説明

剛体電車線

【課題】 T型架台、トロリ線、イヤーの三者の位置決めが容易で、締め付けに、汎用のボルト・ナットを用いて、作業を容易に行える剛体電車線を提供する。
【解決手段】 T型架台2におけるウェブ8の挟持部9は、突条10,11、ボルト挿通孔12、挟持爪13を有する。突条10,11は、相互に反対側へ突出する。ボルト挿通孔12は、突条10,11の直上でウェブ8を貫通する。イヤー3は、ウェブ8に向かって突出する突条15,16、ボルト挿通孔17、挟持爪18を有する。突条15は先端がウェブ8の側面に当接する。ボルト挿通孔17は、突条15,16間でイヤー3を貫通する。挟持爪18は、突条16の下方で、トロリ線4の条溝19に嵌合する。突条11の上部平面20は、ボルト5の頭部に当接してこれを回り止めする。突条10の上部平面21は、突条16を載せ受け、ボルト挿通孔12,17、挟持爪13,18を対向させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、地下鉄などにおける電気鉄道車両に給電するために、隧道の天井に支持される剛体電車線に関する。
【背景技術】
【0002】
剛体電車線として、従来、例えば、特許文献1に記載されたものが知られている。この剛体電車線は、イヤーの突片をT型架台の段部に嵌合して、ボルトと特殊ナットとで締め付け、トロリ線を挟持するものである。
【特許文献1】特開平8−156657号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来の剛体電車線においては、T型架台に対してトロリ線とイヤーを固定する際に、三者を適正位置に位置決めするのが容易でない。また三者の締め付けに、特殊な筒状ナットを用いるため、汎用性に欠ける難点がある。
したがって、この発明は、T型架台に対してトロリ線とイヤーを固定する際の三者の位置決めが容易で、設置作業を迅速確実に行うことができ、また三者の締め付けに、汎用のボルト・ナットを用いて、その締め付け作業を容易に行うことができる剛体電車線を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するため、この発明においては、T型架台2におけるウェブ8の挟持部9に、内側突条10と、外側突条11と、ボルト挿通孔12と、挟持爪13とを具備させる。内側突条10は、ウェブ8の一側面からイヤー3側へ突出して長手方向へ延びるように設ける。外側突条11は、ウェブ8の他側面からイヤー3と反対側へ突出して長手方向へ延びるように設ける。ボルト挿通孔12は、内側突条10と外側突条11の直上に位置して、ウェブ8を貫通するように設ける。イヤー3には、上部突条15と、下部突条16と、ボルト挿通孔17と、挟持爪18とを具備させる。上部突条15は、上端部に位置して、先端がウェブ8の一側面に当接するように、当該ウェブ8の一側面に向かって突出し、長手方向へ伸びるように設ける。下部突条16は、上部突条15の下方に間隔をおいて配置し、ウェブ8の一側面に向かって突出し、長手方向へ伸びるように設ける。ボルト挿通孔17は、上部突条15と下部突条16の間に位置して、イヤー3を貫通するように設ける。挟持爪18は、下部突条16の下方に配置し、トロリ線4の他方の条溝19に嵌合し長手方向へ延びるように設ける。さらに、T型架台2の外側突条11には、ボルト挿通孔12に挿通されるボルトの頭部平面に当接してこれを回り止めする上部平面20を設ける。T型架台2の内側突条10には、イヤー3の下部突条16の下面を載せ受けたときに、イヤー3のボルト挿通孔17をT型架台のボルト挿通孔12に対向させると共に、イヤー3の挟持爪18をT型架台の挟持爪13に対向させる上部平面21を設ける。
【発明の効果】
【0005】
T型架台2の内側突条10の上部平面21に、イヤー3の下部突条16の下面を載せ受けたときに、イヤー3のボルト挿通孔17がT型架台のボルト挿通孔12に対向すると共に、イヤー3の挟持爪18がT型架台の挟持爪13に対向するように位置決めされるから、設置作業時の位置決めが容易で、作業を確実迅速に進行できる。内側突条10の上部平面21に、イヤー3の下部突条16が載るので、ボルト、ナット5,6による締め付け部間(約500mm)におけるイヤー3およびトロリ線4のたわみが確実に防止される。ボルト挿通孔12,18にボルト5を挿通させたときに、ボルト5の頭部平面がT型架台2の外側突条11の上部平面20に当接して回り止めされるから、ナット6の締め付け作業は容易に行える。ボルト、ナット5,6は汎用品でよい。外側突条11は、ウェブ8に剛性を付与し、たわみを防止すると共に、トロリ線4に対する大きな挟持力に耐えるものとする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
図面を参照してこの発明の実施の形態を説明する。図1は本発明の剛体電車線の断面図、図2は本発明の剛体電車線の側面図、図3は本発明の剛体電車線の一部の斜視図である。
【0007】
剛体電車線1は、隧道の天井にレールに沿って延びるように支持されるT型架台2と、ボルト・ナット5,6によってT型架台2の側面に固定されるイヤー3と、イヤー3とT型架台2との間に挟持されるトロリ線4とを具備する。
【0008】
T型架台2は、アルミまたはアルミ合金製で、上部にあって隧道の天井に支持されるフランジ7とフランジ7の中央から垂下するウェブ8とを有する。
【0009】
イヤー3は、アルミまたはアルミ合金製で、T型架台のウェブ8の下部一側面に沿いウェブ8の延長方向に所定の長さ伸びる長尺帯板状のもので、ボルト・ナット5,6によってウェブ8の側面に固定される。
【0010】
トロリ線4は、イヤー3の下縁部とT型架台のウェブ8の下縁部に形成された挟持部9との間に挟持され、ウェブ8の下端に沿うように配置される。
【0011】
ウェブ8の挟持部9は、内側突条10、外側突条11、ボルト挿通孔12、挟持爪13を有する。内側突条10は、ウェブ8の一側面からイヤー3側へ突出して、長手方向へ延びる。外側突条11は、ウェブ8の他側面からイヤー3と反対側へ突出して、長手方向へ延びる。ボルト挿通孔12は、突条10,11の直上に位置してウェブ8を貫通する。挟持爪13は、両突条10,11の下部に形成され、トロリ線4の一方の条溝14に嵌合するように長手方向へ延びる。
【0012】
イヤー3は、上部突条15と、下部突条16と、ボルト挿通孔17と、挟持爪18とを具備する。
【0013】
上部突条15は、上端部に位置し、先端がウェブ8の一側面に当接するように当該ウェブの一側面に向かって突出し、長手方向へ伸びる。下部突条16は、上部突条15の下方に間隔をおいて位置し、ウェブ8の一側面に向かって突出し、長手方向へ伸びる。ボルト挿通孔17は、上部突条15と下部突条16の間に位置してイヤー3を貫通する。挟持爪18は、下部突条16の下方に位置し、トロリ線4の他方の条溝19に嵌合するように長手方向へ延びる。
【0014】
T型架台2の外側突条11は、ボルト挿通孔12に挿通されるボルト5の頭部平面に当接して、ボルト5を回り止めする上部平面20を有する。外側突条11は、ウェブ8に剛性を付与し、たわみを防止すると共に、トロリ線4に対する大きな挟持力に耐えるものである。T型架台2の内側突条10は上部平面21を有する。上部平面21は、イヤー3の下部突条16の下面を載せ受けたときに、イヤー3のボルト挿通孔17をT型架台のボルト挿通孔12に対向させると共に、イヤー3の挟持爪18をT型架台2の前記挟持爪13に対向させるように位置決めする。下部突条16の突出長さは、上部突条15の突出長さよりやや短く、T型架台2とイヤー3との間にトロリ線4を挟んでボルト・ナット5,6で締め付けた状態で、上部突条15の先端がウェブ8の一側面に当接するが、下部突条16の先端はウェブ8の一側面に当接しない。
【0015】
T型架台2の内側突条10の上部平面21に、イヤー3の下部突条16の下面を載せ受けたときに、イヤー3のボルト挿通孔17がT型架台のボルト挿通孔12に対向すると共に、イヤー3の挟持爪18がT型架台の挟持爪13に対向するように位置決めされるから、設置作業時の位置決めが容易で、作業を確実迅速に進行できる。内側突条10の上部平面21に、イヤー3の下部突条16が載るので、ボルト、ナット5,6による締め付け部間(約500mm)におけるイヤー3およびトロリ線4のたわみが確実に防止される。ボルト挿通孔12,18にボルト5を挿通させたときに、ボルト5の頭部平面がT型架台2の外側突条11の上部平面20に当接して回り止めされるから、ナット6の締め付け作業は容易に行える。ボルト、ナット5,6は汎用品でよい。
【0016】
T型架台2とイヤー3との間にトロリ線4を挟んでボルト・ナット5,6で締め付けた状態で、上部突条5の先端がウェブ8の一側面に当接するが、下部突条16の先端はウェブ8の一側面に当接しないので、トロリ線4を所定の弾性をもって確実に挟持することができる。
【産業上の利用可能性】
【0017】
この発明は、例えば、地下鉄などにおける電気鉄道車両に給電するために、隧道の天井に支持される剛体電車線として利用される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の剛体電車線の断面図である。
【図2】本発明の剛体電車線の側面図である。
【図3】本発明の剛体電車線の一部の斜視図である。
【符号の説明】
【0019】
1 剛体電車線
2 T型架台
3 イヤー
4 トロリ線
5 ボルト
6 ナット
7 フランジ
8 ウェブ
9 挟持部
10 内側突条
11 外側突条
12 ボルト挿通孔
13 挟持爪
14 条溝
15 上部突条
16 下部突条
17 ボルト挿通孔
18 挟持爪
19 条溝
20 上部平面
21 上部平面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
隧道の天井に支持されるフランジとフランジの中央から垂下するウェブとを有しレールに沿って延びるT型架台と、このT型架台のウェブの下部一側面に沿いウェブの延長方向に所定の長さ伸びボルト・ナットによってウェブの側面に固定される長尺帯板状のイヤーと、このイヤーの下縁部と前記T型架台のウェブの下縁部に形成された挟持部との間に挟持され当該ウェブの下端に沿うように配置されるトロリ線とを具備する剛体電車線であって、
前記ウェブの挟持部は、当該ウェブの一側面から前記イヤー側へ突出して長手方向へ延びる内側突条と、ウェブの他側面から前記イヤーと反対側へ突出して長手方向へ延びる外側突条と、これら内側突条と外側突条の直上に位置してウェブを貫通するボルト挿通孔と、外側突条と内側突条の下部に形成されトロリ線の一方の条溝に嵌合するように長手方向へ延びる挟持爪とを具備し、
前記イヤーは、上端部に位置し先端が前記ウェブの一側面に当接するように当該ウェブの一側面に向かって突出し長手方向へ伸びる上部突条と、この上部突条の下方に間隔をおいて位置しウェブの一側面に向かって突出し長手方向へ伸びる下部突条と、これら上部突条と下部突条の間に位置してイヤーを貫通するボルト挿通孔と、下部突条の下方に形成されトロリ線の他方の条溝に嵌合するように長手方向へ延びる挟持爪とを具備し、
前記T型架台の外側突条は、T型架台のボルト挿通孔に挿通されるボルトの頭部平面に当接してボルトを回り止めする上部平面を有し、
前記T型架台の内側突条は、前記イヤーの下部突条の下面を載せ受けたときにイヤーの前記ボルト挿通孔をT型架台の前記ボルト挿通孔に対向させると共に、イヤーの前記挟持爪をT型架台の前記挟持爪に対向させる上部平面を有することを特徴とする剛体電車線。
【請求項2】
前記下部突条の突出長さが、前記上部突条の突出長さよりやや短く、前記T型架台と前記イヤーとの間に前記トロリ線を挟んでボルト・ナットで締め付けた状態で、前記上部突条の先端が前記ウェブの一側面に当接するが、下部突条の先端はウェブの一側面に当接しないことを特徴とする請求項1に記載の剛体電車線。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−30579(P2008−30579A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−205294(P2006−205294)
【出願日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【出願人】(390021577)東海旅客鉄道株式会社 (413)
【出願人】(000001890)三和テッキ株式会社 (134)