説明

力測定装置の温度補償方法及び力測定装置

本発明は、通常の測定動作中、電磁力の補償原理に基づいて力測定装置(1)、特に計量器の温度補償をするための方法に関連し、ロードセル(10)を使用して力測定装置に作用する力に対応する電気的な力測定信号(mL)を生成するステップと、力測定装置(1)の熱を生成する構成部品から距離を置いて配置される温度センサー(15)を使用して電気的な温度測定信号(mT)を生成するステップであって、前記信号が、力測定装置に作用する周辺温度(Te)に対応しているものと、温度測定信号(mT)及び力測定信号(mL)に基づいて、力測定信号(mL)を処理して温度補償した出力信号信号(mLc)にするステップと、出力信号(mLc)を表示装置(13)及び/又は更なる処理装置(14)へ送信するステップと、を含む。この目的を達成するために、力測定信号(mL)及び/又は温度測定信号(mt)に基づく処理段階の間、出力信号(mLc)を補償するために使用される少なくとも1つの補償パラメーター(CP)が、熱力学モデルを使用して算出され、前記パラメーターが、システム温度(Ts,Ts1,Ts2)と周辺温度(Te)との間又は第1のシステム温度(Ts1)と第2のシステム温度(Ts2)との間に存在する温度差(dTr,dT1,dT2)の特性を示している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、力測定装置において温度に関連する誤り補償に関する方法に関連し、特に秤(balance)、及び必要な能力を所有する力測定装置に関連する。
【背景技術】
【0002】
力を測定する装置(力測定装置)は、一般に、力の受け入れ装置、力の伝達装置、力の測定セル、及び場合によっては、測定信号を処理するための装置など、異なる機能の部品を含んでいる。測定される力が、力受け入れ装置によって受け取られ、力を伝達する機構を介し、力を測定するセルへ伝達される。力を測定するセルが、入ってくる力を、力測定装置に作用している力に対応する電気的な力測定信号へ変換する。
【0003】
同様に、秤の場合、入力された力は、いわゆる計量物の重力によって表され、計量荷重は、計量皿形式を有する力受け入れ装置に作用する。この入力された力が、力測定セル又は計量セルと連携する形式で力伝達機構によって伝達され、電気的な力測定信号、いわゆる、計量信号へ変換される。
【0004】
電気的な力測定信号は、力測定信号を更に処理して対応する出力信号を生成する目的を果たす信号処理装置へ送信される。出力信号は、表示装置、及び/又は付加的な制御演算装置、例えば、マスター計算機又はシステムコントローラーへ送信される。
【0005】
この種の力測定装置又は秤は、個々の計量物の重さを計るために典型的に使用されるが、しかしそれらは、自動化された生産システム、及びより大量の計量物品を計量するためのテストシステムにおいても適用される。このタイプの力測定装置は、高度な測定精度、再現性、及び安定性を満たす必要がある。加えて、力測定装置は、可能な限り、単純かつ費用対効果に優れた設計である必要がある。
【0006】
正確かつ安定した測定のために、計量結果に誤りをもたらす影響要因が測定され、適切に補償される必要があって、これは真っ先に実践することである。例えば、荷重と独立したパラメーターの影響、特に外部から計量装置に作用する温度の影響を補償するための方法がGB1495278に記載されている。補償は、計量装置が晒されている周辺温度を測定することと、対応する電気的な温度の測定信号を生成することと、によって達成される。温度の測定信号に基づいて、力測定信号は、その後、温度補償した出力信号へ処理される。この方法を使用すると、時間に依存した現象、例えば、時間に依存した指数関数によって、弾性変形に従ったクリープ効果を補償することも可能である。
【0007】
この補償方法は、既知の技術に属していて、力測定装置の構成部品すべてが同一の温度、すなわち、周囲の環境の温度を共有している状況に力測定装置が存在している前提に基づいている。しかしながら、力測定装置の異なる構成部品は、しばしば同等でない温度を有する状況が生じる。例えば、付加的な熱が動作中、力測定装置に生成されて力測定装置のいくつかの構成部品の温度を上げる。その結果、動作に関連する構成部品の温度と、装置が晒されている周辺温度との間に温度差が発生する。
【0008】
通常、この種の温度差は、力測定装置の測定、すなわち、入力された力又は装置に作用する入力荷重の測定に影響する。したがって本発明の目的は、特に高水準の精度及び安定性を満たす必要がある力測定装置において、これらの温度の影響を可能な限り完全に補償することである。
【0009】
既存の最先端技術は、温度差の影響を補償するための異なる解決策を提示している。例えば、DE10353414 B3に開示された秤は、別の場所に配置された少なくとも2つの温度センサーを有していて、電源が投入された直後、2つの温度センサーの出力信号の差に依存して初期補償値が選択される。2つの温度センサー、より具体的には、それらによって測定される温度差は、装置の電源が落とされて再び電源投入されるまでの時間の長さを間接的に決定することを目的とする。計量システムによって生成される荷重に依存した信号は、数学的な計算手段を経て、装置が電源投入されてから経過した時間の長さに依存して補償される。これによって、秤が十分な精度に達するまでの電源投入からの時間を劇的に低減することが可能になる。かくして、引用した参照先において提案される解決策は、秤の電源投入時の反応に示される。
【0010】
GB2148512Aに開示されている電子秤は、計量結果に有害な影響を与える要因を測る2つの測定センサーを有している。測定センサーのうち1つは、例えば、補償コイルにおける電力消費によってもたらされる温度変化を測定し、測定した温度変化に基づいて秤の測定変換器の出力信号を補償する力補償コイルに固定される温度センサーである。温度センサーに関するデータは、デジタル信号処理装置の記憶装置に継続して入力され、指定された時間の間、格納される。時間内に異なる時点から発したデータは、それらが秤の測定変換器の出力信号の補償に使用された場合、測定センサーの慣性によって異なる重さに割り当てられる。かくして、実行される補償は、現象面からみて原始的なものである。
【0011】
DE29803425 U1に開示されている秤は、零点信号の温度補償に関する装置を含んでいて、最初の段階において温度の変化dT/dtの割合が決定され、後者が、十分に小さいことを見出した場合、電流の零点信号が温度信号と一緒に格納され、十分に多くの組の値が集められた後、それらはその後、計量結果の零点、すなわち、零荷重値を補償するために使用される零点温度係数を算出するための開始点としての目的を果たす。
【0012】
CH658516に記載された電磁力の補償原理に基づく秤において、永久磁石の空隙に配置されるコイルを経て流れる電流によって、補償力が生成される。その電流の結果として、コイルの温度は、コイルから更に移動されより遠くに配置された構成部品よりも高くなり、その温度は、装置が晒されている周囲の部屋の温度によって原則的に決定される。この温度差を補償するための温度センサーは、永久磁石組立部品の内部に配置され、永久磁石の温度上昇に対応する温度を測定する。測定温度に基づいて、力測定信号が、その後、補償される。しかしながら、永久磁石の熱慣性により、温度センサーは、周辺温度の変化に対し単にゆっくりと応答し得る。補償にもかかわらず、かくして計量結果における誤りを導入し得る有害な影響が残ったままである。永久磁石内の温度センサーの導入、調整、及び点検も高価かつ誤る傾向がある。温度センサーが実際の力測定と直接に関連付けられる重要な構成部品と隣接するか又はその内部に位置付けられる配置上の欠点がある。
【0013】
温度センサーがコイルの巻線内部に配置される、熱発生のより直接的な測定に関する概念が、CH669041に提案されている。これによって温度は、発熱源の中央部、すなわち、コイルの巻線内において測定されることが可能になる。それにもかかわらず、温度センサーの導入及び調整は、依然として問題をはらんでいる。更に、磁場は主として永久磁石の温度とコイルの温度に副次的にしか関係しないので、測定値は、場合によって、磁場の温度に依存した補償を表現したものにならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】英国特許GB1495278
【特許文献2】ドイツ特許DE10353414 B3
【特許文献3】英国特許GB2148512A
【特許文献4】ドイツ特許DE29803425 U1
【特許文献5】スイス特許CH658516
【特許文献6】スイス特許CH669041
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
したがって、本発明の目的は、特に秤において、測定精度及び安定性に関して高い基準を満たすと同時に、単純かつ費用対効果に優れた動作を達成することを目的とする力測定装置の温度補償に関して改良された方法を提案することである。特に本努力は、温度差を補償するための方法を提供することを対象としていて、温度センサーが、単純な方法で導入され得、調整され得、検査され得る。更なる目的は、単純で費用対効果に優れ、かつ、信頼性のある設計に適切な力測定装置を提案することである。
【0016】
この働きは、独立請求項に述べられる特徴を有する力測定方法及び装置を用いて解決される。本発明の有利な実施形態は、非独立の請求項において更に説明される。
以下の観測は、主として、秤の通常の動作と関係する。電源投入時の状況の出現及び機能不良は考慮に入れない。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、力測定装置、特に秤の温度補償に関する方法に関係し、その通常動作の間、力測定セルによって、入力された力に対応する力測定信号を生成するステップと、力測定装置の熱を生成する構成部品から距離を置いて配置される温度センサーによって、温度を測定するステップであって、前記温度が主に、力測定装置が晒されている周辺温度に対応していて、測定温度に対応する温度信号を生成するステップと、温度測定信号及び力測定信号に基づいて、力測定信号を処理して温度補償した出力信号にするステップと、表示装置及び/又は更なる処理装置へ出力信号を送信するステップと、を有する方法である。処理段階において、出力信号を補償する目的を果たす少なくとも1つの補償パラメーターが、基本的な熱力学モデルによって、力測定信号及び温度測定信号から算出され、補償パラメーターが、システム温度と測定温度との間及び/又は第1のシステム温度と第2のシステム温度との間に存在する温度差の特性を示している。
【0018】
この方法は、高価な及び/又は誤り傾向のある温度センサーを力測定装置の重要な構成部品と隣接することもその内部に導入することも必要とせずに、単純で効率的かつ正確な温度補償が実行され得る利点を有する。更に、温度センサーを力測定装置の別の場所に導入する必要性も除外する。したがって、力の測定装置の単純かつ費用対効果に優れた設計が達成され得る。加えて、再追跡可能なステップによる単純な方法を介した計算が、実行され得るため、力測定装置にかかる費用、信頼性、及び安定性に関連する利点が得られる。
【0019】
かくして、現行技術と比較すると、本発明は、力測定に大きく作用する付加的な熱的影響要因が、熱力学的又は物理的なモデルを介し算出されるという事実が際立っている。算出されたこの影響要因は、その後、更に力測定信号を補償するために使用される。
【0020】
温度センサーは、力測定装置内の、センサーによって測定された温度が主に周辺温度に対応する場所に配置される。熱を生成する構成部品に生じる温度又はその近くに生じる温度が、熱力学的モデル又は物理的モデルによって算出され得る。本文脈において使用される用語「周辺温度」は、力測定装置が晒されている異なる環境の温度、例えば、力測定装置を囲む空間又は力測定装置の筺体内部の空間に存在する大気温度と、装置が位置しているテーブルの表面温度又はその上の温度又は測定される物体の温度と、を含んでいる。
【0021】
周辺温度は、力測定装置、及び力測定装置か又はその内部に配置される温度センサーに常に作用している。しかしながら、例えば、力測定装置の動作に関連付けられた付加的な温度要因がその状況に入り込んだ場合、いくつかの場所で測定される温度は、周辺温度から逸脱し得る。
【0022】
本明細書に使用される用語「システム温度」は、力測定装置のシステム構成部品に割り当てられ得る温度、例えば、構成部品の温度、又は構成部品の一部の温度、又はコイル、永久磁石、永久磁石のコア、空隙、レバー、位置センサー、又はその取付け付属品のような構成部品の集まりの温度、及び力の受け入れ装置、力の伝達機構、又は力の測定セルの温度、を参照している。
【0023】
本発明による温度センサーは、測定温度、ひいては電気的な温度測定信号が、主に周辺温度に対応するように配置される。例えば、センサーが周囲の大気又はそれらの構成部品と直接熱的に接触し得、そのシステム温度は主に周辺温度によって決定される。温度センサーが、構成部品に近い、あまり適切でない配置にあると、その温度は、基本的に力測定装置の動作に関連する要因によって決定される。かくして、温度センサーは、望ましくは、力測定セルの熱的に受動的な構成部品又は熱的に安定した構成部品上又はその近くに配置される。しかしながら、それは環境に晒されるか又は筺体などの力測定装置の外部に位置付けられた構成部品の隣にも配置され得るか、又はそれは力受け入れ装置又は力伝達機構などの可動部分にも取り付けられ得る。更に、温度センサーは、筺体の外又は力測定装置の近くにも配置され得る。
【0024】
この配置は、温度センサーが、直接かつ急速に周辺温度の変化に反応できるという有益な結果をもたらす。周辺温度の測定は更に、大体においては、力測定と無関係であって、ひいては、後段の影響、例えば、それと関連付けられた熱発生から分離される。温度センサーは力測定装置のほとんど重要でない場所か又は構成部品に配置され得、温度センサーの導入、調整、及び/又は点検が、問題なく実行され得ることは特に利点である。
【0025】
原則として、本発明による方法は、力測定装置において、任意の温度差の補償に対し使用され得る。かくして、例えば、熱が突然、急上昇し生じる温度差を補償することが可能である。他方において、一般に周辺温度及びシステム温度、又は2つのシステム温度差から生じる温度差も補償することが可能である。かくして、補償パラメーターCPが異なる温度差の特性を示し得る。
【0026】
力測定装置に作用する周辺温度が、比較的速い速度で変化した場合、異なるシステム温度を有する状況が生じ得、構成部品の熱慣性のために、システム温度は少なくとも速やかにその変化に追随できない。かくして、短い時間間隔又は瞬間的に発生した変化から生じる温度差は、それ故、一定の長さの時間だけ現れるが、構成部品のシステム温度は、周辺温度が上昇した後、時間に遅延して発生する。しかしながら、一定の応答速度に従って新しい平衡水準に達するまで、これらの温度差は時間とともに、自ら滑らかになる。
【0027】
応答速度、ひいては時間に依存した温度差の反応は、構成部品自体の熱的特性、及び/又は別の構成部品及び/又は周囲環境とそれらとを連結しているものに依存する。これらの熱的特性は、熱力学的要因の多様性、例えば、熱の慣性、熱の流入、熱の伝導、及び熱の流出、並びに構成部品の質量又は表面、及びそれらの熱膨張とも関連付けられ得る。
【0028】
本発明による補償は、力測定装置が使用され得る場所に関する制限がされず、システム温度が、どんな力測定装置の場所でも及び/又は構成部品に対しても算出され得るといった特定の利点がある。したがって、測定される構成部品をその測定値が代表し得ない温度センサーを用いた場合のような局所的に制限された測定領域はなくなる。
【0029】
システム温度は、多くのセンサーを導入する必要性もなく、異なる場所及び/又は構成部品のための更なるコストもかけずに決定され得る。かくして、費用対効果に優れた方法によって、力測定装置の非常に複雑な温度分布の形を決定し、それらを補償するための利用も可能である。特に問題のない場所で実行される単一の温度測定に基づく力測定信号の決定時に、力伝達機構の異なる2つの構成部品間の温度差と、この温度差が有する影響と、の算出が可能である。
【0030】
これは更に、温度センサーの取付け付属品の熱的影響に関連する誤りをもたらす熱的影響すべてを除外する。例えば、構成部品と温度センサーとの接着は、通常、測定されるシステム温度における誤り及び/又は時間差をしばしばもたらす断熱境界層を作り出す。この種の問題は、システム温度が計算を経て決定される場合は生じない。
【0031】
更に、要求される精度の水準に従って、計算を改善することによって、複雑かつ様々な熱的影響要因を算出し、それらを力測定信号の補償に適用可能である。
本文脈において用語「信号処理装置」は、力測定セル及び温度センサー、例えば、アナログ又はデジタル回路、集積回路、シフトレジスター、プロセッサー、計算機などの測定信号に関する処理に対する適切な信号処理素子すべてに及ぶ。
【0032】
本発明の有利な第1の実施形態において、補償パラメーターは、応答関数及び畳み込み積分によって算出される。それによって対応する温度差をもたらす熱力学的な現象が、コンパクトな形で算出され得、補償に適用され得る。補償パラメーターは、望ましくは、力測定信号から決定された応答関数、力測定信号、又は電力消費関数の時間導関数が、温度測定信号を畳み込むことによって算出される。これによって、特に先行する時間のプロファイルを含んで、測定信号を補償パラメーターの計算時に考慮することが可能になる。この計算の個々の段階が、好適な実施形態の詳細な説明において本明細書に提示される。
【0033】
原則として、時間に依存した応答関数、例えば、指数関数又は多項式として使用され得る多くの関数が存在する。望ましくは、応答関数は、少なくとも1つの熱力学のシステム的な概念に従って、及び/又は階段関数又はインパルス関数形式の入力に対する熱力学的応答として、及び/又は時間減衰関数、特に特定の時定数を有する指数関数として、定義される。熱伝導、熱膨張、又は温度上昇による磁場の弱化など、熱力学的な現象の多様性が、モデルを介し示され、補償パラメーターの計算用に使用され得る。計算は更に、例えば、時定数を異なる材料の熱伝導率に適合させることによって、実用的な特定の状況の状態に適合させることができる。
【0034】
本発明の好適な実施形態において、補償パラメーターは、再帰的な方法によって算出される。これによって、複雑な式の値の算出が、特に畳み込み積分が単純な数学演算、例えば、基本的な乗算、加算、及び時間の遅延関数によって可能になる。加えて、数値及び中間結果のメモリーへの格納が強力に減らされ得る。更なる利点としてこの再帰的な方法は、大きな遅延がない、すなわち、リアルタイムの信号処理を提供する。
【0035】
補償パラメーターは、望ましくは時間プロファイル、特に測定温度の増減率及び/又は力測定信号に関係する時間に依存した量として算出される。この補償は、主に、短期的又は一時的な方法で現れる温度差を解決する。その結果、いわゆる動的な温度補償が実行され得、それによって高度な測定精度が、短期的な温度変化であっても達成され得る。計算の中で時間の依存性が直接に考慮され得る可能性があることは、特に利点である。その熱的特性、特にその熱慣性による温度センサー自体によって、もたらされる誤りを予測する必要がある温度測定と比較すると、この遅延のない温度差の補償は、有利である。
【0036】
更なる実施形態において、システム温度は、力測定装置の構成部品、特に力入力装置、力伝達機構、レバー、又はレバーアームの温度に対応していて、出力信号が、構成部品の熱膨張に関係して補償される。その結果、構成部品の大きさにおける変化を介して力測定の中へ誤りをもたらす温度差が効率的に補償され得る。
【0037】
原則として、温度変化は、作用された構成部品すべての大きさの変化をもたらす。しかしながら、通常、影響を受ける構成部品の大きさは、増減率が構成部品それぞれの個々の特性それぞれによるので同一速度で変化しない。その結果、力を伝達する反応における変化、特に平衡の移動が、これらの構成部品又はその部品に生じる。これは、力測定に誤りを導入する影響を有しているがしかし、本発明の方法を用いて効率的に補償され得る。
【0038】
特定の構成部品は、望ましくは、力測定セルに適用される力を伝達する目的を果たすレバー又はレバーアームである。かくして、補償パラメーターは、レバー又はレバーアームの縦の大きさに対応する。その結果、詳細な説明で示した単純な熱力学モデルを用いて周辺温度に関連する影響が算出され得る。
【0039】
本発明の更なる実施形態において、補償パラメーターは、力測定装置の異なる構成部品、特に対向する2つのレバーアームそれぞれに関連付けられる少なくとも2つの温度差の特性を示している。熱的特性がお互いに一致していない異なる構成部品が、周辺温度の短期的又は瞬時に起こる変化に応答したとき、この種の温度差が生じる。この場合、複数の温度測定信号及び対応する困難な調整に関与する主要な処理の労力を必要としないので、本発明による方法は特に有利である。加えて、いくつかの温度センサーの導入を除外し、費用対効果に優れた設計に貢献する。
【0040】
本発明による方法が、多くの異なる構成部品を用いた複雑な設定に使用され得ることも特に利点である。本発明の補償パラメーターの概念を用いると、補償するための、より多くの温度差が特性化され得、使用され得る。
【0041】
補償パラメーターは、特に第1のレバーアームの第1の温度差と、第2のレバーアームの第2の温度差と、を含む2つの値のグループを含み得る。これによって、時間に依存した一定の処理に関する複雑な相互に重ねられた反応、この場合、異なる時間に依存した2つのレバーアームの反応を算出することが可能になる。
【0042】
本発明の更なる実施形態において、補償パラメーターは、2つの温度差の差を示す差分信号によって算出される。この概念は、更なる基準温度、特に力測定装置に作用している周辺温度に対する依存性を除外し、温度差が、単一の信号、すなわち差分信号として算出され得る。これは、補償パラメーターの取扱い、特に更なるその計算の中へ伝えることを単純化する。
【0043】
本発明による更なる実施形態において、力測定装置は、電磁力の補償原理に基づいていて、補償パラメーターによって特性化される量は、補償力を生成する処理と連結されている温度差である。この原理によると、力測定セルは、力測定装置に作用している入力された力を秤にかける、いわゆる補償力を生成する。かくして、力測定セルは、適用されている荷重が変化したときでも、いつも同一の位置を維持していて、現行技術に関連して導入部に説明しているクリープ現象、すなわち、変形の問題及び/又は素材の疲労が完全になくなるか又は非常に小さな程度だけ現れる。
【0044】
補償力を生成する処理において発せられる熱量は、一般に、補償力を生成する目的を果たす構成部品それらの温度増加をもたらす。本発明の概念による温度補償を使用することによってこの影響を補償することは、熱発生の重要な場所の温度又はそれらの影響が、計算によって決定されるという点において、ここでは著しく単純な要件になる。その結果、これらの構成部品に温度センサーを導入、調整、及び監視する努力及び費用をもはや論争する必要はない。これらの構成部品へのアクセスが通常、困難である事実を考慮すると、これは特に有利である。
【0045】
本発明の更なる実施形態による補償力が、電流が流れているコイルによって生成され、それによって電力は熱として消散される。補償パラメーターが、力測定信号によって、特に力測定信号から導出され得る電力消費の関数として算出される。この電力消費がコイル中及びコイルを囲む構成部品における温度変化を生成する。今度は温度変化が、時間と共に変化させる力の影響をいわゆる荷重のゆらぎの形でもたらす。この荷重のゆらぎは今ここで、補償パラメーターが、発熱体、すなわち、コイルの中に起こる電力消費へ直接的に関係して決定されるという本発明の方法を用いて、単純かつ正確な方法で補償され得る。
【0046】
コイルを経て流れている電流が時間とともに変化するとき、したがって丁度そのとき、その大きさが作用している力に依存しているとき、本発明による方法は。時間に依存した条件下において特に有利である。
【0047】
したがって電流の変化とともに、異なる電力量が、異なる温度、ひいては本システムにおいて作用する力の時間の変化となって消散される。本計算を用いると、これらの可変状態が、即座に柔軟な方法で補償され得る。
【0048】
本発明の更なる好適な実施形態において、補償力は、コイル及び永久磁石の相互作用によって生成され、その場合のシステム温度は、コイル及び/又は永久磁石の温度に対応している。コイル及び永久磁石の双方が力の生成に関与しているので、システム温度を測定するために実行される立ち入った方法に関連するこれらの構成部品は特に重要である。
【0049】
コイルは通常、永久磁石の空隙に配置されるので、熱が力測定装置の異なる構成部品を介するか又は空隙の大気を介し伝達するために、コイルにおける温度変化は、対応する永久磁石の変化をもたらす。永久磁石の温度変化が、今度は後段の磁場に作用し、ひいては生成される補償力にも影響を与える。その結果、力測定装置上の一定の入力荷重は、ゆるやかな温度上昇をもたらし、ひいては入力荷重の時間に依存した変化の見かけ、すなわち、荷重のゆれの現象を生成する。
【0050】
本発明によるシステム温度を算出する処理において、温度変化が起こるコイルとそれらがそれらの影響を作り出す磁石と、の間に発生するこの熱伝達が、うまく近似算出され得、かくして温度補償のために使用され得る。
【0051】
更なる好適な実施形態において、少なくとも2つの力測定信号の補償が、少なくとも2つの異なる実質上別個の演算モジュールにおいてそれぞれ算出され、モジュールそれぞれにおいて、少なくとも1つの前述の補償パラメーターが算出される。このモジュール概念を用いると、温度の影響が大きい多様性に対処する計算が設定され得、変化する要件を満たす単純な方法によって適合され得る。
【0052】
本発明は更に、適用される力を表す電気的な力測定信号を生成する力測定セルを有し、力測定装置の熱を生成する構成部品からある距離を置いて配置される温度センサーを有する力測定装置、特に秤に関連し、温度センサーが、力測定装置に作用する主に周辺温度に対応する温度を測定し、測定温度を示す温度測定信号を生成し、温度測定信号及び力測定信号に基づいて測定信号を処理して温度補償した出力信号にし、表示装置及び/又は更なる演算処理装置へ送信され得るように構成された更なる信号処理装置を用いて、信号処理装置が、通常動作の間、力測定装置に関する出力信号の補償する目的を果たす補償パラメーターを熱力学モデルによって算出するように適切に構成され、補償パラメーターは、システム温度と測定温度との間、及び/又は第1のシステム温度と第2のシステム温度との間に存在する温度差の特性を示している。
【0053】
力測定装置の更なる実施形態において、温度センサーは、力測定装置の構成部品特に固定された構成部品と熱的に接触し、構成部品のシステム温度が、力測定装置に主に作用する周辺温度で決定される。この構成を用いると、構成部品に影響する周辺温度が直接に考慮され得、それによってこれら影響要因の正確な補償が達成され得る。温度センサーは、望ましくは、力測定セルの固定された構成部品、例えば、力測定セルが固定された部分に配置される。かくして、温度センサーは力測定装置の重要でない部分に単純な方法で取り付けられ得、温度測定信号が、力測定に作用せずに目標へ送信され得る。
【0054】
本発明による方法は、望ましくは、信号処理装置において実行され得、本発明の方法による出力信号を算出する目的を果たすソフトウェアプログラムに実装される。このように、高度の柔軟性及び他のアプリケーションにおける計算アルゴリズムを再利用するための能力を達成することが可能である。
【0055】
本発明による方法及び対応する力測定装置の詳細が、以下図面に示した実施形態の説明で提示される。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】典型的な例として秤(1)を象徴的に表していて、外部から作用する荷重L、周辺温度Te、及び力測定装置内部で作用するシステム温度Tsが示されている。
【図2】図1による秤に関して、電磁力の補償原理に基づいて力測定信号mLを生成し、主に周辺温度Teを表す温度Tmを測定し、対応する温度測定信号を生成する温度センサー(15)を装備している、断面図で示した力測定セル(10)を簡略した概要図形式で示している。
【図3】力測定信号mLに基づいて、温度測定信号mT及び補償パラメーターCPが、温度が補償された出力信号mLcを生成し、表示装置(13)又は更なる処理装置(14)に送信される、信号処理装置(20)を有する図1及び図2の秤(1)のブロック概略図を表している。
【図4】補償が、本発明によって、第1の加算補償C_Sによって示された第1の温度補償と、第2の加算補償C_LDによって示された補償との組み合わせから成っていて、補償パラメーターが相対的な温度差dTr形式を有していて、第2の加算補償C_LDが相対的な温度差dTrに従って算出される、図3に類似しているブロック概略図を示している。
【図5a】2つの温度差dT1及びdT2が算出される、本発明の更なる例を示している図4に類似しているブロック概略図を示している。
【図5b】図5aの例に関する計算方法にどのように達するか例示するブロック概略図を表している。
【図5c】図5aの例に関する周辺温度Teの急上昇dTeに関連する温度プロファイルを図式的に例示している。
【図6】図4、図5a、図5b、及び図5cによる計算が、それら個別の機能を個々に実行する計算モジュール配列として結合されているブロック概略図を表している。
【発明を実施するための形態】
【0057】
図1は、典型的な例として秤(1)を表していて、秤(1)に作用している荷重Lが象徴的に示されている。それに応答して、入力荷重Lに反対に作用する補償力Fが生成される。象徴的に示されることは、秤に外部から作用し、測定の精度及び安定性に対し重要な影響を有している周辺温度Teである。秤によって決定された測定値は、一方において、荷重Lの関数として変化するがしかし、それらは、周辺温度Teにも依存していて、力測定装置内部に作用するシステム温度Tsの影響にも応答して変化する。
【0058】
以下の段落に説明されるこのシステム温度Tsは、様々な理由で周辺温度Teから逸脱し得る。例えば、補償力を生成する処理において、秤の内部空間において電力が消散され、システム温度Tsの増加をもたらす。しかしながら、構成部品の温度変化が十分に速く、温度源の変化に追随できなかった場合も、力測定装置の構成部品の熱的慣性の結果として温度差が発生し得る。したがって秤(1)の一部である信号処理装置は、荷重Lに対応する測定値をこれらの不利な温度の影響から可能な限り、切り離し、表示(13)例えば、液晶ディスプレイに示される測定値は、正確かつ安定した結果を達成するための重要な役割を有している。
【0059】
図2は、電磁力の補償原理に基づいて適用物を計量するために適切な力測定セル(10)の断面図を簡略した概要図形式で表している。力測定セル(10)は、固定部分(42)及び垂直可動部(43)を用いて平行に案内する装置を有する力の伝達機構を含むいくつかの異なるシステム構成部品又は組立部品を有していて、後者は屈曲式ピボット(45)と導材(44)との組によって固定部分と接続される。垂直可動部(43)は、矢印によって図式的に示される、測定される入力荷重Lを受信する目的を果たすカンチレバー拡張部(41)を含む。荷重Lによって生成される通常の力の成分は、結合している構成要素(49)を経由し、垂直可動部(43)からレバー(46)の第1のレバーアーム(48)へ伝達される。レバー(46)は、屈曲部(47)の支点によって固定部分(42)の一部で支えられている。力測定セル(10)は更に、固定部分(42)と固定した接続で配置されたコップ形の永久磁石(50)を含む。永久磁石(50)は、空隙(51)を有していて、レバー(46)の第2のレバーアームと接続されるコイル(53)が空隙に挿入される。補償電流Icがコイル(53)を経て流れていて、その大きさはレバー(46)に作用する力と関係する。レバー(46)の位置は、閉ループ制御装置(56)と接続される電子光学的な位置センサー(54)によって測定される。制御装置(56)は、荷重Lが変化した後、レバー(46)が絶えず同一の位置に保たれるか又は同一の位置へ返される方法で、入ってくる位置測定信号に依存した補償電流Icを制御する。閉ループ制御装置(56)がデジタル又はアナログの力測定信号mLを製造し、更なる信号処理段階へ送信される。
【0060】
可変で入力される力に関係して、対応し変化する補償電流Icがコイル(53)を経て送信される必要がある。その結果、荷重に依存した電力消費が、コイル(53)内に発生する。したがってコイル(53)が、荷重に依存した発熱源として作用し、ひいては、その範囲内の成分に対応する温度変化をもたらす。この温度変化は、特にコイル(53)自体に影響を与えるがしかし、熱の伝達、例えば、永久磁石(50)、レバー(46)、及び位置センサー(54)を経て暖められる構成部品にも達する。
【0061】
温度センサー(15)は、力測定セル(10)の固定部分(42)に配置される。したがって、この温度センサー(15)によって測定される温度Tmは、固定部分(42)のシステム温度に対応する。固定部分(42)は、力測定装置に作用する周辺温度Teに熱的に直接接触しているので、測定される温度Tmは、秤(1)が晒されている周辺温度Teに直接に対応する。
【0062】
温度センサー(15)は、熱を生成するコイル(53)からいくらか距離を置いて配置される。したがって、コイル(53)の温度が、測定されている温度Tmにわずかだけ影響する。その結果、温度センサー(15)は、周辺温度Teが秤(1)に及ぼしている影響を主に測定する。
【0063】
温度センサー(15)は、それによって測定される温度Tmが秤(1)の、熱を生成する任意の構成部品のシステム温度Tiと全く無関係であるように配置される。温度センサー(15)は、秤(1)を覆っている、例えば、筺体の壁にも配置され得る。
【0064】
温度センサー(15)は、固定部分(42)のシステム温度Ts、ひいては、主として周囲の環境の温度Teに対応しているデジタル又はアナログの温度測定信号mTを生成する。この温度測定信号mTはその後、力測定信号に類似して、同様に更なる信号処理の段階へ送信される。
【0065】
図3は、例として、図1及び図2の秤(1)のブロック概略図を表している。この例において、力測定セル(10)は、力測定セル(10)に作用している入力荷重Lに対応するアナログの力測定信号mL’を生成する。力測定セル(10)からアナログ/デジタルコンバーター(11a)への接続が、アナログの測定信号をアナログ/デジタルコンバーター(11a)へ送信する目的を果たす。アナログ/デジタルコンバーター(11a)は、入ってくる力測定信号mL’をデジタルの力測定信号mLへ変換し、このデジタルの力測定信号mLは、力測定セル(10)に作用している同様の入力荷重Lに対応している(図3のアナログ信号は、単一のアポストロフィによって識別されるが一方、対応するデジタル信号は、アポストロフィのない同一の記号によって識別される)。アナログ/デジタルコンバーター(11a)の出力から信号処理装置(20)の第1の入力への接続は、力測定信号mLを後段へ送信する目的を果たす。
【0066】
秤は更に、前述した、測定される温度Tmを受信する目的を果たす温度センサー(15)を含む。この温度センサー(15)は、温度センサー(15)によって生成された温度測定信号mT’をデジタル形式に変換した後に更なる入力量として信号処理装置(20)に送信するために、更にアナログ/デジタルコンバーター(11b)を経由する信号処理装置(20)の第2の入力と接続されている。
【0067】
この例において、個別のアナログ/デジタルコンバーター(11a)及び(11b)が、これらの変換時にそれぞれ異なる解像度及び速度が要求されるために、力測定信号mLに対して及び温度測定信号mT対して使用される。しかしながら、アナログ/デジタルコンバーター(11a)及び(11b)は、1つの装置に結合され得る。更に、アナログ/デジタルコンバーター(11a)及び(11b)は、力測定セル(10)又は温度センサー(15)又は信号処理装置(20)にも組み込まれ得る。
【0068】
演算処理装置(20)において、入ってくる力測定信号mLは、温度測定信号mTに従って処理されて温度補償した出力信号mLcになる。温度補償した出力信号mLcは、入ってくる力測定信号mL、ひいては入力荷重Lにもおよそ対応している。信号処理装置(20)の出力は、表示装置(13)に接続され、補償した出力信号mLcは、表示装置(13)に送信され得、後段によって表示され得る。しかしながら、補償した出力信号mLcは、付加的な処理装置(14)、例えば、監視装置/警告装置、又はマスター計算機若しくはプロセスコントローラーへも送信され得る。
【0069】
信号処理装置(20)は、力測定信号mL及び温度測定信号mTに基づいて、補償パラメーターCPを算出する。以下の段落に説明されるこの補償パラメーターCPは、システム温度と測定温度Tmとの間、及び/又は第1のシステム温度と第2のシステム温度との間、に存在する温度差の特性を示している。補償パラメーターCPは、力測定信号mLを処理して温度補償した出力信号mLcにするための更なる段階で使用される。信号処理装置(20)において実行される算術演算は、以下の方程式
CP=F(mL,mT)
mLc=F(CP,mL,mT)
を介する一般的な形式で表現され得る。
【0070】
前述のブロック概略図、すなわち、アナログ/デジタルコンバーター(11a)、(11b)、及びデジタル処理装置(20)は、望ましくは、共有の筐体又はマイクロプロセッサーにおいて、1つの機能的な装置に実装され、例えば、共有の回路基板上か又は(点線の四角形によって示される)構成部品の集まりとして、適切に組み合わされる。
【0071】
図4は、図3に類似しているブロック概略図を示しているがしかし、補償は、第1の加算補償C_Sによって示される第1の温度補償と、前述した図3による補償パラメーターCPによって算出される第2の加算補償C_LDによって示された本発明による補償と、の組み合わせから成る。この場合、補償パラメーターCPは、コイル(53)のシステム温度Tsと測定温度Tmとの差として取得される、時間に依存した相対的な温度差dTr(t)の特性を示している。
【0072】
元の信号、すなわち、補償電流Icの測定信号mL’及び測定した温度の信号Tmの温度測定mT’は、アナログ/デジタルコンバーター(11)へ送信され、それらはデジタル形式へ変換される。対応する出力信号、すなわち、力測定信号mL及び温度測定信号mTは、ここで後続の算術演算にデジタル方式で利用可能である。
【0073】
以下は加算補償C_Sを決定する手順の手短な概要であって、従来技術に開示されたステップ、例えば、GB1495278に開示された方法に基本的に従っている。
永久磁石の磁場は、サマリウムコバルト磁石に関すると−350ppm/Kの温度係数を有する相対的に強力な温度依存性を有している。その結果、磁場に入れられたコイル(53)に流れている電流の強さも同様に、相対的に強力な温度依存性を有している。力測定信号mLは、この場合もやはり、コイル(53)内の電流の強さに対応している。故に、従来技術から知られている第1の補償において、力測定信号mLは、測定される周辺温度Teに関する永久磁石(50)の温度依存性を相殺される。したがって、この補償は、いわゆる荷重のゆれに対する基本補償を表す静的な温度補償又は温度の一次補償としても参照される。このステップの第1の加算補償C_Sは、以下方程式
C_S=mL × TK × mT
に従って力測定信号mL及び温度測定信号mTから算出され、ここでTKは定数を表していて、典型的に実験的に決定されるか又はデータシート、すなわち、温度係数TKから利用可能である。この例において算出される第1の加算補償C_Sは、力測定信号mL及び温度測定信号mTに比例して単純な線形である。しかしながら、第1の加算補償C_Sの計算は、高次の項、例えば、力測定信号を2乗した値(mL)も含み得る。
【0074】
第1の加算補償C_Sが算出された後、それは第1の加算補償C_Sを元の力測定信号mLに追加する加算演算に入力され、それによって、後者は補償される。したがって、力測定信号mLは、この場合、入力荷重Lの変化に関連し、かつ測定温度Tmの変化に関連する第1の温度補償を介し補償される。図3に類似して補償された測定信号は、最後には、表示装置(13)及び/又は付加的な処理装置(14)へ送信される。
【0075】
第1の加算補償C_Sに加え、本発明によって図3に示した補償パラメーターCPが、以下の段落で与えられる詳細な説明に従って算出される。この補償パラメーターCPに基づいて、付加的な第2の加算補償C_LDが、後続の演算で算出される。この第2の加算補償C_LDに基づいて、更なる補償が、ここで力測定信号mLに適用される。したがって本発明による補償は、付加的に改善される温度補償、すなわち、荷重のゆれ補償を提供する。
【0076】
この例において、相対的な時間に依存した温度差dTr(t)を表す補償パラメーターCPは原則として、測定され得る温度差として同一の特性時間プロファイルを記述していて、CPは、それぞれの正規化定数だけ、後者の温度差から異なる。
【0077】
第1の計算の一部において、コイル(53)における電力消費に関する時間プロファイルを表す、時間に依存したエネルギー散逸P(t)の速度は、力測定信号から決定される。この場合、コイルの電流Icに比例している力測定信号mLを用いると、消散される電力P(t)は、
P(t)=c × mL
に従って得られ、ここでcは、比例性の定数である。比例性がない別の場合、電力消費は同様に、力測定信号mLから単純な計算を経て算出され得る。
【0078】
加えて、時間に依存した応答関数S(t)は、相対的な温度差dTr(t)の計算時に使用される。応答関数S(t)は、時間に依存した秤(1)の温度差の性質を特性化する体型的な熱力学な特性に基づいている。したがって応答関数S(t)は、秤(1)内部の熱力学的な量、すなわち、熱流量及び/又は熱伝導から導出される。
【0079】
時間に依存した相対的な温度差dTr(t)は、応答関数S(t)の時間導関数、すなわち、
【0080】
【数1】

【0081】
を用いて、エネルギー散逸P(t)の速度を数学的に畳み込む処理を経て決定される。
応答関数S(t)を決定するために、単純な熱力学モデルが、例として与えられる。これに従うと、応答関数S(t)は、力測定信号mLの階段形の変化、いわゆるステップ応答として取得される。階段形の変化は、この場合、秤(1)へ入力される量を表していて、入力に応答するその反応は、力測定装置の構成部品に生じる熱伝導の場合、熱力学モデルに従って対応する応答関数によって説明される。このモデルによると、時間に依存した応答関数S(t)は、特有の時定数τを用いて以下の式を介し説明され得る。
【0082】
S(t)=1−e-t/τ
相対的な温度差dTr(t)は、この場合、上記与えられた方程式によって算出され得、その結果は
【0083】
【数2】

【0084】
となる。
数学的モデルに関する別の応答関数S(t)又はステップ応答、特にいくつかの指数関数の組み合わせを表すステップ応答も使用できる。
【0085】
時間に依存した相対的な温度差dTr(t)の畳み込み積分計算に関する様々な方法が利用可能である。例えば、サンプリング時間の間隔tを用いた一定の検出率の場合、畳み込み積分は、総和
【0086】
【数3】

【0087】
によって近似され得、ここで総和
【0088】
【数4】

【0089】
は、回帰公式
【0090】
【数5】

【0091】
によって定義され、ここで
【0092】
【数6】

【0093】
である。
例えば、遅延装置及び/又は加算演算及び/又は乗算演算を含む計算機プログラムにおいて又は巡回回路設計を用いた、これらの数学的な演算を実行するための様々な方法が存在する。これらのアプローチを用いると、畳み込み積分は、単純な数学演算を経て効率的にかつ高精度で算出され得る。
【0094】
したがって、この計算段階は結果として、相対的な温度差dTr(t)の形式で補償パラメーターCPを送信する。従来の現行技術を用いると、この温度差dTr(t)は、温度センサーを用いた物理的な測定を介し決定される。
【0095】
計算の更なる部分において、第2の加算補償C_LDは、以下方程式
C_LD = mL × TKLD × dTr(t)
に従って相対的な温度差dTr(t)から算出され、ここで係数TKLDは、一定の大きさの特定の温度係数を表している。この方程式は、非常に単純な場合を例示している。より高次の項を考慮することにより、計算精度が、特定の要求に従って改善され得る。
【0096】
第1の補償の場合、追加的に第2の加算補償C_LDを加算に入力することによって、第2の加算補償C_LDが加算演算に渡され、対応する第2の補償を実行する。力測定信号mLは、かくして、相対的な温度差dTr(t)とそれと関連する荷重のゆれに関して補償され、その結果として補償力を生成するプロセスが生じる。ここで、荷重のゆれを補償した出力mLcが、信号処理装置(20)の出力において得られる。
【0097】
図5a、図5b、及び図5cは、本発明による補償パラメーターCPの計算に含まれる、更なる温度に関連した現象の補償を例示していて、図1及び図2の時間に依存した秤の一時的な温度反応、特にいわゆるステップ型変化dTe形式の周辺温度Teの増加又は減少があるところにおける、2つのレバーアーム(48a)、(48b)を有する秤(1)の動的な温度反応の特性を示している。補償パラメーターCPは、この場合、2つのレバーアーム(48a)及び(48b)にそれぞれ生じ、システム温度Ts1、Ts2と測定温度Tmとの間のそれぞれの差を示す2つの温度差dT1及びdT2のグループの特性を示している。以下の段落に説明される補償パラメーターCPは、2つの温度差dT1とdT2との差を表している差分信号ΔdTの特性を示し得る。
【0098】
周辺温度Teは、力測定装置(1)のレバー(46)、ひいては2つのレバーアーム(48a)及び(48b)に作用する。その結果、第1の温度差dT1が、第1のレバーアーム(48a)の第1のシステム温度Ts1と測定温度Tmとの間に生じ、第2の温度差dT2が、第2のレバーアーム(48b)の第2のシステム温度Ts2と測定温度Tmとの間に生じる。
【0099】
図5aは、図4に類似しているブロック概略図を示しているがしかし、2つの温度差dT1及びdT2が本発明に従って算出される。したがって補償パラメーターCPは、2つの温度差dT1及びdT2を含んでいて、そのそれぞれは、図3及び図4に記載した温度測定信号mTに基づいて算出される。この例においても、算出された温度差が、必ずしも実際に存在する量を示すとは限らない。むしろ、前の例のようにそれらは、抽象化された数学的な量としてみなされるべきである。温度差dT1及びdT2は、以下の一連のステップに従って算出される。
【0100】
図5bは、コイル(53)に入力荷重Lを送信する目的を果たすためのレバー(46)を有する、図4に従った強く簡易化した秤のブロック概略図を表している。このレバーは、回転の中心X、いわゆるレバーの支点で回転軸となるように支えられている。レバー(46)は、それぞれ質量m及びmによって表される、第1のレバーアーム(48a)及び第2のレバーアーム(48b)を有している。
【0101】
質量mを有する第1のレバーアーム(48a)の重心は、レバーの支点×から距離aを有している。この質量は、秤の垂直可動部(43)の質量を表している。質量mを有する第2のレバーアーム(48b)は、秤(1)の力伝達機構を表していて、距離aにある重心に集まっていると仮定されている。入力荷重Lを含まない場合は、したがって平衡状態は、方程式
= m
によって表される。
【0102】
荷重が存在している場合、左のレバーアームは、mに加えて荷重Lを伝達し、右のレバーアームの末端で作用する磁力fによって補償される。右のレバーアームの長さbに対する重心の支点距離aの比率が、定数値βのままであると仮定すると、この状況は方程式
La=f 及び a=βb
によって記述され、ここでレバーの比は、b/aに等しい。
【0103】
この段階的な増加の場合、周辺温度の上昇dTeとともに2つの質量m及びmが暖かくなる。質量mは、比較的重く、かつ、コンパクトであって、故に表面と質量との間の比率は比較的小さい。その結果、質量mの第1のシステム温度Ts1は、温度の上昇dTeにただゆっくりと順応する。対照的に、質量mは軽く、かつ、相対的に大きな表面を有している。その温度、すなわち、第2のシステム温度Ts2は、故に、温度の上昇dTeの追随が比較的速い。これは、2つのレバーアーム(48a)及び(48b)それぞれのシステム温度Ts1及びTs2は一定の時間の間、お互いと異なる。したがって、周辺温度Teに関するそれらの温度差は、同様に異なっていて、すなわち、第1のレバーアーム(48a)に関してdT1、第2のレバーアーム(48b)に関してdT2である。
【0104】
膨張率を用いると、故にレバー(46)の2つのアームは、異なる長さにおける変化、すなわち、
第1のレバーアーム(48a)に関しては α × dT1 及び
第2のレバーアーム(48b)に関しては α × dT2
を提示する。
【0105】
その結果、温度の上昇dTeの後、方程式
(m+L)a(1+α dT1)=m(1+α dT2)+f(1+α dT2)
によって表される機構上の平衡の移動がある。
【0106】
図4の前の例のように、畳み込み積分、及び時間に依存した応答関数S1(t)、S2(t)、及び特性時間定数τ1及びτ2を用いると、温度差dT1及びdT2がそれぞれ決定される。
【0107】
したがって、温度差
【0108】
【数7】

【0109】
を得て、ここでi=1、2である。かくして、温度差dT1及びdT2の計算は、それぞれ時定数のτ1及びτ2だけお互いと異なる。
単純な熱力学モデルの場合、応答関数S(t)は、図4の例に類似して、特性時間定数のτ1及びτ2を用いたステップ応答
S(t)=1−e-t/τi
として表現され得、畳み込み積分
【0110】
【数8】

【0111】
をもたらし、ここでi=1,2である。
一定のサンプリングレートを用いると、図4の前の例で荷重のゆれの補償を例示している畳み込み積分の計算において、畳み込み積分は、加算を経て積分を近似し、再帰的アプローチを使用することによって、この場合もやはり、非常に効率的に算出され得る。
【0112】
その結果、この時点において、補償パラメーターが、2つの温度差dT1及びdT2の形式で更に、第3の加算補償C_DTの計算に対し利用可能である。
2つの温度差dT1及びdT2も以下の式
ΔdT=dT2−dT1=(Ts2−Te)−(Ts1−Te)=Ts2−Ts1
に従って、単一の差分信号ΔdTの中に結合され得る。
【0113】
したがって、差分信号ΔdTは、2つのシステム温度の差、すなわち、第2のシステム温度Ts2と第1のシステム温度Ts1との差を表している。
その結果、補償パラメーターCPは、差分信号ΔdTを介し、2つの温度差dT1及びdT2の差の特性を示している。最終的に、補償パラメーターCPは、差分信号ΔdT形式で(図5aの点線の矢印で示したように)次の演算モジュールへ送信される。
【0114】
図5cは、秤が、周辺温度Teの急上昇dTeに晒された後の温度差dT1及びdT2の温度プロファイルの例を図的に示している。温度上昇dTeに密接に対応する温度測定信号mTが、階段形をした実線によって図的に示されている。(点線の)温度差dT2は、より急速に温度上昇dTeを追随し得るが一方、(破線の)温度差dT1は、追随がより遅い。(一点波線の)差分信号ΔdT、すなわち、2つの温度差の差(dT2−dT1)は、観測されている秤の反応、すなわち、一定の時間内の再度徐々に消える強い初期の温度の影響を反映している。
【0115】
一定の荷重Lの下で、時間に依存した補償力fの変化は、
【0116】
【数9】

【0117】
に従って算出され得る。
したがって第3の加算補償C_DTは、以下の方程式
【0118】
【数10】

【0119】
によって算出され、ここで、c及びm0は、適切な方法、例えば、調整手順を介して決定される必要がある定数である。
最終的に第1の補償又は第2の補償の場合、第3の加算補償C_DTは、第3の加算補償C_DTを加算の中に追加的に入力することによって、対応する補償を実行する加算演算に入力される。力測定信号mLは、かくして、周辺温度Teの動的な変化に関連する付加的な補償を用いて調整される。温度差に関連して補償される出力信号mLcはこの場合もやはり、更なる処理に利用可能である。
【0120】
図6は、図4、及び図5による計算、すなわち、荷重のゆれの補償計算のブロック概略図を表していて、動的な温度の反応の計算は、個々に、基本的には個別の演算モジュールとして設定され、そこから全体の計算処理が組み立てられる。これらのモジュールは、大部分は無関係であって、必要に応じて全体の計算処理に組み込まれ得る。付加的なモジュールをいくつも接続することも可能である。
【0121】
加算補償すべて、この場合、第1の加算補償C_S、荷重のゆれの補償に関する第2の加算補償C_LD、及び温度反応の動的な補償に関する第3の加算補償C_DTが、加算演算に入力される。3つの加算補償の加算、すなわち、C_S+C_LD+C_DTを用いると、本明細書に前述した影響要因に関連する力測定信号mLが補償される。補償された出力信号mLcが、更なる処理をするために、例えば、表示用のインジケーター、又は付加的な演算処理装置へ送信される。
【0122】
異なる測定信号と温度の影響との所望の任意の組み合わせを算出することも可能である。例えば、構成部品の短期間の温度上昇は、別の構成部品において異なるシステム温度をもたらし得る。例えば、荷重が、荷重受け入れ装置に置かれたときに発生し得る磁石の温度の急増が、例えば、温度変化dT1及びdT2それぞれの計算、及びレバーアーム(48a)と(48b)の長さに関連する変化に関連して使用され得る。したがって、時間に依存した温度反応は、周辺温度Teの変化に基づいて算出されるだけではなく、荷重測定信号mLの一次関数であるコイルの電力消費P(t)にも基づいて算出され得る。
【0123】
本発明による温度補償方法及び本発明による力測定装置(1)が、好適な実施形態において説明され、例示されている。力測定が、秤(1)として記述されている。しかしながら、本発明は、熱重量測定器、計量モジュール、ロードセル、及び場合によっては秤の一部であり得る測定センサーなど別の力測定装置にも適用され得る。また、本発明によって網羅される装置は、当然のこととして、構成部品の特定の選択、構成、分類、及び適用に限定されない。
【符号の説明】
【0124】
1 力測定装置、秤(force-measuring device, balance)
10 力測定セル(force-measuring cell)
11 アナログ/デジタルコンバーター(analog/digital converter)
11a アナログ/デジタルコンバーター(analog/digital converter)
11b アナログ/デジタルコンバーター(analog/digital converter)
13 表示装置(indicator unit)
14 付加的な演算処理装置(further processing unit)
15 温度センサー(temperature sensor)
20 信号処理装置(signal-processing unit)
41 カンチレバー延長部(cantilevered extension)
42 固定部分(stationary part)
43 垂直可動部(vertically movable part)
44 導材(guide members)
45 屈曲式ピボット(flexure pivots)
46 レバー(lever)
47 屈曲式ピボット(flexure pivots)
48 レバーアーム(lever arm)
48a レバーアーム(lever arm)
48b レバーアーム(lever arm)
49 連結素子(coupling element)
50 永久磁石(permanent magnet)
51 空隙(air gap)
53 コイル(coil)
54 位置センサー(position sensor)
56 閉ループコントローラー(closed-loop controller)
距離(distance)
距離(distance)
C_S 加算補償(correction summand)
C_LD 加算補償(correction summand)
C_DT 加算補償(correction summand)
CP 補償パラメーター(correction parameter)
dT1 温度差(temperature difference)
dT2 温度差(temperature difference)
dTe 温度上昇(temperature jump)
dTr 相対的な温度差(relative temperature difference)
F 伝達関数(transfer function)
F1 伝達関数(transfer function)
F2 伝達関数(transfer function)
磁気補償力magnetic compensation force)
Ic 補償電流(compensation current)
L 入力された力、荷重(input force, load)
m 質量(mass)
質量(mass)
質量(mass)
mL 力測定信号(force measurement signal)
mL' 力測定信号(force measurement signal)
mT 温度測定信号(temperature measurement signal)
mT' 温度測定信号(temperature measurement signal)
mLc 出力された信号(output signal)
P(t) 熱に消散された電力(power dissipated into heat)
S(t) 応答関数(response function)
S1(t) 応答関数(response function)
S2(t) 応答関数(response function)
Ts システム温度(system temperature)
Ts1 システム温度(system temperature)
Ts2 システム温度(system temperature)
Te 周辺温度(ambient temperature)
Tm 測定温度(measured temperature)
TK 温度係数(temperature coefficient)
TKLD 温度係数(temperature coefficient)
X 回転の中心(center of rotation)
α 膨張率(coefficient of expansion)
β 比率(ratio)
ΔdT 差分信号(difference signal)
τ 時定数(time constant)
τ1 時定数(time constant)
τ2 時定数(time constant)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定モードで作動中に、力測定装置(1)、特に秤の温度補償をする方法であって、
力測定セル(10)によって、入力された力に対応する電気的な力測定信号(mL)を生成するステップと、
前記力測定装置(1)の熱を生成する構成部品から距離を置いて配置される温度センサー(15)によって温度(Tm)を測定するステップであって、前記温度(Tm)が主に、前記力測定装置が晒されている周辺温度(Te)に対応し、前記測定温度(Tm)に対応する温度測定信号(mT)を生成するものと、
前記温度測定信号(mT)及び前記力測定信号(mL)に基づいて、前記力測定信号(mL)を処理して温度補償した出力信号信号(mLc)にするステップと、
前記出力信号(mLc)を表示装置(13)及び/又は更なる処理装置(14)へ送信するステップと、を含んでいて、
前記処理段階において、前記出力される信号(mLc)を補償する目的を果たす少なくとも1つの補償パラメーター(CP)が、前記力測定信号(mL)及び前記温度測定信号(mL)から基本的な熱力学モデルによって算出され、前記補償パラメーター(CP)が、
A)システム温度(Ts,Ts1,Ts2)と前記測定温度(Tm)との間、及び/又は
B)第1のシステム温度(Ts1)と第2のシステム温度(Ts2)との間
に存在する温度差(dTr,dT1,dT2)の特性を示していること、を特徴とする方法。
【請求項2】
前記補償パラメーター(CP)が、応答関数(S(t),S1(t),S2(t)及び畳み込み積分によって、特に前記温度測定信号(mT)、前記力測定信号(mL)、又は前記応答関数(S(t),S1(t),S2(t))の時間導関数を用いて前記力測定信号(mL)から決定された消散電力量(P)の畳込みによって算出されることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記応答関数(S(t),S1(t),S2(t))が、熱力学、及び/又は階段関数又はインパルス関数の形式の入力に対する熱力学的応答、及び/又は時間の減衰関数、特に特定の時定数(τ,τ1,τ2)を有する指数関数の法則のうち少なくとも1つに従って定義されることを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記補償パラメーター(CP)が、再帰的処理を経て算出されることを特徴とする請求項1から3の1項記載の方法。
【請求項5】
前記補償パラメーター(CP)が、前記時間プロファイル、特に前記測定温度(Tm)及び/又は前記力測定信号(mL)の変化率に依存する、時間に依存した量として算出されることを特徴とする請求項1から4の1項記載の方法。
【請求項6】
前記システム温度(Ts,Ts1,Ts2)が、前記力測定装置(1)の構成部品の温度、特に力入力素子の温度、力伝達素子の温度、レバー(46)の温度又はレバーアーム(48)の温度に対応していて、前記出力信号(mLc)が、前記構成部品の前記熱膨張に関連して補償されることを特徴とする請求項1から5の1項記載の方法。
【請求項7】
前記補償パラメーター(CP)が、前記力測定装置(1)の異なる構成部品、特に対向する2つのレバーアーム(48a,48b)にそれぞれ関連付けられている前記少なくとも2つの温度差(dT1,dT2)の特性を示していることを特徴とする請求項1から6の1項記載の方法。
【請求項8】
前記補償パラメーター(CP)が、前記2つの温度差(dT1,dT2)の差として取得される差分信号(ΔdT)によって算出されることを特徴とする請求項1から7の1項記載の方法。
【請求項9】
前記力測定装置(1)が、電磁力の補償原理に基づくことと、前記補償パラメーター(CP)が、前記補償力を生成する前記処理に関連して生じる温度差の特性を示していることと、を特徴とする請求項1から8の1項記載の方法。
【請求項10】
前記補償力が、電流が流れているコイル(53)によって生成され、それによって電力(P)の大きさが、消散によって失われることと、前記補償パラメーター(CP)が、前記力測定信号(mL)の関数として、特に前記力測定信号(mL)から導出された電力消費の損失(P)の関数として算出されることと、を特徴とする請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記補償力が、コイル(53)と永久磁石(50)との相互作用によって生成されることと、前記システム温度(Ts)が、前記コイル(53)の温度及び/又は前記永久磁石(50)の温度に対応することと、を特徴とする請求項9又は10記載の方法。
【請求項12】
前記力測定信号(mL)の少なくとも2つの補償が、異なる2つ、基本的には、個別の算出モジュールを経て算出され、モジュールそれぞれが、少なくとも1つの補償パラメーター(CP)の前記計算をそれぞれ実行すること、を特徴とする請求項1から11の1項記載の方法。
【請求項13】
力測定装置(1)の熱を生成する構成部品から距離を置いて配置される温度センサー(15)を有する、適用される力に対応する電気的な力測定信号(mL)を生成する力測定セル(10)を有する力測定装置(1)、特に秤であって、
前記温度センサー(15)が、主に前記力測定装置に作用する周辺温度(Te)に対応する温度(Tm)を測定し、前記主に力測定装置に作用する周辺温度(Te)に対応する測定温度(Tm)に対応する温度測定信号(mT)を生成することと、
更に、前記温度測定信号(mT)及び前記力測定信号(mL)に基づいて、前記力測定信号(mL)を処理して温度補償された出力信号(mLc)にし、表示装置(13)及び/又は更なる処理装置(14)へ送信され得るように構成される信号処理装置(20)(mT)を有していて、
前記信号処理装置(20)が前記力測定装置が測定モードで作動しているとき、前記出力信号(mLc)の補償の目的を果たす補償パラメーター(CP)が基本的に熱力学モデルによって算出され得るように適切に構成され、前記補償パラメーター(CP)が、
A)システム温度(Ts,Ts1,Ts2)と前記測定温度(Tm)との間、及び/又は
B)第1のシステム温度(Ts1)と第2のシステム温度(Ts2)との間
に存在する温度差(dTr,dT1,dT2)の特性を示していることと、を特徴とする装置。
【請求項14】
前記温度センサー(15)が、前記力測定装置(1)の固定構成部品(40,41,42,43)と熱的に接触していることを特徴とする請求項13記載の力測定装置(1)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【図5c】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−533743(P2012−533743A)
【公表日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−521057(P2012−521057)
【出願日】平成22年7月23日(2010.7.23)
【国際出願番号】PCT/EP2010/060758
【国際公開番号】WO2011/009957
【国際公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【出願人】(599082218)メトラー−トレド アクチェンゲゼルシャフト (130)
【住所又は居所原語表記】Im Langacher, 8606 Greifensee, Switzerland