説明

前立腺組織の治療のためのシステム及び方法

複数の特徴を含んだ前立腺治療システムが提供される。前記前立腺治療システムの1つの特徴は、経尿道的に前立腺葉に接近できることである。前記前立腺治療システムの別の特徴は、前立腺組織を切除するために、前記前立腺の中に凝縮性蒸気を供給できることである。前記前立腺治療システムの別の特徴は、前立腺から組織を吸引できることである。前記前立腺治療システムの更なる別の特徴は、蒸気の供給および組織の吸引の間、回転できることである。前記前立腺治療システムの使用と関連した方法も包含される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件出願は、米国特許法119条の米国特許仮出願第61/112099号明細書(2008年11月6日出願、発明の名称「前立腺組織の治療のためのシステム及び方法」)に基づく利益を主張する。全体的に参照することにより、本件出願に組み入れられる。
【0002】
本件明細書で言及されるすべての刊行物とすべての特許出願は、個々の刊行物または個々の特許出願のそれぞれが参照により組み込まれるために明確にかつ個々に示され、同じ範囲を参照することにより本件出願に組み入れられる。
【0003】
本発明は、前立腺の低侵襲治療(minimally invasive treatment)のための器具および関連した方法に関する。
【背景技術】
【0004】
いくつかのシステムや方法は、前立腺肥大症(BPH)の症状を緩和するために、または、前立腺組織を治療するために開発され、また、提案されている。例えば、組織切除方法は、高周波切除(RF ablation)、マイクロ波切除(microwave ablation)、高密度焦点式超音波(high intensity focused ultrasound, HIFU)、冷凍切除、放射線、外科手術、近接照射療法に基づいている。ロボット支援のある外科手術方法やロボット支援のない外科手術方法は、病気にかかった前立腺組織の切除のために開発されている。
【0005】
本件出願において開示した器具、技法、方法は、一般に前立腺組織の治療に適応し、より詳しくは、BPH(benign prostatic hyperplasia, 前立腺肥大症)や前立腺癌の治療に焦点を合わせる。BPHは、約50歳を超えた男性が経験する共通の問題であり、尿路閉塞に関連がある。前立腺肥大症、すなわち、前立腺の肥大は、尿道の圧迫症や閉塞症を引き起こし、それは、頻尿、尿流の減少、夜間多尿症(nocturia)や不快感のような症状を結果として生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願第10/681625号明細書
【特許文献2】米国特許出願第11/158930号明細書
【特許文献3】米国特許出願第11/244329号明細書
【特許文献4】米国特許出願第11/329381号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
電磁エネルギーを用いた前立腺組織の切除は周知であり、低侵襲的なアプローチを許すという利点がある。例えば、電気外科的切除または前立腺組織における高周波電流は、細胞破壊や細胞死の原因となる。そのとき、身体の創傷治癒反応(wound healing response)による組織吸収(tissue resorption)は、尿路閉塞を引き起こすかもしれない、組織の容積減少を結果として生じ得る。1つの欠点、すなわち、レーザー切除の高周波電流は、炎症反応の増加や切除後の治癒する時間の長期化を結果として生じる、潜在的な組織炭化(potential tissue carbonization)である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
提供される前立腺の疾患を治療する方法は、前記前立腺の中に経尿道的にアブレーションプローブを導入することであって、前記アブレーションプローブは前後軸(longitudinal axis)を有する、導入することと、前記前立腺の中に前記アブレーションプローブを通って凝縮性蒸気を注入しようとする時に、前記前後軸に沿って前記アブレーションプローブを移動させることと、前記アブレーションプローブを通って、近くにある前立腺組織を、吸引することとを含む。
【0009】
いくつかの実施形態では、前記方法は、さらに、尿道の中に導入器を挿入することと、前記導入器を通って前記アブレーションプローブを前に進めることとを含む。前記導入するステップは、前立腺葉の尖部の中に前記アブレーションプローブを進めることを含む。
【0010】
1つの実施形態では、前記方法は、さらに、前立腺組織の核を切除することを含む。前記方法は、さらに前記アブレーションプローブを回転させることも含み得る。いくつかの実施形態では、前記方法は、前記アブレーションプローブを通って、前記前立腺の中に高圧液体を注入することを含むことができる。
【0011】
いくつかの実施形態では、凝縮性蒸気を注入することは、100Wから1000Wの間で前記前立腺に供給することを含む。別の実施形態では、凝縮性蒸気を注入することは100cal/gramから600cal/gramの間で前記前立腺の中に供給することを含む。
【0012】
提供される前立腺治療システムは、凝縮性蒸気源と、成人男性被術者の前立腺葉の中に、経尿道的に挿入されることに適応したアブレーションプローブであって、前記アブレーションプローブは、前記凝縮性蒸気源と通じている蒸気供給ポート(vapor delivery port)を備え、前記前立腺葉に凝縮性蒸気を供給することに適応した、アブレーションプローブと、前記アブレーションプローブの中に、近くの前立腺組織を吸引するのに適応した吸引ポートとを含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、前記アブレーションプローブは、さらに、前記前立腺の内部で回転するように構成されている。電動回転モーター(powered rotating motor)は、5rpmから10,000rpmの間で前記アブレーションプローブを回転するように適応することができる。
【0014】
前記前立腺治療システムは、さらに、前記アブレーションプローブにおける液体放出ポート(liquid ejection port)と通じている高圧液体源(source of high pressure)を含む。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、蒸気エネルギー供給システム(vapor energy delivery system)であり、より具体的には、高エネルギー蒸気の循環流を維持するための環状流システム(looped flow system)とともに、流体の流れに蒸気エネルギーを適用するための誘導加熱部品(inductive heating assembly)を備えた器具のハンドル部の断面図である。当該高エネルギー蒸気は、組織と相互に作用するように、伸張部材(extension member)を通って流すための要求に応じて放出可能である。
【図2】図2は、図1の誘導加熱部品の概略図である。
【図3】図3は、前立腺患者の概略図と、患者の尿道の中に組織選択可能な摘出装置(tissue-selective extraction device)を導入する第一ステップであり、‘核を取り除くこと(coring)’すなわち、摘出の対象となる組織のかたまり(tissue volume)を示している。
【図4】図4は、尿道に近接する前立腺を通って、前立腺の近位面の中に、作業端(working end)、すなわち、組織選択可能な摘出装置を導入する次のステップを用いた、図3の前立腺患者の概略図である。
【図5】図5は、図4の作業端の断面図であり、どのようにして組織が選択的に摘出されるかを図式的に示している。
【図6】図6は、別の作業端の概略図である。
【図7】図7は、別の作業端の概略図である。
【図8】図8は、別の作業端の概略図である。
【図9】図9は、別の作業端の概略図である。
【図10】図10は、別の作業端の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は蒸気エネルギー発生システムを提供する。当該システムは、患者の尿道または前立腺に導入するように構成され、もしくは、直腸を通り抜けてすなわち内視鏡的に、前立腺組織に接近するように構成される。当該システムは、次の同時係属の米国特許出願に記載されているように、組織に熱せられた蒸気、例えば、水蒸気を供給するように構成される。米国特許出願第10/681625号(出願日:2003年10月7日、発明の名称:「熱媒介治療のための医療機器及び手法(Medical Instruments and Techniques for Thermally-Mediated Therapies)」);米国特許出願第11/158930号(出願日:2005年6月22日、発明の名称:「肺疾患を治療するための医療機器及び手法(Medical Instruments and Techniques for Treating Pulmonary Disorders)」);米国特許出願第11/244329号(出願日:2005年10月5日、発明の名称:「医療機器及び使用方法(Medical Instrument and Method of Use)」);米国特許出願第11/329381号(出願日:2006年1月10日、発明の名称:「医療機器及び使用方法(Medical Instrument and Method of Use)」)。
【0017】
さらに、様々な治療手段のために、凝縮した高エネルギー蒸気の発生と供給は、遠隔”蒸気発生システムまたは発生源を備えるシステム(米国特許仮出願第60/929632号、第61/066396号、第61/068049号)、もしくは、ハンドルまたは作業端において蒸気発生器を備えるシステム、あるいは、それらの組み合わせのシステム(米国特許仮出願第61/068130号、第61/123384号、第61/123412号、第61/126651号、第61/126612号、第61/126636号、第61/126620号)において開示される。
【0018】
図1は、米国特許仮出願第61/123416号、第61/123417号、第61/126647号に記載されたものと同様の誘導加熱システムを含むハンドル802を備える蒸気エネルギー発生システム800を示す。図1において、ハンドル802は、耐熱性取り付け部品806によって、制御された流量と圧力で液体を供給する加圧液体すなわち流体源810に接続される。液体の流れは、電源に接続された蒸気発生誘導加熱器805とコントローラ820を通過する。当該システムとハンドルは、作業端、または、組織部位に蒸気を供給する出口チャネル(exit channel)822に、蒸気を供給するための環状の液体/蒸気流(looped liquid /vapor flow)に適応するように構成される。当該システムは、流入チャネル824と、収集容器(collection reservoir)830および/または負圧源835と通じている流出チャネル826とを備える。例えば、フットスイッチで操作されるバルブ836は、出口チャネル822と伸張部材840に蒸気をリダイレクトするために、流出チャネルに備えられる。
【0019】
図1に示すような蒸気エネルギー生成システム800は、任意の外科的/医療的応用に用いることができ、その伸張部材840は、細長いアブレーションプローブ、針、柔軟なカテーテル、または、その他類似の細長い供給装置を含む。本システムは、血管内での使用のためのエネルギーを供給するためのカテーテル、気道疾患の治療、子宮内膜切除治療(endometrial ablation treatment)、または、ニードルアブレーション治療(needle ablation treatment)に用いることができる。図1の実施形態では、オプションの第二加熱器845が、同心絶縁体846とともに示される。当該第二加熱器は、誘導加熱器または抵抗加熱器であって、どんな水滴でも除去するように、蒸気にエネルギーを適用するための大きな表面積を与えるように、細孔性材料(microporous material)を用いる。本システムは、少なくとも90%を水蒸気とする蒸気を供給できる。第二加熱器は、導線(図示せず)によって電源とコントローラ820に、動作可能なように接続される。
【0020】
図2は、1つの実施形態における、孔852を備えたセラミック円筒850を含む蒸気発生誘導加熱器805を示す。セラミック円筒850は、例えば、おおよそ1.0インチから1.5インチの長さで、0.1インチの孔852を有する0.25インチの直径とすることができる。孔852には、複数の小口径ハイポチューブ(hypotube)855を詰め込むことができ、それら小口径ハイポチューブは、磁気感受性(magnetic responsive)があり、例えば、316ステンレス鋼のようなものである。1つの実施形態では、ハイポチューブ855は、0.016の薄肉チューブである。約1.0インチの軸の長さで、1層から10層の巻線860は、電源からの超高周波電流を用いた、ハイポチューブ855の誘導加熱のために、セラミック円筒850の周囲に提供され得る。1つの実施形態では、巻線860は、26Ga.フッ素樹脂加工の銅線とすることができる。適当な水の流量で、少なくとも50W、100W、200W、300W、400Wまたは600Wでの供給が、非常に高品質の蒸気、例えば90%の蒸気でより良いものを生じさせることができると分かっている。
【0021】
図2では、さらに、誘導的に加熱されたハイポチューブ855’は、カテーテルまたは作業端に配置されるように、そのような誘導加熱器に柔軟性を与えるために、らせん状の刻み目であることも見られる。例えば、そのような柔軟性のある加熱可能要素は、血管内のナビゲーションのために構成される軟性カテーテルを提供するために、柔軟性のある耐熱性ポリマー部材の孔に運ばれる。誘導加熱器の外側の絶縁層は図示されない。一般に、蒸気発生誘導加熱器805は、蒸気の質、作業端から出る蒸気圧、出て行く蒸気の温度に関する正確なパラメータを用いた高品質な蒸気媒体(vapor media)と、治療のインターバル(treatment interval)の余裕のない期間内での当該パラメータの保守とを提供するように構成される。これらすべてのパラメータは高精度に制御されることができ、それにより、特定の治療が、治療のインターバルにおいて治療超低圧(例えば、1〜5psi)もしくは超高圧(例えば、200psiもしくはそれ以上)を要求しようと、または、治療のインターバルが、1から10秒の期間であろうと2から5分の期間であろうと、制御された線量測定(dosimetry)を達成する。
【0022】
図3から4を参照すると、イメージングシステム104を備える細長い導入器102を含むシステムは、患者の前立腺106内部の尿道105に導入され、予め決められた位置に誘導され、そこで、器具の遠心端(distal end)とイメージングシステム104は、解剖学的目標(anatomical landmarks)を確認できる。1つの実施形態では、導入器102は、図4に示すように、伸縮可能なアブレーションプローブ115を携える軸チャネル(axial channel)110を備える。図3では、組織の局部、すなわち、前立腺の対抗する葉における核120Aと120Bは、摘出される組織のかたまりの境界の熱密封(thermal sealing)と切除の目標となる。アブレーションプローブ115は、前立腺葉に凝縮性蒸気を供給して、当該アブレーションプローブの中に近くの前立腺組織を吸引するために、男性被術者の前立腺葉の中に経尿道的に挿入されることに適応する。
【0023】
図4を参照すると、アブレーションプローブ115は、作業端125を備え、該作業端は、尿道に近接する組織の切除および立体的な除去(volumetric removal)のために、前立腺組織に機械的エネルギー、熱エネルギーを適用するように構成される。当該作業端は、例えば、直径約2ミリから6ミリとすることができる。作業端125は、図5に図示した方法で、組織を切除および除去するために、前立腺内部で軸の方向に前後に移動させることができる。また、図4を参照すると、アブレーションプローブは、蒸気源100、吸引器(aspiration)180、コントローラ185に、動作可能なように連結されている。蒸気源100は、図1において上述した蒸気エネルギー発生システムのような、凝縮性蒸気源とすることができる。吸引器180は、アブレーションプローブに吸引力を与えるために、負圧源または真空源とすることができ、コントローラ185は、患者への蒸気の供給および当該患者からの組織の切除を制御することに用いることができる。
【0024】
当該コントローラは、コンピュータすなわちCPUと、外科手術中の蒸気供給および吸引を制御するために、医師によって用いられる制御装置(例えば、ジョイスティック、アブレーションプローブの近位端におけるボタンあるいはレバー、マウス/キーボードなど)から構成することができる。
【0025】
医療器具の作業端125は、図5の断面図に示され、蒸気システムすなわち蒸気源100(例えば、図1に示されたようなもの)が、少なくとも1つの蒸気流入チャネル(vapor inflow channel)160に、流れるように連結されていることを見ることができる。当該蒸気流入チャネルは、装置の遠心端の凹部165における、少なくとも1つの蒸気供給ポート(vapor delivery port)164まで伸びている。各蒸気供給ポートの軸は、軸170に対して非軸方向に方向づけられ、当該装置の軸170の方向に内側に向けられる。蒸気放出の軸は、軸170に対して約10度から90度の間の角度172とすることができる。
【0026】
さらに図5を参照すると、アブレーションプローブ115は、吸引器すなわち負圧源180に流動可能に連結している吸引ポート175と、作業端凹部165の中に組織を吸引し、蒸気や組織片を摘出するためのコントローラ(図示せず)を備える。吸引ポートは、アブレーションプローブの中に、近くの前立腺組織を吸引することに適応している。使用の際に、図5に図示したように、ポート164からの蒸気の高圧噴射は、熱損傷(thermal damage)、タンパク質と組織成分の弱体化(weakening)と変性(denaturation)を生じさせ、一方でそれと同時に、蒸気と水滴は、蒸気と組織の境界面において組織を分解して(disintegrate)、立体的に(volumetrically)組織を切除するように、そこに、十分な機械力(mechanical force)を適用できることが理解できる。
【0027】
図3から5を参照すると、作業端125をどのようにして軸方向に移動させるか、負圧源がどのようにして前立腺組織(図3)のかたまりの核を取り除くことができるのかが理解できる。さらに、図4を参照すると、作業端125は、さらなる核を取り除くために、蒸気供給および吸引中に回転させることができる。作業端の回転は、手動(例えば、医者による器具の物理的な回転)とすることができ、また、その代わりに、回転機構186(例えば、電動回転モーター)は、切除および吸引中に装置の遠心端を自動的に回転させるために、作業端125に連結される。当該回転機構は、例えば、5rpmから10,000rpmの間でアブレーションプローブを回転するように構成することができる。組織におけるアブレーションプローブを回転させる方法の更なる詳細は、米国特許出願第12/389808号、第61/123416号に記載され、参照することで本件出願に組み入れられる。
【0028】
蒸気噴出(vapor flow)と相変化エネルギー(phase change energy)放出は、同時に、出血を防止するために組織周辺を密封(seal)または凝固させる(coagulate)。治療後、身体の創傷治癒反応は、再吸収すべき組織が非常に減少するので、同様の部位における組織のかたまりを切除した場合の他の方法と比べて、より迅速に、前立腺を傷の癒えた状態に戻す。尿道の壁を通って作業端125を前に進めるために、鋭先端のスリーブ(図示せず)が、内腔の壁を貫通するのに用いられることがある。
【0029】
図6は、図5の実施形態と類似した、作業端125’を備える別の実施形態を図示する。当該作業端は、組織の収容および切除という同様の機能性を有し、装置の軸に対して斜めに向けられている。したがって、斜めの作業表面は、装置の側面である程度、組織を切除すること、分解すること、摘出することに適応しており、使用方法として、軸方向の移動と連携して、低速回転あるいは高速回転での使用が含まれる。
【0030】
図7は、図5と図6の実施形態と類似した、作業端125''を備える別の実施形態を図示する。当該作業端は、組織の収容および切除という同様の機能性を有し、装置の軸とほぼ平行の伸張部材の側面に向けられている。したがって、当該側面の摘出ポートは、組織を切除すること、分解すること、摘出することに適応しており、使用方法として、軸方向の移動と連携して、低速回転あるいは高速回転での使用が含まれる。
【0031】
図8は、図5から図7の実施形態と類似した、作業端200を備える別の実施形態を図示する。当該作業端もまた、装置の軸とほぼ平行の伸張部材の側面において、組織を切除すること、分解すること、摘出することに適応している。この実施形態では、システムは、作業端における液体放出ポート225に通じる超高圧液体流体噴射源(very high pressure liquid fluid jetting source)220を含み、放出された液体は、組織を分解すること、除去すること、あるいは、切断することができる。また、システムは、分解された組織の周辺を固めるために、少なくとも1つのポートから高温蒸気を放出するための、前述のような蒸気源を含む。
【0032】
図9は、作業端200と類似する、別の実施形態を図示する。当該作業端は、図8のそれと同様に、伸張部材の側面において、組織を切除すること、分解すること、摘出することに適応している。図9の実施形態は、装置の軸から外側に向けられた液体放出ポート255と共に高圧液体流体噴射源220を備える。蒸気噴出ポートは、同様に向けられる。使用方法において、作業端は、流体噴射が、制御かつ制限された深さだけ、組織を切断または分解することを保証するために、図4で上述したように、高速に回転させることができる。
【0033】
図10は、作業端250の別の実施形態を図示する。当該作業端は、図8のそれと同様に、組織を切除すること、分解すること、摘出することに適応している。図10の実施形態は、高速に回転する際に吸引ポートに導かれる液体放出ポートと共に高圧液体流体噴射源220を備える。蒸気供給ポートは、約5rpmから10,000rpmまでの、任意の高い速度で回転しているときに、吸引ポートの後に遅れてさらされる。1つの方法では、当該流体噴射は、1から100パルス/秒の割合で脈動する。別の実施形態では、流体噴射は、組織を弱体化させて組織を熱により固めるように設定された、組織を分解できる噴射水の一定分量(aliquot)と蒸気の一定分量を用いて、高い反復率で、水と蒸気の断続的なパルスで脈動させられる。
【0034】
別の実施形態では、作業端は、制御された深さで組織の分解を生じるように、交差する角度の軸で噴射するための第一放出口と第二放出口を運ぶことができる。
【0035】
一般に、前立腺の疾患を治療する方法は、ほぼ患者の尿道への損傷を与えることなしに、少なくとも1つの葉における前立腺組織を立体的に切除することを含む。立体的に組織を切除する方法は、装置の作業端からの凝縮性蒸気のような、熱した流体の放出と分解された組織の吸収とで成し遂げることができる。本発明の1つの特徴としては、流体媒体(fluid media)の放出は、組織をほぼ改質するための十分な熱エネルギーを適用する。当該改質は、共有結合を弱めること、タンパク質を変質させること、コラーゲン構造を分裂させることの少なくとも1つを含む。さらに、流体媒体の放出は、組織の切除のための十分な機械的エネルギーを適用する。当該切除は、組織を分解すること(disintegrating)、切断すること(cutting)、切り取ること(excising)、切除すること(ablating)の少なくとも1つからなる。本発明の別の特徴としては、流体媒体の放出は、切除した組織周辺を密封または凝固させるために十分な熱エネルギーを適用する。また、立体的に組織を切除する方法は、超音波映像化(ultrasound imaging)のような、映像化と同時に行われる。
【0036】
一般に、前立腺疾患を治療するための方法は、尿道の開存性を維持しながら、少なくとも1つの葉において尿道から外側に放射状に前立腺組織を、立体的に切除することを含む。当該方法は、装置の作業端からの熱せられた蒸気媒体の放出と、分解された組織の吸収とで、立体的に組織を切除する。当該方法は、少なくとも100W,250W,500W,1000Wに等しい、注入された凝縮性蒸気から前立腺にエネルギーを適用する。別の実施形態では、前立腺の中に凝縮性蒸気を注入することは、100cal/gramから600cal/gramの間で前立腺に供給する。
【0037】
一般に、前立腺疾患を治療する方法は、少なくとも10グラム、少なくとも20グラム、少なくとも30ぐらい、少なくとも40グラム、少なくとも50グラムに等しい前立腺組織を立体的に切除される。別の実施形態では、1グラムから100グラムの間で、前立腺組織が切除され得る。当該方法は、切除された組織周辺を熱的に凝固させることを含む。本発明の方法は、尿道の開存性を維持しながら、前立腺組織の少なくとも1つの部位を切断することと摘出することとを含む。
【0038】
1つの実施形態では、前立腺の疾患を治療する方法は、前立腺の中に経尿道的にアブレーションプローブを導入することと、アブレーションプローブを通って前立腺の中に凝縮性蒸気を注入するときに、アブレーションプローブの前後軸に沿って、アブレーションプローブを移動させることと、アブレーションプローブの中を通して、近くの組織を吸引することとを含む。前立腺組織の核は、この方法を用いて切除させることが可能である。いくつかの実施形態では、アブレーションプローブは、蒸気の注入と組織の吸引の間、回転されることができる。他の実施形態では、高圧液体が、アブレーションプローブを通って前立腺の中に注入されることがあり得る。
【0039】
前立腺に接近するために、導入器は、尿道の中に導入され、アブレーションプローブが当該導入器を通って前に進められることができる。その後、アブレーションプローブは、前立腺葉の尖部の中に進めることができる。
【0040】
システムは、患者の前立腺において組織内の侵入(interstitial penetration)のために構成された作業端を有する細長い組織摘出部材と、遠心端における蒸気供給ポートと流動可能に連結している蒸気源と、前記蒸気供給ポートに近い作業端における組織摘出ポートと流動可能に連結しているチャネルと連結された負圧源とを含む。前記ポートは、組織摘出部材の軸に対して遠心端で傾けることができ、または、組織摘出部材の軸に対して角度をなして向けることができ、または、組織摘出部材の軸とほぼ平行して組織摘出部材の側面に置くことができる。
【0041】
1つの実施形態では、前立腺治療システムは、凝縮性蒸気源と、成人男性被術者の前立腺葉の中に経尿道的に挿入されることに適応したアブレーションプローブとを含み、前記アブレーションプローブは、前記前立腺葉に凝縮性蒸気を供給することに適応した、前記蒸気源と通じている蒸気供給ポートと、前記アブレーションプローブの中に、近くの前立腺組織を吸引することに適応した吸引ポートとを備える。
【0042】
別のシステムは、患者の前立腺において組織内の侵入のために構成された作業端を有する細長い組織摘出部材と、熱エネルギーを組織に適用するために、遠心端における少なくとも1つの蒸気供給ポートと流動可能に連結している蒸気源と、組織を分解するために、遠心端における放出口に通じている高圧液体噴射源とを含む。
【0043】
一般に、本発明の方法は、少なくとも250cal/gm,300cal/gm,350cal/gm,400cal/gm,450cal/gmの蒸気の適用エネルギーを供給するために、相変化(phase change)を経る凝縮性蒸気の供給を含む。
【0044】
別の実施形態では、蒸気を用いた治療は、映像化の任意の適当なタイプに基づいて成し遂げられる。1つの方法では、超音波映像化またはX線映像化の手段によって見ることができる。1つの方法では、本発明の導入器の導入およびエネルギー供給方法は、経大腸超音波システムを利用して、超音波によって映像化されることもある。
【0045】
本発明の別の特徴としては、前記システムは、医療目的、例えば、全体的または局所的な薬物供給、化学療法、蒸気や熱によって活性化し得るその他の化学薬品の注入などのために、前立腺の目標位置に流体を供給するのに同時に用いられるかもしれない。
【0046】
本発明と関係のある付加的な細かな部分について言えば、材料や製造技術は、関連分野における当業者のレベルの範囲内で採用され得る。同じように、普通に、あるいは、論理的に採用される付加的な動作に関して、方法に基づく本発明の特徴に対しても同様のことを当てはめることができる。また、上述された発明バリエーションの任意の選択的な特徴は、独立して定められ、主張され得るものであり、または、本件明細書で述べられた、それら特徴の1以上の任意の組み合わせで定められ、主張され得るものであることも意図される。さらに、個々の要素について述べると、複数の同様の要素が存在する可能性を含んでいる。より具体的には、本件明細書および特許請求の範囲で用いられるような、個々の単語“1つ(a)"、“および(and)"、“上述(said)"、“前記(the)"は、文脈が明らかに定まるという場合を除いて、複数の指示対象を含む。さらに、本件特許請求の範囲は、任意の選択的な要素を除いて記載され得ることに注意すべきである。そのように、この記述は、請求項の要素の詳述に関連して、例えば“単独で(solely)”、“唯一(only)”および同種の限定的用語(exclusive terminology)の使用、あるいは、“否定的な(negative)”限定の使用のために、先行詞としての役割を果たすことが意図される。本件明細書で定めがない限り、本件明細書で用いられるすべての技術的用語および科学的用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般に理解されるものと同様の意味を有する。本発明の範囲は、本件明細書によって限定すべきではなく、むしろ請求項に用いられた用語の明白な意味で解釈されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前立腺の中に経尿道的に、前後軸を備えるアブレーションプローブを導入することと、
前記前立腺の中に前記アブレーションプローブを通って凝縮性蒸気を注入しようとする時に、前記前後軸に沿って前記アブレーションプローブを移動させることと、
前記アブレーションプローブを通って、近くにある前立腺組織を吸引することと
を含む前立腺の疾患を治療する方法。
【請求項2】
尿道の中に導入器を挿入することと、前記導入器を通って前記アブレーションプローブを前に進めることと
をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記導入するステップは、前立腺葉の尖部の中に前記アブレーションプローブを進めることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前立腺組織の核を切除することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記アブレーションプローブを回転させることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記アブレーションプローブを通って、前記前立腺の中に高圧液体を注入することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記凝縮性蒸気を注入することは、100Wから1000Wの間で前記前立腺に供給することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記凝縮性蒸気を注入することは、250cal/gramから450cal/gramの間で、前記前立腺の中に供給することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
10グラムから50グラムの間で前記前立腺から前立腺組織を切除することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
尿道の開存性を維持しながら、前立腺組織の少なくとも1つの部位を摘出することをさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記凝縮性蒸気を注入することは、100cal/gramから600cal/gramの間で、前記前立腺に供給することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
1グラムから100グラムの間で前記前立腺から前立腺組織を切除することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
凝縮性蒸気源と、
成人男性被術者の前立腺葉の中に経尿道的に挿入されることに適応したアブレーションプローブと、を含み、
前記アブレーションプローブは、前記前立腺葉に凝縮性蒸気を供給することに適応した、前記蒸気源と通じている蒸気供給ポートと、前記アブレーションプローブの中に、近くの前立腺組織を吸引することに適応した吸引ポートとを備えることを特徴とする、前立腺治療システム。
【請求項14】
前記アブレーションプローブは、さらに前記前立腺の内部で回転するように構成される、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記前立腺の内部で前記アブレーションプローブを回転させるための電動回転モーター0をさらに含む、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
前記電動回転モーターは、5rpmから10,000rpmの間で前記アブレーションプローブを回転させるように構成される、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記アブレーションプローブにおける液体放出ポートと通じている高圧液体源をさらに含む、請求項13に記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2012−508068(P2012−508068A)
【公表日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−535697(P2011−535697)
【出願日】平成21年11月6日(2009.11.6)
【国際出願番号】PCT/US2009/063583
【国際公開番号】WO2010/054220
【国際公開日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(511111035)エヌエックスセラ インコーポレイテッド (4)
【Fターム(参考)】