説明

力計のためのコイル及びその製造方法

【課題】電磁力補正原理に基づいた力計のための改良されたフィルレシオを提供するマルチファイラ特にバイファイラのコイル線の配線構造を有する多層電磁コイルを提供すること。
【解決手段】本発明は、電磁力補正原理に基づく力測定装置のための多層電磁コイルに関すると共に、当該コイルの製造方法に関する。当該コイルは、本発明に従って、ほぼ矩形の断面形状を有しているコイル線(21a,21b)のマルチファイラ特にバイファイラ配線構造を有している。コイル線の断面形状は、コイル内の巻線の可能な最も密な詰め込み形態を形成することができる形状に設計されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁力補正原理に基づく力測定装置すなわち力計のための多層電磁コイル及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電磁コイルは、EP 0 990 880に記載されているタイプの力計に適している。前記力計は、電磁力補正原理に基づいており且つ例えば秤量技術の分野に用途を有している。
【0003】
この力計は、平行ガイド機構を備え且つ伝達されるべき力、例えば、秤量荷重の低減のためのレバー機構を備えている場合が多い。磁場内で動くことができ且つその中を電流が導かれ得る電磁コイルがてこ機構の出力側に配置されている。(特許文献1参照)
レバー機構によってコイルに作用しつつある力は、コイルの位置を変化させ、この位置の変化は、位置検出器、特に、光学位置センサーによって検知される。位置の変化に応答して、コイル内の電流は、コイルが元の位置に戻るまで変えられる。従って、電磁コイルは、レバー機構によって伝達される力に対抗して作用する反力を発生し、この反力は補正力と称される。補正力、所謂、補正電流を発生するための電流の変化は、力測定セルによって測定されるべき力の測定値を表している。この測定原理は電磁力補正と称されている。
【0004】
磁場はギャップを備えた永久磁石によって発生され、コイルは当該ギャップ内の電磁場内に挿入される。この構造内にてこ機構が存在する場合には、コイルは、てこ機構の長い方のレバーアームに取り付けられるのが好ましい。
【0005】
電磁コイルは、導電性で且つ絶縁されたコイル線の1以上の巻線からなる。コイルの導電部分は、典型的には、金属線例えば銅線又はアルミニウム線からなり、絶縁部分は絶縁材料の層、例えば、導電性部分の周囲にコーティングを形成している焼き付けられたラッカーからなる。コイル線の電気絶縁は、互いに隣接するコイル巻線間の電気的接触を避けるために必要である。コイルは、必要とされる堅牢性を巻線に付与する支持本体上に巻かれることが多い。しかしながら、巻線を互いに接合する接着剤によって形状が保持されている所謂空心コイルも存在する。
【0006】
電磁力補正を備えた力計は、コイルの出力損失(熱損失)が荷重依存性であり、補正電流によって変化するという欠点を有している。従って、一つずつ異なる荷重を秤量する場合には、異なる量の損失熱量が各荷重に対して放出され、損失される出力量は電流の二乗に比例する。例えばCA 1098552に記載されているように、装置内で連続的に変化する温度の結果として、ゼロ点の不安定性及び幾つかの場合には感度の負所望な不安定性が起こる。(特許文献2参照)
この現象は、とりわけ、永久磁石装置をその能力の最大限まで使用することを伴うコンパクト設計の秤の分解能を高めることを試みる場合に特に問題がある。秤がてこによる力減少機構を備えている場合には、感度は、レバーに生じる温度差によって影響を受ける。高い精度の力計を形成するためには、測定の一因となる影響ファクタを出来るだけ一定に保つことが望ましい。
【0007】
温度補正のための機構として、電磁力補正のための所謂押し引き装置が現在の技術状況において知られている。この装置においては、結果的に得られる補正力は、相互に対抗し且つコイルを平衡状態に保つ力成分によって構成されている。
【0008】
これらの互いに反対方向の力成分は、コイルワイヤー内に逆方向の平行な電流の流れが導かれるコイルのバイファイラ(二本巻き)巻線構造によって発生される。電流を適当に選択することによって、2つの正反対の力成分の量は、所望の補正力が得られるようにして押圧力が引っ張り力と釣り合うように調整することができる。
【0009】
コイル全体の出力損失は、2つの独立した互いに逆方向の電流の出力損失の合計であるという事実により、荷重に依存する温度変動は著しく減じられる。更に、小さな荷重に対しては、コイルは、最適な直線性範囲内で作動させることができる。
【0010】
バイファイラ巻線のためには、殆どの場合に、2つの絶縁コイル巻線がコイル上に平行に且つ同時に巻かれる。このことは、2つのコイル巻線をほぼ等しい空間配置で配置することができ、このことは、出力損失が均一に分布せしめられ、互いに逆方向の力成分が高度に対称であるという利点を有する。
【0011】
力計、特に、高分解能の力計のためのコイルに課される更に別の要件は、利用可能な空間の利用を最大化する方法でコイルを必要な大きさにすることである。利用の程度は、フィルレシオ、すなわち、導電材料例えば銅の体積と最大限利用可能な空間との比によって特徴付けられる。このフィルレシオは、コイルが巻かれる方法、すなわち、巻線の特性及び配置に極めて大きく依存し得る。
【0012】
“巻線”という用語は、中心の周りのコイル巻線の物理的な包装を指すけれども、本明細書においては、コイルを作るための1以上のコイル巻線の一般的な配置はコイル巻線と称される。このような巻線の中心はまた、角が設けられた端縁の周りに巻く場合にも規定される。
【0013】
フィルレシオを最適化する際の重要なファクタは、コイル巻線の絶縁層の厚みである。高いフィルレシオを達成するためには、可能な最も薄いけれども十分な絶縁性を有し且つ耐圧性である必要がある絶縁層を目指さなければならない。
【0014】
絶縁層に過度の圧力が加わると亀裂又は破壊が起こり、これは、個々の巻線間の漏れ電流及び/又は短絡につながり得る。これらの漏れ電流は、巻線間に電位差が存在する場合には、巻線から損傷した絶縁領域を通って近くの巻線へと流れる。漏れ電流は、一般的には、補正力の発生に寄与せず、従って、補正作用の空間的に不均一な分布及びコイルの低い効率につながる。
【0015】
更に、コイルのフィルレシオは未使用のギャップによって減る。これらのギャップは、典型的には、コイル巻線の個々の巻線間、幾つかの場合には巻線とコイルの境界を定める部材との間の空気が充填された中空空間の形で形成される。コイルが有するギャップが少なくなればなるほど、フィルレシオは一般的に高くなる。
【0016】
コイルの巻線の規則正しい配列によって、制御されない配列よりも良好なフィルレシオが達成されることは知られている。従って、高いフィルレシオを有するコイルは、ほとんどの場合、一つの層の個々の巻きが相互に隣接して配列されている層状構造を有している。これによって、個々の巻き間の未使用のギャップの発生は著しく減る。
【0017】
コイルの配線においては、平打巻と平巻との間で区別がなされる。平打巻配線を有する円筒形コイルの場合には、隣接する巻線は径方向に互いに隣接して配置され、層は軸線方向に重なるように配置される。これと逆に、平巻の場合には、互いに隣接する巻線は、互いに軸線方向に隣接して配置され、層は径方向に重なるように配置される。このことはまた、非円筒形の例えば二次コイルにも同様に当てはまる。フィルレシオの最適化に対する注意点は両方の種類のコイル配線に対して同様に当てはまる。
【0018】
層構造に加えて、多層コイルのフィルレシオは、層内の巻線の有利な配列によって更に最適化することができることが知られている。従って、互いに隣接する層間で、上方の層の巻線が下方層の溝内に位置するようにして上方層内の巻線が出来るだけ多く配置されるようにすることが目的とされる。溝は、典型的には、下方層の隣接する巻線間に生じる。
【0019】
しかしながら、巻線のこの好ましい配置は、コイルの巻線全体に対してなすことはできない。層状の配線の場合には、下方の層の巻線とそのすぐ上方の層の巻線とが互いに交差することは避けられない。これらの交差は、幾何学的特性の結果であり、それによって、個々の層の巻線は、隣接する層間で反対の向きを有する螺旋を形成する。これらの交差は局部的な不整合を生じることは避けられず、これは、個々の巻線の個々の線を互いにより離れて配置させ、従って、達成可能なフィルレシオに限界が設けられる。
【0020】
巻線の好ましい配置から外れることが必要となる更に別の制限が存在する。例えば、コイルの境界領域内すなわち巻線の下方の層から次の上方の層への遷移部分において、巻線の配列の不規則さを避けることができない。しかしながら、これらの不規則性は、典型的には重要性があまり高くないので以下の考察においては省略する。
【0021】
上記の交差部において、上方の層のコイル線は、下方の層の一つの溝から次の溝へと移る点においてそれらの位置が変わる。この結果、狭い曲げ半径がこれらの位置に生じて、絶縁コーティング内の同程度に高い局部的な応力につながる。コイルの製造過程においては、狭い曲げ半径及び剪断力の結果として不必要なギャップも余分な応力も生じないように、これらの遷移部分において線を正確に整合させるために特別な注意を払う必要がある。
【0022】
高いフィルレシオを有するコイルにおいては、絶縁コーティング内の高い応力につながる状態は一方では避けられるべきである。他方では、緊密に束ねられたコイルの配線を形成するためには、巻線は、ある種のそれほど適度ではない引っ張り量でコイルの周囲に束ねられる必要がある。従って、線のテンションを調整し且つ巻き過程において線の前進及びガイドを制御するために、典型的には、高度に開発された高価な機構が使用される。
【0023】
高いフィルレシオを有するマルチファイラ又はバイファイラの配線構造を有するコイルの製造過程においては、巻線間のギャップ及び絶縁コーティング内の応力の問題が高い重大性で発生する。この場合には、コイルの各巻きに対して、下方層の2以上のコイル線が上方層の2以上の線と交差する。この結果、より多くの交差部が存在し、より小さな曲げ半径に加えて、上方層と下方層との各々の巻線間により多くの接触点が存在し、その結果、絶縁コーティングが同程度により大きな応力負荷に曝される。
【0024】
多数のギャップにより、巻線の電位差が大きければ大きいほど且つ絶縁コーティング上の応力が大きければ大きいほど、マルチファイラ配線又はバイファイラ配線を有するコイルは、モノファイラ配線のコイルよりも漏れ電流を受け易い。
【0025】
マルチファイラ配線又はバイファイラ配線を有するコイルにおいては、不規則部分及びそれに伴う不使用のギャップが多数存在することにより、モノファイラ配線構造と比較してフィルレシオが小さくなる。更に、有用な作動寿命及び/又はコイルの効率は、絶縁コーティングのより高い応力負荷によって低下せしめられるかも知れない。更に、幾つかのコイル線を同時に処理することによって、製造過程がモノファイラ配線を有するコイルよりも複雑になる。
【特許文献1】EP 0 990 880公報
【特許文献2】CA 1098552公報
【非特許文献1】なし
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
従って、本発明は、電磁力補正原理に基づいた力計のための改良されたフィルレシオを提供するマルチファイラ特にバイファイラのコイル線の配線構造を有する多層電磁コイルを提供することを目的とする。コイルの構造及びその製造過程は、絶縁コーティング内に過剰な応力負荷が生じないようにされるべきである。本発明の更に別の目的は、このようなコイルの簡単な製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0027】
上記の目的は、各々、特許請求の範囲内の装置に関する独立請求項及び方法に関する独立請求項に記載された特徴を有する電磁コイル及び電磁コイルの製造方法によって達成される。本発明の有利な展開は更に別の請求項において提供されている。
【0028】
電磁力補正に基づく力計の一部であり且つマルチファイラ特にバイファイラ配線構造を含んでいる本発明による多層電磁コイルにおいては、コイル線は本質的に矩形断面を有している。
【発明の効果】
【0029】
本発明のこの解決方法は、ほぼ矩形断面の線の形状により、高いフィルレシオを達成することができるという利点を有している。本発明においては、上方層の巻線が下方層の巻線構造によって大きく影響を受けないように配置することができるので、コイルの端部領域の重要度が無視できる部分以外の部分に不規則な部分が存在しないであろう。マルチファイラ及びバイファイラ配線構造において特に大きな作用を有している種類の多数の交差部においてさえ、利用可能な空間が効率良く使用されており、従って、フィルレシオが高くなる。
【0030】
ギャップの発生を避けることによって、測定装置における周囲の影響因子依存性に関して有利な改良が達成される。例えば、高湿度の室内においては、周囲の空気からの水分がコイル内に存在するギャップ内へ浸入する状態が存在する。このことは、一方では、常にコイルの重量変動を生じさせ、従って、測定目盛のゼロ点のずれを生じさせる。他方では、水分が漏れ電流の発生を助長し、これは補正力の変動につながる。
【0031】
漏れ電流の問題は、マルチファイラ及びバイファイラ配線によるコイル内で特に多く発生する。なぜならば、電流が互いに反対方向に逆平行に流れる場合には、隣接する巻線間の電位差が特に大きいからである。従って、ギャップ内の水分及び大きな電位差は、両方とも、不所望な作用を有する。従って、ギャップの減少は、マルチファイラ及びバイファイラ配線を有するコイルにおいて特に有利である。
【0032】
更に、コイル線の矩形断面形状は、絶縁コーティングの応力負荷に関して大きな利点を有する。隣接する層の巻線間の接触領域は、主として分散された表面接触特性を有するので、無視できるコイルの端部領域を除く絶縁コーティング内の部分に余分な局部的応力が存在しない。長期に亘る安定性と上記のコイルの効率を低くし得る損傷の発生を有効に避けることができる。
【0033】
コイルの製造過程は、本質的に矩形断面形状のコイル線によって著しく簡素化される。上層の巻線は隣接する下層の巻線の配置によって大きく影響を受けずに配列することができるので、無視できる端部領域以外は一つの溝から次の溝へ移る部分に複雑な交差部が存在せず、大規模な制御及び調整機構を不要にする。端部領域以外では、コイル線は、単一の層の巻線を備えたコイルと同じ方法で巻くことができる。
【0034】
コイル線の断面形状のための有利な設計は、実質的に丸味を付けられた矩形形状によってなされる。この形状は、端縁の近くの絶縁コーティングの不均一なコーティングを避けることができるという利点を有している。このような形状は、伸線ダイスを介して物質を引っ張ることによるあらゆる所望形状の原材料によって又はローリング若しくはプレスのような適当なプロセスによって元は丸いコイル線から得ることができる。
【0035】
更に、丸味を付けられた形状においては、コイルの製造過程において絶縁コーティングに対する損傷を惹き起こすことを避けることができる。特に、隣接する巻線間の剪断力が避けられ又は少なくとも減じられる。
【0036】
コイル線の形状の短辺が両凸形状である場合には、丸味を付けられた端縁を有する矩形形状と類似して、製造過程が簡素化される。同様に、長辺が極めて均一な平らな形状によると、コンパクトな巻線の層を作ることができる。
【0037】
矩形形状における長さと幅との比が1.2特に1.5を超える場合には、コイルは、高価なワイヤーガイド機構無しで製造することができる。このようになされない場合には、コイル線がコイル巻き過程中に捻れて巻線内により大きな不規則部分が発生し、絶縁コーティング内により過酷な負荷が惹き起こされるであろう。
【0038】
コイル線はまた、コイル線の各々がコイルの完全な層を形成するように配列することもできる。端部領域内の不可避な不規則部分を除いて、この概念によって、極めて規則正しく配列された構造を作ることができる。
【0039】
本発明の有利な実施形態においては、マルチファイラ特にバイファイラ巻き構造のコイル線は、相互に合わせられて線の結合体とされる。補正力の発生に関してより良好な均一性及び等価物を実現できるという利点を提供する。これによって、特に、押し引き装置内の2つの反対方向の力成分が相互に対称的に調和せしめられる。更に、結合されたコイル線は簡単な方法で処理することができるので、製造過程は簡素化される。この線の結合体は、矩形のコイル線形状の長辺を互いに隣接させて配置することによって形成することができる。このようにして、予め製造された平らにされたコイル線を相互の頂部に位置させることによって、コンパクトで安定した線の結合体を形成することができる。
【0040】
他方においては、線の結合体はまた、矩形のコイル線形状の短辺同士を相互に隣接させて配置することによって形成することもできる。これによって、主要な整形過程を必要とすることなく、丸味が付けられた又は方形のコイル線による線の結合体のための簡単な製造過程が可能になる。更に、これは、絶縁コーティング内の小さな応力負荷につながるだけである。
【0041】
本発明の一実施形態においては、コイル線は、特に接着剤によって接着されて相互に接合されて線の結合体とされる。これによって、最適な配置すなわち平行配置からの偏りを著しく避けた配置が可能になる。このような偏りは、例えばコイルの製造過程において特に端部領域に発生し得る。
【0042】
接着剤による結合は、例えば、接着性が圧力及び/又は熱の存在下で又は絶縁層又はコーティング層の接着及び/又は溶着を生じさせるコイル線の付加的なコーティング層上の溶剤の作用により又はコイル線間の付加的な接着剤を注入することによって活性化される絶縁材料による種々の方法で形成することができる。
【0043】
個々のコイル線の整形によって得られる利点は、線の結合体の断面形状が、長さ/幅の比が1.2特に1.5を超え且つ/又は短辺が両凸又はダブルの両凸形状を形成するように湾曲せしめられ且つ/又は長辺が平らにされている本質的に矩形形状を有する線の結合体によって同様に実現できる。
【0044】
更に別の実施形態によるコイル線の配置においては、線の結合体の巻線によって形成されている層において、線の結合体の第一のコイル線は常に巻線の中心により近くなるように配置されている。このようにして、コイル線内に一貫した層構造、従って、高いフィルレシオが得られ、2つのコイル線の形状の違いが存在する可能性にも対処できる。特に、上記のコイル線の配置が各層において使用されている場合には、均一な構造を達成することができる。
【0045】
更に有利な実施形態による配線においては、2つのコイル線を備えている線の結合体が、層間で交互に変わり、第一の層内では第一のコイル線が中心により近接して配置され、次に続く層においては、第二のコイル線が巻線の中心により近くなるようにされている。これによって、2つのコイル線の配置の非対称性を避けることができる。
【0046】
更に別の実施形態によるコイルは、特に筒形状で且つ特に少なくとも8つの層によって、空心コイルとして設計することができる。コイルが備える層の数が多ければ多いほど、本発明によるコイル線の形状によって得られる利点全てが益々強固に明らかになる。公知の技術状況によるコイル線においては、層毎に不規則性が繰り返されるけれども、本発明によるコイル線形状においては、層、従って、不規則性が相互に極めて独立している。
【0047】
本発明によるコイルは、おそらく、巻線動作の直ぐ前を先行する段階において、圧力及び/又は熱によって、コイル線及び/又は線の結合体が形成される過程において製造されるのが好ましい。この結果、形状の正確な制御がもたらされる。
【0048】
幾つかの場合には予め矩形形状に製造されていたかも知れないコイル線は、軸線が製造されるコイルの巻線の軸線に本質的に平行に配向されている幾つかのドラムからほどいて引き出すこともできる。このことにより、コイル線及び/又は線の結合体が捻れた状態になるのが防止される。
【0049】
当該製造方法は、コイル線を相互に合わせて線の結合体とし且つドラム上に巻くステップを含むことが更に可能である。ドラムの軸線は、製造されるコイルの巻線の軸線と平行に配向されるのが好ましい。これによって、予め組み立てられた線の結合体が中間貯蔵段階において捻れ状態となるのが防止される。
【0050】
コイルの巻き過程において、コイル線及び/又は線の結合体によって製造されるコイルにかけられる引っ張り力は所定の値に従って調整され、それによって、コイルの緊密に束ねられた配線が絶縁コーティングに対する小さな応力負荷によって達成される。
【0051】
本発明による方法及び装置の詳細は、図面に極めて概略的な表現で示されている実施形態の説明に提供されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0052】
図1は、電磁力補正原理に基づいており且つ秤量技術の分野での使用に適している力測定セル1の極めて簡素化された概略図である。力測定セル1は、一対のガイド部材4の端部に設けられた枢軸5によって互いに枢動可能に結合された固定部分2と垂直方向に可動の部分3とを備えた平行ガイド機構を備えている。垂直方向に可動の部分3は、測定されるべき荷重を受け取る機能を果たす片持ち梁部分15を備えている。荷重によって発生される力の垂直方向成分は、垂直方向の可動部分3から結合部材9を介してレバー6の短い方のレバーアーム8に伝えられる。レバー6は、支点7によって固定部分2の一部分上に支持されている。力測定セルは更に、固定部分2と固定結合状態で配置されているカップ形状の永久磁石装置10を備え且つエアーギャップ11を有している。エアーギャップ11内には、レバー6の長い方のレバーアーム12に結合されているコイル13が配置されている。レバー6に作用する力に依存する大きさの補正電流Icmpがコイル13内を流れる。レバー6の位置は、光電測定装置14によって測定される。光電測定装置14は、受け取った測定信号に応答して、レバー6が常に同じ位置に保持されるか又は荷重の変化が生じた後に前記同じ位置に戻るように補正電流Icmpを調整する調整装置に接続されている。
【0053】
図2aは、図1による力測定装置において使用されるのが好ましい種類の現存の技術によるコイル13を示している。コイル13は、リード線19がコイル13へと通る開口部18のみが封入されているトロイド形状のボビン上に配置されている。第三の種類のコイルボビン16は、例えば、ポリマー、銅又はアルミニウムのような非磁性材料によって作られるのが好ましい。
【0054】
空心コイルの形態の更に別の実施形態が図2bに示されている。この場合のコイル13は、支持ボビンの心16を備えておらず、接着剤によって形状が維持されている。
【0055】
図2cは、現在の技術において使用されている種類のコイル線のバイファイラ構造を備えた線I−Iに沿ったコイル構造の断面図である。巻線20は、互いに上下に位置している個々の層を形成している。一例として、層の構造は、破断線II−IIによって示されている。巻線20間のより大きなギャップは、特に、巻線20の交差部分で且つ支持ボビン16の端部領域において巻線20の不規則性の結果として生じる。
【0056】
図3は、本発明に従って形成されているコイル線のバイファイラ構造を備えたコイル13を断面図で示している。典型的には、本質的に矩形形状であるコイル線21a及び21bは、一層ずつ並置されて巻かれる。軽くハッチングされた領域は、第一のコイル線21aを示しており、一方、密にハッチングされた領域は、第二のコイル線21bを示している。このようにして、端部領域を除いて、破断線III−IIIによって示されているように、極めて均一な構造の層を達成することが可能である。コイル線の各々を封入している絶縁コーティング22は図示されていない。図3の3aによれば、コイル線は巻き付け過程中に並列(矩形断面形状の短辺が順に並べられることを意味している)にガイドされる。図3の3bは、巻き付け過程においてコイル線が各コイル線が本質的にコイルの完璧な層を形成するように向けられている。
【0057】
図4の4aは、図3の3cにおいて使用されている種類の線の結合体の断面図を示している。コイル線21aと21bとは、本質的に矩形形状を有し且つ集められて線の結合体23とされている。コイルを巻く過程において、コイル線は、矩形断面形状の長辺が相互の頂部に位置するような形態で上下に延びるようにガイドされる。コイル線は、絶縁コーティング22によって個々に封入されている。コイル線が永久に相互に結合される場合には、絶縁コーティング22自体又は更に別の接着剤が結合手段の機能を果たすことができる。
【0058】
図4の4aに似た状態が4bに示されているが、本質的に、線の結合体に対して、個々のコイル線の丸みを付けられた矩形形状及び1.5を超える長さ/幅の比を有している。
【0059】
図4の4aと類似して、4cは、両凸形状の短辺と平らなより長い辺とを有している本質的に矩形形状の線の結合体を示している。
【0060】
図4の4aに類似した状態が図4の4dに示されているが、個々のコイル線は、それらの矩形断面形状の短辺同士が相互に結合されて線の結合体とされている。
【0061】
図5の5aは、図3の3aにおける状態に類似した断面図の詳細を示しているが、コイル線21aと21bとは、図4の4cに従って相互に結合されて線の結合体21とされている。絶縁コーティング22は、この図面には示されていない。この構造においては、コイル21a又は21bのうちの一方が常に巻線の中心により近い方に配置されて明確な層構造が得られるようになされている。
【0062】
図5の5bは、5aに似た構造を示しているが、この場合には、2つのコイル線21a及び21bのうちの同じものが層の各々において中心に近い方に配置されて巻線を形成している。
【0063】
図5の5cは、5aに類似しているが、この場合には、2つのコイル線21a及び21bが層毎に互い違いに中心に近い方の層を形成している。
【0064】
図6は、2つのコイル線21aと21bとを相互に結合させることができる線の結合体30を形成するための装置を極めて概略的に図示している。結合は、断面図で図示されている機械的なガイド31によって制御することができる。しかしながら、線の結合体の製造装置はまた、破線で示されているローラー32の形態で実現することもできる。接着剤は、コイル線21aと21bとの間に接合される直前に注入することができる。しかしながら、コイル線の絶縁層を皮相を溶解するための溶剤又はコイル線を覆う特別な接着コーティングを注入することも可能である。接合部の下流には、線の結合体23の断面形状を整形する機能を果たす例えば2つの対向するローラーのような装置が配置されている。しかしながら、この装置は、機械的ガイド31又はローラー32内に組み込んでも良い。個々のコイル線21a及び21bは、整形ローラー34によって、部分的に又は完全に整形することができる。この整形過程は、接合直前に行うことが出来るが、線の結合体30のための製造装置によって行われる過程内に組み込むこともできる。
【0065】
コイルの製造のための装置の極めて概略的な図が図7の7aに示されている。この場合には、コイル線は、垂直に立っているドラム35から引っ張り出され、線の結合体30のための製造装置内を通過せしめられた後に、経路Aに従って製造されるべきコイル13上に巻き付けられるか、経路Bに従って水平方向に向けられた回転可能なドラム36上に巻き付けられる。ドラム36上の中間貯蔵段階の後に、線の結合体23は、所定のときに、経路Cに沿って引っ張り出されて製造されるべきコイル13上に巻き付けられる。巻線過程において製造されるべきコイルに作用する張力は、調整装置37によって所定値まで調整することができる。
【0066】
図7の7bによる構造においては、ドラム35の軸線は、水平方向に且つ製造されるコイル13の軸線と平行に向けられている。このようにして、部分的に又は完全に前もって製造された矩形のコイル線をコイル13上に捻ることなく巻き付けることが可能である。更に、個々のコイル線は、整形ローラー34によって完全に整形するか又は再整形することができる。この場合には、コイル線は、圧力、熱又は接着剤なしで直接合わせ且つコイル13上に巻き付けられる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】図1は、電磁力補正原理に基づいた力測定セルの概念を断面図で示している。
【図2】図2は、図1の力測定セルにおいて使用されるのが好ましい従来技術によるコイルを示しており、2aは、支持ボビン上に巻かれているコイルの斜視図であり、2bは、空心コイルとして形成されているコイルの斜視図であり、2cは、2aの線I−Iに沿った断面図である。
【図3】図3は、図2の2aに類似しているバイファイラ配線によるコイルの断面図であり、本発明による形状とされ且つ種々の方法で、すなわち、3aにおいては平行な対とされた巻線状に、3bにおいては層状構造に、3cにおいては結合されて線の対とされて、配列されたコイル線を備えている。
【図4】図4は、種々の形態の線の結合の断面図であり、4aにおいては、個々のコイル線がほぼ矩形形状を有し且つ矩形の長辺同士が相互に結合されており、4bにおいては、4aと類似しており且つ個々のコイル線が丸みを付けられた矩形形状を有し且つ線の結合体の長さ/幅の比が1.5を超える比とされており、4cの構造は4aに類似しており且つ両凸の短辺と平らな長辺とを備えており、4dにおいては、個々のコイル線が矩形形状を有し且つ矩形の短辺に沿って相互に結合されている。
【図5】図5は、本発明による更に別の線の結合構造を備えた図3に類似した断面図の詳細を示しており、5aは、ほぼ層状の構造を表しており、5bは、同じ向きの層を備えた層状構造を有しており、5cは、交互の向きの層を備えた層状構造を有している。
【図6】図6は、コイル線の結合体のための装置の原理と線の結合形状とを示している図である。
【図7】図7は、コイルの製造過程の原理と、ドラムから線をほどくことによるコイル線の給送装置とを示しており、当該装置は、前記ドラムは、ドラムの軸、線の結合体の整形のための整形ローラー、線の結合の中間貯蔵のための装置、テンションを調整するための装置、及び個々のコイル線の整形のための整形ローラーを備えている。7aは垂直方向に配向されたドラムの軸を示しており、7bは水平方向に配向されたドラムの軸を示している。
【符号の説明】
【0068】
1 力測定セル、 2 固定部分、 3 垂直方向可動部分、
4 ガイド部材、 5 枢軸、 6 レバー、
7 レバーを支持している枢支点、
8 短い方のレバーアーム、 9 結合部材、
10 永久磁石装置、 11 エアーギャップ、
12 長い方のレバーアーム、 13 コイル、
14 光電測定装置、 16 支持ボビン、
17 コイル構造、 18 開口部、
19 コイルに対するリード線、
20 巻線、 21a,21b コイル線、
22 絶縁コーティング、 23 線の結合体、
30 線の結合体の製造装置、 31 ガイド装置、
32 線同士を結合のためのローラー、
33 結合手段、 34 整形ローラー、
35 線を供給するドラム、 36 中間貯蔵のためのドラム、
37 調整装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイル線のマルチファイラ特にバイファイラ配線構造を有する電磁力補正原理に基づく力計の多層電磁コイルであり、
前記コイル線が実質的に矩形の断面形状を有していることを特徴とするコイル。
【請求項2】
請求項1に記載のコイルであり、
前記コイル線の断面形状が、実質的に丸味をつけた矩形形状を有し、その短辺が
特に両凸形状に形成されており、長辺が平らに形成されていることを特徴とするコイル。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のコイルであり、
前記コイル線の断面形状が、1.2特に1.5を超える長さ対幅の比を有していることを特徴とするコイル。
【請求項4】
請求項1乃至3のうちのいずれか一項に記載のコイルであり、
前記コイル線の各々が、それ自体が完全であるコイルの層を形成していることを特徴とするコイル。
【請求項5】
請求項1乃至4のうちのいずれか一項に記載のコイルであり、
前記コイル線が、特に、前記矩形断面形状の長辺又は短辺が相互に隣接するように配列されることによって線の結合体とされていることを特徴とするコイル。
【請求項6】
請求項5に記載のコイルであり、
前記コイル線が、特に接着剤による接合によって相互に結合されて線の結合体とされていることを特徴とするコイル。
【請求項7】
請求項5又は6に記載のコイルであり、
前記線の結合体の断面形状が、丸味を付けられ且つ短辺が特に両凸形状又は二重両凸形状とされ且つ長辺が平らである実質的に矩形の形状を有していることを特徴とするコイル。
【請求項8】
請求項5乃至7のうちのいずれか一項に記載のコイルであり、
前記線の結合体の断面形状が、1.2特に1.5より大きい長さ対幅の比を有していることを特徴とするコイル。
【請求項9】
請求項5乃至8のうちのいずれか一項に記載のコイルであり、
前記線の結合体の巻線によって形成された層、特にこのような層の各々において、前記線の結合体の第一のコイル線が、常に、前記巻線の中心により近くなるように配置されていることを特徴とするコイル。
【請求項10】
請求項5乃至7のうちのいずれか一項に記載のコイルであり、
前記線の結合体が2つのコイル線からなり、層間において第一のコイル線と次の層内の第二のコイル線とが交互に巻線の中心により近くなるように配置されていることを特徴とするコイル。
【請求項11】
請求項1乃至10のうちのいずれか一項に記載のコイルであり、
前記コイルが、特に筒形状で特に少なくとも8つの層によって空心コイルとして形成されていることを特徴とするコイル。
【請求項12】
請求項1乃至11のうちのいずれか一項に記載のコイルを製造する方法であり、
前記コイル線及び/又は線の結合体が、圧力及び/又は熱によって、巻線動作の直前の段階において整形されることを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法であり、
矩形形状に作ることができるコイル線が、製造されるべきコイルの巻線の軸線にほぼ平行な軸線を有する幾つかのドラムからほどかされることを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項12又は13に記載の方法であり、
前記コイル線が相互に合わせられて線の結合体とされ、次いで、当該線の結合体が、製造されるべきコイルの巻線の軸線にほぼ平行である軸線を有するドラム上に巻き付けられることを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項12乃至14のうちのいずれか一項に記載の方法であり、
前記コイルを巻く過程において、前記コイル線及び/又は製造されるべきコイルによってかけられる引っ張り力が特定の値に従って調整されることを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項12乃至15のうちのいずれか一項に記載の方法であり、
前記コイル線が、特に幾つかの場合には、溶剤の作用を含む接着によって接合されて線の結合体とされることを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−216244(P2008−216244A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−30090(P2008−30090)
【出願日】平成20年2月12日(2008.2.12)
【出願人】(599082218)メトラー−トレド アクチェンゲゼルシャフト (130)
【住所又は居所原語表記】Im Langacher, 8606 Greifensee, Switzerland