説明

剥離容器の製造方法

【課題】内層体を傷付けることなく、外層体の口部に貫通孔を形成することができる、新規な剥離容器の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明は、内容物の充填空間を形成する内層体2と、この内層体2を固定する口部3aを有して当該内層体2が剥離可能に接合された外層体3とを備え、外層体3の口部3aに貫通孔Aが形成された剥離容器の製造方法である。本製造方法は、外層体3の口部3aの一部3pを内層体2と共に外向きに突出させた膨出部4を有する中間体1の製造工程と、膨出部4の先端部をカッターC1,C2を用いて切削することにより、外層体3の口部3aに貫通孔Aを形成する切削工程を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内容物の充填空間を形成する内層体と、この内層体を固定する口部を有して当該内層体が剥離可能に接合された外層体とを備え、外層体の口部に貫通孔が形成された剥離容器の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
外層体に接合された内層体を効果的に剥離させるため、外層体の口部に貫通孔を形成し、これを外気導入孔として利用することは既知であり、従来の加工方法としては、加熱ピンを口部に押し当てることで、貫通孔を形成するものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−1761号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の加工方法は、口部に対して、加熱ピンを口部径方向から押し当てるため、加熱ピンの押し当てが強すぎると、内層体を傷付ける虞がある。
【0005】
本発明の目的とするところは、内層体を傷付けることなく、外層体の口部に貫通孔を形成することができる、新規な剥離容器の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、内容物の充填空間を形成する内層体と、この内層体を固定する口部を有して当該内層体が剥離可能に接合された外層体とを備え、外層体の口部に貫通孔が形成された剥離容器の製造方法であって、
外層体の口部の一部を内層体と共に外向きに突出させた膨出部を有する中間体の製造工程と、
前記膨出部の先端部を切削することにより、外層体の口部に貫通孔を形成する切削工程を有することを特徴とする剥離容器の製造方法である。
【0007】
前記切削工程は、口部軸線に沿って、前記膨出部の先端部を切削することにより、外層体の口部に貫通孔を形成する工程であることが好ましい。
【0008】
前記膨出部は、前記製造工程は、膨出部を、口部の周りを全周に亘って形成することができる。
【0009】
或いは、前記製造工程は、膨出部を、口部の周りの少なくとも1箇所に形成することもできる。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、外層体の口部の一部を内層体と共に外向きに突出させて膨出部を形成し、この膨出部の先端部を切削することにより、外層体の口部に貫通孔を形成するから、従来のように、穴あけ部材が外層体と共に内層体を口部径方向に押し当てることで、当該内層体を傷付ける虞がない。
【0011】
従って、本発明の製造方法によれば、内層体を傷付けることなく、外層体の口部に貫通孔を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一形態である、デラミネーションボトルの製造方法に用いられる、中間体の第1の形態を一部断面で示す正面図である。
【図2】(a)は、同中間体の外層体口部を一部断面で示す要部側面図であり、また、(b)は、同中間体に係る膨出部の切削加工を一部断面で示す要部側面図である。
【図3】(a)は、同中間体(剥離容器)に係る、外層体口部に貫通孔が形成された状態を示す要部正面図であり、また、(b)は、同中間体口部を一部断面で示す要部側面図である。
【図4】(a)は、同製造方法に用いられる、中間体の第2の形態に係る、中間体口部を示す正面図であり、(b)は、同中間体口部を一部断面で示す要部側面図である。
【図5】(a)は、同中間体(剥離容器)に係る、外層体口部に貫通孔が形成された状態を示す要部正面図であり、また、(b)は、同中間体口部を一部断面で示す要部側面図である。
【図6】(a)は、同製造方法に用いられる、中間体の第3の形態に係る、中間体口部を示す正面図であり、(b)は、同中間体口部を一部断面で示す要部側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の一形態である、デラミネーションボトル(以下、「デラミボトル」)の製造方法を詳細に説明する。
【0014】
図1には、本発明の一形態である、製造方法に用いられる中間体1を示す。また、図2は、中間体1に対する切削加工の手順を示す。
【0015】
中間体1は、図1に示すように、内層体2と外層体3とからなる。内層体2は、口部2aと共に薄肉の胴部2b及び底部2cが一体に成形された変形可能な薄肉(例えば、袋状)のボトル形容器である。内層体2は、その内側に、口部2aを通して外界に通じる内容液の充填空間S1が形成されている。
【0016】
一方、外層体3も、口部3a、胴部3bおよび底部3cが一体に成形されたボトル形の容器である。外層体3の内側には、図1で示すように、内層体2が密着した状態で配置されている。また、内層体2は、口部2aの上端部2dがフランジで構成されている。
【0017】
中間体1の製造工程では、例えば、ポリエチレン製樹脂の外層と、可撓性を有するナイロン製樹脂の内層とを共押出より押し出した積層円筒状のパリソンを金型に挟んでブロー成形することで、中間体1を製造する。
【0018】
ここで、中間体1は、図2(a)に示すように、口部3a(2a)の周りを全周に亘って外向きに突出させた膨出部4を有する。膨出部4は、同図に示すように、外層体3の膨出部3pと内層体2の膨出部2pからなる。即ち、膨出部4は、外層体3の口部3aの一部3pを内層体2の口部2aの一部2pと共に口部径方向外向きに突出させたものである。
【0019】
こうした膨出部4は、ブロー成形に用いられる金型の表面形状を外層体3の口部3aに膨出部3pを形成するように形作れば、ブロー成形時に内層体2の膨出部2pも合わせて一体に成形することができる。即ち、外層体3の口部3aの一部を内層体2と共に外向きに突出させた膨出部4を有する中間体1は、通常の方法でブロー成形することができる。
【0020】
次いで、切削工程では、図3(a)に示すように、外層体3の口部3aに貫通孔Aを形成する。貫通孔Aは、外層体3の膨出部3pの先端部を、口部径方向の厚さd分だけ切削することにより形成する。切削工具には、例えば、平刃のカッターC1,C2を用いる。
【0021】
カッターC1,C2は、図2(a)に示すように、一定の間隔D1をもって配置されている。平刃のカッターC1,C2は、図2(b)に示すように、口部軸線Oに沿って移動させることで、膨出部3pの先端部を口部径方向の厚さd分だけ切削する。これにより、外層体3の口部3aには、図3(a)に示すように、例えば、口部軸線Oに沿って延在する楕円形状の貫通孔Aが形成される。なお、図3(b)は、貫通孔Aを外気導入孔として、内層体2が外層体3に対して剥離したことで、空間S2が形成された状態を示す。
【0022】
本発明では、外層体3の口部3aの一部を内層体2の口部2aの一部と共に口部径方向外向きに突出させて膨出部4を形成し、この膨出部4の先端部を切削することにより、外層体3の口部3aに貫通孔Aを形成するから、従来のように、穴あけ部材が外層体3と共に内層体2を口部径方向に押し当てることで、内層体2を傷付ける虞がない。
【0023】
従って、本発明の製造方法によれば、内層体2を傷付けることなく、外層体3の口部3aに貫通孔Aを形成することができる。
【0024】
また、本形態の如く、中間体1の製造工程において、膨出部4を、口部軸線Oの周りに全周に亘って形成すれば、貫通孔Aを様々な位置に形成することができる。
【0025】
なお、本形態では、図3(a)等に示すように、外層体3の口部3aに、ねじ部3sを分断するように、平坦面3fを形成すると共に、窪み3nを形成することにより、平刃カッターC1,C2の間隔D1よりも外層体3の幅D2が狭くなるように規定している。これにより、平刃カッターC1,C2が、膨出部4に至るまでの間、又は、膨出部4の先端を切断した後に、外層体口部3aに対して干渉(接触)することを防止している。なお、平坦面3f及び窪み3nは、切削加工位置の目印とすることもできる。また、平坦面3f及び窪み3nも膨出部4と同様、金型形状によって形成することができる。
【0026】
また、本発明に従えば、口部軸線O周りの接線方向に沿って切断することもできる。但し、その場合、中間体が、カッターC1,C2の押し力によって、口部軸線O周りに回転したり、傾いたりしたりして、精度良く切断することができないことも考慮される。これに対し、本形態の如く、口部軸線Oに沿って切断すれば、カッターC1,C2の押し力に伴う中間体の動きが抑制される。このため、所望の切断を高い精度で実現できる。
【0027】
図4には、本発明の一形態である、製造方法に用いられる、中間体の第2の形態に係る、口部を示し、また、図5には、貫通孔Aが形成された同中間体(デラミボトル)の口部を示す。
【0028】
図4に示す中間体は、口部軸線Oの周りに間隔を空けて、2つの膨出部4が設けられている。膨出部4は、図4(a)に示すように、口部軸線O周りに横長に延在すると共に、図4(b)に示すように、口部軸線Oを挟んで対向する位置に設けられている。この場合も、上述の製造方法と同様の工程を経ることで、図5に示すように、外層体3の口部3aに貫通孔Aを形成することができる。
【0029】
また、本形態に係る中間体は、貫通孔Aを形成するべき位置にのみ、膨出部4が設けられているから、外層体3の口部3aの内側に形成される段差が少なくなる。このため、本形態に係る中間体を用いて製造されたデラミボトルは、内層体2と外層体3との間に貫通孔Aを通して外気を導入し易くなる。なお、図1〜3と同一の部分については、同一の符号をもって、その説明を省略する。
【0030】
更に、図6には、本発明の一形態である、製造方法に用いられる、中間体の第3の形態に係る、口部を示す。
【0031】
図6の中間体は、キャップ等が打栓により装着されるものである。このため、外層体3の口部3aには、ねじ部3sに替えて、嵌合用のリブ3rが一体に設けられている。この場合も、上述の製造方法と同様の工程を経ることで、外層体3の口部3aに貫通孔Aを形成することができる。なお、図1〜5と同一の部分については、同一の符号をもって、その説明を省略する。
【0032】
上述したところは、本発明の様々な形態を例示したにすぎず、本発明に従えば、種々の変更を加えることができる。例えば、本発明の製造方法は、少なくとも、上述のような中間体の製造工程と、貫通孔を形成するための切削工程とを備えればよく、更に、他の工程と組み合わせて使用できる。また、貫通孔は、少なくとも一箇所に形成することができる。更に、切削工具も平刃カッターに限定されることなく、口部の形状等に応じて、様々なものを選択することができる。更に、各形態に記載の工程及び構成はそれぞれ、適宜、組み合わせることができる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、内容物の充填空間を形成する内層体と、この内層体を固定する口部を有して当該内層体が剥離可能に接合された外層体とを備え、外層体の口部に貫通孔が形成された剥離容器を製造するにあたり、貫通孔を形成する過程であれば、様々な場合に適用させることができる。
【符号の説明】
【0034】
1 中間体
2 内層体
2a 口部
2p 膨出部
3 外層体
3a 口部
3p 膨出部
4 膨出部
A 貫通孔(外気導入孔)
C カッター(切削工具)
1 充填空間
2 剥離空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物の充填空間を形成する内層体と、この内層体を固定する口部を有して当該内層体が剥離可能に接合された外層体とを備え、外層体の口部に貫通孔が形成された剥離容器の製造方法であって、
外層体の口部の一部を内層体と共に外向きに突出させた膨出部を有する中間体の製造工程と、
前記膨出部の先端部を切削することにより、外層体の口部に貫通孔を形成する切削工程を有することを特徴とする剥離容器の製造方法。
【請求項2】
請求項1において、前記切削工程は、口部軸線に沿って、前記膨出部の先端部を切削することにより、外層体の口部に貫通孔を形成する工程であることを特徴とする剥離容器の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記製造工程は、膨出部を、口部の周りを全周に亘って形成することを特徴とする剥離容器の製造方法。
【請求項4】
請求項1又は2において、前記製造工程は、膨出部を、口部の周りの少なくとも1箇所に形成することを特徴とする剥離容器の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−96815(P2012−96815A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−244240(P2010−244240)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】