説明

剛性の高い異相ポリマー組成物

本発明は、(i)プロピレンホモポリマー及び/又は1.0wt%未満の量のコモノマー単位を有するプロピレンコポリマーを含むマトリックスと、(ii)このマトリックス内に分散した、エチレン及び/又はC4〜C12α−オレフィン由来のコモノマー単位を含むエラストマーポリプロピレンとを含み、異相ポリマー組成物が2.0〜7.5wt%の量の非晶質画分AMを有し、非晶質画分AMが20〜45wt%の量のエチレン及び/又はC4〜C12α−オレフィン由来のコモノマー単位を有する異相ポリマー組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パイプの製造に有用な改善された剛性の異相ポリマー組成物(heterophasic polymer composition:不均一相ポリマー組成物)、及びこの種の異相ポリマー組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリマー材料で形成されているパイプは、流体輸送、すなわちガス又は液体の輸送などの、様々な目的のためにしばしば使用されている。流体は、例えば天然ガス若しくは水道水を輸送するときには加圧してもよく、又は例えば嵐の際の灌水用途のために、若しくは屋内の土及び廃物のために、下水(廃水)、排水(土地及び道路の排水)を輸送するときには非加圧であってもよい。さらに、輸送される流体の温度は、通常約0℃から約50℃までの温度範囲内の様々な温度であり得る。常圧(無圧)パイプを、ケーブル及びパイプ保護のために使用することもできる。
【0003】
この種の無圧パイプは、本明細書において、下水パイプ又は無圧下水パイプとも称する。
【0004】
本明細書において使用する「パイプ(pipe)」という用語は、継手類、弁類、チャンバー類、及び例えば下水管システムのために一般に必要である全ての部品類などの補足部品だけでなく、広い意味でのパイプ類を含むものとする。パイプは、単層又は多層パイプも含み、この多層パイプは、例えば、層の1層又は複数層が金属層であり、接着剤層を含むことができる。中空部分の有無にかかわらず波形パイプ、二重壁パイプなどの構造壁パイプも、「パイプ(pipe)」という用語に包含されるものとする。
【0005】
加圧流体の輸送用パイプ(いわゆる圧力パイプ)、及び下水などの非加圧流体の輸送用パイプ(いわゆる無圧パイプ)に課せられる要件は異なっている。圧力パイプは内部の陽圧、すなわちパイプの外側の圧力より高いパイプ内側の圧力に耐えることができなければならず、一方、無圧パイプはいかなる内部の陽圧にも耐える必要はないが、その代わりに外部の陽圧すなわち、パイプ内側の圧力より高いパイプの外側の圧力に耐えることが必要である。このより高い外側圧力は、土中に埋められたときのパイプにかかる地面の負荷、地下水圧、輸送機関の負荷、又は屋内での用途の際の締付け力によることがある。
【0006】
下水パイプなどの無圧パイプは、直径が約0.1から約3mの種々の寸法で、セラミックス(主に磁器化した粘土)、コンクリート、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレン(PE)及びポリプロピレン(PP)などの種々の材料で製造される。セラミックス及びコンクリートは低コスト材料ではあるが、それらは残念なことに、重くて脆弱である。したがって、近年、セラミックス又はコンクリートの下水パイプをPVC、PE、又はPPなどのポリマー材料のパイプと取り替える傾向にある。PVCはPPよりも単位重量当たり低コストであるが、PPは密度が低いためパイプ1メートル当たりの重量が軽いこと、優れた高温及び低温特性を有すること、及び溶接可能であることによって、他の点でPVCより優位に立っている。
【0007】
PPの下水パイプは、内部圧力からの助けなしに地面の負荷に耐える充分な剛性を示さなければならない。パイプの剛性は主としてパイプ材料に由来し、剛性の尺度として、パイプ材料の引張弾性率(tensile modulus)を採用することができる。パイプ材料の引張弾性率が高いほど、パイプは固いことになる。
【0008】
さらに、無圧パイプは高温並びに低温にさらされることが多い。したがって、広範な温度の範囲内で耐久性がなければならず、このことは、無圧パイプが、特に低温で高い衝撃強度を示すべきであることを意味する。
【0009】
しかしながら、剛性と衝撃強度は矛盾する特性であるので、許容レベルの衝撃強度を保持したまま、PPパイプ材料の引張弾性率を増加させることは依然として難しい。
【0010】
WO99/24479には、重合したビニル化合物を含む核形成ポリプロピレン組成物が開示されている。その組成物はプロピレンホモポリマーマトリックス及びその中に分散したエラストマーエチレン/プロピレンコポリマーを含むことができる。非晶質部分のエチレン含量は、30〜50wt%の範囲とすることができる。さらに、分散したゴム相の量は、5〜30wt%又は10〜20wt%などの広範囲において変化させることができる。その実施例によれば、異相ポリマー組成物によって少なくとも2000MPaの引張弾性率は実現できなかった。
【0011】
EP1026184A1には、高分子量及び低分子量PP成分で形成されているマトリックス、並びにエチレン/α−オレフィンコポリマーで形成されている分散したエラストマー相を含む異相ポリマー組成物が開示されている。異相ポリマー組成物のキシレン低温溶解画分の量は、4〜30wt%であってもよい。エラストマーエチレン/α−オレフィンコポリマーのエチレン由来のモノマー単位の量は、22〜38wt%の範囲であってもよい。その実施例によれば、全ての異相ポリマー組成物の曲げ弾性率(flexural modulus)は、2000MPa未満である。
【0012】
EP1632529A1には、プロピレンホモポリマー及びその中に分散したエラストマープロピレンコポリマーを含む異相ポリマー組成物が開示されている。異相ポリマー組成物のコモノマー単位、例えばエチレン由来のコモノマー単位の総量は少なくとも2wt%である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上記の説明を考慮して、本発明の目的は、許容レベルの低温衝撃強度を保持すると同時に剛性の高いパイプの製造に有用なポリマー組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の第1の態様によれば、上で概説した目的は、
−プロピレンホモポリマー及び/又は1.0wt%未満の量のコモノマー単位を有するプロピレンコポリマーを含むマトリックスと、
−前記マトリックス内に分散した、エチレン及び/又はC4〜C12α−オレフィン由来のコモノマー単位を含むエラストマーポリプロピレンとを含む
異相ポリマー組成物であって、
前記異相ポリマー組成物が2.0〜7.5wt%の量の非晶質画分AMを有し、前記非晶質画分AMが20〜45wt%の量のエチレン及び/又はC4〜C12α−オレフィン由来のコモノマー単位を有する、異相ポリマー組成物を提供することによって解決される。
【0015】
第1次近似として、非晶質画分AMの量は、異相ポリマー組成物中に存在するエラストマーポリマー(単数又は複数)(すなわちゴム)の量と一致するということができる。非晶質画分の量は、実施例の見出し「測定方法(Measuring Methods)」でさらに後述するように測定が容易であり、異相の衝撃改質組成物内のエラストマー成分の量を示すパラメータとしてしばしば用いられる。
【0016】
ポリマー組成物内のエラストマー成分及び/又は非晶質成分の量を決定するためによく使用される他のパラメータは、キシレン低温溶解画分XCS(時に、キシレン溶解物XSとも称する)である。測定方法は、以下の見出し「測定方法(Measuring Methods)」で詳述する。第1次近似として、キシレン低温溶解画分XCSの量は、ゴムの量並びに低分子量及び低立体規則性を有するマトリックスのそのポリマー鎖の量と一致する。したがって、通常、XCS値は、AM値より僅かに高い。
【0017】
好ましくは、本発明の第1の態様によれば、異相ポリマー組成物は、3.0〜8.5wt%の量のキシレン低温溶解画分XCStotal及び/又は2.0wt%未満の量のエチレン及び/又はC4〜C12α−オレフィン由来のコモノマー単位を有する。
【0018】
本発明の第2の態様によれば、上で概説した目的は、
−プロピレンホモポリマー及び/又は1.0wt%未満の量のコモノマー単位を有するプロピレンコモノマーを含むマトリックスと、
−前記マトリックス内に分散した、エチレン及び/又はC4〜C12α−オレフィン由来のコモノマー単位を含むエラストマーポリプロピレンとを含む
異相ポリマー組成物であって、
前記異相ポリマー組成物が、3.0〜8.5wt%の量のキシレン低温溶解画分XCStotal、並びに2.0wt%未満の量のエチレン及び/又はC4〜C12α−オレフィン由来のコモノマー単位を有する、異相ポリマー組成物を提供することによって解決される。
【0019】
好ましくは、本発明の第2の態様による異相ポリマー組成物は2.0〜7.5wt%の量の非晶質画分AMを有し且つ/又は、非晶質画分AMが20〜45wt%の量のエチレン及び/又はC4〜C12α−オレフィン由来のコモノマー単位を有する。
【0020】
特に示されない場合、以下の説明は本発明の第1の態様及び第2の態様に適用される。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明において、「マトリックス(matrix)」という用語は、その一般に受け入れられている意味において解釈される、すなわち、それはゴム粒子などの孤立したすなわちばらばらの粒子が分散されていてよい連続相(本発明の連続ポリマー相)のことをいう。
【0022】
マトリックス相は、プロピレンホモポリマー及び/又はプロピレンコポリマーだけでできていてもよいが、追加のポリマー、特にプロピレンホモポリマー又はプロピレンコポリマーと均一に混合でき、一緒にマトリックスとして作用できる連続相を形成できるポリマーを含んでもよい。好ましい実施形態では、マトリックスの少なくとも80wt%、より好ましくは少なくとも90wt%、さらにより好ましくはマトリックスの少なくとも95wt%が、プロピレンホモポリマー及び/又はプロピレンコポリマーでできている。さらにより好ましくは、マトリックスは、プロピレンホモポリマー及び/又はプロピレンコポリマーから成る。
【0023】
好ましい実施形態では、マトリックスはプロピレンホモポリマーのみを含み、プロピレンコポリマーは含まない。
【0024】
マトリックスに存在するならば、プロピレンコポリマーはエチレン、C4〜C12α−オレフィン、又はそれの任意の混合物由来のコモノマー単位を含む。上に示したように、プロピレンコポリマーのコモノマー単位の量は1.0wt%未満、好ましくは0.75wt%未満、より好ましくは、0.5wt%未満である。
【0025】
マトリックスのプロピレンホモポリマー及び/又はプロピレンコポリマーのMFR(230℃、2.16kg)は、好ましくは0.1g/10分〜1.5g/10分、より好ましくは0.2g/10分〜1.0g/10分、さらにより好ましくは0.2g/10分〜0.5g/10分の範囲内である。
【0026】
上に示したように、プロピレンホモポリマー及び/又はプロピレンコポリマーに加えて、マトリックスは場合によって、プロピレンホモポリマー及び/又はプロピレンコポリマーと均一に混合できる別のポリマー(単数又は複数)を含んでもよい。好ましくは、プロピレンホモポリマー及び/又はプロピレンコポリマーから成るか、又は場合により1種又は複数の追加のポリマーを含むマトリックスは、好ましくは0.1g/10分〜1.5g/10分、より好ましくは0.2g/10分〜1.0g/10分、さらにより好ましくは0.2g/10分〜0.5g/10分の範囲内のMFR(2.16kg、230℃)を有する。
【0027】
もちろん、マトリックスがプロピレンホモポリマー又はプロピレンコポリマー、好ましくはプロピレンホモポリマーから成る場合、マトリックスのMFR値は、ポリマーのMFR値と一致する。
【0028】
マトリックスを構成しているプロピレンホモポリマー又はプロピレンコポリマーは、単峰形か又は双峰形などの多峰形であってもよい。本明細書で使用する場合、「多峰形(multimodal)」という用語は、ゲル浸透クロマトグラフィーで決定したポリマーの分子量分布曲線のx軸に沿って少なくとも2個の異なる極大中心があるポリマーを包含することを目的とする。このような曲線において、縦軸をd(log(MW))としてlog(MW)に対してプロットする。ここで、MWは分子量である。
【0029】
マトリックスの多峰形、好ましくは双峰形のプロピレンホモポリマー又はプロピレンコポリマーの高分子量画分は、好ましくは0.1g/10分〜2.5g/10分、より好ましくは0.5g/10分〜1.5g/10分、さらにより好ましくは0.7g/10分〜1.5g/10分の範囲内のMFR(230℃、10.0kg)を有する。
【0030】
マトリックスのプロピレンホモポリマー及び/又はプロピレンコポリマーのキシレン低温溶解画分XCSPPmatrixの量は、好ましくは3.0wt%未満、より好ましくは2.0wt%未満、さらにより好ましくは1.5wt%未満である。
【0031】
上に示したように、プロピレンホモポリマー及び/又はプロピレンコポリマーに加えて、マトリックスは、プロピレンホモポリマー及び/又はプロピレンコポリマーと均一に混合できる別のポリマー(単数又は複数)を場合によって含んでもよい。プロピレンホモポリマー及び/又はプロピレンコポリマーから成るか、又は場合により1種又は複数の追加のポリマーを含むマトリックスのキシレン低温溶解画分XCSmatrixの量は、好ましくは3.0wt%未満、より好ましくは2.0wt%未満、さらにより好ましくは1.5wt%未満である。
【0032】
もちろん、マトリックスがプロピレンホモポリマー又はプロピレンコポリマー、好ましくはプロピレンホモポリマーから成る場合は、上で定義したようにXCSPPmatrixとXCSmatrixは同一である。マトリックスが1種又は複数の追加のポリマーを含む場合、上で定義したようにプロピレンホモポリマー又はプロピレンコポリマーと均一に混合するが、XCSPPmatrixとXCSmatrixは僅かに異なることがある。
【0033】
上に示したように、異相ポリマー組成物は、マトリックス内に分散した、エチレン及び/又はC4〜C12α−オレフィン由来のコモノマー単位を含むエラストマーポリプロピレンコポリマーをさらに含む。
【0034】
本発明の中で、上で定義し以下により詳細に示すようにエラストマーポリプロピレンに加えて、異相ポリマー組成物は、別のエラストマーポリマー成分を含むことがあり得る。しかしながら、エラストマーポリプロピレンは、異相ポリマー組成物内の総ゴム含量の、少なくとも80wt%、より好ましくは少なくとも90wt%、さらにより好ましくは少なくとも95wt%に相当することが好ましい。好ましい実施形態では、エラストマーポリプロピレンは、異相ポリマー組成物中に存在する唯一のエラストマーポリマーである。
【0035】
エラストマーポリプロピレンコポリマーは、好ましくはエチレン由来及び/又はC4〜C12α−オレフィン由来のコモノマー単位、より好ましくは、エチレン由来のコモノマー単位だけを含む。これらのコモノマー単位は、エラストマーポリプロピレンの重量に基づいて、好ましくは20wt%〜45wt%、より好ましくは22wt%〜35wt%の量で存在する。
【0036】
エラストマーポリプロピレンがC4〜C12α−オレフィン由来のコモノマー単位を含む場合、コモノマー単位は、好ましくは1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、又は任意のこれらの混合物から選択される。
【0037】
上に示したように、本発明の第1の態様による異相ポリマー組成物の非晶質画分AMの量は、2.0〜7.5wt%であり、非晶質画分AMのエチレン及び/又はC4〜C12α−オレフィン由来のコモノマー単位の量は、20〜45wt%である。
【0038】
異相ポリマー組成物の非晶質画分AMの量は、好ましくは、3.0wt%〜7.5wt%、より好ましくは3.0wt%〜6.0wt%である。これらの好適な値は、本発明の第1及び第2の態様による異相ポリマー組成物に当てはまる。
【0039】
好ましくは、異相ポリマー組成物の非晶質画分AM中のエチレン及び/又はC4〜C12α−オレフィン由来のコモノマー単位の量、より好ましくは、エチレン由来のコモノマー単位の量は、好ましくは22wt%〜35wt%、より好ましくは、23wt%〜32wt%である。これらの好適な値は、本発明の第1及び第2の態様による異相ポリマー組成物に当てはまる。
【0040】
エラストマーポリプロピレンは、異相ポリマー組成物の非晶質画分AMの、好ましくは少なくとも60wt%、より好ましくは少なくとも65wt%、さらにより好ましくは少なくとも70wt%に相当する。
【0041】
上に示したように本発明の第2の態様に関して、異相ポリマー組成物のキシレン低温溶解画分XCStotalの量は3.0〜8.5wt%であり、エチレン及び/又はC4〜C12α−オレフィン由来のコモノマー単位の量は2.0wt%未満である。
【0042】
異相ポリマー組成物のキシレン低温溶解画分XCStotalの量は、好ましくは3.0〜7.0wt%、より好ましくは4.0〜7.0wt%である。これらの好適な値は、本発明の第1及び第2の態様による異相ポリマー組成物に当てはまる。
【0043】
異相ポリマー組成物のエチレン及び/又はC4〜C12α−オレフィン由来のコモノマー単位の量は、好ましくは1.8wt%未満である。下限に関して、異相ポリマー組成物のエチレン及び/又はC4〜C12α−オレフィン由来のコモノマー単位の量は、少なくとも0.8wt%、より好ましくは少なくとも1.0wt%であることが好ましい。これらの好適な値は、本発明の第1及び第2の態様による異相ポリマー組成物に当てはまる。
【0044】
エラストマーポリプロピレンは、異相ポリマー組成物のキシレン低温溶解画分XCStotalの量の、好ましくは少なくとも60wt%、より好ましくは少なくとも65wt%に相当する。
【0045】
異相ポリマー組成物の非晶質画分AMの固有粘度は、好ましくは2.0dl/g〜5.0dl/g、より好ましくは2.5dl/g〜5.0dl/g、さらにより好ましくは3.0dl/g〜4.5dl/gの範囲内である。
【0046】
ポリマー組成物は、例えばタルク、ポリビニルシクロヘキサン(ポリ−VCH)などの重合したビニル化合物、ジベンジリデンソルビトール(DBS)、安息香酸ナトリウム、及びジ(アルキルベンジリデン)ソルビトールのような1種又は複数の造核剤を0.05〜3wt%含むことができる。タルクを除いて、造核剤は通常0.0001〜1重量%、好ましくは0.001〜0.7重量%という少量で加える。タルクは、造核剤として、及び充填剤として添加することができるので、特別な場合である。造核剤として添加する場合、タルクは、0.05〜3重量%、好ましくは0.1〜2重量%の量で添加する。
【0047】
1mm/分及び23℃で、ISO527−2/1Bに準拠して測定した異相ポリマー組成物の引張弾性率は、好ましくは1800MPa超である。
【0048】
他の態様によれば、本発明はパイプを提供し、このパイプは上で定義したように異相ポリマー組成物を含む。
【0049】
パイプは無圧下水パイプなどの無圧パイプであることが好ましい。換言すれば、本発明のパイプは、下水などの非加圧の流体の輸送用に使用するのが好ましい。
【0050】
パイプの引張弾性率は、好ましくは1900MPa超、より好ましくは2000MPa超、さらにより好ましくは2100MPa超であり、この引張弾性率は以下の式により決定される。
引張弾性率=RS×12×[(D−t)/t]
(式中、RSは、EN ISO9969に準拠して決定されるリング剛性であり、
Dは、パイプの外径(mm)であり、
tは、パイプの壁の厚さ(mm)である。)
【0051】
パイプの衝撃強度は、EN1411に準拠して測定される、いわゆる外部打撃(external blow)に対する抵抗により決定することができる。この測定によりパイプのH50値が得られる。これは試料の50%が破損する高さである。
【0052】
本発明のパイプのH50値は、好ましくは少なくとも1100mm、より好ましくは少なくとも1500mm、さらにより好ましくは少なくとも2000mmである。
【0053】
一般に、パイプは押出し又は射出成形によって製造することができる。パイプは押出しによって製造することが好ましい。ポリマーパイプのスクリュー押出し用の従来のプラントは、1軸又は2軸の押出機、ノズル、較正装置、冷却機器、引取り装置、及びパイプの切断又は巻き上げ用の装置を含む。ポリマーは、押出機から押し出されパイプとなる。
【0054】
さらなる態様によれば、本発明は以下の工程、
(i)少なくとも1つのループ反応器中、及び場合によって少なくとも1つの気相反応器中で上で定義したようなプロピレンホモポリマー又はプロピレンプロピレンコポリマーを製造するステップと、
(ii)プロピレンホモポリマー又はプロピレンコポリマーを少なくとも1つの気相反応器へ移し、プロピレンホモポリマー又はプロピレンコポリマーの存在下に上で定義したようなエラストマーポリプロピレンを製造するステップとを含む、上で定義したような異相ポリマー組成物の製造方法を提供する。
【0055】
ループ反応器の温度は少なくとも80℃であり、圧力は少なくとも4600〜10000kPaであることが好ましい。
【0056】
好ましい実施形態において、工程(i)は、ループ及び気相反応器を段階的に(カスケード状に)含む。ループ反応器を液体プロピレン中で、少なくとも80℃の高い重合温度、最も好ましくは超臨界温度及び圧力条件下で運転することが好ましい。
【0057】
「超臨界(supercritical)」条件という用語は、反応器の温度及び圧力の両方が、反応媒体の対応する超臨界温度及び圧力より上であることを意味する。プロピレンの反応媒体について、これは少なくとも92℃の温度及び少なくとも4600kPaの圧力を意味する。好ましい温度範囲は、92〜110℃である。好ましい圧力範囲は、4600〜10000kPaであり、より好ましくは5000〜7000kPaである。
【0058】
工程(i)が気相反応器を含む場合、気相反応器を50〜115℃、より好ましくは60〜110℃、さらにより好ましくは80〜105℃の温度、及び500〜5000kPa、より好ましくは1500〜3500kPaの圧力で、運転することが好ましい。工程(i)のループ重合工程が超臨界条件で行われる場合、気相反応器の温度は85〜95℃であり、圧力は2000〜3000kPaであることが好ましい。
【0059】
工程(i)のループ反応器及び気相反応器間の製造の重量比(いわゆる「分配(split)」)は、20:80〜80:20、より好ましくは30:70〜70:30、さらにより好ましくは40:60〜60:40であってもよい。
【0060】
工程(i)の気相反応器(単数又は複数)を使用する場合、任意の通常の流動床反応器であってよいが、他のタイプの気相反応器を使用することもできる。
【0061】
工程(i)において、マトリックスを構成しているプロピレンホモ又はコポリマーを製造した後に、工程(i)の生成物は気相反応器へ移され、そこで、エラストマーポリプロピレンがプロピレンホモポリマー又はプロピレンコポリマーの存在下に製造され、その場で分散される(いわゆる「反応器混合」(reactor blending))。場合によって、工程(ii)は、直列配列で備えられた1種又は複数の追加の気相反応器を含むことができる。
【0062】
工程(i)及び/又は工程(ii)の重合用の触媒として、プロピレン重合用の任意の立体特異的触媒を使用することができ、これは好ましくは、500〜10000kPa、特に2500〜8000kPaの圧力で、40〜110℃、特に60〜110℃の温度で、プロピレン及びコモノマーの重合及び共重合に触媒作用を及ぼすことができる。その触媒は80℃以上の高い重合温度で使用することができるチーグラーナッタ型触媒を含むことが好ましい。
【0063】
一般に、本発明において使用するチーグラーナッタ触媒は、触媒成分、助触媒成分、外部供与体を含み、触媒系の触媒成分は、主としてマグネシウム、チタン、ハロゲン、及び内部供与体を含む。電子供与体は、立体特異的特性を制御し、及び/又は触媒系の活性を改善する。エーテル、エステル、ポリシラン、ポリシロキサン、及びアルコキシシランを含む多くの電子供与体は、当技術分野では公知である。
【0064】
触媒は好ましくは、遷移金属化合物を前触媒(procatalyst)成分として含む。遷移金属化合物は、酸化度3又は4のチタン化合物、バナジウム化合物、ジルコニウム化合物、コバルト化合物、ニッケル化合物、タングステン化合物、及び希土類金属化合物から成る群から選択され、三塩化チタン及び四塩化チタンが特に好ましい。
【0065】
ループ反応器において主流となっている高温に耐えることができる触媒を使用することが好ましい。プロピレンのアイソタクチック重合用の従来のチーグラーナッタ触媒は、一般に約80℃の運転温度限界を有し、それより上では、失活されるか、又はその立体選択性を失うようになる。重合温度がこのように低いので、ループ反応器の熱除去効率に実施上の制限を加える場合がある。
【0066】
本発明によって使用する1つの好適な触媒は、二塩化マグネシウム、チタン化合物、低級アルコール、及び少なくとも5個の炭素原子を含むフタル酸のエステルから前触媒組成物を製造する方法を開示するEP0591224において開示されている。EP0591224によれば、エステル交換反応は低級アルコール及びフタル酸エステルの間で高い温度で行われ、これによって低級アルコール及びフタル酸エステルからのエステル基が交換する。
【0067】
二塩化マグネシウムはそれ自体で使用することができ、又は例えば二塩化マグネシウムを含む溶液若しくはスラリーにシリカを吸収させることによって、シリカと組み合わせることができる。使用する低級アルコールは、好ましくはメタノール又はエタノール、特にエタノールであってもよい。
【0068】
前触媒の製造において使用するチタン化合物は、好ましくは有機又は無機のチタン化合物であり、3又は4の酸化状態である。また、バナジウム、ジルコニウム、クロム、モリブデン、及びタングステン化合物などの他の遷移金属化合物は、チタン化合物と混合することができる。チタン化合物は通常、ハロゲン化物若しくはオキシハロゲン化物、有機金属ハロゲン化物、又は有機配位子だけが遷移金属に結合された純金属有機化合物である。特に好ましくは、ハロゲン化チタン、特に四塩化チタンである。
【0069】
使用するフタル酸エステルのアルコキシ基は、少なくとも5個の炭素原子、好ましくは少なくとも8個の炭素原子を含む。フタル酸プロピルヘキシル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジイソデシル、及びフタル酸ジトリデシルを使用することができる。フタル酸エステル及びハロゲン化マグネシウムのモル比は、好ましくは約0.2:1である。
【0070】
エステル交換は、例えばフタル酸エステル−低級アルコールの対を選択し、自発的に、又は前触媒組成物に損傷を与えない触媒の助けを借りて、高い温度で触媒をエステル交換することによって実施することができる。110〜150℃、好ましくは120〜140℃の温度でエステル交換を行うのが好ましい。
【0071】
触媒はまた、EP1028985に記載されたように、変性することができる。
【0072】
上の方法によって製造される触媒は、有機金属助触媒と共に、且つ外部供与体と共に使用される。一般に、外部供与体は、式
R’Si(R”O)4−n−m
(式中、RとR’は、同じでも異なっていてもよく、直鎖、分岐、若しくは脂環式、又は芳香基を表し、R”はメチル又はエチルであり、
nは、0〜3の整数であり、
Mは、0〜3の整数であり、
n+mは1〜3である。)を有する。
【0073】
特に、外部供与体は、シクロヘキシルメチルメトキシシラン(CHMMS)、ジシクロペンチルジメトキシシラン(DCPDMS)、ジイソプロピルジメトキシシラン、ジ−イソブチルジメトキシシラン及びジ−t−ブチルジメトキシシランから成る群より選択される。
【0074】
有機アルミニウム化合物は、助触媒として使用される。有機アルミニウム化合物は、好ましくはトリアルキルアルミニウム、ジアルキルアルミニウムクロリド及びアルキルアルミニウムセスキクロリドから成る群より選択される。
【0075】
好ましい実施形態において、工程(ii)は、グリセロールエステル、エトキシル化アミン、エトキシル化アミド、一酸化炭素、又は任意のこれらの混合物から選択される化合物の存在下に、行われる。
【0076】
これらの化合物は触媒活性を低下させることができるので、工程(ii)において生じるゴムの量を低下させるためにこれらの化合物を使用してもよい。
【0077】
例として、Danisco製のGrindsted PS432に言及することができ、これはグリセロールエステル化合物である。
【0078】
本発明を、以下に示す実施例を参照して、より詳細に説明する。
【実施例】
【0079】
I.測定方法
1.メルトフローレートMFR
メルトフローレートをISO1133に準拠して、230℃及び2.16kg(MFR2.16kg/230℃)、又は230℃及び10kg(MFR10kg/230℃)で測定した。
【0080】
2.固有粘度IV
非晶質画分の固有粘度を、ISO1628に準拠して135℃のデカヒドロナフタレン(デカリン)中で測定した。
【0081】
3.引張弾性率
3.1 射出成形試料について測定した引張弾性率
引張弾性率を、ISO527−2/1Bに準拠して1mm/分、23℃で求めた。50mm/分の速度を使用して、降伏点応力及び降伏点歪を求めた。引張弾性率を、ISO527−2/1Bに準拠して厚さ4mmの試験片について求めた。ISO1873−2、多目的試験片に準拠して押込式金型で、射出成形試験片を作製する。
【0082】
3.2 押出しパイプについて測定した引張弾性率
引張弾性率は、以下の式を用いて求めた。
引張弾性率=RS×12×[(D−t)/t]
(式中、RSは、EN ISO9969に準拠して決定されるリング剛性であり、
Dは、パイプの外径(mm)であり、
tは、パイプの壁の厚さ(mm)である。)
【0083】
4.リング剛性
EN9969に準拠して、23℃で110mmの直径及び約4mm(正確な値は表に記載)の壁の厚さを有するパイプについてリング剛性を求める。
【0084】
5.ステアケース法(stair case method)による外部打撃に対する抵抗、H50値
いわゆる外部打撃に対する抵抗を、EN1411に準拠して求めた。パイプに対するH50値は、試料の50%が破損する高さである。パイプに関する外径は110mm、壁の厚さは4mmであった。ストライカー(striker)は、8kg、D90型であり、試験を−10℃で実施した。
【0085】
6.ノッチ付シャルピー衝撃強度
ISO1873に準拠して作製した射出成形試験片についてシャルピー衝撃強度を、ISO179/1eAに準拠して求めた。試験片の寸法は、80×10×4mmであった。
【0086】
7.キシレン低温溶解画分XCS、非晶質画分AM
XCS及びAMを、以下のようにして求めた。
ポリマー2.0gを、撹拌下に135℃で250mlのp−キシレンに溶解した。30±2分後に、この溶液を周囲温度で15分間冷却し、次いで25±0.5℃で30分間沈降させた。溶液を濾紙によって濾過して、2つの100mlのフラスコに入れた。
【0087】
最初の100mlの容器からの溶液を窒素気流中において蒸発させ、恒量に達するまで、残留物を90℃で真空下で乾燥した。
XS%=(100×m1×v0)/(m0×v1)
(式中、m0=初期のポリマー量(g)
m1=残留物の重量(g)
v0=初期の体積(ml)
v1=分析試料の体積(ml)である。)
【0088】
非晶質含量(AM)は、上記のキシレン低温溶解画分を分離し、アセトンで非晶質部分を沈殿させることによって測定する。沈殿物は、濾過し、90℃の真空オーブン中で乾燥した。
AM%=(100×m1×v0)/(m0×v1)
(式中、m0=初期のポリマー量(g)
m1=沈殿物の重量(g)
v0=初期の体積(ml)
v1=分析試料の体積(ml)である。)
【0089】
8.コモノマー含量
コモノマー含量(wt%)の測定は、13C−NMRを使って較正されたフーリエ変換赤外分光法(FTIR)決定に基づいた。
【0090】
II.(例E1〜E2及びCE1〜CE2)
E1及びE2は本発明の実施例であり、一方CE1及びCE2は比較例である。
【0091】
全ての実施例において、プロピレンポリマーは、WO00/68315の例2に従って製造したチーグラーナッタ触媒の存在下に製造した。
【0092】
例E1〜E2及びCE1〜CE2において、マトリックスはループ反応器及び気相反応器(GPR1)において製造したプロピレンホモポリマーで作製される。マトリックスを構成しているプロピレンホモポリマーについての詳細情報を表1に示す。
【0093】
その後、プロピレンホモポリマーを、エラストマーポリプロピレンを製造した第2の気相反応器(GPR2)へ移した。E1及びE2において、Grindsted PS432(グリセロールエステル化合物)を、3.3g/時の供給速度で第2の気相反応器に添加した。
【0094】
プロセスパラメータについての詳細情報を、表1に示す。
【0095】
全ての実施例において、最終的なポリマー組成物には、フェノール系酸化防止剤、プロセス安定剤、及びタルクも含まれた。
【0096】
最終的な異相ポリマー組成物の特性についての詳細情報を、表2に示す。
【0097】
ポリマーは、以下のようにして押し出して固体壁無圧下水パイプとした。
外径:110mm
壁の厚さ:3.9mm(例E1及びE2)、4.4mm(比較例CE1及びCE2)
押出機:従来のスクリュー押出機、直径60mm、長さ36D
温度プロフィール:200℃/210℃/210℃/210℃/210℃
引取り速度:1m/分
較正及び冷却:従来法
【0098】
押出しパイプについて測定した引張弾性率及びH50値も表2に示す。
【表1】


【表2】

【0099】
表から分かるように、試料E1及びE2は、上記及び特許請求の範囲で定義したとおりの範囲内の量の非晶質画分AM並びに非晶質画分AM内のエチレン含量を有する。さらに、E1及びE2は、上記及び特許請求の範囲で定義したとおりの範囲内のXCS画分及び総エチレン含量を有する。結果として、明らかに2000MPaを上回る引張弾性率を実現できた。さらに、H50値として表される押出しパイプの衝撃強度は、それにもかかわらず許容レベルを維持することができた。
【0100】
比較例CE1及びCE2の試料は、これらの範囲に適合しておらず、引張弾性率値は明らかに2000MPa未満であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
−プロピレンホモポリマー及び/又は1.0wt%未満の量のコモノマー単位を有するプロピレンコポリマーを含むマトリックスと、
−前記マトリックス内に分散した、エチレン及び/又はC4〜C12α−オレフィン由来のコモノマー単位を含むエラストマーポリプロピレンとを含む
異相ポリマー組成物であって、
前記異相ポリマー組成物が2.0〜7.5wt%の量の非晶質画分AMを有し、前記非晶質画分AMが20〜45wt%の量のエチレン及び/又はC4〜C12α−オレフィン由来のコモノマー単位を有する上記異相ポリマー組成物。
【請求項2】
3.0〜8.5wt%の量のキシレン低温溶解画分XCStotal及び/又は2.0wt%未満の量のエチレン及び/又はC4〜C12α−オレフィン由来のコモノマー単位を有する、請求項1に記載の異相ポリマー組成物。
【請求項3】
−プロピレンホモポリマー及び/又は1.0wt%未満の量のコモノマー単位を有するプロピレンコモノマーを含むマトリックスと、
−前記マトリックス内に分散した、エチレン及び/又はC4〜C12α−オレフィン由来のコモノマー単位を含むエラストマーポリプロピレンとを含む
異相ポリマー組成物であって、
前記異相ポリマー組成物が、3.0〜8.5wt%の量のキシレン低温溶解画分XCStotal、並びに2.0wt%未満の量のエチレン及び/又はC4〜C12α−オレフィン由来のコモノマー単位を有する上記異相ポリマー組成物。
【請求項4】
2.0〜7.5wt%の量の非晶質画分AMを有し、前記非晶質画分AMが20〜45wt%の量のエチレン及び/又はC4〜C12α−オレフィン由来のコモノマー単位を有する、請求項3に記載の異相ポリマー組成物。
【請求項5】
マトリックスの少なくとも80wt%、より好ましくは少なくとも90wt%がプロピレンホモポリマーで形成されている、請求項1から4までのいずれか一項に記載の異相ポリマー組成物。
【請求項6】
マトリックスが、0.1g/10分〜1.5g/10分の範囲内のMFR(230℃、2.16kg)を有する、請求項1から5までのいずれか一項に記載の異相ポリマー組成物。
【請求項7】
マトリックスが、キシレン低温溶解画分XCSmatrixを3.0wt%未満、より好ましくは2.0wt%未満、さらにより好ましくは1.5wt%未満の量で有する、請求項1から6までのいずれか一項に記載の異相ポリマー組成物。
【請求項8】
異相ポリマー組成物の非晶質画分AMの量が、3.0wt%〜7.5wt%、より好ましくは3.0wt%〜6.0wt%である、請求項1から7までのいずれか一項に記載の異相ポリマー組成物。
【請求項9】
異相ポリマー組成物の非晶質画分AMのエチレン由来のコモノマー単位の量が、22wt%〜35wt%、より好ましくは23wt%〜32wt%である、請求項1から8までのいずれか一項に記載の異相ポリマー組成物。
【請求項10】
エラストマーポリプロピレンが、異相ポリマー組成物の非晶質画分AMの少なくとも60wt%、より好ましくは少なくとも65wt%に相当する、請求項1から9までのいずれか一項に記載の異相ポリマー組成物。
【請求項11】
異相ポリマー組成物のキシレン低温溶解画分XCStotalの量が、3.0wt%〜7.0wt%、より好ましくは4.0wt%〜7.0wt%である、請求項1から10までのいずれか一項に記載の異相ポリマー組成物。
【請求項12】
エラストマーポリプロピレンが、異相ポリマー組成物のキシレン低温溶解画分XCStotalの少なくとも60wt%、より好ましくは少なくとも65wt%に相当する、請求項1から11までのいずれか一項に記載の異相ポリマー組成物。
【請求項13】
異相ポリマー組成物のエチレン由来のコモノマー単位の量が、0.8wt%から2.0wt%未満まで、より好ましくは1.0wt%〜1.8wt%である、請求項1から12までのいずれか一項に記載の異相ポリマー組成物。
【請求項14】
異相ポリマー組成物の非晶質画分AMが、2.0dl/g〜5.0dl/g、より好ましくは2.5dl/g〜5.0dl/g、さらにより好ましくは3.0dl/g〜4.5dl/gの範囲内の固有粘度を有する、請求項1から13までのいずれか一項に記載の異相ポリマー組成物。
【請求項15】
請求項1から14までのいずれか一項に記載の異相ポリマー組成物を含む、パイプ。
【請求項16】
1900MPa超、より好ましくは2000MPa超の引張弾性率を有し、引張弾性率が以下の式、
引張弾性率=RS×12×[(D−t)/t]
(式中、RSは、EN ISO9969に準拠して決定されるリング剛性であり、
Dは、パイプの外径(mm)であり、
tは、パイプの壁の厚さ(mm)である。)で求められる、請求項15に記載のパイプ。
【請求項17】
−10℃で、EN1411に準拠して決定されるH50値が、少なくとも1100mm、より好ましくは少なくとも1500mm、さらにより好ましくは少なくとも2000mmである、請求項15又は16に記載のパイプ。
【請求項18】
請求項1から14までのいずれか一項に記載の異相ポリマー組成物を製造する方法であって、以下のステップ、
(i)少なくとも1つのループ反応器中、及び場合によって少なくとも1つの気相反応器中でプロピレンホモポリマー又はプロピレンコポリマーを製造するステップと、
(ii)前記プロピレンホモポリマー又はプロピレンコポリマーを少なくとも1つの気相反応器へ移し、プロピレンホモポリマー又はプロピレンコポリマーの存在下でエラストマーポリプロピレンを製造するステップと
を含む上記方法。
【請求項19】
ステップ(i)及び(ii)がチーグラーナッタ触媒存在下に行われる、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
ステップ(ii)が、グリセロールエステル、エトキシル化アミン、エトキシル化アミド、一酸化炭素、又は任意のこれらの混合物から選択される化合物の存在下に行われる、請求項18又は19に記載の方法。

【公表番号】特表2011−528052(P2011−528052A)
【公表日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−517862(P2011−517862)
【出願日】平成21年7月7日(2009.7.7)
【国際出願番号】PCT/EP2009/058603
【国際公開番号】WO2010/006961
【国際公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【出願人】(510312628)ボレアリス アクチエンゲゼルシャフト (4)
【Fターム(参考)】