に生じ、ヘッドライト光源1A,1Bによる照射領域H2と重複するように生じる。
【0048】
図12(c)は地点Cにおいて、第1補助光源2の照射領域が完全に消失した状態を示している。ヘッドライト光源1A,1B及び第2補助光源2による照射領域H3,X2は重複範囲を有しつつ徐々に左方へ傾斜してゆく。このように、第1補助光源2が消灯しても、照射領域に隙間が生じてしまうことがなく、車両の進行方向を広く連続した状態で照らすことができる。
【0049】
車両が交差点に最も深く入り込んだ地点D(同図(d)参照)では、車両が最も傾斜しバンク角がθ5になると、第3補助光源4が点灯する。この間、ヘッドライト光源1A,1Bと第2補助光源3の照射領域は徐々に幅が狭くなり、車両の走行予定軌跡の内側の照射領域の面積が減ってくる。この照射範囲が減る前に、第3補助光源4が点灯する。その照射領域Y1は、ヘッドライト光源1A,1Bの照射領域H4の内側に生じている第2補助光源3の照射領域X3のさらに内側に生じ、かつ第2補助光源3の照射領域X3との境界部分に暗領域が生じないよう、部分的に重複するように形成される。かくして、コーナリングの際に最も車体を傾斜させた際においても、車両の進行方向の照射領域が狭くなってしまうことがなく、広範囲に連続する照射領域を確保することができる。
【0050】
そして、交差点の出口地点E(同図(e)参照)では、車両が徐々に起立し、バンク角がθ4になると、第3補助光源4が所定時間をかけて徐々に消灯する。バンク角がθ1以下になると、第1補助光源2に対してはポジションランプとして機能するに必要な供給電力より高い供給電力に高められる。これにより、ヘッドライト光源1A,1Bによる照射領域H1の左側、つまり車両が進行する方向に第1補助光源2による照射領域P3が形成される。このときには、ヘッドライト光源1A,1Bと第2補助光源3の両照射領域H5,X4とは、僅かに重複する程度であり、この重複範囲に重ねて第1補助光源2の照射領域P3が形成される(同図(e)では破線で示されている)。
【0051】
交差点を通過してさらに車両の起立が進んだ地点F(同図(f)参照)においては、バンク角がθ1を僅かに下回りθ6以下になると、第2補助光源3が所定時間をかけて徐々に消灯する。つまり、この第2補助光源3による照射範囲の消失に先立って第1補助光源2が点灯するため、車両の進行方向において照射範囲が狭くなってしまうことがない。第2補助光源3の照射領域が消失する時点では、第1補助光源2の照射領域P4の幅が広がり、ヘッドライト光源の照射領域H6に重複した状態となる。
【0052】
そして、車両が完全に交差点を通過した地点Gにおいて、ライダーによってウインカースイッチ9がオフ操作されると、第1補助光源2に対する供給電力は低められ、再びポジションランプとしての機能に切り替えられる。したがって、車両進行方向はヘッドライト光源1A,1Bの照射領域H7のみが形成される。
【0053】
以上の説明から明らかなように、本実施形態では2つのヘッドライト光源1A,1B、左右の第1から第3補助光源2〜4に対する各装着部32〜35を、一つの保持部材10に一体的に設けてユニット化した。したがって、保持部材10の後面側に装着されたリヤカバー11との間で取付け姿勢を調整すれば、各光源の光軸を一括して調整することができる。したがって、各光源のエイミング作業を簡単に行うことができる。また、前照灯ユニットUとして車両への取り付けも簡単に行うことができる。
【0054】
また、本実施形態では、図3に示されるように、第2補助バルブ8の照射方向、すなわち第2補助光源3及び第3補助光源4(図2を参照)からの光が反射面(第2の反射面)35Aにより反射される方向は、第1補助バルブ7の照射方向、すなわち第1補助光源(図2を参照)からの光が反射面(第1の反射面)34Aにより反射される方向よりも上方を向いている。このため、図2に示されるように、2つの反射面34A,35Aの一部同士が正面視において重なる程度までこれらを近づけても、後方側の反射面35Aから前方に向けて反射される光の一部が、前方側の反射面34Aを有する装着部34に阻まれることがない。これにより、前照灯ユニットUのコンパクト化を実現することができる。
【0055】
また、本実施形態では、図6に示されるように、第2補助バルブ8内の上方側に第2補助光源3が配置され、下方側に第3補助光源4が配置されており、第3補助光源4からの光が反射面35Aにより反射される方向は、第2補助光源3からの光が反射面35Aにより反射される方向よりも上方を向いている。そして、図10に示されるように、車体のバンク角がθ2(第1の値)を上回るときに第2補助光源3が点灯し、車体のバンク角がθ2よりも大きいθ5(第2の値)を上回るときに第3補助光源4が点灯する。これにより、図11に示されるように、車体が比較的大きく傾いた地点Cにおいて、第2補助光源3による照射領域X2よりも上方に、第3補助光源4による照射領域Y1が形成される。
【0056】
また、本実施形態では、図6に示されるように、第2補助光源3及び第3補助光源4は、いわゆるダブルフィラメントとして、1つの第2補助バルブ8内に収容され、1つの反射面35Aに囲まれており、こうした構成によって上記のように照射領域を調整可能にしている。このため、第2補助光源3及び第3補助光源4に個別のバルブ及び反射面を設ける必要がなく、前照灯ユニットUのコンパクト化を実現することができる。
【0057】
<実施形態2>
図14は、本発明の実施形態2の前照灯ユニットU1を示している。実施形態2では、各光源の配置を変更している。すなわち、ヘッドライト光源1A−1,1B−1を左右に並べて配置すると共に、各補助光源2−1〜4−1をヘッドライト光源1A−1,1B−1の下側に並べて配置している。例えば、図14における右側のヘッドライト光源1B−1がハイビーム用であり、左側がロービーム用である。また、補助光源のうち外側に配されたものが第1補助光源2−1であり、内側に配されたものが第2及び第3補助光源3−1,4−1である。
【0058】
実施形態2では、保持部材10A,10Bを左右に一対設けて、それぞれに各光源の対を備えさせるようにしている。但し、リヤカバー11は両保持部材10A,10Bに共用されていて、支点部36−1及び上下及び左右の各調整部43−1,44−1も保持部材10毎に別個に設定されている。
【0059】
他の構成は実施形態1と同様であり、同様の作用効果を奏することができる。
【0060】
<実施形態3>
図15は、本発明の実施形態3に係るブロック図を示している。実施形態1では、バンク角の検出に傾斜角センサ52を用いたが、実施形態3では傾斜角速度センサ53を用いている。すなわち、コントロールユニット49−1内にはA/Dコンバータ54、積分回路55、点灯制御回路56が設けられている。A/Dコンバータ54は傾斜角速度センサ53で検出した傾斜角速度のアナログ値をデジタル値に変換する。積分回路55は、A/Dコンバータ54が出力する傾斜角速度信号を積分することで傾斜角度信号を出力する。点灯制御回路56では、各補助光源2〜4が点灯中であるときに車両が所定のバンク角に達して消灯する際に、傾斜角速度に応じて消灯速度を制御することができるようになっている。
【0061】
すなわち、実施形態1では傾斜姿勢にある車両を起立させるときの速度とは無関係に一定時間をかけて消灯させていた。しかし、実施形態3では車両を起立させるときの速度が速いときには、各補助光源2〜4に対する供給電力の減少速度を速めて短時間で完全消灯に至らしめ、車両を起立させるときの速度が遅いときには、各補助光源2〜4に対する供給電力の減少速度を遅め、ゆっくりと完全消灯に至らしめる。このようにすれば、車両の起立動作に対し補助光源の消灯動作を鋭敏に対応させることができる。
【0062】
各実施形態からは以下のような技術思想を抽出することができる。
【0063】
(1)さらにウインカースイッチ9を備え、補助光源は、ウインカースイッチ9の操作に連動して左右いずれかの側が点灯する第1補助光源2と、車両のバンク角が所定値以上になったときに車両の傾斜方向に応じて左右いずれかの側が点灯する第2補助光源3とを備え、補助光源用装着部は、第1補助光源2を装着する第1装着部34と、第2補助光源3を装着する第2装着部35とからなっている構成である。
【0064】
この構成によれば、車両がコーナに進入するにあたり、ウインカースイッチ9の操作がなされると、左右いずれかの第1補助光源2が点灯する。車両がコーナに進入した後、車両が所定のバンク角になるまで傾斜すると、その傾斜方向に応じて左右いずれかの側の第2補助光源3が点灯する。この構成によれば、補助光源が複数種に増加しても、照明領域の調整作業数を何ら増加させずに済む。
【0065】
(2)(1)において、第2補助光源3とこの第2補助光源3が点灯するときのバンク角を上回るバンク角以上になったときに車両の傾斜方向に応じて左右いずれかの側が点灯する第3補助光源4とが収容されたバルブ8をさらに備え、バルブ8は、第2装着部35に装着されている構成である。
【0066】
この構成によれば、第2装着部に第2・第3の補助光源3,4を一つのバルブ内に共存させたため、前照灯ユニットU全体の大型化を回避しかつ光源の増加によっても照明領域の調整作業数を増加させずに済む。
【0067】
(3)(1)において、第1補助光源2は、ヘッドライト光源1A,1Bが点灯しておりかつウインカースイッチ9が操作されていないときには、左右いずれもが所定の供給電力により点灯し、ヘッドライト光源1A,1Bが点灯しておりかつウインカースイッチ9が操作されたときには、操作された側に対応する側は、第1補助光源2のいずれもが点灯しているときの供給電力より高い供給電力により点灯するように構成されている。すなわち、第1補助光源2は、ウインカースイッチ9がオフのときに第1の量の電力により点灯され、ウインカースイッチ9がオンのときに第1の量より大きい第2の量の電力により点灯される。
【0068】
この構成によれば、例えば夜間において直進走行をしているときには、第1補助光源2には低い供給電力により弱く点灯するため、ポジションランプとして機能させることができる。そして、カーブを曲がるときには高い供給電力により明るく点灯し、コーナランプとして機能させることができる。こうして、第1補助光源2をポジションランプとコーナランプの2つの機能を併せて持たせることができる。したがって、これらランプを別個に設ける場合に比べて部品点数の増加もなく、各ランプ毎の照明領域の調整もせずに済む。
【0069】
(4)(1)乃至(3)のいずれかにおいて、保持部材10は、ヘッドライト光源用装着部32,33及び補助光源用装着部34,35毎に形成された反射面32A〜35Aを有する構成である。
【0070】
この構成によれば、各光源に対する反射面32A〜35Aも保持部材10に一体に形成されているため、保持部材10への取り付けも手間が無く作業性に優れる。また、各光源毎に反射面が確保されるため、各光源が他の光源の照明時に影を形成することがない。したがって、各光源の照明領域を確保することができる。
【0071】
(5)車両本体はフレームを含み、保持部材10の後面側に取り付けられたリヤカバー11をさらに備え、リヤカバー11はフレームに固定されている構成である。すなわち、前照灯ユニットUは、保持部材10の後方側に設けられるリヤカバー11を備え、リヤカバー11が車体のフレームに取り付けられる。
【0072】
この構成によれば、保持部材10はリヤカバー11を介して剛性の高い車両フレームに取り付けられるため、樹脂部分に取り付ける場合に比較して車両振動の影響による照明領域のずれを緩和することができる。
【0073】
(6)(5)において、リヤカバー11には、保持部材10を変位可能に支持する支点部36,36−1と、保持部材10の取り付け姿勢を車両の高さ方向及び車幅方向に関して調整するための姿勢調整部43,43−1、44,44−1とが設けられている構成である。すなわち、リヤカバー11には、保持部材10を揺動可能に支承する支点部36,36−1と、支点部36,36−1から離れた位置で、保持部材10とリヤカバー11との距離を調整可能な姿勢調整部43,43−1、44,44−1と、が設けられる。
【0074】
この構成によれば、リヤカバー11に設けられた姿勢調整部43,43−1、44,44−に対する調整操作を行うことにより、保持部材10全体は支点部を中心として取付け姿勢の調整がなされる。
【0075】
(7)(5)又は(6)において、レンズ部材23をさらに備え、リヤカバー11の前部には、保持部材10を収容した状態でレンズ部材23が装着されている構成である。すなわち、前照灯ユニットUは、ヘッドライト光源1A,1B、第1補助光源2、第2補助光源3及び第3補助光源4の前方側を覆う透光カバーとしてのレンズ部材23を備える。
【0076】
この構成によれば、一つのレンズ部材23内に全光源を一括して収容することができるため、組付け作業性に優れる。
【0077】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0078】
(1)本実施形態ではヘッドランプ用光源としてロービーム用とハイビーム用の二種類を備え、しかもこれらに対する装着部を保持部材10に共に一体化したが、いずれか一方のみは別体化してもよい。
【0079】
(2)本実施形態では、第2補助バルブをダブルフィラメントとして第2及び第3の補助光源を一つのバルブ内に共存させたが、第3補助バルブを設けて別個に設定するようにしてもよい。
【0080】
(3)本実施形態では、第1補助光源2をポジションランプと兼用させるようにしたが、ポジションランプは別個に設けてもよく、さらに前照灯ユニットUとは別個に設けても良い。さらには、ポジションランプは省略してもよい。
【0081】
(4)補助光源の数は特に限定されるべきものではなく、一以上であればよい。
【0082】
(5)実施形態1においては、第1補助光源2をポジションランプとコーナリングランプとしての機能を兼備させたものとして説明した。しかし、第1補助光源2を単にコーナリングランプとしてのみ機能させるようにしてもよい。つまり、第1補助光源2に対し所定条件が成立したときに、完全消灯状態(供給電力がゼロの状態)からコーナリングランプとして必要な照度が得られる完全点灯状態(ポジションランプとして機能するのに必要な供給電力より高い電力が供給されている状態)へと切り替えたり、逆に所定条件が成立したときに完全点灯状態から完全消灯状態へと切り替えるようにするのである。
【0083】
(6)実施形態2においては、左右に並列させたヘッドライト光源のうち一方をハイビーム用、他方をロービーム用としたが、左右のいずれもがロービーム及びハイビームのフィラメントを備える同一の仕様とし、これらフィラメントに対する電力の供給先を左右で連動して切り換えるようにしてもよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の装着部に装着され、前記第1の装着部から所定方向に向けて光を照射する第1の光源と、
前記第1の光源よりも後方かつ上方に配置され、第2の装着部に装着され、前記第2の装着部から前記所定方向よりも上方かつ車幅方向の外方に向けて光を照射する、車体のバンク角に応じて点灯する第2の光源と、
を備え、
正面視において前記第2の装着部の一部が前記第1の装着部の後方に隠れる、
ことを特徴とする前照灯ユニット。
【請求項2】
前記第2の光源は、前記第1の光源よりも車幅方向の外方に配置され、
正面視において、前記第2の装着部の車幅方向の中央よりも内方の部分と、前記第1の装着部の車幅方向の中央よりも外方の部分と、が重なる、
請求項1に記載の前照灯ユニット。
【請求項3】
正面視において、前記第2の装着部の外縁のうち車幅方向に延びる部分が、前記第1の装着部の外縁のうち車幅方向の中央よりも外方の部分と重なる、
請求項1または3に記載の前照灯ユニット。
【請求項4】
正面視において、前記第1の装着部の外縁のうち車幅方向に延びる部分が、前記第2の装着部の外縁のうち車幅方向の中央よりも内方の部分と重なる、
請求項1ないし3の何れかに記載の前照灯ユニット。
【請求項5】
正面視において、前記第2の装着部の外縁のうち車幅方向に延びる部分が、前記第1の装着部の外縁のうち上下方向の中央よりも上方の部分と重なる、
請求項1ないし4の何れかに記載の前照灯ユニット。
【請求項6】
正面視において、前記第1の装着部の外縁のうち車幅方向に延びる部分が、前記第2の装着部の外縁のうち上下方向の中央よりも下方の部分と重なる、
請求項1ないし5の何れかに記載の前照灯ユニット。
【請求項7】
請求項1ないし6の何れかに記載の前照灯ユニットを備える自動二輪車。
【請求項1】
第1の装着部に装着され、前記第1の装着部から所定方向に向けて光を照射する第1の光源と、
前記第1の光源よりも後方かつ上方に配置され、第2の装着部に装着され、前記第2の装着部から前記所定方向よりも上方かつ車幅方向の外方に向けて光を照射する、車体のバンク角に応じて点灯する第2の光源と、
を備え、
正面視において前記第2の装着部の一部が前記第1の装着部の後方に隠れる、
ことを特徴とする前照灯ユニット。
【請求項2】
前記第2の光源は、前記第1の光源よりも車幅方向の外方に配置され、
正面視において、前記第2の装着部の車幅方向の中央よりも内方の部分と、前記第1の装着部の車幅方向の中央よりも外方の部分と、が重なる、
請求項1に記載の前照灯ユニット。
【請求項3】
正面視において、前記第2の装着部の外縁のうち車幅方向に延びる部分が、前記第1の装着部の外縁のうち車幅方向の中央よりも外方の部分と重なる、
請求項1または3に記載の前照灯ユニット。
【請求項4】
正面視において、前記第1の装着部の外縁のうち車幅方向に延びる部分が、前記第2の装着部の外縁のうち車幅方向の中央よりも内方の部分と重なる、
請求項1ないし3の何れかに記載の前照灯ユニット。
【請求項5】
正面視において、前記第2の装着部の外縁のうち車幅方向に延びる部分が、前記第1の装着部の外縁のうち上下方向の中央よりも上方の部分と重なる、
請求項1ないし4の何れかに記載の前照灯ユニット。
【請求項6】
正面視において、前記第1の装着部の外縁のうち車幅方向に延びる部分が、前記第2の装着部の外縁のうち上下方向の中央よりも下方の部分と重なる、
請求項1ないし5の何れかに記載の前照灯ユニット。
【請求項7】
請求項1ないし6の何れかに記載の前照灯ユニットを備える自動二輪車。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2013−32154(P2013−32154A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−197000(P2012−197000)
【出願日】平成24年9月7日(2012.9.7)
【分割の表示】特願2010−540401(P2010−540401)の分割
【原出願日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【出願人】(000010076)ヤマハ発動機株式会社 (3,045)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年9月7日(2012.9.7)
【分割の表示】特願2010−540401(P2010−540401)の分割
【原出願日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【出願人】(000010076)ヤマハ発動機株式会社 (3,045)
[ Back to top ]